(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029685
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】電力需要予測装置、電力需要予測方法及び電力需要予測プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
H02J3/00 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132075
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 海虹
(72)【発明者】
【氏名】高野 宣行
(72)【発明者】
【氏名】中野 潤一
(72)【発明者】
【氏名】上田 和章
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AA02
5G066AE01
5G066AE05
5G066AE09
(57)【要約】
【課題】より好ましいタイミングで予測モデルを更新する。
【解決手段】本電力需要予測装置は、需要家によって消費された電力の実測値を含む教師データを用いて構築された予測モデルと、上記予測モデルを用いて上記需要家による電力需要を示す予測値を算出し、上記需要家への電力供給を行う電源に上記予測値を供給する供給部と、上記需要家によって消費される電力を測定した上記実測値の入力を受ける受付部と、上記予測値と上記実測値との差に応じて決定したタイミングで上記予測モデルを更新する更新部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
需要家によって消費された電力の実測値を含む教師データを用いて構築された予測モデルと、
前記予測モデルを用いて前記需要家による電力需要を示す予測値を算出し、前記需要家への電力供給を行う電源に前記予測値を供給する供給部と、
前記需要家によって消費される電力を測定した前記実測値の入力を受ける受付部と、
前記予測値と前記実測値との差に応じて決定したタイミングで前記予測モデルを更新する更新部と、を備える、
電力需要予測装置。
【請求項2】
前記受付部によって受け付けられた前記実測値と、前記供給部によって算出された前記予測値とは記憶部に記憶され、
前記予測モデルは、前記教師データを用いて構築されたベースモデルと、前記ベースモデルによって算出された前記予測値を補正する補正モデルとを含み、
前記更新部は、前記ベースモデルによる前記予測値が前記補正モデルによる補正の対応範囲内であり、かつ、前記予測値を前記補正モデルで補正した補正値が許容範囲外となる状態が所定期間以上継続した場合、前記記憶部に記憶された前記予測値及び前記実測値のうち前記所定期間における前記予測値と前記実測値とを基に、前記補正モデルを更新する、
請求項1に記載の電力需要予測装置。
【請求項3】
前記更新部は、更新した前記補正モデルによる前記補正値が前記許容範囲外の場合、前記記憶部に記憶された前記予測値及び前記実測値のうち前記所定期間における実績値を前記教師データに追加して前記ベースモデルを更新する、
請求項2に記載の電力需要予測装置。
【請求項4】
前記更新部は、更新した前記ベースモデルによって算出される前記予測値が前記対応範囲外である場合に、前記記憶部に記憶された前記実測値のうち前記所定期間を含む一定期間の前記実測値を前記教師データとして前記ベースモデルを再構築する、
請求項3に記載の電力需要予測装置。
【請求項5】
前記更新部は、更新した前記ベースモデルによって算出される前記予測値を更新した前記補正モデルで補正した前記補正値が前記許容範囲外の場合、前記記憶部に記憶された前記実測値のうち前記所定期間を含む一定期間の前記実測値を前記教師データとして前記ベースモデルを再構築する、
請求項3に記載の電力需要予測装置。
【請求項6】
需要家によって消費された電力の実測値を含む教師データを用いて構築された予測モデルを備えたコンピュータが、
前記予測モデルを用いて前記需要家による電力需要を示す予測値を算出し、前記需要家への電力供給を行う電源に前記予測値を供給する供給ステップと、
前記需要家によって消費される電力を測定した前記実測値の入力を受ける受付ステップと、
前記予測値と前記実測値との差に応じて決定したタイミングで前記予測モデルを更新する更新ステップと、を実行する、
電力需要予測方法。
【請求項7】
需要家によって消費された電力の実測値を含む教師データを用いて構築された予測モデルを備えたコンピュータに、
前記予測モデルを用いて前記需要家による電力需要を示す予測値を算出し、前記需要家への電力供給を行う電源に前記予測値を供給する供給ステップと、
