(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029677
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】ロボットの制御方法、ロボットの制御プログラムおよびロボットシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 9/16 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
B25J9/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132059
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】武石 徹司
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707AS06
3C707BS15
3C707CX01
3C707CX03
3C707HS27
3C707HT26
3C707KS24
3C707KV01
3C707LT14
3C707LV23
(57)【要約】
【課題】優れた位置制御を行うことのできるロボットの制御方法、ロボットの制御プログラムおよびロボットシステムを提供すること。
【解決手段】ロボットの制御方法は、アームと前記アームを回動させるモーターとを備え、位置指令に基づいて前記モーターを駆動するロボットの制御方法であって、前記アームに配置されている角速度センサーの出力から求められる前記モーターの第1位置と、前記モーターに接続されている位置検出器の出力から求められる前記モーターの第2位置と、の差分に基づいて前記モーターの駆動を制御する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームと前記アームを回動させるモーターとを備え、位置指令に基づいて前記モーターを駆動するロボットの制御方法であって、
前記アームに配置されている角速度センサーの出力から求められる前記モーターの第1位置と、前記モーターに接続されている位置検出器の出力から求められる前記モーターの第2位置と、の差分に基づいて前記モーターの駆動を制御することを特徴とするロボットの制御方法。
【請求項2】
前記第1位置は、前記角速度センサーの出力を積分することにより求められる請求項1に記載のロボットの制御方法。
【請求項3】
前記角速度センサーの出力から求められる前記モーターの第1速度と、前記位置検出器の出力から求められる前記モーターの第2速度と、の差分に基づいて前記モーターの駆動を制御する請求項1に記載のロボットの制御方法。
【請求項4】
前記第2速度と、前記第1速度と前記第2速度との差分と、の差分に基づいて前記モーターの駆動を制御する請求項3に記載のロボットの制御方法。
【請求項5】
前記第2速度は、前記位置検出器の出力を微分することにより求められる請求項3に記載のロボットの制御方法。
【請求項6】
前記アームは、減速機を介してモーターと接続されている請求項1に記載のロボットの制御方法。
【請求項7】
アームと前記アームを回動させるモーターとを備え、位置指令に基づいて前記モーターを駆動するロボットの制御プログラムであって、
前記アームに配置されている角速度センサーの出力から求められる前記モーターの第1位置と、前記モーターに接続されている位置検出器の出力から求められる前記モーターの第2位置と、の差分に基づいて前記モーターの駆動を制御することを特徴とするロボットの制御プログラム。
【請求項8】
アームと、前記アームを回動させるモーターと、前記アームに配置されている角速度センサーと、前記モーターに接続され前記モーターの位置を検出する位置検出器と、を備えるロボットと、
前記モーターの駆動を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記角速度センサーの出力から求められる前記モーターの第1位置と、前記位置検出器の出力から求められる前記モーターの第2位置と、の差分に基づいて前記モーターの駆動を制御することを特徴とするロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの制御方法、ロボットの制御プログラムおよびロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているロボットシステムは、ロボットと、センサーと、動作制御部および学習制御部を有するロボット制御装置と、を備えている。ロボットは、六つの関節軸と、関節軸により連結されているアーム部と、各関節軸を駆動するサーボモーターと、を有している。