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特開2024-29662情報予測装置、情報予測プログラム、情報予測方法、シミュレーション装置、学習済モデル構築装置、学習済モデル、学習済モデル構築プログラムおよび学習済モデル構築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029662
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】情報予測装置、情報予測プログラム、情報予測方法、シミュレーション装置、学習済モデル構築装置、学習済モデル、学習済モデル構築プログラムおよび学習済モデル構築方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20240228BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20240228BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132040
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】高倉 優理子
(72)【発明者】
【氏名】森 純一
(72)【発明者】
【氏名】辻森 昌義
【テーマコード(参考)】
3C100
5L049
【Fターム(参考)】
3C100AA03
3C100AA05
3C100AA12
3C100AA18
3C100AA47
3C100BB15
3C100BB21
3C100EE10
5L049CC03
(57)【要約】
【課題】製造ラインにおける製造対象物の流れのシミュレーションを容易かつ正確に行えるようにする。
【解決手段】情報予測装置(100)は、製造ラインにおける製造対象物の流れをシミュレートする離散事象シミュレータを動作させるための製造情報を算出するものであって、製造対象物が、製造ラインにおける予測対象の製造情報が適用される設備に至るまでに得られる製造実績情報を取得する情報取得部(41)と、過去の製造対象物の製造完了までに得られた過去の製造実績情報と、過去の製造対象物の製造に関する過去の製造情報との関係性を学習した学習済モデルを用いて、製造実績情報に対応した新たな製造情報を算出する予測部(42)と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造ラインにおける製造対象物の流れをシミュレートする離散事象シミュレータを動作させるための製造情報を算出する情報予測装置であって、
前記製造対象物が、前記製造ラインにおける予測対象の製造情報が適用される設備に至るまでに得られる、前記製造対象物に関する情報である製造実績情報を取得する情報取得部と、
過去の製造対象物の製造完了までに得られた過去の前記製造実績情報と、前記過去の製造対象物の製造に関する過去の製造情報との関係性を用いて、取得した前記製造対象物の前記製造実績情報に対応した新たな製造情報を算出する予測部と、
を備える情報予測装置。
【請求項2】
前記関係性は、前記過去の製造実績情報と、前記過去の製造情報と、の組を教師データとする機械学習により構築されている学習済モデルである、請求項1に記載の情報予測装置。
【請求項3】
前記製造実績情報は、発注者から受けた注文内容を示す注文情報、および製造中の前記製造対象物に関する情報である経過情報の少なくとも一方を含む、請求項2に記載の情報予測装置。
【請求項4】
前記製造対象物は鋼材であり、
前記製造情報は、前記鋼材を分割する際の分割数を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の情報予測装置。
【請求項5】
前記予測部が取得した前記製造情報に基づいて、前記離散事象シミュレータに入力するための入力データを生成するデータ生成部を更に備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の情報予測装置。
【請求項6】
前記情報取得部が取得した前記製造実績情報と、前記予測部が算出した前記新たな製造情報と、の組を含む教師データを用いた機械学習により、前記学習済モデルを更新する更新部を更に備える、請求項2または3に記載の情報予測装置。
【請求項7】
請求項1に記載の情報予測装置としてコンピュータを機能させるための情報予測プログラムであって、
上記情報取得部および上記予測部としてコンピュータを機能させるための情報予測プログラム。
【請求項8】
製造ラインにおける製造対象物の流れをシミュレートする離散事象シミュレータを動作させるための製造情報を算出する情報予測方法であって、
前記製造対象物が、前記製造ラインにおける予測対象の製造情報が適用される設備に至るまでに得られる、前記製造対象物に関する情報である製造実績情報を取得するステップと、
過去の製造対象物の製造完了までに得られた過去の前記製造実績情報と、前記過去の製造対象物の製造に関する過去の製造情報との関係性を用いて、取得した前記製造対象物の前記製造実績情報に対応した新たな製造情報を算出するステップと、
を有する情報予測方法。
【請求項9】
離散事象シミュレータを用いて、製造ラインにおける製造対象物の流れをシミュレートするシミュレーション装置であって、
前記離散事象シミュレータの構造を取得する構造取得部と、
前記製造対象物が、前記製造ラインにおける予測対象の製造情報が適用される設備に至るまでに得られる、前記製造対象物に関する情報である製造実績情報を取得する情報取得部と、
過去の製造対象物の製造完了までに得られた過去の前記製造実績情報と、前記過去の製造対象物の製造に関する過去の製造情報との関係性を用いて、取得した前記製造対象物の前記製造実績情報に対応した新たな製造情報を算出する予測部と、
前記離散事象シミュレータに、前記新たな製造情報を適用して、前記製造ラインにおける前記製造対象物の流れをシミュレートする実施部と、
を備えるシミュレーション装置。
【請求項10】
製造ラインにおける製造対象物の流れをシミュレートする離散事象シミュレータを動作させるための製造情報を算出するための学習済モデルを構築する学習済モデル構築装置であって、
過去の製造対象物の製造完了までに得られた過去の製造実績情報を取得する第一取得部と、
過去の製造対象物の製造に関する過去の製造情報を取得する第二取得部と、
取得した前記過去の製造実績情報と過去の製造情報との関係性を学習した学習済モデルを構築する構築部と、
を備える学習済モデル構築装置。
【請求項11】
過去の製造対象物の製造完了までに得られた前記製造対象物に関する情報である過去の製造実績情報と、前記過去の製造対象物の製造に関する過去の製造情報との関係性を学習し、新たな製造実績情報が入力されると当該製造実績情報に対応した新たな製造情報を出力する学習済モデル。
【請求項12】