前記需要家によって消費される電力を測定した前記実測値の入力を受ける受付ステップと、
前記予測値と前記実測値との差に応じて決定したタイミングで前記予測モデルを更新する更新ステップと、を実行させる、
電力需要予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力需要予測装置、電力需要予測方法及び電力需要予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力需給等を制御するエネルギーマネージメントシステム(EMS)が利用されている。EMSでは、例えば、過去の電力需要に基づいて構築された予測モデルを用いて、将来の電力需要の予測が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力需要は、電力の供給を受けて駆動される機器設置や撤去等により変動する。EMSでは、電力需要の変動に追従するため予測モデルが更新されることが好ましい。従来では、予測モデルの更新は、例えば、3か月に1回等の頻度で定期的に行われていた。しかしながら、定期的に予測モデルを更新する場合、例えば、予測モデルが更新された直後に電力を使用する機器の増減が生じる場合がある。このような場合、次回の予測モデルの更新までの間はEMSによる電力需要の予測精度が低下する虞がある。
【0005】
また、定期的に予測モデルが更新される場合、EMSによる電力需要の予測値と実際に消費された電力の実測値との乖離が生じていないタイミングで予測モデルが更新されることも考えられる。このような不要なタイミングでの予測モデルの更新作業が生じることで、作業員の作業負担が増大したり、EMSを実行する情報処理装置の計算負荷を増大させたりする虞がある。
【0006】
開示の技術の1つの側面は、より好ましいタイミングで予測モデルを更新できる電力需要予測装置、電力需要予測方法及び電力需要予測プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術の1つの側面は、次のような電力需要予測装置によって例示される。本電力需要予測装置は、需要家によって消費された電力の実測値を含む教師データを用いて構築された予測モデルと、上記予測モデルを用いて上記需要家による電力需要を示す予測値を算出し、上記需要家への電力供給を行う電源に上記予測値を供給する供給部と、上記需要家によって消費される電力を測定した上記実測値の入力を受ける受付部と、上記予測値と上記実測値との差に応じて決定したタイミングで上記予測モデルを更新する更新部と、を備える。
【0008】
一定間隔で予測モデルが更新される場合には、予測モデルの更新直後に需要家において電力を使用する機器の増減をすることも生じ得る。このような場合、次回の予測モデルの更新までの間は電力需要の予測精度が低下する虞がある。一方、上記電力需要予測装置によれば、一定の間隔ではなく、予測値と実測値との差に応じて決定したタイミングで予測モデルを更新することができる。そのため、上記電力需要予測装置によれば、一定間隔で予測モデルを更新する場合と比較して、より好ましいタイミングで予測モデルを更新する
ことができる。
【0009】
上記電力需要予測装置は、次の特徴を備えてもよい。上記受付部によって受け付けられた上記実測値と、上記供給部によって算出された上記予測値とは記憶部に記憶され、上記予測モデルは、上記教師データを用いて構築されたベースモデルと、上記ベースモデルによって算出された上記予測値を補正する補正モデルとを含む。上記更新部は、上記ベースモデルによる予測値が上記補正モデルによる補正の対応範囲内であり、かつ、上記予測値を上記補正モデルで補正した補正値が許容範囲外となる状態が所定期間以上継続した場合、上記記憶部に記憶された上記予測値及び上記実測値のうち上記所定期間における上記予測値と上記実測値とを基に、上記補正モデルを更新する。予測値が補正モデルによる補正の対応範囲内であるにもかかわらず、補正モデルによって予測値を補正した値が許容範囲外となる場合は、補正モデルによる補正が需要家の電力需要からずれていると考えられる。更新部は、このような場合に補正モデルを更新することで、補正モデルによる補正と需要家による電力需要とのずれを抑制することができる。
【0010】
上記電力需要予測装置は、次の特徴を備えてもよい。上記更新部は、更新した上記補正モデルによる上記補正値が上記許容範囲外の場合、上記記憶部に記憶された上記実測値のうち上記所定期間における実績値を上記教師データに追加して上記ベースモデルを更新する。このような電力需要予測装置によれば、補正モデルによる補正でも許容範囲内に予測値を収めることができない場合にベースモデルを更新することで、予測値の精度を高めることができる。
【0011】
