(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029703
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20240228BHJP
B25F 5/02 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B25F5/00 C
B25F5/00 H
B25F5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132109
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(72)【発明者】
【氏名】畠山 健太郎
【テーマコード(参考)】
3C064
【Fターム(参考)】
3C064AA08
3C064AB02
3C064AC02
3C064BA18
3C064BA36
3C064BB52
3C064BB55
3C064BB64
3C064BB71
3C064BB77
3C064CA05
3C064CA08
3C064CA29
3C064CA54
3C064CA80
3C064CA82
3C064CB06
3C064CB11
3C064CB17
3C064CB19
3C064CB68
3C064CB73
3C064CB74
3C064CB75
3C064CB78
3C064CB91
3C064CB92
3C064DA02
3C064DA19
3C064DA29
3C064DA59
3C064DA65
3C064DA77
(57)【要約】
【課題】落下時において好適にモータを制御することが可能な作業機を提供する。
【解決手段】作業機1は、落下して地面に衝突した場合に衝撃に応じてモータ6を減速する落下保護機能を有する。マイコン98は、加速度センサ94の検出値に基づき作業機1の落下による衝撃を検知してモータ6を減速する減速制御を実行する。減速制御は、自然減速より速くモータ6を減速させるものである。減速制御に対して第1方向の加速度が及ぼす影響の度合いである第1感度が、減速制御に対して第2方向の加速度が及ぼす影響の度合いである第2感度よりも高くなるよう構成される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに収容されるモータと、
前記ハウジングに支持され、第1方向の加速度と第2方向の加速度を検出する加速度センサと、
前記第1方向の加速度と前記第2方向の加速度に基づき前記モータを減速する減速制御を実行するコントローラと、を有する作業機であって、
前記第1方向における前記加速度センサから前記作業機の表面端部までの第1距離が、前記第2方向における前記加速度センサから前記作業機の表面端部までの第2距離より大きく、
前記減速制御に対して前記第1方向の加速度が及ぼす影響の度合いである第1感度が、前記減速制御に対して前記第2方向の加速度が及ぼす影響の度合いである第2感度よりも高くなるよう構成した、作業機。
【請求項2】
ハウジングと、
前記ハウジングに収容されるモータと、
前記ハウジングに支持され、第1方向の加速度と第2方向の加速度を出力する加速度センサと、
前記第1方向の加速度と、前記第1方向の加速度に対応した第1係数と、前記第2方向の加速度と、前記第2方向の加速度に対応した第2係数と、を含む関数によって合成値を算出し、前記合成値が閾値を超えた場合に前記モータを減速する減速制御を実行するコントローラと、を有する作業機であって、
前記第1方向の加速度に対応した前記第1係数と、前記第2方向の加速度に対応した第2係数とが異なるように構成された、作業機。
【請求項3】
前記第1方向における前記加速度センサから前記作業機の表面端部までの第1距離が、前記第2方向における前記加速度センサから前記作業機の表面端部までの第2距離より大きく、前記第1係数が第2係数よりも大きい、請求項2に記載の作業機。
【請求項4】
前記第1方向と前記第2方向は反対方向である、請求項1から3のいずれか一項に記載の作業機。
【請求項5】
前記第1方向と前記第2方向は交差する方向である、請求項1から3のいずれか一項に記載の作業機。
【請求項6】
前記ハウジングの前記第1方向側に設けられたギヤケースと、
前記ハウジングの前記第2方向側に設けられた電池パックと、を有する、請求項4に記載の作業機。
【請求項7】
前記ハウジングの前記第1方向側に設けられたギヤケースを有し、
前記第2方向は、前記モータの径方向と平行な方向である、請求項5に記載の作業機。
【請求項8】
前記第1方向における前記作業機の表面端部の材質と、前記第2方向における前記作業機の表面端部の材質が異なり、前記第1係数と第2係数とが異なるように構成されている、請求項2に記載の作業機。
【請求項9】
前記第1方向における前記作業機の表面端部の材質が、前記第2方向における前記作業機の表面端部の材質よりも柔らかく、前記第1係数が第2係数よりも小さい、請求項8に記載の作業機。
【請求項10】
前記コントローラは、前記作業機に取り付けられる部材の種類または状態に応じて前記係数を変更するように構成される、請求項2に記載の作業機。
【請求項11】
ハウジングと、
前記ハウジングに収容されるモータと、
前記ハウジングに支持された加速度センサと、
