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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029655
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】無機粒子含有分散体
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/02 20060101AFI20240228BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240228BHJP
   C08K 5/01 20060101ALI20240228BHJP
   C01B 33/18 20060101ALI20240228BHJP
   C01B 33/14 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
C08L101/02
C08K3/013
C08K5/01
C01B33/18 C
C01B33/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132028
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(72)【発明者】
【氏名】前田 涼平
【テーマコード(参考)】
4G072
4J002
【Fターム(参考)】
4G072AA25
4G072AA28
4G072AA41
4G072BB05
4G072CC13
4G072DD07
4G072EE06
4G072GG02
4G072HH30
4G072KK03
4G072LL11
4G072LL15
4G072MM01
4G072MM06
4G072MM40
4G072PP11
4G072PP14
4G072PP17
4G072QQ06
4G072RR05
4G072RR12
4G072RR15
4G072UU07
4J002AA051
4J002AA061
4J002AA071
4J002AB011
4J002AB031
4J002BE021
4J002BJ001
4J002CH011
4J002DA076
4J002DA086
4J002DA096
4J002DA106
4J002DA116
4J002DB006
4J002DE096
4J002DE106
4J002DE136
4J002DE146
4J002DJ016
4J002EA027
4J002FD016
4J002GH00
4J002GQ00
4J002GQ05
(57)【要約】
【課題】無機粒子、親水性基を有するポリマー、および溶媒を含み、環境負荷の高い溶媒を用いなくても、無機粒子の分散性に優れるとともに、親水性基を有するポリマーの溶解性に優れる、無機粒子含有分散体を提供する。
【解決手段】無機粒子、親水性基を有するポリマー、およびテルペン類を含む溶媒を含むことを特徴とする無機粒子含有分散体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子、親水性基を有するポリマー、およびテルペン類を含む溶媒を含むことを特徴とする無機粒子含有分散体。
【請求項2】
請求項1に記載の無機粒子含有分散体を含む膜形成材料。
【請求項3】
請求項1に記載の無機粒子含有分散体にバインダー成分を混合することを特徴とする膜形成材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機粒子含有分散体に関する。より詳しくは、無機粒子、親水性基を有するポリマー、およびテルペン類を含む溶媒を含むことを特徴とする無機粒子含有分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機溶媒に無機粒子を分散含有してなる分散体、該分散体にさらにバインダーや分散剤等として機能する樹脂成分を含有する分散体は、インク、コーティング剤等として、様々な分野で提案されてきた(たとえば特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-198848号公報
【特許文献2】特開2003-226844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コーティング剤等に用いる樹脂成分は、目的に応じて選択される。たとえば特許文献1の実施例1~3においてはコーティング組成物を調製する過程で分散組成物に酸価10.5のアクリル系樹脂が使用され、特許文献2の実施例1~6においては酸価が20~90のメタクリル酸―メタクリル酸メチル共重合体が用いられている。酸基等の親水性基を有するポリマーは、得られる膜等において無機粒子を固定化し得る官能基を有する点で好ましい樹脂成分と考えられる。
【0005】
そこで、無機粒子、酸基等の親水性基を有するポリマー、および有機溶媒からなる組成物における無機粒子の分散性に及ぼす有機溶媒の影響を調べた結果、無機粒子を均一に分散させるためには、キシレン等の環境負荷の高い溶媒を用いる必要があること、さらに無機粒子を均一に分散し、且つ、親水性基を有するポリマーを均一に溶解するためには、さらなる検討が必要であることがわかった。よって本発明は、無機粒子、親水性基を有するポリマー、および溶媒を含み、環境負荷の高い溶媒を用いなくても、無機粒子の分散性に優れるとともに、親水性基を有するポリマーの溶解性に優れる、無機粒子含有分散体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成する為に種々検討を行ない、本発明に想到した。すなわち本開示の無機粒子含有分散体は、無機粒子、親水性基を有するポリマー、およびテルペン類を含む溶媒を含むことを特徴とする無機粒子含有分散体である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の無機粒子含有分散体は、環境負荷の高い溶媒を用いなくても、無機粒子の分散性に優れるとともに、親水性基を有するポリマーの溶解性に優れるものである。よって、本開示の無機粒子含有分散体を、インク、コーティング剤等あるいはこれらの原料として用いることにより、環境に優しく、無機粒子が均一に分散含有された膜等を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」または「メタクリロイル」を意味する。また(メタ)アクリレートを(メタ)アクリル酸エステルということもある。
【0009】
[本開示の無機粒子含有分散体]
本開示の無機粒子含有分散体は、無機粒子、親水性基を有するポリマー、およびテルペン類を含む溶媒を含むことを特徴とする。
【0010】
<無機粒子>
本開示の無機粒子含有分散体に含まれる無機粒子は、特に制限されない。本開示の無機粒子含有分散体の使用目的により適宜選択すればよい。
上記無機粒子を構成する無機成分(材質)としては、特に制限されない。金属であってもよいし、金属化合物であってもよいが、金属化合物を主成分として含むことが好ましい。金属化合物を主成分として含むとは、無機粒子の全質量(100質量%)に対し、金属化合物の占める割合が50質量%以上であることを意味する。上記無機粒子が金属化合物を主成分として含む場合、上記割合が好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上であり、特に好ましくは無機粒子が実質的に金属化合物のみからなることが特に好ましい。本明細書において「主成分として含む」を用いた場合、同様の意味である。
【0011】
上記金属化合物としては、特に制限されないが、周期表2族~15族元素、ランタノイド元素に含まれる元素の1種または2種以上を金属元素として含む化合物が好ましく、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuからなる群から選択される少なくとも1種を金属元素として含む金属化合物がより好ましい。