請求項10に記載の学習済モデル構築装置としてコンピュータを機能させるための学習済モデル構築プログラムであって、
前記第一取得部、前記第二取得部および前記構築部としてコンピュータを機能させるための学習済モデル構築プログラム。
【請求項13】
製造ラインにおける製造対象物の流れをシミュレートする離散事象シミュレータを動作させるための製造情報を予測するための学習済モデルを構築する学習済モデル構築方法であって、
過去の製造対象物の製造完了までに得られた前記過去の製造対象物に関する情報である過去の製造実績情報を取得するステップと、
過去の製造対象物の製造に関する過去の製造情報を取得するステップと、
取得した過去の製造実績情報と過去の製造情報との関係性を学習した学習済モデルを構築するステップと、
を有する学習済モデル構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報予測装置、情報予測プログラム、情報予測方法、シミュレーション装置、学習済モデル構築装置、学習済モデル、学習済モデル構築プログラムおよび学習済モデル構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材の製造ラインは、非常に複雑な構造となっている。この理由は、一の製品を製造するのに複数の異なる工程を経る必要があること、同一製造条件の多数の製品を連続して製造するため、各工程の開始タイミングと順序が製品ごとに異なってくる場合があること、製品の注文のパターンは数千から数万種類に及ぶ上、注文毎に鋼材に施す処理が異なってくること、等による。このため、多数の鋼材を効率的に製造するためには、処理設備の能力や搬送装置の搬送状況を正確に把握・予測し、適切な生産計画を立案することが重要となる。
【0003】
従来、鋼材の生産計画を立案するための各種技術が提案されている。例えば特許文献1には、置場、搬送装置、搬送物、及び物流計画立案の方針から物流モデルを構築する物流モデル構築手段と、構築した物流モデルに基づいて数理最適化手法により物流計画を立案する物流計画立案手段と、立案した物流計画を出力する出力手段と、を備えた物流計画立案装置について記載されている。また、特許文献2には、中間製品の量に関する情報と置場間の経路情報とを含む入力情報を入力し、入力情報に基づく数理モデルを作成し、数理モデルに基づいて置場における中間製品の在庫量の推移を出力する、在庫量推移シミュレーション方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-120561号公報
【特許文献2】特開2019-174865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、物流モデルにおける制約を数式で表す必要がある。この数式による物流モデルの構築には、実際に鋼材を製造してみないと得られない不確定な要素の記述が必要となるため、手間がかかっていた。不確定な要素には、例えば、工場の処理能力が含まれる。また、注文情報に含まれている梱包単重の下限・上限を加味しながら、鋼材における疵が発生した箇所を切除(分割)することが従来行われてきた。その際に行われる鋼材をいくつに分割するか(分割数)の決定も、オペレータの判断による不確定な要素の一つであった。
また、特許文献2に記載の技術は、本来は離散量である鋼材の量を連続量として扱っている。このため、特許文献2に記載の技術では、搬送装置の取り合いや置場の占有率を正確に考慮した正確なシミュレーションを行うことが困難であった。
本発明の一態様は、製造ラインにおける、鋼材を含む製造対象物の流れのシミュレーションを容易かつ正確に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る情報予測装置は、製造ラインにおける製造対象物の流れをシミュレートする離散事象シミュレータを動作させるための製造情報を算出する情報予測装置であって、前記製造対象物が、前記製造ラインにおける予測対象の製造情報が適用される設備に至るまでに得られる、前記製造対象物に関する情報である製造実績情報を取得する情報取得部と、過去の製造対象物の製造完了までに得られた過去の前記製造実績情報と、前記過去の製造対象物の製造に関する過去の製造情報との関係性を用いて、取得した前記製造対象物の前記製造実績情報に対応した新たな製造情報を算出する予測部と、を備える。
【0007】
また、本発明の他の態様に係る情報予測方法は、製造ラインにおける製造対象物の流れをシミュレートする離散事象シミュレータを動作させるための製造情報を算出する情報予測方法であって、前記製造対象物が、前記製造ラインにおける予測対象の製造情報が適用される設備に至るまでに得られる、前記製造対象物に関する情報である製造実績情報を取得するステップと、過去の製造対象物の製造完了までに得られた過去の前記製造実績情報と、前記過去の製造対象物の製造に関する過去の製造情報との関係性を用いて、取得した前記製造対象物の前記製造実績情報に対応した新たな製造情報を算出するステップと、を有する。
【0008】
また、本発明の他の態様に係るシミュレーション装置は、離散事象シミュレータを用いて、製造ラインにおける製造対象物の流れをシミュレートするシミュレーション装置であって、前記離散事象シミュレータの構造を取得する構造取得部と、前記製造対象物が、前記製造ラインにおける予測対象の製造情報が適用される設備に至るまでに得られる、前記製造対象物に関する情報である製造実績情報を取得する情報取得部と、過去の製造対象物の製造完了までに得られた過去の前記製造実績情報と、前記過去の製造対象物の製造に関する過去の製造情報との関係性を用いて、取得した前記製造対象物の前記製造実績情報に対応した新たな製造情報を算出する予測部と、前記離散事象シミュレータに、前記新たな製造情報を適用して、前記製造ラインにおける前記製造対象物の流れをシミュレートする実施部と、を備える。
【0009】
また、本発明の他の態様に係る学習済モデル構築装置は、製造ラインにおける製造対象物の流れをシミュレートする離散事象シミュレータを動作させるための製造情報を算出するための学習済モデルを構築する学習済モデル構築装置であって、過去の製造対象物の製造完了までに得られた過去の前記製造実績情報を取得する第一取得部と、過去の製造対象物の製造に関する過去の製造情報を取得する第二取得部と、取得した前記過去の製造実績情報と過去の製造情報との関係性を学習した学習済モデルを構築する構築部と、を備える。
【0010】
また、本発明の他の態様に係る学習済モデルは、過去の製造対象物の製造完了までに得られた前記製造対象物に関する情報である過去の製造実績情報と、前記過去の製造対象物の製造に関する過去の製造情報との関係性を学習し、新たな製造実績情報が入力されると当該製造実績情報に対応した新たな製造情報を出力する。
【0011】
