(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029691
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240228BHJP
【FI】
H02M7/48 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132091
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】森 雄生
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA02
5H770AA05
5H770DA04
5H770DA41
5H770EA02
5H770EA21
5H770GA02
5H770GA13
5H770GA17
5H770LB02
(57)【要約】
【課題】高い電圧利用率及び歪みのない相電圧を実現しつつ、素子損失が小さい電力変換装置を提供する。
【解決手段】電力変換装置10は、直流の電気信号が入力される第1、第2の端子の間で直列に接続された第1、第2のスイッチング素子をそれぞれ有する第1から第3のレグを備えた三相インバータ20と、第1、第2の端子の間で直列に接続された第1、第2のスイッチング素子を有する第4のレグ21nを備えた単相インバータと、第1から第4のレグがそれぞれ備える第1、第2のスイッチング素子の各々に対し制御信号を入力して、スイッチング素子の導通を切り替える制御回路40とを備え、制御回路40は、第1から第3のレグに対応する第1から第3の信号波が二相変調された第1から第3の変調済み信号波と、搬送波との比較により生成された信号を制御信号として、第1、第2のスイッチング素子の各々に対し入力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流の電気信号が入力される第1の端子及び第2の端子の間で直列に接続された第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子をそれぞれ有する第1から第3のレグを備えた三相インバータと、
前記第1の端子及び前記第2の端子の間で直列に接続された前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子を有する第4のレグを備えた単相インバータと、
前記第1から前記第4のレグがそれぞれ備える前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子の各々に対し制御信号を入力して、当該第1のスイッチング素子及び当該第2のスイッチング素子の導通を切り替える制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、前記第1から第3のレグに対応する第1から第3の信号波が二相変調された第1から第3の変調済み信号波と、搬送波との比較により生成された信号を、前記制御信号として、前記第1から前記第3のレグがそれぞれ備える前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子の各々に対し入力する、
電力変換装置。
【請求項2】
前記制御回路は、
前記第1から第3の変調済み信号波の値が第1の前記搬送波の値よりも大きい場合にオンとする信号を、前記制御信号として、前記第1から前記第3のレグが備える前記第1のスイッチング素子へ入力し、
前記第1から第3の変調済み信号波の値が前記第1の搬送波の値よりも小さい場合にオンとする信号を、前記制御信号として、前記第1から前記第3のレグが備える前記第2のスイッチング素子へ入力し、
前記第1から第3の変調済み信号波の平均値が第2の前記搬送波の値よりも大きい場合にオンとする信号を、前記制御信号として、前記第4のレグが備える前記第1のスイッチング素子へ入力し、
前記第1から第3の変調済み信号波の平均値が前記第2の搬送波の値よりも小さい場合にオンとする信号を、前記制御信号として、前記第4のレグが備える前記第2のスイッチング素子へ入力する、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第2の搬送波の周波数は、前記第1の搬送波の周波数よりも大きい、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1から第3の変調済み信号波の各々の最大値は、前記搬送波の最大値と等しい、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1から第4のレグの前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との間に一端が接続された第1から第4のリアクトルと、
前記第1から第3のリアクトルの前記第1から第3のレグに接続されない端子と、前記第4のリアクトルの前記第4のレグに接続されない端子と、の間に設けられた第1から第3のコンデンサと、
を更に備える、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記三相インバータが備える前記第1から第3のレグはIGBT素子により構成され、
前記単相インバータが備える前記第4のレグはMOSFET素子により構成される、
請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の商用周波絶縁方式の補助電源装置では、三相インバータ、出力LCフィルタ、及び出力変圧器を組み合わせることにより、直流電圧から三相交流電圧への変換及び入出力間の電気的絶縁を行っている。出力変圧器には、出力電圧となる商用周波電圧が印加されるため、商用周波絶縁方式では補助電源装置の小型及び軽量化が難しいという欠点があった。その欠点を解決するために、商用周波変圧器の代わりに、高周波絶縁DC-DCコンバータを用いて入出力の絶縁を図る高周波絶縁方式が用いることが知られている。LCフィルタの「L」はインダクタを意味し、「C」はコンデンサを意味する。「DC」は、Direct Current(直流)の略称である。