【0012】
上記金属化合物としては、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属炭化物、金属硫化物、金属水酸化物等が挙げられる。中でもシランカップリング剤、有機化合物等による表面改質を行い易い観点から、金属酸化物、金属水酸化物が好ましく、金属酸化物がより好ましい。
【0013】
可視光領域に特性吸収がないもしくは少ない観点から、上記無機粒子が、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化インジウム(In)、酸化第2スズ(SnO)、および酸化亜鉛(ZnO)からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物を主成分とする無機粒子は、本開示の無機粒子含有分散体における好ましい一形態である。これらの金属酸化物を主成分とする無機粒子を含む無機粒子含有分散体あるいは該分散体を含むコーティング剤等より得られる膜等が無色(白色)なものとなり易い。
【0014】
異種元素を固溶したり、酸素欠陥を有することにより、(光)半導体的性質が発現し、固溶する金属元素により、赤外線領域等の光吸収特性や電子伝導性等を制御することが可能である観点から、上記無機粒子が、酸化チタン(TiO)、酸化インジウム(In)、酸化第2スズ(SnO)、および酸化亜鉛(ZnO)からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物に異種元素を固溶してなる固溶体酸化物を主成分とする無機粒子であることも、またこれらの金属酸化物の不定比性酸化物を主成分とする無機粒子であることも、本開示の無機粒子含有分散体における好ましい一形態である。これらの金属酸化物を主成分とする無機粒子を含む無機粒子含有分散体は、透明導電膜、帯電防止膜等の導電膜、赤外線遮断膜等を形成するコーティング剤またはその原料として好ましく用いることができる。上記固溶体酸化物としては、スズまたはチタンを固溶してなる酸化インジウム、アンチモンまたはフッ素を固溶してなる酸化第2スズ、アルミニウム、インジウムまたはフッ素を固溶してなる酸化亜鉛等が好ましくあげられる。
【0015】
紫外線の吸収性に優れる観点から、上記無機粒子が、酸化チタン(TiO)、酸化セリウム(CeO)、および酸化亜鉛(ZnO)からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物を主成分とするものであることも、本開示の無機粒子含有分散体における好ましい一形態である。これらの金属酸化物を主成分とする無機粒子を含む無機粒子含有分散体は、紫外線吸収膜を形成するコーティング剤またはその原料として好ましく用いることができる。
【0016】
上記無機粒子は顔料であることもまた本開示の無機粒子含有分散体における好ましい一形態である。上記無機粒子が無機顔料である場合、無機粒子含有分散体を顔料インクまたはその原料として用いることができる。無機顔料としては、たとえば、酸化亜鉛(ZnO)、塩基性炭酸鉛(2PbCO・Pb(OH))、硫酸バリウム(BaSO)、硫化亜鉛(ZnS)、二酸化チタン(TiO)等の白色顔料、四酸化三鉛(Pb)、酸化第二鉄(Fe)等の赤色顔料、クロム酸鉛(PbCrO)、クロム酸亜鉛(ZnCrO)等の黄色顔料、ヘキサシアノ鉄(II)酸鉄(III)(Fe[Fe(CN)・15HO)、YInMnブルー(YIn1-xMn、0<x<1)等の青色顔料、四三酸化鉄(Fe)、チタンブラック等の黒色顔料等があげられる。
【0017】
絶縁性に優れる観点から、上記無機粒子が、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、窒化ホウ素(BN)からなる群から選択される少なくとも1種の金属化合物を主成分とするものであることが好ましく、特に、酸化ケイ素(SiO)が好ましい。酸化ケイ素(SiO)としては結晶性であってもよいし、非晶質であってもよいが、非晶質であることが好ましい。これらの金属化合物を主成分とする無機粒子を含む無機粒子含有分散体は、絶縁性に優れる膜を形成するコーティング剤またはその原料として好ましく用いることができる。
【0018】
上記無機粒子としては、無機粒子を構成する金属化合物等がX線回折学的に結晶性であってもよいし、非晶質であってもよい。また、上記無機粒子の構造は、特に制限されず、多孔質構造であってもよいし、緻密な構造であってもよい。また中空形状であってもよい。上記無機粒子の形状は、特に限定されず、不定形、粒状、板状、柱状、針状等のいずれであってもよいが、粒状が好ましく、粒状の中でも球状が好ましい。なお、上記粒状とは、アスペクト比が1.5以下の偏りのない形状を意味する。
【0019】
上記無機粒子は、たとえば、上記した金属化合物等の無機成分のみからなる粒子であってもよいし、金属化合物等の無機成分からなる粒子の表面に、表面処理剤により、直接または間接的に有機基が導入された粒子であってもよい。有機基としては、特に制限されないが、アルキル基、アラルキル基、アリール基等の炭化水素基、(メタ)アクリル基、ビニル基、アミノ基等の反応性基が好ましくあげられる。上記無機粒子の表面に有機基を導入する方法としては、特に制限されないが、上記有機基を有するシランカップリング剤等の有機ケイ素化合物、リン酸基を有する化合物、アルコール等を無機粒子の表面に反応させる方法、好ましくは、無機粒子の表面に存在する水酸基やアルコキシ基に反応させる方法が挙げられる。
【0020】
上記無機粒子の平均粒子径は、特に制限されないが、1nm~1000nmの範囲であることが好ましい。上記無機粒子の平均粒子径が上述の範囲であると、本開示の無機粒子含有分散体より得られる膜の均質性に優れるものとなり易い傾向がある。上記無機粒子の平均粒子径は、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましく、20nm以下であることが特に好ましい。下限値は5nm以上であることがより好ましい。上記平均粒子径は、上記無機粒子をSEM(倍率1000~10万倍、好ましくは1万倍)で観察し、得られた画像を解析することにより、約10~1000個の個々の粒子(一次粒子)の粒子径(円面積相当径)を求め、個数基準の粒度分布による50%粒径を評価することにより求められる。画像解析には、公知の画像解析ソフト(例えば、マウンテック社製Mac-View)を用いることができる。
本開示の無機粒子含有分散体は上述した無機粒子を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
【0021】
<親水性基を有するポリマー>
本開示の無機粒子含有分散体は親水性基を有するポリマーを含む。親水性基を有するポリマーとは、親水性基を、たとえばポリマーの側鎖の一部または全部および/または主鎖の末端の一部または全部に有するポリマーを全て包含する。たとえば親水性基をポリマーの側鎖として有する場合、親水性基がポリマーの主鎖に直接結合して側鎖を形成していてもよいし、親水性基を置換基として含む有機基が側鎖としてポリマーに結合していてもよい。親水性基をポリマーの末端に有する場合も同様である。
【0022】
上記有機基としては、特に制限されないが、たとえば、炭化水素基、エーテル基、ポリオキシアルキレン基等が好ましい。上記炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等があげられる。中でもアルキル基が好ましく、アルキル基の中でも炭素数1~18のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより好ましく、炭素数1~3のアルキル基がさらに好ましい。上記エーテル基としては、たとえば、下記一般式(1)で示されるものが好ましい。
-X-R (1)
