(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029704
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び積層体
(51)【国際特許分類】
C08L 83/00 20060101AFI20240228BHJP
C07F 7/18 20060101ALI20240228BHJP
C09K 3/16 20060101ALI20240228BHJP
C08K 5/5419 20060101ALI20240228BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240228BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240228BHJP
C09D 5/24 20060101ALI20240228BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240228BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
C08L83/00
C07F7/18 T
C09K3/16 105A
C09K3/16 105D
C09K3/16 102F
C09K3/16 103Z
C08K5/5419
B32B27/00 L
B32B27/00 101
B32B27/18 Z
C09D5/24
C09D7/63
C09D183/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132114
(22)【出願日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】513244753
【氏名又は名称】カーリットホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】清水 司
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】篠原 愛
(72)【発明者】
【氏名】梅山 晃典
(72)【発明者】
【氏名】田村 正明
【テーマコード(参考)】
4F100
4H049
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AH04
4F100AH04A
4F100AK42
4F100AK52
4F100AK52A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100EH46
4F100EH46A
4F100EJ08A
4F100EJ42
4F100EJ42A
4F100JB04
4F100JB07
4F100JG04
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4F100JL14
4F100JL14A
4F100YY00A
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ59
4H049VR21
4H049VR43
4H049VU20
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4H049VW01
4J002CP031
4J002CP041
4J002CP061
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4J002CP121
4J002EV266
4J002EX036
4J002FD106
4J002GF00
4J002GH01
4J038DL031
4J038JB11
4J038KA12
4J038NA10
4J038NA20
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】剥離力が低く、帯電防止能が付与された樹脂組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】シリコーン系樹脂と式(1)で表されるオニウム塩を含む樹脂組成物 。
式(1):Q+・(R1SO2)2N- (1)
(式中、Q+はピリジニウムカチオンまたはイミダゾリウムカチオンを表す。)
式(1)中のR1は炭素鎖が1のパーフルオロアルキル基もしくはフルオロ基を表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン系樹脂と式(1)で表されるオニウム塩を含む樹脂組成物。
式(1):Q
+・(R
1SO
2)
2N
- (1)
(式中、Q
+は式(2)または式(3))
式(1)中のR
1は炭素鎖が1のパーフルオロアルキル基もしくはフルオロ基を表し、式(2)中、R
2は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキル基もしくは水素原子である。式(2)(3)中、R
3は炭素数1~3のアルキル基を表し、R
4は炭素数1~4のアルキル基を表す。nは1~2を示す。
