IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 多摩川精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-遊星歯車機構 図1
  • 特開-遊星歯車機構 図2
  • 特開-遊星歯車機構 図2-2
  • 特開-遊星歯車機構 図2-3
  • 特開-遊星歯車機構 図3
  • 特開-遊星歯車機構 図4
  • 特開-遊星歯車機構 図5
  • 特開-遊星歯車機構 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029684
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】遊星歯車機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/28 20060101AFI20240228BHJP
   F16H 55/18 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
F16H1/28
F16H55/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132072
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】田村 亮平
【テーマコード(参考)】
3J027
3J030
【Fターム(参考)】
3J027FA01
3J027FA17
3J027GC13
3J027GC22
3J027GD04
3J027GD07
3J027GD13
3J027GE01
3J027GE11
3J027GE18
3J027GE29
3J030AB01
3J030AC03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】内歯車の寸法に合った遊星歯車の選定作業を要することなく、また、複数の固定内歯車を使用することなく、遊星歯車機構におけるバックラッシ調節を行うことのできる技術を提供すること。
【解決手段】遊星歯車機構10は、入力回転を得る太陽歯車1と、太陽歯車1に噛み合う複数の遊星歯車3a等と、遊星歯車等を支持するキャリア4と、遊星歯車等に噛み合う固定内歯車5と、同じく遊星歯車等に噛み合う出力軸一体内歯車6とからなり、複数の該遊星歯車のうち一部はキャリア4上において公転方向に移動しないようキャリアに固定されている固定遊星歯車等であり、その他はキャリア上において公転方向に移動可能にキャリアに支持されている可動遊星歯車3a等である構成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力回転を得る太陽歯車と、該太陽歯車に噛み合う複数の遊星歯車と、該遊星歯車を支持するキャリアと、該遊星歯車に噛み合う固定内歯車と、同じく該遊星歯車に噛み合う出力軸一体内歯車とからなる遊星歯車機構であって、
複数の該遊星歯車のうち一部は該キャリア上において公転方向に移動しないよう該キャリアに固定されている固定遊星歯車であり、
その他は該キャリア上において公転方向に移動可能に該キャリアに支持されている可動遊星歯車であり、
これにより、該キャリアが該公転方向に回転することで該可動遊星歯車も公転方向に回転移動する
ことを特徴とする、遊星歯車機構。
【請求項2】
前記可動遊星歯車は二以上設けられることを特徴とする、請求項1に記載の遊星歯車機構。
【請求項3】
前記可動遊星歯車は全遊星歯車の半数以上設けられることを特徴とする、請求項1に記載の遊星歯車機構。
【請求項4】
前記キャリアは、入力側および出力側の双方から前記遊星歯車を支持する一対のキャリア部材からなることを特徴とする、請求項2、3のいずれかに記載の遊星歯車機構。
【請求項5】
前記キャリア部材の一方における前記遊星歯車支持用の支持手段を挿通する全ての挿通孔は、該キャリアの回転が可能な形状に形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の遊星歯車機構。
【請求項6】
前記キャリア部材の他方における前記可動遊星歯車支持用の支持手段を挿通する挿通孔は、該キャリアの回転が可能な形状に形成されていることを特徴とする、請求項5に記載の遊星歯車機構。
【請求項7】
減速機構造に用いることを特徴とする、請求項1に記載の遊星歯車機構。
【請求項8】