式(1)において、Rはポリマーに結合する二価の炭化水素基であり、Rは一価の炭化水素基である。R、Rの少なくとも一方に置換基として親水性基を有する。Xは酸素原子またが硫黄原子である。Rはアルキレン基またはアリーレン基であることが好ましく、Rはアルキル基、アルケニル基、アリール基、およびアラルキル基からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。上記ポリオキシアルキレン基としては、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基であることが好ましい。
【0023】
上記親水性基としては、特に制限されないが、水酸基(-OH)、カルボキシ基(-COOH)、リン酸基(-OPO(OH))、スルホ基(-SOH)、硫酸基(-OSOH)、ホスホン酸基(-PO(OH))、ホスフィン酸基(-PO(OH)-)、メルカプト基(-SH)等の酸性官能基;アミノ基、アンモニウム基、イミノ基、アミド基、イミド基、マレイミド基、シアノ基等の塩基性官能基、カルボン酸塩基(-COOX)等があげられる、耐光性に優れる観点から、中でも水酸基、カルボキシ基、リン酸基、スルホ基、硫酸基、メルカプト基が好ましく、水酸基、カルボキシ基、メルカプト基がより好ましく、カルボキシ基が特に好ましい。なお、カルボン酸塩基(-COOX)において、XはLi,Na,K等のアルカリ金属イオン、またはアンモニウムイオンを表す。
【0024】
上記親水性基を有するポリマーとしては、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシルメチルセルロース、ポリプロピレングリコール、セルロース類などのように、親水性基を有し、分子全体が親水性のユニットで構成されるポリマー(以下、ポリマー(II)とも称する)であってもよいし、親水性基を有する親水性ユニットと親水性基を有する親水性ユニット以外のユニット(他のユニットとも称する)とを分子内に有するポリマー(以下、ポリマー(I)とも称する)であってもよい。本開示の無機粒子含有分散体がリモネン以外の溶媒成分として水を含まない場合、親水性基を有するポリマーとしては、ポリマー(I)を用いることが好ましい。
【0025】
上記ポリマー(I)において、親水性基を有する親水性ユニットは、親水性基を有する重合性モノマー由来の構成単位よりなることが好ましく、上記他のユニットは、親水性基を有する重合性モノマー以外の重合性モノマー(他の重合性モノマーとも称する)由来の構成単位よりなることが好ましい。すなわち、上記ポリマー(I)が、親水性基を有する重合性モノマーと、他の重合性モノマーとの共重合体であることが好ましい。
【0026】
上記ポリマー(I)の構造は特に制限されない。たとえば、上記親水性ユニットと上記他のユニットとが交互に繋がった繰返し構造を有する交互共重合体であってもよいし、上記親水性ユニットが複数繰り返し繋がった構造と、上記他のユニットが複数繰り返し繋がった構造とを有するブロック共重合体であってもよいし、これらの構造が混在した共重合体であってもよい。
【0027】
上記親水性基を有する重合性モノマーとしては、親水性基を有する(メタ)アクリル系モノマー、親水性基を有する不飽和脂肪族ジカルボン酸系モノマー、親水性基を有するビニル系モノマーが好ましくあげられる。
上記親水性基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸塩等が好ましくあげられる。(メタ)アクリル酸塩としては、(メタ)アクリル酸のLi塩,Na塩,K塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩などがあげられる。
【0028】
上記親水性基を有する不飽和脂肪族ジカルボン酸系モノマーとしては、不飽和脂肪族ジカルボン酸、不飽和脂肪族ジカルボン酸塩、不飽和脂肪族ジカルボン酸モノエステルが好ましくあげられる。
上記不飽和脂肪族ジカルボン酸としては、特に制限されないが、たとえば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、2-ペンテンニ酸、メチレンコハク酸、2,4-ヘキサジエンニ酸、アセチレンジカルボン酸などの炭素数4~6の不飽和脂肪族ジカルボン酸が好ましくあげられる。中でもマレイン酸がより好ましい。これらの1種または2種以上を用いることができる。
上記不飽和脂肪族ジカルボン酸塩としては、上記不飽和脂肪族ジカルボン酸のLi塩,Na塩,K塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩などがあげられる。
【0029】
上記不飽和脂肪族ジカルボン酸モノエステルとしては、特に制限されないが、たとえば、不飽和脂肪族ジカルボン酸のモノアルキルエステル、モノアリールエステル等があげられる。これらは、たとえば、不飽和脂肪族ジカルボン酸、不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物とアルコール、フェノール等のヒドロキシ基を含む化合物との反応により得ることができる。中でも、モノアルキルエステルが好ましい。さらに該モノアルキルエステルにおけるアルキルが炭素数1~18のアルキルであることが好ましく、炭素数1~12のアルキルであることがより好ましく、炭素数1~8のアルキルであることがさらに好ましく、炭素数1~6のアルキルであることが特に好ましい。
【0030】
上記親水性基を有するビニル系モノマーとしては、ビニルアルコール、N-ビニル-2-ピロリドン、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラメチレングリコールモノビニルエーテル、ビニルスルホン酸等が好ましくあげられる。
上記親水性基を有する重合性モノマーとしては、上述した重合性モノマーの中から、1種または2種以上を組合せて用いることができる。
【0031】
上記他の重合性モノマーとしては、上記親水性基を有しない(メタ)アクリル系モノマー、上記親水性基を有しないビニル系モノマー、上記親水性基を有しない不飽和脂肪族ジカルボン酸系モノマー等が好ましくあげられる。
【0032】
上記親水性基を有しない(メタ)アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、上記親水性基を有しないモノマーであれば、特に制限されないが、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸メトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが好ましくあげられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートも用いることができる。中でも(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基が炭素数1~18のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~8のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~3基のアルキルであることがさらに好ましく、炭素数1のアルキルであることが特に好ましい。
【0033】
上記親水性基を有しないビニル系モノマーとしては、スチレン系モノマー、カルボン酸ビニルエステル、ビニルエーテル等が好ましくあげられる。
上記スチレン系モノマーとしては、特に制限されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、tert-メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、2-スチリルエチルトリメトキシシランなどが挙げられる。スチレン系モノマーは、ベンゼン環に、上記親水性基以外の置換基、たとえば、メチル基、tert-ブチル基などのアルキル基、アルコキシル基、アシル基、ハロゲン原子などの置換基が存在していてもよい。上記スチレン系モノマーとしては、ジビニルベンゼン等の多官能スチレン系モノマーを用いることもできる。上記スチレン系モノマーの中でもスチレンが好ましい。