前記加速度センサの出力に応じて前記モータを減速する制御部と、
を有する作業機であって、
前記作業機が所定の姿勢下で、前後左右上下方向それぞれの方向における前記加速度センサから最も離れた前記ハウジングの表面箇所に前記加速度センサに向かう方向の衝撃が加わった際に、前記制御部が前記モータを減速するために必要となる前記出力の大きさは、前後左右上下方向のうち少なくとも一方向で異なることを特徴とする作業機。
【請求項12】
前記加速度センサは前記ハウジングにける前後方向中心位置よりも後方に位置し、
前記制御部は、前記加速度センサから前方向に最も離れた前記ハウジングの表面箇所に前記加速度センサに向かう方向の衝撃が加わった際に前記モータを減速するために必要となる前記出力の大きさが、前記加速度センサから後方向に最も離れた前記ハウジングの表面箇所に前記加速度センサに向かう方向の衝撃が加わった際に前記モータを減速するために必要となる前記出力よりも小さいように構成される、請求項11に記載の作業機。
【請求項13】
前記ハウジングには作業者が把持可能であり前後方向に延びる把持部が設けられ、
前記加速度センサは前記把持部よりも後方に位置する、請求項12に記載の作業機。
【請求項14】
前記ハウジングの前端部分には金属製のギヤケースが設けられる、請求項13に記載の作業機。
【請求項15】
前記ハウジングの後端部分にはバッテリが設けられる、請求項14に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、作業機としてのディスクグラインダを開示する。作業機においてはモータを駆動状態に維持する、いわゆるオンロック機能を搭載している場合があるが、作業者の手から落下した後もモータの回転駆動が維持されると、加工材等を傷つける恐れがある。そこで、加速度センサの検出値により落下の衝撃を検知してモータを減速させる機能が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機が同じ高さから地面等に落下した場合でも、地面等との衝突箇所の材質や、衝突箇所から加速度センサまでの距離、衝突箇所から加速度センサまで衝撃が伝わる経路の構成など、様々な要因により、加速度センサの検出値は異なってくる。
【0005】
例えば、持ちやすさを踏まえて柔らかくしている把持部と、伝達機構(ギヤ等)を収容する金属製のケースとでは、地面に接触した際の衝撃が大きく異なり、加速度センサの検出値が大きく異なる場合がある。また、衝突箇所から加速度センサまでの距離が大きいと、衝突箇所から加速度センサまで衝撃が伝わる経路での衝撃の減衰量が大きくなり、加速度センサの検出値が小さくなる場合がある。
【0006】
ここで、加速度センサの検出値が小さくなる場合を基準に、落下有無を判断する閾値を小さく設定すると、落下していないにもかかわらず落下と誤判定するリスクが高くなる。
【0007】
したがって、例えば加速度センサの検出値をそのまま単一の閾値と比較して落下の有無を判断する構成では、適切にモータを減速させられない場合があった。
【0008】
なお、上記では落下時においてモータの回転が維持された場合で説明しているが、課題は落下のみに限られない。例えば、作業者の転倒などによって作業機が水平方向に投げ出される場合も想定され、こうした場合でもモータの回転駆動が維持されてしまうと加工材等を傷つける恐れがある。
【0009】
本発明の目的は、好適にモータを制御することが可能な作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様は、作業機である。この作業機は、
ハウジングと、
前記ハウジングに収容されるモータと、
前記ハウジングに支持され、前記作業機が落下して地面に衝突する際に、第1方向の加速度と第2方向の加速度を検出する加速度センサと、
前記第1方向の加速度と前記第2方向の加速度に基づき前記モータを減速する減速制御を実行するコントローラと、を有する作業機であって、
前記第1方向における前記加速度センサから前記作業機の表面端部までの第1距離が、前記第2方向における前記加速度センサから前記作業機の表面端部までの第2距離より大きく、
前記減速制御に対して前記第1方向の加速度が及ぼす影響の度合いである第1感度が、前記減速制御に対して前記第2方向の加速度が及ぼす影響の度合いである第2感度よりも高くなるよう構成したものである。
【0011】
本発明の別の態様は、作業機である。この作業機は、
ハウジングと、
前記ハウジングに収容されるモータと、
前記ハウジングに支持され、前記作業機が落下して地面に衝突する際に、第1方向の加速度と第2方向の加速度を出力する加速度センサと、
前記第1方向の加速度と、前記第1方向の加速度に対応した第1係数と、前記第2方向の加速度と、前記第2方向の加速度に対応した第2係数と、を含む関数によって合成値を算出し、前記合成値が閾値を超えた場合に前記モータを減速する減速制御を実行するコントローラと、を有する作業機であって、
前記第1方向の加速度に対応した前記第1係数と、前記第2方向の加速度に対応した第2係数とが異なるように構成されている。
【0012】
本発明の別の態様は、作業機である。この作業機は、
ハウジングと、
前記ハウジングに収容されるモータと、
前記ハウジングに支持された加速度センサと、
