(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029687
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/493 20070101AFI20240228BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240228BHJP
【FI】
H02M7/493
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132081
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】野木 雅之
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 信彦
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA15
5H770AA21
5H770BA03
5H770CA06
5H770DA01
5H770DA11
5H770DA22
5H770DA30
5H770DA44
5H770JA10X
5H770JA11W
5H770JA11Y
5H770QA12
5H770QA14
(57)【要約】
【課題】 並列接続された複数の半導体モジュールの電流アンバランスを低減することが可能な電力変換装置を提供する。
【解決手段】 実施形態の電力変換装置は、正極導体と、負極導体と、正極導体と負極導体との間に並列接続された複数の第1半導体モジュールを有する第1ハーフブリッジ回路と、正極導体と負極導体との間に並列接続された複数の第2半導体モジュールを有する第2ハーフブリッジ回路と、正極導体と負極導体との間に並列接続された複数の直流コンデンサとを含む。正極導体は、複数の第1半導体モジュール及び前記複数の第2半導体モジュールを囲むロの字形を有する。負極導体は、複数の第1半導体モジュール及び複数の第2半導体モジュールを囲むロの字形を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極導体と、
負極導体と、
前記正極導体と前記負極導体との間に並列接続された複数の第1半導体モジュールを有し、前記複数の第1半導体モジュールの各々は、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とが直列接続されて構成される、第1ハーフブリッジ回路と、
前記正極導体と前記負極導体との間に並列接続された複数の第2半導体モジュールを有し、前記複数の第2半導体モジュールの各々は、第3スイッチング素子と第4スイッチング素子とが直列接続されて構成される、第2ハーフブリッジ回路と、
前記正極導体と前記負極導体との間に並列接続された複数の直流コンデンサと、
を具備し、
前記複数の第1半導体モジュールは、第1方向に並んで配置され、
前記複数の第2半導体モジュールは、前記第1方向に並んで配置され、前記複数の第1半導体モジュールに対して前記第1方向に直交する第2方向に隣接して配置され、
前記正極導体は、前記複数の第1半導体モジュール及び前記複数の第2半導体モジュールを囲むロの字形を有し、
前記負極導体は、前記複数の第1半導体モジュール及び前記複数の第2半導体モジュールを囲むロの字形を有する
電力変換装置。
【請求項2】
前記正極導体は、前記複数の第1半導体モジュールの正極端子に接続された第1導体部分と、前記複数の第2半導体モジュールの正極端子に接続された第2導体部分と、前記第1導体部分の一端と前記第2導体部分の一端とを接続する第3導体部分と、前記第1導体部分の他端と前記第2導体部分の他端とを接続する第4導体部分とを含み、
前記負極導体は、前記複数の第1半導体モジュールの負極端子に接続された第5導体部分と、前記複数の第2半導体モジュールの負極端子に接続された第6導体部分と、前記第5導体部分の一端と前記第6導体部分の一端とを接続する第7導体部分と、前記第5導体部分の他端と前記第6導体部分の他端とを接続する第8導体部分とを含む
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記複数の直流コンデンサは、第1グループと、第2グループとに分けて配置され、
前記第1グループの正極端子は、前記第1導体部分に接続され、
前記第2グループの正極端子は、前記第2導体部分に接続され、
前記第1グループの負極端子は、前記第5導体部分に接続され、
前記第2グループの負極端子は、前記第6導体部分に接続される
請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との接続ノードに接続されたU相導体と、