上記カルボン酸ビニルエステルとしては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、安息香酸ビニルなどが好ましくあげられる。
上記ビニルエーテルとしてはイソブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル等が好ましくあげられる。
【0034】
上記親水性基を有しない不飽和脂肪族ジカルボン酸系モノマーとしては、不飽和脂肪族ジカルボン酸ジエステル、不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物等があげられる。
上記他の重合性モノマーとしては、上述した重合性モノマーの中から、1種または2種以上を組合せて用いることができる。
【0035】
上記親水性基を有する重合性モノマーの中でも、(メタ)アクリル酸、不飽和脂肪族ジカルボン酸および不飽和脂肪族ジカルボン酸モノエステルからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリル酸、不飽和脂肪族ジカルボン酸モノエステルであり、さらに好ましくは不飽和脂肪族ジカルボン酸モノエステルである。
上記他の重合性モノマーの中でも、上記親水性基を有しない(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレンが好ましく、スチレンが特に好ましい。
【0036】
上記親水性基を有するポリマーにおける、上記親水性ユニットの含有量は、上記親水性基を有するポリマー100質量部に対して、20質量部以上、100質量部以下であることが好ましい。下限値は、25質量部以上がより好ましく、30質量部以上がさらに好ましい。上限値は80質量部以下がより好ましく、70質量部以下がさらに好ましい。
【0037】
上記親水性基を有するポリマーにおける上記親水性ユニットと上記他のユニットとの割合は、特に制限されないが、上記親水性ユニット100質量部に対する上記他のユニットの割合が、0質量部以上、400質量部以下であることが好ましい。下限値は、10質量部以上がより好ましく、20質量部以上がさらに好ましく、40質量部以上がさらに好ましい。上限値は350質量部以下がより好ましく、300質量部以下がさらに好ましい。
【0038】
上記親水性基を有するポリマーにおける、親水性基当量は、特に制限されないが、100~500g/molであることが好ましい。下限値は、125g/mol以上がより好ましく、150g/mol以上がさらに好ましい。上限値は、450g/mol以下がより好ましく、400g/mol以下がさらに好ましい。
【0039】
上記親水性基当量は、通常、親水性基を有するポリマーにおける単位質量あたりの親水性基のモル数を求め、その逆数を算出することにより、求めることができる。あるいは親水性基を有するポリマーの分子1モル当たりの親水性基のモル数(n)を求め、親水性基を有するポリマーの重量平均分子量を、前記モル数(n)で除することにより求めることができる。たとえば、親水性基としてカルボキシ基を有するポリマーにおける、カルボキシ基当量は、JIS K 2501:2003に記載された方法に準拠した測定方法で得られた値を採用することができる。上記カルボキシ基当量は、具体的には下記の方法により求めることができ、下記の方法により得られた値を採用することが好ましい。
<カルボキシ基当量の測定方法>
酸価を測定したい試料を正確に秤量し、滴定溶剤に溶解してガラス電極および比較電極を浸漬させ、0.1mol/L 2-プロパノール性水酸化カリウム標準液によって滴定した。電位差計又はpH計の読みと、これに対応する2-プロパノール性水酸化カリウム標準液の滴定量との関係を作図し、滴定曲線に得られた変曲点を終点とする。消費した0.1mol/L 2-プロパノール性水酸化カリウム標準液の量によって全酸価を算出する。全酸価と重合体(B)の重量平均分子量からカルボキシ基当量を算出する。
【0040】
上記親水性基を有するポリマーの分子量は、特に制限されないが、重量平均分子量が1,000~1,000,000であることが好ましい。重量平均分子量が1,000未満では、本開示の無機粒子含有分散体を用いて得られる膜の熱安定性が十分でない場合がある。一方、重量平均分子量が1,000,000を超えると、無機粒子含有分散体の粘度が高くなる場合がある。その場合には薄膜を得たい場合には固形分濃度を低くしないといけなくなるため、経済的でない。下限値は、より好ましくは1,000以上、さらに好ましくは3,000以上であり、上限値は、より好ましくは200,000以下であり、さらに好ましくは120,000以下である。
上記重量平均分子量はGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法により測定することができ、たとえば、ポリスチレンを標準物質とし、テトラヒドロフランを溶離液として、高速GPS装置HLC-8320GPC(東ソー社製)を用い、カラムとしてTSKgel SuperHZ-N(東ソー社製)を用いる、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法により測定することができ、該測定で得られた値を採用することが好ましい。
【0041】
上記親水性基を有するポリマーの製造方法は、特に制限されないが、従来公知の溶液重合を用いる方法が好ましい。たとえば、少なくとも親水性基を有する重合性モノマーを含む単量体組成物を、ジオキサン等のエーテル類、トルエン等の炭化水素類、アセトン等のケトン類等の単一または混合溶媒中で、ラジカル重合開始剤を用いてラジカル重合反応させることにより、親水性基を有するポリマーを得ることができる。上記単量体組成物は、1種または2種以上の親水性基を有する重合性モノマーのみからなるものであってもよいし、さらに上記他の重合性モノマーを含むものであってもよい。
【0042】
また、別法として、上記重合方法において、少なくとも親水性基を有する重合性モノマーの代わりに、たとえば不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物を含む単量体組成物を用い、上記と同様にして、ラジカル重合反応させることにより、不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物に由来する構成単位を有するポリマー(i)を得た後、該構造単位の一部または全部における無水物部分を、加水分解反応に供する、および/またはモノエステル化反応に供することにより、親水性基を有するポリマーを得ることができる。上記方法における単量体組成物は、1種または2種以上の不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物のみからなるものであってもよいし、さらに不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物以外の上記他の重合性モノマーを含むものであってもよい。また上記エステル化反応としては、たとえば、ポリマー(i)にアルコール、フェノール等のヒドロキシ基を含む化合物を反応させる方法があげられる。
【0043】
<テルペン類を含む溶媒>
本開示の無機粒子含有分散体は、テルペン類を含む溶媒を含む。溶媒としてテルペン類を含むことにより、本開示の無機粒子含有分散体は、親水性基を有するポリマーが溶解し、無機粒子の分散性に優れるものとなる。
上記テルペン類としては、特に制限されないが、モノテルペン類、セスキテルペン類、ジテルペン類、トリテルペン類、テトラテルペン類等があげられ、1種または2種以上を用いることができる。
【0044】
