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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000297
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】弁装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/32 20060101AFI20231225BHJP
   F16K 1/48 20060101ALI20231225BHJP
   F02M 26/11 20160101ALI20231225BHJP
   F02M 26/68 20160101ALI20231225BHJP
【FI】
F16K1/32 C
F16K1/48 Z
F02M26/11 301
F02M26/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099014
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 衛
(72)【発明者】
【氏名】中島 一真
【テーマコード(参考)】
3G062
3H052
【Fターム(参考)】
3G062EA11
3G062EC01
3H052AA01
3H052BA02
3H052BA26
3H052CA19
3H052CB18
3H052CD02
3H052EA01
(57)【要約】
【課題】全閉時における弁座と弁体との間のシール性を向上させることができる弁装置の製造方法を提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、樹脂製のシート4と、シート4に対して当接および離間する金属製のバルブ5と、を有するEGRバルブ装置1の製造方法において、バルブ5を加熱する弁体加熱工程と、弁体加熱工程にて加熱されたバルブ5をシート4に押圧する加熱弁体押圧工程と、を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の弁座と、前記弁座に対して当接および離間する金属製の弁体と、を有する弁装置の製造方法において、
前記弁体を加熱する弁体加熱工程と、
前記弁体加熱工程にて加熱された前記弁体を前記弁座に押圧する加熱弁体押圧工程と、を有すること、
を特徴とする弁装置の製造方法。
【請求項2】
樹脂製の弁座と、前記弁座に対して当接および離間する弁体と、を有する弁装置の製造方法において、
前記弁座を加熱する弁座加熱工程と、
前記弁座加熱工程にて加熱された前記弁座に前記弁体を押圧する弁体押圧工程と、を有すること、
を特徴とする弁装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2の弁装置の製造方法において、
前記加熱弁体押圧工程または前記弁体押圧工程によって、前記弁座と前記弁体とが当接する全閉時に環状の前記弁座に対してその周方向の全周に亘って前記弁体を当接させること、
を特徴とする弁装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1の弁装置の製造方法において、
前記弁装置は、前記弁体が溶接される弁軸を有し、
前記弁体加熱工程は、前記弁体と前記弁軸とを溶接する溶接工程であること、
を特徴とする弁装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、弁装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、環状のシート(弁座)に対してバルブ(弁体)が当接および離間することにより流路の開閉を行う弁装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-71102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるような弁装置において、シートが樹脂で形成されている場合には、シートの成形後に樹脂の収縮などが生じやすいので、シートの寸法精度(例えば、真円度や傾きなどの精度)が低下するおそれがある。そうすると、シートにバルブが当接して流路を閉じる全閉時において、シートとバルブとの間に隙間が生じてシール性が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は上記した課題を解決するためになされたものであり、全閉時における弁座と弁体との間のシール性を向上させることができる弁装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、樹脂製の弁座と、前記弁座に対して当接および離間する金属製の弁体と、を有する弁装置の製造方法において、前記弁体を加熱する弁体加熱工程と、前記弁体加熱工程にて加熱された前記弁体を前記弁座に押圧する加熱弁体押圧工程と、を有すること、を特徴とする。