前記第3スイッチング素子と前記第4スイッチング素子との接続ノードに接続されたV相導体とをさらに具備し、
前記U相導体と前記V相導体とは、平行平板化される
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記U相導体と前記V相導体とは、絶縁層を介して積層される
請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記正極導体と前記負極導体とは、平行平板化される
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記正極導体と前記負極導体とは、絶縁層を介して積層される
請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記第1ハーフブリッジ回路と前記第2ハーフブリッジ回路とは、フルブリッジ回路を構成し、
前記フルブリッジ回路が出力する交流電流の周波数は、商用周波数より高い
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記正極導体と前記負極導体とに接続された蓄電池をさらに具備する
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記第1乃至第4スイッチング素子の各々は、IGBT、又はSic-MOSFETで構成される
請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の補助電源装置では、絶縁変圧器を小型化するために高周波絶縁技術が適用され始めている。商用周波数(50Hz又は60Hz)よりも高い周波数の交流電力をインバータ回路により生成することで、変圧器を大幅に小型化できるとともに、変圧器の重量を大幅に低減できる。このような技術は、鉄道車両の補助電源装置に限らず、蓄電池の充放電変換器等、電源の絶縁を必要とする電源装置に用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1のような技術が提案されている。特許文献1では、架線からの直流電力をインバータ回路で高周波の交流電力に変換し、高周波変圧器で絶縁した後、整流器を介して負荷に電力を供給する方法が述べられている。
【0004】
一方、電源装置が高出力になってくると、使用しているスイッチング素子、例えばIGBTやSiC-MOSFETなどの半導体素子の並列数を増やす必要が出てくる。
【0005】
この時、並列接続された複数の半導体素子にできるだけ均等に電流を流すことが望ましい。しかし、電力変換装置を構成する導体のインダクタンスの影響で、並列接続された複数の半導体素子への電流バランスが均一化しにくいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、並列接続された複数の半導体モジュールの電流アンバランスを低減することが可能な電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る電力変換装置は、正極導体と、負極導体と、前記正極導体と前記負極導体との間に並列接続された複数の第1半導体モジュールを有し、前記複数の第1半導体モジュールの各々は、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とが直列接続されて構成される、第1ハーフブリッジ回路と、前記正極導体と前記負極導体との間に並列接続された複数の第2半導体モジュールを有し、前記複数の第2半導体モジュールの各々は、第3スイッチング素子と第4スイッチング素子とが直列接続されて構成される、第2ハーフブリッジ回路と、前記正極導体と前記負極導体との間に並列接続された複数の直流コンデンサとを具備する。前記複数の第1半導体モジュールは、第1方向に並んで配置される。前記複数の第2半導体モジュールは、前記第1方向に並んで配置され、前記複数の第1半導体モジュールに対して前記第1方向に直交する第2方向に隣接して配置される。前記正極導体は、前記複数の第1半導体モジュール及び前記複数の第2半導体モジュールを囲むロの字形を有する。前記負極導体は、前記複数の第1半導体モジュール及び前記複数の第2半導体モジュールを囲むロの字形を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電力変換装置の平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したA-A´線に沿った電力変換装置の断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示したB-B´線に沿った電力変換装置の断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示したC-C´線に沿った電力変換装置の断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示した電力変換装置の等価回路図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る電力変換装置の電流波形である。
