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特開2024-29702圧粉体、粉末焼結体およびそれらの製造方法、ならびにそれらの試験データ採集方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029702
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】圧粉体、粉末焼結体およびそれらの製造方法、ならびにそれらの試験データ採集方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/02 20060101AFI20240228BHJP
   B22F 3/093 20060101ALI20240228BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20240228BHJP
   B22F 7/06 20060101ALI20240228BHJP
   B32B 15/16 20060101ALI20240228BHJP
   G01N 1/36 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B22F3/02 T
B22F3/093
B22F3/16
B22F7/06 A
B32B15/16
G01N1/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132105
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000130259
【氏名又は名称】株式会社コベルコ科研
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100206140
【弁理士】
【氏名又は名称】大釜 典子
(72)【発明者】
【氏名】古賀 健治
(72)【発明者】
【氏名】加々尾 慎哉
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼元 和久
【テーマコード(参考)】
2G052
4F100
4K018
【Fターム(参考)】
2G052AA11
2G052AA14
2G052AD15
2G052AD35
2G052AD52
2G052FD12
2G052FD13
2G052GA01
2G052GA09
2G052GA19
2G052GA20
2G052GA35
2G052GA36
4F100AB01B
4F100AB10A
4F100AB17A
4F100AB19A
4F100AB21A
4F100AB24A
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA11A
4F100DE01A
4F100EJ17A
4F100EJ48A
4K018AA02
4K018AA03
4K018AA40
4K018BA01
4K018BA02
4K018BA08
4K018BA10
4K018BA20
4K018BB04
4K018BC12
4K018CA05
4K018CA23
4K018JA02
(57)【要約】
【課題】より多くの相を含む単一試料を形成するのに適した圧粉体10を提供する。
【解決手段】上面視において、1種以上の元素を含む粉体から成る、3つ以上の領域A、B、Cと、少なくとも3つの前記領域が接する1つ以上の交点pと、を含み、隣接する2つの前記領域は、それぞれ、異なる元素の組み合わせを有する前記粉体から構成されている、圧粉体10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面視において、
1種以上の元素を含む粉体から成る、3つ以上の領域と、
少なくとも3つの前記領域が接する1つ以上の交点と、を含み、
隣接する2つの前記領域は、それぞれ、異なる元素の組み合わせを有する前記粉体から構成されている、圧粉体。
【請求項2】
上面視において、
4つ以上の前記領域を含み、
前記交点の少なくとも1つにおいて、少なくとも4つの前記領域が接している、請求項1に記載の圧粉体。
【請求項3】
上面視において、前記領域は、
内側に設けられた3つ以上の第1の領域と、
当該第1の領域の外側に設けられた第2の領域と、を含む、請求項1に記載の圧粉体。
【請求項4】
上面視において3つ以上の前記領域を含む圧粉体層を、上下方向に複数積層した積層構造を有する、請求項1に記載の圧粉体。
【請求項5】
さらに、下面に配置された金属材料を含む、請求項1に記載の圧粉体。
【請求項6】
前記隣接する2つの領域は、当該2つの領域を構成する粉体が混在する遷移領域を介して接している、請求項1に記載の圧粉体。
【請求項7】
外枠と、当該外枠の内部に着脱可能に配置された治具と、を準備する工程であって、
前記治具は、上面視において、前記外枠の前記内部を3つ以上の区画に分ける隔壁を備え、
前記隔壁は、少なくとも3つの前記区画が1つ以上の交点で接するように構成されている、前記外枠と前記治具とを準備する工程と、
前記区画に、1種以上の元素を含む粉体を充填する工程であって、
隣接する2つの前記区画には、それぞれ、異なる元素の組み合わせを有する前記粉体を充填する、充填する工程と、
前記充填する工程より後に、前記治具を前記外枠から取り除く工程と、
前記取り除く工程より後に、前記外枠の前記内部に充填された前記粉体を圧縮成形する工程と、を含む、圧粉体の製造方法。
【請求項8】
前記隔壁は、上面視において、前記外枠の前記内部を4つ以上の区画に分けるように構成されており、
前記隔壁は、前記交点の少なくとも1つにおいて、少なくとも4つの前記区画が接するように配置されている、請求項7に記載の圧粉体の製造方法。
【請求項9】
前記隔壁は、上面視において、前記外枠の前記内部を
内側に設けられた3つ以上の第1の区画と、
当該第1の区画の外側に設けられた第2の区画と、に分けるように構成されている、請求項7に記載の圧粉体の製造方法。
【請求項10】
前記圧縮成形する工程より後に、該圧縮成形する工程で得られた圧粉体層の上に、前記治具を配置する工程を含み、
さらに、
前記充填する工程と、前記取り除く工程と、前記圧縮成形する工程と、を繰り返すことにより、前記圧粉体層の上に、第2の圧粉体層を積層する、請求項7に記載の圧粉体の製造方法。
【請求項11】
前記準備する工程は、
前記外枠の底に金属材料を配置することと、
前記金属材料の上に前記治具を配置することを含む、請求項7に記載の圧粉体の製造方法。
【請求項12】
前記取り除く工程より後で、前記圧縮成形する工程より前に、前記隣接する区画の各々に充填された前記粉体を部分的に混ぜて遷移領域を形成する工程を含み、
前記遷移領域を形成する工程は、
前記外枠に振動を付与すること、および
外力により変形可能な外枠を用い、当該外枠にねじり応力を付与すること、
からなる群から選択される1つ以上を含む、請求項7に記載の圧粉体の製造方法。
【請求項13】
上面視において、
1種以上の元素を含む粉体の焼結体から成る、3つ以上の領域と、
少なくとも3つの前記領域が接する1つ以上の交点と、を含み、
隣接する2つの前記領域は、それぞれ、異なる元素の組み合わせを有する前記粉体の焼結体から構成されている、粉末焼結体。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか1項に記載の圧粉体、および請求項7~12のいずれか1項に記載の製造方法で得られた圧粉体からなる群から選択される1つ以上を焼結する工程を含む、粉末焼結体の製造方法。
【請求項15】
3つ以上の領域と、少なくとも3つの前記領域が接する1つ以上の交点とを含む試料から、試験データを採集する方法であって、