上記電力需要予測装置は、次の特徴を備えてもよい。上記更新部は、更新した上記ベースモデルによって算出される上記予測値が上記対応範囲外である場合に、上記記憶部に記憶された上記実測値のうち上記所定期間を含む一定期間の上記実測値を上記教師データとして上記ベースモデルを再構築する。このような電力需要予測装置によれば、上記対応範囲外となる所定期間を含む一定期間の実測値を教師データとしてベースモデルを再構築することで、補正モデルによって補正可能な範囲の予測値をベースモデルに算出させることができる。ひいては、このような電力需要予測装置によれば、予測値の精度を高めることができる。
【0012】
上記電力需要予測装置は、次の特徴を備えてもよい。上記更新部は、更新した上記ベースモデルによって算出される上記予測値を更新した上記補正モデルで補正した上記補正値が上記許容範囲外の場合、上記記憶部に記憶された上記実測値のうち上記所定期間を含む一定期間の上記実測値を上記教師データとして上記ベースモデルを再構築する。このような電力需要予測装置によれば、補正モデルによる補正によっても予測値と実測値とが乖離する場合に、上記所定期間を含む一定期間の上記実測値を上記教師データとしてベースモデルを再構築することで、予測値の精度を高めることができる。
【0013】
本発明は、電力需要予測方法及び電力需要予測プログラムの側面から把握することも可能である。
【発明の効果】
【0014】
開示の技術によれば、より好ましいタイミングで予測モデルを更新することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電力供給システムの機器配置の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る電力供給システムの各機器の接続状態の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、コントローラの処理ブロックの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、コントローラの処理フローの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、更新部による予測モデルを更新する処理フローの一例を示す第1の図である。
【
図6】
図6は、更新部による予測モデルを更新する処理フローの一例を示す第2の図である。
【
図7】
図7は、更新部による予測モデルを更新する処理フローの一例を示す第3の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<適用例>
以下、本発明の適用例について、図面を参照して説明する。本発明は、例えば、
図1及び
図2に一例を示す電力供給システム1に適用される。電力供給システム1は、コントローラ10、パワーコンディショナ(PCS)20、太陽光発電パネル30、二次電池40を備える。
図1に例示するように、PCS20、太陽光発電パネル30、二次電池40及び電力計51は、例えば、需要家50の自宅500に設置される。また、コントローラ10及び電力系統600は、自宅500の外に設置される。電力系統600は、例えば、電力を供給する電力会社である。電力供給システム1及び電力系統600から出力される電力は、電線L1を介して需要家50に供給される。電力供給システム1から電線L1を介して供給される電力を用いて、需要家50に設置された各種電気機器が駆動される。
【0017】
コントローラ10は、
図3に例示するように、供給部11、受付部12、更新部13及び予測モデル14を備える。予測モデル14は、需要家50によって消費された電力の実測値を教師データとして構築される。供給部11は、予測モデル14を用いて需要家50による電力需要を示す予測値を算出し、需要家50への電力供給を行うPCS20に予測値を供給する。電力計51は、需要家50によって消費される電力を測定し、ネットワークN2を介してPCS20に通知する。受付部12は、需要家50によって消費される電力を測定した実測値の入力をPCS20から受ける。更新部13は、供給部11によって予測された予測値と受付部12によって受けられた実測値との差に応じて決定したタイミングで予測モデル14を更新する。
【0018】
予測モデル14の更新は、例えば、一定間隔で更新することも考えられる。しかしながら、一定間隔で予測モデル14の更新が行われると、予測モデル14の更新直後に需要家50において電力を使用する機器の増減すること生じ得る。このような場合、次回の予測モデル14の更新までの間は、予測値と実測値とが乖離する虞がある。コントローラ10では、一定間隔ではなく、予測値と実測値との差に応じて決定したタイミングで予測モデル14が更新されるため、機器の増減等により予測値が実績値から乖離した場合のように、より好ましいタイミングで予測モデル14を更新することができる。
