(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029686
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】貫通孔措置方法及び貫通孔措置構造
(51)【国際特許分類】
F16L 5/02 20060101AFI20240228BHJP
F16L 5/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
F16L5/02 J
F16L5/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132080
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000119830
【氏名又は名称】因幡電機産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】小椋 聡
(72)【発明者】
【氏名】正木 良和
(57)【要約】
【課題】床スラブに形成された貫通孔による開口を高い作業効率で閉塞できるようにする。
【解決手段】床スラブ(8)に形成された貫通孔(81)に縦配管(9)が挿通された状態で、貫通孔(81)による開口(82)を閉塞する貫通孔措置方法は、床スラブ(8)の上面(8a)における貫通孔(81)の周囲にシート体(10)を設置して、シート体(10)で開口(82)を覆う工程と、床スラブ(8)の上に、縦配管(9)を取り囲む枠体(20)を設置する工程と、シート体(10)と枠体(20)とによって区画される床上環状空間に閉塞材(30)を配設する工程とを含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床スラブに形成された貫通孔に縦配管が挿通された状態で、前記貫通孔による開口を閉塞する貫通孔措置方法であって、
前記床スラブの上面における前記貫通孔の周囲にシート体を設置して、前記シート体で前記開口を覆う工程と、
前記床スラブの上に、前記縦配管を取り囲む枠体を設置する工程と、
前記シート体と前記枠体とによって区画される床上環状空間に閉塞材を配設する工程と、
を含む貫通孔措置方法。
【請求項2】
前記シート体は、前記床スラブに密着するスラブ密着部と、前記スラブ密着部と一体的に形成されて前記縦配管に密着する配管密着部と、を有し、
前記シート体で前記開口を覆う工程において、前記床スラブの上面に前記スラブ密着部を貼着させるとともに、前記縦配管の外面に前記配管密着部を貼着させる請求項1に記載の貫通孔措置方法。
【請求項3】
前記シート体がその全面において粘着性を有する請求項1又は2に記載の貫通孔措置方法。
【請求項4】
前記シート体で前記開口を覆った後、前記縦配管に耐火材を巻回する工程をさらに含む請求項1又は2に記載の貫通孔措置方法。
【請求項5】
床スラブに形成された貫通孔に縦配管が挿通された状態で、前記貫通孔による開口を閉塞した貫通孔措置構造であって、
前記床スラブの上面における前記貫通孔の周囲に、前記開口を覆う状態で設置されたシート体と、
前記床スラブ及び前記シート体の上に、前記縦配管に密着する状態で配設された閉塞材と、
を備える貫通孔措置構造。
【請求項6】
前記縦配管の外面に巻回された耐火材をさらに備える請求項5に記載の貫通孔措置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通孔措置方法及び貫通孔措置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば高層ビル等の高層階建築物は、床スラブによって各階のフロアに区画されている。これら各階のフロアに亘って縦配管を配設するため、床スラブに貫通孔を形成して当該貫通孔に縦配管を挿通させる場合がある。この場合、縦配管の周囲には貫通孔による開口が残ることになるから、当該開口を閉塞する等の後処理が必要となる。
【0003】
このような後処理の一例が、例えば特許第6216427号公報(特許文献1)に開示されている。この工法では、床スラブ(床スラブ2)の下面にシート体(隙間閉塞体1)を設置し、このシート体の上方であって縦配管(配管4)と貫通孔(挿通穴3)との間の空間に閉塞材(モルタル5)を流し込む。その後、閉塞材を乾燥させて、床スラブの貫通孔を埋め戻すことによって開口を閉塞する。
【0004】
しかし、特許文献1の工法では、床スラブの下面へのシート体の設置は下階での作業となる一方、閉塞材の流し込みは上階での作業となり、異なるフロアでの作業が必要で、必ずしも作業効率が良いとは言えず、この点で改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
