(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029689
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
H02M3/28 W
H02M3/28 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132084
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】野木 雅之
(72)【発明者】
【氏名】森 学人
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730BB26
5H730BB57
5H730BB66
5H730BB83
5H730DD04
5H730EE13
5H730FF09
5H730FG01
5H730ZZ05
(57)【要約】
【課題】 並列接続された複数のスイッチング素子の電流アンバランスを低減する。
【解決手段】 実施形態の電力変換装置は、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とが正極線と負極線との間に直列接続されて構成された第1レグと、第1レグに並列接続され、第3スイッチング素子と第4スイッチング素子とが直列接続されて構成された第2レグとを含む第1ハーフブリッジ回路と、第5スイッチング素子と第6スイッチング素子とが正極線と負極線との間に直列接続されて構成された第3レグと、第3レグに並列接続され、第7スイッチング素子と第8スイッチング素子とが直列接続されて構成された第4レグとを含む第2ハーフブリッジ回路と、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子との接続ノードに接続された第1コンデンサと、第3スイッチング素子と第4スイッチング素子との接続ノードに接続された第2コンデンサとを含むコンデンサユニットとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とが第1正極線と第1負極線との間に直列接続されて構成された第1レグと、前記第1レグに並列接続され、第3スイッチング素子と第4スイッチング素子とが直列接続されて構成された第2レグとを含む第1ハーフブリッジ回路と、
第5スイッチング素子と第6スイッチング素子とが前記第1正極線と前記第1負極線との間に直列接続されて構成された第3レグと、前記第3レグに並列接続され、第7スイッチング素子と第8スイッチング素子とが直列接続されて構成された第4レグとを含む第2ハーフブリッジ回路と、
前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との接続ノードに接続された第1コンデンサと、前記第3スイッチング素子と前記第4スイッチング素子との接続ノードに接続された第2コンデンサとを含む第1コンデンサユニットと、
前記第5スイッチング素子と前記第6スイッチング素子との接続ノードに接続された第3コンデンサと、前記第7スイッチング素子と前記第8スイッチング素子との接続ノードに接続された第4コンデンサとを含む第2コンデンサユニットと、
を具備し、
前記第1及び第2ハーフブリッジ回路からなるフルブリッジ回路が出力する交流電流の周波数は、商用周波数より高い
電力変換装置。
【請求項2】
1次巻線及び2次巻線を有する変圧器をさらに具備し、
前記第1及び第2コンデンサは、前記1次巻線の一端に接続され、
前記第3及び第4コンデンサは、前記1次巻線の他端に接続され、
前記第1乃至第4コンデンサの各々と前記変圧器の漏れインダクタンスとは、共振回路を構成する
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1コンデンサユニットは、前記第1及び第2コンデンサに接続された第1導体を含み、
前記第2コンデンサユニットは、前記第3及び第4コンデンサに接続された第2導体を含み、
前記第1導体と前記第2導体とは、平行平板化される
請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
第5スイッチング素子と第6スイッチング素子とが第2正極線と第2負極線との間に直列接続されて構成された第5レグと、前記第5レグに並列接続され、第7スイッチング素子と第8スイッチング素子とが直列接続されて構成された第6レグとを含む第3ハーフブリッジ回路と、