学習制御部は、動作制御部が動作指令によりロボットを動作させたときの当該ロボットに生じる振動を補正するための振動補正量を算出し、算出した振動補正量を次回の動作指令に対して適用する学習制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のようなロボットシステムにおいては、関節軸の構造上のずれが原因となり、実際に移動したロボットの位置が指令された目標位置からずれる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のロボットの制御方法は、アームと前記アームを回動させるモーターとを備え、位置指令に基づいて前記モーターを駆動するロボットの制御方法であって、
前記アームに配置されている角速度センサーの出力から求められる前記モーターの第1位置と、前記モーターに接続されている位置検出器の出力から求められる前記モーターの第2位置と、の差分に基づいて前記モーターの駆動を制御する。
【0006】
本発明のロボットの制御プログラムは、アームと前記アームを回動させるモーターとを備え、位置指令に基づいて前記モーターを駆動するロボットの制御プログラムであって、
前記アームに配置されている角速度センサーの出力から求められる前記モーターの第1位置と、前記モーターに接続されている位置検出器の出力から求められる前記モーターの第2位置と、の差分に基づいて前記モーターの駆動を制御する。
【0007】
本発明のロボットシステムは、アームと、前記アームを回動させるモーターと、前記アームに配置されている角速度センサーと、前記モーターに接続され前記モーターの位置を検出する位置検出器と、を備えるロボットと、
前記モーターの駆動を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記角速度センサーの出力から求められる前記モーターの第1位置と、前記位置検出器の出力から求められる前記モーターの第2位置と、の差分に基づいて前記モーターの駆動を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】好適な実施形態に係るロボットシステムの全体図である。
【
図2】第1関節アクチュエーターの縦断面図である。
【
図3】従来のモーターの制御方法を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態のモーターの制御方法を示すブロック図である。
【
図5】角速度センサーの信号を処理する工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のロボットの制御方法、ロボットの制御プログラムおよびロボットシステムを添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1は、好適な実施形態に係るロボットシステムの全体図である。
図2は、第1関節アクチュエーターの縦断面図である。
図3は、従来のモーターの制御方法を示すブロック図である。
図4は、本実施形態のモーターの制御方法を示すブロック図である。
図5は、角速度センサーの信号を処理する工程を示すフローチャートである。なお、
図1および
図2中の上下方向は、鉛直方向と一致しており、
図1および
図2中の上側を「上」、下側を「下」とも言う。
【0011】
図1に示すロボットシステム1は、ロボット2と、ロボット2の駆動を制御する制御装置9と、を有している。
【0012】
ロボット2は、スカラロボットであり、例えば、電子部品等のワークの保持、搬送、組立および検査等の各作業で用いられる。ただし、ロボット2の用途は、特に限定されない。また、ロボット2は、スカラロボット以外、例えば、6軸多関節ロボット、双腕ロボット等であってもよい。
【0013】
ロボット2は、ベース21と、ベース21に接続されているロボットアーム22と、を有している。また、ロボットアーム22は、基端部がベース21に接続され、ベース21に対して鉛直方向に沿う第1回動軸J1まわりに回動するアームとしての第1アーム221と、基端部が第1アーム221の先端部に接続され、第1アーム221に対して鉛直方向に沿う第2回動軸J2まわりに回動する第2アーム222と、を有している。
【0014】
また、第2アーム222の先端部には作業ヘッド23が設けられている。作業ヘッド23は、第2アーム222の先端部に同軸的に配置されているスプラインナット231およびボールネジナット232と、スプラインナット231およびボールネジナット232に挿通されているスプラインシャフト233と、を有している。スプラインシャフト233は、第2アーム222に対して、その中心軸であり鉛直方向に沿う第3回動軸J3まわりに回転可能で、かつ、第3回動軸J3に沿って昇降可能である。
