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特開2024-2964バルーンカテーテルナビゲーションのためのグラフィカル接触質指標
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002964
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】バルーンカテーテルナビゲーションのためのグラフィカル接触質指標
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
A61B18/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023102348
(22)【出願日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】17/848,158
(32)【優先日】2022-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】クン・シャ
(72)【発明者】
【氏名】アビグドール・ローゼンバーグ
(72)【発明者】
【氏名】エイド・アダウィ
(72)【発明者】
【氏名】トゥーシャー・シャルマ
(72)【発明者】
【氏名】アフメド・アブデラル
(72)【発明者】
【氏名】シャンミン・ツァン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK38
4C160KK63
4C160KK64
4C160MM33
4C160NN01
(57)【要約】
【課題】医療用装置を提供すること。
【解決手段】医療用装置は、複数の電極を含み、患者の体腔内に挿入されて、複数の電極を体腔内の組織に接触させるように構成されたプローブを含む。プロセッサは、複数の電極の各々と組織との間の接触に関して1つ又は2つ以上の個々の接触質指標を評価し、複数の電極の個々の接触質指標に基づいて1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度を計算し、1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度を所定の大域的な接触質基準と比較し、大域的な接触質尺度が所定の大域的な接触質基準を満たすかどうかを示すアイコンをディスプレイスクリーン上に表示するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用装置であって、
複数の電極を備え、患者の体腔内に挿入されて、前記複数の電極を前記体腔内の組織に接触させるように構成された、プローブと、
ディスプレイスクリーンと、
前記複数の電極の各々と前記組織との間の前記接触に関して、1つ又は2つ以上の個々の接触質指標を評価し、前記複数の電極の前記個々の接触質指標に基づいて、1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度を計算し、前記1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度を、所定の大域的な接触質基準と比較し、前記大域的な接触質尺度が前記所定の大域的な接触質基準を満たすかどうかを示すアイコンを、前記ディスプレイスクリーン上に表示するように構成されたプロセッサと、を備える、装置。
【請求項2】
前記1つ又は2つ以上の個々の接触質指標が、前記複数の電極の各々と前記組織との間で測定された電気インピーダンスを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度が、前記測定された電気インピーダンスの平均及び前記測定された電気インピーダンスのバラツキからなる群から選択される少なくとも1つの尺度を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記プローブが、前記電極に関連付けられた複数の温度センサを備え、前記個々の接触質指標が、前記複数の温度センサの各々によって測定された温度を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度が、前記測定された温度の最小値、前記測定された温度の最大値、及び前記測定された温度のバラツキからなる群から選択される少なくとも1つの尺度を含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記所定の大域的な接触質基準は、前記プロセッサが前記1つ又は2つ以上の大域的な質尺度を比較する1つ又は2つ以上の閾値を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記1つ又は2つ以上の閾値が、平均電気インピーダンス閾値、電気インピーダンスバラツキ閾値、温度閾値、及び温度バラツキ閾値からなる群から選択される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記アイコンが、前記大域的な接触質尺度と前記所定の大域的な接触質基準との間の比較に応じて着色される、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記大域的な接触質尺度が前記所定の大域的な接触質基準を満たすときに前記アイコンに第1の色を適用し、前記大域的な接触質尺度が前記所定の大域的な接触質基準を完全に満たさないときに前記アイコンに第2の色を適用し、前記大域的な接触質尺度が所定の安全範囲外にあるときに前記アイコンに第3の色を適用するように構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記プローブが、バルーンを備え、前記複数の電極が、前記バルーンの周囲に配設されている、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記電極が接触している前記組織をアブレーションするのに十分なエネルギーで、高周波(RF)エネルギーを前記複数の電極に同時に印加するように構成されている、電気信号発生器を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記コントローラは、前記RFエネルギーを前記複数の電極に印加している間に、前記複数の電極の各々と前記組織との間の電気インピーダンス及び前記複数の電極の各々における温度を測定し、測定された前記インピーダンス及び前記温度に応じて前記複数の電極の各々のそれぞれのアブレーション質尺度を計算するように構成されている、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記コントローラが、前記複数の電極の各々の前記それぞれのアブレーション質尺度を前記ディスプレイスクリーン上に表示するように構成されている、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