前記試料は、請求項1~6のいずれか1項に記載の圧粉体、請求項7~12のいずれか1項に記載の製造方法で得られた圧粉体、請求項13に記載の粉末焼結体、および請求項14に記載の製造方法で得られた粉末焼結体からなる群から選択される1つ以上であり、
前記3つ以上の領域の各々と、前記1つ以上の交点またはその近傍とから、前記試料の試験データを採取することを含む、試験データ採集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧粉体、粉末焼結体およびそれらの製造方法、ならびにそれらの試験データ採集方法に関し、特に、多元系の圧粉体、粉末焼結体およびそれらの製造方法、ならびにそれらの試験データ採集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、これまでの試作実験・評価、理論、シミュレーションにデータサイエンスを組み合わせるマテリアルズ・インフォマティクス(Materials Informatics, MI)技術が注目されている。マテリアルズ・インフォマティクスとは、機械学習を用いて効率的に材料探索する材料開発支援技術である。材料開発にMIを適用するためには、大量の材料データが必要となるが、多種多様な材料を個別に作製して試験データを採集することは非常に手間がかかるため、MIの適用を困難にする原因となり得る。そこで、MIの適用を容易にするために、効率的に材料データを取得するための実験方法が検討されている。その1つとして、機械学習と親和性が高いコンビナトリアル実験が注目されている。コンビナトリアルとは、2元系、3元系の原料をさまざまな比率で混合し、評価した後で、その特性、効果の優れたものに関して組成を同定するものである。1つのサンプル内で組成の異なる複数の相が形成できるため、短時間で効率的に、必要としている材料情報を収集できるメリットがある。
【0003】
また、異なる機能を有する材料を適材適所で使用し、部材の高機能化、多機能化、ハイブリッド機能化による高付加価値化と低級材料の代替によるコスト削減を図るマルチマテリアル化が進められている。
【0004】
異種金属の接合方法には、従来、溶融・溶接プロセス、固相・接合、ろう接、接着、機械的接合(カシメ、ボルト)等ある。例えば、Al/Fe異材接合のように1対1の接合プロセスでは、各金属の組み合わせで接合材を作成し、形成した固溶体混合相(反応相)を調査する等により、接合状態を確認している。1度に複数相の組み合わせを確認できれば、材料試作・評価コストや研究開発の効率化に繋がる。
【0005】
このような要望に応えるために、以下に説明するようなコンビナトリアル方法が検討されている。
【0006】
特許文献1には、単一試料から複数の材料組成物を製造するためのコンビナトリアル方法が開示されている。この方法では、金属、非金属、金属酸化物及び/又は合金からなる3層以上のバルク拡散多元体であって、上記3層以上の各層がバルク特性挙動を与えるのに有効な厚さを有するバルク拡散多元体を集成して配列物としている。配列物における異種金属、非金属、金属酸化物及び/又は合金の界面部位に相互拡散領域を形成するのに有効な高温及び時間で配列物を加熱し、相互拡散領域を露出させ、単一試料の特性を拡散領域における組成の関数として評価する。
【0007】
特許文献2には、別のコンビナトリアル合成方法が開示されており、耐圧性の反応容器に設けられた複数の凹部に試料を充填し、前記複数の凹部の開口部を蓋部で塞ぐ工程と、固定手段によって前記反応容器と前記蓋部とを固定する工程と、前記凹部上に位置する部分の前記蓋部が前記凹部側に変形するまで加圧するとともに加熱する工程と、を含んでいる。
【0008】
特許文献3には、粉末を成形した傾斜組成体の製造方法が開示されており、成形型内に1個以上の隔壁を設け、該隔壁で分けられた部屋に隣接する部屋と異なる成分の粉末を入れ、各部屋が充填された後、該隔壁を除去し、該成形型に振動を与えて隔壁が在った付近に混合層を生成するようにして成形することを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004-347592号公報
【特許文献2】特開2013-240758号公報
【特許文献3】特開平10-237508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
材料探索の効率化のために、組成、組織等が異なる反応相を、単一試料中にできるだけ多く生じさせることが望ましい。複数の元素を、様々な組み合わせで、かつ、様々な配合比で反応させることにより、多くの反応相を生じさせることができる。
【0011】
特許文献1では、金属のバルク材を複雑な形で積層することで、1つの積層体(バルク拡散多元体)の内部に、2種のバルク材が交わる界面、3種または4種のバルク材が交わる交点を複数生じさせている。このような積層体を加熱することで、積層体の内部に、元素の様々な組み合わせから生じた、複数の反応相を形成できる。
反応相の種類をさらに増加させるためには、元素の様々な組み合わせにおいて、元素の配合比を変更することが有効であるが、金属のバルク材を使用しているため、各元素の配合比を変更することは困難である。
【0012】
これに対して、特許文献3では、試料作製に粉末材料を用いているため、2種類の粉末材料が接触する界面に振動を与えることにより、2種類の粉末材料の配合比をなだらかに変化させた傾斜組成体を製造することができる。このような傾斜組成体を焼結することにより、各元素の様々な配合比で生じる、複数の反応相を形成できる。
しかしながら、特許文献3は、3種類の粉末材料を用いているが、それら3種類の粉末材料が全て接する交点を形成する方法について開示していない。そのため、元素の組み合わせ数が少なくなっており、より多くの反応相を生じさせるために改良の余地がある。
【0013】
特許文献2は、異なる組成の試料を多数作製するものであって、単一試料内に多数の相を形成する方法については示していない。
【0014】
そこで、本発明の一実施形態は、より多くの相を含む単一試料を形成するのに適した成形体(圧粉体)およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の別の実施形態は、より多くの相を含む単一試料(粉末焼結体)およびその製造方法と試験データ採集方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の態様1は、
上面視において、
1種以上の元素を含む粉体から成る、3つ以上の領域と、
少なくとも3つの前記領域が接する1つ以上の交点と、を含み、
隣接する2つの前記領域は、それぞれ、異なる元素の組み合わせを有する前記粉体から構成されている、圧粉体である。
【0016】
本発明の態様2は、
上面視において、
4つ以上の前記領域を含み、
前記交点の少なくとも1つにおいて、少なくとも4つの前記領域が接している、態様1に記載の圧粉体である。
【0017】
本発明の態様3は、
上面視において、前記領域は、
内側に設けられた3つ以上の第1の領域と、
当該第1の領域の外側に設けられた第2の領域と、を含む、態様1または2に記載の圧粉体である。
【0018】
本発明の態様4は、
上面視において3つ以上の前記領域を含む圧粉体層を、上下方向に複数積層した積層構造を有する、態様1~3のいずれか1つに記載の圧粉体である。
【0019】
本発明の態様5は、
さらに、下面に配置された金属材料を含む、態様1~4のいずれか1つに記載の圧粉体である。
【0020】
本発明の態様6は、
前記隣接する2つの領域は、当該2つの領域を構成する粉体が混在する遷移領域を介して接している、態様1~5のいずれか1つに記載の圧粉体である。