前記加速度センサの出力に応じて前記モータを減速する制御部と、
を有する作業機であって、
前記作業機が所定の姿勢下で、前後左右上下方向それぞれの方向における前記加速度センサから最も離れた前記ハウジングの表面箇所に前記加速度センサに向かう方向の衝撃が加わった際に、前記制御部が前記モータを減速するために必要となる前記出力の大きさは、前後左右上下方向のうち少なくとも一方向で異なる。
【0013】
本発明は「電動作業機」や「電動工具」、「電気機器」等と表現されてもよく、そのように表現されたものも本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、好適にモータを制御することが可能な作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態に係る作業機1の左側面図。
【
図3】作業機1の左側面図であって距離L1~L4を示した図。
【
図4】作業機1の平面図であって距離L1、L2、L5、L6を示した図。
【
図6】作業機1の落下保護制御の第1例を示すフローチャート。
【
図7】作業機1の落下保護制御の第2例を示すフローチャート。
【
図8】作業機1の平面図であって距離L7、L8、L9を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施の形態は、作業機1に関する。作業機1は、グラインダ(ディスクグラインダ)である。
図1及び
図4により、作業機1における互いに直交する前後、上下、左右方向(XYZ軸方向)を定義する。前後方向はモータ軸6a(または把持部3bの延在方向)と平行な方向である。上下方向はスピンドル20の中心軸と平行な方向である。左右方向は、前方を向いた作業者を基準とする。また+Z方向を前方向、-Z方向を後方向、+X方向を下方向、-X方向を上方向、+Y方向を左方向、-Y方向を右方向と定義する。
【0017】
図1、
図2に示すように、作業機1は、作業部(回転工具)としての砥石2を備える。作業機1は、後述のモータ6によって回転駆動される砥石2により、研削作業や切断作業等の所定の作業を実行できる。作業機1は、ハウジング3とギヤケース4とを有する。なお、本願発明におけるハウジングは作業機1の全体を指す。従って、本願発明におけるハウジングには、ハウジング3及びギヤケース4、また砥石2や後述するバッテリ7も含まれる。本願発明におけるハウジングは作業機1の全体を指す言葉であるため、単に作業機と表現しても良い。
【0018】
ハウジング3は、例えば樹脂成形体であり、中心軸が前後方向と略平行な筒形状、例えば円筒形状を成す。ハウジング3は、モータ収容部3aと、把持部3bと、拡径部3cを有する。モータ収容部3aはモータ6を収容する部分である。把持部3bはモータ収容部3aの後方に接続された部分である。把持部3bは、モータ収容部3aよりも細径である。また、把持部3bは握り軸が前後方向に沿って延在するように構成されている。すなわち、把持部3bは前後方向に延びている。把持部3bの外表面にはエラストマ(軟質性の樹脂)が設けられている。把持部3bのエラストマは高い摩擦係数を有しており、作業者の手が滑りにくくなる。また、把持部3bのエラストマは柔らかいので、握り易さを向上させることができる。拡径部3cは把持部3bの後方に接続された部分である。拡径部3cの外表面には、エラストマ(軟質性の樹脂)が設けられている。拡径部3cは径方向に張り出すような形状となっており、作業時や運搬時などにおいて、拡径部3cが加工材や壁、作業台等と接触し、これらを破損または変形させてしまう恐れがあるが、拡径部3cにエラストマを設けることでこれを抑制している。なお、拡径部3cのエラストマによって拡径部3cの破損、変形も抑制されている。また、拡径部3cはバッテリ保持部3dを有している。すなわちハウジング3の後端部には、作業機1の電源となるバッテリ7が着脱可能に装着されるバッテリ保持部3dが設けられる。従って、作業機1の後端部分にはバッテリ7が配置される。
【0019】
ギヤケース4は、例えばアルミ合金等の金属製であり、ハウジング3の前端部にネジ止め等により取り付け固定される。すなわち、作業機1の前端部分にはギヤケース4が配置される。作業機1は、ギヤケース4の下部開口を塞ぐ蓋部材としてのパッキングランド11を有する。
【0020】
作業機1は、ハウジング3(モータ収容部3a)内にモータ6を有する。モータ6は、例えば4極6スロット構成のインナーロータ型のブラシレスモータである。モータ軸6aの前端部はギヤケース4内に位置し、当該前端部に第1ベベルギヤ21が設けられる。
【0021】
モータ軸6aには、モータ6等の冷却用のファン8が設けられる。ファン8は、ハウジング3内においてモータ6の本体(モータ6のうちモータ軸6aを除く部分)の前方に位置する。
【0022】
作業機1は、ハウジング3内におけるモータ6の後方(把持部3bの内部)に、スイッチ5を有する。スイッチ5のオン状態は、
図5のマイコン98に対してモータ6の駆動を指示する状態である。スイッチ5のオフ状態は、マイコン98に対してモータ6の停止を指示する状態である。
【0023】