【
図7】
図7は、比較例に係る電力変換装置の電流波形である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置等によって、本発明の技術思想が特定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
[1] 電力変換装置1の構成
図1は、実施形態に係る電力変換装置1の平面図である。
図1のX方向は、電力変換装置1のある一辺に沿った方向であり、Y方向は、X方向に直交する方向である。
図2は、
図1に示したA-A´線に沿った電力変換装置1の断面図である。
図3は、
図1に示したB-B´線に沿った電力変換装置1の断面図である。
図4は、
図1に示したC-C´線に沿った電力変換装置1の断面図である。
図5は、
図1に示した電力変換装置1の等価回路図である。
【0012】
電力変換装置1は、第1ハーフブリッジ回路10、第2ハーフブリッジ回路20、複数の直流コンデンサ30、正極導体(P導体ともいう)40、負極導体(N導体ともいう)41、U相交流導体(AC_U導体ともいう)42、V相交流導体(AC_V導体ともいう)43、端子T1~T4、及び制御回路2を備える。
【0013】
第1ハーフブリッジ回路10は、P導体40とN導体41との間に並列接続された複数の半導体モジュール11を備える。複数の半導体モジュール11の各々は、第1スイッチング素子12と第2スイッチング素子13とが直列接続されて構成される。スイッチング素子12、13は、半導体素子で構成される。スイッチング素子12、13からなる半導体モジュール11は、パッケージ化されている。複数の半導体モジュール11は、X方向に並んで配置される。
図3及び
図4では、半導体モジュールをSWと表記している。
【0014】
スイッチング素子12、13は、例えば、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)で構成される。スイッチング素子12、13は、ワイドバンドギャップを有するSiC(Silicon Carbide)を用いたSiC-MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を用いてもよい。スイッチング素子にSiC-MOSFETを用いることで、スイッチング速度を高速化できるとともに、スイッチング損失を低減することができる。
【0015】
本実施形態では、第1ハーフブリッジ回路10が4個の半導体モジュール11を備える場合を例示している。半導体モジュール11の数は、電力変換装置1に要求される出力電力に応じて適宜設定される。
【0016】
第2ハーフブリッジ回路20は、P導体40とN導体41との間に並列接続された複数の半導体モジュール21を備える。複数の半導体モジュール21の各々は、第3スイッチング素子22と第4スイッチング素子23とが直列接続されて構成される。スイッチング素子22、23は、第1ハーフブリッジ回路10と同じ種類のスイッチング素子で構成される。スイッチング素子22、23からなる半導体モジュール21は、パッケージ化されている。第2ハーフブリッジ回路20に含まれる半導体モジュール21の数は、例えば、第1ハーフブリッジ回路10に含まれる半導体モジュール11の数と同じである。複数の半導体モジュール21は、X方向に並んで配置される。
【0017】
第1スイッチング素子12のコレクタは、正極端子(P端子ともいう)14を用いて、P導体40に接続される。第1スイッチング素子12のエミッタは、交流端子(AC端子ともいう)16を用いて、AC_U導体42に接続される。第2スイッチング素子13のコレクタは、AC端子16を用いて、AC_U導体42に接続される。第2スイッチング素子13のエミッタは、負極端子(N端子ともいう)15を用いて、N導体41に接続される。P端子14、N端子15、及びAC端子16はそれぞれ、水平方向に突出した端子部分と、この端子部分から法線方向に延びる接続部分とを含む。AC端子16は、第1スイッチング素子12と第2スイッチング素子13との接続ノードに対応する。
【0018】