第9スイッチング素子と第10スイッチング素子とが前記第2正極線と前記第2負極線との間に直列接続されて構成された第7レグと、前記第7レグに並列接続され、第11スイッチング素子と第12スイッチング素子とが直列接続されて構成された第8レグとを含む第4ハーフブリッジ回路と、
前記第5スイッチング素子と前記第6スイッチング素子との接続ノードに接続された第5コンデンサと、前記第7スイッチング素子と前記第8スイッチング素子との接続ノードに接続された第6コンデンサとを含む第3コンデンサユニットと、
前記第9スイッチング素子と前記第10スイッチング素子との接続ノードに接続された第7コンデンサと、前記第11スイッチング素子と前記第12スイッチング素子との接続ノードに接続された第8コンデンサとを含む第4コンデンサユニットと、
をさらに具備し、
前記第5及び第6コンデンサは、前記2次巻線の一端に接続され、
前記第7及び第8コンデンサは、前記2次巻線の他端に接続され、
前記第5乃至第8コンデンサの各々と前記変圧器の漏れインダクタンスとは、共振回路を構成する
請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とが第1正極線と第1負極線との間に直列接続されて構成された第1レグと、前記第1レグに並列接続され、第3スイッチング素子と第4スイッチング素子とが直列接続されて構成された第2レグとを含む第1ハーフブリッジ回路と、
第5スイッチング素子と第6スイッチング素子とが前記第1正極線と前記第1負極線との間に直列接続されて構成された第3レグと、前記第3レグに並列接続され、第7スイッチング素子と第8スイッチング素子とが直列接続されて構成された第4レグとを含む第2ハーフブリッジ回路と、
前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との接続ノードに接続された第1リアクトルと、前記第3スイッチング素子と前記第4スイッチング素子との接続ノードに接続された第2リアクトルとを含む第1リアクトルユニットと、
前記第5スイッチング素子と前記第6スイッチング素子との接続ノードに接続された第3リアクトルと、前記第7スイッチング素子と前記第8スイッチング素子との接続ノードに接続された第4リアクトルを含む第2リアクトルユニットと、
を具備し、
前記第1及び第2ハーフブリッジ回路からなるフルブリッジ回路が出力する交流電流の周波数は、商用周波数より高い
電力変換装置。
【請求項6】
1次巻線及び2次巻線を有する変圧器をさらに具備し、
前記第1及び第2リアクトルは、前記1次巻線の一端に接続され、
前記第3及び第4リアクトルは、前記1次巻線の他端に接続される
請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
第5スイッチング素子と第6スイッチング素子とが第2正極線と第2負極線との間に直列接続されて構成された第5レグと、前記第5レグに並列接続され、第7スイッチング素子と第8スイッチング素子とが直列接続されて構成された第6レグとを含む第3ハーフブリッジ回路と、
第9スイッチング素子と第10スイッチング素子とが前記第2正極線と前記第2負極線との間に直列接続されて構成された第7レグと、前記第7レグに並列接続され、第11スイッチング素子と第12スイッチング素子とが直列接続されて構成された第8レグとを含む第4ハーフブリッジ回路と、
前記第5スイッチング素子と前記第6スイッチング素子との接続ノードに接続された第5リアクトルと、前記第7スイッチング素子と前記第8スイッチング素子との接続ノードに接続された第6リアクトルとを含む第3リアクトルユニットと、
前記第9スイッチング素子と前記第10スイッチング素子との接続ノードに接続された第7リアクトルと、前記第11スイッチング素子と前記第12スイッチング素子との接続ノードに接続された第8リアクトルとを含む第4リアクトルユニットと、
をさらに具備し、
前記第5及び第6リアクトルは、前記2次巻線の一端に接続され、
前記第7及び第8リアクトルは、前記2次巻線の他端に接続される
請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記第1正極線と前記第1負極線との間に接続された第1蓄電池をさらに具備する
請求項1又は5に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記第2正極線と前記第2負極線との間に接続された第2蓄電池をさらに具備する
