(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029639
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】サポート管および分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20240228BHJP
G01N 35/04 20060101ALI20240228BHJP
G01N 11/14 20060101ALN20240228BHJP
【FI】
G01N35/02 A
G01N35/04 G
G01N11/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132008
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000217594
【氏名又は名称】田辺工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100144440
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 一之
(72)【発明者】
【氏名】長 善之
(72)【発明者】
【氏名】後藤 啓介
(72)【発明者】
【氏名】小舩内 隆
(72)【発明者】
【氏名】吉田 満
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CA04
2G058CA05
(57)【要約】
【課題】分析装置において用いられる容器を覆うサポート管から該容器を容易に取り外すこと。
【解決手段】一例に係るサポート管は、分析装置によって処理される液体を収容する容器の側面を少なくとも覆う筒状の本体と、本体の外周面から内周面にかけて形成された少なくとも一つの貫通孔とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析装置によって処理される液体を収容する容器の側面を少なくとも覆う筒状の本体と、
前記本体の外周面から内周面にかけて形成された少なくとも一つの貫通孔と、
を備えるサポート管。
【請求項2】
前記本体が底面を備え、
前記少なくとも一つの貫通孔が、前記底面の外周面から内周面にかけて形成される少なくとも一つの底孔を含む、
請求項1に記載のサポート管。
【請求項3】
前記本体が側面を備え、
前記少なくとも一つの貫通孔が、前記側面の外周面から内周面にかけて形成される少なくとも一つの側孔を含む、
請求項1に記載のサポート管。
【請求項4】
前記本体が側面を備え、
前記少なくとも一つの貫通孔が、前記側面の外周面から内周面にかけて形成される少なくとも一つの側孔を含む、
請求項2に記載のサポート管。
【請求項5】
前記本体が、前記容器が出し入れされる開口を備え、
前記少なくとも一つの側孔のうちの少なくとも一つが、前記本体の長手方向における前記側面の中央に、または該中央と前記開口との間に形成される、
請求項3に記載のサポート管。
【請求項6】
前記本体が、前記容器が出し入れされる開口を備え、
前記少なくとも一つの側孔のうちの少なくとも一つが、前記本体の長手方向における前記側面の中央に、または該中央と前記開口との間に形成される、
請求項4に記載のサポート管。
【請求項7】
前記少なくとも一つの側孔が複数の側孔を含み、
前記側孔が、前記側面の周方向において複数の位置に形成される、
請求項3に記載のサポート管。
【請求項8】
前記少なくとも一つの側孔が複数の側孔を含み、
前記側孔が、前記側面の周方向において複数の位置に形成される、
請求項4に記載のサポート管。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のサポート管と、
前記容器と、
前記サポート管および前記容器を支持するためのトレイと、
前記トレイに対して前記容器を出し入れするロボットと、
前記容器内の前記液体を分析する分析器と、
を備える分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面はサポート管および分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トルク検出機構、回転軸保持機構、内筒、外筒、恒温槽、外筒の回転機構、および恒温槽の昇降機構を備える回転粘度計が記載されている。この回転粘度計は、内筒と外筒との間に試料流体を入れて、外筒を回転させた時の内筒に働くトルクをトルク検出機構で検出することにより、試料流体の粘度を測定する。特許文献1に記載の回転粘度計のような分析装置には、試料を入れる容器と、容器を保持するトレイとを備えるものがある。このような分析装置では、トレイへ容器を挿入する際に、トレイの穴と容器との間に、サポート管を用いる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分析装置において用いられる容器を覆うサポート管から該容器を容易に取り外すための仕組みが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係るサポート管は、分析装置によって処理される液体を収容する容器の側面を少なくとも覆う筒状の本体と、本体の外周面から内周面にかけて形成された少なくとも一つの貫通孔とを備える。