【0007】
この態様によれば、加熱された弁体を弁座に押圧することにより、樹脂製の弁座の形状を弁体の形状に馴染ませることができる。これにより、弁座に対して弁体が当接する全閉時にて、弁体と弁座との間の隙間を小さくすることができるので、弁座と弁体との間のシール性を向上させることができる。
【0008】
上記課題を解決するためになされた本開示の他の形態は、樹脂製の弁座と、前記弁座に対して当接および離間する弁体と、を有する弁装置の製造方法において、前記弁座を加熱する弁座加熱工程と、前記弁座加熱工程にて加熱された前記弁座に前記弁体を押圧する弁体押圧工程と、を有すること、を特徴とする。
【0009】
この態様によれば、加熱された弁座に弁体を押圧することにより、樹脂製の弁座の形状を弁体の形状に馴染ませることができる。これにより、弁座に対して弁体が当接する全閉時にて、弁体と弁座との間の隙間を小さくすることができるので、弁座と弁体との間のシール性を向上させることができる。
【0010】
また、弁体を加熱する必要がないので、弁体の材質を金属以外にすることができる。
【0011】
上記の態様においては、前記加熱弁体押圧工程または前記弁体押圧工程によって、前記弁座と前記弁体とが当接する全閉時に環状の前記弁座に対してその周方向の全周に亘って前記弁体を当接させること、が好ましい。
【0012】
この態様によれば、全閉時にて環状の弁座の周方向の全周に亘って弁体と弁座との間の隙間をなくすことができる。そのため、より効果的に、全閉時における弁座と弁体との間のシール性を向上させることができる。
【0013】
上記の態様においては、前記弁装置は、前記弁体が溶接される弁軸を有し、前記弁体加熱工程は、前記弁体と前記弁軸とを溶接する溶接工程であること、が好ましい。
【0014】
この態様によれば、溶接工程を弁体加熱工程として兼用するので、溶接工程以外に別途弁体加熱工程を行う必要がなくなる。そのため、弁装置の製造方法において、効率よく全閉時における弁座と弁体との間のシール性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示の弁装置の製造方法によれば、全閉時における弁座と弁体との間のシール性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態のEGRバルブ装置の全体図である。
図2】EGRバルブ装置の製造方法において、シャフトをセットする様子を示す図である。
図3】EGRバルブ装置の製造方法において、バルブをセットする様子を示す図である。
図4】EGRバルブ装置の製造方法において、アース治具をセットする様子を示す図である。
図5】EGRバルブ装置の製造方法において、バルブとシャフトとを溶接し、かつ、バルブを押圧する様子を示す図である。
図6】シートの形状がバルブの形状に馴染む前の状態を示す図であって、シートとバルブとシャフトの断面を示すイメージ図である。
図7】シートの形状がバルブの形状に馴染む前の状態を示す図であって、シート単体をその下面から見たイメージ図である。
図8】シートの形状がバルブの形状に馴染んだ後の状態を示す図であって、シートとバルブとシャフトの断面を示すイメージ図である。
図9】シートの形状がバルブの形状に馴染んだ後の状態を示す図であって、シート単体をその下面から見たイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の弁装置および弁装置の製造方法の実施形態について説明する。以下の説明では、弁装置の一例としてEGRバルブ装置1について説明する。
【0018】
<EGRバルブの概要説明>
まず、EGRバルブ装置1の概要について説明する。EGRバルブ装置1は、エンジン(不図示)から排気通路(不図示)へ排出される排気の一部をEGRガスとしてエンジンへ還元するために吸気通路(不図示)へ流すEGR通路(不図示)に設けられる。そして、EGRバルブ装置1は、EGR通路におけるEGRガスの流量を調節するために使用される。
【0019】
図1に示すように、EGRバルブ装置1は、ポペット式のバルブ構造を有し、EGRガスの流路2を備えるハウジング3と、シート4と、バルブ5と、シャフト6と、駆動部7と、シール部材8を有する。なお、図1では、駆動部7以外を断面図により示す。
【0020】
シート4は、環状に形成され、ハウジング3の流路2の内部に設けられている。シート4は、図1に示す例ではハウジング3と別体であってハウジング3に取り付けられているが、これに限定されず、ハウジング3と一体に設けられていてもよい。なお、シート4は、本開示の「弁座」の一例である。