【0003】
補助電源装置の負荷には、線間電圧を用いるものの他、二次側中性点と各相の間に負荷を接続し相電圧を利用するものも存在する。高周波絶縁方式では、変圧器の中性点の代わりに、出力のLCフィルタを構成する交流コンデンサの中性点と各相との間で相電圧を得ることができる。また、商用周波絶縁方式では、相電圧を歪ませることにより三相インバータの電圧利用率を改善する変調方式が用いられてきた。出力変圧器の結線方法にΔ-Y結線を用いることにより、出力電圧には三相インバータの出力線間電圧のみが寄与するため、電圧利用率を改善しつつ、歪みのない相電圧を得ることができた。
【0004】
一方、高周波絶縁方式の補助電源装置に上記のような電圧利用率を改善する変調方式を適用すると、インバータの相電圧に歪みが含まれているために、出力相電圧の波形が歪むという課題があった。よって、高周波絶縁方式の場合は上記の電圧利用率を改善する変調方式を適用することができず、より高耐圧のスイッチング素子を適用しなければならなかった。
【0005】
特許文献1及び特許文献2には、三次高調波重畳変調を適用するとともに、重畳した電圧を信号波とし、中性点電圧を出力する単相インバータを追加することで、電圧利用率を向上させるとともに、歪みのない相電圧を得る構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-274825号公報
【特許文献2】特開2019-041544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1及び特許文献2の構成では、単相インバータを追加することにより、スイッチング素子の電力損失が増加するという課題があった。特に、補助電源装置の出力電圧が低電圧の場合、三相インバータには電流容量が大きい素子を使用しなければならない。電流容量が大きな素子は小容量素子に比べてスイッチング速度が遅く、スイッチング損失が増大するという課題があった。
【0008】
本開示の目的は、高い電圧利用率及び歪みのない相電圧を実現しつつ、素子損失が小さい電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、電力変換装置は、
(1)直流の電気信号が入力される第1の端子及び第2の端子の間で直列に接続された第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子をそれぞれ有する第1から第3のレグを備えた三相インバータと、前記第1の端子及び前記第2の端子の間で直列に接続された前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子を有する第4のレグを備えた単相インバータと、前記第1から前記第4のレグがそれぞれ備える前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子の各々に対し制御信号を入力して、当該第1のスイッチング素子及び当該第2のスイッチング素子の導通を切り替える制御回路と、を備え、前記制御回路は、前記第1から第3のレグに対応する第1から第3の信号波が二相変調された第1から第3の変調済み信号波と、搬送波との比較により生成された信号を、前記制御信号として、前記第1から前記第3のレグがそれぞれ備える前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子の各々に対し入力する。
【0010】
また、
(2)(1)の電力変換装置において、前記制御回路は、前記第1から第3の変調済み信号波の値が第1の前記搬送波の値よりも大きい場合にオンとする信号を、前記制御信号として、前記第1から前記第3のレグが備える前記第1のスイッチング素子へ入力し、前記第1から第3の変調済み信号波の値が前記第1の搬送波の値よりも小さい場合にオンとする信号を、前記制御信号として、前記第1から前記第3のレグが備える前記第2のスイッチング素子へ入力し、前記第1から第3の変調済み信号波の平均値が第2の前記搬送波の値よりも大きい場合にオンとする信号を、前記制御信号として、前記第4のレグが備える前記第1のスイッチング素子へ入力し、前記第1から第3の変調済み信号波の平均値が前記第2の搬送波の値よりも小さい場合にオンとする信号を、前記制御信号として、前記第4のレグが備える前記第2のスイッチング素子へ入力する。
【0011】
また、
(3)(2)の電力変換装置において、前記第2の搬送波の周波数は、前記第1の周波数よりも大きい。
【0012】
また、
(4)(1)から(3)のいずれかの電力変換装置において、前記第1から第3の変調済み信号波の各々の最大値は、前記搬送波の最大値と等しい。
【0013】
また、
(5)(1)から(4)のいずれかの電力変換装置において、前記第1から第4のレグの前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との間に一端が接続された第1から第4のリアクトルと、前記第1から第3のリアクトルの前記第1から第3のレグに接続されない端子と、前記第4のリアクトルの前記第4のレグに接続されない端子と、の間に設けられた第1から第3のコンデンサと、を更に備える。
【0014】
また、
(6)(1)から(5)のいずれかの電力変換装置において、前記三相インバータが備える前記第1から第3のレグはIGBT素子により構成され、前記単相インバータが備える前記第4のレグはMOSFET素子により構成される。
【発明の効果】
【0015】
