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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029665
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】透水性防草シートとその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01M 21/00 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
A01M21/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132043
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】596045177
【氏名又は名称】株式会社白崎コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】591148989
【氏名又は名称】昭石化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002804
【氏名又は名称】弁理士法人フェニックス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐治 健介
(72)【発明者】
【氏名】小谷 智博
(72)【発明者】
【氏名】白崎 健悟
(72)【発明者】
【氏名】堂埜 誠
(72)【発明者】
【氏名】河野 友祐
(72)【発明者】
【氏名】先山 竜史
(72)【発明者】
【氏名】小野 国治
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA19
2B121BB28
2B121EA21
2B121FA12
(57)【要約】
【課題】優れた透水性を発揮する透水性防草シートとその製造方法を提供すること。
【解決手段】不織布11から成る基材層1と、この基材層1上に設けられ、多数の粒状物21がバインダー22により結合されて成る保護層2とを備えた防草シート10において、保護層2の上面に露出したほぼ全ての粒状物21を直接的に、或いは当該粒状物21と接触した他の粒状物を介して間接的に、基材層1の不織布11と接触させた。また、透水性防草シートの製造方法において、基材層1の上面に形成したバインダー層3上に多数の粒状物21を散布し、これら散布した粒状物21をバインダー層3内へ押し込んで基材層1の不織布11と接触させた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布から成る基材層と、前記基材層上に設けられ、多数の粒状物がバインダーにより結合されて成る保護層とを備えた防草シートであって、
前記保護層の上面に露出したほぼ全ての前記粒状物が直接的に、或いは当該粒状物と接触した他の前記粒状物を介して間接的に、前記基材層の前記不織布と接触していることを特徴とした透水性防草シート。
【請求項2】
前記保護層内のほぼ全ての前記粒状物が互いに接触し合っていることを特徴とした請求項1に記載の透水性防草シート。
【請求項3】
前記粒状物が、天然スレート砂であることを特徴とした請求項1または請求項2に記載の透水性防草シート。
【請求項4】
前記バインダーが、改質アスファルトであることを特徴とした請求項1または請求項2に記載の透水性防草シート。
【請求項5】
前記バインダーが、改質アスファルトであることを特徴とした請求項3に記載の透水性防草シート。
【請求項6】
不織布から成る基材層と、前記基材層上に設けられ、多数の粒状物がバインダーにより結合されて成る保護層とを備えた防草シートの製造方法であって、
前記基材層の上面に前記バインダーを塗布してバインダー層を形成する塗布工程と、
前記バインダー層の上面に前記粒状物を散布する散布工程と、
前記バインダー層の上面に散布した前記粒状物を前記バインダー層内へ押し込むことによって、当該粒状物を直接的に、或いは当該粒状物と接触した他の前記粒状物を介して間接的に、前記基材層の前記不織布と接触させる押込み工程と、
を備えることを特徴とした透水性防草シートの製造方法。
【請求項7】
前記押込み工程において、
前記基材層、前記バインダー層及び前記粒状物を一対のプレスローラー間で挟圧することを特徴とした請求項6に記載の透水性防草シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透水性防草シートとその製造方法、より詳しくは、優れた透水性を有する透水性防草シート及びこの透水性防草シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、雑草等の不要植物を防除するための対策の一つとして、地面に遮光性を有する防草シートを敷設することが一般的に行われている。そして、現在までに、遮光性を有しながらも透水性を有する防草シートが各種提案されている(例えば、下記特許文献1、2等)。