内歯車との噛み合いの際に前記キャリアを回転させることによってバックラッシ調節が可能であることを特徴とする、請求項7に記載の遊星歯車機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遊星歯車機構に係り、減速機構造として用いる遊星歯車機構における遊星歯車―内歯車間のバックラッシ調節技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来の遊星歯車機構の構成例を示す側断面図である。図示するように遊星歯車機構510は、太陽歯車51、遊星歯車52a等、固定内歯車55、出力軸一体内歯車56、キャリア54からなる。太陽歯車51は、モータなどの装置に接続され、入力回転を得る。遊星歯車52a等は複数個存在し、キャリア54により保持されている。キャリア54は、遊星歯車52a等を入力側から支持する下部キャリア部材54A、および出力側から支持する上部キャリア54Bとから構成されている。
【0003】
図6は、図5に示す遊星歯車機構における遊星歯車の配置例を示す平面図である。図示するように従来の構成では、遊星歯車52a、52b等は均等に、つまり等角度の配置にて、キャリア54に固定されている。なお、キャリア54は入力側、出力側、双方向から支持するキャリア部材54A(下部キャリア部材)、キャリア部材54B(上部キャリア部材)により構成され、図では後者を示している。遊星歯車52a等が固定されていることにより、遊星歯車52a等-内歯車(固定内歯車55、出力軸一体内歯車56)間におけるバックラッシの調節を行うには、内歯車の寸法に合った遊星歯車の選定作業が必要である。なお、各遊星歯車52a等はこれをキャリア54に固定するための支持手段(図示せず)により固定され、支持手段は挿通孔82a、82b等に遊びを有することなく挿通され、固定されている。
【0004】
遊星歯車機構におけるバックラッシ調節技術については従来、特許出願等もなされている。たとえば後掲特許文献1には、太陽歯車にそれぞれ噛合する複数の遊星歯車を各別の遊星歯車軸に支持して設けるとともに、これらの遊星歯車を軸方向に並設された第1の固定内歯車、または第2の固定内歯車の一方に噛合するよう軸方向にずらして配設し、第1および第2の固定内歯車を互いに逆方向に回転させてバックラッシを調節するという方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05-240315号公報「減速機のバックラッシュ調整装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り従来の遊星歯車機構における遊星歯車―内歯車間のバックラッシ調節には、寸法の合う遊星歯車の選定作業が必要であった。一方、上記文献開示技術は固定内歯車を複数使用することでバックラッシ調節を行うものだが、複数の固定内歯車を設置することにより全体の重量が増し、またコスト上昇にも繋がり、好ましくない。異なるバックラッシ調節方式が求められる。
【0007】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点をなくし、内歯車の寸法に合った遊星歯車の選定作業を要することなく、また、先行技術のように複数の固定内歯車を使用することなく、遊星歯車機構におけるバックラッシ調節を行うことのできる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は上記課題について検討した。その結果、遊星歯車を噛み合わせのために固定内歯車または出力軸一体内歯車方向へと切り替え移動させた時にバックラッシがある場合には、遊星歯車の歯を内歯車の歯に向かって移動させてこれに押し当てられるよう、少なくとも一部の遊星歯車を公転方向に動かすことのできる構造とすることによって、ガタツキを減らしバックラッシを調節できることを見出し、これに基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0009】
〔1〕 入力回転を得る太陽歯車と、該太陽歯車に噛み合う複数の遊星歯車と、該遊星歯車を支持するキャリアと、該遊星歯車に噛み合う固定内歯車と、同じく該遊星歯車に噛み合う出力軸一体内歯車とからなる遊星歯車機構であって、
複数の該遊星歯車のうち一部は該キャリア上において公転方向に移動しないよう該キャリアに固定されている固定遊星歯車であり、