【0021】
本発明の態様7は、
外枠と、当該外枠の内部に着脱可能に配置された治具と、を準備する工程であって、
前記治具は、上面視において、前記外枠の前記内部を3つ以上の区画に分ける隔壁を備え、
前記隔壁は、少なくとも3つの前記区画が1つ以上の交点で接するように構成されている、前記外枠と前記治具とを準備する工程と、
前記区画に、1種以上の元素を含む粉体を充填する工程であって、
隣接する2つの前記区画には、それぞれ、異なる元素の組み合わせを有する前記粉体を充填する、充填する工程と、
前記充填する工程より後に、前記治具を前記外枠から取り除く工程と、
前記取り除く工程より後に、前記外枠の前記内部に充填された前記粉体を圧縮成形する工程と、を含む、圧粉体の製造方法である。
【0022】
本発明の態様8は、
前記隔壁は、上面視において、前記外枠の前記内部を4つ以上の区画に分けるように構成されており、
前記隔壁は、前記交点の少なくとも1つにおいて、少なくとも4つの前記区画が接するように配置されている、態様7に記載の圧粉体の製造方法である。
【0023】
本発明の態様9は、
前記隔壁は、上面視において、前記外枠の前記内部を
内側に設けられた3つ以上の第1の区画と、
当該第1の区画の外側に設けられた第2の区画と、に分けるように構成されている、態様7または8に記載の圧粉体の製造方法である。
【0024】
本発明の態様10は、
前記圧縮成形する工程より後に、該圧縮成形する工程で得られた圧粉体層の上に、前記治具を配置する工程を含み、
さらに、
前記充填する工程と、前記取り除く工程と、前記圧縮成形する工程と、を繰り返すことにより、前記圧粉体層の上に、第2の圧粉体層を積層する、態様7~9のいずれか1つに記載の圧粉体の製造方法である。
【0025】
本発明の態様11は、
前記準備する工程は、
前記外枠の底に金属材料を配置することと、
前記金属材料の上に前記治具を配置することを含む、態様7~10のいずれか1つに記載の圧粉体の製造方法である。
【0026】
本発明の態様12は、
前記取り除く工程より後で、前記圧縮成形する工程より前に、前記隣接する区画の各々に充填された前記粉体を部分的に混ぜて遷移領域を形成する工程を含み、
前記遷移領域を形成する工程は、
前記外枠に振動を付与すること、および
外力により変形可能な外枠を用い、当該外枠にねじり応力を付与すること、
からなる群から選択される1つ以上を含む、態様7~11のいずれか1つに記載の圧粉体の製造方法である。
【0027】
本発明の態様13は、
上面視において、
1種以上の元素を含む粉体の焼結体から成る、3つ以上の領域と、
少なくとも3つの前記領域が接する1つ以上の交点と、を含み、
隣接する2つの前記領域は、それぞれ、異なる元素の組み合わせを有する前記粉体の焼結体から構成されている、粉末焼結体である。
【0028】
本発明の態様14は、
態様1~6のいずれか1つに記載の圧粉体、および態様7~12のいずれか1つに記載の製造方法で得られた圧粉体からなる群から選択される1つ以上を焼結する工程を含む、粉末焼結体の製造方法である。
【0029】
本発明の態様15は、
3つ以上の領域と、少なくとも3つの前記領域が接する1つ以上の交点とを含む試料から、試験データを採集する方法であって、
前記試料は、態様1~6のいずれか1項に記載の圧粉体、態様7~12のいずれか1項に記載の製造方法で得られた圧粉体、態様13に記載の粉末焼結体、および態様14に記載の製造方法で得られた粉末焼結体からなる群から選択される1つ以上であり、
前記3つ以上の領域の各々と、前記1つ以上の交点またはその近傍とから、前記試料の試験データを採取することを含む、試験データ採集方法である。
【発明の効果】
【0030】
本発明の実施形態によれば、より多くの相を含む単一試料を形成するのに適した圧粉体およびその製造方法を提供することができる。
本発明の別の実施形態によれば、より多くの相を含む単一試料(粉末焼結体)、およびその製造方法と試験データ採集方法を提供することができる。
これらの実施形態で得られる圧粉体および粉末焼結体を用いることにより、単一試料から多くの材料データを効率的に取得できるため、材料開発へのMIの適用を促進し得ると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、実施形態1に係る圧粉体の一例を示す上面図である。
図2図2は、実施形態1に係る圧粉体の別の例を示す上面図である。
図3図3は、実施形態1に係る圧粉体のさらに別の例を示す上面図である。
図4図4は、実施形態1の変形例1に係る圧粉体を示す上面図である。
図5図5は、実施形態1の変形例2に係る圧粉体を示す上面図である。
図6図6は、実施形態1の変形例3に係る圧粉体を示す上面図である。
図7図7は、実施形態1の変形例4に係る圧粉体を示す上面図である。
図8図8(a)および(b)は、実施形態1の変形例5に係る圧粉体を示す概略斜視図である。
図9図9は、実施形態2に係る圧粉体の製造方法に使用される外枠と治具の一例を示す写真である。
図10図10は、実施形態2に係る圧粉体の製造方法の説明図である。
図11図11は、実施形態3に係る粉末焼結体を示す概略斜視図である。
図12図12は、実施例で作製した圧粉体の写真である。
図13図13(a)は、実施例の粉末焼結体の断面SEM像であり、図13(b)は、比較例の粉末焼結体の断面SEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[実施形態1:圧粉体]
実施形態1では、より多くの相を含む単一試料(粉末焼結体)を形成するのに適した圧粉体について説明する。
【0033】
(圧粉体10)
図1に示す圧粉体10は、上面視において、1種以上の元素を含む粉体から成る3つ以上の領域(図1では3つの領域A、B、C)と、少なくとも3つの領域が接する1つ以上の交点pと、を含む。隣接する2つの領域は、それぞれ、異なる元素の組み合わせを有する粉体から構成されている。
図1では、交点pにおける領域A、B、Cの中心角は等しい(全て120°)が、これらの角度は異なっていてもよい。
【0034】
圧粉体10の領域A~Cはそれぞれ、粉体a~cから成っている。そのため、領域A~Cの各々は、基本的には1種類の粉体から構成される。2つの領域が接する界面bd、bd、bdでは、2種類の粉体が接触している。圧粉体10は、3つの領域A~Cが接する交点pを有し、その交点pにおいて3種類の粉体a~cが接触している。
【0035】
このように、1つの圧粉体10の内部には、粉体a~cのいずれか1つのみからなる3つの領域と、2種類の粉体の異なる組み合わせ(粉体aとb、粉体bとc、粉体aとc)を有する3つの界面と、3種類の粉体の組み合わせ(粉体a~c)を有する1つの交点とを含む。つまり、圧粉体10は、異なる元素の組み合わせを有する7つの部位を含んでいる。
このような圧粉体10を焼結することにより、複数の反応相を含む粉末焼結体を得ることができる。
【0036】
各粉体a~cは、1種以上の元素を含んでいる。言い換えると、各粉体は、単一元素からなる材料(例えば金属など)の粉体でもよく、複数の元素から成る材料(例えば、合金、金属酸化物など)の粉体でもよい。
【0037】
各領域は、基本的には1種類の粉体から構成されるので、領域内では、基本的に同一の元素を含んでいる。
例えば、領域Aを構成する粉体aが、単一の元素Ea1のみを含む場合、領域Aのどの部分においても、元素Ea1が検出されることになる。
【0038】
別の例では、領域Bを構成する粉体bが、3つの元素Eb1、Eb2、Eb3からなる場合、領域Bのどの部分においても、それら3つの元素Eb1、Eb2、Eb3が検出されることになる。