【0003】
特許文献1には、長繊維を圧接接着して形成して成る長繊維不織布の上面に、無機系粒子及び/又は有機系粒子を分散相とし、バインダーを連続相とするマトリックス材料から成る透水性を有する塗膜層を設けた防草シートが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、2枚の短繊維不織布の間に合成樹脂層を介在させ、これら短繊維不織布の短繊維の端部を合成樹脂層に貫入させて微細な隙間を形成することによって、合成樹脂層に透水性を付与した防草シートが開示されている。そして、この合成樹脂層内に多孔質粉体を含有させることで透水性を向上させることが開示されている。
【0005】
しかしながら、これら特許文献1及び特許文献2に記載の防草シートは、その塗膜層や合成樹脂層内において透水経路を形成する粒子同士の接触や短繊維同士の接触が不確実なものであったため、例えば降雨時に防草シート上に水溜りが発生するのを防ぐのに必要十分な透水性を確保するためには、これら塗膜層や合成樹脂層を薄く形成したり、塗膜層の粒子の配合割合を高くしたりしなければならず、その結果、シート使用時に塗膜層や合成樹脂層に破れや剥離等が生じ易くなるなど、防草シートの耐久性の大幅な低下を招く難点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-143975号公報
【特許文献2】特開2009-100670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の透水性防草シートに上記のような難点があったことに鑑みて為されたもので、耐久性の大幅な低下を伴うことなく優れた透水性を発揮する透水性防草シートとその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、不織布から成る基材層と、前記基材層上に設けられ、多数の粒状物がバインダーにより結合されて成る保護層とを備えた防草シートであって、
前記保護層の上面に露出したほぼ全ての前記粒状物が直接的に、或いは当該粒状物と接触した他の前記粒状物を介して間接的に、前記基材層の前記不織布と接触していることを特徴としている。
【0009】
また、本発明は、前記保護層内のほぼ全ての前記粒状物が互いに接触し合っていることを特徴としている。
【0010】
また、本発明は、前記粒状物が天然スレート砂であることを特徴としている。
【0011】
また、本発明は、前記バインダーが改質アスファルトであることを特徴としている。
【0012】
また、本発明は、不織布から成る基材層と、前記基材層上に設けられ、多数の粒状物がバインダーにより結合されて成る保護層とを備えた防草シートの製造方法であって、
前記基材層の上面に前記バインダーを塗布してバインダー層を形成する塗布工程と、前記バインダー層の上面に前記粒状物を散布する散布工程と、前記バインダー層の上面に散布した前記粒状物を前記バインダー層内へ押し込むことによって、当該粒状物を直接的に、或いは当該粒状物と接触した他の前記粒状物を介して間接的に、前記基材層の前記不織布と接触させる押込み工程と、を備えることを特徴としている。
【0013】
また、本発明は、前記押込み工程において、前記基材層、前記バインダー層及び前記粒状物を一対のプレスローラー間で挟圧することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る透水性防草シートは、保護層の上面に露出したほぼ全ての粒状物が直接的に、或いは他の粒状物を介して間接的に基材層の不織布と接触しているので、保護層の上面から基材層の不織布にまで至る多数の透水経路が確実かつ効率的に形成されることになり、優れた透水性を発揮する。
【0015】
また、本発明に係る透水性防草シートの製造方法は、基材層の上面に形成したバインダー層上に多数の粒状物を散布し、これらバインダー層上に散布した粒状物をバインダー層内へ押し込んで基材層の不織布と接触させるようにしているので、保護層の上面に露出したほぼ全ての粒状物を直接的に、或いは他の粒状物を介して間接的に基材層の不織布と確実に接触させることが可能となり、保護層内の透水経路を確実かつ効率的に形成することができ、透水性に優れた透水性防草シートを頗る容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態の透水性防草シートの模式断面図である。
図2】本実施形態の透水性防草シートの製造方法の塗布工程を示す模式断面図である。