請求項4又は7に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の補助電源装置では、絶縁変圧器を小型化するために高周波絶縁技術が適用され始めている。商用周波数(50Hz又は60Hz)よりも高い周波数の交流電力をインバータ回路により生成することで、変圧器を大幅に小型化できるとともに、変圧器の重量を大幅に低減できる。このような技術は、鉄道車両の補助電源装置に限らず、蓄電池の充放電変換器等、電源の絶縁を必要とする電源装置に用いられている。
【0003】
一方、電源装置が高出力になってくると、使用しているスイッチング素子、例えばIGBTやSiC-MOSFETなどの半導体素子の並列数を増やす必要が出てくる。
【0004】
この時、並列接続された複数の半導体素子にできるだけ均等に電流を流すことが望ましい。しかし、電力変換装置を構成する導体のインダクタンスの影響で、並列接続された複数の半導体素子への電流バランスが均一化しにくいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、並列接続された複数のスイッチング素子の電流アンバランスを低減することが可能な電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る電力変換装置は、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子とが第1正極線と第1負極線との間に直列接続されて構成された第1レグと、前記第1レグに並列接続され、第3スイッチング素子と第4スイッチング素子とが直列接続されて構成された第2レグとを含む第1ハーフブリッジ回路と、第5スイッチング素子と第6スイッチング素子とが前記第1正極線と前記第1負極線との間に直列接続されて構成された第3レグと、前記第3レグに並列接続され、第7スイッチング素子と第8スイッチング素子とが直列接続されて構成された第4レグとを含む第2ハーフブリッジ回路と、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子との接続ノードに接続された第1コンデンサと、前記第3スイッチング素子と前記第4スイッチング素子との接続ノードに接続された第2コンデンサとを含む第1コンデンサユニットと、前記第5スイッチング素子と前記第6スイッチング素子との接続ノードに接続された第3コンデンサと、前記第7スイッチング素子と前記第8スイッチング素子との接続ノードに接続された第4コンデンサとを含む第2コンデンサユニットとを具備する。前記第1及び第2ハーフブリッジ回路からなるフルブリッジ回路が出力する交流電流の周波数は、商用周波数より高い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る電力変換装置の回路図である。
【
図2】
図2は、第1コンデンサユニット及び第2コンデンサユニットの構成を説明する斜視図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態に係る電力変換装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置等によって、本発明の技術思想が特定されるものではない。以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
[1] 第1実施形態
[1-1] 電力変換装置1の構成
図1は、第1実施形態に係る電力変換装置1の回路図である。
【0011】
電力変換装置1は、第1ハーフブリッジ回路10、第2ハーフブリッジ回路14、直流コンデンサ22、第1コンデンサユニット23、第2コンデンサユニット26、変圧器29、第3ハーフブリッジ回路30、第4ハーフブリッジ回路34、直流コンデンサ42、第3コンデンサユニット43、及び第4コンデンサユニット46を備える。
【0012】
第1ハーフブリッジ回路10、第2ハーフブリッジ回路14、第1コンデンサユニット23、及び第2コンデンサユニット26は、第1インバータ回路を構成する。第3ハーフブリッジ回路30、第4ハーフブリッジ回路34、第3コンデンサユニット43、及び第4コンデンサユニット46は、第2インバータ回路を構成する。
【0013】
まず、第1インバータ回路の構成について説明する。
第1ハーフブリッジ回路10は、正極線20と負極線21との間に並列接続された複数の第1レグ11を備える。複数の第1レグ11の各々は、第1スイッチング素子12と第2スイッチング素子13とが直列接続されて構成される。
【0014】