また、本発明の他の態様に係る学習済モデル構築方法は、製造ラインにおける製造対象物の流れをシミュレートする離散事象シミュレータを動作させるための製造情報を予測するための学習済モデルを構築する学習済モデル構築方法であって、過去の製造対象物の製造完了までに得られた前記過去の製造対象物に関する情報である過去の製造実績情報を取得するステップと、過去の製造対象物の製造に関する過去の製造情報を取得するステップと、取得した過去の製造実績情報と過去の製造情報との関係性を学習した学習済モデルを構築するステップと、を有する。
【0012】
本発明の各態様に係る情報予測装置、学習済モデル構築装置およびシミュレーション装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記情報予測装置、学習済モデル構築装置およびシミュレーション装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記情報予測装置、学習済モデル構築装置およびシミュレーション装置をコンピュータにて実現させる情報予測装置の情報予測プログラム、学習済モデル構築装置の学習済モデル構築プログラム、シミュレーション装置のシミュレーションプログラム、およびそれらの少なくともいずれかを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、製造ラインにおける製造対象物の流れのシミュレーションを容易かつ正確に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る情報予測装置で用いられる離散事象シミュレータの構成を示すブロック図である。
図2】同発明の一態様の実施形態に係る情報予測装置の機能的構成を示す図である。
図3】同実施形態に係る情報予測方法の流れを示すフローチャートである。
図4】同発明の他の態様の実施形態に係る学習済モデル構築装置の機能的構成を示す図である。
図5】同実施形態に係る学習済モデル構築方法の流れを示すフローチャートである。
図6】同発明の他の態様の実施形態に係るシミュレーション装置の機能的構成を示す図である。
図7】同実施形態に係るシミュレーション方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0016】
<発明1実施形態>
まず、本発明の一の態様(以下、発明1)である情報予測に関する発明(情報予測装置、情報予測方法)の一実施形態について、詳細に説明する。
【0017】
[離散事象シミュレータ]
はじめに、発明1によって予測される新たな製造情報(詳細後述)が適用される離散事象シミュレータS(以下、シミュレータS)の構造の一例について説明する。図1はシミュレータSの構造を示すブロック図である。
【0018】
本実施形態に係るシミュレータSは、製造ラインにおける製造対象物の流れをシミュレートする。本実施形態に係る製造対象物は鋼材である。したがって、本実施形態に係る製造ラインは製鉄所の少なくとも一部である。なお、製造対象物は、鋼材以外のものであってもよい。以下、製造対象物を鋼材とした場合を例にして各発明の実施形態について説明していく。本実施形態に係るシミュレータSは、製造ラインの一部における鋼材の流れをシミュレートする。なお、シミュレータSは、離散事象シミュレーション技術を用いて作成された一般的なものでよい。
【0019】
鋼材は、例えば、連続鋳造後の鋼片(スラブ、ブルーム、ビレット)、熱間圧延後~冷間圧延前のコイル、冷間圧延後~表面処理(めっき等)前のコイル等を含む。本実施形態における鋼材には、注文者に納品される最終製品と、最終製品へと作り込まれる途中の中間製品と、が含まれる。鋼材は、個数(離散量として)で計数可能なものである。
【0020】
図1に示すシミュレータSは、少なくとも一つの工場1と、少なくとも一つの置場2と、少なくとも一つの搬送装置3と、を有する構造となっている。工場1は、内部の設備を用い、鋼片やコイルなどの鋼材に対して、最終製品を製造するのに必要な処理の少なくとも一部を行う。置場2は、次工程での処理のために鋼材を一時的に保管しておく設備であり、各工場1の前段や後段、最終製品を搬出する船やトラックなど前面など工場1の外部に設けられる。搬送装置3は、例えばクレーンや、キャリア(無人搬送車(Automatic Guided Vehicle:AGV)やフォークリフト)等の鋼材を運ぶ設備であり、工場1と置場2との間や、置場2間に配置される。なお、現実的には、各工場1内にも一時的な保管場所(後述するバッファなど)が設けられる場合や、各工場1内や各置場2(21~23)内に搬送装置が配置される場合もあるが、シミュレータSの構造への反映程度はその目的等に応じて適宜定められる。
【0021】
〔工場〕
本実施形態に係る工場1は、第一工場11、第二工場12、および第三工場13の3つとなっている。
【0022】
(第一工場)
第一工場11は鉄鋼製品製造に必要な処理を施す工場であり、前面(入口)および後面(出口)に、それぞれ図示しないバッファを備える。バッファは、搬送装置3による搬送と工場1からの払い出しが同じピッチでない場合に工場1が停止してしまうのを防ぐため、一時的に鋼材をためる機能としてシミュレータSの実装上設定されている。第一工場11は、前面バッファに載置された鋼材を受け取る。そして、第一工場11では、受け取った鋼材に、冷間圧延、焼鈍、検査などを施す。第一工場11では、必要に応じて、コイルの疵部分の切除等のために鋼材を二以上に分割する。その後、分割された鋼材は後面バッファへ払い出される。
【0023】
(第二工場)
第一本実施形態に係る第二工場12は、第一工場11と同様、鉄鋼製品製造に必要な処理を行う工場である。第二工場12は、第二工場12は、前面および後面に、それぞれ図示しないバッファを備える。第二工場12では、前面バッファに載置された鋼材を受け取る。そして、第二工場12では、受け取った鋼材に、第一工場11での処理と同様の処理を施す。なお、第二工場12は、第一工場11と異なる処理を施すものであってもよい。第一工場11が冷延工場または焼鈍工場である場合、第二工場12では、必要に応じて、鋼材を二以上に分割する。その後、分割された鋼材は後面バッファへ払い出される。
【0024】
(第三工場)
第三工場13は、鉄鋼製品製造に必要な処理を施す工場のうち、第一工場11または第二工場12を出た後の次工程を担う工場である。また、第三工場13は、前面および後面に、それぞれ図示しないバッファを備える。第三工場13では、前面バッファに載置された鋼材を受け取る。そして、第三工場13では、受け取った鋼材に、次工程に対応する処理(冷間圧延、焼鈍、またはめっき)を施す。その後、分割された鋼材は後面バッファへ払い出される。
【0025】
〔置場〕
本実施形態に係る置場2は、第一置場21、第二置場22、仮置場23の3つとなっている。
【0026】
(第一置場)
第一置場21は、第一工場11および第二工場12の上流側に設けられている。第一置場21は、上流工程で処理が施された鋼材が一時的に載置される場所である。
【0027】
(第二置場)