図3】本実施形態の透水性防草シートの製造方法の散布工程を示す模式断面図である。
図4】本実施形態の透水性防草シートの製造方法の押込み工程を示す模式断面図である。
図5】本発明に係る他の実施形態の透水性防草シートの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すように、本実施形態の透水性防草シート10は、不織布11から成る基材層1と、この基材層1上に設けられた保護層2とから構成されている。
【0018】
本実施形態の基材層1は、厚み約1mmのポリエステル系長繊維不織布から成り、雑草等による突き破りを防ぐ強度を有し、保護層2よりも高い透水性を有している。この基材層1は、短繊維不織布から構成されていてもよく、また、その材質についても、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維等の合成繊維や天然繊維など、種々の材質のものを採用することができる。
【0019】
この保護層2は、多数の粒状物21がバインダー22により結合されて構成されており、上記基材層1を保護し、シート全体の耐候性、遮光性、防滑性等を高めるために設けられている。
【0020】
本実施形態の保護層2の粒状物21は、そのほぼ全てが互いに接触し合った状態でバインダー22により結合されている。そして、保護層2の上面に露出したほぼ全ての粒状物21が直接的に、或いは、当該粒状物21と接触した他の粒状物を介して間接的に、基材層1の不織布11と接触している。具体的には、図1に示す多数の粒状物21のうち、例えば、上部の大部分が保護層2の上面に露出した粒状物21aは、その下部で接触している他の粒状物(21b・21c)を介して間接的に、基材層1の不織布11と接触しており、また、上部の一部が保護層2の上面に露出した粒状物21dは、他の粒状物を介することなく直接的に、基材層1の不織布11と接触している。
【0021】
この保護層2において、各粒状物21とバインダー22との境界に生じる多数の微細な隙間が互いに連通することによって、保護層2の上面から基材層1の不織布11にまで至る多数の透水経路が形成され、保護層2が透水性を発揮する。
【0022】
本実施形態の粒状物21は、凝灰質頁岩等を破砕して得られた粒度分布0.25~2.5mm、平均粒径1.25mmの天然スレート砂から成り、扁平形状を成している。この粒状物21としては、例えばマイカ、タルク等の他の鉱物系粒状物の他、珪酸アルミニウム、炭酸カルシウム等の無機系粒状物や有機系粒状物を採用することができる。また、廃棄ゴム、廃棄プラスチック、コンクリート、瓦、陶器等の各種廃材を粉砕して得た粒状物を採用してもよい。粒状物21の形状、粒径等についても特に限定されるものではなく、必要に応じて種々の粒状物を採用することができる。
【0023】
本実施形態のバインダー22は、ストレートアスファルトをベースアスファルトとし、改質剤を規定量添加溶融しアスファルトの性状を向上させた改質アスファルトから成り、多数の粒状物21を結合するとともに、基材層1の不織布11に一部浸み込んで基材層1と保護層2とを接着する。このバインダー22としては、改質アスファルト等のアスファルト系バインダーの他、アクリル樹脂系バインダー、ビニル樹脂系バインダー、ゴム系バインダー等を採用することができる。
【0024】
このように本実施形態の透水性防草シート10は、保護層2の上面に露出したほぼ全ての粒状物21が直接的に、或いは他の粒状物21を介して間接的に基材層1の不織布11と接触しているので、保護層2の上面から基材層1の不織布11にまで至る多数の透水経路が確実かつ効率的に形成されることになり、優れた透水性を発揮する。したがって、従来品のように、例えば降雨時に防草シート上に水溜りが発生するのを防ぐのに必要な透水性を確保するために防草シートの耐久性の大幅な低下を招いてしまう難点もない。
【0025】
しかも、本実施形態の透水性防草シート10は、保護層2内のほぼ全ての粒状物21が互いに接触し合っているので、保護層2内の透水経路がより確実かつ効率的に形成されることになり、より優れた透水性を発揮することができる。
【0026】
次に、図2図4を参照しながら、本実施形態の透水性防草シートの製造方法について説明する。
【0027】
まず、図2に示すように、不織布11から成る基材層1の上面に、加熱溶融したバインダー22を塗布して所要厚みのバインダー層3を形成する塗布工程を行う。このとき、バインダー22が、基材層1の透水性を損なわない程度に不織布11の一部に浸み込む。この塗布工程は、例えばナイフコータ、ロールコータ等の慣用のコーティング機を利用して行うことができる。
【0028】
次いで、図3に示すように、溶融状態のバインダー層3の上面に多数の粒状物21を散布する散布工程を行う。このとき、必ずしも散布した全ての粒状物21が互いに接触し合っている必要はない。