【0015】
また、スプラインシャフト233の下端部には、エンドエフェクター24が装着されている。エンドエフェクター24は、着脱自在であり目的の作業に適したものが適宜選択される。
【0016】
また、ロボット2は、第1アーム221に配置されている角速度センサー6を有している。角速度センサー6は、第1アーム221の第1回動軸J1からずれた位置に配置されており、第1アーム221の第1回動軸J1まわりの角速度ωを検出する。角速度センサー6で検出された角速度ωを積分することにより第1アーム221の位置(第1回動軸J1まわりの回転角度)を算出することができる。
【0017】
また、ロボット2は、ベース21と第1アーム221とを連結し、ベース21に対して第1アーム221を第1回動軸J1まわりに回動させる第1関節アクチュエーター251と、第1アーム221と第2アーム222とを連結し、第1アーム221に対して第2アーム222を第2回動軸J2まわりに回動させる第2関節アクチュエーター252と、を有している。
【0018】
また、ロボット2は、スプラインナット231を回転させてスプラインシャフト233を第3回動軸J3まわりに回転させる第1駆動機構253と、ボールネジナット232を回転させてスプラインシャフト233を第3回動軸J3に沿った方向に昇降させる第2駆動機構254と、を有している。
【0019】
次に、第1関節アクチュエーター251について説明する。第1関節アクチュエーター251は、ベース21内に収容されている。
図2に示すように、第1関節アクチュエーター251は、ベース21と第1アーム221とを連結している減速機3と、モーター4と、位置検出器としてのエンコーダー5と、を有している。
【0020】
モーター4は、ベース21に固定されている。また、モーター4は、例えば、ACサーボモーターである。ただし、モーター4としては、特に限定されず、例えば、DCサーボモーター、ステッピングモーター等を用いてもよい。このようなモーター4は、出力軸であるシャフト41と、シャフト41を回転させる図示しないステーターと、これらを収容するハウジング43と、を有している。
【0021】
エンコーダー5は、第1回動軸J1に沿ってモーター4と並んで配置され、モーター4の下側に位置している。エンコーダー5は、シャフト41に固定された光学スケール51と、光学スケール51の回転状態を検出する光学センサー52と、を有している。
【0022】
光学スケール51は、シャフト41と共に第1回動軸J1まわりに回転する。また、光学スケール51の下面には、光学スケール51の回転角度を検出し得る図示しない検出用パターンが形成されている。一方、光学センサー52は、光学スケール51上の検出用パターンに向けて光を出射する発光素子521と、検出用パターンで反射した光を受光する受光素子522と、を有している。このような構成のエンコーダー5では、光学スケール51の第1回動軸J1まわりの回転に伴って受光素子522からの出力信号の波形が変化する。そのため、この出力信号に基づいてモーター4の位置(回転角度)を検出することができる。
【0023】
ただし、エンコーダー5の構成は、特に限定されない。例えば、本実施形態では、受光素子522が検出用パターンで反射した光を受光する反射型の光学式エンコーダーであるが、受光素子522が検出用パターンを透過した光を受光する透過型の光学式エンコーダーであってもよい。また、検出用パターンをカメラで撮像し、テンプレートパッチングを用いて撮像した画像からモーター4の位置を検出する画像認識型エンコーダーであってもよい。
【0024】
減速機3は、第1回動軸J1に沿ってモーター4と並んで配置され、モーター4の上側に位置している。減速機3は、シャフト41の回転を高い減速比で減速して出力し、減速比に比例した高いトルクを発生させる。
【0025】
減速機3は、波動歯車装置である。このような減速機3は、ウェーブジェネレーター31と、フレックスプライン33と、サーキュラスプライン36と、カバー部材39と、を有している。減速機3では、ウェーブジェネレーター31がモーター4の動力が入力される入力側となり、サーキュラスプライン36がモーター4の動力を減速して出力する出力側となる。
【0026】
サーキュラスプライン36は、実質的に撓まない剛体で構成された環状の内歯歯車である。また、サーキュラスプライン36は、ベース21に固定されている内側主軸受け361と、内側主軸受け361の外側に位置し、カバー部材39を介して第1アーム221に固定されている外側主軸受け362と、を有している。また、内側主軸受け361と外側主軸受け362とは、ベアリング363により連結され、外側主軸受け362と内側主軸受け361とが回転可能となっている。また、内側主軸受け361の内周部にはフレックスプライン33と噛合する内歯361bが形成されている。