第3スイッチング素子22のコレクタは、P端子24を用いて、P導体40に接続される。第3スイッチング素子22のエミッタは、AC端子26を用いて、AC_V導体43に接続される。第4スイッチング素子23のコレクタは、AC端子26を用いて、AC_V導体43に接続される。第4スイッチング素子23のエミッタは、N端子25を用いて、N導体41に接続される。P端子24、N端子25、及びAC端子26はそれぞれ、水平方向に突出した端子部分と、この端子部分から法線方向に延びる接続部分とを含む。AC端子26は、第3スイッチング素子22と第4スイッチング素子23との接続ノードに対応する。
【0019】
スイッチング素子12、13、22、23の各々には、逆並列に(すなわち、カソードが高電位側となるように)、還流ダイオードが接続される。
【0020】
第1ハーフブリッジ回路10に含まれるスイッチング素子12、13のゲートは、制御回路2に接続される。また、第2ハーフブリッジ回路20に含まれるスイッチング素子22、23のゲートは、制御回路2に接続される。
【0021】
第1ハーフブリッジ回路10と第2ハーフブリッジ回路20とは、Y方向に並ぶように配置される。第1ハーフブリッジ回路10と第2ハーフブリッジ回路20とは、フルブリッジ回路を構成する。フルブリッジ回路は、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路として機能する。
【0022】
P導体40とN導体41との間には、複数の直流コンデンサ30が接続される。直流コンデンサ30は、電圧を平滑化する平滑コンデンサとして機能する。複数の直流コンデンサ30は、正極及び負極を有する。直流コンデンサ30の正極は、P端子31を用いてP導体40に接続される。直流コンデンサ30の負極は、N端子32を用いてN導体41に接続される。直流コンデンサ30の数は、電力変換装置1に要求される出力電力及び容量に応じて適宜設定される。
図3及び
図4では、直流コンデンサをCと表記している。複数の直流コンデンサ30の配置については後述する。
【0023】
P導体40には、端子T1が接続され、N導体41には、端子T2が接続される。端子T1と端子T2との間には、直流電源3が接続される。直流電源3は、充放電が可能な蓄電池で構成してもよい。
【0024】
AC_U導体42には、端子T3が接続され、AC_V導体43には、端子T4が接続される。端子T3、T4には、負荷などの任意の素子や回路(変圧器を含む)が接続される。
【0025】
制御回路2は、例えば、CPU(central processing unit)やMPU(micro processing unit)などのプロセッサを少なくとも1つと、プロセッサにより実行されるプログラムを記録可能なメモリとを備えた演算回路である。制御回路2は、所望の交流電力を生成するように、スイッチング素子12、13、22、23のオン及びオフのタイミングを制御する。具体的には、制御回路2は、スイッチング素子12、13を交互にオンし、スイッチング素子22、23を交互にオンする。また、制御回路2は、スイッチング素子12、23を同時にオンする。これにより、制御回路2は、直流電力から交流電力を生成する。
【0026】
[1-1] P導体40及びN導体41の具体的な構成
P導体40は、第1ハーフブリッジ回路10及び第2ハーフブリッジ回路20を囲むようにして、ロの字形を有する。P導体40は、それぞれがX方向に延びる第1導体部分40-1及び第2導体部分40-2と、第1導体部分40-1の一端から第2導体部分40-2の一端まで延びる第3導体部分40-3と、第1導体部分40-1の他端から第2導体部分40-2の他端まで延びる第4導体部分40-4とを備える。
【0027】
複数の直流コンデンサ30は、第1ハーフブリッジ回路10側に配置される第1グループ33と、第2ハーフブリッジ回路20側に配置される第2グループ34とに分けられる。直流コンデンサ30の第1グループ33は、第1ハーフブリッジ回路10のY方向に隣接して配置される。直流コンデンサ30の第2グループ34は、第2ハーフブリッジ回路20のY方向に隣接して配置される。
図1では、第1グループ33及び第2グループ34がそれぞれ4個の直流コンデンサ30を備える場合を一例として示している。
【0028】
なお、直流コンデンサ30の第1グループ33は、1個の直流コンデンサ30として集約して構成してもよい。同様に、直流コンデンサ30の第2グループ34は、1個の直流コンデンサ30として集約して構成してもよい。この実施例の場合、直流コンデンサから半導体モジュールまでのインダクタンスを均等化する観点から、直流コンデンサのP端子及びN端子はそれぞれ、X方向に沿って複数個存在していることが望ましい。
【0029】
第1導体部分40-1は、第1ハーフブリッジ回路10のP端子14に接続される。また、第1導体部分40-1は、直流コンデンサ30の第1グループ33のP端子31に接続される。