第二置場22は、第一工場11および第二工場12と第三工場との間に設けられている。第二置場22は、第一工場11または第二工場12で処理が施された鋼材が一時的に載置される場所である。
【0028】
(仮置場)
仮置場23は、第二置場22の近傍に設けられている。仮置場23は、第二置場22へ載置しきれなくなった鋼材が一時的に載置される場所である。
【0029】
〔搬送装置〕
本実施形態に係る搬送装置3は、第一工場クレーン31、第二工場クレーン32、第二置場クレーン33、第三工場クレーン34、第一キャリア35、第二キャリア36の6つとなっている。
【0030】
(第一工場クレーン)
第一工場クレーン31は、第一工場11の前面側に設けられている。第一工場クレーン31は、第一置場21から第一工場11の前面バッファへ鋼材を搬送する。
【0031】
(第二工場クレーン)
第二工場クレーン32は、第二工場12の前面側に設けられている。第二工場クレーン32は、第一置場21から第二工場12の前面バッファへ鋼材を搬送する。なお、第二工場クレーン32は、第一工場クレーン31が兼ねていてもよい。
【0032】
(第二置場クレーン)
第二置場クレーン33は、第二置場22に設けられている。第二置場クレーン33は、第一工場11の後面バッファから第二置場22へ鋼材を搬送する。また、第二置場クレーン33は、第二工場12の後面バッファから第二置場22へ鋼材を搬送する。また、第二置場クレーン33は、第二置場22から第三工場13の前面バッファへ鋼材を搬送する。また、第二置場クレーン33は、第二置場22から第一キャリア35へ鋼材を搬送する。また、第二置場クレーン33は、第二キャリア36から第二置場22へ鋼材を搬送する。
【0033】
(第三工場クレーン)
第三工場クレーン34は、第三工場13の後面側に設けられている。第三工場クレーン34は、第三工場13の後面バッファから他の工場または他の置場へ鋼材または最終製品を搬送する。
【0034】
(第一キャリア、第二キャリア)
第一キャリア35は、第二置場22から仮置場23へ鋼材を搬送する。第二キャリア36は、仮置場23から第二置場22へ鋼材を搬送する。本実施形態に係る第一キャリア35および第二キャリア36はAGVである。なお、第一キャリア35および第二キャリア36の一方のキャリアが、第二置場22から仮置場23への搬送、および仮置場23から第二置場22への搬送の両方を担うようになっていてもよい。その場合、シミュレータSは、他方のキャリアを備える構造となっていなくてもよい。
【0035】
上記各工場1、各置場2、および各搬送装置3には、それぞれパラメータ、構造情報等が設定される。これらは、シミュレータSの構造に応じて決まる情報で、各鋼材の製造毎に変動することはない固定情報である。
【0036】
具体的には、各置場2には、例えば下記表1に示したように、収容能力(個数)がパラメータとして設定される。また、各置場2には、搬入元、搬出先、搬入順、搬出順、搬入に用いられる搬送装置3、および搬送に用いられる搬送装置3が構造情報として設定される。
【0037】
【表1】
【0038】
各工場1および各搬送装置3には、例えば下記表2に示したように、対応可能個数および所用時間がパラメータとして設定される。また、各工場1および各搬送装置3には、ジョブ(表2参照)が構造情報として設定される。対応可能個数は、各工場1(各搬送装置3)が一回の処理(搬送)で同時に処理(搬送)することのできる鋼材の個数である。搬送能力が設定される。所用時間は、各工場1(各搬送装置3)が一回の処理(搬送)に要する時間である。ジョブは、各工場1(各搬送装置3)の動作である。所要時間に「コイル属性」とあるのは、鋼材のサイズ、品質等に応じて変える数値であることを意味する。このように、本実施形態に係るシミュレータSは、鋼材を実際に製造し始めて初めて分かる不確定な情報(オペレータの判断等)を必要としないシンプルな構造となっている。
【0039】
【表2】
【0040】
また、シミュレータSには、上記パラメータ、構造情報の他に、製造情報が適用される。製造情報は、通板ルート、諸元値等を含む。通板ルートは、例えば第一工場11と第二工場12のどちらで処理するかを示す情報を含む。諸元値は、例えば、鋼材を分割する際の鋼材の分割数、および冷延などのジョブの所要時間(処理時間)の少なくとも1つを含む。鋼材の分割は、鋼材における欠陥(表面欠陥など)の位置や注文で指定された出荷時の重量などを加味しながら必要に応じて行われる。本実施形態に係るシミュレータSは、製造情報が、入力データ(詳細後述)の形で適用される。
【0041】
以上説明してきたシミュレータSを用いれば、鋼材の製造ライン特有の(流体等の製造ラインにはない)条件(例えば、個々の鋼材を搬送装置3で搬送すること、搬送装置3が1回に運ぶことのできる鋼材には限りがあること、運びたいときに搬送装置3がいない場合があること等)を加味した(実際の鋼材製造プロセスに即した)シミュレーションが可能となる。
【0042】
〔シミュレータその他〕
なお、シミュレータSの構造は、特に限定されるものではない。例えば、工場1は二つ以下であってもよいし、四つ以上であってもよい。また、置場2は、一つであってもよいし、三つ以上であってもよいし、無くてもよい。また、仮置場23およびキャリア35,36は、無くてもよいし、それぞれ二つ以上あってもよい。また、複数の工場1が並列に設けられていなくてもよいし、3つ以上の工場1が並列に設けられていてもよい。また、並列に設けられた二以上の工場1の組が複数あってもよい。また、搬送装置3は、一つであってもよいし、無くてもよい。また、鋼材の分割は、上記のように一つの工場1の中の複数ある工程の一つとして行ってもよいし、工場1単位で(分割専用の工場で)行ってもよい。
【0043】
[情報予測装置]
次に、情報予測装置100について説明する。図2は、情報予測装置100の機能的構成を示すブロック図である。
【0044】
情報予測装置100は、上記シミュレータSを動作させるための製造情報を予測するものである。情報予測装置100は、図2に示したように、演算部4と、通信部5と、を備える。
【0045】
〔通信部〕
通信部5は、他の装置(例えば、後述する学習済モデル構築装置200、シミュレーション装置300、記憶装置等)との間で、各種データ、各種信号等を、有線または無線で送受信する。本実施形態に係る通信部5は、通信モジュールで構成されている。
【0046】
〔演算部〕
演算部4は、情報取得部41と、予測部42と、データ生成部43と、出力制御部44と、を備える。
【0047】
(情報取得部)
情報取得部41は、製造実績情報を取得する。製造実績情報は、製造対象の鋼材(製造対象物)に関する情報である。製造対象の鋼材に関する製造実績情報は、注文情報の発生から、製造対象の鋼材が、製造ラインにおける予測対象の製造情報が適用される設備(例えば鋼材を分割する工場)に至るまでに得られる情報である。前記製造情報が適用される設備は、中間製品を最終製品とする処理を施す工場1や、製造された最終製品を搬送する搬送装置3、最終製品の置場2等を含んでいてもよい。なお、製造実績情報は、過去に製造した鋼材に関する過去の製造実績情報を含んでいてもよい。