作業機1は、ハウジング3(モータ収容部3a)の左側面の前部に、ユーザがスイッチ5のオンオフを操作、すなわちマイコン98にモータ6の駆動・停止を指示するための操作部10を有する。作業機1は、ハウジング3内に、操作部10の前後方向の操作に連動して前後方向に動くスライドバー17を有する。なお、断面位置の関係から前後方向に延びるスライドバー17の後端部分のみが図示されている。
【0024】
ユーザが操作部10を前方に移動させる駆動操作を行うと、それに連動してスライドバー17が前方に移動し、スライドバー17によりスイッチ5のボタン5aが押され、スイッチ5がターンオンする(オン状態となる)。
【0025】
ユーザが操作部10を後方に移動させる停止操作を行うと、それに連動してスライドバー17が後方に移動し、スライドバー17がボタン5aを押さなくなり、スイッチ5がターンオフする(オフ状態となる)。
【0026】
図1に示すように、ハウジング3は、左側面の前部に係止凸部18を有する。操作部10を係止凸部18に引っ掛けることで、操作部10を前方に移動した状態に係止し、操作部10から手を離してもスイッチ5をオン状態に維持でき、モータ6を駆動状態に維持できる。
【0027】
図2に示すように、作業機1は、ハウジング3内の後端部に、制御基板9を有する。制御基板9は、ハウジング3に支持され、モータ6の駆動制御に必要な素子、例えば
図5に示すインバータ回路82やマイコン98等を搭載する。また、制御基板9は、作業機1が落下して地面に衝突する際の加速度を検出する加速度センサ94を搭載する。加速度センサ94は、三軸加速度センサであり、直交三軸であるXYZ軸方向の加速度を検出する。加速度センサ94はハウジング3に支持される。加速度センサ94の検出軸であるX軸、Y軸、Z軸は、それぞれ作業機1における上下、左右、前後、の方向に沿うようになっている。
【0028】
作業機1は、ハウジング3の後部上面に速度設定ダイヤル19を有する。ユーザは、速度設定ダイヤル19の操作によりモータ6の設定回転数(設定回転速度)を切り替えることができる。
【0029】
ギヤケース4及びパッキングランド11は、スピンドル20を回転自在に保持する。ギヤケース4には、スピンドル20の上端部を回転自在に支持するニードルベアリング12が設けられる。パッキングランド11は、スピンドル20の中間部を回転自在に支持するボールベアリング13を保持する。
【0030】
スピンドル20の中心軸は、モータ軸6aと直交する。スピンドル20の一端は、パッキングランド11を貫通して外部に突出する。ギヤケース4内に位置するスピンドル20の上部には、第2ベベルギヤ22が設けられる(取り付けられる)。第2ベベルギヤ22は、第1ベベルギヤ21と噛み合う。
【0031】
モータ6の回転は、第1ベベルギヤ21及び第2ベベルギヤ22によって回転方向が90度変換されるとともに回転速度が減速されてスピンドル20に伝達される。すなわち、スピンドル20はモータ6によって回転駆動される。
【0032】
砥石2は、スピンドル20に固定され、スピンドル20と一体的に回転する。ホイルガード14は、パッキングランド11に取り付けられて砥石2の約半分を覆い、研削作業時に発生する切削粉や火花等の飛散を防止する。
【0033】
ユーザが操作部10を操作すると、バッテリ7からモータ6に電力が供給され、モータ軸6aが回転し、第1ベベルギヤ21及び第2ベベルギヤ22を介してスピンドル20が回転し、スピンドル20に固定されている砥石2が回転する。
【0034】
図3~
図4は、作業機1における距離L1~L6を示す。
【0035】
距離L1は、前方向(+Z方向)における加速度センサ94から作業機1の表面端部までの距離である。本実施の形態では、前方向(+Z方向)における作業機1の表面端部は砥石2の前端部分となる。距離L2は、後方向(-Z方向)における加速度センサ94から作業機1の表面端部までの距離である。本実施の形態では、後方向(-Z方向)における作業機1の表面端部はバッテリ7の後端部分である。
【0036】
距離L3は、上方向(-X方向)における加速度センサ94から作業機1の表面端部までの距離である。本実施の形態では、上方向(-X方向)における作業機1の表面端部はバッテリ7の上端部分である。距離L4は、下方向(+X方向)における加速度センサ94から作業機1の表面端部までの距離である。本実施の形態では、下方向(+X方向)における作業機1の表面端部はホイルガード14の下端部分である。
【0037】
距離L5は、右方向(-Y方向)における加速度センサ94から作業機1の表面端部までの距離である。距離L6は、左方向(+Y方向)における加速度センサ94から作業機1の表面端部までの距離である。
【0038】
距離L1~L6の大小関係は、
L1>L2>L4>L3≒L5=L6
となっている。ここで、第1距離と、第1距離より小さい第2距離と、を定義する。
【0039】
前方向(+Z方向)を第1方向とした場合、すなわち距離L1を第1距離とした場合、前方向(+Z方向)以外の5つの方向がそれぞれ第2方向となり得る。すなわち距離L2~L6がそれぞれ第2距離となり得る。
【0040】
後方向(-Z方向)を第1方向とした場合、すなわち距離L2を第1距離とした場合、上下左右の各方向がそれぞれ第2方向となり得る。すなわち距離L3~L6が第2距離となり得る。
【0041】
下方向(+X方向)を第1方向とした場合、すなわち距離L4を第1距離とした場合、上、左右の各方向がそれぞれ第2方向となり得る。すなわち距離L3、L5、L6が第2距離となり得る。