【0019】
<実施形態>
以下、図面を参照して電力供給システム1についてさらに説明する。
図1は、実施形態に係る電力供給システム1の機器配置の一例を示す図である。
図2は、実施形態に係る電力供給システム1の各機器の接続状態の一例を示す図である。
図1及び
図2では、電力供給システム1から電力の供給を受ける需要家50も図示されている。需要家50には、需要家50に設置された各種電気機器によって実際に消費された電力を計測する電力計51が設けられる。電力供給システム1では、PCS20に太陽光発電パネル30及び二次電池40が接続される。また、コントローラ10は、ネットワークN1を介してPCS20に接続される。
【0020】
PCS20は、需要家50によって消費される電力の予測値をコントローラ10から受
けて、太陽光発電パネル30及び二次電池40から需要家50に供給する電力を制御するパワーコンディショナである。PCS20は、コントローラ10から受けた予測値に基づいて、太陽光発電パネル30による発電量を制御したり、太陽光発電パネル30によって発電された電力を二次電池40に蓄電させたり、太陽光発電パネル30によって発電された電力や二次電池40に蓄電された電力の需要家50への供給を行ったりする。また、PCS20は、実際に需要家50が消費した電力を電力計51からネットワークN2を介して受信し、受信した電力の実測値をネットワークN1を介してコントローラ10に出力する。
【0021】
太陽光発電パネル30は、太陽光を電力に変換する太陽電池を用いて発電する発電機である。太陽光発電パネル30は、例えば、自宅500の屋根に設置される。太陽光発電パネル30は、電線L2によってPCS20と接続される。太陽光発電パネル30によって発電可能な発電量は、天候等の影響により変動する。太陽光発電パネル30によって発電された電力は、PCS20からの指示に応じて需要家50に供給されたり、二次電池40に蓄電されたりする。二次電池40は、太陽光発電パネル30によって発電された電力を蓄電する。二次電池40は、電線L3によってPCS20と接続される。二次電池40に蓄電された電力は、PCS20からの指示に応じて需要家50へ供給される。
【0022】
コントローラ10は、例えば、情報処理装置である。コントローラ10は、例えば、クラウドサーバであってもよい。コントローラ10は、外気温等の気象データを基に、需要家50によって消費される電力の予測値を算出する。コントローラ10は、算出した予測値をPCS20にネットワークN1を介して出力する。また、コントローラ10は、需要家50が実際に消費した電力の実測値をPCS20からネットワークN1を介して受ける。
【0023】
ネットワークN1は、例えば、インターネット等のコンピュータネットワークである。ネットワークN2は、例えば、自宅500に設けられたLocal Area Network(LAN)である。ネットワークN1、N2は、有線通信によるネットワークであっても無線通信によるネットワークであってもよい。
【0024】
<コントローラ10のハードウェア構成>
図1を参照して、コントローラ10のハードウェア構成について説明する。コントローラ10は、CPU101、主記憶部102、補助記憶部103及び通信部104を備える。CPU101、主記憶部102、補助記憶部103及び通信部104は、接続バスB1によって相互に接続される。
【0025】
CPU101は、マイクロプロセッサーユニット(MPU)、プロセッサーとも呼ばれる。CPU101が実行する処理のうち少なくとも一部は、CPU101以外のプロセッサー、例えば、Digital Signal Processor(DSP)、Graphics Processing Unit(GPU)、数値演算プロセッサー、ベクトルプロセッサー、画像処理プロセッサー等の専用プロセッサーで行われてもよい。また、CPU101が実行する処理のうち少なくとも一部は、集積回路(IC)、その他のデジタル回路によって実行されてもよい。CPU101は、プロセッサーと集積回路との組み合わせであってもよい。組み合わせは、例えば、マイクロコントローラーユニット(MCU)、System-on-a-chip(SoC)、システムLSI、チップセットなどと呼ばれる。コントローラ10では、CPU101が補助記憶部103に記憶されたプログラムを主記憶部102の作業領域に展開し、プログラムの実行を通じて周辺装置の制御を行う。これにより、コントローラ10は、所定の目的に合致した処理を実行することができる。主記憶部102及び補助記憶部103は、CPU101が読み取り可能な記録媒体である。
【0026】