情報を表示する方法であって、
複数の電極を備え、患者の体腔内に挿入されて、前記複数の電極を前記体腔内の組織に接触させるように構成された、プローブを提供することと、
前記プローブが前記体腔内にある間に、前記複数の電極の各々と前記組織との間の前記接触に関して、1つ又は2つ以上の個々の接触質指標を評価することと、
前記複数の電極の前記個々の接触質指標に基づいて、1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度を計算することと、
前記1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度を所定の大域的な接触質基準と比較することと、
前記大域的な接触質尺度が前記所定の大域的な接触質基準を満たすかどうかを示すアイコンをディスプレイスクリーン上に表示することと、を含む、方法。
【請求項15】
前記1つ又は2つ以上の個々の接触質指標を評価することが、前記複数の電極の各々と前記組織との間の電気インピーダンスを測定することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度を計算することが、前記測定された電気インピーダンスの平均及び前記測定された電気インピーダンスのバラツキからなる群から選択される少なくとも1つの尺度を計算することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ又は2つ以上の個々の接触質指標を評価することが、前記電極におけるそれぞれの温度を測定することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度を計算することが、前記測定された温度の最小値、前記測定された温度の最大値、及び前記測定された温度のバラツキからなる群から選択される少なくとも1つの尺度を計算することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度を比較することが、前記1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度を1つ又は2つ以上の閾値と比較することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記1つ又は2つ以上の閾値が、平均電気インピーダンス閾値、電気インピーダンスバラツキ閾値、温度閾値、及び温度バラツキ閾値からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記アイコンを表示することが、前記大域的な接触質尺度と前記所定の大域的な接触質基準との間の比較に応じて前記アイコンを着色することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記アイコンを着色することは、前記大域的な接触質尺度が前記所定の大域的な接触質基準を満たすときに前記アイコンに第1の色を適用することと、前記大域的な接触質尺度が前記所定の大域的な接触質基準を完全に満たさないときに前記アイコンに第2の色を適用することと、前記大域的な接触質尺度が所定の安全範囲外にあるときに前記アイコンに第3の色を適用することと、を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記プローブを提供することが、バルーンを提供することと、前記バルーンの周囲に前記複数の電極を配設することと、を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記電極が接触している前記組織をアブレーションするのに十分なエネルギーで、高周波(RF)エネルギーを前記複数の電極に同時に印加することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記RFエネルギーを前記複数の電極に印加している間に、前記複数の電極の各々と前記組織との間の電気インピーダンス及び前記複数の温度センサの各々における温度を測定することと、測定された前記インピーダンス及び前記温度に応じて前記複数の電極の各々のそれぞれのアブレーション質尺度を計算することと、を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記複数の電極の各々の前記それぞれのアブレーション質尺度を前記ディスプレイスクリーン上に表示することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記体腔内の前記プローブの位置合わせに関する1つ又は2つ以上の臨床接触質尺度を計算し、表示することを含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、医療用プローブを監視することに関し、具体的には、グラフィカルユーザインターフェース(graphical user interface、GUI)を使用して、心臓多電極電気生理学的感知及びアブレーションカテーテルを監視することに関する。
【背景技術】
【0002】
高周波アブレーション(radio frequency ablation、RFA)は、軟組織アブレーション用技術であり、アブレーションは、カテーテル又は薄型プローブを組織内に挿入することによって行われ、電磁放射線がカテーテルの先端から放射される。RFAでは、電流によって発生した熱が組織をアブレーションするように、高電力交流電流が組織に印加される。RFAは、例えば、心臓、腫瘍、及び他の機能不全組織の電気伝導経路をアブレーションする際に印加される。RFAは、典型的には、0~200Vの範囲の振幅及び350~500kHzの範囲の周波数を有する電流を使用する。
【0003】
不可逆的エレクトロポレーション(irreversible electroporation、IRE)は、組織と接触している、又は組織にごく近接しているプローブを介して、強い電界の短パルスを印加して細胞膜に恒久的、それゆえ致死的なナノ細孔を形成し、それにより細胞恒常性(内部の物理的状態及び化学的状態)を妨害する別の軟組織アブレーション技術である。IRE後の細胞死は、アポトーシス(プログラムされた細胞死)に起因し、全ての他の熱又は放射線ベースのアブレーション技術におけるような壊死(細胞自体の酵素の作用を通じて細胞の破壊をもたらす細胞傷害)に起因しない。IREは一般的に、正確さ、並びに細胞外マトリックス、血流、及び神経の保全が重要な領域における腫瘍のアブレーションで使用される。
【0004】