上記モノテルペン類としては、ゲラニル二リン酸、シネオール、リモネン、ピネン等があげられる。上記セスキテルペン類としてはファルネシル二リン酸、アルテミシニン、ナルドシノン、ビサボロール等があげられる。上記ジテルペン類としては、ゲラニルゲラニル二リン酸、レチノール、レチナール、フィトール、パクリタキセル、ホルスコリン、アフィジコリン等があげられる。上記トリテルペン類としてはスクアレン、ラノステロール等があげられる。上記テトラテルペン類としてはリコペン、カロテン等があげられる。テルペン類としては、モノテルペン類が好ましく、リモネンが特に好ましい。
【0045】
本開示の無機粒子含有分散体は、溶媒として、上記テルペン類以外の溶媒成分(他の溶媒成分とも称する)を含むことができる。上記他の溶媒成分の種類や含有量により、本開示の無機粒子含有分散体の成膜性等を調製することができる。上記他の溶媒成分としては、特に制限されないが、有機溶媒が好ましい。たとえば、アルコール類、グリコール類、グリコール誘導体類、エーテル類、エステル類、ケトン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルフォキシド、スルホラン、γ-ブチロラクトン等の極性溶媒;炭化水素系溶媒があげられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0046】
上記他の溶媒成分が上記極性溶媒の1種または2種以上を含むことが好ましい。また、上記他の溶媒成分が上記極性溶媒の1種または2種以上のみからなることもまた好ましい。上記極性溶媒の中でも、アルコール類、グリコール類、グリコール誘導体類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルフォキシド、スルホラン、γ-ブチロラクトンが好ましく、グリコール誘導体類がより好ましい。
【0047】
上記アルコールとしては、特に制限されないが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1-プロパノール、1-ブタノール、シクロヘキサノール等が好ましい。
上記グリコール類としては、特に制限されないが、エチレングリコール、プロピレングルコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングルコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングルコール、グリセリン等が好ましい。
上記グリコール誘導体類としては、特に制限されないが、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングルコールモノメチルエーテル、プロピレングルコールモノエチルエーテル、プロピレングルコールモノプロピルエーテル、プロピレングルコールモノブチルエーテル等のグリコールモノアルキルエーテル;エチレングリコールモノアセテート、プロピレングルコールモノアセテート等のグリコールモノアセテート;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングルコールモノメチルエーテルアセテート等があげられる。上記グリコール誘導体類の中でも、グリコールモノアルキルエーテルが好ましい。
上記炭化水素系溶媒としては、特に制限されないが、たとえば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒があげられる。
【0048】
本開示の無機粒子含有分散体に含まれる溶媒総量に対するテルペン類の含有量は、特に制限されないが、溶媒総量100質量部に対して、1~100質量部であることが好ましい。より好ましくは20質量部以上であり、さらに好ましくは30質量部以上である。上限はより好ましくは80質量部以下であり、さらに好ましくは70質量部以下である。上記溶媒総量100質量部に対するテルペン類の各好ましい含有量の残部が、溶媒総量100質量部に対する上記他の溶媒成分の各好ましい含有量となる。
【0049】
本開示の無機粒子含有分散体に含まれる、テルペン類に対する上記極性溶媒の割合は特に制限されないが、テルペン類100質量部に対し、上記極性溶媒の含有量が0~400質量部であることが好ましい。より好ましくは1質量部以上であり、さらに好ましくは10質量部以上であり、よりさらに好ましくは20質量部以上である。上限はより好ましくは200質量部以下であり、さらに好ましくは150質量部以下である。
【0050】
<組成>
本開示の無機粒子含有分散体における各成分の含有量は、特に制限されない。
本開示の無機粒子含有分散体における無機粒子の含有量は、本発明の効果の観点からは、上限、下限ともに特に制限されるものではない。その使用目的により適宜選択すればよいが、無機粒子含有分散体100質量部に対し、1~60質量部であることが好ましい。無機粒子の含有量が60質量部超の場合、無機粒子含有分散体を用いて得られる膜の色が加熱等により変色する場合があり、1質量部未満の場合、無機粒子が有する物性によっては(たとえば導電性)、該物性が無機粒子含有分散体を用いて得られる膜等の機能に反映され難い場合があるためである。同様の理由からより好ましくは5~55質量部であり、さらに好ましくは10~50質量部である。
【0051】
本開示の無機粒子含有分散体における親水性基を有するポリマーの含有量は、無機粒子の種類、粒子径、使用目的等により適宜選択すればよく、特に制限されないが、無機粒子含有分散体100質量部に対し、1~50質量部であることが好ましい。本開示の無機粒子含有分散体を用いて得られる膜において無機粒子を保持・固定し易い傾向があるためである。同様の理由から、より好ましくは2~45質量部であり、さらに好ましくは3~40質量部である。
【0052】
本開示の無機粒子含有分散体における、上記溶媒(テルペン類を含む溶媒)の含有量は、特に制限されないが、通常、本開示の無機粒子含有分散体に含まれる、無機粒子および親水性基を有するポリマーの合計含有量の残部となることが好ましい。また、後述するように、本開示の無機粒子含有分散体が添加剤を含む場合、上記溶媒の含有量は、本開示の無機粒子含有分散体に含まれる、無機粒子、親水性基を有するポリマー、および添加剤の合計含有量の残部となることが好ましい。このような場合、無機粒子含有分散体100質量部に対する無機粒子、親水性基を有するポリマーおよび溶媒の合計含有量が90~100質量部となるよう、溶媒の含有量を調製することが好ましい。該合計含有量がより好ましくは95質量部以上、さらに好ましくは98質量部以上となるよう、それぞれ溶媒の含有量を調製することが好ましい。
【0053】
本開示の無機粒子含有分散体における、上記テルペン類の含有量は、特に制限されないが、通常、無機粒子含有分散体100質量部に対し、1~60質量部であることが好ましい。より好ましくは5~55質量部であり、さらに好ましくは10~50質量部である。
また、本開示の無機粒子含有分散体において、溶媒総量に対するテルペン類の好ましい含有量は上述したとおりである。
【0054】
本開示の無機粒子含有分散体は、上述した無機粒子、親水性基を有するポリマー、テルペン類を含む溶媒以外に、本発明の効果を損なわない範囲で添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、たとえば、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等があげられる。これらの添加剤の合計含有量は、本開示の無機粒子含有分散体100質量部に対し、0~10質量部であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、2質量部以下であることがさらに好ましい。
【0055】
[本開示の無機粒子含有分散体の製造方法]