第1スイッチング素子12及び第2スイッチング素子13の各々は、半導体素子で構成され、例えば、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)で構成される。スイッチング素子12、13は、ワイドバンドギャップを有するSiC(Silicon Carbide)を用いたSiC-MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を用いてもよい。スイッチング素子にSiC-MOSFETを用いることで、スイッチング速度を高速化できるとともに、スイッチング損失を低減することができる。
【0015】
第1スイッチング素子12のコレクタは、正極線20に接続され、そのエミッタは、第2スイッチング素子13のコレクタに接続される。第2スイッチング素子13のエミッタは、負極線21に接続される。第1スイッチング素子12及び第2スイッチング素子13のゲートは、制御回路2に接続される。第1スイッチング素子12及び第2スイッチング素子13の各々には、逆並列に(すなわち、カソードが高電位側となるように)、還流ダイオードが接続される。
【0016】
本実施形態では、第1ハーフブリッジ回路10が4個の第1レグ11を備える場合を例示している。第1ハーフブリッジ回路10は、少なくとも2個の第1レグ11を備える。第1レグ11の数は、電力変換装置1に要求される出力電力に応じて適宜設定される。
【0017】
第2ハーフブリッジ回路14は、正極線20と負極線21との間に並列接続された複数の第2レグ15を備える。複数の第2レグ15の各々は、第3スイッチング素子16と第4スイッチング素子17とが直列接続されて構成される。
【0018】
第2レグ15の構成は、第1レグ11の構成と同じである。第3スイッチング素子16及び第4スイッチング素子17の各々には、逆並列に還流ダイオードが接続される。本実施形態では、第2ハーフブリッジ回路14が4個の第2レグ15を備える場合を例示している。第2ハーフブリッジ回路14は、少なくとも2個の第2レグ15を備える。
【0019】
正極線20と負極線21との間には、直流コンデンサ22が接続される。直流コンデンサ22は、電圧を平滑化する平滑コンデンサとして機能する。
【0020】
正極線20には、端子T1が接続され、負極線21には、端子T2が接続される。端子T1と端子T2との間には、直流電源3が接続される。直流電源3は、例えば、充放電が可能な蓄電池で構成される。
【0021】
第1コンデンサユニット23は、第1ハーフブリッジ回路10に接続される。第1コンデンサユニット23は、複数の第1レグ11に対応した数の複数のコンデンサ24を備える。複数のコンデンサ24の一端はそれぞれ、複数の第1レグ11の接続ノードに接続される。第1レグ11の接続ノードは、第1スイッチング素子12と第2スイッチング素子13との接続ノードに対応する。複数のコンデンサ24の他端は、U相交流用の配線25に接続される。
【0022】
第2コンデンサユニット26は、第2ハーフブリッジ回路14に接続される。第2コンデンサユニット26は、複数の第2レグ15に対応した数の複数のコンデンサ27を備える。複数のコンデンサ27の一端はそれぞれ、複数の第2レグ15の接続ノードに接続される。第2レグ15の接続ノードは、第3スイッチング素子16と第4スイッチング素子17との接続ノードに対応する。複数のコンデンサ27の他端は、V相交流用の配線28に接続される。
【0023】
変圧器29は、高周波絶縁変圧器である。変圧器29は、1次巻線及び2次巻線を有する。1次巻線と2次巻線とは、絶縁されている。変圧器29は、1次巻線に入力された電圧を、1次巻線と2次巻線との巻数比に応じて変換し、変換した電圧を2次巻線に出力する。2次側から1次側に電圧変換する場合も同様である。変圧器29の巻数比は、要求される出力電圧に応じて設定される。
【0024】
第1ハーフブリッジ回路10は、第1コンデンサユニット23及び配線25を介して、変圧器29の1次巻線の一端に接続される。第2ハーフブリッジ回路14は、第2コンデンサユニット26及び配線28を介して変圧器29の1次巻線の他端に接続される。
【0025】
次に、第2インバータ回路の構成について説明する。
第3ハーフブリッジ回路30は、正極線40と負極線41との間に並列接続された複数の第3レグ31を備える。複数の第3レグ31の各々は、第5スイッチング素子32と第6スイッチング素子33とが直列接続されて構成される。
【0026】
第5スイッチング素子32及び第6スイッチング素子33の各々は、半導体素子で構成され、例えば、IGBT、又はSiC-MOSFETで構成される。第5スイッチング素子32のコレクタは、正極線40に接続され、そのエミッタは、第6スイッチング素子33のコレクタに接続される。第6スイッチング素子33のエミッタは、負極線41に接続される。第5スイッチング素子32及び第6スイッチング素子33のゲートは、制御回路2に接続される。第5スイッチング素子32及び第6スイッチング素子33の各々には、逆並列に還流ダイオードが接続される。