米国特許第11,006,902号は、ディスプレイ、入力デバイス、及びプロセッサを含むシステムを記載している。プロセッサは、多電極カテーテルの拡張可能なフレーム上に配置された多数の電極を示して、どの電極が活性であり、どの電極が非活性であるかを表示するGUIを、ユーザに対してディスプレイ上に提示するように、構成されている。プロセッサは、(a)単一電極選択モードとファン選択モードのどちらかを選択する第1のユーザ入力を、入力デバイスを介して受信し、(b)単一電極選択モードにある場合に、電極のうちの個々の電極の活性化又は非活性化を指定する第2のユーザ入力を、入力デバイスを介して受信し、(c)ファン選択モードにある場合に、電極のうちの2つ以上を含む角度セクタの活性化又は非活性化を指定する第3のユーザ入力を、入力デバイスを介して受信し、第1のユーザ入力、第2のユーザ入力、及び第3のユーザ入力に応答して電極を活性化及び非活性化するように、更に構成されている。
【0005】
米国特許出願公開第2021/089569号は、解剖学的空洞内のバルーンの体積位置の視覚化を生成し、出力することによって、バルーン療法処置を誘導するためのデバイス、システム、及び方法について記載している。例えば、一実施形態では、プロセッサ回路は、複数の電極を制御して、解剖学的空洞内の電磁場を検出し、検出された電磁場及びバルーンに関連付けられた幾何学的パラメータ(例えば、バルーンのサイズ、形状)に基づいて、解剖学的空洞内のバルーンの場所を決定するように構成されている。プロセッサ回路は、治療用バルーンの配置を誘導するために、バルーンの視覚化の信号表現を出力する。いくつかの実施形態では、視覚化は、解剖学的空洞のマップと共にディスプレイに出力される。視覚化は、解剖学的空洞内のバルーンの場所のリアルタイムビューを提供するために、バルーンの検出された動きに基づいて更新される場合がある。
【0006】
米国特許第6,625,482号は、身体内に配備された多電極カテーテルによって収集されたデータを解釈する医療関係者を支援するためのグラフィカルユーザインターフェース(GUI)について記載している。GUIは、多電極カテーテルの画像を生成及び表示する。適切な制御を操作することによって、医療関係者は、X線透視装置に見られる実際の多電極カテーテルの配向と一致するまで、表示された画像の配向を変更することができる。その後、医療関係者は、GUI生成画像を参照することによって、カテーテルの相対位置及び配向を決定することができる。カテーテルによって回収されたデータを解釈することを補助するために、個々の電極及びスプラインは強調され、ラベル付けされる。特定の種類の生理学的波形を回収する電極は、自動的に識別され、強調され得る。データの解釈時に更なる支援が望まれる場合は、コメント及び解剖学的ランドマークを挿入することができる。様々な仮想蛍光角度からのビューを得ることができ、様々な画像を記録し、記憶し、印刷することができる。ロービング電極の位置も示すことができる。
【0007】
以下の本開示の実施例の詳細な説明を図面と一緒に読むことで、本開示のより完全な理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施例による、単極RFA処置の過程における医療装置の概略描写図である。
図2A】本開示の一実施例による、ディスプレイスクリーン上のグラフィカルウィンドウの概略図である。
図2B】本開示の一実施例による、ディスプレイスクリーン上のグラフィカルウィンドウの概略図である。
図2C】本開示の一実施例による、ディスプレイスクリーン上のグラフィカルウィンドウの概略図である。
図2D】本開示の一実施例による、ディスプレイスクリーン上のグラフィカルウィンドウの概略図である。
図3A】本開示の別の実施例による、ディスプレイスクリーン上のグラフィカルウィンドウの概略図である。
図3B】本開示の別の実施例による、ディスプレイスクリーン上のグラフィカルウィンドウの概略図である。
図4】本開示の一実施例による、アブレーション処置中に大域的な質指標を表示するための方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一部の心臓アブレーション処置は、バルーンカテーテルを使用する。バルーンカテーテルは、その遠位端にあるバルーンと、バルーンの表面の周りに配列された電極とを有する。バルーンを心室などの体腔内で膨張させることによって、電極をアブレーションされる組織に接触させる。代替的に、バスケットカテーテル又はラッソーカテーテルなどの他の種類のカテーテルが使用されてもよい。
【0010】
アブレーションは、アブレーション電流が同一のカテーテル上の1つのアブレーション電極からの別のアブレーション電極へと流れる双極モード、又はアブレーション電流がカテーテル上のアブレーション電極と、外部の電極すなわち「戻りパッチ」との間を流れる単極モードのいずれかで行われ得る。戻りパッチは、典型的には、対象の身体表面、例えば対象の胴体の皮膚上などに固定され、RF信号発生器への電気的戻り接続を有する。例えば、心房細動を治療するために、バルーンカテーテルを使用して、患者の左心房内の1つ又は2つ以上の肺静脈(pulmonary vein、PV)の小孔をアブレーションすることができる。正確に実行されたアブレーションは、小孔の周囲の周りに連続した損傷を生成し、したがって、心房細動を促進する異常な電気的活動の大部分が始まる肺静脈から左心房を電気的に絶縁する。
【0011】
しかしながら、アブレーション処置を実行する医師が、バルーンの全ての電極が小孔の組織と良好に接触した状態で、バルーンカテーテルが小孔に適切に位置合わせされていること、すなわち、バルーンがPV小孔を最適に封止していることを確認することは困難な場合がある。電極のうちの1つ又は2つ以上が、組織と十分に接触していない場合(依然として、組織に接触しているか、又はほぼ接触している場合であっても)、小孔の周りのアブレーションによって形成された損傷内に間隙が存在する場合があり、したがって、損傷は、左心房を肺静脈から完全に絶縁しないであろう。
【0012】
より極端な場合には、電極は組織に全く接触せず、むしろ電極と組織との間の血液の層に浸されることがある。この場合、この特定の電極を通じたアブレーションは、その近傍の血液を凝固させて血餅にする場合があり、次いで、この血餅は患者の循環系内を移動して、危険な血栓症を引き起こす場合がある。
【0013】
したがって、アブレーションの前に、バルーンカテーテルの電極の各々と小孔の組織との間の接触の質に関して、医師のための明確な表示が必要である。この表示は、バルーン電極接触及びバルーン位置合わせの大域的な質、すなわち、バルーンがPVと同軸に位置合わせされていることを医師に保証するはずである。
【0014】
本明細書に説明される実施例のうちのいくつかは、アブレーションの直前に、アブレーション前段階におけるバルーンカテーテルの接触の質を表示するグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を提供することによって、この問題に対処する。追加の実施例は、アブレーション後段階において達成されたアブレーションの質を示すGUIを提供する。
【0015】