なお、複数の元素を含む粉体の場合、各元素の比率が、領域全体にわたって均一であってもよく、不均一であってもよい。
【0039】
なお、製造段階で、ある粉体(例えば粉体a)から構成される領域内に、他の粉体(例えば粉体c)が少量混入することもあり得るが、粉体cの含有量が少ない場合(例えば10質量%以下)は、実質的に粉体aのみから構成されたものとみなす。
【0040】
互いに隣接する2つの領域とは、それぞれ、異なる元素の組み合わせを有する粉体から構成されている。なお、互いに隣接する2つの領域は、界面を介して接していてもよい。
【0041】
互いに隣接する領域A、Bを例に説明する。
領域Aが、単一の元素Ea1からなる材料の粉体aから構成され、領域Bが、3つの元素Eb1、Eb2、Eb3からなる材料の粉体bから構成されているとする。粉体a、bは、含まれる元素数が異なるため、隣接する領域A、Bを構成する粉体a、bは、それぞれ、異なる元素の組み合わせを有しているといえる。
【0042】
別の例として、互いに隣接する領域B、Cについて説明する。
領域Bが、3つの元素Eb1、Eb2、Eb3からなる材料の粉体bから構成され、領域Cが、3つの元素Ec1、Ec2、Ec3からなる材料の粉体cから構成されるとする。この場合、粉体bに含まれる元素と、粉体cに含まれる元素の少なくとも1つが異なっていれば、隣接する領域B、Cを構成する粉体b、cは、互いに異なる元素の組み合わせを有している。例えば、粉体bの元素Eb1、Eb2が、それぞれ粉体cの元素Ec1、Ec2と同一であっても、粉体bの元素Eb3と粉体cの元素Ec3が異なれば、粉体b、cは、それぞれ、異なる元素の組み合わせを有しているといえる。
【0043】
圧粉体12を構成する領域A、B、Cは、各領域を構成する粉体a、b、cが混在する遷移領域Trを介して接していてもよい(図2)。遷移領域Trは、隣接する2つの領域の間、または3つの領域が交わる交点近傍に配置され得る。
隣接する2つの領域の間に介在する遷移領域Trでは、それら隣接する2つの領域を構成する2種類の粉体が混在している。例えば、領域Aと領域Bの間に介在する遷移領域Trは、領域Aを構成する粉体aと、領域Bを構成する粉体bとが混在している。
交点P近傍の遷移領域Trは、3つの粉体a、b、cが混在している。
【0044】
遷移領域Tr内では、複数の粉体が様々な割合で混合されるため、遷移領域Trを含む圧粉体12を焼結すると、得られる粉末焼結体内の反応相の数を著しく増加することができる。この効果を高めるためには、遷移領域Trにおける複数の粉体の混合状態は不均一であることが好ましい。
遷移領域Trは、後述する変形例1~5にも適用することができる。
【0045】
図3に示すように、圧粉体14は、粉体からなる圧粉体本体142の下面142bに配置された金属材料MLを含んでもよい。金属材料MLを含む圧粉体14を焼結すると、金属材料MLと、粉末焼結体内の反応相との接合性を解析することができる。
なお、図3では、圧粉体本体142と、金属材料MLとの位置関係を分かりやすくするために、圧粉体本体142の下面142bからはみ出すほどに大きい金属材料MLを図示している。実際の圧粉体14では、金属材料MLは、圧粉体本体142の下面142bからはみ出さないような寸法形状を有していることが好ましい。
【0046】
金属材料MLとしては、例えば金属箔、金属板を用いることができる。金属板は、例えば、金属(例えば銅やアルミ合金)の展伸材、鋳造材、鍛造材であってもよい。
金属材料MLは、後述する変形例1~5にも適用することができる。
【0047】
(変形例1:圧粉体20)
図4に示す圧粉体20は、図1に示す圧粉体10の変形例であり、領域の数が異なっている。
圧粉体20は、上面視において、4つ以上の領域(図4では、4つの領域A、B、C、D)を含み、交点pの少なくとも1つにおいて、少なくとも4つの領域が接している。
図4では、交点pにおける領域A、B、C、Dの中心角は等しい(全て90°)が、これらの角度は異なっていてもよい。
【0048】
圧粉体20の領域A~Dはそれぞれ、粉体a~dから成っている。そのため、領域A~Dの各々は、基本的には1種類の粉体から構成される。2つの領域が接する界面bd、bd、bd、bdでは2種類の粉体が接触している。圧粉体20は、4つの領域A~Dが接する交点pを有し、その交点pにおいて、4種類の粉体a~dが接触している。
【0049】
このように、1つの圧粉体20の内部に、粉体a~dのいずれか1つのみからなる4つの領域と、2種類の粉体の異なる組み合わせ(粉体aとb、粉体bとc、粉体cとd、粉体aとd)を有する4つの界面と、4種類の粉体の組み合わせ(粉体a~d)を有する1つの交点とを含む。つまり、圧粉体20は、異なる領域の組み合わせによって生じる「異なる元素の組み合わせ」を有する9つの部位を含んでいる。
このような圧粉体20を焼結することにより、複数の反応相を含む粉末焼結体を得ることができる。
【0050】
(変形例2:圧粉体30)
図5に示す圧粉体30は、図4に示す圧粉体20の変形例であり、圧粉体20の外側に、さらに領域を配置したような構成となっている。
圧粉体30の領域は、上面視において、内側に設けられた3つ以上の第1の領域(図5では4つの第1領域1A、1B、1C、1D)と、第1の領域の外側に設けられた第2の領域(図5では4つの第2領域2A、2B、2C、2D)と、を含んでいる。なお、第2の領域の数は限定されず、1つ以上あればよい。より効率的に複数の反応相を形成するためには、2つ以上の第2の領域を含むことが好ましい。図5のように、第2の領域の数は、第1の領域の数(3つ以上)と同数であってもよい。
【0051】
圧粉体30の第1領域1A~1Dはそれぞれ、粉体a~dから成り、第2領域2A~2Dはそれぞれ、粉体a~dから成っている。そのため、第1領域1A~1Dおよび第2領域2A~2Dの各々は、基本的には1種類の粉体から構成される。2つの領域が接する界面bd、界面bd、界面bd、界面bd、界面bd、界面bdでは、2種類の粉体が接触している。圧粉体30は、4つの領域1A~1Dが接する交点pを有し、その交点pにおいて、4種類の粉体a~dが接触している。
【0052】
圧粉体30はさらに、3つの領域が接する複数の交点を有する。
交点p11とp12では、3種類の粉体a、b、cが接している。ここで、各交点における各領域の角度(中心角)は異なっている。交点p11では、領域1Aと1Bの角度は約90°、領域2Cの角度は約180°である。そのため、交点p11における粉体a、b、cの比率は、粉体c>粉体a=粉体bとなる。一方、交点p12では、領域2Bと2Cの角度は約90°、領域1Aの角度は約180°である。そのため、交点p12における粉体a、b、cの比率は、粉体a>粉体b=粉体cとなる。このように、3つの領域が接する交点において、3つの粉体の組み合わせが同一であっても、各粉体の比率が異なり得る。このように、各粉体の比率が異なると、焼結後の粉末焼結体において、異なる反応相が形成され得る。
【0053】
同様に、交点p31とp32では、3種類の粉体b、c、dが接しており、各接点における各粉体の比率は、交点p31とp32とで異なっている。
交点p41とp42では、3種類の粉体a、b、dが接しており、各接点における各粉体の比率は、交点p41とp42とで異なっている。
交点p51とp52では、3種類の粉体a、c、dが接しており、各接点における各粉体の比率は、交点p51とp52とで異なっている。
【0054】
