(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029626
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】モータ駆動装置及びモータ制御システム
(51)【国際特許分類】
H02P 29/20 20160101AFI20240228BHJP
H02P 29/68 20160101ALI20240228BHJP
【FI】
H02P29/20
H02P29/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131985
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】間々田 卓
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501BB08
5H501DD09
5H501EE08
5H501HA08
5H501HB07
5H501JJ03
5H501LL22
5H501LL38
5H501LL52
5H501MM01
5H501MM09
(57)【要約】
【課題】コンデンサを長持ちさせる。
【解決手段】本開示は、電源5から供給される電圧を平滑化するコンデンサ17とモータ2を駆動するモータ駆動基板11とを有するモータ駆動装置10であって、コンデンサ17の温度を検出する温度検出部14と、モータ駆動基板11を制御する制御部15と、を備え、制御部15は、温度検出部14が検出するコンデンサ17の温度が所定の温度閾値以下である場合には、モータ2を第1出力モードで駆動し、コンデンサ17の温度が温度閾値よりも高い場合には、モータ2を第1出力モードよりも低い出力となる第2出力モードで駆動するようにモータ駆動基板11を制御する出力モード切替制御を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から供給される電圧を平滑化するコンデンサとモータを駆動するモータ駆動部とを有するモータ駆動装置であって、
前記コンデンサの温度を検出する温度検出部と、
前記モータ駆動部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記温度検出部が検出する前記コンデンサの温度が所定の温度閾値以下である場合には、前記モータを第1出力モードで駆動し、前記コンデンサの温度が前記温度閾値よりも高い場合には、前記モータを前記第1出力モードよりも低い出力となる第2出力モードで駆動するように前記モータ駆動部を制御する出力モード切替制御を実行する
ことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記出力モード切替制御を実行する第1状態と、前記出力モード切替制御を実行することなく前記モータを前記第1出力モードで駆動するように前記モータ駆動部を制御する通常制御を実行する第2状態とに切替可能である
ことを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載のモータ駆動装置と、
前記制御部の制御状態を前記第1状態と前記第2状態との間で切替可能な信号を、前記制御部へ入力する制御状態入力手段と、を備え、
前記制御部は、前記制御状態入力手段からの信号に応じて前記制御状態を切り替える
ことを特徴とするモータ制御システム。
【請求項4】
前記コンデンサの寿命に関する報知を行う報知部を備え、
前記制御部は、前記コンデンサの寿命を算出し、算出した寿命が所定の寿命閾値よりも短い場合に、前記報知部を制御して報知を行う
ことを特徴とする請求項3に記載のモータ制御システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記コンデンサの寿命を算出し、算出した寿命が所定の寿命閾値よりも短い場合に、前記第2出力モードで駆動するように前記モータ駆動部を制御する
ことを特徴とする請求項3に記載のモータ制御システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記温度検出部が検出する前記コンデンサの温度に基づいて前記コンデンサの寿命を算出する
ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のモータ制御システム。
【請求項7】
前記コンデンサのリプル電流を検出する電流検出部を備え、
前記制御部は、前記電流検出部が検出するリプル電流に基づいて前記コンデンサの寿命を算出する
ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のモータ制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータ駆動装置及びモータ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バッテリとインバータとの間に設けられる電解コンデンサの寿命計算装置が開示されている。この装置では、温度センサが、電解コンデンサの内部温度を検出して、その検出信号を制御回路に出力する。制御回路は、インバータを作動させて交流負荷を駆動させると同時にタイマを作動させて、電解コンデンサの作動時間を計測させる。また、制御回路は、温度センサからの検出信号に基づいて、作動時における電解コンデンサの内部温度を求める。そして、制御回路は、電解コンデンサの作動時間と内部温度とに基づいて、電解コンデンサの寿命を計算し、装置の使用毎に寿命消費時間を求めるとともに、その求めた寿命消費時間を積算した状態で記憶部に記憶していく。そして、制御回路は、その積算した寿命消費時間が前記の規定保証寿命以上になったか否かを判断して、規定保証寿命以上になると電解コンデンサが寿命に達したと判断し、表示部にその旨を表示させるとともに、インバータの駆動を停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の装置は、電解コンデンサ(コンデンサ)が寿命に達したと判断した後に、表示部への表示やインバータの停止を行うものであり、コンデンサを長持ちさせることはできない。
【0005】
そこで、本開示は、コンデンサを長持ちさせることが可能なモータ駆動装置及びモータ制御システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、電源から供給される電圧を平滑化するコンデンサとモータを駆動するモータ駆動部とを有するモータ駆動装置であって、前記コンデンサの温度を検出する温度検出部と、前記モータ駆動部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記温度検出部が検出する前記コンデンサの温度が所定の温度閾値以下である場合には、前記モータを第1出力モードで駆動し、前記コンデンサの温度が前記温度閾値よりも高い場合には、前記モータを前記第1出力モードよりも低い出力となる第2出力モードで駆動するように前記モータ駆動部を制御する出力モード切替制御を実行する。
【0007】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様のモータ駆動装置であって、前記制御部は、前記出力モード切替制御を実行する第1状態と、前記出力モード切替制御を実行することなく前記モータを前記第1出力モードで駆動するように前記モータ駆動部を制御する通常制御を実行する第2状態とに切替可能である。
【0008】
本発明の第3の態様は、モータ制御システムであって、請求項2に記載のモータ駆動装置と、前記制御部の制御状態を前記第1状態と前記第2状態との間で切替可能な信号を、前記制御部へ入力する制御状態入力手段と、を備え、前記制御部は、前記制御状態入力手段からの信号に応じて前記制御状態を切り替える。
【0009】
本発明の第4の態様は、上記第3の態様のモータ制御システムであって、前記コンデンサの寿命に関する報知を行う報知部を備え、前記制御部は、前記コンデンサの寿命を算出し、算出した寿命が所定の寿命閾値よりも短い場合に、前記報知部を制御して報知を行う。
【0010】
本発明の第5の態様は、上記第3の態様のモータ制御システムであって、前記制御部は、前記コンデンサの寿命を算出し、算出した寿命が所定の寿命閾値よりも短い場合に、前記第2出力モードで駆動するように前記モータ駆動部を制御する。
【0011】
本発明の第6の態様は、上記第4の態様又は上記第5の態様のモータ制御システムであって、前記制御部は、前記温度検出部が検出する前記コンデンサの温度に基づいて前記コンデンサの寿命を算出する。
【0012】
本発明の第7の態様は、上記第4の態様又は上記第5の態様のモータ制御システムであって、前記コンデンサのリプル電流を検出する電流検出部を備え、前記制御部は、前記電流検出部が検出するリプル電流に基づいて前記コンデンサの寿命を算出する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、コンデンサを長持ちさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るモータ制御システムを示す概略構成図である。