【0021】
バルブ5は、環状(外形が略傘形状)に形成され、流路2の内部にてシャフト6の一端部に溶接されるようにして設けられている。バルブ5は、シート4の下側にて、シート4に対して当接および離間する。なお、バルブ5は、本開示の「弁体」の一例である。
【0022】
シャフト6は、軸状に形成され、シート4の中心軸と平行に配置されるようにして、ハウジング3の内部に挿入されている。シャフト6は、その軸方向について、一端部にバルブ5が溶接され、他端部(不図示)に駆動部7が接続されている。また、シャフト6は、不図示の軸受により、軸方向に移動可能に支持されている。なお、シャフト6は、本開示の「弁軸」の一例である。
【0023】
駆動部7は、例えばモータにより構成されており、シャフト6の他端部に接続し、シャフト6を当該シャフト6の軸方向(図1の上下方向)にバルブ5と共に移動させる。シール部材8は、ハウジング3とシャフト6との間を封止(シール)している。
【0024】
このような構成のEGRバルブ装置1は、駆動部7によりシャフト6をバルブ5と共にシャフト6の軸方向に移動させて、バルブ5をシート4に対し当接および離間させることにより、流路2を開閉する。また、EGRバルブ装置1は、駆動部7によりシャフト6とバルブ5を移動させる量を調整することにより、シート4とバルブ5との間の開口面積(開度)を変化させて、流路2におけるEGRガスの流量を調節する。
【0025】
<全閉時におけるシートとバルブとの間のシール性を向上させるための手法について>
本実施形態では、シート4は樹脂により形成されている。そして、このようにシート4が樹脂で形成されている場合には、シート4の成形後に樹脂の収縮などが生じ易い。そのため、シート4の寸法精度、特に、シート4におけるバルブ5と当接するシール部の寸法精度(例えば、真円度や傾きなどの精度)が低下するおそれがある。そうすると、シート4にバルブ5が当接して流路2を閉じる全閉時において、シート4とバルブ5との間に隙間が生じて、シート4とバルブ5との間のシール性が低下するおそれがある。
【0026】
そこで、シート4を樹脂により成形した後に加工を行って寸法精度を向上させることが考えられるが、シート4を形成する樹脂にガラス繊維が織り込まれている場合には、加工によりガラス繊維がシート4の表面に露出するため耐摩耗性が低下してしまうおそれがある。
【0027】
これに対し、本実施形態では、EGRバルブ装置1の製造方法において、以下のような手法を用いて、全閉時におけるシート4とバルブ5との間のシール性を向上させる。
【0028】
(第1実施例)
まず、第1実施例について説明する。本実施例では、シート4は樹脂(例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド))により形成され、バルブ5は金属(例えば、ステンレス)により形成されている。なお、ハウジング3は、金属(例えば、アルミニウム(ADC12など))、または、樹脂(例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド))により形成されている。また、ハウジング3が樹脂により形成される場合には、シート4はハウジング3と一体に形成されていてもよい。
【0029】
そこで、本実施例では、EGRバルブ装置1の製造方法において、以下のようにしてバルブ5とシャフト6との溶接、および、バルブ5の押圧を行うことにより、全閉時におけるシート4とバルブ5との間のシール性を向上させる。
【0030】
まず、シート4をハウジング3の所定の位置に配置し、かつ、シャフト6を駆動部7に接続した状態で、シャフト6をセットする。このとき、図2に示すように、シャフト6をシート4の内側にあるシート穴4aの内部に挿入するようにして、シャフト6をセットする。
【0031】
次に、バルブ5をセットする。このとき、図3に示すように、シャフト6をバルブ5の内側にある穴5aの内部に挿入し、かつ、バルブ5をシート4に当接させるようにして、バルブ5をセットする。
【0032】
次に、溶接用の治具であるアース治具11をセットする。このとき、図4に示すように、アース治具11をバルブ5におけるシート4とは反対側の面5bに配置するようにして、アース治具11をセットする。これにより、バルブ5は、シート4とアース治具11との間で挟まれるようにして、固定される(クランプされる)。
【0033】
次に、バルブ5とシャフト6との溶接、および、バルブ5の押圧を行う。このとき、図5に示すように、溶接用の電極12を用いて、バルブ5とシャフト6とを溶接するとともに、アース治具11によりバルブ5をシート4に向かって押圧する。このようにして、溶接によりバルブ5を加熱しながら、この加熱されたバルブ5をシート4に向かって押圧する。そして、これにより、全閉時に環状のシート4に対してその周方向の全周に亘ってバルブ5を当接させるようにする。