【0006】
このような側面においては、サポート管の本体に貫通孔が形成されるので、容器がサポート管から取り外される際に容器の外周面とサポート管の内周面との間に空気が入る。この空気の流入により、容器の外周面とサポート管の内周面との間に液体が介在して分子間力が働いているとしても該分子間力が解消されるので、サポート管から容器を容易に取り外すことができる。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一側面によれば、分析装置において用いられる容器を覆うサポート管から該容器を容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】サポート管に関連する分析装置の構成の一例を示す図である。
【
図3】(a)~(d)はサポート管の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本開示の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
図1を参照しながら、一例に係るサポート管10について説明する。
図1はサポート管10の一例を示す図である。サポート管10は、分析装置において用いられる容器20を覆う筒状の物品である。容器20は、分析装置によって分析される液体を収容し、例えば、潤滑油などの油を収容してもよいし、水溶液を収容してもよい。
【0011】
サポート管10は、側面および底面を有する中空の本体11を備える。底面の反対側、すなわち本体の上側には、容器20を出し入れするための開口が形成される。本体11の形状および寸法は、容器20の形状および寸法に応じて設計される。
図1は、円柱状の容器20に対応する円柱状の本体11を示すが、容器20が角柱状であれば本体11も角柱状であり得る。本体11の内部空間は容器20の外形に対応するように形成される。例えば、その内部空間は、容器20の外周面と本体11の内周面との隙間が僅かになるように形成され、これにより、本体11の開口から挿入された容器20は、サポート管10内でぐらつくことなくしっかりと支持される。本体11の長手方向の長さ、すなわち本体11の高さは、容器20の高さより小さくてもよい。本体11の素材は、容器20を出し入れできてかつ保持することができる素材であればよく、例えば、アルミなどの金属でもよいし、樹脂でもよい。
【0012】
本体11には少なくとも一つの貫通孔が形成される。貫通孔は、本体11の外周面から内周面にかけて形成される孔である。貫通孔は本体11の側面および底面の少なくとも一方に設けられる。本開示では、側面に形成される貫通孔を側孔ともいい、底面に形成される貫通孔を底孔ともいう。
図1の例では、本体11は、複数の円形の側孔12と、一つの円形の底孔13とを含む。本体11の長手方向に沿って見た場合に、側孔12は底面付近と、該長手方向における側面のほぼ中央とに設けられる。その2個の側孔12をペアとして見ると、そのペアは側面の周方向に沿って90°間隔で形成される。側孔12は、本体11の長手方向における中央または該中央と開口との間に形成されてもよい。底孔13は底面のほぼ中央に形成される。
【0013】
図2は、サポート管10に関連する分析装置30の構成の一例を示す図である。分析装置30はトレイ31およびロボット35を備える。
【0014】
トレイ31は、サポート管10および容器20を支持するための装置である。トレイ31は、サポート管10および容器20を部分的に収容するための少なくとも一つの穴32を備える。穴32は底を有し、トレイ31の高さ方向に、サポート管10を支持できる程度の深さを有する。それぞれの穴32は、サポート管10の形状および寸法に対応するように形成される。例えば、穴32はサポート管10の外周面と穴32との隙間が僅かになるように形成され、これにより、穴32に挿入されたサポート管10はトレイ31によってしっかりと支持される。分析装置30は複数のトレイ31を備えてもよい。
【0015】