【
図3】状態切替スイッチがオンのときのモータ駆動装置の制御部が行う処理のフローチャートである。
【
図4】状態切替スイッチがオフのときのモータ駆動装置の制御部が行う処理のフローチャートである。
【
図5】モータ制御システムの変形例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るモータ制御システム1を示す概略構成図である。
図2は、モータ制御システム1のブロック図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係るモータ制御システム1は、例えば、車両の駆動輪等を回転動作させるモータ2を、アクセル3の入力に応じて駆動制御するためのシステムに適用される。
【0018】
本実施形態のモータ2は、SRモータ(スイッチド・リラクタンス・モータ)である。モータ2は、いわゆる3相4極形のブラシレスモータであって、ステータ4とロータ(図示省略)とを備える。ステータ4は、正極及び負極の両方として機能する3相のコイル4u,4v,4wを備える。
【0019】
本実施形態に係るモータ制御システム1は、モータ駆動装置10と、状態切替スイッチ(制御状態入力手段)30と、報知部40とを備える。
【0020】
モータ駆動装置10は、モータ駆動基板(モータ駆動部)11及びコンデンサ基板12を含むインバータユニット13と、温度検出部14と、制御部15とを備える。
【0021】
モータ駆動基板11は、インバータ回路16を備える。インバータ回路16は、3相の駆動回路16u,16v,16wを備える。駆動回路16u,16v,16wは、3相ブリッジ接続されたスイッチング素子Sと、各スイッチング素子Sのそれぞれのコレクタ-エミッタ間に逆並列に接続されたダイオードDとをそれぞれ有する。スイッチング素子Sは、例えば、FET(Field Effect Transistor;電界効果トランジスタ)と、制御部15の駆動信号に基づいてFETを駆動する回路とで構成される。各駆動回路16u,16v,16wにおけるスイッチング素子Sのドレイン又はソース(コレクタまたはエミッタ)は、コイル4u,4v,4wに電気的に接続される。スイッチング素子Sは、制御部15から出力される信号(ゲート信号)に基づいてスイッチング動作を行い、インバータ回路16に印加される直流電圧を、3相(U相、V相、W相)の交流電圧として、コイル4u,4v,4wに供給する。これにより、駆動回路16uはコイル4uを、駆動回路16vはコイル4vを、駆動回路16wはコイル4wを、それぞれ独立駆動する。なお、
図1では、駆動回路16v,16wのスイッチング素子S及びダイオードDの図示を省略している。
【0022】
コンデンサ基板12は、インバータ回路16の駆動回路16u,16v,16wと電源5との間に配置される。コンデンサ基板12は、電源5及びインバータ回路16に電気的に接続されるコンデンサ17を有する。コンデンサ17は、電源5から供給される電圧(直流電圧)を平滑化する平滑用のコンデンサである。電源5からの電流は、充電電流としてコンデンサ基板12のコンデンサ17に充電された後、モータ2の駆動時にコンデンサ17からモータ駆動基板11側へ放電電流として供給される。なお、電源5とコンデンサ基板12との間には、開閉器となるコンタクタ6が設けられている。
【0023】
温度検出部14は、コンデンサ基板12に設けられ、コンデンサ17の温度Tを検出する。例えば、温度検出部14は、温度検出素子(例えばサーミスタ)によって構成され、コンデンサ17のリード部の近傍に配置され、コンデンサ17と熱的に結合した伝熱用導体パターン(図示省略)の温度を検出し、温度に応じた電圧を制御部15へ出力する。なお、温度検出部14は、サーミスタに限定されるものではなく、コンデンサ17の温度Tを検出可能な様々な温度センサ(例えば、熱電対など)を適用することができる。
【0024】
図1及び
図2に示すように、制御部15は、アクセル3、状態切替スイッチ30、温度検出部14、ロータの回転位置を検出するロータ位置検出部(図示省略)、モータ駆動基板11、及び報知部40に電気的に接続される。制御部15は、アクセル3、状態切替スイッチ30、温度検出部14、及びロータ位置検出部からの各種入力に基づいてモータ駆動基板11を制御する。また、制御部15は、温度検出部14からの入力に基づいて報知部40を制御する。制御部15は、CPU(Central Processing Unit)18及び記憶部19を備える。
【0025】