本開示の一実施形態によれば、電圧利用率の改善及び歪みのない相電圧を実現しつつ、素子損失を小さくすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の一実施形態に係る電力変換装置の回路構成例を示す図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る電力変換装置の制御回路の構成例を示す図である。
【
図3A】三相インバータの信号波Vu
*、Vv
*、Vw
*の波形の一例を示す図である。
【
図3B】二相変調を適用した信号波Vu
**、Vv
**、Vw
**の波形の一例を示す図である。
【
図4】単相インバータの信号波Vn
*の波形の一例を示す図である。
【
図5】搬送波Vcarの波形の一例を示す図である。
【
図6A】本開示の一実施形態に係る電力変換装置における三相インバータの素子電流iSW1の波形の一例を示す図である。
【
図6B】本開示の一実施形態に係る電力変換装置における三相インバータの環流ダイオード電流iFWD1の波形の一例を示す図である。
【
図7A】本開示の一実施形態に係る電力変換装置における単相インバータの素子電流iSW7の波形の一例を示す図である。
【
図7B】本開示の一実施形態に係る電力変換装置における単相インバータの環流ダイオード電流iFWD7の波形の一例を示す図である。
【
図8A】本開示の一実施形態に係る電力変換装置の出力相電圧Vu、Vv、Vwの波形の一例を示す図である。
【
図8B】本開示の一実施形態に係る電力変換装置の出力線間電圧Vuv、Vvw、Vwuの波形の一例を示す図である。
【
図9A】二相変調の処理手順を示すフローチャートである。
【
図9B】二相変調の処理手順を示すフローチャートである。
【
図9C】二相変調の処理手順を示すフローチャートである。
【
図10A】デッドタイム生成部の構成の一例を示す図である。
【
図10B】
図10Aのデッドタイム生成部に対する信号の入出力の一例を模式的に示すタイミングチャートである。
【
図11A】デッドタイム生成部の構成の一例を示す図である。
【
図11B】
図11Aのデッドタイム生成部に対する信号の入出力の一例を模式的に示すタイミングチャートである。
【
図12】本開示の一実施形態に係る電力変換装置に使用される半導体素子の素子電流と素子両端電圧との関係を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。各図面中、同一又は相当する部分には、同一符号を付している。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0018】
本実施形態に係る電力変換装置10は、直流の電気信号を三相交流の電気信号に変換する。電力変換装置10は、相電圧と線間電圧を同時に得る三相インバータに対し、中性点電圧を出力する四相目のインバータを加えるとともに、出力電圧1周期中の任意の区間において三相の中の一相のスイッチングを休止する二相変調を適用する。そのため、本実施形態に係る電力変換装置10によれば、電圧利用率の改善及び歪みのない相電圧を実現しつつ、素子損失を低減することが可能である。
【0019】
図1は、本開示の一実施形態に係る電力変換装置10の回路構成例を示す図である。電力変換装置10は、第1の端子11、第2の端子12、コンデンサ13、三相インバータ20、単相インバータ(n相のレグ)21n、各相のリアクトル31(31u,31v,31w,31n)、及びコンデンサ33(33u,33v,33w)を備える。三相インバータ20は、u相,v相,w相のレグ21u,21v,21wを備える。u相,v相,w相,n相のレグ21(21u,21v,21w,21n)は、トランジスタ22(22u,22v,22w,22n)及びダイオード23(23u,23v,23w,23n)が並列に接続された第1のスイッチング素子27(27u,27v,27w,27n)と、トランジスタ24(24u,24v,24w,24n)及びダイオード25(25u,25v,25w,25n)が並列に接続された第2のスイッチング素子28(28u,28v,28w,28n)とが直列に接続されて構成される。
【0020】
第1の端子11、第2の端子12は、直流の電気信号が入力される入力端子である。
図1の例では、第1の端子11と第2の端子12の間に直流の電圧信号が入力される。第1の端子11と第2の端子12の間にはコンデンサ13が設けられ、入力信号が平滑化される。
【0021】
レグ21(21u,21v,21w,21n)はいずれも、その両端が第1の端子11及び第2の端子12に接続される。三相インバータ20が備えるu相,v相,w相のレグ21u,21v,21w、及び単相インバータ(n相のレグ)21nはいずれも、第1の端子11及び第2の端子12の間で直列に接続された第1のスイッチング素子27(27u,27v,27w,27n)及び第2のスイッチング素子28(28u,28v,28w,28n)をそれぞれ有する。
【0022】
各相のリアクトル31(31u,31v,31w,31n)の一端は、第1のスイッチング素子27(27u,27v,27w,27n)と第2のスイッチング素子28(28u,28v,28w,28n)との間の端子26(26u,26v,26w,26n)に接続される。u相,v相,w相のリアクトル31u,31v,31wの、レグ21u,21v,21wに接続されない二次側の端子32u,32v,32wは、負荷に各相の電気信号を出力する出力端子として作用する。
【0023】
コンデンサ33(33u,33v,33w)は、u相,v相,w相のリアクトル31u,31v,31wの二次側の端子32u,32v,32wと、n相のリアクトル31nの二次側の端子32nとの間に設けられる。u相,v相,w相のリアクトル31u,31v,31w及びコンデンサ33u,33v,33wは、三相インバータ20の高周波成分を除去するローパスフィルタとして作用する。n相のリアクトル31nの、レグ21nに接続されない二次側の端子32nは、コンデンサ33(33u,33v,33w)の中性点として作用し、負荷に電力を供給する。