【0027】
フレックスプライン33は、サーキュラスプライン36の内側に配置されている。フレックスプライン33は、ウェーブジェネレーター31の外周に沿って撓み変形可能な可撓性を有する筒状部331と、筒状部331の上端部に接続された環状のフランジ部332と、を有している。筒状部331の外周部には、サーキュラスプライン36の内歯361bと噛合する外歯331aが形成されている。外歯331aの歯数は、内歯361bの歯数よりも少なく設定されている。フランジ部332は、外側主軸受け362と共にカバー部材39に固定されている。
【0028】
また、ウェーブジェネレーター31は、シャフト41に固定され、シャフト41の回転に連動して回転する波動発生部311と、波動発生部311とフレックスプライン33との間に嵌め込まれたベアリング312と、を有している。波動発生部311は、第1回動軸J1に沿う方向からの平面視で外周が楕円形または長円形である。つまり、ウェーブジェネレーター31は、長手方向と、それに直交する短手方向と、を有する形状である。
【0029】
ウェーブジェネレーター31は、フレックスプライン33の筒状部331の内周面に接し、筒状部331を楕円形または長円形に撓めて筒状部331の外歯331aをサーキュラスプライン36の内歯361bに部分的に噛合させる。これにより、長軸の部分でサーキュラスプライン36と歯が噛み合い、短軸の部分では歯が完全に離れた状態となる。
【0030】
ウェーブジェネレーター31にモーター4からの駆動力が入力されると、フレックスプライン33およびサーキュラスプライン36は、互いの噛み合い位置が周方向に順次移動しながら、歯数差に起因して第1回動軸J1まわりに相対的に回転する。本実施形態では、フレックスプライン33と外側主軸受け362とがカバー部材39を介して第1アーム221に固定され、内側主軸受け361がベース21に固定されているため、第1アーム221がベース21に対して第1回動軸J1まわりに回動する。
【0031】
このような減速機3によれば、モーター4からウェーブジェネレーター31に入力された回転が減速されてサーキュラスプライン36の外側主軸受け362から出力され、出力側において減速比に比例したトルクを得ることができる。
【0032】
以上、減速機3について説明したが、減速機3としては、特に限定されず、例えば、サイクロ減速機(登録商標)、遊星歯車減速機等であってもよい。
【0033】
制御装置9は、ロボット2の駆動を制御する。具体的には、制御装置9は、第1関節アクチュエーター251、第2関節アクチュエーター252、第1駆動機構253および第2駆動機構254の駆動をそれぞれ独立して制御する。このような制御装置9は、例えば、コンピューターから構成され、情報を処理するプロセッサー(CPU)と、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、外部装置との接続を行う外部インターフェースと、を有している。メモリーにはプロセッサーにより実行可能な各種プログラムが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶されたプログラムを読み込んで実行することができる。
【0034】
特に、本実施形態では、メモリーにロボット2の制御プログラムPPが保存されており、この制御プログラムPPをプロセッサーが実行することにより、後述するロボット2の制御が実現される。
【0035】
次に、
図3に基づいて、従来から用いられている第1関節アクチュエーター251の制御回路8と、その問題点について簡単に説明する。同図に示すように、制御回路8は、位置指令生成部81と、位置制御部82と、速度制御部83と、電流制御部84と、を有している。
【0036】
位置指令生成部81は、モーター4の位置指令を制御周期間隔毎に生成する。位置制御部82は、位置指令生成部81が生成した位置指令とエンコーダー5が検出したモーター4の位置(回転角度)とを一致させるように速度指令を生成する。速度制御部83は、エンコーダー5で検出したモーター4の位置から求めた速度を速度指令に一致させるように電流指令を生成する。電流制御部84は、モーター4を駆動する電流を電流指令に一致させるように電流を制御する。
【0037】
このようなフィードバック制御によれば、モーター4を位置指令に沿って動かすことができ、第1アーム221が目標位置となると考えられる。しかしながら、モーター4と第1アーム221との間には減速機3が介在しており、減速機3が有するバックラッシ(ロストモーション)、減速機3の入力側と出力側との間に生じる捩じれ(ヒステリシス)等の影響により、モーター4の位置が位置指令と一致しても、第1アーム221の位置が目標位置からずれる場合がある。