記憶部19は、CPU18によって読み出される種々のプログラムや、種々のデータ(後述する寿命閾値A、温度閾値B、通常出力MAP、及び低出力MAPを含む)を予め記憶している。なお、記憶部19に記憶される種々のデータは、実験やシミュレーションなどによって得られた測定値や理論値に基づいて設定される。また、これらのデータは、プログラムに含まれた状態で記憶されてもよい。
【0026】
CPU18は、記憶部19に記憶されたプログラムなどのソフトウェアと協働して情報処理を実行することによって、寿命推定手段20、報知部制御手段21、及び出力制御手段22として機能する。なお、CPU18の機能の一部を抽出して他の情報処理装置に設けてもよい。
【0027】
寿命推定手段20は、コンデンサ17の寿命(電気的寿命)を推定する。本実施形態では、寿命推定手段20は、温度検出部14からの入力に基づいて下記式(1)によって実使用時の推定寿命Lx(以下、「コンデンサ17の寿命Lx」という場合がある。)を算出する。
【0028】
【0029】
ここで、Lxは実使用時の推定寿命(時間(h))を、Lrはカテゴリ上限温度における定格リプル電流重畳の規定寿命(時間(h))を、Btはコンデンサによる温度加速係数を、Toはカテゴリ上限温度(℃)を、Txは実使用時の周囲温度(℃)を、△Toは定格リプル電流印加時の自己温度上昇(℃)を、△Tはリプル電流印加による自己温度上昇(℃)を、Aはリプル電流重畳による自己温度上昇加速係数をそれぞれ示す。実使用時の周囲温度Txは、装置を動かしていないとき(コンデンサに電流を流していないとき)のコンデンサの内部温度(初期値温度)により求めることができる。△Tは、コンデンサ17の温度上昇が飽和したときのコンデンサ17の温度と周囲温度Tx(初期値温度)との差によって算出することができる。なお、カテゴリ上限温度における定格リプル電流重畳の規定寿命Lr、温度加速係数Bt、カテゴリ上限温度To、定格リプル電流印加時の自己温度上昇△To、及びリプル電流重畳による自己温度上昇加速係数Aは固有値である。
【0030】
報知部制御手段21は、寿命推定手段20で推定したコンデンサ17の実使用時の推定寿命Lxと、記憶部19に予め記憶される所定の寿命閾値Aとを比較し、推定寿命Lxが寿命閾値Aよりも短い場合(Lx<A)に、後述する報知部40を制御して、コンデンサ17の残り寿命が短いことを報知する。寿命閾値Aは、例えば、直ぐにコンデンサ17の使用を停止しなければならない限界寿命よりも余裕を持った長い値に設定される。なお、大きさの異なる複数の寿命閾値A(例えば、寿命閾値A1>寿命閾値A2>寿命閾値A3)を記憶部19に予め記憶しておき、報知部制御手段21は、推定寿命Lxが最も大きい(長い)寿命閾値A1から最も小さい(短い)寿命閾値A3に近づくほど緊急度が高くなる報知を行うように報知部40を制御してもよい。
【0031】
出力制御手段22は、アクセル3の入力に応じてモータ駆動基板11を制御し、モータ2を駆動する。出力制御手段22は、通常出力MAPに基づいてモータ2を駆動するようにモータ駆動基板11を制御する通常モード(第1出力モード)と、通常出力MAPよりも低い出力となる低出力MAPに基づいてモータ2を駆動するようにモータ駆動基板11を制御する低出力モード(第2出力モード)とを有する。通常出力MAP及び低出力MAPは、アクセル3の入力とモータ2の出力とを対応付けたMAPであって、記憶部19に予め記憶される。アクセル3からの入力が同じ場合のモータ2の出力は、低出力MAPの方が通常出力MAPよりも低く設定されている。なお、通常出力に対する出力低下の割合が異なる複数の低出力モードを有していてもよい。
【0032】
出力制御手段22は、出力モードを切り替える出力モード切替制御を行う第1状態と、出力モード切替制御を行うことなく通常モードでモータ駆動基板11を制御する通常制御を行う第2状態とを切替可能となっている。
【0033】
第1状態では、出力制御手段22は、温度検出部14に検出されるコンデンサ17の温度Tに基づいて出力モード切替制御を行い、出力モードを切り替える。例えば、第1状態の出力制御手段22は、コンデンサ17の温度Tと記憶部19に予め記憶される所定の温度閾値Bとを比較し、コンデンサ17の温度Tが温度閾値B以下である場合には、通常モードでモータ駆動基板11を制御し、コンデンサ17の温度Tが温度閾値Bよりも高い場合には、低出力モードでモータ駆動基板11を制御する。温度閾値Bは、例えば、出力モードを切り替えたい推定寿命値(初期の推定寿命値の半分の推定寿命値など)から逆算して求めた値であってもよい。
【0034】