床スラブに形成された貫通孔による開口を高い作業効率で閉塞できるようにすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る貫通孔措置方法は、
床スラブに形成された貫通孔に縦配管が挿通された状態で、前記貫通孔による開口を閉塞する貫通孔措置方法であって、
前記床スラブの上面における前記貫通孔の周囲にシート体を設置して、前記シート体で前記開口を覆う工程と、
前記床スラブの上に、前記縦配管を取り囲む枠体を設置する工程と、
前記シート体と前記枠体とによって区画される床上環状空間に閉塞材を配設する工程と、
を含む。
【0008】
この構成によれば、床スラブの開口をシート体で覆う作業と、縦配管を取り囲むように枠体を設置してから閉塞材を配設する作業との両方を、床スラブの上側で行うことができる。作業中にフロア間を移動する必要がなく、床スラブに形成された貫通孔による開口を高い作業効率で閉塞することができる。
【0009】
以下、本発明の好適な態様について説明する。但し、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定される訳ではない。
【0010】
一態様として、
前記シート体は、前記床スラブに密着するスラブ密着部と、前記スラブ密着部と一体的に形成されて前記縦配管に密着する配管密着部と、を有し、
前記シート体で前記開口を覆う工程において、前記床スラブの上面に前記スラブ密着部を貼着させるとともに、前記縦配管の外面に前記配管密着部を貼着させることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、シート体が床スラブの上面及び縦配管の外面の両方と密着するので、例えば閉塞材が未硬化状態で流動性を有する場合でも、シート体と枠体とによって区画される床上環状空間に閉塞材を適切に留めることができる。よって、床スラブに形成された貫通孔による開口をより確実に閉塞することができる。
【0012】
一態様として、
前記シート体がその全面において粘着性を有することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、シート体自体の粘着性を利用して、床スラブの上面及び縦配管の外面の両方とシート体との密着性を高めることができる。
【0014】
一態様として、
前記シート体で前記開口を覆った後、前記縦配管に耐火材を巻回する工程をさらに含むことが好ましい。
【0015】
この構成によれば、例えば縦配管が樹脂製の場合でも、耐火材を巻回した部位の耐火性を高めることができる。よって、火災発生時における縦配管の燃え抜けを回避することができる。
【0016】
本発明に係る貫通孔措置構造は、
床スラブに形成された貫通孔に縦配管が挿通された状態で、前記貫通孔による開口を閉塞した貫通孔措置構造であって、
前記床スラブの上面における前記貫通孔の周囲に、前記開口を覆う状態で設置されたシート体と、
前記床スラブ及び前記シート体の上に、前記縦配管に密着する状態で配設された閉塞材と、
を備える。
【0017】
この構成によれば、床スラブの開口をシート体で覆う作業と、シート体の上側に区画される空間に閉塞材を配設する作業との両方を、床スラブの上側で行うことができる。作業中にフロア間を移動する必要がなく作業効率に優れる。その後、縦配管に密着する状態で閉塞材を配設することで、床スラブに形成された貫通孔による開口を適切に閉塞することができる。よって、床スラブに形成された貫通孔による開口を高い作業効率で適切に閉塞することが可能な貫通孔措置構造を実現できる。
【0018】
一態様として、
前記縦配管の外面に巻回された耐火材をさらに備えることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、例えば縦配管が樹脂製の場合でも、耐火材を巻回した部位の耐火性を高めることができる。よって、火災発生時における縦配管の燃え抜けを回避することができる。
【0020】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【発明を実施するための形態】
【0022】
貫通孔措置方法及び貫通孔措置構造の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態の貫通孔措置方法は、高層ビル等の高層階建築物において、上下のフロア間に亘って配設される縦配管9(
図2を参照)を挿通させるために床スラブ8に形成された貫通孔81による開口82を閉塞するための方法である。貫通孔措置構造1は、貫通孔措置方法の実行によって実現される。
【0023】