【0024】
電力変換装置10は、各相のレグ21(21u,21v,21w,21n)がそれぞれ備える第1のスイッチング素子27(27u,27v,27w,27n)及び第2のスイッチング素子28(28u,28v,28w,28n)の各々に対し制御信号を入力して、第1のスイッチング素子27及び第2のスイッチング素子28の導通を切り替える制御回路40を備える。
【0025】
図2は、本開示の一実施形態に係る電力変換装置10の制御回路40の構成例を示す図である。制御回路40は、二相変調部50、加算器52,53、減衰器54、コンパレータ61(61u,61v,61w,61n)、NOTゲート63(63u,63v,63w,63n)、及びデッドタイム生成部70を備える。二相変調部50は、u相、v相、w相の各相のレグ21u,21v,21wに対応する信号波Vu
*、Vv
*、Vw
*を入力し、これらの信号波を二相変調して、変調済み信号波Vu
**、Vv
**、Vw
**を出力する。
【0026】
図3Aは、三相インバータ20の信号波Vu
*、Vv
*、Vw
*の波形の一例を示す図である。三相インバータの信号波Vu
*、Vv
*、Vw
*は、振幅及び周期が同一の正弦波である。
図3Aの例では、振幅が1.0V、周期は16.8msである。信号波Vv
*、Vw
*の位相は、Vu
*の位相に対して120°、240°遅延している。
【0027】
図3Bは、二相変調部50において二相変調を適用した変調済み信号波Vu
**、Vv
**、Vw
**の波形の一例を示す図である。変調済み信号波Vu
**、Vv
**、Vw
**はいずれも、Highで固定される60°の期間、及びLowで固定される60°の期間を有する。任意のタイミングにおいて、変調済み信号波Vu
**、Vv
**、Vw
**のいずれか1つがHigh又はLow(-1.0V)に固定されている。例えば、
図3Bの例では、0ms~2.3msの期間はVv
**がLow(-1.0V)に固定されている。2.3ms~5.1msの期間はVu
**がHigh(+1.0V)に固定されている。5.1ms~7.9msの期間はVw
**がLow(-1.0V)に固定されている。7.9ms~10.7msの期間はVv
**がHigh(+1.0V)に固定されている。10.7ms~13.5msの期間はVu
**がLow(-1.0V)に固定されている。13.5ms~16.3msの期間はVw
**がHigh(+1.0V)に固定されている。16.3ms~16.8msの期間はVv
**がLow(-1.0V)に固定されている。変調済み信号波Vu
**、Vv
**、又はVw
**がHigh又はLowに固定されている期間は、その変調済み信号波についてはスイッチングが休止される。したがって、任意のタイミングにおいて、スイッチングが行われるのは、三相のうち二相であり、スイッチング損失を低減することができる。二相変調部50による二相変調の詳細は後述される。
【0028】
図2において、二相変調部50において変調された変調済み信号波Vu
**、Vv
**、Vw
**は、端子51(51u,51v,51w)へ出力される。変調済み信号波Vu
**、Vv
**、及びVw
**は、加算器52,53において加算され、減衰器54において振幅が1/3に減衰されて、単相インバータ21nの信号波Vn
*が生成される。このように、単相インバータ21nの信号波Vn
*は、変調済み信号波Vu
**、Vv
**、及びVw
**の平均値である。
図4は、単相インバータ21nの信号波Vn
*の波形の一例を示す図である。
【0029】
変調済み信号波Vu
**、Vv
**、Vw
**、及び信号波Vn
*は、コンパレータ61(61u,61v,61w,61n)において搬送波Vcarと比較される。
図5は、搬送波Vcarの波形の一例を示す図である。
図5に示すように、搬送波Vcarは、信号波Vu
*、Vv
*、Vw
*よりも高い周波数を有する。また、搬送波Vcarの振幅(最大値)は1.0Vであり、変調済み信号波Vu
**、Vv
**、Vw
**、及び信号波Vn
*の各々の振幅(最大値)と等しい関係にある。コンパレータ61(61u,61v,61w,61n)は、端子62(62u,62v,62w,62n)に対し、変調済み信号波Vu
**、Vv
**、Vw
**、及び信号波Vn
*の値が搬送波Vcarの値よりも大きい期間においてオンの信号を出力し、それ以外の期間はオフの信号を出力する。コンパレータ61(61u,61v,61w,61n)がオフの信号を出力する期間には、変調済み信号波Vu**、Vv**、Vw**、及び信号波Vn*の値が搬送波Vcarの値よりも小さい期間が含まれる。
【0030】
各相のコンパレータ61(61u,61v,61w,61n)の出力信号SW1**、SW3**、SW5**、SW7**と、その出力信号をNOTゲート63(63u,63v,63w,63n)において反転した信号SW2**、SW4**、SW6**、SW8**とは、デッドタイム生成部70において遅延され、スイッチング素子27(27u,27v,27w,27n)及び28(28u,28v,28w,28n)に対するスイッチング信号SW1*~SW8*として出力される。ここで、SW1*は、コンパレータ61uの出力信号SW1**を遅延した信号であり、スイッチング素子27uの導通を切り替える制御信号として用いられる。SW2*は、コンパレータ61uの出力信号を反転した信号SW2**を遅延した信号であり、スイッチング素子28uの導通を切り替える制御信号として用いられる。SW3*は、コンパレータ61vの出力信号SW3**を遅延した信号であり、スイッチング素子27vの導通を切り替える制御信号として用いられる。SW4*は、コンパレータ61vの出力信号を反転した信号SW4**を遅延した信号であり、スイッチング素子28vの導通を切り替える制御信号として用いられる。SW5*は、コンパレータ61wの出力信号SW5**を遅延した信号であり、スイッチング素子27wの導通を切り替える制御信号として用いられる。SW6*は、コンパレータ61wの出力信号を反転した信号SW6**を遅延した信号であり、スイッチング素子28wの導通を切り替える制御信号として用いられる。SW7*は、コンパレータ61nの出力信号SW7**を遅延した信号であり、スイッチング素子27nの導通を切り替える制御信号として用いられる。SW8*は、コンパレータ61nの出力信号を反転した信号SW8**を遅延した信号であり、スイッチング素子28nの導通を切り替える制御信号として用いられる。