或いは、第1状態の出力制御手段22は、寿命推定手段20によって推定されたコンデンサの寿命に基づいて、出力モード切替制御を行い、出力モードを切り替えてもよい。すなわち、制御部15は、温度検出部14に検出されるコンデンサ17の温度Tに基づいてコンデンサの寿命を推定し、推定したコンデンサの寿命に基づいて、出力モード切替制御を行い、出力モードを切り替えてもよい。例えば、第1状態の出力制御手段22は、推定されたコンデンサの寿命と記憶部19に予め記憶される所定の寿命閾値Aとを比較し、コンデンサの寿命が寿命閾値Aよりも長い場合には、通常モードでモータ駆動基板11を制御し、コンデンサの寿命が寿命閾値A以下の場合には、低出力モードでモータ駆動基板11を制御する。
【0035】
なお、複数の低出力モードを設けている場合には、所定の第1出力モードから出力の低い第2出力モードに切り替えるための複数の寿命閾値A及び温度閾値Bを設けてもよい。例えば、以下の表1に示すように、第1状態の出力制御手段22は、出力モードを切り替えてもよい。コンデンサの寿命が初期の推定寿命値(X)に対して1/2の推定寿命値(X/2)になったとき、或いは、コンデンサ17の温度Tが1/2の推定寿命値(X/2)に対応する温度(T1)になったときに、出力制御手段22は、出力モードを、通常出力に対して3/4の出力になる低出力モードに切り替えてもよい。また、コンデンサの寿命が初期の推定寿命値(X)に対して1/4の推定寿命値(X/4)になったとき、或いは、コンデンサ17の温度Tが1/4の推定寿命値(X/4)に対応する温度(T2)になったときに、出力制御手段22は、出力モードを、通常出力に対して1/2の出力になる低出力モードに切り替えてもよい。また、コンデンサの寿命が初期の推定寿命値(X)に対して1/6の推定寿命値(X/6)になったとき、或いは、コンデンサ17の温度Tが1/6の推定寿命値(X/6)に対応する温度(T3)になったときに、出力制御手段22は、出力モードを、通常出力に対して1/4の出力になる低出力モードに切り替えてもよい。また、コンデンサの寿命が初期の推定寿命値(X)に対して1/8の推定寿命値(X/8)になったとき、或いは、コンデンサ17の温度Tが1/8の推定寿命値(X/8)に対応する温度(T4)になったときに、出力制御手段22は、出力モードを、通常出力に対して1/10の出力になる低出力モードに切り替えてもよい。
【0036】
【0037】
状態切替スイッチ30は、制御部15の出力制御手段22によるモータ駆動基板11の制御状態を第1状態と第2状態との間で切替可能なスイッチである。状態切替スイッチ30は、制御部15の出力制御手段22の制御状態を第1状態と第2状態との間で切替可能な信号を、制御部15へ入力する。例えば、状態切替スイッチ30をオンにしている場合には、制御部15の出力制御手段22を第1状態にする信号を制御部15へ入力し、状態切替スイッチ30をオフにしている場合には、制御部15の出力制御手段22を第2状態にする信号を制御部15へ入力する。すなわち、状態切替スイッチ30をオンにすると、制御部15の出力制御手段22は、第1状態となり、コンデンサ17の温度Tに基づいて出力モード切替制御を行い、一方、状態切替スイッチ30をオフにすると、制御部15の出力制御手段22は、第2状態となり、通常モードでモータ駆動基板11を制御する。なお、状態切替スイッチ30の状態(オン・オフ)と、制御部15の出力制御手段22の制御状態との対応関係は上記に限定されるものではない。
【0038】
報知部40は、コンデンサ17の寿命に関する報知を行う部材であって、制御部15の報知部制御手段21に制御される。報知部40としては、例えば、ユーザが視認可能なランプ、音又は音声を発生可能なスピーカ、文字や画像を表示可能な表示装置、等が挙げられる。
図1には、報知部40としてLEDランプが図示されている。報知部40による報知は、例えば、ランプの点灯、ブザー音又は音声の発生、表示装置への文字又は画像の表示等によって行う。すなわち、コンデンサ17の寿命に関する報知とは、コンデンサ17の残り寿命が寿命閾値A1よりも短いことをユーザに対して認識させるための報知であって、残り寿命の具体的な値を報知(表示)してもよいし、或いは残り寿命の具体的な値を報知することなく単にランプを点灯させる等の報知であってもよい。なお、報知部40を設ける数は、1つに限定されるものではなく、複数であってもよい。また、複数の報知部40を設ける場合には、同種の複数の報知部40であってもよいし、あるいは異種(互いに異なる)の複数の報知部40であってもよい。
【0039】
次に、モータ駆動装置10の制御部15が行う処理について、
図3及び
図4のフローチャートに基づいて説明する。本処理は、モータ制御システム1が起動されてから停止されるまで繰り返し実行される。なお、各ステップの順番は、論理的に矛盾しない範囲内において入れ替わってもよい。