【0042】
図5は、作業機1の回路ブロック図である。作業機1は、制御回路部80、インバータ回路82、及び磁気センサ84を含む。制御回路部80は、制御信号出力回路83、回転子位置検出回路85、温度検出回路86、降圧回路87、制御系電源回路88、電池電圧検出回路89、過放電検出回路90、電流検出回路91、通信回路92、電池温度検出回路93、加速度センサ94、スイッチ検出回路95、設定回転数検出回路96、及び制御部としてのマイコン98(マイクロコントローラ)を含む。
【0043】
インバータ回路82は、三相ブリッジ接続された半導体スイッチング素子Q1~Q6を含む。インバータ回路82は、バッテリ7が出力する直流電力をモータ6の駆動用の交流電力に変換し、モータ6に供給する。制御信号出力回路83は、マイコン98の制御に従い、スイッチング素子Q1~Q6の各ゲートに駆動信号、例えばPWM(Pulse Width Modulation)信号を印加する。
【0044】
磁気センサ84は、例えばホールICであり、モータ6の回転方向に60°間隔で設けられる。磁気センサ84は、モータ6の回転子の発生する磁界を検出し、回転子位置検出回路85に送信する。回転子位置検出回路85は、磁気センサ84からの信号によりモータ6の回転子位置を検出し、マイコン98に送信する。磁気センサ84及び回転子位置検出回路85は、回転検出部を構成する。温度検出回路86は、スイッチング素子Q1~Q6の温度を検出し、マイコン98に送信する。
【0045】
降圧回路87は、バッテリ7の出力電圧を降圧し、制御系電源回路88に供給する。制御系電源回路88は、降圧回路87の出力電圧をマイコン98等の電源電圧に変換し、マイコン98等に供給する。電池電圧検出回路89は、バッテリ7の出力電圧を検出し、マイコン98に送信する。
【0046】
過放電検出回路90は、バッテリ7からの過放電報知信号を検出し、マイコン98に送信する。電流検出回路91は、モータ6に流れる電流(モータ電流)の経路に設けられた抵抗Rの電圧によりモータ電流を検出し、マイコン98に送信する。抵抗R及び電流検出回路91は、電流検出部を構成する。通信回路92は、バッテリ7とマイコン98との間の通信用の回路である。電池温度検出回路93は、バッテリ7からの温度報知信号を検出し、マイコン98に送信する。
【0047】
加速度センサ94は、作業機1に加わる加速度を検出し、マイコン98に送信する。スイッチ検出回路95は、操作部10の操作すなわちスイッチ5のオンオフを検出し、マイコン98に送信する。設定回転数検出回路96は、速度設定ダイヤル19による設定回転数を検出し、マイコン98に送信する。
【0048】
マイコン98は、操作部10の操作すなわちスイッチ5のオンオフ、及び速度設定ダイヤル19による設定回転数に応じて、制御信号出力回路83を介してインバータ回路82を制御、例えばPWM制御し、モータ6の駆動を制御するよう構成される。マイコン98は、PWM制御のデューティ(以下「デューティ」)の変更により、モータ6に印加する印加電圧(以下「モータ印加電圧」)の実効値を変更できる。マイコン98は、モータ印加電圧の実効値の制御により、モータ6の出力を変更できる。
【0049】
作業機1は、落下して地面に衝突した場合に衝撃に応じてモータ6を減速する落下保護機能に特徴を有する。減速は停止も含む。
【0050】
マイコン98は、加速度センサ94の検出値に基づき落下等によって作業機1に加わる衝撃を検知してモータ6を減速する減速制御を実行するコントローラである。減速制御は、好ましくは自然減速より早くモータ6を減速させるものである。本実施の形態においては、減速制御はブレーキ制御である。本実施の形態におけるブレーキ制御は、インバータ回路82を制御することで行う周知の短絡ブレーキである。なお、モータ6を減速させる手段は他のものでもよい。
【0051】
本実施の形態では、減速制御に対して第1方向の加速度が及ぼす影響の度合いである第1感度が、減速制御に対して第2方向の加速度が及ぼす影響の度合いである第2感度よりも高くなるよう構成される。すなわち、第1方向の衝撃と、第1方向とは異なる方向となる第2方向の衝撃とでは、減速制御を実行する際の条件(減速制御が実行されうる最も小さな衝撃)が異なるように構成されている。以下、具体例を示す。
【0052】
まず、減速制御を考慮するために必要となる本実施の形態の構造的な特徴を説明する。本実施の形態における作業機1(ディスクグラインダ)において、加速度センサ94は拡径部3cの内部に位置しており、すなわち作業機1における(前後方向中心位置よりも)後方の部分に位置する。従って、加速度センサ94は作業機1の前端から遠く、後端から近い位置にある。加速度センサ94が検知する衝撃の大きさはさまざまな要因があるものの、本実施の形態においては、衝撃が加わる箇所から加速度センサ94までの距離が検知結果(衝撃時に検出される加速度の値)に大きく影響する。本実施の形態では、例えば同じ高さから落下させた場合でも、加速度センサ94から衝撃箇所までの距離が遠いほど検出される衝撃(加速度)が小さくなる傾向にある。具体的には、ギヤケース4を下にした状態で落下させた場合と、バッテリ7を下にした状態とでは、同じ高さからの落下衝突(同じ大きさとなる加速度センサ94に向かう方向の衝撃)でも前者の方が加速度センサ94の検出結果が小さくなる傾向にある。また、把持部3bや拡径部3cの外表面にはエラストマが設けられているため、この部分に加わる衝撃も減衰される。これらの特徴を含んだ様々な要素を踏まえて設計された本願発明の制御(第1例、第2例)を、フローチャートを用いて説明する。詳細は後述するが、減速制御を実行するか否かは加速度センサ94が検出する3方向(3軸の方向)の加速度を用いた計算値と閾値を比較することで判断されるところ、本願発明(第1例、第2例)では計算値か閾値の少なくとも一方を、衝撃の方向(衝撃が加わる箇所)に応じて補正することで本願課題を解決している。