主記憶部102は、CPU101から直接アクセスされる記憶部として例示される。主記憶部102は、Random Access Memory(RAM)及びRead Only Memory(ROM)を含む。
【0027】
補助記憶部103は、各種のプログラム及び各種のデータを読み書き自在に記録媒体に格納する。補助記憶部103は外部記憶装置とも呼ばれる。補助記憶部103には、オペレーティングシステム(Operating System、OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納される。OSは、通信部104を介して接続されるPCS20等とのデータの受け渡しを行う通信インターフェースプログラムを含む。外部装置等には、例えば、コンピュータネットワーク等で接続された、他の情報処理装置及び外部記憶装置が含まれる。なお、補助記憶部103は、例えば、ネットワーク上のコンピュータ群であるクラウドシステムの一部であってもよい。
【0028】
補助記憶部103は、例えば、Erasable Programmable ROM(EPROM)、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive、SSD)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive、HDD)等である。また、補助記憶部103は、例えば、Compact Disc(CD)ドライブ装置、Digital Versatile Disc(DVD)ドライブ装置、Blu-ray(登録商標) Disc(BD)ドライブ装置等である。また、補助記憶部103は、Network Attached Storage(NAS)あるいはStorage Area Network(SAN)によって提供されてもよい。
【0029】
通信部104は、例えば、ネットワークN1とのインターフェースである。通信部104は、ネットワークN1を介して外部の装置と通信を行う。
【0030】
<コントローラ10の処理ブロック>
図3は、コントローラ10の処理ブロックの一例を示す図である。コントローラ10は、供給部11、受付部12、更新部13及び予測モデル14を備える。コントローラ10は、主記憶部102に実行可能に展開されたコンピュータプログラムをCPU101が実行することで、上記コントローラ10の、供給部11、受付部12、更新部13及び予測モデル14等の各部としての処理を実行する。
【0031】
予測モデル14は、例えば、外気温によって例示される気象データが入力されると、需要家50によって消費される電力需要を示す予測値を出力するモデルである。予測モデル14は、ベースモデル141及び補正モデル142を含む。
【0032】
ベースモデル141は、需要家50によって過去に消費された電力の実測値を教師データとした機械学習によって構築されたモデルである。ベースモデル141は、外気温によって例示される気象データと需要家50によって過去に消費された電力の実測値との対応を教師データとして機械学習によって構築されてもよい。また、ベースモデル141は、時間帯、月(1月から12月までのいずれかの月)、平日及び休日のそれぞれについて構築されてもよい。ベースモデル141は、例えば、平日用のベースモデル141と休日用のベースモデル141が構築されてもよい。ベースモデル141は、例えば、ランダムフォレストによって構築される。ベースモデル141は、例えば、過去1年分の教師データを用いて構築される。ベースモデル141は、例えば、外気温が入力されると需要家50によって消費される電力需要を示す予測値を算出する。
【0033】
補正モデル142は、ベースモデル141を用いて算出された予測値を補正する。補正モデル142によって補正された予測値は、補正値とも称する。補正モデル142は、例
えば、ベースモデル141が構築されてから時間が経過したことで、ベースモデル141によって算出された予測値と電力計51によって計測された実測値との間に許容範囲外の差が生じる場合に、当該差が小さくなるように予測値を補正する。補正モデル142は、例えば、直近2週間における予測値と実測値との差に基づいた予測値の補正を行う。補正モデル142は、例えば、予測値と実測値とについて線形回帰法によって補正用の回帰直線を決定し、決定した回帰直線を用いて補正を行う。
【0034】
供給部11は、例えば、需要家50における外気温の予報値を予測モデル14に入力して、需要家50によって消費される電力需要を示す予測値を予測モデル14から取得する。供給部11は、例えば、気象庁や気象観測会社等の外部団体から需要家50における外気温の予報値を取得してもよい。また、供給部11は、予測値を算出する対象となる時間帯、月(1月から12月までのいずれかの月)、平日及び休日の指定等を予測モデル14に入力して予測値を算出してもよい。供給部11は、予測モデル14から取得した予測値をPCS20に供給する。