その他は該キャリア上において公転方向に移動可能に該キャリアに支持されている可動遊星歯車であり、
これにより、該キャリアが該公転方向に回転することで該可動遊星歯車も公転方向に回転移動する
ことを特徴とする、遊星歯車機構。
〔2〕 前記可動遊星歯車は二以上設けられることを特徴とする、〔1〕に記載の遊星歯車機構。
〔3〕 前記可動遊星歯車は全遊星歯車の半数以上設けられることを特徴とする、〔1〕に記載の遊星歯車機構。
〔4〕 前記キャリアは、入力側および出力側の双方から前記遊星歯車を支持する一対のキャリア部材からなることを特徴とする、〔2〕、〔3〕のいずれかに記載の遊星歯車機構。
【0010】
〔5〕 前記キャリア部材の一方における前記遊星歯車支持用の支持手段を挿通する全ての挿通孔は、該キャリアの回転が可能な形状に形成されていることを特徴とする、〔4〕に記載の遊星歯車機構。
〔6〕 前記キャリア部材の他方における前記可動遊星歯車支持用の支持手段を挿通する挿通孔は、該キャリアの回転が可能な形状に形成されていることを特徴とする、〔5〕に記載の遊星歯車機構。
〔7〕 減速機構造に用いることを特徴とする、〔1〕に記載の遊星歯車機構。
〔8〕 内歯車との噛み合いの際に前記キャリアを回転させることによってバックラッシ調節が可能であることを特徴とする、〔7〕に記載の遊星歯車機構。
【発明の効果】
【0011】
本発明の遊星歯車機構は上述のように構成されるため、これによれば、少なくとも一部の遊星歯車をキャリア上で公転方向に回転させることができるため、遊星歯車を噛み合わせのために固定内歯車または出力軸一体内歯車方向へと切り替え移動させた時にバックラッシがある場合に、遊星歯車の歯を内歯車の歯に向かって移動させてこれに押し当てる動作を行うことで、遊星歯車におけるバラツキを吸収でき、バックラッシを調節することができる。したがって、従来のように内歯車の寸法に合った遊星歯車を選別する作業は不要とすることができる。
【0012】
また本発明は、先行技術のように固定内歯車を複数個使用するという重量もコストも増大する方式をとるのではなく、遊星歯車をキャリア上に支持するための挿通孔の形状に軽微な変更を施すことによってバックラッシ調節を可能とする方式であるため、重量やコストの増大を招くことがない。結局、本発明によれば、歯車の精度に依存せずに、また遊星歯車機構としての全体的な歯車構成の複雑化を行うことなく、バックラッシ低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の遊星歯車機構の構成を示す側断面図である。
図2図1に示す遊星歯車機構における遊星歯車の配置例を示す平面図である。
図2-2】本発明遊星歯車機構によるバックラッシ調節作用を示す断面視説明図である(内歯車への接続前)。
図2-3】本発明遊星歯車機構によるバックラッシ調節作用を示す断面視説明図である(後者は調節作用)。
図3図2に示すキャリアを構成する一方のキャリア部材(上部キャリア部材)の構成を示す説明図である(左:平面図、右:X-O-X断面図)。
図4図2に示すキャリアを構成する他方のキャリア部材(下部キャリア部材)の構成を示す説明図である(左:平面図、右:X-O-X断面図)。
図5】従来の遊星歯車機構の構成例を示す側断面図である。
図6図5に示す遊星歯車機構における遊星歯車の配置例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の遊星歯車機構の構成を示す側断面図である。また、図2図1に示す遊星歯車機構における遊星歯車の配置例を示す平面図である。これらに示すように本遊星歯車機構10は、入力回転を得る太陽歯車1と、太陽歯車1に噛み合う複数の遊星歯車2b、3a等と、遊星歯車2b、3a等を支持するキャリア4と、遊星歯車2b、3a等に噛み合う固定内歯車5と、同じく遊星歯車2b、3a等に噛み合う出力軸一体内歯車6とからなり、複数の該遊星歯車のうち一部はキャリア4上において公転方向に移動しないようキャリア4に固定されている固定遊星歯車2b、2d等であり、その他はキャリア4上において公転方向に移動可能にキャリア4に支持されている可動遊星歯車3a、3c等であることを、主たる構成とする。
【0015】
なお、各図では、4個の遊星歯車を備えた遊星歯車機構10の構成例を示しており、以降の説明はこの例によって行うが、本発明はこれに限定されるものではない。遊星歯車の個数が3個でも、また5個以上の構成であっても本発明の範囲内であり、本発明を適用可能である。
【0016】