【0053】
図6は、作業機1の落下保護制御の第1例を示すフローチャートである。このフローチャートは、スイッチ5がオンでモータ6が駆動した状態からスタートする。マイコン98は、加速度センサ94の検出値、すなわちX方向加速度ax、Y方向加速度ay、Z方向加速度azを取得する(S1)。
【0054】
マイコン98は、ax≦0の場合(S3のyes)、axにkx×axを代入する(S5)。kxは、-X方向の加速度に対応して予め設定(記憶)された定数(係数)である。
【0055】
マイコン98は、ax≦0でない場合(S3のno)、axにkx’×axを代入する(S7)。kx’は、+X方向の加速度に対応して予め設定(記憶)された定数(係数)である。
【0056】
マイコン98は、ay≦0の場合(S9のyes)、ayにky×ayを代入する(S11)。kyは、-Y方向の加速度に対応して予め設定(記憶)された定数(係数)である。
【0057】
マイコン98は、ay≦0でない場合(S9のno)、ayにky’×ayを代入する(S13)。ky’は、+Y方向の加速度に対応して予め設定(記憶)された定数(係数)である。
【0058】
マイコン98は、az≦0の場合(S15のyes)、azにkz×azを代入する(S17)。kzは、-Z方向の加速度に対応して予め設定(記憶)された定数(係数)である。
【0059】
マイコン98は、az≦0でない場合(S15のno)、azにkz’×azを代入する(S19)。kz’は、+Z方向の加速度に対応して予め設定(記憶)された定数(係数)である。
【0060】
マイコン98は、三軸の合成加速度のスカラー値a、すなわちax、ay、azの二乗和の平方根を計算する(S21)。スカラー値aは合成値に対応し、二乗和の平方根は関数に対応する。マイコン98は、三軸の合成加速度のスカラー値aが落下保護機能作動閾値alim以下の場合(S23のno)、S1に戻る。マイコン98は、三軸の合成加速度のスカラー値aが落下保護機能作動閾値alimよりも大きい場合(S23のyes)、作業機1が落下したと判断し、モータ6を停止させる(S25)。ここで、停止に替えて、停止させない減速としてもよい。
【0061】
各定数(各係数)の大小関係は、
kz’>kz>kx’>kx≒ky=ky’
とする。これは、上記した距離の大小関係L1>L2>L4>L3≒L5=L6に基づくものである。すなわち、加速度センサ94からの距離が近い場合と比較して、遠い場合には各定数(係数)を大きくしている。詳細は後述するが、各定数が大きいほど、加速度センサ94が検出した加速度が小さくても減速制御を実行できるようになる。
【0062】
kz’>kzとすることは、減速制御に対して+Z方向の加速度が及ぼす影響の度合いである+Z方向感度を、減速制御に対して-Z方向の加速度が及ぼす影響の度合いである-Z方向感度よりも高くすることである。具体的には、ギヤケース4を下にした状態で作業機1を落下させて衝突した際の感度を、バッテリ7を下にした状態で落下させた際の感度よりも高くしている。換言すれば、作業機1を+Z方向に移動させて衝突させた際は、-Z方向に移動させて衝突させるときと比較して減速制御の感度を高くしている。従って、+Z方向での落下時には、-Z方向での落下時と比較して、加速度センサ94が検出する加速度が小さくても(加速度センサ94に伝達される衝撃が弱くても)減速制御が実行される。
【0063】
kz>kx’とすることは、-Z方向感度を、減速制御に対して+X方向の加速度が及ぼす影響の度合いである+X方向感度よりも高くすることである。具体的には、ギヤケース4を下にした状態で作業機1を落下させて衝突した際の感度を、作業機1の上側部分(スピンドル20の突出方向とは反対側の部分)を下に向けた状態で落下させた際の感度よりも高くしている。
【0064】
kx’>kxとすることは、+X方向感度を、減速制御に対して-X方向の加速度が及ぼす影響の度合いである-X方向感度よりも高くすることである。具体的には、作業機1の上側部分を下にして落下させて衝突した際の感度を、作業機1の下側部分(スピンドル20の突出方向とは反対側の面)を下に向けた状態で落下させた際の感度よりも高くしている。これは、拡径部3cに設けられたエラストマによって検出される加速度が小さくなることを考慮した結果である。
【0065】
kx≒ky=ky’とすることは、-X方向感度を、減速制御に対して-Y方向の加速度が及ぼす影響の度合いである-Y方向感度、及び、減速制御に対して+Y方向の加速度が及ぼす影響の度合いである+Y方向感度と同等にすることである。以上のように、第1例は、検出される加速度に係数をかけることで補正し、衝撃(落下)の方向に応じて適切な減速制御を実行するものである。