【0029】
次いで、図4に示すように、散布した粒状物21をバインダー層内へ押し込むことによって、これら粒状物21を直接的に、或いは当該粒状物21と接触した他の粒状物を介して間接的に、基材層1の不織布11と接触させる押込み工程を行う。この押込み工程によって、散布したほぼ全ての粒状物21が互いに押し合って互いに接触した状態となり、この接触状態が保たれたまま、粒状物21同士の隙間にバインダー22が流動充填される。その後、バインダー22を放冷させ、バインダー22により多数の粒状物21を結合して保護層2を形成するとともに、保護層2と基材層1とを接着する。こうして、本発明に係る透水性防草シートを得ることができる。
【0030】
この押込み工程は、従来公知のプレス機を利用して行い得ることは勿論のこと、基材層1、バインダー層3及び粒状物21をまとめて、一対のプレスローラー間で挟圧することにより連続的に行うことも可能である。例えば、一対の巻取りロール間において長尺帯状の不織布11を連続走行させ、この連続走行する不織布11に対し、走行上流側から順に、塗布工程、散布工程、及びプレスローラーによる押込み工程を行うようにすれば、本発明に係る透水性防草シートを連続的に製造することができる。
【0031】
このように本実施形態の透水性防草シートの製造方法によれば、基材層1の上面に形成したバインダー層3上に多数の粒状物21を散布し、これらバインダー層3上に散布した粒状物21をバインダー層3内へ積極的に押し込んで基材層1の不織布11と接触させるようにしているので、保護層2の上面に露出したほぼ全ての粒状物21を直接的に、或いは他の粒状物を介して間接的に基材層1の不織布11と確実に接触させることが可能となり、保護層2内の透水経路を確実かつ効率的に形成することができ、透水性に優れた透水性防草シートを頗る容易に製造することができる。
【0032】
以上、本実施形態の透水性防草シートとその製造方法について説明したが、本発明は他の実施形態でも実施することができる。
【0033】
例えば、上記実施形態では、保護層2内において多数の粒状物21が保護層2の厚み方向に積層されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、図5に示す透水性防草シート20のように、多数の粒状物21が保護層2の厚み方向に積層されていなくてもよい。また、この透水性防草シート20のように、保護層2内において、互いに接触し合った粒状物21の数よりも、隣の粒状物と接触していない粒状物21の数が多い場合など、必ずしも保護層2内のほぼ全ての粒状物21が互いに接触し合っていなくてもよい。本発明に係る透水性防草シートは、保護層2の上面に露出したほぼ全ての粒状物21が直接的に、或いは他の粒状物を介して間接的に基材層1の不織布11と接触していればよい。
【0034】
また、上記実施形態では、透水性防草シートの製造方法の塗布工程において、加熱溶融したバインダー22のみを基材層1の上面に塗布しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、散布工程で散布する粒状物21とは別の粒状物を予め混合したバインダー22を基材層1の上面に塗布するようにしてもよい。この場合、バインダー22に混合した粒状物は、バインダー22内で分散しているので、次の押込み工程によって、必ずしもほぼ全ての粒状物が互いに接触した状態にはならないが、この押込み工程によって、少なくともバインダー層3上に散布した粒状物21は、バインダー22に混合した粒状物を介して間接的に基材層1の不織布11と接触することになるため、得られる透水性防草シートにあっては、保護層2の上面に露出したほぼ全ての粒状物21が直接的に、或いは他の粒状物を介して間接的に基材層1の不織布11と接触することとなり、優れた透水性を発揮する。
【0035】
本発明は、その他、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づいて種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものである。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内でいずれかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施してもよく、また、一体に構成されている発明特定事項を複数の部材から構成したり、複数の部材から構成されている発明特定事項を一体に構成した形態で実施してもよい。
【符号の説明】
【0036】
10、20 透水性防草シート
1 基材層
11 不織布
2 保護層
21 粒状物
22 バインダー
3 バインダー層
図1
図2
図3
図4
図5