アブレーション前段階では、アブレーションシステムは、各電極と患者の組織との間の電気インピーダンス、及び各電極における局所温度などのいくつかの個々の接触質指標を測定し、計算する。これらの個々の接触質指標は、測定された電気インピーダンスの平均及び/又は測定された電気インピーダンスのバラツキなど、1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度に組み合わされる。他の大域的な接触質尺度は、測定された温度の最小値、測定された温度の最大値、及び/又は測定された温度のバラツキを含んでもよい。プロセッサは、これらの大域的な接触質尺度を、例えば、1つ又は2つ以上の閾値を含む所定の大域的な接触質基準と比較する。この比較の結果は、バルーンカテーテルの接触の大域的な質を示す。
【0016】
GUIは、バルーンカテーテルの画像をディスプレイ上に提示し、例えば、緑色、黄色、及び赤色の「交通信号」色を使用して、接触の大域的な質を示すアイコンをこの画像上に重ね合わせる。(代替的に、他の色又は陰影付けスキームが使用されてもよい。)大域的な接触質尺度の全てが大域的な接触質基準を満たす場合、アイコンは緑色であり、バルーンカテーテルが明らかに小孔内に適切に位置合わせされ、電極が組織と適切に接触していることを示す。これらの条件の全てが満たされない場合、カテーテルは、おそらく、小孔において位置ずれしており、電極のうちの少なくともいくつかは、良好な接触の基準を満たさず、これらの電極によって満足のいくアブレーションが行われる見込みはない。この場合、黄色のアイコンが表示される。大域的な接触質尺度のうちの少なくとも1つが所定の「安全」閾値を超える場合、患者への潜在的危険のためアブレーションを実行しないように忠告するために、赤色のアイコンが表示される。加えて、GUIは、黄色又は赤色の位置合わせアイコンが現れるときに、電極のうちのどれが小孔と不十分に接触しているか、又は接触していないかを示してもよい。
【0017】
アブレーション後段階では、アブレーションシステムは、アブレーション前段階と同じ個々の接触質指標を測定し、追跡する。アブレーション中のこれらのパラメータの値は、アブレーションが成功したかどうか、又はアブレーションがいずれかの電極で失敗したかどうかを確立するために、所定の閾値と比較される。GUIは、アブレーション前段階と同様に、電極の各々におけるアブレーションの成功又は失敗を示すアイコンと共にバルーンカテーテルの画像を表示する。
【0018】
開示された例では、複数の電極を備えるプローブが、複数の電極を体腔内の組織と接触させるように、患者の体腔内に挿入される。プロセッサは、複数の電極の各々と組織との接触について1つ又は2つ以上の個々の接触質指標を評価し、電極の接触質指標に基づいて、1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度を計算し、大域的な接触質尺度を所定の大域的な接触質基準と比較する。プロセッサは更に、大域的な接触質尺度が所定の大域的な接触質接触基準を満たすかどうかを示すアイコンをディスプレイスクリーン上に表示する。
【0019】
システムの説明
図1は、本開示の一実施例によるRFA処置の過程における医療装置20の概略の絵画図である。医師22が、アブレーションカテーテル26(カテーテルの更なる詳細は、以下で説明される)を使用して、患者24にRFA処置を行う。図に示される実施例は、バルーン32を使用した、心臓27の肺静脈の小孔21へのRFA処置を指すものである。代替的実施例においては、RFA処置を、複数の電極を有する他の種類のカテーテルを使用して実行してもよく、本明細書を検討することによって当業者にとって明らかになるように、RFA処置を、心臓27のみならず、他の臓器及び組織においても実行することができる。更に代替的に、装置20は、IREアブレーションにおいて、又は組織に同時に接触するために複数の電極を使用する他の処置において、必要な変更を加えて使用されてもよい。
【0020】
差し込み図36に示されるように、アブレーションカテーテル26は、シャフト28及び遠位アセンブリ30を備え、シャフトは、遠位アセンブリを患者24の体腔内、この場合には心臓27の心内腔内へと挿入するための挿入チューブとして機能する。遠位アセンブリ30は、バルーンの表面の周りに配列された複数のアブレーション電極34を有するバルーン32を備える。本実施例では、遠位アセンブリ30はまた、電極34の領域内又はそれに隣接して温度センサ33を備える。遠位アセンブリ30と、シャフト28の一部とが、差し込み図38にも示されている。代替的実施例において、遠位アセンブリ30は、バルーンとは異なる構造体を含み得る。
【0021】
RFAの2つのモード(単極RFA及び双極RFA)が使用されてもよい。単極RFAでは、アブレーション電流が、アブレーション電極34と「戻りパッチ」66と称される外部電極との間を流れ、戻りパッチは、患者24、典型的には対象の胴体の皮膚と、電気信号発生器44との間に、身体の外部に連結されている。双極RFAでは、電流は、電極34の選択された対の間を流れる。
【0022】
コントローラ42及び電気信号発生器44は、典型的にはコンソール46内に存在する。コントローラ及び信号発生器はそれぞれ、1つ又は複数の回路構成要素を備え得る。カテーテル26は、RF信号を信号発生器44から遠位アセンブリ30に伝える、ポート又はソケットなどの電気インターフェース48を介して、コンソール46に接続される。
【0023】
コントローラ42は、アブレーション処置の前及び/又はその処置中に、医師22(又は別のオペレータ)から、処置のための設定パラメータを受信する。例えば、キーボード、マウス、又はタッチスクリーン(図示せず)などの、1つ以上の適切な入力デバイスを使用して、医師22は、電極34の選択されたセグメントに印加されるRFA信号の、電気的及び時間的パラメータを定める。コントローラ42は、RFAを実行するために、好適な制御信号を信号発生器44に渡す。
【0024】
コントローラ42は、個々の接触質指標として、(例えば、それぞれの電極とリターンパッチ66との間のインピーダンスを測定することによって)各電極34と心臓27の組織との間の電気インピーダンスを測定する。コントローラ42はまた、更なる個々の接触質指標として、それぞれの温度センサ33を介して各電極34における温度を測定する。コントローラ42は、ディスプレイスクリーン58上にバルーン30の画像60を表示し、アブレーション処置の前及び最中の測定されたインピーダンス及び温度に基づいて、以下に詳述されるように、電極の組織との接触の大域的な質を反映する1つ又は2つ以上のアイコンをバルーン30の画像60上に重ね合わせる。
【0025】
コントローラ42は、任意の適切な追跡技術を使用して、RFA処置の最中及び電気生理学的信号取得中の、電極34のそれぞれの位置を追跡してもよい。例えば、遠位アセンブリ30が、1つ以上の電磁位置センサ(図示せず)を備え得るが、その電磁位置センサは、1つ以上の磁場発生器50が発生させる外部磁場の存在下で、センサの位置によって変化する信号を出力する。これらの信号に基づいて、コントローラ42は、電極34の位置座標を計算してもよい。磁場発生器50は、ケーブル52及びインターフェース54を介して、コンソール46に接続される。代替的又は追加的に、各電極34について、コントローラ42は、電極と、患者24に様々な異なる場所で連結された複数の外部電極56との間での、それぞれのインピーダンスを確認し、次いで、これらのインピーダンス間の比率に基づいて、電極の場所を計算してもよい。コントローラは、例えばその開示が参照としてり本明細書に組み込まれる米国特許第8,456,182号に記載されているように、電磁式追跡法及びインピーダンスに基づく追跡法の両方を使用してもよい。