【0030】
第2導体部分40-2は、第2ハーフブリッジ回路20のP端子24に接続される。また、第2導体部分40-2は、直流コンデンサ30の第2グループ34のP端子31に接続される。
【0031】
そして、第1導体部分40-1の一端と第2導体部分40-2の一端とは、第3導体部分40-3によって接続される。第1導体部分40-1の他端と第2導体部分40-2の他端とは、第4導体部分40-4によって接続される。
【0032】
N導体41は、P導体40の下方に配置される。N導体41は、第1ハーフブリッジ回路10及び第2ハーフブリッジ回路20を囲むようにして、ロの字形を有し、平面視において、P導体40に重なるように構成される。つまり、N導体41の平面形状は、P導体40の平面形状と同じである。P導体40とN導体41とは、平行平板化される。N導体41は、第1ハーフブリッジ回路10のP端子14、第2ハーフブリッジ回路20のP端子24、及び直流コンデンサのP端子31を通す開口部を有する。なお、P導体40とN導体41との上下の位置関係は逆でもよい。
【0033】
N導体41は、それぞれがX方向に延びる第1導体部分41-1及び第2導体部分40-2と、第1導体部分41-1の一端から第2導体部分41-2の一端まで延びる第3導体部分41-3と、第1導体部分41-1の他端から第2導体部分41-2の他端まで延びる第4導体部分41-4とを備える。
【0034】
第1導体部分41-1は、第1ハーフブリッジ回路10のN端子15に接続される。また、第1導体部分41-1は、直流コンデンサ30の第1グループ33のN端子32に接続される。
【0035】
第2導体部分41-2は、第2ハーフブリッジ回路20のN端子25に接続される。また、第2導体部分41-2は、直流コンデンサ30の第2グループ34のN端子32に接続される。
【0036】
そして、第1導体部分41-1の一端と第2導体部分41-2の一端とは、第3導体部分41-3によって接続される。第1導体部分41-1の他端と第2導体部分41-2の他端とは、第4導体部分41-4によって接続される。
【0037】
P導体40とN導体41とは、ラミネートブスバーで構成される。P導体40とN導体41とは、絶縁層、導体(N導体41)、絶縁層、導体(P導体40)、及び絶縁層がこの順に積層されたラミネート構造を有する。換言すると、P導体40とN導体41とは、絶縁層を介して積層されるとともに、P導体40とN導体41とが上下から2個の絶縁層で挟まれる。
【0038】
P導体40及びN導体41としては、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、アルミニウム(Al)、又はそれらの合金を用いることができる。
【0039】
[1-2] AC_U導体42及びAC_V導体43の具体的な構成
AC_U導体42及びAC_V導体43は、第1ハーフブリッジ回路10と第2ハーフブリッジ回路20との間に配置される。AC_U導体42及びAC_V導体43はそれぞれ、X方向に延びる。
【0040】
AC_V導体43は、AC_U導体42の上方に配置される。AC_U導体42とAC_V導体43とは、平面視において重なるように構成される。すなわち、AC_U導体42とAC_V導体43とは、平行平板化される。AC_U導体42とAC_V導体43とを平行平板化することで、AC_U導体42及びAC_V導体43のインダクタンスが低減される。
図4には、AC_U導体42とAC_V導体43とで構成されるコンデンサ44を等価的に示している。なお、AC_U導体42とAC_V導体43との上下の位置関係は逆でもよい。
【0041】
AC_U導体42とAC_V導体43とは、ラミネートブスバーで構成される。AC_U導体42とAC_V導体43とは、絶縁層、導体(AC_U導体42)、絶縁層、導体(AC_V導体43)、及び絶縁層がこの順に積層されたラミネート構造を有する。
【0042】
AC_U導体42及びAC_V導体43としては、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、アルミニウム(Al)、又はそれらの合金を用いることができる。
【0043】
[2] 動作
制御回路2は、半導体モジュール11のスイッチング素子12、13、及び半導体モジュール21のスイッチング素子22、23の動作を制御する。制御回路2は、スイッチング素子12、23と、スイッチング素子13、22とを交互にオンするように、ゲート電圧を制御する。
【0044】
第1ハーフブリッジ回路10及び第2ハーフブリッジ回路20からなるフルブリッジ回路は、直流電力から単相交流電力を生成する。生成された単相交流電力は、端子T3、T4から出力される。