【化2-3】
【請求項2】
一般式(2)(3)中のR3が、炭素数2のアルキル基である請求項1に記載のオニウム塩を含む樹脂組成物。
【請求項3】
一般式(1)中のR1が、フルオロ基である請求項1又は2に記載のオニウム塩を含む樹脂組成物。
【請求項4】
シリコーン系樹脂100質量部に対して、式(1)で表されるオニウム塩を0.1~10質量部含むことを特徴とする請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記シリコーン系樹脂が付加反応型シリコーン系樹脂である請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のオニウム塩を含む離型剤。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のオニウム塩を含む離型層。
【請求項8】
請求項7に記載の離型層が、基材上に形成された積層体。
【請求項9】
プライマー層を含有しない請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
積層体の表面抵抗率が1.0×1012(Ω/□)以下である請求項8に記載の積層体。
【請求項11】
基材上に、請求項1又は2に記載の樹脂組成物を含有する離型剤を塗布し、加熱硬化させて離型層を形成させる工程を含む積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリル基を有するオニウム塩含有樹脂組成物及びその積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂組成物への帯電防止機能付与は導電性高分子(PEDOT分散液)を用いた報告が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導電性高分子及びシリコーン系樹脂を含有する樹脂組成物は、着色や接着面積の増加により剥離力が増加するという課題を見出した。
従って、本発明は、剥離力が低く、帯電防止能が付与されたシリコーン系樹脂を含有する樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究の結果、カチオン部位にシリル基を有するオニウム塩をシリコーン系樹脂に一定量含有させることで、剥離特性を損なわず帯電防止能を付与されたシリコーン系樹脂を含有する樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
本発明は以下に示すものである。
【0007】
[1]シリコーン系樹脂と式(1)で表されるオニウム塩を含む樹脂組成物。
式(1):Q
+・(R
1SO
2)
2N
- (1)
(式中、Q
+は式(2)または式(3))
式(1)中のR
1は炭素鎖が1のパーフルオロアルキル基もしくはフルオロ基を表し、式(2)中、R
2は、同一又は異なって、炭素数1~4のアルキル基もしくは水素原子である。式(2)(3)中、R
3は炭素数1~3のアルキル基を表し、R
4は炭素数1~4のアルキル基を表す。nは1~2を示す。
【化2-3】
[2]一般式(2)(3)中のR
3が、炭素数2のアルキル基である[1]に記載のオニウム塩を含む樹脂組成物。
[3]一般式(1)中のR
1が、炭素鎖がフルオロ基である[1]又は[2]に記載のオニウム塩を含む樹脂組成物。
[4]シリコーン系樹脂100質量部に対して、式(1)で表されるオニウム塩を0.1~10質量部含むことを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]前記シリコーン系樹脂が付加反応型シリコーン系樹脂である[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6][1]~[3]のいずれかに記載のオニウム塩を含む離型剤。
[7][1]~[3]のいずれかに記載のオニウム塩を含む離型層。
[8][7]に記載の離型層が、基材上に形成された積層体。
[9]プライマー層を有しない[8]に記載の積層体。
[10]積層体の表面抵抗率が1.0×10
12(Ω/□)以下である[7]又は[8]に記載の積層体。
[11]基材上に、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物を含有する離型剤を塗布し、加熱硬化させて離型層を形成させる工程を含む積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、剥離力が低く、帯電防止能が付与されたシリコーン系樹脂を含む樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明について説明する。
【0010】
[シリル基含有オニウム塩]
本発明の樹脂組成物は、式(1)で表されるオニウム塩を含有する。
式(1):
Q
+・(R
1SO
2)
2N
- (1)
(式中、Q
+は式(2)または式(3))
【化2-3】
【0011】