【0027】
本実施形態では、第3ハーフブリッジ回路30が4個の第3レグ31を備える場合を例示している。第3ハーフブリッジ回路30は、少なくとも2個の第3レグ31を備える。第3レグ31の数は、電力変換装置1に要求される出力電力に応じて適宜設定される。
【0028】
第4ハーフブリッジ回路34は、正極線40と負極線41との間に並列接続された複数の第4レグ35を備える。複数の第4レグ35の各々は、第7スイッチング素子36と第8スイッチング素子37とが直列接続されて構成される。
【0029】
第4レグ35の構成は、第3レグ31の構成と同じである。第7スイッチング素子36及び第8スイッチング素子37の各々には、逆並列に還流ダイオードが接続される。本実施形態では、第4ハーフブリッジ回路34が4個の第4レグ35を備える場合を例示している。第4ハーフブリッジ回路34は、少なくとも2個の第4レグ35を備える。
【0030】
正極線40と負極線41との間には、直流コンデンサ42が接続される。直流コンデンサ42は、電圧を平滑化する平滑コンデンサとして機能する。
【0031】
正極線40には、端子T3が接続され、負極線41には、端子T4が接続される。端子T3と端子T4との間には、直流電源4が接続される。直流電源4は、例えば、充放電が可能な蓄電池で構成される。
【0032】
第3コンデンサユニット43は、第3ハーフブリッジ回路30に接続される。第3コンデンサユニット43は、複数の第3レグ31に対応した数の複数のコンデンサ44を備える。複数のコンデンサ44の一端はそれぞれ、複数の第3レグ31の接続ノードに接続される。第3レグ31の接続ノードは、第5スイッチング素子32と第6スイッチング素子33との接続ノードに対応する。複数のコンデンサ44の他端は、U相交流用の配線45に接続される。
【0033】
第4コンデンサユニット46は、第4ハーフブリッジ回路34に接続される。第4コンデンサユニット46は、複数の第4レグ35に対応した数の複数のコンデンサ47を備える。複数のコンデンサ47の一端はそれぞれ、複数の第4レグ35の接続ノードに接続される。第4レグ35の接続ノードは、第7スイッチング素子36と第8スイッチング素子37との接続ノードに対応する。複数のコンデンサ47の他端は、V相交流用の配線48に接続される。
【0034】
第3ハーフブリッジ回路30は、第3コンデンサユニット43及び配線45を介して、変圧器29の2次巻線の一端に接続される。第4ハーフブリッジ回路34は、第4コンデンサユニット46及び配線48を介して変圧器29の2次巻線の他端に接続される。
【0035】
制御回路2は、例えば、CPU(central processing unit)やMPU(micro processing unit)などのプロセッサを少なくとも1つと、プロセッサにより実行されるプログラムを記録可能なメモリとを備えた演算回路である。制御回路2は、所望の交流電力を生成するように、スイッチング素子12、13、16、17のオン及びオフのタイミングを制御する。具体的には、制御回路2は、スイッチング素子12、13を交互にオンし、スイッチング素子16、17を交互にオンする。また、制御回路2は、スイッチング素子12、17を同時にオンする。これにより、制御回路2は、直流電源3及び第1インバータ回路を用いて、直流電力から交流電力を生成する。
【0036】
制御回路2は、所望の交流電力を生成するように、スイッチング素子32、33、36、37のオン及びオフのタイミングを制御する。具体的には、制御回路2は、スイッチング素子32、33を交互にオンし、スイッチング素子36、37を交互にオンする。また、制御回路2は、スイッチング素子32、37を同時にオンする。これにより、制御回路2は、直流電源4及び第2インバータ回路を用いて、直流電力から交流電力を生成する。
【0037】
[1-2] コンデンサユニット23、26の構成
次に、第1コンデンサユニット23及び第2コンデンサユニット26の具体的な構成について説明する。
図2は、第1コンデンサユニット23及び第2コンデンサユニット26の構成を説明する斜視図である。
【0038】
第1コンデンサユニット23は、複数のコンデンサ24を備える。
図2では、複数のコンデンサ24の集合を直方体で簡略化して示している。第1コンデンサユニット23は、U相交流用の導体23Aを備える。導体23Aは、複数のコンデンサ24の他端に接続されるとともに、配線25に接続される。導体23Aは、配線25を介して変圧器29の1次巻線の一端に接続される。導体23Aは、第1コンデンサユニット23のある一辺から水平方向に突出するように構成される。