かかる構成により本遊星歯車機構10では、モータなどの装置に接続されている太陽歯車1がその入力回転を得て、それを噛み合う複数の遊星歯車2b等に伝え、遊星歯車2b等は固定内歯車5、または出力軸一体内歯車6の一方と噛み合うことによって、それぞれの減速比による伝動がなされるのだが、この噛み合いにおいて本発明特有の動作がなされる。すなわち、遊星歯車のうちの可動遊星歯車3a、3cはキャリア4上において公転方向に移動可能、つまり回転可能にキャリア4に支持されているため、キャリア4を公転方向の任意の向き、たとえば右回転(時計回り)方向に回転させることによって、可動遊星歯車3a、3cを同一方向に回転移動させることができる。
【0017】
遊星歯車2b、3a等を、固定内歯車5か出力軸一体内歯車6、いずれか所望の接続先である方の内歯車に切り替え移動した際に、遊星歯車2b等の歯―内歯車の歯にガタツキがあって適切に噛み合っていない場合には、キャリア4を公転方向上の任意の向きに回転させる。そうすると、固定遊星歯車2b、2dはキャリア4に固定されているため回転しないが、可動遊星歯車3a、3cはキャリア4の回転によって回転せしめられる。それにより、バックラッシがある状態の可動遊星歯車3a、3cの歯の側面は、内歯車の歯の側面に対して当接し、押し当てられるため、ガタツキがなくなり、バックラッシが調節される。
【0018】
一方、固定遊星歯車2b、2dにおいて、接続先の内歯車との間でバックラッシがある場合、これはキャリア4の回転によっても調節されることはない。固定遊星歯車2b、2dは回転しないようキャリア4に支持されているからである。つまり、本発明によって、遊星歯車2b、2d、3a、3c全てにおけるバックラッシ調節が常になされ得るというわけではない。しかし、一部の遊星歯車だけであってもこれがなされることにより、遊星歯車機構10全体としてのガタツキは十分に解消することができ、バックラッシ調節を効果有らしめることができる。
【0019】
図2では、4個構成の遊星歯車の中で可動遊星歯車は対向して配置された3a、3c、の計2個であり、したがってこの2個の可動遊星歯車においてバックラッシ調節を行え、ガタツキを解消することができる、という構成例を示している。つまり、4個の遊星歯車のうち半数をそれに充てている構成である。しかしながら、最低1個の遊星歯車を可動遊星歯車とすることでバックラッシ軽減効果を十分に見込め、本発明の作用効果は得ることができる。
【0020】
もっとも、バックラッシ調節作用を担う可動遊星歯車3a等は、内歯車の歯との適切な噛み合い状態によって力が大きく加わることになる。そうすると、可動遊星歯車、内歯車双方の歯の寿命が短くなるおそれが生じ、また、遊星歯車間の配置バランスとしても最適とは言えない。したがって、可動遊星歯車の数は1個よりも2個以上とすることが望ましい。あるいは全遊星歯車数の半数以上(全遊星歯車数が3の場合は可動遊星歯車は2個以上)とすることが望ましい。そして、そのいずれの場合でも、可能な限り、固定遊星歯車との間のバランスをとれる配置とすることが推奨される。
【0021】
図2-2、2-3は本発明遊星歯車機構によるバックラッシ調節作用を示す断面視説明図であり、前者は内歯車への接続前の状態を、後者は調節作用を示す。各図は、遊星歯車13aを内歯車(出力軸一体内歯車)16へと?合わせる際における作用説明図である。これらに示すように、可動遊星歯車13aを、内歯車(出力軸一体内歯車)16に切り替え移動した際に、可動遊星歯車13aの各歯31、32、33、・・・と、内歯車16の各歯60、61、62、・・・との間にガタツキがあって適切に噛み合っていない場合には、上述の通りキャリア(図示せず)が公転方向上の任意の向きに回転させられ、それに伴って可動遊星歯車13aは回転させられ、可動遊星歯車13aの各31、32、・・・の側面が、内歯車16の各歯61、62、・・・の側面に対して押し当てられるため、ガタツキがなくなり、バックラッシが調節される。
【0022】
図3は、図2に示すキャリアを構成する一方のキャリア部材(上部キャリア部材)4Bの構成を示す説明図であり、同じく図4は他方のキャリア部材(下部キャリア部材)4Aの構成を示す説明図である。いずれも図中において、左:平面図、右:X-O-X断面図である。このようにキャリア4は、入力側および出力側の双方から遊星歯車を支持する一対のキャリア部材4A、4Bから構成される。なお、ここでは、一方のキャリア部材4Bを上部キャリア部材、他方のキャリア部材4Aを下部キャリア部材としているが、「上部」「下部」は相対的な表示であり、本発明がこれに限定される訳ではない。