【0040】
図3は、状態切替スイッチ30がオンのときのモータ駆動装置10の制御部15が行う処理のフローチャートである。
【0041】
図3に示すように、状態切替スイッチ30をオンにしており、制御部15の出力制御手段22が第1状態となっている場合、アクセル3の入力があると(ステップS1:YES)、寿命推定手段20は、温度検出部14からの入力に基づいてコンデンサ17の寿命Lxを推定し、推定したコンデンサ17の寿命Lxと寿命閾値Aとを比較する(ステップS2)。一方、アクセル3の入力がない場合(ステップS1:NO)、出力制御手段22は、モータ2に出力しない(ステップS7)。
【0042】
コンデンサ17の寿命Lxが寿命閾値A以上である場合(ステップS2:YES)、出力制御手段22は、温度検出部14に検出されるコンデンサ17の温度Tと温度閾値Bとを比較する(ステップS3)。コンデンサ17の温度Tが温度閾値B以下である場合(ステップS3:YES)、出力制御手段22は、通常出力MAPに基づく通常モードでモータ駆動基板11を制御する(ステップS4)。一方、コンデンサ17の温度Tが温度閾値Bよりも高い場合(ステップS3:NO)、出力制御手段22は、低出力MAPに基づく低出力モードでモータ駆動基板11を制御する(ステップS6)。
【0043】
コンデンサ17の寿命Lxが寿命閾値Aよりも短い場合(ステップS2:NO)、報知部制御手段21は、報知部40を制御して、コンデンサ17の残り寿命が短いことを報知する(ステップS5)。その後、ステップS3ヘ移行し、出力制御手段22が、温度検出部14に検出されるコンデンサ17の温度Tと温度閾値Bとを比較する。なお、報知部制御手段21が、報知部40を制御して、コンデンサ17の残り寿命が短いことを報知(ステップS5)した後、
図3に二点鎖線で示すように、ステップS6へ移行し、出力制御手段22が、低出力MAPに基づく低出力モードでモータ駆動基板11を制御してもよい。或いは、コンデンサ17の寿命Lxが寿命閾値Aよりも短い場合(ステップS2:NO)、報知部40による報知を行うことなく、ステップS6ヘ移行して、出力制御手段22が、低出力MAPに基づく低出力モードでモータ駆動基板11を制御してもよい。
【0044】
図4は、状態切替スイッチ30がオフのときのモータ駆動装置10の制御部15が行う処理のフローチャートである。なお、
図4では、
図3の状態切替スイッチ30がオンの場合と同じ処理には、同じ符号を付している。
【0045】
図4に示すように、状態切替スイッチ30をオフにしており、制御部15の出力制御手段22が第2状態となっている場合、アクセル3の入力があると(ステップS1:YES)、寿命推定手段20は、温度検出部14からの入力に基づいてコンデンサ17の寿命Lxを推定し、推定したコンデンサ17の寿命Lxと寿命閾値Aとを比較する(ステップS2)。一方、アクセル3の入力がない場合(ステップS1:NO)、出力制御手段22は、モータ2に出力しない(ステップS7)。
【0046】
コンデンサ17の寿命Lxが寿命閾値A以上である場合(ステップS2:YES)、出力制御手段22は、通常出力MAPに基づく通常モードでモータ駆動基板11を制御する(ステップS4)。一方、コンデンサ17の寿命Lxが寿命閾値Aよりも短い場合(ステップS2:NO)、報知部制御手段21は、報知部40を制御して、コンデンサ17の残り寿命が短いことを報知する(ステップS5)。その後、ステップS4ヘ移行し、出力制御手段22が、通常出力MAPに基づく通常モードでモータ駆動基板11を制御する。なお、報知部制御手段21が、報知部40を制御して、コンデンサ17の残り寿命が短いことを報知(ステップS5)した後、
図4に二点鎖線で示すように、ステップS6へ移行し、出力制御手段22が、低出力MAPに基づく低出力モードでモータ駆動基板11を制御してもよい。或いは、コンデンサ17の寿命Lxが寿命閾値Aよりも短い場合(ステップS2:NO)、報知部40による報知を行うことなく、ステップS6ヘ移行して、出力制御手段22が、低出力MAPに基づく低出力モードでモータ駆動基板11を制御してもよい。
【0047】
上記のように構成されたモータ駆動装置10では、制御部15の出力制御手段22は、コンデンサ17の温度Tが温度閾値Bよりも高い場合、通常モードよりも出力の低い低出力モードでモータ駆動基板11を制御する。このため、コンデンサ17の温度Tが高くなってきた際に、モータ2への出力電流を下げて、コンデンサ17の放電電流を抑えることができるので、コンデンサ17の温度Tを下げることができ、コンデンサ17の寿命(電気的寿命)を延ばすことができる。