なお、以下の説明では、貫通孔81に挿通される縦配管9の長手方向(中心軸が延びる方向)に直交する方向を「径方向」と言い、長手方向周りを周回する方向を「周方向」と言う場合がある。
【0024】
本実施形態では、貫通孔措置構造1が適用される床スラブ8は、建築物内の空間を複数のフロアに区画する構造体である。床スラブ8は、耐火性及び防火性を有していることが好ましい。床スラブ8は、例えば鉄筋コンクリート造(RC)や軽量気泡コンクリート造(ALC)、中空床等で構成することができる。
【0025】
床スラブ8には、当該床スラブ8をその厚み方向(図示の例では鉛直方向)に貫通する貫通孔81が形成されている。本実施形態では、円形状の貫通孔81が形成されている。但し、そのような構成に限定されることなく、貫通孔81の具体的形状は、例えば楕円状や多角形状、その他の各種形状であって良い。
【0026】
床スラブ8の貫通孔81には、縦配管9が挿通されている。縦配管9としては、例えば給水管や排水管、ガス管、空調装置用の冷媒配管等を例示することができる。縦配管9が電線ケーブルを含んでも良い。また、
図2では、1本の縦配管9が貫通孔81に挿通されている例を示しているが、複数本の縦配管9が束となって貫通孔81に挿通されていても良い。縦配管9の構成材料は特に限定されず、例えば金属製であっても良いし、樹脂製であっても良い。本実施形態では、一例として、縦配管9は金属製の給水管である。
【0027】
床スラブ8の貫通孔81と縦配管9との間の径方向の隙間により、床スラブ8を上下に連通する開口82が形成されている。この開口82を閉塞する後処理を行うために、本実施形態の貫通孔措置方法が実行される。すなわち、床スラブ8に形成された貫通孔81に縦配管9が挿通された状態で、貫通孔81による開口82を閉塞するために、貫通孔措置方法が実行される。
【0028】
なお、「貫通孔81による開口82を閉塞する」とは、開口82を通じて床スラブ8が上下に連通する状態を解消する(言い換えれば、開口82があっても床スラブ8が上下に連通しないようにする)ことを意味する。このため、この概念は、貫通孔81と縦配管9との間の径方向の隙間それ自体を埋め戻すことを要するものではない。
【0029】
本実施形態の貫通孔措置方法は、シート体10、枠体20、及び閉塞材30を用いて実行され、開口被覆工程と、枠体設置工程と、閉塞材配設工程と、乾燥工程とを含む。開口被覆工程、枠体設置工程、閉塞材配設工程、及び乾燥工程は、記載の順に実行される。開口被覆工程でシート体10が使用され、枠体設置工程で追加的に枠体20が使用され、閉塞材配設工程で追加的に閉塞材30が使用される。
【0030】
開口被覆工程は、シート体10で貫通孔81による開口82を覆う工程である。本実施形態では、シート体10として、可撓性の薄膜シートを用いる。図示は省略するが、シート体10は、不燃薄膜層と、その一方側表面の全面に設けられた粘着層とを有する。不燃薄膜層は、例えばアルミニウム箔やアルミガラスクロス等の金属薄膜で構成される。粘着層は、アクリル系粘着剤、シリコーン粘着剤、ウレタン粘着剤、及びゴム系粘着剤等の粘着剤で構成される。粘着層を有することで、シート体10はその一方側表面の全面において粘着性を有している。粘着層は、使用前は剥離シートで被覆されていることが好ましい。
【0031】
或いは、シート体10として、柔軟性と一定の厚みとを有するシートを用いても良い。この場合、シート体10は、例えば発泡ポリエチレンフォームを主体として形成することができる。具体的には、シート体10は、上記の発泡ポリエチレンフォームを主体とする本体部と、その一方側表面の全面に設けられた粘着層と、他方側表面の全面に設けられた不燃薄膜層とを有する。さらに、シート体10は、例えばウレタンフォームやポリスチレンフォーム等の他の材料を主体として形成されても良い。シート体10は、難燃剤を含有することによって難燃性が付与されていても良い。
【0032】
図1に示すように、本実施形態のシート体10は、全体として円形状に形成されている。シート体10の外径は、床スラブ8の貫通孔81の内径よりも大きい。また、シート体10は、外周側に位置するスラブ密着部11と、内周側に位置する配管密着部12とを有している。スラブ密着部11と配管密着部12とは一体的に形成されている。
【0033】
スラブ密着部11は、全周に亘って延びるように円環状に形成されており、床スラブ8の上面8aにおける貫通孔81の周囲に密着する。配管密着部12は、円環状のスラブ密着部11の内周側に複数(本例では8つ)設けられている。配管密着部12は、切込線16によって区分された二等辺三角形状の領域として形成されており、根元部分で略直角に折り曲げられて縦配管9に密着する。
【0034】