【0039】
第2コンデンサユニット26は、複数のコンデンサ27を備える。
図2では、複数のコンデンサ27の集合を直方体で簡略化して示している。第2コンデンサユニット26は、V相交流用の導体26Aを備える。導体26Aは、複数のコンデンサ27の他端に接続されるとともに、配線28に接続される。導体26Aは、配線28を介して変圧器29の1次巻線の一端に接続される。導体26Aは、第2コンデンサユニット26のある一辺から水平方向に突出するように構成される。
【0040】
導体23A及び導体26Aとしては、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、アルミニウム(Al)、又はそれらの合金を用いることができる。
【0041】
導体23Aと導体26Aとは、近接して配置される。すなわち、導体23Aと導体26Aとは、平行平板化される。例えば、導体23Aは、2回折れ曲がるようにして、導体26Aに近接するように構成される。
【0042】
導体23Aと導体26Aとを平行平板化することで、導体23A及び導体26Aのインダクタンスが低減される。よって、ハーフブリッジ回路から変圧器までの経路中のインピーダンスについて、コンデンサによるインピーダンスが支配的となる。これにより、コンデンサのインピーダンスを用いてレグを流れる電流のアンバランスを制御することが容易となり、レグに流れる電流のアンバランスを低減できる。
【0043】
第3コンデンサユニット43及び第4コンデンサユニット46の構成も、第1コンデンサユニット23及び第2コンデンサユニット26の構成と同じである。すなわち、第3コンデンサユニット43におけるU相交流用の導体(配線45と複数のコンデンサ44とを接続する導体)と、第4コンデンサユニット46におけるV相交流用の導体(配線48と複数のコンデンサ47とを接続する導体)とは、平行平板化される。
【0044】
[1-3] 動作
制御回路2は、第1レグ11の第1スイッチング素子12及び第2スイッチング素子13と、第2レグ15の第3スイッチング素子16及び第4スイッチング素子17との動作を制御する。制御回路2は、第1スイッチング素子12及び第4スイッチング素子17と、第2スイッチング素子13及び第3スイッチング素子16とを交互にオンするように、ゲート電圧を制御する。
【0045】
第1ハーフブリッジ回路10及び第2ハーフブリッジ回路14からなるフルブリッジ回路は、直流電力から単相交流電力を生成する。
【0046】
第1コンデンサユニット23の複数のコンデンサ24は、共振コンデンサとして機能する。変圧器29の漏れインダクタンス及び交流電流が流れる経路におけるインダクタンスは、共振インダクタとして機能する。複数のコンデンサ24の各々と、変圧器29の漏れインダクタンス及び交流電流が流れる経路におけるインダクタンスとは、共振回路を構成する。
【0047】
第2コンデンサユニット26の複数のコンデンサ27は、共振コンデンサとして機能する。変圧器29の漏れインダクタンス及び交流電流が流れる経路におけるインダクタンスは、共振インダクタとして機能する。複数のコンデンサ27の各々と、変圧器29の漏れインダクタンス及び交流電流が流れる経路におけるインダクタンスとは、共振回路を構成する。
【0048】
第1ハーフブリッジ回路10、第2ハーフブリッジ回路14、第1コンデンサユニット23、及び第2コンデンサユニット26を備えた第1インバータ回路は、共振型インバータ回路を構成する。共振コンデンサの静電容量と、変圧器の漏れインダクタンス及び交流電流が流れる経路におけるインダクタンスとにより、共振周波数が決定される。
【0049】
制御回路2は、生成する交流電流の周波数を商用周波数より高く設定する。交流電力の周波数は、スイッチング素子のスイッチング周波数に対応する。商用周波数は、商用電源の周波数であり、50Hz又は60Hzである。
【0050】
第3ハーフブリッジ回路30及び第4ハーフブリッジ回路34からなるフルブリッジ回路は、直流電力から単相交流電力を生成する。
【0051】
第3コンデンサユニット43の複数のコンデンサ44は、共振コンデンサとして機能する。変圧器29の漏れインダクタンス及び交流電流が流れる経路におけるインダクタンスは、共振インダクタとして機能する。複数のコンデンサ44と、変圧器29の漏れインダクタンス及び交流電流が流れる経路におけるインダクタンスとは、共振回路を構成する。
【0052】