式(1)中のR1は炭素鎖が1~3のパーフルオロアルキル基もしくはフルオロ基であり、例えば、フルオロ基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基が挙げられ、好ましくはフルオロ基である。
【0012】
式(2)および(3)中、R2は炭素数1~4のアルキル基もしくは水素原子である。このアルキル基は直鎖及び分枝鎖状のいずれであってもよく、好ましくは直鎖状のアルキル基又は水素原子である。具体的には例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、炭素数1~2の直鎖状のアルキル基又は水素原子が特に好ましい。R3は炭素数1~3のアルキル基である、好ましくは直鎖状のアルキル基である。アルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、好ましくはエチル基である。R4は炭素数1~4のアルキル基である。このアルキル基は直鎖及び分枝鎖状のいずれであってもよく、好ましくは直鎖状のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、好ましくはメチル基である。式(2)および式(3)中のnは1~2を示し、好ましくは2である。
【0013】
本発明のオニウム塩(1)は、種々の方法で製造することができる。その代表的な方法はシリル基を有するアルキルハライド類に対しアミン類を作用させオニウム=ハライドを合成したのち、イミド酸アルカリ金属塩との複分解反応でオニウム塩を合成する方法である。
【0014】
本合成に適したアミン類としては、例えば2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2-エチルピリジン、3-エチルピリジン、4-エチルピリジン、2-プロピルピリジン、3-プロピルピリジン、4-プロピルピリジン、2-ブチルピリジン、3-ブチルピリジン、4-ブチルピリジン、2,3-ジメチルピリジン、3,4-ジメチルピリジン、1-メチルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、1-プロピルイミダゾール、1-ブチルイミダゾール等が挙げられる。
【0015】
アルキルハライド類としては、例えば、クロロメチルトリメトキシシラン、2-クロロエチルトリメトキシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、4-クロロブチルトリメトキシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、2-クロロエチルトリエトキシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、4-クロロブチルトリエトキシラン、クロロメチルトリプロポキシシラン、2-クロロエチルトリプロポキシラン、3-クロロプロピルトリプロポキシシラン、4-クロロブチルトリプロポキシラン、クロロメチルトリブトキシシラン、2-クロロエチルトリブトキシラン、3-クロロプロピルトリブトキシシラン、4-クロロブチルトリブトキシラン、ブロモメチルトリメトキシシラン、2-ブロモエチルトリメトキシラン、3-ブロモプロピルトリメトキシシラン、4-ブロモブチルトリメトキシラン、ブロモメチルトリエトキシシラン、2-ブロモエチルトリエトキシラン、3-ブロモプロピルトリエトキシシラン、4-ブロモブチルトリエトキシラン、ブロモメチルトリプロポキシシラン、2-ブロモエチルトリプロポキシラン、3-ブロモプロピルトリプロポキシシラン、4-ブロモブチルトリプロポキシラン、ブロモメチルトリブトキシシラン、2-ブロモエチルトリブトキシラン、3-ブロモプロピルトリブトキシシラン、4-ブロモブチルトリブトキシラン、ヨ-ドメチルトリメトキシシラン、2-ヨ-ドエチルトリメトキシラン、3-ヨ-ドプロピルトリメトキシシラン、4-ヨ-ドブチルトリメトキシラン、ヨ-ドメチルトリエトキシシラン、2-ヨ-ドエチルトリエトキシラン、3-ヨ-ドプロピルトリエトキシシラン、4-ヨ-ドブチルトリエトキシラン、ヨ-ドメチルトリプロポキシシラン、2-ヨ-ドエチルトリプロポキシラン、3-ヨ-ドプロピルトリポロポキシシラン、4-ヨ-ドブチルトリプロポキシラン、ヨ-ドメチルトリブトキシシラン、2-ヨ-ドエチルトリブトキシラン、3-ヨ-ドプロピルトリブトキシシラン、4-ヨ-ドブチルトリブトキシラン等が挙げられる。
【0016】
アミン類とアルキルハライド類との四級化反応は、溶媒を使用してもしなくてもよい。溶媒を使用するときの溶媒としては、メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール類、アセトニトリル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0017】
アルキルハライド類の使用量は、アミン類1モルに対して0.7モル以上であればよく、好ましくは0.9~1.5モルである。
【0018】