【0038】
そこで、ロボットシステム1では、さらに、第1アーム221に配置された角速度センサー6の検出結果をフィードバックすることにより、第1アーム221の位置を目標位置に一致させる制御を行っている。以下、詳細に説明する。
【0039】
図4に示すように、制御装置9は、第1関節アクチュエーター251の駆動を制御する制御回路91を有している。また、制御回路91は、モーター4の位置指令P0を制御周期間隔毎に生成する位置指令生成部911と、位置指令生成部911で生成された位置指令P0に基づいてモーター4への速度指令V0を生成する位置制御部912と、位置制御部912からの速度指令V0に基づいてモーター4への加速度指令A0を生成する速度制御部913と、速度制御部913からの加速度指令A0に基づいてモーター4への電流指令E0を生成する電流制御部914と、を有している。
【0040】
ここまでは、従来の制御回路8と同様であるが、制御回路91は、さらに、角速度センサー6の出力に基づいてモーター4の第1速度信号V1を生成する第1速度信号生成部915と、第1速度信号生成部915からの第1速度信号V1を積分してモーター4の第1位置信号P1を生成する第1位置信号生成部916と、エンコーダー5の出力に基づいてモーター4の第2位置信号P2を生成する第2位置信号生成部917と、第2位置信号生成部917からの第2位置信号P2を微分してモーター4の第2速度信号V2を生成する第2速度信号生成部918と、を有している。
【0041】
第1速度信号生成部915は、角速度センサー6の出力に基づいて第1速度信号V1を生成する。なお、第1関節アクチュエーター251は、モーター4と第1アーム221との間に介在する減速機3を有している。そのため、第1速度信号生成部915では、角速度センサー6の出力から検出される第1アーム221の速度を減速機3の減速比に基づいてモーター4の速度に変換したものを第1速度信号V1として生成する。これにより、第1速度信号V1を第2速度信号V2と比較することができる。
【0042】
第1位置信号生成部916は、積分器であり、第1速度信号生成部915からの第1速度信号V1を積分してモーター4の第1位置信号P1を生成する。このように、第1位置信号生成部916として積分器を用いることにより、第1速度信号V1から第1位置信号P1を容易に生成することができる。ただし、第1速度信号V1から第1位置信号P1を生成する方法としては、特に限定されず、例えば、第1速度信号V1に所定の係数を積算して第1位置信号P1を生成してもよい。
【0043】
なお、第1速度信号V1および第1位置信号P1は、例えば、
図5に示す工程により行われる。まず、制御装置9は、ステップS1として、角速度センサー6から角速度ωを取得するリクエストタイミングであるかを判定する。リクエストタイミングであれば、制御装置9は、ステップS2として、角速度センサー6に角速度ωをリクエストし、ステップS3として、受け取った角速度ωを記憶部に格納する。一方、リクエストタイミングでない場合、制御装置9は、ステップS4に移行する。そして、制御装置9は、ステップS4として、記憶部に格納された角速度ωを演算処理することにより、第1速度信号V1および第1位置信号P1を生成する。ただし、第1速度信号V1および第1位置信号P1の生成方法は、特に限定されない。
【0044】
第2位置信号生成部917は、エンコーダー5の出力に基づいてモーター4の第2位置信号P2を生成する。第2速度信号生成部918は、微分器であり、第2位置信号生成部917からの第2位置信号P2を微分してモーター4の第2速度信号V2を生成する。このように、第2速度信号生成部918として微分器を用いることにより、第2位置信号P2から第2速度信号V2を容易に生成することができる。ただし、第2位置信号P2から第2速度信号V2を生成する方法としては、特に限定されず、例えば、第2位置信号P2に所定の係数を積算して第2速度信号V2を生成してもよい。
【0045】
そして、第1位置信号生成部916で生成した第1位置信号P1に第2位置信号生成部917で生成した第2位置信号P2が減算合成され、第1位置信号P1と第2位置信号P2との差分位置信号P’が生成される。
【0046】
また、第1速度信号生成部915で生成した第1速度信号V1に第2速度信号生成部918で生成した第2速度信号V2が減算合成され、第1速度信号V1と第2速度信号V2との差分速度信号V’が生成される。さらに、この差分速度信号V’は、所定のゲイン定数kによりk倍化されたのち、第2速度信号生成部918で生成した第2速度信号V2に減算合成され、モーター4の実速度信号V”が生成される。