ロボット35は、トレイ31に対してサポート管10および容器20を出し入れする機械である。例えば、ロボット35は垂直多関節ロボットであり、サポート管10または容器20を把持するためのグリッパをエンドエフェクタとして備える。ロボット35はサポート管10または容器20を、所定の保管場所から穴32へと移したり、穴32からその保管場所に戻したりする。
【0016】
図2を参照しながら、分析装置30の動作を説明する。一例では、ロボット35は、所定の位置に置かれているサポート管10の上部を掴み、そのサポート管10をトレイ31の穴32に挿入する。続いて、ロボット35は、所定の保管場所に置かれている容器20の上部をエンドエフェクタで掴み、その容器20をそのサポート管10の開口上に移動させる。ロボット35はその開口に向けて容器20を移動させて、容器20をサポート管10に挿入する。容器20がサポート管10に挿入されると、ロボット35はエンドエフェクタから容器20を離して、そのエンドエフェクタをトレイ31から遠ざけるように動作する。分析装置30はトレイ31上の容器20を所定の分析器(図示せず)に格納し、分析器は容器20内の液体を分析する。サポート管10は、予め穴32に挿入されていてもよい。この場合、ロボット35がサポート管10を穴32に挿入する工程はスキップされる。
【0017】
分析が終了すると、トレイ31は分析器から搬出される。ロボット35はそのトレイ31上の容器20の上部をエンドエフェクタで掴み、容器20をトレイ31から引き上げて、その容器20を保管場所に戻す。容器20がサポート管10から取り出される際には、側孔12または底孔13を介してサポート管10の外側から内側へと空気が流れ、その空気が容器20の外周面とサポート管10の内周面との間に入る。容器20の外周面とサポート管10の内周面との間では、分析の前後または分析中に容器20の外周面に付いた液体によって、分子間力が働いている可能性がある。更に、容器20の外周面とサポート管10の内周面との間では、圧力が低下し、サポート管10の内外で圧力差が生じている可能性がある。しかし、上述した空気の流入によってその分子間力および圧力差が解消されるので、サポート管10が容器20に付いたまま該容器20と共に取り出される現象が防止されて、ロボット35は容器20をトレイ31内のサポート管10から確実に取り出すことができる。また、容器20の外周面とサポート管10の内周面との間では、せん断抵抗が生じている可能性がある。貫通孔を設けることで、容器20の外周面と対向するサポート管10の内周面の表面積が小さくなるので、せん断抵抗も減少する。このせん断抵抗の減少も、容器20をサポート管10から確実に取り出すことに寄与する。
【0018】
その後、ロボット35は、所定の保管場所に置かれている新たな容器20をサポート管10に挿入してもよい。分析装置30は所定の分析器による分析を繰り返し行ってもよい。すべての分析が終了した後、ロボット35はサポート管10の上部を掴んで、そのサポート管10を元の位置に戻してもよい。
【0019】
分析器は、少なくとも一つの粘度計であってもよい。分析装置30は複数の分析器を備えてもよい。例えば分析装置30は、二つの粘度計を備え、40℃動粘度と100℃動粘度とを分析してもよい。
【0020】
[変形例]
以上、本開示をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。本開示は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0021】
図3はサポート管の変形例を示す図である。
図3(a)の例では、サポート管10Aは、側面および底面を有する本体11Aを備える。側面には、本体11Aの長手方向に沿って延びるスリット状の側孔12Aが形成される。底面には、サポート管10の底孔13と同様に底孔13Aが形成される。スリット状の側孔12Aは、本体11Aの開口まで延びてもよいし、底面付近まで延びてもよい。
図3(b)の例では、サポート管10Bは、側面および底面を有する本体11Bを備える。側面には複数の矩形の側孔12Bが形成される。本体11Bの長手方向に沿って見た場合には、本体11Bは、上側の側孔12Bと下側の側孔12Bとのペアを有するということができる。上側の側孔12Bは、該長手方向における中央と開口との間に位置し、下側の側孔12Bは該中央と底面との間に位置する。サポート管10Bでは底孔は形成されない。
図3(c)の例では、サポート管10Cは、側面を有する本体11Cを備える。本体11Cは底面を有さず、したがって、本体11Cは上下双方に開口を有する。側面には、サポート管10の側孔12と同様に複数の側孔12Cが形成される。
図3(d)の例では、サポート管10Dは、側面および底面を有する本体11Dを備える。底面には、サポート管10の底孔13と同様に底孔13Dが形成される。サポート管10Dでは側孔は形成されない。
【0022】