イミド酸アルカリ金属塩としては、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドカリウム、ビス(フルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、ビス(フルオロメタンスルホニル)イミドナトリウム、ビス(フルオロメタンスルホニル)イミドカリウム等が挙げられる。
【0019】
複分解反応におけるイミド酸アルカリ金属塩の使用量は、オニウム=ハライド類1モルに対して、通常0.8モル以上、好ましくは0.9モル~1.2モルであり、より好ましくは1~1.05モルである。
【0020】
イオン交換反応は通常溶媒中で行われる。溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、2-プロパノール等のアルコール類、アセトニトリル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0021】
オニウム=ハライド類、イミド酸アルカリ金属塩及び溶媒の混合順序は特に限定されず、オニウム=ハライド類と溶媒を混合した後にイミド酸アルカリ金属塩を添加してもよいし、イミド酸アルカリ金属塩と溶媒を混合した後にオニウム=ハライド類を添加してもよい。
【0022】
イオン交換反応における反応温度は、通常10℃以上、好ましくは10~60℃、特に好ましくは10~30℃である。
【0023】
反応終了後の反応液からオニウム塩を分離するには、溶媒及び生成する無機塩を反応液から除去する。得られた反応液中に無機塩が析出していれば、反応液を濾過して析出の無機塩を除き、次いで濃縮、ろ過、抽出等の単位操作を適宜組み合わせて、オニウム塩を単離する。
【0024】
式(2)(3)で表されるカチオンは、白金触媒への触媒毒とはならないため、シリコーン離型剤の硬化阻害を起こさず、硬化不良による耐溶剤性の低下が起こらないため、被着体(粘着層など)へ離型層の溶出が抑制される。
また、式(1)で表されるオニウム塩はシリコーン系樹脂との相溶性に優れるため、表面にブリードアウトすることが抑制され、被着体を汚染する問題が生じにくい。
なお、アミン化合物や、アンモニウムカチオンは、白金触媒への触媒毒となりうることが知られている。そのため、アンモニウム系オニウム塩はシリコーン離型剤の硬化阻害を起こしやすく、硬化不良による耐溶剤性の低下から、被着体(粘着層など)へ離型層が溶出してしまう。また、アンモニウム系オニウム塩はシリコーン系樹脂との相溶性が乏しいため、表面にブリードアウトして、被着体を汚染する問題が生じる。
【0025】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、シリコーン系樹脂、有機系とシリコーン系の混合もしくは共重合樹脂などを含有し、優れた離型性や耐熱性から特に硬化型シリコーン系樹脂を含有することが好ましい。
【0026】
硬化型シリコーン系樹脂には、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとを白金触媒のもとに、加熱硬化させた「付加反応型」、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと末端に水酸基を含有するオルガノポリシロキサンとを有機錫触媒を用いて加熱硬化させた「縮重合反応型」、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとメルカプト基を含有するオルガノポリシロキサンとを光重合触媒を用いて硬化させる「ラジカル付加型」、エポキシ基をオニウム塩開始剤にて光開環させて硬化させる「カチオン重合型」があり、いずれを用いてもよいが、剥離力の観点から、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとを、白金触媒のもとに加熱硬化させた付加反応型もしくはエポキシ基をオニウム塩開始剤にて光開環させて硬化させるカチオン重合型またはオルガノポリシロキサンとを光重合触媒を用いて硬化させるラジカル付加型が好ましい。
本発明における樹脂組成物は、塗料組成物を必要に応じて乾燥工程で溶媒を除去の上、硬化することにより形成することができる。
【0027】
[塗料組成物]
前述の塗料組成物は、室温にて液体の性状を示す混合物であり、樹脂組成物を形成可能な材料と、重合開始剤、硬化剤、硬化触媒を含み、さらに溶媒、粒子、帯電防止剤などの各種添加剤を含んでもよい。
塗料組成物は、その組成は特に限定されないが、前述のように離型性や耐熱性の観点から、シリコーン系樹脂、特に硬化型シリコーン系樹脂を形成可能な樹脂前駆体が好ましく、「付加反応型」、「縮重合反応型」、「ラジカル付加型」、「カチオン重合型」の樹脂前駆体、および重合開始剤、硬化剤、硬化触媒を含む塗料組成物がより好ましく、「付加反応型」、がより好ましい。
塗料組成物は離型剤として用いることができる。
【0028】
付加反応型シリコーン系樹脂前駆体と触媒の具体例としては、末端にビニル基を含有するポリジメチルシロキサンとハイドロジェンシロキサンとを含むものが好ましく、信越化学工業(株)社製のKS―3650、KS843、KS847、KS847H、KS847T、X62-2829、KS838、東レ・ダウコーニング(株)社製のSD7333、SRX357、SRX345、LTC310、LTC303E、LTC300B、LTC350G、LTC750A、LTC851、LTC759、LTC755、LTC761、LTC856などが挙げられる。