【0035】
受付部12は、電力計51によって計測された需要家50が実際に消費した電力の実測値をPCS20からネットワークN1を介して受ける。
【0036】
更新部13は、供給部11によって予測された予測値と受付部12によって受けられた実測値との差が所定の条件を満たす場合に、予測モデル14の更新を行う。更新部13による予測モデル14の更新としては、教師データを追加して学習させることでベースモデル141を更新するマイナー更新、一定期間の新たな教師データによってベースモデル141を再構築するメジャー更新、直近の期間(例えば2週間)におけるベースモデル141による予測値と実測値とを用いて補正モデル142の回帰直線を新たに決定する補正モデル更新が挙げられる。予測モデル14の更新の詳細については後述する。また、更新部13は、供給部11によって予測された予測値と受付部12によって受けられた実測値とを補助記憶部103に記憶させる。
【0037】
<コントローラ10の処理フロー>
図4は、コントローラ10の処理フローの一例を示す図である。以下、
図4を参照して、コントローラ10の処理フローの一例について説明する。
【0038】
ステップS1では、供給部11は、外気温の予報値を取得し、取得した外気温の予報値を予測モデル14に入力することで需要家50によって消費される電力需要を示す予測値を算出する。供給部11は、例えば、取得した外気温の予報値をベースモデル141に入力して予測値を算出する。供給部11は、さらに、算出した予測値を補正モデル142によって補正する。
【0039】
ステップS2では、供給部11は、ステップS1で算出した予測値をPCS20に供給する。PCS20では、コントローラ10から供給された予測値を基に、太陽光発電パネル30及び二次電池40から需要家50に供給する電力量を決定し、決定した電力量の電力を需要家50に供給する。また、PCS20は、太陽光発電パネル30によって発電された電力から二次電池40に蓄電させる電力量を決定し、決定した電力量の電力を二次電池40に蓄電させる。
【0040】
ステップS3では、受付部12は、需要家50において実際に消費された電力の実測値をPCS20から取得する。ステップS4では、更新部13は、ステップS1で算出された予測値とステップS3で取得された実測値とが所定条件を満たすか否かを判定する。所定条件を満たす場合(ステップS4でYES)、処理はステップS5に進められ、予測モデル14を更新する。所定条件を満たさない場合(ステップS4でNO)、処理は終了さ
れる。
【0041】
<更新部13による予測モデル14更新の処理フロー>
図5から
図7は、更新部13による予測モデル14を更新する処理フローの一例を示す図である。
図5の「A」は
図6の「A」に接続し、
図5の「B」は
図7の「B」に接続し、
図6の「C」は
図7の「C」に接続する。
図5から
図7では、
図4のS4及びS5の処理の詳細が例示される。以下、
図5から
図7を参照して、更新部13による予測モデル14を更新する処理フローの一例について説明する。
【0042】
ステップS11では、更新部13は、ベースモデル141の精度が許容範囲内であるか否かを判定する。更新部13は、例えば、ベースモデル141による予測値と、受付部12によって受け付けられた実測値との差が第1閾値以下であるか否かを判定することで、許容範囲内であるか否かを判定する。第1閾値は、補正モデル142で補正可能な範囲を規定する閾値として適宜決定される。第1閾値以下である場合、すなわち許容範囲内である場合(ステップS11でYES)、処理はステップS12に進められる。第1閾値より大きい場合、すなわち許容範囲外である場合(ステップS11でNO)、処理はステップS18に進められる。補正モデル142で補正可能な範囲は、「対応範囲」の一例である。
【0043】
ステップS12では、更新部13は、補正モデル142の精度が許容範囲内であるか否かを判定する。更新部13は、例えば、補正モデル142によって補正された予測値と、受付部12によって受け付けられた実測値との差が所定期間の間継続して第2閾値以下であるか否かを判定することで、補正モデル142の精度が許容範囲内であるか否かを判定する。第2閾値は、補正モデル142によって補正された予測値の許容範囲を基に適宜決定される。第2閾値以下である場合、すなわち、許容範囲内である場合(ステップS12でYES)、処理は終了される。第2閾値より大きい場合、すなわち許容範囲外である場合(ステップS12でNO)、処理はステップS13に進められる。
【0044】