このように、1つの圧粉体30の内部に、粉体a~dのいずれか1つのみからなる4つの領域と、2種類の粉体の異なる組み合わせ(粉体aとb、粉体aとc、粉体aとd、粉体bとc、粉体bとd、粉体cとd、)を有する6種の界面と、4種類の粉体の組み合わせ(粉体a~d)を有する1つの交点と、3種類の粉体の組み合わせ(粉体aとbとc、粉体aとbとd、粉体aとcとd、粉体bとcとd)を有する4種の交点とを含んでいる。つまり、圧粉体30は、異なる領域の組み合わせによって生じる「異なる元素の組み合わせ」を有する15の部位を含んでいる。
さらに、3種類の粉体の組み合わせを有する4種の交点の各々は、粉体の比率が異なる交点を2つずつ含むため、結果として、条件の異なる8つの交点が存在している。
このような圧粉体30を焼結すると、圧粉体10、20を焼結して得られた粉末焼結体に比べて、さらに多くの相を含む粉末焼結体を得ることができる。
【0055】
(変形例3:圧粉体40)
図6に示す圧粉体40は、図5に示す圧粉体30の変形例であり、内側に設けられた第1の領域と外側に設けた第2の領域の形態が異なっている。
図6に示す圧粉体40の領域は、上面視において、内側に設けられた3つ以上の第1の領域(図6では4つの第1領域1A、1B、1C、1D)と、第1の領域の外側に設けられた第2の領域(図6では4つの第2領域2A、2B、2C、2D)と、を含んでいる。
【0056】
圧粉体40の第1領域1A~1Dはそれぞれ、粉体a~dから成り、第2領域2A~2Dはそれぞれ、粉体a~dから成っている。そのため、第1領域1A~1D、および第2領域2A~2Dの各々は、基本的には1種類の粉体から構成される。2つの領域が接する界面bd、界面bd、界面bd、界面bd、界面bd、界面bdでは、2種類の粉体が接触している。圧粉体40は、4つの領域1A~1Dが接する交点pを有し、その交点pにおいて、4種類の粉体a~dが接触している。
【0057】
圧粉体40はさらに、4つの領域が接する複数の交点p21、p22、p23、p24を有し、それらの交点において、4種類の粉体a~dが接触している。
交点pと、交点p21、p22、p23、p24との相違は、各交点における各領域の角度(中心角)の相違である。
交点pでは、領域1A、1B、1C、1Dの中心角は全て等しい(90°)。そのため、交点pにおける粉体a、b、c、dの比率は全て等しい。
一方、交点p21では、領域1A、1Bの角度は45°であり、領域2C、2Dの角度はそれより小さい。そのため、交点p21における粉体a、b、c、dの比率は、粉体a=粉体b>粉体c=粉体dである。
同様に、交点p22、p23、p24の各々における各領域は、2つの領域の角度は45°であり、残り2つの領域の角度はそれより小さい。そのため、各交点における粉体a、b、c、dの比率は、2つの粉体は多く、残りの2つの粉体は少ない。
【0058】
このように、1つの圧粉体40の内部に、粉体a~dのいずれか1つのみからなる4つの領域と、2種類の粉体の異なる組み合わせ(粉体aとb、粉体aとc、粉体aとd、粉体bとc、粉体bとd、粉体cとd、)を有する6種の界面と、4種類の粉体の組み合わせ(粉体a~d)を有する1種の交点とを含んでいる。つまり、圧粉体40は、異なる領域の組み合わせによって生じる「異なる元素の組み合わせ」を有する11の部位を含んでいる。
さらに、4種類の粉体の組み合わせを有する1種の交点は、粉体の比率が異なる交点を5つずつ含むため、結果として、条件の異なる5つの交点が存在している。
このような圧粉体40を焼結すると、圧粉体10、20を焼結して得られた粉末焼結体に比べて、さらに多くの相を含む粉末焼結体を得ることができる。
【0059】
(変形例4:圧粉体50)
図7に示す圧粉体50は、図6に示す圧粉体40の変形例であり、第1の領域および第2の領域を構成する粉体の配置が異なっている。
【0060】
図7に示す圧粉体50の領域は、上面視において、内側に設けられた3つ以上の第1の領域(図7では4つの第1領域1A、1B、1C、1D)と、第1の領域の外側に設けられた第2の領域(図7では4つの第2領域2A、2B、2C、2D)と、を含んでいる。
【0061】
圧粉体50の第1領域1A~1Dはそれぞれ、粉体a~dから成り、第2領域2A~2Dはそれぞれ、粉体a~dから成っている。そのため、第1領域1A~1Dおよび第2領域2A~2Dの各々は、基本的には1種類の粉体から構成される。なお、第1領域1Aと第2領域2Aは同じ粉体aから形成されるため、それらは区別できない。よって、第1領域1Aと第2領域2Aをまとめて「領域A」と称することがある。
【0062】
2つの領域が接する界面bd、界面bd、界面bd、界面bd、界面bdでは、2種類の粉体が接触している。圧粉体50には、粉体aとdが接する界面bdは存在しない。
圧粉体50は、4つの領域1A~1Dが接する交点pを有し、その交点pにおいて、4種類の粉体a~dが接触している。
圧粉体30さらには、4つの領域が接する複数の交点p13、p33、p34、p53を有する。これらの交点に接している4つの領域のうち、2つが同じ粉体から構成されているため、交点p13、p33、p34、p53では、実質的には3つの粉体が接触している。各交点における各領域の角度(中心角)は異なっている。
【0063】
交点p13では、領域1Bの角度は45°であり、領域Aの角度はそれより大きく、領域2Cの角度はそれより小さい。そのため、交点p13における粉体a、b、cの比率は、粉体a>粉体b>粉体cである。
交点p53では、領域1Cの角度は45°であり、領域Aの角度はそれより大きく、領域2Dの角度はそれより小さい。そのため、交点p53における粉体a、c、dの比率は、粉体a>粉体c>粉体dである。
【0064】
交点p33には、4つの領域1B、2B、2C、1Dが接触している。領域1Bと2Bが同じ粉体bから形成されているため、交点p33では、実質的には3つの粉体b、c、dが接触している。
交点p34には、4つの領域2B、1C、1D、2Dが接触している。領域1Dと2Dが同じ粉体dから形成されているため、交点p34では、実質的には3つの粉体b、c、dが接触している。
【0065】
しかしながら、交点p33とp34では、3つの粉体b、c、dの配置と、比率が異なっている。
交点p33では、領域1B、2Bが、領域1Dにより分離されており、その一方で、交点p34では、領域1D、2Dが、領域1Cにより分離されている。
【0066】
また、交点p33では、領域1Bと領域1Dの角度は45°であり、領域2Bと領域2Cの角度はそれより小さい。また、領域1Bと2Bの合計角度は、45°より大きくなる。そのため、交点p33における粉体b、c、dの比率は、粉体b>粉体d>粉体cとなる。
一方、交点p34では、領域1Cと1Dの角度は45°であり、領域2Bと領域2Dの角度はそれより小さい。また、領域1Dと2Dの合計角度は、45°より大きくなる。そのため、交点p34における粉体b、c、dの比率は、粉体d>粉体c>粉体bとなる。
よって、交点p33とp34は、各粉体の配置と比率が異なっている。
【0067】
このように、1つの圧粉体50の内部に、粉体a~dのいずれか1つのみからなる4つの領域と、2種類の粉体の異なる組み合わせ(粉体aとb、粉体aとc、粉体bとc、粉体bとd、粉体cとd、)を有する5種の界面と、4種類の粉体の組み合わせ(粉体a~d)を有する1つの交点と、3種類の粉体の組み合わせ(粉体aとbとc、粉体aとcとd、粉体bとcとd)を有する3種の交点とを含んでいる。つまり、圧粉体50は、異なる領域の組み合わせによって生じる「異なる元素の組み合わせ」を有する13の部位を含んでいる。
さらに、3種類の粉体の組み合わせを有する3種の交点の1つは、粉体の比率が異なる交点を2つ含むため、結果として、条件の異なる4つの交点が存在している。
このような圧粉体50を焼結すると、圧粉体10、20を焼結して得られた粉末焼結体に比べて、さらに多くの相を含む粉末焼結体を得ることができる。