【0029】
剥離特性を維持したまま帯電防止性が十分に付与される必要があるため、本発明の樹脂組成物におけるオニウム塩の濃度は、シリコーン系樹脂100質量部固形分に対し、通常0.1~10質量部が好ましく、さらには1~5質量部がより好ましい。
【0030】
本発明における塗料組成物の固形分濃度は、特に限定されるものではないが、塗料組成物が溶媒を含む場合には、通常10質量%以下であり、更には0.5~5質量%であることが好ましい。
【0031】
本発明における塗料組成物は、離型性能を損なわないよう帯電防止層を有するプライマー層と離型層が形成されるように二層塗工を支持基材にしなくて良く、支持基材に一層塗工をすることができる。
【0032】
[その他の塗料組成物添加剤]
塗料組成物は溶媒を含んでもよく、製造適性の面から溶媒を含むことが好ましい。ここで溶媒とは塗布後の乾燥工程にてほぼ全量を蒸発させることが可能な、常温、常圧で液体である物質を指す。本発明の積層体に適した塗料組成物は、溶媒を含んでもよい。溶媒の種類数としては1種類以上10種類以下が好ましく、より好ましくは1種類以上5種類以下、さらに好ましくは1種類以上3種類以下である。塗料組成物を乾燥させることで離型層を形成することができる。
【0033】
溶剤は、トルエンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、エチルメチルケトン(MEK)、イソブチルメチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、エタノール、2-プロパノールなどのアルコール類、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルなどのエーテル類などを使用することができる。これらは溶解性、塗工性、沸点等を考慮し、単独または複数混合して使用するのが好ましい。
【0034】
水系の溶媒はシリコーン離型剤の硬化に必要な白金触媒の触媒毒になりうるため、本発明における塗料組成物の溶媒には有機溶媒を用いることが好ましい。
【0035】
[支持基材]
本発明における支持基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン- 酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等が挙げられるが、特に離型フィルムとして用いられる際に好適に使用される支持基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0036】
[付加硬化型シリコーン前駆体を用いた離型フィルムの製造方法]
支持基材上への塗料組成物の塗布方法は特に限定されないが、塗料組成物をディップコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法などにより支持基材等に塗布することにより層を形成することが好ましい。さらに、これらの塗布方式のうち、ワイヤーバーコート塗布方法としてより好ましい。次いで、支持基材等の上に塗布された液膜を乾燥する。得られる積層体中から完全に溶媒を除去することに加え、塗膜の硬化を促進する観点からも、乾燥工程では液膜の加熱を伴うことが好ましい。乾燥工程において、熱で硬化する場合には、室温から200℃以下であることが好ましく、硬化反応の活性化エネルギーの観点から、より好ましくは80℃以上200℃以下、さらに好ましくは80℃以上150℃以下である。
【0037】
[接触角]
作製した離型フィルムの離型層を形成した面の水の接触角は、θ/2法で、測定装置として協和界面科学株式会社製接触角計CAX150を用いて、温度25℃、湿度50%の条件下で、離型層の表面に1μLの純水を滴下し、滴下1秒後に接触角を測定することができる。
【0038】
接触角が大きいと、被着体を剥離する際の剥離力が低下し、離型フィルムとして好適に用いることができる。本発明の樹脂組成物は、オニウム塩とシリコーン樹脂との相溶性が優れており、オニウム塩が表面にブリードアウトすることが抑制されていることから、離型層の剥離力を増大させることがなく、帯電防止性能を付与することができる。接触角は95°以上が好ましく、100°以上がより好ましく、104°以上がより好ましい。
【0039】
[表面抵抗率]
ハイレスターUP(MCP-HT450)を用いて室温下50%RH、印加電圧100Vで樹脂組成物の表面抵抗率を測定することができる。
【0040】
樹脂組成物の厚みが0.5μmの場合における表面抵抗率は、1.0×1012(Ω/□)以下であることが好ましく、1.0×1011(Ω/□)以下であることがより好ましく、8.0×1010(Ω/□)以下であることがより好ましい。
【0041】
[用途]
また、本発明の樹脂組成物は、特に保護フィルムの粘着層に対する離型フィルムとして好適に用いることができる。