ステップS13では、更新部13は、補正モデル142を更新する。更新部13は、例えば、直近2週間分におけるベースモデル141による予測値と実測値とについて線形回帰法によって補正用の新たな回帰直線を決定することで、補正モデル142を更新する。
【0045】
ステップS14では、更新部13は、ステップS13で更新した補正モデル142の精度が許容範囲内であるか否かを判定する。更新部13は、例えば、ベースモデル141によって算出された予測値をステップS13で更新した補正モデル142を用いて補正した値と、実測値との差と第2閾値とを用いて、ステップS13で更新した補正モデル142の精度が許容範囲内であるか否かを判定する。第2閾値以下である場合、すなわち許容範囲内である場合(ステップS14でYES)、処理は終了される。第2閾値より大きい場合、すなわち許容範囲外である場合(ステップS14でNO)、処理はステップS15に進められる。
【0046】
ステップS15では、更新部13は、ベースモデル141のマイナー更新を行う。マイナー更新では、ステップS12において予測値と実測値との差が第2閾値より大きくなっていた所定期間における実績値を教師データとして追加してベースモデル141の更新を行う。
【0047】
ステップS16では、更新部13は、ステップS15で更新したベースモデル141によって算出された予測値と実測値とを用いて補正モデル142を更新する。
【0048】
ステップS17では、更新部13は、ステップS15で更新したベースモデル141及
びステップS16で更新した補正モデル142の精度が許容範囲内であるか否かを判定する。更新部13は、例えば、ステップS15で更新したベースモデル141による予測値をステップS16で更新した補正モデル142を用いて補正した値と実測値との差が第2閾値以下であるか否かを判定することで、ステップS15で更新したベースモデル141及びステップS16で更新した補正モデル142の精度が許容範囲内であるか否かを判定する。第2閾値以下、すなわち、許容範囲内である場合(ステップS17でYES)、処理は終了される。第2閾値より大きい、すなわち、許容範囲外である場合(ステップS17でNO)、処理はステップS19に進められる。
【0049】
ステップS18では、更新部13は、ベースモデル141の精度が許容範囲外である状態が所定期間(例えば、2週間)以上継続しているか否かを判定する。所定期間以上継続している場合(ステップS18でYES)、処理はステップS19に進められる。所定期間以上は継続していない場合(ステップS18でNO)、処理は終了される。
【0050】
ステップS19では、更新部13は、ベースモデル141のメジャー更新を行う。メジャー更新では、一定期間(例えば、1年間)分の実測値を教師データとして、ベースモデル141を新たに作成する。この一定期間は、ベースモデル141の精度が許容範囲外である所定期間を含んでもよい。すなわち、メジャー更新では、既存のベースモデル141に教師データを追加するのではなく、再作成したベースモデル141への入れ替えが行われる。なお、ベースモデル141のメジャー更新では、ステップS18で許容範囲外とされた期間の実測値が重点的に用いられるように実測値に重みづけを行った機械学習によってベースモデル141が構築されてもよい。
【0051】
ステップS20では、更新部13は、ステップS19で更新したベースモデル141によって算出された予測値と実測値とを用いて補正モデル142を更新する。
【0052】
<実施形態の作用効果>
一定間隔で予測モデル14を更新する場合、予測モデル14の更新直後に需要家50において電力を使用する機器の増減することも生じ得る。このような場合、次回の予測モデル14の更新までの間は電力需要の予測精度が低下する虞がある。一方、実施形態によれば一定の間隔ではなく、予測値と実測値との差が許容範囲外となったタイミングで予測モデル14を更新することができる。そのため、一定間隔で予測モデル14を更新する場合と比較して、より好ましいタイミングで予測モデル14を更新することができる。
【0053】
本実施形態では、予測モデル14は、予測値を算出するベースモデル141と算出された予測値を補正する補正モデル142とを含む。そして、更新部13は、ベースモデル141を用いて算出される予測値が補正モデル142で補正可能な範囲であるにもかかわらず、補正モデル142によって予測値を補正した値が許容範囲外となる場合には、補正モデル142を更新する。予測値が補正モデル142で補正可能な範囲であるにもかかわらず、補正モデル142によって予測値を補正した値が許容範囲外となる場合は、補正モデル142の回帰直線による補正が需要家50の電力需要からずれていると考えられる。更新部13は、このような場合に補正モデル142を更新することで、補正モデル142による補正と需要家50による電力需要とのずれを抑制することができる。また、補正モデル142の更新はベースモデル141の更新よりも計算負荷が低いため、コントローラ10の計算負荷を低減することができる。