【0048】
本実施形態に係る製造実績情報(製造対象の鋼材に関する製造実績情報および過去の製造実績情報)は、注文情報および経過情報の少なくとも一方を含む。注文情報は、発注者から受けた注文内容を示す情報であり、鋼材の製造開始前に得られる情報である。注文情報は、注文数、用途、需要家、検査基準、出荷時の重量、および出荷時の幅などの少なくともいずれかを含む。経過情報は、製造中の鋼材に関する情報であり、製造開始後に得られる情報である。経過情報は、欠陥(表面欠陥など)の有無、欠陥の位置、製造途中の鋼材の重量、製造途中の鋼材の幅などの少なくともいずれかを含む。製造実績情報をこのような内容とすることで、注文情報、あるいは経過情報を考慮したシミュレーションを行う上で必要となる新たな製造情報を容易に得ることができる。本実施形態に係る情報取得部41は、他の装置から通信部5が受信した製造実績情報を取得する。
【0049】
(予測部)
予測部42は、過去の鋼材の製造完了までに得られた過去の製造実績情報と、過去の鋼材の製造に関する過去の製造情報との関係性を用いて、上記情報取得部41が取得した製造実績情報に対応した新たな製造情報を算出する。本実施形態に係る予測部42は、製造実績情報(注文情報、経過情報等)から製造情報(通板ルート、諸元値等)を算出する学習済モデルを用いて、新たな製造情報を算出する。この学習済モデルの構築方法については後述する。既に説明した通り、製造情報は諸元値を含み、諸元値は鋼材の分割数を含む。製造情報をこのような内容とすることで、鋼材の分割を考慮したシミュレーションを行う上で必要となる新たな製造情報を容易に得ることができる。本実施形態に係る予測部42は、学習済モデルを学習済モデル構築装置200から取得して算出する。なお、予測部42は、学習済モデル構築装置200以外の他の装置から学習済モデルを取得するよう構成されていてもよい。
【0050】
また、以上説明してきた(特に、経過情報を製造実績情報に含めた)学習済モデルを用いれば、鋼材の製造ライン特有の(流体等の製造ラインにはない)条件(例えば、個々の鋼材を搬送装置3で搬送すること、搬送装置3が1回に運ぶことのできる鋼材には限りがあること、運びたいときに搬送装置3がいない場合があること等)を加味した(実際の鋼材製造プロセスに即した)製造情報の算出が可能となる。なお、情報予測装置100は、記憶部を備え、学習済モデルを記憶部に記憶しておくようになっていてもよい。その場合、予測部42は、記憶部から取得した学習済モデルを用いて算出するようになっていてもよい。
【0051】
(データ生成部)
データ生成部43は、予測部42が算出した製造情報に基づいて、シミュレータSに入力するための入力データを生成する。本実施形態に係るデータ生成部43が生成する入力データは、例えば下記表3に示したように、入側ナンバー、出側ナンバー、工程、工程内通板順、および入側重量を、鋼材毎に示した情報となっている。工程内通板順は、鋼材を通板させる順序を工程毎に示している。入側重量は、工程に入る際の鋼材の重量を示している。設備の処理能力は1時間当たりの処理量t/hで規定される。このため、各鋼材の重量を示しておくことで、処理にかかる時間を計算することができる。表3における例えばC001のように、入側Noが同一の鋼材が複数あり、かつ、出側Noが異なる鋼材の場合は、工程Aの処理が施された後、分割されたことを示している。また、入側Noと出側Noとが同じ工程の鋼材(C002、C003、C0011)は、その工程の処理が施された後、分割されずに次工程に進むことを示している。すなわち、表3におけるC001の鋼材は、当初の重量が20tあり、工程Aを1番目に通板する。そして、工程Aを通板後、C001の鋼材は、10tのC0011と10tのC0012に分割される。その後、C0011の鋼材は、工程Bを2番目に、C0012の鋼材は、工程Bを4番目に通板する。データ生成部43がこのような入力データを生成することにより、入力データを入力するだけで、シミュレータSが動くようになる。このため、製造情報から入力データを生成する工程を別に設ける手間を省くことができる。なお、入力データの工程内通板順は、鋼材を工程に投入する時刻であってもよい。また、入力データの生成を他の装置を用いて行う場合、情報予測装置100は、データ生成部43を備えていなくてもよい。
【0052】
【表3】
【0053】
(出力制御部)
出力制御部44は、データ生成部43が生成した入力データを出力するよう通信部5を制御する。これにより、通信部5は、入力データを他の装置(例えば、シミュレーション装置300等)へ送信する。なお、情報予測装置100がデータ生成部43を備えない場合、出力制御部44は、予測部42が算出した製造情報を出力することになる。
【0054】
〔情報予測装置その他〕
なお、情報予測装置100は、表示装置、プリンタ等を備えていてもよい。その場合、出力制御部44は、新たな製造情報を表示するよう表示装置を制御したり、製造情報を印刷するようプリンタを制御したりするようになっていてもよい。また、情報取得部41および出力制御部44は、記録媒体等を介して新たな製造実績情報の取得および入力データの出力を行うようになっていてもよい。この場合、情報予測装置100は、通信部5を備えていなくてもよい。
【0055】
[情報予測方法]
次に、情報予測方法について説明する。図3は、情報予測方法の流れを示すフローチャートである。
【0056】
情報予測方法は、シミュレータSを動作させるための製造情報を予測する方法である。情報予測方法は、図3に示したように、情報取得ステップA1と、予測ステップA2と、データ生成ステップA3と、出力ステップA4と、を有する。また、本実施形態に係る情報予測方法は、上記情報予測装置100を用いて行うようになっている。
【0057】
(情報取得ステップ)
はじめの情報取得ステップA1では、製造実績情報(製造対象の鋼材(製造対象物)に関する製造実績情報)を取得する。本実施形態に係る情報取得ステップA1では、上記情報予測装置100の情報取得部41が他の装置から製造実績情報を取得する。なお、この情報取得ステップA1では、上記情報予測装置100以外の装置を用いて新たな製造実績情報を取得してもよい。
【0058】
(予測ステップ)
製造実績情報を取得した後は、予測ステップA2へ移る。予測ステップA2では、上記学習済モデルを用いて、上記情報取得ステップA1において取得した製造実績情報に対応した新たな製造情報を算出する。本実施形態に係る予測ステップA2では、上記情報予測装置100の予測部42が新たな製造情報を算出する。
【0059】
(データ生成ステップ)