【0026】
コントローラ42及び電気信号発生器44は、アナログ素子及びデジタル素子の両方を備える。したがって、コントローラ42は、複数の入力部を有するアナログフロントエンドを備え、それらの入力部は、本明細書に上述したように、信号発生器44によって電極34の各々に印加されるRFアブレーション信号を監視し、電気インピーダンス及び温度を測定するためのそれぞれのアナログデジタル変換器(analog-to-digital converter、ADC)を備える。コントローラ42は、インピーダンス及び温度の測定値を記憶するためのメモリ43を更に備える。コントローラ42はまた、複数のデジタル出力回路を更に備え、これらの複数のデジタル出力回路は、RF信号を調整するためのコマンドを信号発生器44へと送信するためのものである。
【0027】
電気信号発生器44は、典型的には、アブレーション用の高周波(RF)信号を生成し、かつ増幅するためのRFアナログ回路と、コントローラ42からのデジタル制御信号を受信するためのデジタル入力回路とを備える。代替的には、制御信号をコントローラ42から電気信号発生器44へと、アナログの形態で伝えることも、コントローラ及び信号発生器がそれに応じて構成されているならば可能である。
【0028】
典型的には、本明細書に記載されるコントローラ42の機能は、少なくとも部分的にソフトウェアに実装される。例えば、コントローラ42は、プログラムされたデジタルコンピューティングデバイスであって、少なくとも中央演算処理ユニット(central processing unit、CPU)とランダムアクセスメモリ(random-access memory、RAM)とを備えるデジタルコンピューティングデバイスを備えることができる。ソフトウェアプログラムを含むプログラムコード、及び/又はデータは、CPUによる実行及び処理のためにRAMに読み込まれる。プログラムコード及び/又はデータは、例えば、ネットワークを介して、電子形態でコントローラにダウンロード可能である。代替的又は追加的に、プログラムコード及び/又はデータは、磁気メモリ、光メモリ、又は電子メモリなどの非一時的の有形の媒体に提供されかつ/又は記憶され得る。このようなプログラムコード及び/又はデータがコントローラに提供されると、本明細書に記載のタスクを実行するように構成されたマシン又は専用コンピュータが実現される。
【0029】
RFA処置の開始時に、医師22は、カテーテル26を、バルーン32が畳み込まれた構成で、シース62を通して心臓27内に挿入する。カテーテルが出た後にのみ、シースは、シャフト28を通ってバルーン内に流入する流体で、その意図された機能形状に膨張されたバルーンである。この機能的形状が、差し込み図36及び差し込み図38に示されている。畳んだ状態のバルーン32を収容することにより、シース62は、バルーンが標的となる位置へともたらされるまでの間に引き起こされ得る血管の外傷を、最小限に抑える役割も果たす。医師22は、カテーテルの近位端の付近にあるマニピュレータ64を使用して、かつ/又はシース62の偏向を使用して、カテーテルを操作することで、カテーテル26を患者24の心臓27内の標的位置へと誘導する。医師22は、遠位アセンブリ30を心臓27の肺静脈の小孔21の組織と接触させる。
【0030】
遠位アセンブリ30が、アブレーション前段階において組織と接触すると、コントローラ42は、自動的に、又は医師22からのコマンドのいずれかで、電極34のインピーダンス及び温度を測定する。これらの測定に基づいて、コントローラ42は、電極にわたる1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度(例えば、平均インピーダンス、インピーダンスバラツキ、最低温度及び最高温度、並びに/又は温度バラツキ)を計算する。コントローラ42は、これらの大域的な接触質尺度を、1つ又は2つ以上の閾値を含む所定の大域的な接触質基準と比較し、比較の結果に基づいて、以下の図2A及び2Bで更に詳述されるように、小孔21内の遠位アセンブリの接触の大域的質を示すアイコンを表示する。表示された接触の大域的な質に基づいて、医師22は、電極34と小孔21の組織との間のより良好な接触を達成するために、切除を進めるか、又は遠位アセンブリ30の位置合わせを改善するかを決定する。医師22が位置合わせに満足すると、医師22は、コントローラ42の制御下で電気信号発生器44を作動させてRFA信号を生成することによってアブレーションを開始し、RFA信号は、カテーテル26を通り、異なるそれぞれのワイヤを通って電極34に運ばれる。
【0031】
アブレーション中、コントローラ42は、それぞれの電極34の電気インピーダンス及び温度を測定し、それらをメモリ43に記憶する。アブレーションを完了した後、コントローラ42は、以下の図3A及び図3Bで更に詳述するように、アブレーションの質の表示を画面58上に表示する。
【0032】
図2A図2Dは、本開示の一実施例による、アブレーションカテーテル26の遠位端30の心臓27の小孔21との接触の大域的な質を示す、ディスプレイスクリーン58上のグラフィカルウィンドウの概略図である。
【0033】
図2A図2Cの各々は、電極34を有するバルーン32の概略軸方向ビュー100を示す。表示された例では、バルーン32は、ビュー100において1~10と番号付けされた10個の電極34を備える。(代替例では、様々な数の電極を有する他の種類のカテーテルが使用されてもよい。)軸方向ビュー100は、軸方向図の中心に、それぞれ図2A、2B、及び2Cのアイコン102、104及び106を更に含み、遠位端30の接触の質を示す。接触の質は、本実施例では、電極34にわたるインピーダンス範囲及びインピーダンスバラツキ、並びに電極にわたる電極温度及び温度バラツキをグループ化することによって決定され、以下の表1に示されるように、大域的な接触質尺度として役立つ。大域的な接触質尺度は、表1に更に詳述される、インピーダンス及び温度の測定値のための閾値の組み合わせを含む、所定の大域的な接触質基準と比較される。大域的な接触質基準に対する大域的な接触質尺度の比較は、表1に示されるように、大域的な接触質を決定する。
【0034】
【表1】
【0035】
緑色のアイコン102(図2A)は、全ての電極34が小孔21の組織と適切に接触しており、医師22がRFアブレーションを進めることができることを示す。電極34の全てを表すアイコンは、それらが組織と良好に接触していることを示す境界を有する。
【0036】