【0031】
図6Aは、本開示の一実施形態に係る電力変換装置10における三相インバータ20の素子電流iSW1の波形の一例を示す図である。
図6Aは、スイッチング素子27uを構成するトランジスタ22uを流れる電流iSW1の変化を示している。
図6Aでは、変調済み信号波Vu
**の値が正である0ms~8.4msの期間(
図3A参照)において、トランジスタ22uを流れる電流iSW1が観察されている。そして、0ms~2.3ms及び5.1ms~8.4msの期間は、変調済み信号波Vu
**の値は搬送波Vcarの最大値1.0Vを下回る(
図3A参照)ため、スイッチングが行われている。一方、2.3ms~5.1msの期間は、変調済み信号波Vu
**の値は搬送波Vcarの最大値1.0Vを下回らない(
図3A参照)ため、スイッチングが行われていない。
【0032】
図6Bは、本開示の一実施形態に係る電力変換装置10における三相インバータ20の環流ダイオード電流iFWD1の波形の一例を示す図である。
図6Bは、スイッチング素子27uを構成するダイオード23uを流れる電流iFWD1の変化を示している。
図6Bでは、変調済み信号波Vu
**の値が負である8.4ms~16.8msの期間(
図3A参照)において、ダイオード23uを流れる電流iFWD1が観察されている。そして、8.4ms~10.7ms及び13.5ms~16.8msの期間は、変調済み信号波Vu
**の値は搬送波Vcarの最小値-1.0Vを上回る(
図3A参照)ため、スイッチングが行われている。一方、10.7ms~13.5msの期間は、変調済み信号波Vu
**の値は搬送波Vcarの最小値-1.0Vを上回らない(
図3A参照)ため、スイッチングが行われていない。
【0033】
図7Aは、本開示の一実施形態に係る電力変換装置10における単相インバータ21nの素子電流iSW7の波形の一例を示す図である。
図7Aは、スイッチング素子27nを構成するトランジスタ22nを流れる電流iSW7の変化を示している。
図7Aの例では、0ms~4.0ms、5.3ms~9.6ms、10.8ms~15.2ms、及び16.3ms~16.8msの期間において、トランジスタ22nを流れる電流iSW7が観察されている。
【0034】
図7Bは、本開示の一実施形態に係る電力変換装置10における単相インバータ21nの環流ダイオード電流iFWD7の波形の一例を示す図である。
図7Bは、スイッチング素子27nを構成するダイオード23nを流れる電流iFWD7の変化を示している。
図7Aの例では、0ms~1.6ms、2.3ms~7.0ms、7.8ms~12.5ms、及び13.5ms~16.8msの期間において、ダイオード23nを流れる電流iFWD7が観察されている。
【0035】
図8Aは、本開示の一実施形態に係る電力変換装置10の出力相電圧Vu、Vv、Vwの波形の一例を示す図である。出力相電圧Vu、Vv、Vwは、n相のリアクトル31nの二次側の端子32nを基準とした、各相のリアクトル31u,31v,31wの二次側の端子32u,32v,32wの電位であり、コンデンサ33(33u,33v,33w)の電極板間の電圧に当たる。
【0036】
図8Bは、本開示の一実施形態に係る電力変換装置10の出力線間電圧Vuv、Vvw、Vwuの波形の一例を示す図である。出力線間電圧Vuv、Vvw、Vwuは、u相、v相、w相の各相の出力線間の電圧である。すなわち、Vuvは端子32vを基準とした端子32uの電位であり、Vvwは端子32wを基準とした端子32vの電位であり、Vwuは端子32uを基準とした端子32wの電位である。Vuv=Vu-Vv,Vvw=Vv-Vw,Vwu=Vw-Vuである。
【0037】
次に、
図9A~
図9Cを参照して、二相変調部50による二相変調の処理を説明する。
図9Aは、二相変調部50の二相変調によりu相の変調済み信号波Vu
**を生成するための処理手順を示すフローチャートである。
図9Bは、二相変調部50の二相変調によりv相の変調済み信号波Vv
**を生成するための処理手順を示すフローチャートである。
図9Cは、二相変調部50の二相変調によりw相の変調済み信号波Vw
**を生成するための処理手順を示すフローチャートである。
図9A~
図9Cの各ステップにより示される処理はASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)など専用のハードウェアによって実行される。なお、汎用性を有するプロセッサがプログラムに基づき
図9A~
図9Cの各ステップを実行してもよい。
【0038】
図9AのステップS11において、二相変調部50は、(1)u相の信号波Vu
*の値の絶対値|Vu
*|がv相の信号波Vv
*の値の絶対値|Vv
*|よりも大きい、又は|Vv
*|と等しく、かつ、(2)|Vu
*|がw相の信号波Vw
*の値の絶対値|Vw
*|よりも大きい、又は|Vw
*|と等しいか否かを判定する。二相変調部50は、(1)(2)の両方の条件を充足する場合(ステップS11でTrue)はステップS12へ進み、そうでない場合(ステップS11でFalse)はステップS15へ進む。