第4コンデンサユニット46の複数のコンデンサ47は、共振コンデンサとして機能する。変圧器29の漏れインダクタンス及び交流電流が流れる経路におけるインダクタンスは、共振インダクタとして機能する。複数のコンデンサ47と、変圧器29の漏れインダクタンス及び交流電流が流れる経路におけるインダクタンスとは、共振回路を構成する。
【0053】
第3ハーフブリッジ回路30、第4ハーフブリッジ回路34、第3コンデンサユニット43、及び第4コンデンサユニット46を備えた第2インバータ回路は、共振型インバータ回路を構成する。共振コンデンサの静電容量と、変圧器の漏れインダクタンス及び交流電流が流れる経路におけるインダクタンスとにより、共振周波数が決定される。制御回路2は、生成する交流電流の周波数を商用周波数より高く設定する。
【0054】
電力変換装置1は、変圧器の1次側及び2次側の双方にフルブリッジ回路を備えたDAB(Dual Active Bridge)方式の双方向DC/DCコンバータを構成する。
【0055】
制御回路2は、1次側の直流電源3と2次側の直流電源4との間で、電力を融通することが可能である。制御回路2は、1次側交流電圧の位相と2次側交流電圧の位相とをずらすように制御する。電力が送られる方向は、1次側交流電圧と2次側交流電圧との位相差によって決定される。2次側交流電圧の位相が1次側交流電圧の位相より遅れている場合、電力は1次側から2次側に送られる。反対に、1次側交流電圧の位相が2次側交流電圧の位相より遅れている場合、電力は逆方向に送られる。制御回路2は、変圧器の1次側と2次側とのインバータ回路における電圧の位相を制御することで、双方向の電力融通を行うことが可能である。
【0056】
第1ハーフブリッジ回路10は、並列接続された複数の第1レグ11を備える。複数の第1レグ11にはそれぞれ複数のコンデンサ24が接続される。これにより、複数の第1レグ11における電流のアンバランスを低減できる。
【0057】
第2ハーフブリッジ回路14、第3ハーフブリッジ回路30、及び第4ハーフブリッジ回路34についても、第1ハーフブリッジ回路10と同様に、複数のレグにおける電流のアンバランスを低減できる。
【0058】
また、第1コンデンサユニット23の導体23Aと、第2コンデンサユニット26の導体26Aとは、平行平板化される。これにより、導体23A及び導体26Aのインダクタンスが低減され、ハーフブリッジ回路から変圧器までの経路中のインピーダンスについて、コンデンサによるインピーダンスが支配的となる。これにより、コンデンサのインピーダンスを用いてレグを流れる電流のアンバランスを制御することが容易となり、レグに流れる電流のアンバランスを低減できる。
【0059】
同様に、第2ハーフブリッジ回路14、第3ハーフブリッジ回路30、及び第4ハーフブリッジ回路34についても、レグに流れる電流のアンバランスを低減できる。
【0060】
なお、本実施形態では、変圧器の2次側にもインバータ回路を接続している。しかし、これに限定されず、変圧器の1次側を共振型インバータ回路で構成し、2次側は共振型インバータ回路以外の任意の回路又は負荷で構成してもよい。また、2次側の直流電源4のみを負荷に置き換えてもよい。
【0061】
[1-4] 第1実施形態の効果
以上詳述したように第1実施形態では、第1ハーフブリッジ回路10は、並列接続された複数の第1レグ11を備える。各第1レグ11は、直列接続された第1スイッチング素子12及び第2スイッチング素子13で構成される。そして、複数の第1レグ11の接続ノードにはそれぞれ、複数のコンデンサ24が接続される。複数のコンデンサ24は、変圧器29の1次巻線に接続される。第2ハーフブリッジ回路14、第3ハーフブリッジ回路30、及び第4ハーフブリッジ回路34の構成も第1ハーフブリッジ回路10と同じである。
【0062】
従って第1実施形態によれば、各ハーフブリッジ回路に含まれる並列接続された複数のスイッチング素子の電流アンバランスを低減できる。すなわち、並列接続された複数のレグの電流アンバランスを均一化することができる。
【0063】
また、ハーフブリッジ回路が並列接続された複数のレグを備えている。これにより、大きな電力を出力可能な電力変換装置を実現できる。
【0064】
第1コンデンサユニット23用の導体23Aと、第2コンデンサユニット26用の導体26Aとを平行平板化するようにしている。これにより、導体23Aと導体26Aとのインダクタンスが低減される。この交流側のインダクタンスを低減することで、コンデンサのインピーダンスを用いてレグを流れる電流のアンバランスを制御することが容易となる。よって、レグに流れる電流のアンバランスをより低減できる。
【0065】