【0066】
図7は、作業機1の落下保護制御の第2例を示すフローチャートである。このフローチャートは、スイッチ5がオンでモータ6が駆動した状態からスタートする。マイコン98は、加速度センサ94の検出値、すなわちX方向加速度ax、Y方向加速度ay、Z方向加速度azを取得する(S31)。
【0067】
マイコン98は、+X方向、-X方向、+Y方向、-Y方向、+Z方向、-Z方向の各加速度に対応する落下保護機能作動閾値alimx、alimx’、alimy、alimy’、alimz、alimz’を予め記憶している。
【0068】
マイコン98は、alimx’≦ax≦alimxの場合(S33のyes)、alimy’≦ay≦alimyの場合(S35のyes)、及び、alimz’≦az≦alimzの場合(S37のyes)、S31に戻る。
【0069】
マイコン98は、alimx’≦ax≦alimxでない場合(S33のno)、alimy’≦ay≦alimyでない場合(S35のno)、又は、alimz’≦az≦alimzでない場合(S37のno)、作業機1が落下したと判断し、モータ6を停止させる(S39)。ここで、停止に替えて、停止させない減速(回転速度を落とす制御)としてもよい。
【0070】
各々の落下保護機能作動閾値の絶対値の大小関係は、
alimz<alimz’<alimx<alimx’≒alimy’=alimy
とする。
【0071】
alimz<alimz’とすることは、+Z方向感度を-Z方向感度よりも高くすることである。この場合でも第1例と同様に、+Z方向での落下時には、-Z方向での落下時と比較して、加速度センサ94が検出する加速度が小さくても(加速度センサ94に伝達される衝撃が弱くても)減速制御が実行されるようになる。
【0072】
alimz’<alimxとすることは、-Z方向感度を+X方向感度よりも高くすることである。
【0073】
alimx<alimx’とすることは、+X方向感度を-X方向感度よりも高くすることである。
【0074】
alimx’≒alimy’=alimyとすることは、-X方向感度を-Y方向感度及び+Y方向感度と同等にすることである。以上のように、第2例は、減速制御に使用される閾値を、衝撃(落下)の方向に応じて異ならせるものである。
【0075】
図6の例(加速度検出値の補正)は、
図7の例(閾値の調整)と比較して、中途半端な姿勢、例えばZ方向が鉛直方向に対して45°ずれたような姿勢で作業機1が落下した場合にも好適に対応できる。
【0076】
図7の例(閾値の調整)は、
図6の例(加速度検出値の補正)と比較して、制御がシンプルになる。
【0077】
図6の例(加速度検出値の補正)及び
図7の例(閾値の調整)のいずれにおいても、加速度センサ94の検出値は、様々な要因により変化するため、想定される様々な状況を踏まえてプログラムを作成することが望ましい。
【0078】
以下、
図6及び
図7の例とは別の落下保護制御の例を説明する。
【0079】
マイコン98は、加速度センサ94の検出値、すなわちX方向加速度ax、Y方向加速度ay、Z方向加速度azから、三軸合成加速度ベクトル及びその大きさを導出する。
【0080】
マイコン98は、三軸合成加速度ベクトルの向き対応した定数(係数)を予め記憶している。三軸合成加速度ベクトルの向きから、衝突箇所の材質や、衝突箇所から加速度センサ94までの距離、衝突箇所から加速度センサ94まで衝撃が伝わる経路の構成など、加速度センサ94の検出値に影響を与える様々な要素が推定される。それらの要素を総合的に考慮した定数(係数)がシミュレーションや実験等により求められ、マイコン98に記憶されている。
【0081】
マイコン98は、三軸合成加速度ベクトルの向きから特定される上述の定数(係数)を三軸合成加速度ベクトルの大きさに乗じ、調整後合成加速度とする。マイコン98は、調整後合成加速度が落下保護機能作動閾値を超えた場合、作業機1が落下したと判断し、モータ6を停止させる。ここで、停止に替えて、停止させない減速としてもよい。
【0082】
本例の場合、三軸合成加速度ベクトルの向き対応した定数(係数)を多数準備しておくことで、様々な落下姿勢に好適に対応できる。
【0083】
また、上記した実施の形態では前後左右上下方向における加速度センサ94からの距離としてL1~L6と、それに応じた係数の変更、または閾値の変更を説明したが、これは本願発明の制御及び当該制御を構築する手順の一例を簡潔に説明するためのものであり、当然ながら異なる手法でも本願制御を実現可能である。
【0084】
例えば、L1~L6は前後左右上下方向の距離としたが、単純に方向を問わず、加速度センサ94から作業機1における外表面までの距離によって減速制御に係る感度(検出される加速度に掛ける係数、または閾値)を変更しても良い。