配管密着部12を区分する複数の切込線16のうちの1本は、シート体10の外縁まで延びる分断線17となっている。
【0035】
このようなシート体10を用いて、開口被覆工程では、床スラブ8の上面8aにおける貫通孔81の周囲にシート体10を設置して、シート体10で開口82を覆う。その際、縦配管9が分断線17の部分を通過するようにして(
図2を参照)、床スラブ8の貫通孔81及び縦配管9の周囲にシート体10を配設する。なお、この状態では、シート体10の粘着層は剥離シートで被覆されている。貫通孔81及び縦配管9に対するシート体10の位置を調整した後、剥離シートを剥離して、床スラブ8の上面8aにスラブ密着部11を貼着させるとともに、縦配管9の外面9aに配管密着部12を貼着させる(
図3を参照)。
【0036】
枠体設置工程は、床スラブ8の上に枠体20を設置する工程である。
図3に示すように、枠体20は、一定の高さを有する帯板状の部材を環状に湾曲させて形成されている。環状の枠体の外径は、床スラブ8の貫通孔81の内径よりも大きく、本実施形態ではシート体10の外径よりもさらに大きい。なお、枠体20の外径はシート体10の外径より小さくても良い。枠体20は、周壁部21を有している。周壁部21は、周方向の一部が分断されており、言い換えれば周方向隙間Gを有している。枠体設置工程では、縦配管9が周方向隙間Gを通過するようにして、床スラブ8の上であってシート体10及び縦配管9の周囲に、それらを全周に亘って取り囲むように枠体20を設置する。
【0037】
その後、枠体20を構成する周壁部21の周方向の両端部を重ね合わせて周方向隙間Gを解消させ、当該重合した部分を連結する(言い換えれば、連結部22を形成する)。枠体20の連結部22は、例えばクリップ状部材、接着剤ないし粘着剤、係止部と被係止部とによる係止構造、及びカシメ等の各種の手段を採用することができる。周壁部21が連結部22で連結されて周方向隙間Gがなくなれば、床スラブ8及びシート体10の上方であって縦配管9の径方向外側かつ枠体20の径方向内側に、ドーナツ状の床上環状空間Rが区画形成される(
図4を参照)。
【0038】
閉塞材配設工程は、床上環状空間Rに閉塞材30を配設する工程である。ここで、閉塞材30としては、例えばモルタルやコンクリート等のペースト状の充填材を用いることができ、本実施形態ではモルタルを用いる。閉塞材配設工程では、
図4に示すように、未硬化で流動性を有する閉塞材30(ここではモルタル)を上方から床上環状空間Rに流し込んで、床上環状空間Rに未硬化の閉塞材30を配設する(
図5を参照)。
【0039】
乾燥工程は、閉塞材30を乾燥させる工程である。乾燥工程では、閉塞材配設工程の完了後の状態をそのまま維持して、未硬化の閉塞材30(モルタル)を乾燥させて固化させる。この乾燥工程の実行により、床スラブ8及びシート体10の上方であって枠体20の径方向内側に、ドーナツ状に固化した閉塞材30が形成される。
【0040】
このようにして得られる貫通孔措置構造1は、
図5及び
図6に示すように、床スラブ8に形成された貫通孔81に縦配管9が挿通された状態で、貫通孔81による開口82を閉塞するものであって、以下の構成を備えるものとなる。すなわち、貫通孔措置構造1は、床スラブ8の上面8aにおける貫通孔81の周囲に、開口82を覆う状態で設置されたシート体10と、床スラブ8及びシート体10の上に、縦配管9に全周に亘って密着する状態で配設された、固化した閉塞材30とを備える。また、貫通孔措置構造1は、固化した閉塞材30の周囲に、当該閉塞材30に全周に亘って密着する枠体20をさらに備える。
【0041】
図6に示すように、本実施形態の貫通孔措置構造1では、床スラブ8の貫通孔81と縦配管9との間の径方向の隙間自体は、依然として残っている。しかし、床スラブ8の上面8aに開口82を覆う状態でシート体10が設置されるとともに、縦配管9の周囲を取り囲むように枠体20が設置され、床スラブ8及びシート体10の上方であって縦配管9の径方向外側かつ枠体20の径方向内側の床上環状空間R(
図4を参照)で、閉塞材30が床スラブ8及びシート体10並びに縦配管9に密着している。このため、貫通孔81と縦配管9との間の径方向の隙間が残存していても上下のフロア間は連通しておらず、貫通孔81による開口82は適切に閉塞されている。
【0042】
以上説明したような本実施形態の貫通孔措置方法によれば、実作業を伴う開口被覆工程、枠体設置工程、及び閉塞材配設工程を、全て上階側のフロアで行うことができる。作業中に下階側のフロアに移動する必要がなく、作業性を向上させることができる。
【0043】