黄色のアイコン104(図2B)は、電極34のうちの1つ又は2つ以上が良好な接触のための条件を満たさないこと、及びアブレーションを開始する前に、遠位端30の位置合わせをチェックすることが医師22に推奨されることを示す。この推奨は、アイコン104内の「チェックせよ」などの書かれたメッセージで更に強調されてもよい。電極3、8及び9を表すアイコンには境界が存在せず、これらの電極に問題があることを示している。
【0037】
赤色のアイコン106(図2C)は、少なくとも1つの電極34が、電極と組織との間に血液の層を伴って組織から分離されていることを示す。この状況においてRFアブレーションを実行することは、電極を取り囲む血液の凝固及び循環系における付随する血餅を引き起こし得るので、医師22は、アブレーションを進めるのではなく、危険な状況を防ぐために遠位端30を再位置合わせするように指示される。アイコン106内の「再位置合わせせよ」などの警告テキストは、要求を更に強調する。
【0038】
図2Dは、それぞれのインピーダンス軸110及び温度軸112に対するバー114及び116として示される、電極の各々の測定されたインピーダンス及び温度の棒グラフ108を示す。水平の黒/白バー118は、電極34の数を含み、どの電極が組織と適切に接触していないかを示す(白=良好な接触、黒=不良な接触。)したがって、表示されたチャート108では、電極3、8、及び9は、組織と良好な接触を有していない。この情報は、全ての電極34に対して良好な接触を達成するために、医師22が遠位端30を再位置合わせするのを支援してもよい。
【0039】
図3A及び図3Bは、本開示の一実施例による、完了したRFアブレーション処置の質を示すディスプレイスクリーン58上のグラフィカルウィンドウの概略図である。
【0040】
アブレーション処置中、コントローラ42は、各電極34のインピーダンス値及び温度値を連続的に測定し、メモリ43に記憶する。アブレーションの終了時に、コントローラ42は、記憶されたインピーダンス及び温度データを分析し、以下の表2に示される基準に基づいて、所与の電極におけるアブレーションが、容認できない損傷、すなわち、組織の深部に到達し、したがって、その後壁などの肺静脈のいくつかの領域に危険をもたらし得る損傷を生成した疑いがあるかどうかを決定する。
【0041】
【表2】
【0042】
コントローラ42は、分析の結果をスクリーン58上のGUIに2つの形式で表示する(図3A及び図3B):
図3Aは、図2A図2Cと同様に、電極34を有するバルーン32の概略軸方向ビュー200を示す。アブレーション中の温度が55℃を超えたこれらの電極は、赤色に着色されている。
【0043】
図3Bは、それぞれのインピーダンス軸204及び温度軸206に対するアブレーション中の電極34の各々の測定されたインピーダンス及び温度の範囲の棒グラフ202を示す。したがって、例えば、電極#1に関して、アブレーションの開始時の温度は、バー208の上部として示され、アブレーション中の最大温度は、バー210の頂点として示される。アブレーション中の電極#1のインピーダンス範囲は、開始インピーダンスをバー212の頂点とし、終了インピーダンスを棒214の頂点として示す。
【0044】
インピーダンス及び温度範囲に加えて、電極の各々に印加されるRF電力が電力軸216に対して示されている。したがって、例えば、電極#1に印加される電力は、バー218として示される。
【0045】
図3Aにおいて、アブレーション中に所定の閾値(例えば、表2に列挙されるような)を超えるインピーダンス及び温度のバラツキを経験したそれらの電極をマーキングすることによって、マーキングは、図3Bのグラフィカル表示と共に、医師22が特定の電極におけるアブレーションが疑わしいかどうかを判断するのを支援してもよい。例えば、図示される実施形態では、電極#1及び#2は、図3Bに見られる大きな温度バラツキを示すために、図3A及び3Bの両方においてマーキングされる(陰影を付けられるか、又は着色される)。代替的に、電極は、電極ごとにインピーダンス低下又は温度上昇の異なるそれぞれの値を表す異なる陰影によってマーキングされてもよい。これは、アブレーション処置が小孔21の周りに許容可能な損傷を生成することに成功したかどうかを医師22が判断するのを更に支援してもよい。
【0046】
図4は、本開示の一実施例による、アブレーション処置中に大域的な質指標を表示するための方法を概略的に示すフローチャート300である。
【0047】
アブレーション処置は、開始ステップ302で開始する。挿入ステップ304で、カテーテル26を患者27に挿入する。位置合わせステップ306において、カテーテル26の遠位端30は、全ての電極34を小孔の組織と接触させるように、小孔21内で位置合わせされる。アブレーション前測定ステップ308において、コントローラ42は、各電極34のインピーダンス及び温度を測定する。アブレーション前表示ステップ310において、コントローラ42は、上記の図2A~2Dに示されるように、接触の大域的な質を計算し、画面58上に表示する。加えて、コントローラ42はまた、心臓27におけるカテーテル26の位置合わせに関する1つ又は2つ以上の臨床的接触質尺度を計算し、表示してもよい。例えば、コントローラ42は、バルーン32の軸が、小孔がアブレーションされる肺静脈の軸とどの程度良好に位置合わせされるかを評価してもよい。この位置合わせは、例えば、蛍光透視法又は他の撮像モダリティによって評価されてもよい。
【0048】
コンタクトレビューステップ312において、医師22は、コンタクトの大域的な質をレビューする。接触質の異なるオプション、緑、黄、及び赤が、それぞれのボックス314、320、及び318に示されている。接触の大域的な質が「緑色」(図2A)である場合、医師22は、アブレーション開始ステップ316に直接進む。接触の大域的な質が「赤」である場合(図2C)、医師は、潜在的に危険な状態に起因してアブレーションを開始せず、むしろ位置合わせステップ306に戻る。接触の大域的な質が「黄色」(図2B)である場合、医師22は、決定ステップ322において、場合によっては個々の電極34の状態及び接触質を示す棒グラフ108(図2D)の助けを借りて、位置合わせステップ306に戻ることによって遠位端30を再位置合わせするか、又はアブレーション開始ステップ316においてアブレーションを進めるかを決定する。
【0049】
アブレーション後開始ステップ316において、アブレーション中、コントローラ42は、各電極34のインピーダンス値及び温度値を連続的に測定し、メモリ43に記憶する。アブレーションは、アブレーション終了ステップ326で終了する。アブレーション後表示ステップ328において、コントローラ42は、図3A及び3Bに詳述されるように、アブレーションの電極ごとの質を計算し、スクリーン58上に表示する。アブレーションやり直し決定ステップ330において、医師22は、ステップ328において表示された結果に基づいて、アブレーションをやり直すべきかどうかを決定する。医師22がアブレーションをやり直すことを決定した場合、医師22は位置合わせステップ306に戻る。医師22がアブレーションの結果に満足した場合、医師22は終了ステップ332において処置を終了する。