本開示の無機粒子含有分散体は、上述した各種成分を用いて調製することができ、その調製手段や条件は特に限定されない。例えば、一般的な撹拌羽根や超音波ホモジナイザー、高速ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、遊星撹拌装置、3本ロール、ボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミル、ダイノーミル等の混合又は撹拌できる装置を用いて、テルペン類を含む溶媒に、親水性基を有するポリマーを溶解し、無機粒子を分散する方法が挙げられる。各種成分を混合した後に各種フィルターを用いてろ過をしてもよい。
【0056】
たとえば、テルペン類を含む溶媒に親水性基を有するポリマー、無機粒子を添加、混合する方法(1)、親水性基を有するポリマーを、テルペン類を含む溶媒に溶解した溶液を調製し、該溶液に無機粒子を攪拌・混合する方法(2)、無機粒子をテルペン類を含む溶媒に混合、分散した分散液を調製し該分散液に親水性基を有するポリマーを混合する方法(3)、親水性基を有するポリマーを溶媒に溶解した溶液、無機粒子を溶媒に混合、分散した分散液を各々調製し、該溶液と該分散液を混合する方法(4)等が好ましくあげられる。上記方法(4)において該溶液、該分散液の各溶媒の少なくとも一方にテルペン類を含むことが好ましい。上記方法(1)~(3)においてそれぞれ用いる溶媒はテルペン類以外の溶媒成分、具体的には上記他の溶媒成分、好ましくは上記極性溶媒を含んでいてもよい。
上記無機粒子含有分散体は、直接あるいは原料として、コーティング剤、インク、封止材、電子部品の基板等の種々の用途に用いることができる。
【0057】
[本開示の膜形成材料]
本開示の膜形成材料は、上述した本開示の無機粒子含有分散体を含む膜形成材料である。膜形成材料とは、膜を形成するための材料を意味し、従来公知の塗布法により膜を形成し得る材料であることが好ましく、たとえば、コーティング剤、顔料インク等があげられる。上記塗布法としては、例えば、スピンコート法、スリットコート法、スプレー法、ロールコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、ディップ法等の方法などがあげられる。
【0058】
本開示の膜形成材料における無機粒子含有分散体については、好ましい形態も含め、[本開示の無機粒子含有分散体]において説明したとおりである。また、本開示の膜形成材料は、上記無機粒子含有分散体に含まれる成分を含む。具体的には上記無機粒子、上記親水性基を有するポリマー、上記テルペン類を含む溶媒を含み、さらに上記無機粒子含有分散体が含んでいてもよい上記他の溶媒成分(テルペン類以外の溶媒成分)、上記添加剤を含んでいてもよい。よって、本開示の膜形成材料に含まれる、上記無機粒子含有分散体由来の無機粒子、親水性基を有するポリマー、テルペン類、他の溶媒成分(テルペン類以外の溶媒成分)、添加剤のそれぞれについては、好ましい形態も含め、[本開示の無機粒子含有分散体]における無機粒子、親水性基を有するポリマー、テルペン類、他の溶媒成分(テルペン類以外の溶媒成分)、添加剤と同様であり、[本開示の無機粒子含有分散体]におけるこれらの各成分の説明をそのまま準用することができる。
【0059】
なお、本開示の膜形成材料の目的に応じて、無機粒子を適宜選択することが好ましい。たとえば、絶縁性に優れる膜を形成したい場合には、無機粒子として酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、または窒化ホウ素(BN)を主成分とする無機粒子を用いることが好ましい。また紫外線吸収性に優れる膜を形成したい場合には、無機粒子として酸化チタン(TiO)、酸化セリウム(CeO)または酸化亜鉛(ZnO)を主成分とする無機粒子を用いることが好ましい。また帯電防止性あるいは電子伝導性に優れ且つ透明性に優れる膜を形成したい場合には、無機粒子として、スズまたはチタンを固溶してなる酸化インジウム;アンチモンまたはフッ素を固溶してなる酸化第2スズ;または、アルミニウム、インジウムまたはフッ素を固溶してなる酸化亜鉛を主成分とする無機粒子を用いることが好ましい。また、顔料インクとして用いたい場合には、無機粒子として上述した無機顔料を用いることが好ましい。
【0060】
上述した本開示の無機粒子含有分散体は、そのままでも、本開示の膜形成材料として用いることができるが、本開示の膜形成材料としては、さらにバインダー成分を含むことが好ましい。上記バインダー成分としては、特に制限されないが、従来公知の有機系バインダー、無機系バインダー等を用いることができる。上記有機系バインダーとしては、(メタ)アクリル系、ビニル系、ビニリデン系、シリコーン系、メラミン系、ウレタン系、スチレン系、アルキド系、フェノール系、エポキシ系、ポリイミド系、ポリアミドイミド系、ポリアミック酸系、ポリエステル系等の熱可塑性若しくは熱硬化性樹脂;紫外線硬化型アクリル樹脂、紫外線硬化型アクリルシリコーン樹脂などの紫外線硬化型樹脂;エチレン-プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム等の合成ゴム又は天然ゴムがあり、上記無機系バインダーとしては、シリカゾル、アルカリ珪酸塩、シリコンアルコキシド、リン酸塩等があげられる。上記バインダー成分は1種または2種以上を選択して用いることができる。中でも、有機系バインダーが好ましく、シリコーン系、ポリイミド系、ポリアミック酸系等がより好ましい。
【0061】
本開示の膜形成材料における上記バインダー成分の存在形態は、特に制限されない。たとえば、エマルション粒子等の如く粒子状で分散していてもよいし、溶解していてもよい。粒子状である場合、平均粒子径は、20~1000nmであることが好ましい。より好ましくは100nm以上であり、さらに好ましくは150nm以上である。一方、上限については、より好ましくは500nm以下であり、より好ましくは350nm以下である。上記平均粒子径は、動的光散乱法による粒度分布測定により得られる体積基準の平均粒子径を採用することができる。装置としては、たとえば、大塚電子株式会社製、品番:FPAR-1000を用いることができる。上記バインダー成分の製造方法は特に制限されない。たとえば、乳化重合、懸濁重合、溶液重合等が好ましい。
【0062】
本開示の膜形成材料は、本開示の無機粒子含有分散体に、さらに溶媒成分を混合したものであってもよい。該溶媒成分としては、[本開示の無機粒子含有分散体]における溶媒成分と同様のものを1種または2種以上を組合せて用いることができる。溶媒成分を適量、混合することにより、たとえば、上記塗布方法等の成膜方法に適した、膜形成材料における各成分の濃度、粘度に調製することが可能となる。また形成する膜の膜厚等を調製することもできる。
【0063】
本開示の膜形成材料における、上記無機粒子含有分散体の含有量は、特に制限されない。膜厚を制御し易い傾向があることから、膜形成材料100質量部に対し、無機粒子含有分散体の含有量が10~100質量部であることが好ましい。より好ましくは20質量部以上であり、さらに好ましくは50質量部以上である。上限は、90質量部以下がより好ましく、80質量部以下がさらに好ましい。
【0064】
本開示の膜形成材料における、上記無機粒子含有分散体における各成分(無機粒子、上記親水性基を有するポリマー、上記テルペン類を含む溶媒、上記テルペン類)の含有量、並びに、上記無機粒子含有分散体がさらにその他の溶媒成分(テルペン類以外の溶媒成分)、添加剤を含む場合はこれらの各含有量は、[本開示の無機粒子含有分散体]において説明したとおりである。
【0065】
本開示の膜形成材料における上記バインダー成分の含有量は、特に制限されないが、本開示の膜形成材料に含まれる無機粒子100質量部に対する上記バインダー成分の含有量が、50~500質量部であることが好ましい。より好ましくは75質量部以上であり、さらに好ましくは100質量部以上である。上限は、400質量部以下がより好ましく、300質量部以下がさらに好ましい。
【0066】