【実施例0042】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。なお、同一の化合物については特記しない限り同一の製品を用いた。
【0043】
(合成例1)
3-メチルピリジン9.3g(100ミリモル)と3-クロロプロピルトリエトキシシラン25.2g(105ミリモル)との混合物を110℃で48時間攪拌して反応させた。反応終了後、減圧下に乾燥して1-(トリエトキシシリルプロピル)-3-メチルピリジニウム=クロライド30.0g(収率90%)を得た。
得られた1-(トリエトキシシリルプロピル)-3-メチルピリジニウム=クロライド30.0g(90ミリモル)をエタノール30gに溶解させ、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウム25.8g(90ミリモル)を加えた後、1時間室温で攪拌した。反応液を濾過した後、純水洗浄で無機塩を除去した。濃縮後、液体の1-(トリエトキシシリルプロピル)-3-メチルピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド48.1g(収率95%)を得た。
【0044】
(合成例2)
合成例1の合成条件のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウムの代わりに ビス(フルオロスルホニル)イミド酸リチウムを用いた以外は変わらず合成し液体の1-(トリエトキシシリルプロピル)-3-メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド38.8g(収率93%)を得た。
【0045】
(合成例3)
1-メチルイミダゾリウム8.21g(100ミリモル)と3-クロロプロピルトリエトキシシラン25.2g(105ミリモル)との混合物を110℃で48時間攪拌して反応させた。反応終了後、減圧下に乾燥して1-メチル-3-(トリエトキシシリルプロピル)イミダゾリウム=クロライド30.6g(収率95%)を得た。
得られた1-メチル-3-(トリエトキシシリルプロピル)イミダゾリウム=クロライド30.6g(95ミリモル)をエタノール30gに溶解させ、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウム27.2g(95ミリモル)を加えた後、1時間室温で攪拌した。反応液を濾過した後、純水洗浄で無機塩を除去した。濃縮後、液体の1-メチル-3-(トリエトキシシリルプロピル)イミダゾリウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド52.8g(収率98%)を得た。
【0046】
(合成例4)
合成例1の合成条件のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウムの代わりに ビス(フルオロスルホニル)イミド酸リチウムを用いた以外は変わらず合成し液体の1-メチル-3-(トリエトキシシリルプロピル)イミダゾリウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド41.7g(収率94%)を得た。
【0047】
(合成例5)
3-メチルピリジン8.21g(100ミリモル)と3-クロロプロピルトリメトキシシラン20.8g(105ミリモル)との混合物を110℃で24時間攪拌して反応させた。反応終了後、減圧下に乾燥して1-(トリメトキシシリルプロピル)-3-メチルピリジニウム=クロライド27.7g(収率95%)を得た。
得られた1-(トリメトキシシリルプロピル)-3-メチルピリジニウム=クロライド27.7g(95ミリモル)をエタノール30gに溶解させ、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウム27.2g(95ミリモル)を加えた後、1時間室温で攪拌した。反応液を濾過した後、純水洗浄で無機塩を除去した。濃縮後、液体の1-(トリメトキシシリルプロピル)-3-メチルピリジニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド40.7g(収率80%)を得た。
【0048】
(合成例6)
合成例5の合成条件のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウムの代わりに ビス(フルオロスルホニル)イミド酸リチウムを用いた以外は変わらず合成し液体の1-(トリメトキシシリルプロピル)-3-メチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド34.4g(収率83%)を得た。
【0049】
(合成例7)
1-メチルイミダゾール8.21g(100ミリモル)と3-クロロプロピルトリメトキシシラン20.8g(105ミリモル)との混合物を110℃で24時間攪拌して反応させた。反応終了後、減圧下に乾燥して1-メチル-3-(トリメトキシシリルプロピル)イミダゾリウム=クロライド26.9g(収率96%)を得た。