【実施例0050】
実施例1.医療用装置(20)であって、複数の電極(34)を備え、患者(24)の体腔内に挿入されて、複数の電極を体腔内の組織に接触させるように構成されたプローブ(26)と、ディスプレイスクリーン(58)と、複数の電極の各々と組織との間の接触に関して、1つ又は2つ以上の個々の接触質指標を評価し、複数の電極の個々の接触質指標に基づいて、1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度を計算し、1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度を、所定の大域的な接触質基準と比較し、大域的な接触質尺度が所定の大域的な接触質基準を満たすかどうかを示すアイコン(102、104、106)を、ディスプレイスクリーン上に表示するように構成されたプロセッサ(42)と、を備える、装置。
【0051】
実施例2.1つ又は2つ以上の個々の接触質指標が、複数の電極の各々と組織との間で測定された電気インピーダンスを含む、実施例1に記載の装置。
【0052】
実施例3.1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度が、測定された電気インピーダンスの平均及び測定された電気インピーダンスのバラツキからなる群から選択される少なくとも1つの尺度を含む、実施例2に記載の装置。
【0053】
実施例4.プローブが、電極に関連付けられた複数の温度センサを備え、個々の接触質指標が、複数の温度センサの各々によって測定された温度を含む、実施例1に記載の装置。
【0054】
実施例5.1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度が、測定された温度の最小値、測定された温度の最大値、及び測定された温度のバラツキからなる群から選択される少なくとも1つの尺度を含む、実施例4に記載の装置。
【0055】
実施例6.所定の大域的な接触質基準は、プロセッサが1つ又は2つ以上の大域的な質尺度を比較する1つ又は2つ以上の閾値を含む、実施例1に記載の装置。
【0056】
実施例7.1つ又は2つ以上の閾値が、平均電気インピーダンス閾値、電気インピーダンスバラツキ閾値、温度閾値、及び温度バラツキ閾値からなる群から選択される、実施例6に記載の装置。
【0057】
実施例8.アイコンが、大域的な接触質尺度と所定の大域的な接触質基準との間の比較に応じて着色される、実施例1に記載の装置。
【0058】
実施例9.プロセッサは、大域的な接触質尺度が所定の大域的な接触質基準を満たすときにアイコンに第1の色を適用し、大域的な接触質尺度が所定の大域的な接触質基準を完全に満たさないときにアイコンに第2の色を適用し、大域的な接触質尺度が所定の安全範囲外にあるときにアイコンに第3の色を適用するように構成されている、実施例8に記載の装置。
【0059】
実施例10.プローブが、バルーンを備え、複数の電極が、バルーンの周囲に配設されている、実施例1に記載の装置。
【0060】
実施例11.電極が接触している組織をアブレーションするのに十分なエネルギーで、高周波(RF)エネルギーを複数の電極に同時に印加するように構成されている、電気信号発生器を備える、実施例1に記載の装置。
【0061】
実施例12.コントローラは、RFエネルギーを複数の電極に印加している間に、複数の電極の各々と組織との間の電気インピーダンス及び複数の電極の各々における温度を測定し、測定されたインピーダンス及び温度に応じて複数の電極の各々のそれぞれのアブレーション質尺度を計算するように構成されている、実施例11に記載の装置。
【0062】
実施例13.コントローラが、複数の電極の各々のそれぞれのアブレーション質尺度をディスプレイスクリーン上に表示するように構成されている、実施例12に記載の装置。
【0063】
実施例14.情報を表示する方法であって、複数の電極(34)を備え、患者(24)の体腔内に挿入されて、複数の電極を体腔内の組織に接触させるように構成された、プローブ(26)を提供することと、プローブが体腔内にある間に、複数の電極の各々と組織との間の接触に関して、1つ又は2つ以上の個々の接触質指標を評価することと、複数の電極の個々の接触質指標に基づいて、1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度を計算することと、1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度を所定の大域的な接触質基準と比較することと、大域的な接触質尺度が所定の大域的な接触質基準を満たすかどうかを示すアイコン(102、104、106)をディスプレイスクリーン(58)上に表示することと、を含む、方法。
【0064】
本開示の様々な特徴が、明確性のために別個の実施例の文脈において記載されているが、これらはまた、単一の実施例に組み合わされて提供されてもよい。逆に、簡潔にするために単一の実施例の文脈において記載されている本開示の様々な特徴が、別々に又は任意の好適な部分的組み合わせで提供されてもよい。
【0065】
上に記載される実施例は例として挙げたものであり、本開示は本明細書の上記で具体的に図示及び記載されるものに限定されない点が理解されよう。むしろ、本開示の範囲は、本明細書の上記した様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の記載を読むと当業者に着想されるであろう、先行技術に開示されていないその変形及び修正を含む。
【0066】
〔実施の態様〕
(1) 医療用装置であって、
複数の電極を備え、患者の体腔内に挿入されて、前記複数の電極を前記体腔内の組織に接触させるように構成された、プローブと、
ディスプレイスクリーンと、
前記複数の電極の各々と前記組織との間の前記接触に関して、1つ又は2つ以上の個々の接触質指標を評価し、前記複数の電極の前記個々の接触質指標に基づいて、1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度を計算し、前記1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度を、所定の大域的な接触質基準と比較し、前記大域的な接触質尺度が前記所定の大域的な接触質基準を満たすかどうかを示すアイコンを、前記ディスプレイスクリーン上に表示するように構成されたプロセッサと、を備える、装置。
(2) 前記1つ又は2つ以上の個々の接触質指標が、前記複数の電極の各々と前記組織との間で測定された電気インピーダンスを含む、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度が、前記測定された電気インピーダンスの平均及び前記測定された電気インピーダンスのバラツキからなる群から選択される少なくとも1つの尺度を含む、実施態様2に記載の装置。