【0068】
(変形例5:圧粉体60)
変形例1~4では、粉体の組み合わせの数を増やすための具体的な領域の分割方法を例示した。
変形例5は、さらに、厚さ方向(平面と直交する方向)に積層した積層構造を有することにより、粉体の組み合わせの数を増やしている。
【0069】
圧粉体60は、複数の層(図8(a)、(b)では2つの層61、62)を上下方向に積層して構成されている。それぞれの層は、上面視において3つ以上の領域を含んでいる(図8(a)に示すように、層61は8つの領域A~Hを有し、層62は8つの領域α~θを有している)。
なお、領域A~Hおよび領域α~θの各々を形成する粉体には、上述した粉体a~dを用いてもよく、さらに別の粉体を用いてもよい。各領域を構成する粉体の配置方法は任意であるが、好ましくは、各層においても粉体の組み合わせの数が多くなるように配置する。例えば、層61は、変形例3(図6)の圧粉体40と同様に粉体を配置し、層62は、変形例4(図7)の圧粉体50と同様に粉体を配置してもよい。
【0070】
図8(a)に示すように、上面視における層61と層62の領域の形状は、同一であってもよく、異なっていてもよい。層61と層62の領域の形状が同一の場合、下側の層62に対して、上側の層61を軸Xの回りに所定の角度(例えば45°)で回転させて、層62の領域の形状と、層61の領域の形状がずれた状態で積層されることが好ましい。これにより、層61の下面と層62の上面との界面に、より多くの粉体の組み合わせを生じることができる。
【0071】
(その他)
実施形態1において、図面を参照しながら説明した圧粉体では、各領域の形状は、円形、三角形、四角形で規定されているが、これに限定されず、様々な形状とすることができる。
上面視の外形を円状とし、円の内側に多角形を形成し、多角形の内部を、中点を中心に分割すると、複数の領域が接する交点を増やすことができる。よって、粉体の組み合わせ数を増加することに効果的である。円の内側の多角形は、三角形、四角形、五角形など、角数を増やすことで、N角形(2n-2)の境界、および交点を増やすことが可能である。領域分割に関しては、ドロネー三角形分割、ボロノイ分割を活用しても良い。
また、上面視の圧粉体の外形を、円形以外の形状にしてもよい。
【0072】
このような多様な領域分割と、各領域を構成する粉体の配置とを組み合わせた圧粉体とすることにより、多様な相を含む粉末焼結体を製造できる。
【0073】
[実施形態2:圧粉体の製造方法]
実施形態2では、実施形態1で説明した圧粉体を製造する方法について説明する。
圧粉体の製造方法は、
外枠と、当該外枠の内部に着脱可能に配置された治具と、を準備する工程であって、
前記治具は、上面視において、前記外枠の前記内部を3つ以上の区画に分ける隔壁を備え、
前記隔壁は、少なくとも3つの前記区画が1つ以上の交点で接するように配置されている、前記外枠と前記治具とを準備する工程と、
前記区画に、1種以上の元素を含む粉体を充填する工程であって、
同一の区画内には、同一の元素の組み合わせを有する前記粉体を充填し、
隣接する前記区画は、互いに異なる元素の組み合わせを有する前記粉体を、それぞれ充填する、充填する工程と、
前記充填する工程より後に、前記治具を前記外枠から取り除く工程と、
前記取り除く工程より後に、前記外枠の前記内部に充填された前記粉体を圧縮成形する工程と、を含む。
以下に、各工程について詳述する。
【0074】
(外枠210と治具220とを準備する工程)
図9は、外枠210と治具220の一例を示す写真である。
外枠210は、圧粉体の外形を規定するものであり、図9の外枠210を用いると、上面視が円形の圧粉体を製造することができる。
外枠210の内部には、治具220が着脱可能に配置されている。治具220は、上面視において、外枠210の内部を3つ以上の区画Scに分ける隔壁221を備えている。図9の治具220は、図6(変形例3)の圧粉体40および図7(変形例4)の圧粉体50を製造するためのものである。
【0075】
外枠210は、ゴム、黒鉛、金属などの材料から形成できる。外枠210の材料によって、後述する圧縮成型する工程において、冷間等方圧プレス(CIP)、高温等方圧プレス(HIP)、放電プラズマ焼結(SPS)、単純な金型成形などを選定できる。HIP、SPS、温間金型成形では、圧力以外に温度を付与できる。
外枠210の形状は、円筒形状、中空の角柱形状などを選ぶことが可能である。
外枠210の寸法は特に限定されないが、例えば、内径30mmの円筒状の外枠210を用いてもよい。
【0076】
治具220は、樹脂、金属などから形成できる。治具220は、樹脂3Dプリンタ造形、機械加工によって作製することができ、特に、図9に示すような複雑な形状の治具220は、樹脂3Dプリンタ造形が好適である。
【0077】
治具220の隔壁221は、少なくとも3つの区画Scが1つ以上の交点で接するように構成されている。これにより、治具220を用いて、実施形態1で説明した圧粉体を製造することができる。
また、区画Scに粉体を充填しやすさの観点から、上面視における区画Scの最小寸法が5mm以上となるように隔壁221を配置することが好ましい。
【0078】
実施形態1の変形例1(図4)に示すような圧粉体20を製造するためには、例えば、上面視において、外枠210の内部を4つ以上の区画Scに分けるように構成された隔壁221を備えた治具220を用いることができる。隔壁221は、交点の少なくとも1つにおいて、少なくとも4つの前記区画Scが接するように配置されている。
【0079】
実施形態1の変形例2~4(図5~7)に示すような圧粉体20を製造するためには、例えば、上面視において、外枠210の内部を、内側に設けられた3つ以上の第1の区画Sc1と、当該第1の区画Sc1の外側に設けられた第2の区画Sc2と、に分けるように構成された隔壁221を備えた治具220を用いることができる(図9参照)。
【0080】
図3に示すような実施形態1の圧粉体14を製造する場合、前記外枠210の底に金属材料を配置し、当該金属材料の上に、前記治具220を配置することが好ましい。
【0081】
(区画Scに粉体を充填する工程)
前記外枠210と前記治具220とで規定された区画Scに、1種以上の元素を含む粉体を充填する。同一の区画Sc内には、同一の元素の組み合わせを有する前記粉体を充填し、隣接する前記区画Scは、互いに異なる元素の組み合わせを有する前記粉体を、それぞれ充填する。
粉体の粒径は任意であるが、使用する全ての粉体が、同程度の粒径であることが好ましい。また、粉体を充填する際に、粒径が小さ過ぎると充填が難しいため、数十~100μmの粉体であることが好ましい。
【0082】
(治具220を外枠210から取り除く工程)
前記充填する工程の後に、治具220を外枠210から取り除く。これにより、区画Scに充填され、隔壁221で分離されていた粉体同士が接触する。治具220を取り除いた後は、外枠210の内部に粉末が充填された状態になる。
【0083】
(前記粉体を圧縮成形する工程)
外枠210の前記内部に充填された前記粉体を圧縮成形する。これにより、実施形態1で説明した圧粉体が得られる。
【0084】
また、取り除く工程より後で、圧縮成形する工程より前に、前記隣接する区画の各々に充填された前記粉体を部分的に混ぜて遷移領域を形成する工程を含むことができる。これにより、実施形態1の図2に示すように、隣接する領域の粉体が混合された遷移領域Trが形成されて、遷移領域Trを含む圧粉体12を得ることができる。
【0085】
遷移領域Trを形成する具体的な手段としては、前記外枠210に振動を付与する方法がある。