【0054】
本実施形態では、更新部13は、ベースモデル141を用いて算出された予測値を更新した補正モデル142によって補正した値が許容範囲外となる期間が所定期間以上継続する場合、ベースモデル141のマイナー更新を行う。マイナー更新では、許容範囲外となった所定期間における実績値を教師データに追加してベースモデル141が更新される。
本実施形態によれば、ベースモデル141が更新されることで、予測値の精度を高めることができる。また、ベースモデル141のマイナー更新は補正モデル142のメジャー更新よりも計算負荷が低い。そのため、マイナー更新を行わずにメジャー更新のみ行うシステムよりも、コントローラ10の計算負荷を低減することができる。
【0055】
本実施形態では、マイナー更新したベースモデル141を用いて算出された予測値が補正モデル142によって補正可能な範囲外である場合に、一定期間(例えば、1年間)分の実測値を教師データとして、ベースモデル141を新たに作成し、既存のベースモデル141を新たに作成したベースモデル141に入れ替える。本実施形態は、ベースモデル141を用いて算出された予測値が補正モデル142による補正可能な範囲外である場合に、新たに作成したベースモデル141に入れ替えることで、補正モデル142によって補正可能な範囲の予測値をベースモデル141に算出させることができる。ひいては、本実施形態によれば、予測値の精度を高めることができる。
【0056】
本実施形態では、マイナー更新したベースモデル141を用いて算出された予測値を補正モデル142によって補正した値が許容範囲外である状態が所定期間以上継続する場合、当該所定期間を含む一定期間(例えば、1年間)分の実測値を教師データとして、ベースモデル141を新たに作成する。本実施形態によれば、補正モデル142による補正によっても予測値と実測値とが乖離する場合に、新たに作成したベースモデル141に入れ替えることで予測値の精度を高めることができる。
【0057】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせることができる。
【0058】
<コンピュータが読み取り可能な記録媒体>
コンピュータその他の機械、装置(以下、コンピュータ等)に上記いずれかの機能を実現させる情報処理プログラムをコンピュータ等が読み取り可能な記録媒体に記録することができる。そして、コンピュータ等に、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。
【0059】
ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータ等から取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、Compact Disc Read Only Memory(CD-ROM)、Compact Disc-Recordable(CD-R)、Compact Disc-ReWriterable(CD-RW)、Digital Versatile Disc(DVD)、ブルーレイディスク(BD)、Digital Audio Tape(DAT)、8mmテープ、フラッシュメモリー、外付け型のハードディスクドライブやSolid State Drive(SSD)等がある。また、コンピュータ等に固定された記録媒体として内蔵型のハードディスクドライブ、SSDやROM等がある。
【0060】
<付記>
需要家(50)によって消費された電力の実測値を含む教師データを用いて構築された予測モデル(14)と、
前記予測モデル(14)を用いて前記需要家(50)による電力需要を示す予測値を算出し、前記需要家(50)への電力供給を行う電源(20、30、40)に前記予測値を供給する供給部(11)と、
前記需要家(50)によって消費される電力を測定した実測値の入力を受ける受付部(12)と、
前記予測値と前記実測値との差に応じて決定したタイミングで前記予測モデル(14)
を更新する更新部(13)と、を備える、
電力需要予測装置(10)。
【符号の説明】
【0061】
1・・電力供給システム
10・・コントローラ
11・・供給部
12・・受付部
13・・更新部
14・・予測モデル
141・・ベースモデル
142・・補正モデル
20・・PCS
30・・太陽光発電パネル
40・・二次電池
50・・需要家
51・・電力計
101・・CPU
102・・主記憶部
103・・補助記憶部
104・・通信部
500・・自宅
600・・電力系統
L1・・電線
L2・・電線
L3・・電線
N1・・ネットワーク