【0034】
このように、本実施例では、EGRバルブ装置1の製造方法において、バルブ5を加熱する工程(本開示の「弁体加熱工程」の一例)と、加熱されたバルブ5をシート4に押圧する工程(本開示の「加熱弁体押圧工程」の一例)と、を有する。そして、バルブ5を加熱する工程を、バルブ5とシャフト6とを溶接する工程(本開示の「溶接工程」の一例)で兼用している。
【0035】
より詳しくは、本実施例では、まず、バルブ5とシャフト6とを溶接する工程として、シート4にバルブ5を低い圧力で押し当てて(このときの圧力値を例えば20Nとする)、シート4にバルブ5を当接させてバルブ5の位置を安定させた状態で、バルブ5とシャフト6とを溶接する。そして、同時に、または、その後に、加熱されたバルブ5をシート4に押圧する工程として、シート4に向かってさらにバルブ5を高い圧力で押圧する(このときの圧力値を例えば100N(溶接工程における加圧値の5倍)とする)。
【0036】
そして、このようにして、バルブ5をシャフト6に溶接する際の熱を利用しながら、加熱されたバルブ5をシート4に向かって押圧することにより、樹脂製のシート4の形状をバルブ5の形状に馴染ませることができる。なお、一例として、シート4がPPS(融点が約280℃)で形成されている場合には、加熱されたバルブ5の温度を例えば200℃にする。
【0037】
さらに、図を用いて説明すると、シート4の形状がバルブ5の形状に馴染む前の状態においては、図6図7に示すように、シート4の周方向について、領域A1ではシート4とバルブ5とが当接しているが、領域A2ではシート4とバルブ5とが当接しておらずシート4とバルブ5との間に隙間δが存在している。
【0038】
しかしながら、シート4の形状がバルブ5の形状に馴染んだ後の状態においては、図8図9に示すように、シート4において、その周方向について、バルブ5に馴染んで変位する部分Dが生じて、全領域Aにてシート4の形状がバルブ5の形状に馴染んでシート4とバルブ5とが当接する。これにより、全閉時にて、全周に亘ってバルブ5とシート4との間の隙間を小さくすることができるので、シート4とバルブ5との間のシール性を向上させることができる。
【0039】
また、バルブ5とシャフト6とを溶接する工程を、バルブ5を加熱する工程として兼用しているので、バルブ5とシャフト6とを溶接する工程以外に別途バルブ5を加熱する工程を行う必要がなくなる。そのため、EGRバルブ装置1の製造方法において、効率よく、シート4の形状をバルブ5の形状に馴染ませて、全閉時におけるシート4とバルブ5との間のシール性を向上させることができる。
【0040】
なお、必ずしもバルブ5とシャフト6とを溶接する工程をバルブ5を加熱する工程として兼用しなくてもよく、変形例として、バルブ5をヒータ(不図示)などの熱源で加熱しておき、このようにヒータで加熱されたバルブ5をシート4に押圧するとしてもよい。
【0041】
(第2実施例)
次に、第2実施例について説明するが、第1実施例と異なる点を説明し、第1実施例と共通する点の説明は省略する。
【0042】
本実施例では、EGRバルブ装置1の製造方法において、シート4を加熱する工程(本開示の「弁座加熱工程」の一例)と、加熱されたシート4にバルブ5を押圧する工程(本開示の「弁体押圧工程」の一例)と、を有する。そして、加熱されたシート4にバルブ5を押圧する工程を行うことにより、全閉時に環状のシート4に対してその周方向の全周に亘ってバルブ5を当接させるようにする。
【0043】
このようにして、バルブ5の代わりにシート4をヒータなどの熱源で加熱し、加熱されたシート4にバルブ5を押圧する。なお、一例として、シート4がPPS(融点が約280℃)で形成されている場合には、加熱されたシート4の温度を例えば200℃にする。
【0044】
これにより、樹脂製のシート4の形状をバルブ5の形状に馴染ませることができる。そのため、全閉時にて、全周に亘ってシート4とバルブ5との間の隙間を小さくすることができるので、シート4とバルブ5との間のシール性を向上させることができる。
【0045】
また、バルブ5を加熱する必要がないので、バルブ5を金属以外の材質(例えば、樹脂)により形成することができる。
【0046】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【0047】
上記した実施の形態は、EGRバルブ装置1以外の弁装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 EGRバルブ装置
2 流路
3 ハウジング
4 シート
5 バルブ
6 シャフト
7 駆動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9