【0039】
ステップS12において、二相変調部50は、v相の信号波Vv*の値が正であるか否かを判定する。二相変調部50は、正の場合(ステップS12でTrue)はステップS13へ進み、そうでない場合(ステップS12でFalse)はステップ14へ進む。
【0040】
ステップS13において、二相変調部50は、搬送波Vcarの最大値(振幅)Vcar_maxをu相の変調済み信号波Vu**とする。そして、二相変調部50は、変調済み信号波Vu**(=Vcar_max)を出力する。
【0041】
ステップS14において、二相変調部50は、搬送波Vcarの最大値(振幅)の符号を反転したもの-Vcar_maxをu相の変調済み信号波Vu**とする。そして、二相変調部50は、変調済み信号波Vu**(=-Vcar_max)を出力する。
【0042】
ステップS15において、二相変調部50は、u相の信号波Vu*に対して、後述するステップS16~S21により計算されるVv***及びVw***を加算したものを、u相の変調済み信号波Vu**とする。そして、二相変調部50は、変調済み信号波Vu**(=Vu*+Vv***+Vw***)を出力する。
【0043】
ステップS16において、二相変調部50は、v相の信号波Vv*の値が正であるか否かを判定する。二相変調部50は、正の場合(ステップS16でTrue)はステップS17へ進み、そうでない場合(ステップS16でFalse)はステップS18へ進む。
【0044】
ステップS17において、二相変調部50は、信号波Vv*の最大値(振幅)1Vから信号波Vv*を除算したもの1-Vv*をVv***とする(Vv***=1-Vv*)。そして、二相変調部50は、ステップS15へ進む。
【0045】
ステップS18において、二相変調部50は、信号波Vv*の最小値-1Vから信号波Vv*を除算したもの1-Vv*をVv***とする(Vv***=-1-Vv*)。そして、二相変調部50は、ステップS15へ進む。
【0046】
ステップS19において、二相変調部50は、w相の信号波Vw*の値が正であるか否かを判定する。二相変調部50は、正の場合(ステップS19でTrue)はステップS20へ進み、そうでない場合(ステップS19でFalse)はステップS21へ進む。
【0047】
ステップS20において、二相変調部50は、信号波Vw*の最大値(振幅)1Vから信号波Vw*を除算したもの1-Vw*をVw***とする(Vw***=1-Vw*)。そして、二相変調部50は、ステップS15へ進む。
【0048】
ステップS21において、二相変調部50は、信号波Vw*の最小値-1Vから信号波Vw*を除算したもの1-Vw*をVw***とする(Vw***=-1-Vw*)。そして、二相変調部50は、ステップS15へ進む。
【0049】
図9BのステップS31において、二相変調部50は、(1)|Vv
*|がw相の信号波Vw
*の値の絶対値|Vw
*|よりも大きい、又は|Vw
*|と等しく、かつ、(2)v相の信号波Vv
*の値の絶対値|Vv
*|がu相の信号波Vu
*の値の絶対値|Vu
*|よりも大きい、又は|Vu
*|と等しいか否かを判定する。二相変調部50は、(1)(2)の両方の条件を充足する場合(ステップS31でTrue)はステップS32へ進み、そうでない場合(ステップS31でFalse)はステップS35へ進む。
【0050】
ステップS32において、二相変調部50は、u相の信号波Vu*の値が正であるか否かを判定する。二相変調部50は、正の場合(ステップS32でTrue)はステップS33へ進み、そうでない場合(ステップS32でFalse)はステップ14へ進む。
【0051】
ステップS33において、二相変調部50は、搬送波Vcarの最大値(振幅)Vcar_maxをv相の変調済み信号波Vv**とする。そして、二相変調部50は、変調済み信号波Vv**(=Vcar_max)を出力する。
【0052】
ステップS34において、二相変調部50は、搬送波Vcarの最大値(振幅)の符号を反転したもの-Vcar_maxをv相の変調済み信号波Vv**とする。そして、二相変調部50は、変調済み信号波Vv**(=-Vcar_max)を出力する。
【0053】
ステップS35において、二相変調部50は、v相の信号波Vv*に対して、後述するステップS36~S41により計算されるVw***及びVu***を加算したものを、v相の変調済み信号波Vv**とする。そして、二相変調部50は、変調済み信号波Vv**(=Vv*+Vw***+Vu***)を出力する。
【0054】
ステップS36において、二相変調部50は、u相の信号波Vu*の値が正であるか否かを判定する。二相変調部50は、正の場合(ステップS36でTrue)はステップS37へ進み、そうでない場合(ステップS36でFalse)はステップS38へ進む。
【0055】
ステップS37において、二相変調部50は、信号波Vu*の最大値(振幅)1Vから信号波Vu*を除算したもの1-Vu*をVu***とする(Vu***=1-Vu*)。そして、二相変調部50は、ステップS35へ進む。
【0056】
ステップS38において、二相変調部50は、信号波Vu*の最小値-1Vから信号波Vu*を除算したもの1-Vu*をVu***とする(Vu***=-1-Vu*)。そして、二相変調部50は、ステップS35へ進む。
【0057】
ステップS39において、二相変調部50は、w相の信号波Vw*の値が正であるか否かを判定する。二相変調部50は、正の場合(ステップS39でTrue)はステップS40へ進み、そうでない場合(ステップS39でFalse)はステップS41へ進む。
【0058】
ステップS40において、二相変調部50は、信号波Vw*の最大値(振幅)1Vから信号波Vw*を除算したもの1-Vw*をVw***とする(Vw***=1-Vw*)。そして、二相変調部50は、ステップS35へ進む。