サポート管の側面の周方向において、側孔は複数の位置に形成されてもよい。例えば、サポート管の側面の周方向において、側孔は上記のように90°間隔で形成されてもよいし、120°、180°などの他の間隔で形成されてもよいし、ランダムな間隔で形成されてもよい。これらの場合には、側孔は側面の周方向において2以上の位置に形成される。あるいは、側孔は側面の周方向において1箇所にのみ形成されてもよい。
【0023】
底孔は円形に限定されず、矩形、スリット状などの他の形状であってもよい。サポート管は2以上の底孔を備えてもよい。
【0024】
本開示に係るサポート管は以下のように規定されてもよい。
(項目1)
分析装置によって処理される液体を収容する容器の側面を少なくとも覆う筒状の本体と、
前記本体の外周面から内周面にかけて形成された少なくとも一つの貫通孔と、
を備えるサポート管。
(項目2)
前記本体が底面を備え、
前記少なくとも一つの貫通孔が、前記底面の外周面から内周面にかけて形成される少なくとも一つの底孔を含む、
項目1に記載のサポート管。
(項目3)
前記本体が側面を備え、
前記少なくとも一つの貫通孔が、前記側面の外周面から内周面にかけて形成される少なくとも一つの側孔を含む、
項目1または2に記載のサポート管。
(項目4)
前記本体が、前記容器が出し入れされる開口を備え、
前記少なくとも一つの側孔のうちの少なくとも一つが、前記本体の長手方向における前記側面の中央に、または該中央と前記開口との間に形成される、
項目3に記載のサポート管。
(項目5)
前記少なくとも一つの側孔が複数の側孔を含み、
前記側孔が、前記側面の周方向において複数の位置に形成される、
項目3または4に記載のサポート管。
(項目6)
項目1~5のいずれか一つに記載のサポート管と、
前記容器と、
前記サポート管および前記容器を支持するためのトレイと、
前記トレイに対して前記容器を出し入れするロボットと、
前記容器内の前記液体を分析する分析器と、
を備える分析装置。
【0025】
項目1によれば、サポート管の本体に貫通孔が形成されるので、容器がサポート管から取り外される際に容器の外周面とサポート管の内周面との間に空気が入る。この空気の流入により、容器の外周面とサポート管の内周面との間に液体が介在して分子間力が働いているとしても該分子間力が解消されるので、サポート管から容器を容易に取り外すことができる。
【0026】
項目2によれば、本体の底面に貫通孔が形成されるので、容器がサポート管から取り外される際に容器の底面とサポート管の底面との間に空気が流入する。この空気の流入により、その底面間に液体が介在して分子間力が働いているとしても該分子間力が解消されるので、サポート管から容器を容易に取り外すことができる。
【0027】
項目3によれば、本体の側面に貫通孔が形成されるので、容器がサポート管から取り外される際に容器の側面とサポート管の側面との間に空気が流入する。この空気の流入により、その側面間に液体が介在して分子間力が働いているとしても該分子間力が解消されるので、サポート管から容器を容易に取り外すことができる。
【0028】
項目4によれば、本体の長手方向における中央に、または開口に近い側に貫通孔が形成される。本発明者らは、このように貫通孔を形成することで、サポート管から容器を容易に取り外せることを見出した。
【0029】
項目5によれば、側面の周方向において複数の位置に貫通孔が形成されるので、空気が流入する場所がその分だけ増え、したがって、分子間力が解消される場所も増える。その結果、サポート管から容器を容易に取り外すことができる。
【0030】
項目6によれば、上記のサポート管が用いられるので、分析装置において用いられる容器を覆うサポート管から該容器を容易に取り外すことができる。
【0031】
本体に貫通孔が形成されていないサポート管を用いた場合には、ロボットが容器をトレイ内のサポート管から取り出す際に、容器の外周面とサポート管の内周面との間に、分析の前後または分析中に容器の外周面に付いた液体によって分子間力が働き、サポート管が容器に付いたまま該容器と共に取り出されることがある。このような現象が生じると、いったんロボットを停止する必要があり、分析装置の連続運転が中断される。本開示に係るサポート管を用いることで、分析装置において用いられる容器を覆うサポート管から容器を容易に取り外すことができ、分析装置は連続的に分析操作を継続することができる。このため、本開示に係るサポート管を用いることは、分析装置の自動化にも寄与する。
【符号の説明】
【0032】
10,10A,10B,10C,10D…サポート管、11,11A,11B,11C,11D…本体、12,12A,12B,12C…側孔、13,13A,13D…底孔、20…容器、30…分析装置、31…トレイ、32…穴、35…ロボット。