振動付与について再現性を確保するためには、圧電式の超音波発生等の振動子を使用し、垂直方向/多方向から接触させ、投入電力×周波数×加振時間×断続周期など条件を精度良く制御することが望ましい。
【0086】
遷移領域Trを形成する別の手段としては、外力により変形可能な外枠210(例えばゴム製の外枠210)を用い、外枠210にねじり応力を付与する方法がある(図10参照)。振動またはねりじ応力を付与する場合は、外枠210の内部に配置された複数の粉体が完全に混ざらない程度に付与することが重要である。
ねじり応力付与について再現性を確保するには、粉体と接する面に凸凹が存在する回転盤を設け、その押し付け圧力と、回転トルクの制御による応力付与を精度良く制御することが望ましい。例えば、汎用工具のインパクトドライバー様の機器を用いても良い。
【0087】
また、圧縮成形する工程を行った後、得られた圧粉体層の上に前記治具210を配置する工程と、2回目の前記充填する工程と、2回目の前記取り除く工程と、2回目の圧縮成形する工程と、をさらに含んでもよい。これにより、実施形態1の変形例5(図8)に示すような、積層した圧粉体60を製造することができる。
【0088】
[実施形態3:粉末焼結体および製造方法]
実施形態3では、実施形態1に係る圧粉体を焼結して得られた粉末焼結体と、その製造方法について説明する。
【0089】
(粉末焼結体の製造方法)
粉末焼結体の製造方法は、実施形態1に記載された圧粉体、または実施形態2に記載された製造方法で得られた圧粉体を、焼結する工程を含む。
焼結工程は、圧粉体を焼成炉内で加熱して、粉体を焼結させる工程である。焼結工程は、例えば真空雰囲気または不活性ガス雰囲気(例えばN雰囲気)で、加熱温度および加熱温度は、圧粉体に使用した粉体の種類(特に、粉体の融点、拡散速度)に合わせて設定することができる。例えば、加熱温度は50℃~1500℃、加熱時間は1分~72時間で行うことができる。
【0090】
(粉末焼結体)
得られた粉末焼結体は、多くの相を含んでいる。実施形態3では、図1に示す圧粉体10を焼結して得られた粉末焼結体100を例にとって説明する。なお、実施形態1で説明したその他の圧粉体についても、同様に焼結することにより、多くの相を含む単一試料(粉末焼結体)を得ることができる。
【0091】
図11に示す粉末焼結体100は、上面視において、1種以上の元素を含む粉体a、b、cの焼結体から成る、3つ以上の領域(図11では、3つの領域100A、100B、100C)と、少なくとも3つの前記領域100A、100B、100Cが接する1つ以上の交点P100と、を含む。
1つの前記領域は、同一の元素の組み合わせを有する前記粉体の焼結体から構成され、
隣接する前記領域は、互いに異なる元素の組み合わせを有する前記粉体の焼結体から、それぞれ構成されている。
【0092】
領域100A、100B、100Cは、粉体a、b、cの各々を焼結して得られる単一粉体の焼結部が確認でき、隣接する領域の境界には、その境界に隣接する2つの領域に含まれる2種類の粉体の混合物の焼結部が確認でき、そして、交点P100には、3種類の粉体の混合物の焼結部が確認できる。それぞれの焼結部は、異なる粉体から形成されていることから、異なる相を含みうる。
よって、多くの相を含む粉末焼結体100が得られる。
【0093】
実施形態1および変形例1~5で説明した圧粉体を用いて粉末焼結体を形成することにより、さらに多くの相を含む粉末焼結体を得ることができる。
【0094】
(粉末焼結体からの試験データ採集)
このようにして得られた多様な相を含む粉末焼結体から、種々の試験手法で試験データを採集することができる。
本発明の実施形態に係る試験データの採集方法は、3つ以上の領域と、少なくとも3つの前記領域が接する1つ以上の交点とを含む試料(粉末焼結体)から、試験データを採集する方法であり、3つ以上の領域の各々と、1つ以上の交点またはその近傍とから、前記試料の試験データを採取することを含む。
「3つ以上の領域の各々」とは、他の領域を構成する粉末が混在されていない状態で焼結された領域の各々のことを指す。
「交点またはその近傍」とは、交点と、交点の近傍とのことである。交点では、少なくとも3つ以上の領域を構成する粉末が混在している。交点の近傍とは、交点ではないものの、少なくとも3つ以上の領域を構成する粉末が混在している範囲のことを意図している。交点の近傍は、典型的には、交点から半径数mmの範囲のことである。
【0095】
試験データを採取するための分析手段としては、例えば、走査型顕微鏡(SEM)、電子線マイクロアナライザー(EPMA)、オージェ電子分光法(AES)、X線光電子分光法(XPS)による組成分析、X線回折(XRD)による相の結晶構造分析、ナノインデンターによる硬度分析、弾性率測定、電子特性として、走査型トンネル顕微鏡(SPM)による電気伝導率、熱伝導率、仕事関数等の物理解析手法がある。
【0096】
EPMA、XRD、ナノインデンター、SPM等はマッピング分析であり、多くの情報を取得可能である。
硬さ測定で圧痕を付けるなどの位置合わせ、または測定箇所の座標位置データを用いて、同一箇所について、複数の分析方法で試験データを取得することができる。
また、示差走査熱量分析(DSC)、示差熱分析(TG-DTA)による相転移、融点、重量変化のデータを得ることができる。
また、非金属の粉体から形成した粉末焼結体であれば、ラマン分光分析による材料表面の結合状態、応力、結晶性を評価可能である。結合状態に関してはXPS分析による評価も可能である。
【0097】
なお、対象(試料)が粉末焼結体の場合の試験データの採集方法を説明したが、対象(試料)を実施形態1の圧粉体、および実施形態2の製造方法で得られた圧粉体とし、同様の手法を用いて、圧粉体から試験データを採集することもできる。
【実施例0098】
1.実施例のサンプル作製
4種類の粉体(金属粉末および金属混合粉末)を用いて、図4に示すような圧粉体20を作製し、その圧粉体20を焼結して、測定用サンプル(多元系合金)を作製した。
【0099】
1) 粉体の準備
市販の銅粉末(純度:2N、粒径:75μm以下 )、銀粉末(純度:3N、粒径:45μm)、アルミニウム粉末(純度:3N、粒径:20μm以下)、亜鉛粉末(純度:4N、粒径:75μm以下)、錫粉末(純度:3N、粒径:63μm以下)の5種類の粉末を用いて、以下のように配合して、4種類の粉体(粉体1~4)を調製した。粉体1~4は、簡易的に乳鉢、乳棒で混合した。なお、ボールミル等の混合設備を使用してもよい。
・粉体a:錫粉末と亜鉛粉末を、質量比1:1で混合した。
・粉体b:錫粉末と銅粉末を、質量比1:1で混合した。
・粉体c:錫粉末と銀粉末を、質量比1:1で混合した。
・粉体d:錫粉末とアルミニウム粉末を、質量比1:1で混合した。
【0100】
2) 外枠の準備
外枠として、冷間等方圧プレス(CIP)用成形ゴム型(内径φ30mm)を使用した。
【0101】
3) 治具の作製
図4(変形例1)のような圧粉体20を製造できる治具を用いた。治具は、直交する2枚の隔壁を有し、外枠の内部を十字に区切るものを用いた。粉体を充填する際に用いる治具は、樹脂で作製した。
【0102】
4) 圧粉体の作製
外枠の内部に治具を配置し、4つの区画を規定した。それらの区画の各々に、粉体a~dをそれぞれ充填した。治具を引き抜いた後、室温、圧力:490MPaの条件でCIP処理を行い、直径30mm×厚さ2~3mmの圧粉体20を得た。図12に、作製した圧粉体20の写真を示す。
【0103】
5) 粉末焼結体の作製
接合界面反応相を得るために、圧粉体を焼成した。圧粉体をアルミナ製容器に入れて、環状炉により、加熱温度600℃、加熱時間(加熱温度での保持時間)3時間、Nフロー雰囲気で焼成した。これにより、試験分析用サンプル(粉末焼結体)を得た。
【0104】