【0059】
ステップS41において、二相変調部50は、信号波Vw*の最小値-1Vから信号波Vw*を除算したもの1-Vw*をVw***とする(Vw***=-1-Vw*)。そして、二相変調部50は、ステップS35へ進む。
【0060】
図9CのステップS51において、二相変調部50は、(1)w相の信号波Vw
*の値の絶対値|Vw
*|がu相の信号波Vu
*の値の絶対値|Vu
*|よりも大きい、又は|Vu
*|と等しく、かつ、(2)|Vw
*|がv相の信号波Vv
*の値の絶対値|Vv
*|よりも大きい、又は|Vv
*|と等しいか否かを判定する。二相変調部50は、(1)(2)の両方の条件を充足する場合(ステップS51でTrue)はステップS52へ進み、そうでない場合(ステップS51でFalse)はステップS55へ進む。
【0061】
ステップS52において、二相変調部50は、u相の信号波Vu*の値が正であるか否かを判定する。二相変調部50は、正の場合(ステップS52でTrue)はステップS53へ進み、そうでない場合(ステップS52でFalse)はステップ14へ進む。
【0062】
ステップS53において、二相変調部50は、搬送波Vcarの最大値(振幅)Vcar_maxをw相の変調済み信号波Vw**とする。そして、二相変調部50は、変調済み信号波Vw**(=Vcar_max)を出力する。
【0063】
ステップS54において、二相変調部50は、搬送波Vcarの最大値(振幅)の符号を反転したもの-Vcar_maxをw相の変調済み信号波Vw**とする。そして、二相変調部50は、変調済み信号波Vw**(=-Vcar_max)を出力する。
【0064】
ステップS55において、二相変調部50は、w相の信号波Vw*に対して、後述するステップS56~S61により計算されるVu***及びVv***を加算したものを、w相の変調済み信号波Vw**とする。そして、二相変調部50は、変調済み信号波Vw**(=Vw*+Vu***+Vv***)を出力する。
【0065】
ステップS56において、二相変調部50は、u相の信号波Vu*の値が正であるか否かを判定する。二相変調部50は、正の場合(ステップS56でTrue)はステップS57へ進み、そうでない場合(ステップS56でFalse)はステップS58へ進む。
【0066】
ステップS57において、二相変調部50は、信号波Vu*の最大値(振幅)1Vから信号波Vu*を除算したもの1-Vu*をVu***とする(Vu***=1-Vu*)。そして、二相変調部50は、ステップS55へ進む。
【0067】
ステップS58において、二相変調部50は、信号波Vu*の最小値-1Vから信号波Vu*を除算したもの1-Vu*をVu***とする(Vu***=-1-Vu*)。そして、二相変調部50は、ステップS55へ進む。
【0068】
ステップS59において、二相変調部50は、v相の信号波Vv*の値が正であるか否かを判定する。二相変調部50は、正の場合(ステップS59でTrue)はステップS60へ進み、そうでない場合(ステップS59でFalse)はステップS61へ進む。
【0069】
ステップS60において、二相変調部50は、信号波Vv*の最大値(振幅)1Vから信号波Vv*を除算したもの1-Vv*をVv***とする(Vv***=1-Vv*)。そして、二相変調部50は、ステップS55へ進む。
【0070】
ステップS61において、二相変調部50は、信号波Vv*の最小値-1Vから信号波Vv*を除算したもの1-Vv*をVv***とする(Vv***=-1-Vv*)。そして、二相変調部50は、ステップS55へ進む。
【0071】
二相変調部50は、例えば、
図9A~
図9Cの処理を行うことにより、三相インバータ20の信号波Vu
*、Vv
*、Vw
*に基づき、変調済み信号波Vu
**、Vv
**、Vw
**を生成することができる。
図9A~
図9Cは、便宜上、二相変調部50の処理内容をフローチャートにより示しているが、二相変調部50は、
図9A~
図9Cと同等の動作を行うならば、
図9A~
図9Cのフローと同一の手順により処理を実行する必要はない。
【0072】
図10Aは、CR回路により入力信号を遅延させるデッドタイム生成部70aの構成の一例を示す図である。デッドタイム生成部70aは、NOTゲート72、NANDゲート73、コンデンサ74、抵抗76、NOTゲート76、及びANDゲート79を備える。
図10Aは、コンパレータ61uから出力された信号SW1
**を遅延させて、スイッチング信号SW1
*を生成する例を示しているが、同様の構成により信号SW2
**~SW8
**を遅延させて、スイッチング信号SW2
*~SW8
*を生成することが可能である。
【0073】
図10Aのデッドタイム生成部70aはコンデンサ74及び抵抗76のCR回路により入力信号を遅延させる。コンパレータ61uから出力された信号SW1
**は、NOTゲート72へ出力されるとともに、端子71を介してANDゲート79へ出力される。NOTゲート72は、入力信号を反転するNOT演算を行う。NOTゲート72の出力は、NANDゲート73へ出力される。NANDゲート73は、NOTゲート72の出力及びNOTゲート77の出力を入力として、NAND演算を行う。NANDゲート73の出力はコンデンサ74へ出力される。コンデンサ74は、NANDゲート73の出力側及び端子75の間に設けられる。端子75は、抵抗76を介して接地に接続される。端子75はNOTゲート77の入力側に接続される。NOTゲート77は入力信号を反転するNOT演算を行う。NOTゲート77の出力は、ANDゲート79へ出力されるとともに、端子78を介してNANDゲート73へ出力される。ANDゲート79は、コンパレータ61uの出力信号SW1
**、及びNOTゲート77の出力を入力としてAND演算を行う。ANDゲート79の出力は、スイッチング信号SW1
*として、スイッチング素子27uへ入力される。