得られた1-メチル-3-(トリメトキシシリルプロピル)イミダゾリウム=クロライド26.9g(96ミリモル)をエタノール30gに溶解させ、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウム27.4g(96ミリモル)を加えた後、1時間室温で攪拌した。反応液を濾過した後、純水洗浄で無機塩を除去した。濃縮後、液体の1-メチル-3-(トリメトキシシリルプロピル)イミダゾリウム=ビス(トリフルオロスルホニル)イミド42.8g(収率85%)を得た。
【0050】
(合成例8)
合成例7の合成条件のビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウムの代わりに ビス(フルオロスルホニル)イミド酸リチウムを用いた以外は変わらず合成し液体の1-メチル-3-(トリメトキシシリルプロピル)イミダゾリウム=ビス(フルオロスルホニル)イミド34.7g(収率85%)を得た。
【0051】
下記材料を混合し塗料組成物を調整しフィルムに塗工し剥離フィルムを得た。
【0052】
(実施例1)
[塗料組成物の作製]
・メチルビニルポリシロキサンおよびメチル水素化ポリシロキサン(シリコーン系樹脂前駆体固形分):100質量部
( KS847 信越化学工業(株)製 固形分濃度 30 質量% )
・メチルビニルポリシロキサンと白金の錯体溶液:3質量部
(CAT_PL-50T 信越化学工業(株)製)
・合成例1のオニウム塩:2質量部
上記組成をトルエン:MEK=7:1で希釈し固形分濃度5質量%の塗料を調整した。
【0053】
[塗工条件]
塗料をPETフィルム上にバーコーターを用いて乾燥後膜厚約500nmの厚みでコートし、100℃で1分間加熱させて試験片を作製した。
【0054】
(実施例2)
実施例1のオニウム塩で合成例2を使用した以外は変更せずに塗料を作製しPETフィルムに塗工し試験片を作製した。
【0055】
(実施例3)
実施例1のオニウム塩で合成例3を使用した以外は変更せずに塗料を作製しPETフィルムに塗工し試験片を作製した。
【0056】
(実施例4)
実施例1のオニウム塩で合成例4を使用した以外は変更せずに塗料を作製しPETフィルムに塗工し試験片を作製した。
【0057】
(実施例5)
実施例1のオニウム塩で合成例5を使用した以外は変更せずに塗料を作製しPETフィルムに塗工し試験片を作製した。
【0058】
(実施例6)
実施例1のオニウム塩で合成例6を使用した以外は変更せずに塗料を作製しPETフィルムに塗工し試験片を作製した。
【0059】
(実施例7)
実施例1のオニウム塩で合成例7を使用した以外は変更せずに塗料を作製しPETフィルムに塗工し試験片を作製した。
【0060】
(実施例8)
実施例1のオニウム塩で合成例8を使用した以外は変更せずに塗料を作製しPETフィルムに塗工し試験片を作製した。
【0061】
(比較例1)
実施例1のオニウム塩で1―オクチルピリジニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミドを使用した以外は変更せずに塗料を作製しPETフィルムに塗工し試験片を作製した。
【0062】
(比較例2)
実施例1のオニウム塩で1―ブチル-3-メチルイミダゾリウム=ビス(フルオロスルホニル)イミドを使用した以外は変更せずに塗料を作製しPETフィルムに塗工し試験片を作製した。
【0063】
(比較例3)
実施例1のオニウム塩でトリメチルドデシルアンモニウム=ビス(フルオロスルホニル)イミドを使用した以外は変更せずに塗料を作製しPETフィルムに塗工し試験片を作製した。
【0064】
(比較例4)
実施例1のオニウム塩を未添加にした条件以外は変更せずに塗料を作製しPETフィルムに塗工し試験片を作製した。
【0065】
[表面抵抗率測定]
ハイレスターUP(MCP-HT450)を用いて室温下50%RH、印加電圧100Vで試験片塗工面の表面抵抗率を測定した。
【0066】
[剥離試験]
シリコーン離型塗工面に対し日東電工No.31テープを貼付し、1時間養生後、ピール速0.3m/minにて180°剥離時の剥離力を測定した。
【0067】
[接触角]
作製した離型フィルムの離型層を形成した面の水の接触角は、θ/2法で、測定装置として協和界面科学株式会社製接触角計CAX150を用いて、温度25℃、湿度50%の条件下で、離型層の表面に1μLの純水を滴下し、滴下1秒後に接触角を測定した。
【0068】
[耐溶剤性]
トルエンを染み込ませた綿布で10往復擦過し、積層体についた溶剤を乾燥させた後、目視で下記判定基準により層の脱落程度を判定した。
〇: 脱落がなし。
×: 脱落あり。
【0069】
実施例1~8および比較例1~4の結果を表1に示す。
【表1】
【0070】
上記のとおり、本発明の実施例1~8の樹脂組成物は、表面抵抗率が低く、剥離帯電防止に必要とされる帯電防止性能を有しており、剥離力が低減されており、接触角が大きく、オニウム塩のブリードアウトによる被着体への汚染を防がれており、硬化不良による耐溶剤性の低下が確認されなかった。