また、電力変換装置1は、商用周波数よりも高い周波数の交流電力を、フルブリッジ回路を用いて生成するようにしている。これにより、電力変換装置1に含まれる変圧器29を大幅に小型化できるとともに、変圧器の重量を大幅に低減できる。
【0066】
[2] 第2実施形態
第2実施形態は、複数のレグにそれぞれ複数のリアクトルを接続し、複数のレグに流れる電流のアンバランスを低減するようにしている。
【0067】
図3は、第2実施形態に係る電力変換装置1の回路図である。
【0068】
電力変換装置1は、第1ハーフブリッジ回路10、第2ハーフブリッジ回路14、直流コンデンサ22、第1リアクトルユニット50、第2リアクトルユニット52、変圧器29、第3ハーフブリッジ回路30、第4ハーフブリッジ回路34、直流コンデンサ42、第3リアクトルユニット54、及び第4リアクトルユニット56を備える。第1ハーフブリッジ回路10、第2ハーフブリッジ回路14、直流コンデンサ22、変圧器29、第3ハーフブリッジ回路30、第4ハーフブリッジ回路34、及び直流コンデンサ42の構成は、第1実施形態と同じである。
【0069】
第1リアクトルユニット50は、第1ハーフブリッジ回路10に接続される。第1リアクトルユニット50は、複数の第1レグ11に対応した数の複数のリアクトル51を備える。複数のリアクトル51の一端はそれぞれ、複数の第1レグ11の接続ノードに接続される。複数のリアクトル51の他端は、U相交流用の配線25に接続される。
【0070】
第2リアクトルユニット52は、第2ハーフブリッジ回路14に接続される。第2リアクトルユニット52は、複数の第2レグ15に対応した数の複数のリアクトル53を備える。複数のリアクトル53の一端はそれぞれ、複数の第2レグ15の接続ノードに接続される。複数のリアクトル53の他端は、V相交流用の配線28に接続される。
【0071】
第3リアクトルユニット54は、第3ハーフブリッジ回路30に接続される。第3リアクトルユニット54は、複数の第3レグ31に対応した数の複数のリアクトル55を備える。複数のリアクトル55の一端はそれぞれ、複数の第3レグ31の接続ノードに接続される。複数のリアクトル55の他端は、U相交流用の配線45に接続される。
【0072】
第4リアクトルユニット56は、第4ハーフブリッジ回路34に接続される。第4リアクトルユニット56は、複数の第4レグ35に対応した数の複数のリアクトル57を備える。複数のリアクトル57の一端はそれぞれ、複数の第4レグ35の接続ノードに接続される。複数のリアクトル57の他端は、V相交流用の配線48に接続される。
【0073】
リアクトル51、53、55、57は、チョークコイルとして機能する。
【0074】
上記のように構成された電力変換装置1は、DAB方式の双方向DC/DCコンバータを構成する。制御回路2は、変圧器の1次側と2次側とのインバータ回路における電圧の位相を制御することで、双方向の電力融通を行うことが可能である。
【0075】
第1ハーフブリッジ回路10は、並列接続された複数のレグ11を備える。複数のレグ11にはそれぞれ複数のリアクトル51が接続される。第1ハーフブリッジ回路10がスイッチング動作を行う際に、複数のリアクトル51及び変圧器29の漏れインダクタンスに電圧が印加される。複数のリアクトル51のインダクタンスによって生じるインピーダンスにより、複数のレグ11における電流アンバランスを低減できる。
【0076】
第2ハーフブリッジ回路14、第3ハーフブリッジ回路30、及び第4ハーフブリッジ回路34についても、第1ハーフブリッジ回路10と同様に、複数のレグにおける電流アンバランスを低減できる。
【0077】
なお、本実施形態では、変圧器の2次側にもインバータ回路を接続している。しかし、これに限定されず、変圧器の1次側をインバータ回路で構成し、2次側はインバータ回路以外の任意の回路又は負荷で構成してもよい。また、2次側の直流電源4のみを負荷に置き換えてもよい。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1…電力変換装置、2…制御回路、3,4…直流電源、10,14,30,34…ハーフブリッジ回路、11,15,31,35…レグ、12,13,16,17,32,33,36,37…スイッチング素子、20,40…正極線、21,41…負極線、22,42…直流コンデンサ、23,26,43,46…コンデンサユニット、24,27,44,47…コンデンサ、23A,26A…導体、25,28,45,48…配線、29…変圧器、50,52,54,56…リアクトルユニット、51,53,55,57…リアクトル、T1~T4…端子。