製造情報を予測した後は、データ生成ステップA3へ移る。データ生成ステップA3では、予測ステップA2において算出した新たな製造情報に基づいて、シミュレータSに入力するための入力データを生成する。本実施形態に係るデータ生成ステップA3では、上記情報予測装置100のデータ生成部43が入力データを生成する。なお、このデータ生成ステップA3では、上記情報予測装置100以外の装置を用いて入力データを生成してもよい。
【0060】
(出力ステップ)
入力データを生成した後は、出力ステップA4へ移る。出力ステップA4では、入力データを出力する。本実施形態に係る出力ステップA4では、上記情報予測装置100の通信部5が入力データを出力する。なお、上記データ生成ステップA3をとばした場合、子の出力ステップA4では、新たな製造実績情報を出力することになる。
【0061】
〔発明1作用効果〕
従来、鋼材の分割数等を含む製造情報は、注文情報や経過情報に従ってオペレータが製造開始後に決定する不確定な情報を含んでおり、容易に予測できるものではなかった。しかし、上記構成によれば、シミュレータSがシミュレーションを行う上で必要となる新たな製造情報を、学習済モデルを用いることにより容易に予測することができる。その結果、シミュレータSを用いて、鋼材の製造ラインにおける搬送装置3の取り合い等を考慮した鋼材の流れのシミュレーションを容易かつ正確に行うことができる。
【0062】
また、従来は、鋼材の製造を開始してからしか得ることのできなかった製造情報を、製造の開始前に得ることができるため、製造計画段階でのシミュレーションが可能となり、鋼材の製造を開始する前に、トラブルが発生する可能性を検知することが可能となる。また、鋼材の製造を開始した後(製造中)に得られる製造実績情報に基づいて、鋼材の製造を開始した後であってもシミュレートすることができる。
【0063】
また、このような構成によれば、シミュレータSのシミュレーション精度が向上することにより、鋼材の製造ラインにおける各装置の動作効率が向上し、消費エネルギー量を低減することができる。これにより、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献できる。
【0064】
<発明2実施形態>
次に、本発明の他の態様(以下、発明2)である学習済モデル構築に関する発明(学習済モデル構築装置、学習済モデル構築方法)の一実施形態について、詳細に説明する。
【0065】
[学習済モデル構築装置]
はじめに、学習済モデル構築装置200について説明する。図4は、学習済モデル構築装置200の機能的構成を示すブロック図である。
【0066】
学習済モデル構築装置200は、上記シミュレータSに適用する新たな製造情報を算出する学習済モデルを構築する。学習済モデル構築装置200は、図4に示したように、演算部4Aと、通信部5Aと、記憶部6と、を備える。
【0067】
〔通信部〕
通信部5Aは、他の装置(例えば、情報予測装置100、記憶装置等)との間で、各種データ、各種信号等を、有線または無線で送受信する。本実施形態に係る通信部5Aは、通信モジュールで構成されている。
【0068】
〔記憶部〕
記憶部6は、不揮発性メモリで構成されている。また、記憶部6は、構築前、または構築中の未学習モデルを記憶している。また、本実施形態に係る記憶部6は、後述する学習済モデルを記憶することが可能となっている。
【0069】
〔演算部〕
演算部4Aは、学習済モデル構築装置200の各部を制御する。演算部4Aは、第一取得部41Aと、第二取得部41Bと、出力制御部44Aと、構築部45と、を備える。
【0070】
(第一取得部)
第一取得部41Aは、過去の製造実績情報を取得する。過去の製造実績情報は、過去に製造された鋼材についての注文情報の発生から鋼材の製造完了までに得られた過去に製造された鋼材に関する情報(実績)である。なお、過去に製造された鋼材は、全て同一の製造ラインで製造されたものであってもよいし、そうでないもの(例えば、A地方の製造ラインとB地方の製造ラインでそれぞれ得られた情報)であってもよい。第一取得部41Aは、過去の製造実績情報を、機械学習に必要な数取得する。本実施形態に係る第一取得部41Aは、他の装置から通信部5Aが受信した過去の製造実績情報を取得する。
【0071】
(第二取得部)
第二取得部41Bは、過去の製造情報を取得する。過去の製造情報は、過去の鋼材の製造に関する情報である。本実施形態に係る第二取得部41Bは、例えば下記表4に示したような形のデータを過去の製造実績情報として取得する。第二取得部41Bは、過去の製造情報を、機械学習に必要な数取得する。本実施形態に係る第二取得部41Bは、他の装置から通信部5Aが受信した過去の製造情報を取得する。なお、過去の製造情報を格納している他の装置は、過去の製造実績情報を格納している他の装置と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0072】
【表4】
【0073】
(構築部および学習済モデル)
構築部45は、新たな製造実績情報が入力されると新たな製造情報を出力する学習済モデルを構築する。構築部45が構築する学習済モデルの種類は特に限定されるものではなく、ニューラルネットワーク、決定木モデル等の各種の学習済モデルを構築することができる。構築部45は、学習済モデルの構築を、取得した過去の製造実績情報と過去の製造情報との関係性を学習することにより行う。具体的には、構築部45は、例えば、「注文情報」と「分割数」との関係性や、「注文情報および経過情報」と「分割数」との関係性、「経過情報」と「分割数」との関係性等を学習する。本実施形態に係る構築部45は、過去の製造実績情報と過去の製造情報との組を教師データとする機械学習により学習済モデルを構築する。
【0074】
(出力制御部)
出力制御部44Aは、構築部45が構築した学習済モデルを他の装置へ出力するよう通信部5Aを制御する。これにより、通信部5Aは、学習済モデルを、通信部5Aを介して他の装置(例えば、情報予測装置100等)へ送信する。
【0075】
〔学習済モデル構築装置その他〕
なお、学習済モデル構築装置200は、過去の製造実績情報および過去の製造情報を記憶部6に格納していてもよい。また、学習済モデル構築装置200は、未学習モデルを他の装置から受信し、学習済モデルを他の装置へ送信するようになっていてもよい。その場合、学習済モデル構築装置200は、記憶部6を備えていなくてもよい。
【0076】
[学習済モデル構築方法]
次に、学習済モデル構築方法について説明する。図5は、学習済モデル構築方法の流れを示すフローチャートである。
【0077】
学習済モデル構築方法は、図5に示したように、第一取得ステップB1と、第二取得ステップB2と、構築ステップB3と、出力ステップB4と、を有する。また、本実施形態に係る学習済モデル構築方法は、上記学習済モデル構築装置200を用いて行うようになっている。
【0078】
(第一取得ステップ)