本開示の膜形成材料は、上述した成分以外の他の成分が含まれていてもよい。例えば、界面活性剤、分散剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、増粘剤、湿潤剤、可塑剤、安定剤、消泡剤、染料、酸化防止剤、架橋促進剤、PH調整剤、防腐剤などの添加剤が適量で含まれていてもよい。上記他の成分を添加する場合、その含有量は、特に限定されるものではないが、本開示の膜形成材料100質量部に対し、2質量部以下が好ましく、1質量部以下が好ましい。また添加効果を発揮するためには0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましい。
【0067】
本開示の膜形成材料は、たとえば、塗布方法を用いて、各種の機能性膜を基材上に形成することができる。基材に塗布した後、加熱等により溶媒を蒸発除去し、必要に応じて、加熱または紫外線や電子線等を照射することにより硬化反応を行うことにより、目的の膜を形成することができる。塗布方法については上述したとおりであり、加熱や、紫外線、電子線等の照射による硬化方法については従来公知の方法を採用することができる。
【0068】
得られる膜の厚さは、特に制限されないが、通常、1~1000μmであることが好ましい。より好ましくは10μm以上であり、さらに好ましくは20μm以上である。上限はより好ましくは500μm以下であり、さらに好ましくは200μm以下である。塗布膜の厚さは、後述する硬化物としての好ましい膜厚となるよう、調製することが好ましい。
【0069】
上記の基材としては、特に制限されず、目的に応じ適宜選択される。たとえば、金属基材、シリコン・無機基材、複合材料などが挙げられる。上記金属基材としては、表面がアルミニウム、銅、金、銀、チタン、モリブデンなどの金属を主成分とする基材があげられる。上記シリコン・無機基材としては、例えば、シリコン、シリコンナイトライド、酸化シリコン等のシリコン関連材料、ガラス、石英等の無機材料を主成分とする基材があげらる。上記複合基材としては、樹脂、シリコン、シリコンナイトライド、酸化シリコン、ガラス、石英等よりなる基材の表面の一部または全部に金属の薄膜等が設けられた基材があげられる。上記基材の形状は、特に制限されない。たとえば、板状、線状等が好ましい。上記基材の中でも、密着性に優れる膜が得られ易い観点から、シリコン・無機基材、および金属基材が好ましく、金属基材がより好ましい。
【0070】
[本開示の膜形成材料の製造方法]
本開示の膜形成材料の製造方法は、上記無機粒子含有分散体にバインダー成分を混合することを特徴とする膜形成材料の製造方法である。
上記膜形成材料の製造方法に用いる無機粒子含有分散体については、好ましい形態も含め、[本開示の無機粒子含有分散体]において説明したとおりである。よって本開示の膜形成材料の製造方法に用いる、上記無機粒子含有分散体に含まれる無機粒子、親水性基を有するポリマー、テルペン類、上記無機粒子含有分散体が含んでいてもよい他の溶媒成分(テルペン類以外の溶媒成分)、添加剤のそれぞれについては、好ましい形態、含有量も含め、[本開示の無機粒子含有分散体]における無機粒子、親水性基を有するポリマー、テルペン類、他の溶媒成分(テルペン類以外の溶媒成分)、添加剤のそれぞれの好ましい形態、含有量と同様であり、[本開示の無機粒子含有分散体]におけるこれらの説明をそのまま準用することができる。
【0071】
本開示の膜形成材料の製造方法において、無機粒子含有分散体に混合する、バインダー成分については、好ましい形態を含め、[本開示の膜形成材料]において説明したバインダー成分と同様であり、[本開示の膜形成材料]におけるバインダー成分の説明を準用することができる。
上記無機粒子含有分散体に対し、混合するバインダー成分の量は特に制限されないが、無機粒子含有分散体に含まれる無機粒子100質量部に対し、混合するバインダー成分の量が、50~500質量部であることが好ましい。より好ましくは75質量部以上であり、さらに好ましくは100質量部以上である。上限は、400質量部以下がより好ましく、300質量部以下がさらに好ましい。
【0072】
上記混合する方法は、特に制限されない。例えば、一般的な撹拌羽根や超音波ホモジナイザー、高速ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、遊星撹拌装置、3本ロール、ボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミル、ダイノーミル等の混合又は撹拌できる装置を用いて、上記無機粒子含有分散体にバインダー成分を混合する方法が挙げられる。混合することにより、バインダー成分が、溶解または粒子状で分散した膜形成材料を得ることができる。
【0073】
上記無機粒子含有分散体と混合するにあたり、バインダー成分の形態は特に制限されない。上記無機粒子含有分散体と、バインダー成分を粉末等の固体状または液状で混合してもよいし、溶媒に溶解した溶液の形態で混合してもよいし、溶媒に分散した分散液の形態で混合してもよい。バインダー成分を混合した後に各種フィルターを用いてろ過をしてもよい。
上記溶液、上記分散液に用いる溶媒としては、[本開示の無機粒子含有分散体]における溶媒成分と同様のものを、適宜、1種または2種以上を選択して用いることができる。
【0074】
また、必要に応じて、本開示の膜形成材料の製造方法において、膜形成材料における無機粒子等の濃度や膜形成材料の粘度を調製する目的等で、さらに溶媒を混合することができる。該溶媒としても、[本開示の無機粒子含有分散体]における溶媒成分と同様のものを、適宜、1種または2種以上を選択して用いることができる。
溶媒を添加する場合の溶媒の添加量は、特に制限されないが、たとえば、上記無機粒子含有分散体に含まれる無機粒子100質量部に対し、10~300質量部であることが好ましい。より好ましくは250質量部以下であり、さらに好ましくは200質量部以下である。下限は、より好ましくは20質量部以上であり、さらに好ましくは30質量部以上である。
【0075】
本開示の膜形成材料の製造方法において、上述した成分以外の他の成分を添加、混合することができる。例えば、界面活性剤、分散剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、増粘剤、湿潤剤、可塑剤、安定剤、消泡剤、染料、酸化防止剤、架橋促進剤、PH調整剤、防腐剤などの添加剤があげられる。
上記他の成分を添加する場合、その添加量は、特に限定されるものではないが、本開示の膜形成材料の製造方法により得られる膜形成材料100質量部に対し、2質量部以下が好ましく、1質量部以下が好ましい。また添加効果を発揮するためには0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましい。
【0076】
上記膜形成材料の製造方法により得られる膜形成材料は、上記無機粒子含有分散体に上記バインダー成分を混合したものであり、上記無機粒子、上記親水性基を有するポリマー、溶媒としてテルペン類を含み、さらに上記バインダー成分を含むため、無機粒子の均一分散性に優れる膜をはじめ無機粒子の分散状態が制御された膜を形成することができる。よって上記膜形成材料の製造方法により得られる膜形成材料は、後述する各種用途に用いられる各種機能性膜の製造に好ましく用いることができる。
【0077】
[用途]
上述した本開示の無機粒子含有分散体、および膜形成材料は、たとえば紫外線吸収膜、赤外線遮断膜、導電膜、絶縁膜等の各種機能性膜を形成するためのコーティング剤や、顔料インク、封止材、電子部品の基板をはじめ、広範な分野で用いることができる。
【実施例0078】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0079】
<透明性の評価>
各実施例、比較例で得られた無機粒子含有分散体を試料として、下記評価基準に従い目視により透明性を評価した。
〇:試料(分散体)に濁りがない。
×:試料(分散体)に濁りがある。
【0080】
<相溶性の評価>
各実施例、比較例で得られた無機粒子含有分散体および膜形成材料を試料として、調製後、1日静置し、静置後の試料について、下記評価基準に従い目視により相溶性(溶液安定性)を評価した。