【0045】
また、制御回路2は、生成する交流電流の周波数を商用周波数より高く設定する。交流電力の周波数は、スイッチング素子のスイッチング周波数に対応する。商用周波数は、商用電源の周波数であり、50Hz又は60Hzである。
【0046】
本実施形態では、X方向に並んだ複数の半導体モジュール11と、X方向に並んだ複数の半導体モジュール21とを囲むように、ロの字形のP導体40、及びロの字形のN導体41が設けられる。複数の半導体モジュール11及び複数の半導体モジュールに20には、P導体40の第3導体部分40-3を用いて左側から電流が供給されるとともに、P導体40の第4導体部分40-4を用いて右側から電流が供給される。同様に、複数の半導体モジュール11及び複数の半導体モジュールに20には、N導体41の第3導体部分41-3を用いて左側から電流が供給されるとともに、N導体41の第4導体部分41-4を用いて右側から電流が供給される。
【0047】
これにより、複数の半導体モジュール11と複数の直流コンデンサ30との間のインダクタンスの差を低減できる。よって、複数の直流コンデンサ30から複数の半導体モジュール11に流れる電流のアンバランスを低減できる。同様に、複数の直流コンデンサ30から複数の半導体モジュール21に流れる電流のアンバランスを低減できる。
【0048】
また、AC_U導体42とAC_V導体43とを平行平板化することで、AC_U導体42及びAC_V導体43のインダクタンスが低減される。この交流側のインダクタンスを低減することで、直流側のインダクタンスによる電流バランスへの影響が支配的となる。これにより、直流側のインダクタンスの均等化に伴う半導体モジュールの電流バランスの均等化により一層資することが可能になる。
【0049】
図6は、実施形態に係る電力変換装置1の電流波形である。
図6は、第1ハーフブリッジ回路10に含まれる4個の半導体モジュール11のP端子14の電流波形である。
図6では、4個の半導体モジュール11をIGBT1~IGBT4と表記している。IGBT1~IGBT4はそれぞれ、
図1の左から順に並んだ4個の半導体モジュール11に対応する。波形における時間、及び電流は、任意単位である。
【0050】
図7は、比較例に係る電力変換装置の電流波形である。比較例では、第1ハーフブリッジ回路10用の導体と、第2ハーフブリッジ回路20用の導体とが分離されている。すなわち、第1ハーフブリッジ回路10用の導体と、第2ハーフブリッジ回路20用の導体とはそれぞれ、直線状に構成されている。
【0051】
図7では、IGBT1~IGBT4の電流アンバランスが大きくなっている。
図6の本実施形態は、比較例に比べて、複数の半導体モジュール間の電流アンバランスを低減できている。
【0052】
[3] 実施形態の効果
以上詳述したように実施形態では、P導体40及びN導体をそれぞれ、第1ハーフブリッジ回路10及び第2ハーフブリッジ回路20を囲むようにロの字形で構成するようにしている。そして、第1ハーフブリッジ回路10及び第2ハーフブリッジ回路20に含まれる複数の半導体モジュールに均等に電流が流れるように電流経路を構成するようにしている。これにより、並列接続された複数の半導体モジュールの電流アンバランスを低減することが可能な電力変換装置を実現できる。
【0053】
また、交流電力を出力する側(交流側)のAC_U導体42とAC_V導体43とを平行平板化するようにしている。これにより、AC_U導体42とAC_V導体43とのインダクタンスが低減される。この交流側のインダクタンスを低減することで、直流電力が供給される側(直流側)のインダクタンスによる電流バランスへの影響が支配的となる。これにより、半導体モジュールの電流アンバランスをより低減できる。
【0054】
また、電力変換装置1は、商用周波数よりも高い周波数の交流電力を、フルブリッジ回路を用いて生成するようにしている。これにより、電力変換装置1に接続される変圧器を大幅に小型化できるとともに、変圧器の重量を大幅に低減できる。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1…電力変換装置、2…制御回路、3…直流電源、10…第1ハーフブリッジ回路、11…半導体モジュール、12…第1スイッチング素子、13…第2スイッチング素子、14…P端子、15…N端子、16…AC端子、20…第2ハーフブリッジ回路、21…半導体モジュール、22…第3スイッチング素子、23…第4スイッチング素子、24…P端子、25…N端子、26…AC端子、30…直流コンデンサ、31…P端子、32…N端子、40…P導体、41…N導体、42…AC_U導体、43…AC_V導体、44…コンデンサ、T1~T4…端子。