(4) 前記プローブが、前記電極に関連付けられた複数の温度センサを備え、前記個々の接触質指標が、前記複数の温度センサの各々によって測定された温度を含む、実施態様1に記載の装置。
(5) 前記1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度が、前記測定された温度の最小値、前記測定された温度の最大値、及び前記測定された温度のバラツキからなる群から選択される少なくとも1つの尺度を含む、実施態様4に記載の装置。
【0067】
(6) 前記所定の大域的な接触質基準は、前記プロセッサが前記1つ又は2つ以上の大域的な質尺度を比較する1つ又は2つ以上の閾値を含む、実施態様1に記載の装置。
(7) 前記1つ又は2つ以上の閾値が、平均電気インピーダンス閾値、電気インピーダンスバラツキ閾値、温度閾値、及び温度バラツキ閾値からなる群から選択される、実施態様6に記載の装置。
(8) 前記アイコンが、前記大域的な接触質尺度と前記所定の大域的な接触質基準との間の比較に応じて着色される、実施態様1に記載の装置。
(9) 前記プロセッサは、前記大域的な接触質尺度が前記所定の大域的な接触質基準を満たすときに前記アイコンに第1の色を適用し、前記大域的な接触質尺度が前記所定の大域的な接触質基準を完全に満たさないときに前記アイコンに第2の色を適用し、前記大域的な接触質尺度が所定の安全範囲外にあるときに前記アイコンに第3の色を適用するように構成されている、実施態様8に記載の装置。
(10) 前記プローブが、バルーンを備え、前記複数の電極が、前記バルーンの周囲に配設されている、実施態様1に記載の装置。
【0068】
(11) 前記電極が接触している前記組織をアブレーションするのに十分なエネルギーで、高周波(RF)エネルギーを前記複数の電極に同時に印加するように構成されている、電気信号発生器を備える、実施態様1に記載の装置。
(12) 前記コントローラは、前記RFエネルギーを前記複数の電極に印加している間に、前記複数の電極の各々と前記組織との間の電気インピーダンス及び前記複数の電極の各々における温度を測定し、測定された前記インピーダンス及び前記温度に応じて前記複数の電極の各々のそれぞれのアブレーション質尺度を計算するように構成されている、実施態様11に記載の装置。
(13) 前記コントローラが、前記複数の電極の各々の前記それぞれのアブレーション質尺度を前記ディスプレイスクリーン上に表示するように構成されている、実施態様12に記載の装置。
(14) 情報を表示する方法であって、
複数の電極を備え、患者の体腔内に挿入されて、前記複数の電極を前記体腔内の組織に接触させるように構成された、プローブを提供することと、
前記プローブが前記体腔内にある間に、前記複数の電極の各々と前記組織との間の前記接触に関して、1つ又は2つ以上の個々の接触質指標を評価することと、
前記複数の電極の前記個々の接触質指標に基づいて、1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度を計算することと、
前記1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度を所定の大域的な接触質基準と比較することと、
前記大域的な接触質尺度が前記所定の大域的な接触質基準を満たすかどうかを示すアイコンをディスプレイスクリーン上に表示することと、を含む、方法。
(15) 前記1つ又は2つ以上の個々の接触質指標を評価することが、前記複数の電極の各々と前記組織との間の電気インピーダンスを測定することを含む、実施態様14に記載の方法。
【0069】
(16) 前記1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度を計算することが、前記測定された電気インピーダンスの平均及び前記測定された電気インピーダンスのバラツキからなる群から選択される少なくとも1つの尺度を計算することを含む、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記1つ又は2つ以上の個々の接触質指標を評価することが、前記電極におけるそれぞれの温度を測定することを含む、実施態様14に記載の方法。
(18) 1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度を計算することが、前記測定された温度の最小値、前記測定された温度の最大値、及び前記測定された温度のバラツキからなる群から選択される少なくとも1つの尺度を計算することを含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度を比較することが、前記1つ又は2つ以上の大域的な接触質尺度を1つ又は2つ以上の閾値と比較することを含む、実施態様14に記載の方法。
(20) 前記1つ又は2つ以上の閾値が、平均電気インピーダンス閾値、電気インピーダンスバラツキ閾値、温度閾値、及び温度バラツキ閾値からなる群から選択される、実施態様19に記載の方法。
【0070】
(21) 前記アイコンを表示することが、前記大域的な接触質尺度と前記所定の大域的な接触質基準との間の比較に応じて前記アイコンを着色することを含む、実施態様14に記載の方法。
(22) 前記アイコンを着色することは、前記大域的な接触質尺度が前記所定の大域的な接触質基準を満たすときに前記アイコンに第1の色を適用することと、前記大域的な接触質尺度が前記所定の大域的な接触質基準を完全に満たさないときに前記アイコンに第2の色を適用することと、前記大域的な接触質尺度が所定の安全範囲外にあるときに前記アイコンに第3の色を適用することと、を含む、実施態様21に記載の方法。
(23) 前記プローブを提供することが、バルーンを提供することと、前記バルーンの周囲に前記複数の電極を配設することと、を含む、実施態様14に記載の方法。
(24) 前記電極が接触している前記組織をアブレーションするのに十分なエネルギーで、高周波(RF)エネルギーを前記複数の電極に同時に印加することを含む、実施態様14に記載の方法。
(25) 前記RFエネルギーを前記複数の電極に印加している間に、前記複数の電極の各々と前記組織との間の電気インピーダンス及び前記複数の温度センサの各々における温度を測定することと、測定された前記インピーダンス及び前記温度に応じて前記複数の電極の各々のそれぞれのアブレーション質尺度を計算することと、を含む、実施態様24に記載の方法。
【0071】
(26) 前記複数の電極の各々の前記それぞれのアブレーション質尺度を前記ディスプレイスクリーン上に表示することを含む、実施態様25に記載の方法。
(27) 前記体腔内の前記プローブの位置合わせに関する1つ又は2つ以上の臨床接触質尺度を計算し、表示することを含む、実施態様14に記載の方法。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
【外国語明細書】