なお、実作業を伴う全ての工程を同様に上階側のフロアで行うことができる工法として、鍔付籠状の閉塞材支持部材を、鍔部分を床スラブ8の上面8aに係止させつつ籠部分を貫通孔81の内部に配置して、貫通孔81の内部に閉塞材30を配設することも考えられる。しかしその場合には、閉塞材支持部材が縦配管9を取り囲んだ上できちんと貫通孔81に収まる必要があり、そのためには貫通孔81と縦配管9とが同心配置となっている必要がある。このため、床スラブ8を斫って縦配管9の周りに貫通孔81を形成しつつ縦配管9を交換するといった、縦配管9の更新等のリフォーム工事後の貫通孔81の埋め戻しへの適用は、斫りできちんと心出しをするのが難しいことから困難となる場合が多い。
【0044】
この点、本実施形態の貫通孔措置方法では、実作業を伴う全ての工程を上階側のフロアで行えることに加え、シート体10と枠体20とを用いることで、床スラブ8の上面8aよりも上で全ての作業を行うことができる。このため、仮に貫通孔81と縦配管9とがきちんと同心配置となっていない場合でも問題なく、貫通孔81による開口82を閉塞材30で適切に閉塞することができる。すなわち、本実施形態の貫通孔措置方法は、床スラブ8の斫りを伴うリフォーム後の措置にも好適に適用することができる。
【0045】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、シート体10の外形が円形状である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、シート体10の外形は、例えば楕円状や多角形状、その他の各種形状であって良い。また、シート体10は、必ずしも一体である必要がなく、複数のシート部に分割されていても良い。
【0046】
(2)上記の実施形態では、シート体10が可撓性の薄膜シートで構成される例について説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、シート体10が例えば樹脂製、木製、又は金属製等の硬質板等で構成されても良い。
【0047】
(3)上記の実施形態では、シート体10が一方側表面の全面に粘着層を有し、一方側表面の全面において粘着性を有している構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、床スラブ8の上面8aに安定的に設置可能であれば、シート体10の一方側表面が部分的に粘着性であっても良いし、シート体10の両面がいずれも非粘着性でも良い。
【0048】
(4)上記の実施形態では、縦配管9が金属製である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、縦配管9が樹脂製であっても良い。このような場合には、
図7及び
図8に示すように、開口被覆工程の後、縦配管9及びシート体10の配管密着部12を径方向外側から覆うように耐火材40を巻回することが好ましい。耐火材40の巻回は、開口被覆工程の後であって閉塞材配設工程よりも前であれば、枠体設置工程の前でも良いし後でも良いが、作業性の点からは枠体設置工程よりも前に行うことが好ましい。
【0049】
(5)上記の実施形態では、最終的に得られる貫通孔措置構造1において、固化した閉塞材30の周囲に枠体20が設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、閉塞材30の固化後に枠体20を取り外し、固化した閉塞材30の外周面を露出させても良い。
【0050】
(6)上記の実施形態では、閉塞材30として、未硬化で流動性を有するモルタルを用いる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば粘土状のパテや、グラスウール、ロックウール、及びセラミックウール等の無機繊維等を閉塞材30として用いても良い。これらのような非流動性の閉塞材30を用いる場合には、枠体20は、必ずしも縦配管9を全周に亘って取り囲んでいる必要はなく、縦配管9を周方向に断続的に取り囲むように構成されても良い。
【0051】
(7)上記の実施形態では、貫通孔措置方法及び貫通孔措置構造1をリフォーム工事後の措置に適用することを主に想定して説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、本実施形態の貫通孔措置方法及び貫通孔措置構造1は、新築物件にも同様に好適に適用することができる。
【0052】
(8)上述した各実施形態(上記の実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 貫通孔措置構造
8 床スラブ
8a 上面
9 縦配管
9a 外面
10 シート体
11 スラブ密着部
12 配管密着部
20 枠体
30 閉塞材
81 貫通孔
82 開口
R 床上環状空間