〇:溶液に相分離がない。
×:溶液に相分離がある。もしくは、ゲル化が起きる。
【0081】
<膜の可視光透過率の評価>
各実施例、比較例で得られた膜形成材料を基材に塗布し、塗布された組成物を硬化した硬化膜を試料とした。紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所製、UV-3600)を使用して、波長750nmにおける平行線透過率を測定し、これを測定した試料である膜(硬化膜)の可視光透過率とした。
【0082】
<シリカナノ粒子合成例>
[合成例1]
(工程1A)
攪拌機、滴下口、温度計を備えた50LのSUS製容器にメタノール16500g、水3200g、25%アンモニア水1300g、アセトン110gを加え、30分間撹拌することで均一な混合溶液を得た。上記混合溶液の液温を49~51℃に調整し撹拌しながら、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)5700gを滴下口から90分間かけて滴下した。滴下終了後も引き続き上記液温を維持しながら30分間攪拌を行うことで、シリカ粒子のアルコール性溶液懸濁体(懸濁体1A)を得た。
(工程1B)
前記工程1Aで得られた懸濁体1Aを再び攪拌しながら50℃へ昇温し、液温および攪拌を維持しながら、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業製KBM-503)1620gを滴下口から260分間かけて滴下した。滴下終了後も引き続き上記液温を維持しながら15時間攪拌を行うことで、粒子表面にメタクリル基を有するシリカ粒子のアルコール性溶液懸濁体(懸濁体1B)を得た。
(工程1C)
前記工程1Bで得られた懸濁体1Bを、分画分子量約10000のセラミック製管状限外ろ過膜が装着された市販の限外ろ過膜を用いて、室温でメタノールを適宜加えながら溶媒置換を行い、SiO濃度が約11%になるまで濃縮することで、粒子表面にメタクリル基を有するシリカ粒子のメタノール懸濁体(懸濁体1C)を得た。
(工程1D)
前記工程1Cで得られた懸濁体1Cを、水素型強酸性陽イオン交換樹脂アンバーライトIR-120B(オルガノ社製)を充填したカラムに、室温条件下、1時間あたりの空間速度が3の通液速度で通過させることで、粒子表面にメタクリル基を有するシリカ粒子のメタノール懸濁体(懸濁体1D)を得た。
(工程1E)
前記工程1Dで得られた懸濁体1Dを1800g秤量し、ロータリーエバポレーターで減圧度30~300hPa、40℃で溶媒を減圧蒸留により濃縮しながら、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)を逐次添加することで懸濁体の溶媒をPGMに置換を行い、SiO濃度が約50%になるよう濃縮することで、粒子表面にメタクリル基を有するシリカ粒子のPGM分散体(分散体1)を得た。分散体中のシリカ粒子の平均粒子径は24nmであった。なお、平均粒子径は、日本電子社製走査型電子顕微鏡JSM-7600Fで撮影し、撮影したSEM像から任意の粒子50個について、直径をノギスで測定し、50個の直径の算術平均値を採用した。なお、走査型電子顕微鏡での写真撮影において、写真1枚の視野の中に粒子が50~100個となるように測定倍率を設定して行った。
【0083】
<無機粒子含有分散体>
[実施例1]
バイヤルに、親水性基を有するポリマーとして、スチレン/マレイン酸ハーフエステル共重合体である、アラスター700(荒川化学工業社製、酸価175~200)をプロピレングリコールモノプロピルエーテルに50質量%になるように溶解させた溶液を1.00g、溶媒として、プロピレングリコールモノプロピルエーテルを3.20g、リモネンを2.95g投入し、攪拌することにより均一な溶液を得た。得られた溶液に、上記合成例1において得られた分散体1を3.38g、酸化防止剤としてAO-30(ADEKA社製)を1-ブタノールに20質量%になるよう溶解させた溶液を0.1g、AO-503(ADEKA社製)を1-ブタノールに、20質量%になるよう溶解させた溶液を0.1g、それぞれ添加し、あわとり混錬機(シンキー社製、ARE-300)を用いて2000rpmで3分、脱気工程として2200rpmで2分混錬することにより、無機粒子含有分散体(1)を得た。無機粒子含有分散体(1)における透明性等の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0084】
[比較例1]
実施例1における、溶媒成分の種類、量を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様にして、無機粒子含有分散体(c1)を調製した。比較例1で得られた無機粒子含有分散体(c1)について透明性等の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0085】
<膜形成材料および膜>
[実施例2]
実施例1で得られた無機粒子含有分散体(1)10.73gに、バインダー成分として、アミノ変性シリコーンである、KF-8012(信越化学工業社製、官能基当量2200g/mol)を3.44g添加し、あわとり混錬機(シンキー社製、ARE-300)を用いて2000rpmで3分、脱気工程として2200rpmで2分混錬することにより、膜形成材料(1)を得た。膜形成材料(1)における相溶性の評価を行った。その結果を表4に示す。また、得られた膜形成材料(1)を、一定の厚みで平らなガラス板上に塗布し、100℃で30分、200℃で30分、250℃で30分、300℃で1時間加熱することで熱硬化させ、ガラス板上に硬化物膜(1)を形成した。硬化物膜(1)における可視光透過率の評価を行った。その結果を表4に示す。
【0086】
[実施例3]
実施例2におけるバインダー成分の種類、量を表3に示したように変更した以外は、実施例2と同様にして、膜形成材料(2)を調製し、さらに実施例2と同様にして、硬化物膜(2)を得た。得られた膜形成材料(2)について相溶性の評価を、硬化物膜(2)について可視光透過率の評価を行った。その結果を表4に示す。
【0087】
[比較例2]
表3に示すように、実施例2における無機粒子含有分散体(1)のかわりに無機粒子含有分散体(c1)を用いた以外は、実施例2と同様にして、膜形成材料(c1)を調製しようとしたが、ゲル化が起きてしまい、均一な組成物を得ることができず、硬化物膜を作成することができなかった。
【0088】
各実施例、比較例で用いた市販品等(表1、表3に記載)は以下のとおりである。
・アラスター700:荒川化学工業社製、スチレン-マレイン酸樹脂半エステル、酸価175~200。
・アデカスタブ AO-30:ADEKA社製、フェノール系酸化防止剤、
・アデカスタブ AO-503:ADEKA社製、チオエーテル系酸化防止剤
・KF-8012:信越化学工業社製、アミノ変性シリコーンオイル(両末端型)、官能基当量2200g/mol。
・KF-864:信越化学工業社製、アミノ変性シリコーンオイル(側鎖型)、官能基当量3800g/mol。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
【表4】
【0093】
表2に示すように、実施例1において得られた無機粒子含有分散体(1)は透明性および相溶性に優れるものであることが確認された。よって本開示の無機粒子含有分散体は無機粒子の分散性に優れるとともに親水性基を有するポリマーの溶解性にも優れるものであることが明らかである。また、表4に示すように、実施例2および実施例3において調製した膜形成材料はいずれも相溶性に優れ、各膜形成材料を用いて得られた膜(硬化物膜)はいずれも可視光を透過することが確認された。よって本開示の無機粒子含有分散体にバインダーを添加することで膜形成材料が調製可能であり、得られた膜形成材料を用いて無機粒子の分散性に優れる膜が得られることが明らかである。