【0048】
このように、本実施形態によれば、コンデンサの寿命の到達を遅らせて、コンデンサを長持ちさせることができる。
【0049】
また、制御部15の出力制御手段22は、通常モードと低出力モードとを切り替える出力モード切替制御を行う第1状態と、出力モード切替制御を行わない第2状態とを切替可能である。このため、制御部15の出力制御手段22の制御状態を必要に応じて第2状態にして、制御部15が実行する処理を低減することができる。
【0050】
また、上記のように構成されたモータ制御システム1では、制御部15の出力制御手段22の制御状態を状態切替スイッチ30によって切替可能であるので、ユーザの意思によって制御部15の出力制御手段22の制御状態を第2状態にすることができる。例えば、コンデンサ17の寿命の心配がない状態では、ユーザは、制御部15の出力制御手段22の制御状態を第2状態にして、制御部15が実行する処理を低減することができる。
【0051】
また、コンデンサ17の寿命に関する報知を行う報知部40を備えるので、コンデンサ17の寿命Lxが短くなってきたことをユーザに対して認識させることができる。このため、コンデンサ17の寿命の到達による突然のインバータユニット13の故障を防止することができる。
【0052】
また、コンデンサ17の寿命Lxが寿命閾値Aよりも短い場合に、出力制御手段22が、低出力MAPに基づく低出力モードでモータ駆動基板11を制御することによって、通常モードで制御する場合に比べて、コンデンサ17の寿命(限界寿命)の到達を遅らせることができる。
【0053】
また、制御部15の寿命推定手段20は、温度検出部14が検出するコンデンサ17の温度Tに基づいてコンデンサ17の寿命Lxを算出する。このように、コンデンサ17の温度Tを検出する温度検出部14を設けるという簡易な構成で、コンデンサ17の寿命Lxを算出することができる。
【0054】
なお、本実施形態では、制御部15の寿命推定手段20は、上記式(1)によってコンデンサ17の寿命Lxを算出したが、算出方法は上記式(1)に限定されるものではなく、コンデンサ17の寿命を算出可能であれば、他の方法(他の式)で算出してもよい。
【0055】
また、本実施形態では、制御部15の寿命推定手段20は、温度検出部14からの入力に基づいてコンデンサ17の寿命Lxを算出したが、これに限定されるものではない。
【0056】
例えば、
図5は、モータ制御システム1の変形例を示す概略構成図である。この変形のモータ制御システム1は、電流検出部50を備える点で上記実施形態と相違する。なお、上記実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0057】
図5に示すように、モータ制御システム1は、コンデンサ17のリプル電流(電流値)を検出する電流検出部50を備えてもよい。電流検出部50は、電源5とコンデンサ17との間に配置され、コンデンサ17のリプル電流を検出し、制御部15へ出力する。制御部15の寿命推定手段20は、上記ステップS2において、電流検出部50から入力されるコンデンサ17のリプル電流に基づいて下記式(2)によってリプル電流印加による自己温度上昇△Tを算出し、算出した自己温度上昇△Tに基づいて上記式(1)によってコンデンサ17の寿命Lxを算出してもよい。
【0058】
【0059】
ここで、Ixは実使用時のリプル電流(Arms)を、Ioはカテゴリ上限温度における定格リプル電流(Arms)を、Fは周波数補正係数をそれぞれ示す。なお、カテゴリ上限温度における定格リプル電流Io及び周波数補正係数Fは固有値である。
【0060】
この場合、コンデンサ17のリプル電流に基づいて自己温度上昇△Tを算出するので、温度検出部14からの入力に基づいて自己温度上昇△Tを算出する場合とは異なり、寿命推定の応答性を向上させることができる。具体的には、温度検出部14からの入力に基づいて自己温度上昇△Tを算出する場合には、温度上昇が温度検出部14に伝わるまでの遅れが生じるのに対し、コンデンサ17のリプル電流に基づいて自己温度上昇△Tを算出する場合には、応答良く自己温度上昇△Tを算出することができる。
【0061】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0062】
1:モータ制御システム
2:モータ
5:電源
10:モータ駆動装置
11:モータ駆動基板(モータ駆動部)
14:温度検出部
15:制御部
17:コンデンサ
30:状態切替スイッチ(制御状態入力手段)
40:報知部
50:電流検出部