初めの第一取得ステップB1では、過去の製造実績情報を取得する。本実施形態に係る第一取得ステップB1では、過去の製造実績情報を複数(機械学習に必要な数)取得する。また、本実施形態に係る第一取得ステップB1では、上記学習済モデル構築装置200の第一取得部41Aが他の装置から過去の製造実績情報を取得する。なお、この第一取得ステップB1では、過去の製造実績情報を記憶部6から取得してもよい。また、第一取得ステップB1では、学習済モデル構築装置200以外の装置が過去の製造実績情報を取得してもよい。
【0079】
過去の製造実績情報を取得した後は、第二取得ステップB2に移る。第二取得ステップB2では、過去の製造情報を取得する。本実施形態に係る第二取得ステップB2では、過去の製造情報を複数(機械学習に必要な数)取得する。また、本実施形態に係る第二取得ステップB2では、上記学習済モデル構築装置200の第二取得部41Bが過去の製造情報を取得する。なお、この第二取得ステップB2では、過去の製造情報を記憶部6から取得してもよい。また、第二取得ステップB2では、学習済モデル構築装置200以外の装置が過去の製造情報を取得してもよい。また、第二取得ステップB2は、第一取得ステップよりも前に行ってもよいし、第一取得ステップと並行して行ってもよい。
【0080】
(構築ステップ)
過去の製造実績情報および過去の製造情報を取得した後は、構築ステップB3に移る。構築ステップB3では、学習済モデルを構築する。本実施形態に係る構築ステップB3では、上記学習済モデル構築装置200の構築部45が学習済モデルを構築する。
【0081】
(出力ステップ)
学習済モデルを構築した後は、出力ステップB4へ移る。出力ステップB4では、新たな学習済モデルを出力する。本実施形態に係る出力ステップB4では、上記学習済モデル構築装置200の通信部5が学習済モデルを送信する。
【0082】
〔発明2作用効果〕
以上説明してきた学習済モデル構築装置200または学習済モデル生成方法によれば、シミュレータSがシミュレートする上で必要となる新たな製造情報を容易に算出することのできる学習済モデルを得ることができる。その結果、シミュレータSを用いて、鋼材の製造ラインにおける搬送装置3の取り合い等を考慮した鋼材の流れのシミュレーションを容易かつ正確に行うことができる。
【0083】
<発明3実施形態>
次に、本発明の他の態様(以下、発明3)であるシミュレーションに関する発明(シミュレーション装置300、シミュレーション方法)の一実施形態について、詳細に説明する。
【0084】
はじめに、シミュレーション装置300について説明する。図6は、シミュレーション装置の機能的構成を示すブロック図である。
【0085】
シミュレーション装置300は、図6に示したように、演算部4Bと、通信部5Bと、記憶部6Aと、を備える。
〔通信部〕
通信部5Bは、他の装置(例えば、情報予測装置100、記憶装置等)との間で、各種データ、各種信号等を、有線または無線で送受信する。本実施形態に係る通信部5Aは、通信モジュールで構成されている。
【0086】
〔記憶部〕
記憶部6Aは、不揮発性メモリで構成されている。また、記憶部6Aは、上記学習済モデルを、書き換え可能な形で記憶している。
【0087】
〔演算部〕
演算部4Bは、情報取得部41と、構造取得部41Cと、予測部42と、データ生成部43と、出力制御部44Bと、実施部46と、判定部47と、更新部48と、設定部49と、を備える。
【0088】
(判定部)
判定部47は、予測部42が算出した新たな製造情報の精度が所定以上であるか否かを判定する。具体的には、判定部47は、過去に同じような条件で鋼材を製造したときの過去の製造情報のうち、鋼材の流れがうまくいったとき過去の製造情報等との差を算出する。そして、判定部47は、その差が所定以上であるか否かを判定する。
【0089】
(更新部)
更新部48は、作成済みの学習済モデルの学習に用いた教師データの取得後に情報取得部41が取得した新たな過去の製造実績情報と、当該新たな過去の製造実績情報に対応した新たな製造情報との組を教師データとする機械学習により、学習済モデルを更新する。更新部48が用いる上記の教師データは、新たに取得した上記の組の他、作成済みの学習済モデルの学習に用いた教師データに含まれる上記の組を含んでよい。こうすることで、直近の鋼材製造で得られた情報を、次の鋼材製造のためのシミュレーションに直ちに反映させることができる。
【0090】
(構造取得部)
構造取得部41Cは、シミュレータSの構造(製造情報が設定されていないシミュレータS)を取得する。本実施形態に係る構造取得部41Cは、過去の生産情報を解析してシミュレータSの構造を生成する。なお、構造取得部41Cは、生成済みのシミュレータSの構造を、他の装置または記憶部6Aから取得するようになっていてもよい。
【0091】
(設定部)
設定部49は、過去の生産情報を解析してパラメータを生成し、それをシミュレータSに設定する。また、設定部49は、構造取得部41Cが取得したシミュレータSの構造に、データ生成部43が生成した入力データ(上記表3参照)を設定する。
【0092】
(実施部)
実施部46は、シミュレータSに、新たな製造情報を適用して、鋼材の製造ラインにおける鋼材の流れをシミュレートする。
【0093】
(出力制御部)
出力制御部44Bは、実施部46が実施したシミュレーションの結果(以下、シミュレーション結果)を出力するよう通信部5Bを制御する。これにより、通信部5Bは、シミュレーション結果を他の装置へ送信する。
【0094】
〔シミュレーション装置その他〕
なお、シミュレーション装置300は、表示装置、プリンタ等を備えていてもよい。その場合、出力制御部44Bは、新たな製造情報を表示するよう表示装置を制御したり、製造情報を印刷するようプリンタを制御したりするようになっていてもよい。また、シミュレーション装置300は、操作部を備えていてもよい。その場合、設定部49は、操作部になされた操作に応じたパラメータを設定するようになっていてもよい。また、シミュレーション装置300は、学習済モデルを、他の装置(例えば、学習済モデル構築装置200)から取得したり、学習済モデルを更新するための情報を他の装置へ送信したりするようになっていてもよい。その場合、シミュレーション装置300は、記憶部6Aを備えていなくてもよい。
【0095】
[シミュレーション方法]
次に、シミュレーション方法について説明する。図7は、シミュレーション方法の流れを示すフローチャートである。
【0096】
シミュレーション方法は、図7に示したように、情報取得ステップA1と、予測ステップA2と、データ生成ステップA3と、実施ステップC1と、判定ステップC2と、更新ステップC3と、構造取得ステップC4と、設定ステップC5と、出力ステップC6と、を有する。また、本実施形態に係るシミュレーション方法は、上記シミュレーション装置300を用いて行うようになっている。
【0097】
(判定ステップ)
予測ステップA2の後の判定ステップC2では、予測ステップA2において算出した新たな製造情報の精度が所定以上であるか否かを判定する。本実施形態に係る判定ステップC2では、上記シミュレーション装置300の判定部47が判定する。なお、この判定ステップC2では、シミュレーション装置300以外の他の装置が判定を行うようになっていてもよい。