【0047】
位置指令生成部911は、モーター4の位置指令P0を制御周期間隔毎に生成する。
【0048】
位置制御部912は、位置指令P0に、エンコーダー5からの第2位置信号P2つまりモーター4の実位置をフィードバック(減算合成)する。そして、位置制御部912は、位置指令P0と第2位置信号P2との差分に基づいて、つまり、第2位置信号P2が位置指令P0と一致するように速度指令を生成する。さらに、位置制御部912は、この速度指令に差分位置信号P’をフィードバック(減算合成)して補正することにより速度指令V0を生成する。
【0049】
速度制御部913は、速度指令V0に、実速度信号V”つまりモーター4の実速度をフィードバック(減算合成)する。そして、速度制御部913は、速度指令V0と実速度信号V”との差分に基づいて、つまり、実速度信号V”が速度指令V0と一致するように加速度指令A0を生成する。
【0050】
電流制御部914は、加速度指令A0に基づいて電流指令E0を生成する。そして、電流制御部914で生成された電流指令E0がモーター4に印加され、モーター4が駆動する。
【0051】
以上のように、第2位置信号P2を位置指令P0にフィードバックする位置制御を行うだけではなく、さらに、差分位置信号P’を位置指令P0にフィードバックする位置制御を行う。つまり、本実施形態のロボット2の制御方法では、第1アーム221に配置されている角速度センサー6の出力から求められるモーター4の第1位置である第1位置信号P1と、モーター4に接続されているエンコーダー5の出力から求められるモーター4の第2位置である第2位置信号P2と、の差分である差分位置信号P’に基づいてモーター4の駆動を制御する。そのため、減速機3が有するバックラッシ、減速機3の入力側と出力側との間に生じる捩じれ等の有無によらずに、第1アーム221の位置を目標位置に精度よく合わせることができる。
【0052】
さらに、本実施形態では、実速度信号V”を速度指令V0にフィードバックする速度制御を行う。つまり、本実施形態のロボット2の制御方法では、第1アーム221に配置されている角速度センサー6の出力から求められるモーター4の第1速度である第1速度信号V1と、モーター4に接続されているエンコーダー5の出力から求められるモーター4の第2速度である第2速度信号V2と、の差分である差分速度信号V’から得られた実速度信号V”に基づいてモーター4の駆動を制御する。そのため、減速機3が有するバックラッシ、減速機3の入力側と出力側との間に生じる捩じれ等によらずに、第1アーム221の位置を目標位置により精度よく合わせることができる。
【0053】
以上、本実施形態のロボットシステム1について説明した。このようなロボットシステム1に適用されているロボット2の制御方法は、アームとしての第1アーム221と第1アーム221を回動させるモーター4とを備え、位置指令P0に基づいてモーター4を駆動するロボット2の制御方法であって、第1アーム221に配置されている角速度センサー6の出力から求められるモーター4の第1位置である第1位置信号P1と、モーター4に接続されている位置検出器であるエンコーダー5の出力から求められるモーター4の第2位置である第2位置信号P2と、の差分である差分位置信号P’に基づいてモーター4の駆動を制御する。このような制御方法によれば、第1アーム221の位置を目標位置に精度よく合わせることができる。
【0054】
また、前述したように、ロボット2の制御方法では、第1位置つまり第1位置信号P1は、角速度センサー6の出力を積分することにより求められる。これにより、第1位置信号P1を容易に生成することができる。
【0055】
また、前述したように、ロボット2の制御方法では、角速度センサー6の出力から求められるモーター4の第1速度である第1速度信号V1と、エンコーダー5の出力から求められるモーター4の第2速度である第2速度信号V2と、の差分である差分速度信号V’に基づいてモーター4の駆動を制御する。このような制御方法によれば、第1アーム221の位置を目標位置に精度よく合わせることができる。このように、位置制御に加えて速度制御を行うことにより、上述の効果がより顕著となる。
【0056】
また、前述したように、ロボット2の制御方法では、第2速度信号V2と、第1速度信号V1と第2速度信号V2との差分である差分速度信号V’と、の差分である実速度信号V”に基づいてモーター4の駆動を制御する。このような制御方法によれば、第1アーム221の位置を目標位置に精度よく合わせることができる。
【0057】
また、前述したように、第2速度つまり第2速度信号V2は、エンコーダー5の出力を微分することにより求められる。これにより、第2速度信号V2を容易に生成することができる。