図8は、方向を問わず、加速度センサ94から最も遠い作業機1の外表面部分(砥石2の前端)までの距離L7と、加速度センサ94から最も近い作業機1の外表面部分(把持部3bの後端上部)までの距離L8と、その間の距離となるような外表面部分(バッテリ7の下端)までの距離L9を示すものである。この場合、距離の関係性はL7>L9>L8となるため、砥石2の前端を下にした状態での落下と、バッテリ7の下端を下にした状態での落下と、把持部3bの後端上部を下にした状態での落下では、この順に減速制御の感度を高くすればよい。なお、減速制御を実行する場合には、衝撃の方向が加速度センサ94の方向になっていることが重要である。当然ながら、砥石2の前端を下にした状態での落下は、砥石2に上方向の衝撃が加わり、かつ砥石2の上方に加速度センサ94が位置するため、加速度センサ94へ向かう方向の衝撃が砥石2(作業機1)に加わることとなり、落下時の衝撃を加速度センサ94が精度よく検知することができる。
【0085】
また、作業機の形態によっては、ある一定の姿勢でのみ落下衝突時の衝撃が弱く(または強く)検出されるという場合があるが、その場合でも、当該一定の姿勢における減速制御の感度を調整すればよい。すなわち、所定の姿勢の作業機において、前後左右上下方向それぞれの方向における加速度センサから最も離れた表面箇所に加速度センサに向かう方向の衝撃が加わった際に、減速制御を実行するために必要となる加速度センサの出力の大きさは、前後左右上下方向のうち少なくとも一方向で異なるように構成すればよい。換言すれば、減速制御を実行する際、作業機1(ハウジング)の外面に加わる衝撃力が同じでも加速度が比較的弱く(または強く)検出される少なくとも1つの状況では、感度を強く(または弱く)すればよい。
【0086】
本実施の形態によれば、加速度センサ94の検出値を補正した上で落下保護機能作動閾値と比較することにより、又は、方向ごとに調整された落下保護機能作動閾値と加速度センサ94の検出値とを比較することにより、モータ6の減速制御の要否を決定するため、作業機1の落下時に適切にモータ6を減速させることができる。すなわち、落下時において好適にモータ6を制御することが可能な作業機1を実現できる。従来では、例えば落下衝突時にモータ6を停止させるような減速制御を実行する場合、落下時の姿勢によっては、衝撃に対して過度に敏感となってモータ6が止まりやすく、または衝撃に鈍感なせいでモータ6が停止してくれないなどの問題が生じる可能性がある。具体的には、例えば、第1の姿勢では1.0m以上の高さからの落下でモータ6を停止させることができるが、第2の姿勢では0.3mの高さからの落下(弱い衝撃)でモータ6が止まってしまい、第3の姿勢では1.5mの高さからの落下でもモータ6が停止してくれないという可能性がある。本実施の形態では、衝撃の方向に応じてモータ6を減速させる際の感度を変更しているため、こういった問題を解消することができる。例えば、本実施の形態によれば、上記したような第1,2,3姿勢(3種の姿勢)での落下においては、いずれも1.0mの高さからの落下衝突でモータ6を減速制御することができるように構成することができる。従って、作業機1が使用される環境を踏まえ、適切に減速制御を実行させることが可能となる。
【0087】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、本発明は実施の形態に限定されない。実施の形態で具体的に説明した各事項には請求項に記載の範囲で種々の変形が可能である。
【0088】
加速度センサ94は、三軸加速度センサに限定されず、二軸加速度センサであってもよい。また、作業機によっては様々なアクセサリが取り付け可能に構成されることもあり、その場合、作業機本体の重量のみならず、落下時における衝突箇所の材質や、加速度センサ94から地面(衝突箇所)までの距離が変わってしまう恐れがある。従って、例えばアクセサリの装着状態をセンサや機械的なスイッチ等によって検出し、アクセサリの装着状況に応じて上記した感度(係数)を変更するように構成してもよい。具体的には、例えば取り付けられる電池を判別し、その重量に応じて感度を調整する(軽ければ衝撃が軽くなる方向なので感度を高くする、または重ければ感度を鈍くする)ように構成してもよい。また、本実施の形態はグラインダであるが、グラインダは様々な種類の先端工具を着脱可能に構成される場合がある。その場合、先端工具の種類(柔らかさ、重さ)等を検出、判別し、その結果に応じて感度(係数)を変更するように構成してもよい。また、本発明の作業機は、実施の形態で例示したグラインダに限定されず他の種類、特にスイッチをオン状態(モータを駆動状態)に維持するいわゆるオンロック機能を搭載した種々の作業機に好適に適用できる。
【符号の説明】
【0089】
1…作業機、2…砥石(回転工具)、3…ハウジング、4…ギヤケース、5…スイッチ、5a…ボタン、6…モータ(ブラシレスモータ)、6a…モータ軸、7…バッテリ(電池パック)、8…ファン、9…制御基板、10…操作部、11…パッキングランド、12…ニードルベアリング、13…ボールベアリング、14…ホイルガード、17…スライドバー、18…係止凸部、19…速度設定ダイヤル、20…スピンドル、21…第1ベベルギヤ、22…第2ベベルギヤ、80…制御回路部、82…インバータ回路、83…制御信号出力回路、84…磁気センサ、85…回転子位置検出回路、86…温度検出回路、87…降圧回路、88…制御系電源回路、89…電池電圧検出回路、90…過放電検出回路、91…電流検出回路、92…通信回路、93…電池温度検出回路、94…加速度検出回路、95…スイッチ検出回路、96…設定回転数検出回路、98…マイコン(マイクロコントローラ)。