【0098】
(更新ステップ)
判定ステップC2において、算出した新たな製造情報の精度が所定以上ではないと判定した場合(ステップC2:No)には、更新ステップC3に移る。更新ステップC3では、情報取得ステップA1において取得した新たな過去の製造実績情報と、当該新たな過去の製造実績情報に対応した過去の製造情報との組を教師データとする機械学習により、学習済モデルを更新する。本実施形態に係る更新ステップC3では、上記シミュレーション装置300の更新部48が更新する。
【0099】
(データ生成ステップ)
ここでのデータ生成ステップA3の内容は、上記情報予測方法のものと同様であるが、シミュレーション方法におけるデータ生成ステップA3は、上記判定ステップC2において、算出した新たな製造情報の精度が所定以上であると判定した場合(ステップC2:Yes)に行われる。
【0100】
(構造取得ステップ)
データ生成ステップA3の後の構造取得ステップC4では、シミュレータSの構造を取得する。本実施形態に係る構造取得ステップC4では、上記シミュレーション装置300の構造取得部41Cが取得する。
構造取得ステップと、
【0101】
(設定ステップ)
シミュレータSの構造を取得した後は、設定ステップC5へ移る。設定ステップC5では、過去の生産情報を解析してパラメータを生成し、それをシミュレータSに設定する。また、設定ステップC5では、構造取得ステップC4において取得したシミュレータSの構造に、データ生成ステップA3において生成した入力データを設定する。本実施形態に係る設定ステップC5では、上記シミュレーション装置300の設定部49が設定する。
【0102】
(実施ステップ)
シミュレータSの構造に入力データおよびパラメータを設定した後は、実施ステップC1へ移る。実施ステップC1では、シミュレータSに、鋼材の製造ラインにおける鋼材の流れをシミュレートする。本実施形態に係る実施ステップC1では、上記シミュレーション装置300の実施部46がシミュレートする。
【0103】
(出力ステップ)
シミュレートした後は、出力ステップC6へ移る。実施ステップC1において得られたシミュレーション結果を出力する。本実施形態に係る出力ステップC6では、上記シミュレーション装置300の通信部5Bが送信する。
【0104】
[発明3作用効果]
上記構成によれば、上記発明1,2と同様、鋼材の製造ラインにおける搬送装置3の取り合い等を考慮した鋼材の流れのシミュレーションを容易かつ正確に行うことができる。また、
【0105】
〔ソフトウェアによる実現例〕
上記情報予測装置100、学習済モデル構築装置200、およびシミュレーション装置300(以下、装置100,200,300)の機能は、当該装置100、200,300としてコンピュータを機能させるための情報予測プログラム、学習済モデル構築プログラム、シミュレーションプログラム(以下、プログラム)であって、当該置100、200,300の各制御ブロック(特に演算部4,4A,4Bに含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。この場合、上記装置100、200,300は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えば演算部4,4A,4B)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置100、200,300が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0106】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0107】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0108】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る情報予測装置は、製造ラインにおける製造対象物の流れをシミュレートする離散事象シミュレータを動作させるための製造情報を算出する情報予測装置であって、前記製造対象物が、前記製造ラインにおける予測対象の製造情報が適用される設備に至るまでに得られる、前記製造対象物に関する情報である製造実績情報を取得する情報取得部と、過去の製造対象物の製造完了までに得られた過去の前記製造実績情報と、前記過去の製造対象物の製造に関する過去の製造情報との関係性を用いて、取得した前記製造対象物の前記製造実績情報に対応した新たな製造情報を算出する予測部と、を備える構成である。
本発明の態様2に係る情報予測装置は、上記の態様1において、前記関係性は、前記過去の製造実績情報と、前記過去の製造情報と、の組を教師データとする機械学習により構築されている学習済モデルである構成としてもよい。
本発明の態様3に係る情報予測装置は、上記の態様1または2において、前記製造実績情報は、発注者から受けた注文内容を示す注文情報、および製造中の前記製造対象物に関する情報である経過情報の少なくとも一方を含む構成としてもよい。
本発明の態様4に係る情報予測装置は、上記の態様1~3のいずれか一項において、前記製造対象物は鋼材であり、前記製造情報は、前記鋼材を分割する際の分割数を含む構成としてもよい。
本発明の態様5に係る情報予測装置は、上記の態様1~4のいずれか一項において、前記予測部が取得した前記製造情報に基づいて、前記離散事象シミュレータに入力するための入力データを生成するデータ生成部を更に備える構成としてもよい。
本発明の態様6に係る情報予測装置は、上記の態様1~5において、前記情報取得部が取得した前記製造実績情報と、前記予測部が算出した前記新たな製造情報と、の組を含む教師データを用いた機械学習により、前記学習済モデルを更新する更新部を更に備える構成としてもよい。
【符号の説明】
【0109】
S 離散事象シミュレータ
1 工場
11 第一工場
12 第二工場
13 第三工場
2 置場
21 第一置場
22 第二置場
23 仮置場
3 搬送装置
31 第一工場クレーン
32 第二工場クレーン
33 第二置場クレーン
34 第三工場クレーン
35 第一キャリア
36 第二キャリア
100 情報予測装置
4 演算部
41 情報取得部
42 予測部
43 データ生成部
44 出力制御部
5 通信部
200 学習済モデル構築装置
4A 演算部
41A 第一取得部
41B 第二取得部
44A 出力制御部
45 構築部
5A 通信部
6 記憶部
300 シミュレーション装置
4B 演算部
41C 構造取得部
46 実施部
47 判定部
48 更新部
49 設定部
5B 通信部
6A 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7