【0074】
図10Bは、
図10Aのデッドタイム生成部70aに対する信号の入出力の一例を模式的に示すタイミングチャートである。
図10Bでは、コンパレータ61uから出力された信号SW1
**、端子78の電位、及びスイッチング信号SW1
*の波形が示されている。
図10Bに示すように、スイッチング信号SW1
*は、信号SW1
**と比べてデッドタイムTdだけ遅延されている。ここで、デッドタイムTdは、Td=C×Rと計算される。
【0075】
デッドタイム生成部70は、入力信号を遅延させることができるならば、CR回路を用いたものに限られない。デッドタイム生成部70は、例えば、ワンショットマルチ、又は、マイコンのPWM(Pulse Width Modulation)機能若しくはタイマ機能等を用いて構成してもよい。
【0076】
図11Aは、ワンショットマルチにより入力信号を遅延させるデッドタイム生成部70bの構成の一例を示す図である。デッドタイム生成部70bは、ワンショットマルチ82及びANDゲート83を備える。
図10Bは、コンパレータ61uから出力された信号SW1
**を遅延させて、スイッチング信号SW1
*を生成する例を示しているが、同様の構成により信号SW2
**~SW8
**を遅延させて、スイッチング信号SW2
*~SW8
*を生成することが可能である。
【0077】
コンパレータ61uから出力された信号SW1**は、ワンショットマルチ82へ入力されるとともに、端子81を介してANDゲート83へ出力される。ワンショットマルチ82は2つの入力端子を備え、一方の入力端子には信号SW1**が入力され、他方の入力端子は接地に接続される。ワンショットマルチ82のQバー出力はANDゲート83へ出力される。ANDゲート83は、コンパレータ61uの出力信号SW1**、及びワンショットマルチ82のQバー出力を入力としてAND演算を行う。ANDゲート83の出力は、スイッチング信号SW1*として、スイッチング素子27uへ入力される。
【0078】
図11Bは、
図11Aのデッドタイム生成部70bに対する信号の入出力の一例を模式的に示すタイミングチャートである。
図11Bでは、コンパレータ61uから出力された信号SW1
**、ワンショットマルチ82のQバー出力、及びスイッチング信号SW1
*の波形が示されている。
図11Bに示すように、スイッチング信号SW1
*は、信号SW1
**と比べてデッドタイムTdだけ遅延されている。ここで、デッドタイムTdは、ワンショットマルチ82の設定時間により決定される。
【0079】
なお、単相インバータ21nのスイッチング素子27n,28nを流れる電流の大きさは、三相インバータ20を流れる電流よりも小さいという特徴がある。そして、単相インバータ21nのスイッチング周波数がより高いと、リアクトル31nの可聴領域における騒音はより低減される。そこで、
図2の例では、u,v,w,nの全ての相について、同一の搬送波Vcarが用いられる場合を説明したが、単相インバータ21nで用いる搬送波の周波数は、三相インバータ20で用いる搬送波の周波数よりも大きくなるようにしてもよい。これにより、単相インバータ21nにおける損失を三相インバータ20と同程度に抑えつつ、単相インバータ21nに接続されたリアクトル31nの騒音を低減することができる。
【0080】
図12は、本開示の一実施形態に係る電力変換装置10に使用される半導体素子の素子電流と素子両端電圧との関係を模式的に示す図である。
図12に示すように、スイッチング素子に使用する半導体素子は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)は小電流領域において、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)は大電流領域において、オン電圧が小さい特徴がある。そして、前述のように、三相インバータ20には大電流が流れるのに対し、単相インバータ21nには小電流が流れる。そこで、三相インバータ20が備えるu相,v相,w相のレグ21u,21v,21wはIGBT素子により構成され、単相インバータ21nが備えるレグはMOSFET素子により構成されるようにしてもよい。これにより、電力変換装置10の素子導通損失を低減することができ、電力変換装置10をより安価に構成することができる。
【0081】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、ブロック図に記載の複数のブロックは統合されてもよいし、又は1つのブロックは分割されてもよい。フローチャートに記載の複数のステップは、記述に従って時系列に実行する代わりに、各ステップを実行する装置の処理能力に応じて、又は必要に応じて、並列的に又は異なる順序で実行されてもよい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【符号の説明】
【0082】
10 電力変換装置
11 第1の端子
12 第2の端子
13 コンデンサ
20 三相インバータ
21u,21v,21w 各相レグ
21n 単相レグ(単相インバータ)
22、24 トランジスタ
23、25 ダイオード
26 端子
27 第1のスイッチング素子
28 第2のスイッチング素子
31 リアクトル
32 端子
33 コンデンサ
40 制御回路
50 二相変調部
51 端子
52、53 加算器
54 減衰器
61 コンパレータ
62 端子
63 NOTゲート
70、70a、70b デッドタイム生成器
71 端子
72 NOTゲート
73 NANDゲート
74 コンデンサ
75 端子
76 抵抗
77 NOTゲート
78 端子
79 ANDゲート
81 端子
82 ワンショットマルチ
83 ANDゲート