【0023】
図3に示すように、一方のキャリア部材(上部キャリア部材)4Bにおける遊星歯車支持用の支持手段を挿通する全ての挿通孔7a、7b、7c、7dは、支持手段(図示せず)が遊びを持って挿通されるよう、真円ではなく周方向にやや引き伸ばされた形状に形成されている。すなわち、支持手段は周方向上=回転方向上にて挿通孔7a等の形状によって規制される範囲内で、回転可能であり、支持手段によって支持されている可動遊星歯車3a、3c(前出図2)も回転可能である。これにより、キャリア4を回転させることで、可動遊星歯車3a等を回転移動させることができ、図2-2、2-3にも示したようにバックラッシ調節を実行できる。
【0024】
なお、図4に示すように、各遊星歯車の支持を逆方向から行うための他方のキャリア部材4A(下部キャリア部材)において、可動遊星歯車3a、3c(図2)用の支持手段の挿通孔8a、8cは、キャリア部材4Bの全挿通孔7a等と同じく、支持手段が遊びを持って挿通されるよう真円ではなく周方向にやや引き伸ばされた形状に形成されている。すなわち、支持手段は周方向上=回転方向上にて挿通孔8a、8cの形状によって規制される範囲内で回転可能であり、支持手段によって支持されている可動遊星歯車3a、3c(前出図2)も回転可能である。
【0025】
このように、可動遊星歯車3a・3cの支持に係る一方のキャリア部材4Aの挿通孔8a・8c、他方のキャリア部材4Bの挿通孔7a・7cがともに、支持手段を遊嵌せしめる形状であることにより、可動遊星歯車3a・3cは可動となり、直接的にバックラッシ調節作用を行わせることができる。
【0026】
一方、図4に示すように、他方のキャリア部材(した部キャリア部材)4Aにおける固定遊星歯車支持用の支持手段を挿通する挿通孔9b、9dは、キャリア部材4A周方向上=回転方向上において引き伸ばされた形状ではなく、支持手段に対して遊びが設けられていない形状である。したがって、キャリア部材4B(上部キャリア部材)の挿通孔7b、7dにおいて遊びがあっても、本挿通孔9b、9dではそれがないため、キャリア4を回転させても支持手段は動かず、したがって固定遊星歯車2b、2d(図2)も動かない。
【0027】
各キャリア部材4B、4Aにおいて挿通孔の形状を、一方では全て遊びがあってキャリア4の回転により支持手段とそれが支持する遊星歯車を回転可能な形状としつつ、他方では一部のみに遊びがあってキャリア4の回転により支持手段とそれが支持する遊星歯車を回転可能な形状とすることによって、一部の遊星歯車を可動遊星歯車とし、それによりバックラッシ調節を行うことができる。
【0028】
以上説明したいずれかの構成の遊星歯車機構は、減速機構造に好適に用いることができる。そして上述の通り、内歯車との噛み合いの際にキャリアを回転させることによってバックラッシ調節を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の遊星歯車機構によれば、歯車の精度に依存せずに、また遊星歯車機構としての全体的な歯車構成の複雑化を行うことなく、バックラッシ低減を実現することができる。したがって、減速機などの遊星歯車機構の製造分野、減速機などの遊星歯車機構使用分野、および関連する全分野において、産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0030】
1…太陽歯車
2b、2d…固定遊星歯車
3a、3c、13a…可動遊星歯車
4…キャリア
4A…キャリア部材(下部キャリア部材)
4B…キャリア部材(上部キャリア部材)
5、15…固定内歯車
6、16…出力軸一体内歯車
7a、7b、7c、7d…キャリア部材(上部キャリア部材)4Bの挿通孔
8a、8c…キャリア部材(下部キャリア部材)4Aの挿通孔
9b、9d…キャリア部材(下部キャリア部材)4Aのその他の挿通孔
10…遊星歯車機構
31、32、33…可動遊星歯車13aの各歯
60、61、62…内歯車16の各歯
(以下の各符号は従来技術の説明図にかかる)
51…太陽歯車
52a、52b、52c、52d…遊星歯車
54…キャリア
54A…下部キャリア部材(入力側から支持)
54B…上部キャリア部材(出力側から支持)
55…固定内歯車
56…出力軸一体内歯車
510…遊星歯車機構
82a、82b、82c、82d…挿通孔
図1
図2
図2-2】
図2-3】
図3
図4
図5
図6