2.比較例のサンプル作製
実施例で使用した5種類の粉末を同量ずつ計り取り、それら全てを混合した。簡易的に乳鉢、乳棒で混合した。
外枠の内部に混合粉末を充填し、室温、圧力:490MPaの条件でCIP処理を行い、直径30mm×厚さ2~3mmの圧粉体を得た。圧粉体の全体に、5種類の粉末がほぼ均一に分散していた。
実施例と同じ条件で、圧粉体を焼成し、試験分析用サンプル(粉末焼結体)を得た。
【0105】
3.粉末焼結体の組織観察と組成分析
組織観察の前処理として、実施例の粉末焼結体を樹脂埋め込みして研磨し、試料の研磨上面全体をSEMにより組織観察した。上面全体の組織観察を行うことで、異なる相の数、および領域の界面における相の分散状態を確認することが可能である。
同様に、比較例の粉末焼結体についてもSEMにより組織観察した。
【0106】
図13(a)は、実施例の粉末焼結体について、粉体bの焼結体からなる領域の断面SEM像である。なお、粉体a、c、dの各々の焼結体からなる領域(A~D)、隣接する2つの領域の界面(bd、bd、bd、bd)近傍、4つの領域が交わる交点(p)近傍についてもSEM像を取得した。
図13(b)は、比較例の粉末焼結体の断面SEM像である。
それぞれの断面SEM像において、コントラスト(または 二次電子強度)の異なる部分は異なる相であると仮定し、EDX分析を行った。
【0107】
SEM観察装置は、日立ハイテクノロジーズ製 電界放出形走査電子顕微鏡 SU-70(FE-SEM)、加速電圧:15kV、観察方法:2次電子像、反射電子像、観察倍率×200倍、×500倍である。また、多元系合金の組成の確認のためにEDX分析を行っている。分析装置はOXFORD製 X-Max エネルギー分散型X線分析装置(EDX)、加速電圧:10.0kV、分析方法:ポイント分析である。
【0108】
表1は、実施例の粉末焼結体の断面SEM像から、異なる相であると仮定した14カ所について、EDX分析を行った結果である。
表2は、比較例の粉末焼結体の断面SEM像から、異なる相であると仮定した4カ所について、EDX分析を行った結果である。
実施例の粉末焼結体は、SEM像のコントラスト(または 二次電子強度)の違いだけでも14相の合金が認められた。一方、比較例の粉末焼結体はでは、4相のみであった。このように、本発明の実施形態に係る粉末焼結体では、単一試料内に多数の異なる相を含むことが確認できた。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【符号の説明】
【0111】
10、12、14、16、20、30、40、50、60 圧粉体
100 粉末焼結体
210 外枠
220 治具
221 隔壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2022-09-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面視において、
1種以上の元素を含む粉体から成る、3つ以上の領域と、
少なくとも3つの前記領域が接する1つ以上の交点と、を含み、
隣接する2つの前記領域は、それぞれ、異なる元素の組み合わせを有する前記粉体から構成されている、圧粉体。
【請求項2】
上面視において、
4つ以上の前記領域を含み、
前記交点の少なくとも1つにおいて、少なくとも4つの前記領域が接している、請求項1に記載の圧粉体。
【請求項3】
上面視において、前記領域は、
内側に設けられた3つ以上の第1の領域と、
当該第1の領域の外側に設けられた第2の領域と、を含む、請求項1に記載の圧粉体。
【請求項4】
上面視において3つ以上の前記領域を含む圧粉体層を、上下方向に複数積層した積層構造を有する、請求項1に記載の圧粉体。
【請求項5】
さらに、下面に配置された金属材料を含む、請求項1に記載の圧粉体。
【請求項6】
前記隣接する2つの領域は、当該2つの領域を構成する粉体が混在する遷移領域を介して接している、請求項1に記載の圧粉体。
【請求項7】
外枠と、当該外枠の内部に着脱可能に配置された治具と、を準備する工程であって、
前記治具は、上面視において、前記外枠の前記内部を3つ以上の区画に分ける隔壁を備え、
前記隔壁は、少なくとも3つの前記区画が1つ以上の交点で接するように構成されている、前記外枠と前記治具とを準備する工程と、
前記区画に、1種以上の元素を含む粉体を充填する工程であって、
隣接する2つの前記区画には、それぞれ、異なる元素の組み合わせを有する前記粉体を充填する、充填する工程と、
前記充填する工程より後に、前記治具を前記外枠から取り除く工程と、
前記取り除く工程より後に、前記外枠の前記内部に充填された前記粉体を圧縮成形する工程と、を含む、圧粉体の製造方法。
【請求項8】
前記隔壁は、上面視において、前記外枠の前記内部を4つ以上の区画に分けるように構成されており、
前記隔壁は、前記交点の少なくとも1つにおいて、少なくとも4つの前記区画が接するように配置されている、請求項7に記載の圧粉体の製造方法。
【請求項9】
前記隔壁は、上面視において、前記外枠の前記内部を
内側に設けられた3つ以上の第1の区画と、
当該第1の区画の外側に設けられた第2の区画と、に分けるように構成されている、請求項7に記載の圧粉体の製造方法。
【請求項10】
前記圧縮成形する工程より後に、該圧縮成形する工程で得られた圧粉体層の上に、前記治具を配置する工程を含み、
さらに、
前記充填する工程と、前記取り除く工程と、前記圧縮成形する工程と、を繰り返すことにより、前記圧粉体層の上に、第2の圧粉体層を積層する、請求項7に記載の圧粉体の製造方法。
【請求項11】
前記準備する工程は、
前記外枠の底に金属材料を配置することと、
前記金属材料の上に前記治具を配置することを含む、請求項7に記載の圧粉体の製造方法。
【請求項12】
前記取り除く工程より後で、前記圧縮成形する工程より前に、前記隣接する区画の各々に充填された前記粉体を部分的に混ぜて遷移領域を形成する工程を含み、
前記遷移領域を形成する工程は、
前記外枠に振動を付与すること、および
外力により変形可能な外枠を用い、当該外枠にねじり応力を付与すること、
からなる群から選択される1つ以上を含む、請求項7に記載の圧粉体の製造方法。
【請求項13】
上面視において、
1種以上の元素を含む粉体の焼結体から成る、3つ以上の領域と、
少なくとも3つの前記領域が接する1つ以上の交点と、を含み、
隣接する2つの前記領域は、それぞれ、異なる元素の組み合わせを有する前記粉体の焼結体から構成されている、粉末焼結体。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか1項に記載の圧粉体、および請求項7~12のいずれか1項に記載の製造方法で得られた圧粉体からなる群から選択される1つ以上を焼結する工程を含む、粉末焼結体の製造方法。
【請求項15】
3つ以上の領域と、少なくとも3つの前記領域が接する1つ以上の交点とを含む試料から、試験データを採集する方法であって、
前記試料は、請求項1~6のいずれか1項に記載の圧粉体、請求項7~12のいずれか1項に記載の製造方法で得られた圧粉体、および請求項13に記載の粉末焼結体からなる群から選択される1つ以上であり、
前記3つ以上の領域の各々と、前記1つ以上の交点またはその近傍とから、前記試料の試験データを採取することを含む、試験データ採集方法。
【請求項16】
3つ以上の領域と、少なくとも3つの前記領域が接する1つ以上の交点とを含む試料から、試験データを採集する方法であって、
前記試料は、請求項14に記載の製造方法で得られた粉末焼結体であり、
前記3つ以上の領域の各々と、前記1つ以上の交点またはその近傍とから、前記試料の試験データを採取することを含む、試験データ採集方法。