【0058】
また、前述したように、第1アーム221は、減速機3を介してモーター4と接続されている。これにより、減速機3が有するバックラッシ、減速機3の入力側と出力側との間に生じる捩じれ等によりモーター4の位置と第1アーム221の位置とにずれが生じ易くなる。そのため、本実施形態のロボット2の制御方法が特に有効となる。
【0059】
また、前述したように、ロボットシステム1に適用されるロボット2の制御プログラムPPは、アームとしての第1アーム221と第1アーム221を回動させるモーター4とを備え、位置指令P0に基づいてモーター4を駆動するロボットの制御プログラムであって、第1アーム221に配置されている角速度センサー6の出力から求められるモーター4の第1位置と、モーター4に接続されている位置検出器であるエンコーダー5の出力から求められるモーター4の第2位置と、の差分に基づいてモーター4の駆動を制御する。このような制御プログラムPPによれば、第1アーム221の位置を目標位置に精度よく合わせることができる。
【0060】
また、前述したように、ロボットシステム1は、アームである第1アーム221と、第1アーム221を回動させるモーター4と、第1アーム221に配置されている角速度センサー6と、モーター4に接続されモーター4の位置を検出する位置検出器であるエンコーダー5と、を備えるロボット2と、モーター4の駆動を制御する制御装置9と、を有している。また、制御装置9は、角速度センサー6の出力から求められるモーター4の第1位置と、エンコーダー5の出力から求められるモーター4の第2位置と、の差分に基づいてモーター4の駆動を制御する。このようなロボットシステム1によれば、第1アーム221の位置を目標位置に精度よく合わせることができる。
【0061】
以上、本発明のロボットの制御方法、ロボットの制御プログラムおよびロボットシステムを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0062】
また、前述した実施形態では、第1関節アクチュエーター251について本発明のロボットの制御方法を適用したが、これに限定されず、第2関節アクチュエーター252に本発明のロボットの制御方法を適用してもよい。この場合、角速度センサー6は、第2アーム222の第2回動軸J2からずれた位置に配置すればよい。
【0063】
また、前述した実施形態では、角速度センサー6が第1アーム221に配置されているが、角速度センサー6の配置は、これに限定されない。例えば、角速度センサー6を第2アーム222に配置してもよい。この場合、第1関節アクチュエーター251に起因する位置ずれと、第2関節アクチュエーター252に起因する位置ずれと、を区別なくまとめて第1関節アクチュエーター251の駆動制御により補正することができる。したがって、エンドエフェクター24の目標位置からの位置ずれを効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…ロボットシステム、2…ロボット、21…ベース、22…ロボットアーム、221…第1アーム、222…第2アーム、23…作業ヘッド、231…スプラインナット、232…ボールネジナット、233…スプラインシャフト、24…エンドエフェクター、251…第1関節アクチュエーター、252…第2関節アクチュエーター、253…第1駆動機構、254…第2駆動機構、3…減速機、31…ウェーブジェネレーター、311…波動発生部、312…ベアリング、33…フレックスプライン、331…筒状部、331a…外歯、332…フランジ部、36…サーキュラスプライン、361…内側主軸受け、361b…内歯、362…外側主軸受け、363…ベアリング、39…カバー部材、4…モーター、41…シャフト、43…ハウジング、5…エンコーダー、51…光学スケール、52…光学センサー、521…発光素子、522…受光素子、6…角速度センサー、8…制御回路、81…位置指令生成部、82…位置制御部、83…速度制御部、84…電流制御部、9…制御装置、91…制御回路、911…位置指令生成部、912…位置制御部、913…速度制御部、914…電流制御部、915…第1速度信号生成部、916…第1位置信号生成部、917…第2位置信号生成部、918…第2速度信号生成部、A0…加速度指令、E0…電流指令、J1…第1回動軸、J2…第2回動軸、J3…第3回動軸、P’…差分位置信号、P0…位置指令、P1…第1位置信号、P2…第2位置信号、PP…制御プログラム、S1…ステップ、S2…ステップ、S3…ステップ、S4…ステップ、S5…ステップ、V’…差分速度信号、V”…実速度信号、V0…速度指令、V1…第1速度信号、V2…第2速度信号、ω…角速度