(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029739
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
H01G4/30 515
H01G4/30 201L
H01G4/30 201M
H01G4/30 201N
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036602
(22)【出願日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】10-2022-0104588
(32)【優先日】2022-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】李 承桓
(72)【発明者】
【氏名】林 哲澤
(72)【発明者】
【氏名】趙 瀚▲オル▼
(72)【発明者】
【氏名】金 ▲礼▼▲リン▼
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE00
5E001AE04
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
(57)【要約】
【課題】積層型電子部品を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る積層型電子部品は、複数の第1誘電体層及び上記第1誘電体層を間に挟んで交互に配置される第1内部電極及び第2内部電極を含んで静電容量を形成する活性部を含み、第1方向に互いに対向する第1面及び第2面、上記第1面及び第2面と連結され、第2方向に互いに対向する第3面及び第4面、上記第1面~第4面と連結され、第3方向に互いに対向する第5面及び第6面を含む本体と、上記本体上に配置され、上記第1内部電極及び第2内部電極とそれぞれ連結される第1外部電極及び第2外部電極と、を含み、上記第1誘電体層は安定化ジルコニアを含むことができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1誘電体層及び前記第1誘電体層を間に挟んで交互に配置される第1内部電極及び第2内部電極を含んで静電容量を形成する活性部を含み、第1方向に互いに対向する第1面及び第2面、前記第1面及び前記第2面と連結され第2方向に互いに対向する第3面及び第4面、前記第1面~前記第4面と連結され第3方向に互いに対向する第5面及び第6面を含む本体と、
前記本体上に配置され、前記第1内部電極及び前記第2内部電極とそれぞれ連結される第1外部電極及び第2外部電極と、を含み、
前記第1誘電体層は安定化ジルコニアを含む、積層型電子部品。
【請求項2】
前記安定化ジルコニアは、イットリア安定化ジルコニア、酸化マグネシウム安定化ジルコニア、酸化セリウム安定化ジルコニア、酸化アルミニウム安定化ジルコニア及び酸化カルシウム安定化ジルコニアのうち選択されたいずれか一つ以上を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記複数の第1誘電体層のうち少なくとも一つ以上はジルコニウム(Zr)を含み、
前記第1誘電体層に含まれるジルコニウム(Zr)の平均含量は637ppm超である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記第1誘電体層に含まれるジルコニウム(Zr)の平均含量は1090ppm以下である、請求項3に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記複数の第1誘電体層のうち少なくとも一つ以上はイットリウム(Y)を含み、
前記第1誘電体層に含まれるイットリウム(Y)の平均含量は122ppm超である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記第1誘電体層に含まれるイットリウム(Y)の平均含量は140ppm以下である、請求項5に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記本体は、前記活性部の第1方向の両端面上に配置されるカバー部をさらに含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記カバー部は第2誘電体層を含み、
前記第2誘電体層は安定化ジルコニアを含まない、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記第1誘電体層に含まれるジルコニウム(Zr)の平均含量は、前記第2誘電体層に含まれるジルコニウム(Zr)の平均含量より高く、
前記第1誘電体層に含まれるイットリウム(Y)の平均含量は、前記第2誘電体層に含まれるイットリウム(Y)の平均含量より高い、請求項8に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記本体は、前記活性部の第3方向の両端面上に配置されるマージン部をさらに含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記マージン部は第3誘電体層を含み、
前記第3誘電体層は安定化ジルコニアを含まない、請求項10に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記第1誘電体層に含まれるジルコニウム(Zr)の平均含量は、前記第3誘電体層に含まれるジルコニウム(Zr)の平均含量より高く、
前記第1誘電体層に含まれるイットリウム(Y)の平均含量は、前記第3誘電体層に含まれるイットリウム(Y)の平均含量より高い、請求項11に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記第1誘電体層の前記第1方向の平均サイズは0.4μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記第1内部電極及び前記第2内部電極それぞれの前記第1方向の平均サイズは0.4μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項15】
前記カバー部の前記第1方向の平均サイズは100μm以下である、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項16】
前記マージン部の前記第3方向の平均サイズは100μm以下である、請求項10に記載の積層型電子部品。
【請求項17】
複数の第1誘電体層及び前記第1誘電体層を間に挟んで交互に配置される第1内部電極及び第2内部電極を含んで静電容量を形成する活性部を含み、第1方向に互いに対向する第1面及び第2面、前記第1面及び第2面と連結され第2方向に互いに対向する第3面及び第4面、前記第1面~前記第4面と連結され第3方向に互いに対向する第5面及び第6面を含む本体と、
前記本体上に配置され、前記第1内部電極及び前記第2内部電極とそれぞれ連結される第1外部電極及び第2外部電極と、を含み、
前記第1誘電体層は第1誘電体組成物製であり、
前記第1誘電体組成物は安定化ジルコニアを含み、
前記安定化ジルコニアは、イットリア安定化ジルコニア、酸化マグネシウム安定化ジルコニア、酸化セリウム安定化ジルコニア、酸化アルミニウム安定化ジルコニア及び酸化カルシウム安定化ジルコニアのうち選択されたいずれか一つ以上を含む、積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi‐Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話など、様々な電子製品の印刷回路基板に装着されて電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
このような積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保証され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として使用されることができる。コンピュータ、モバイル機器など、各種の電子機器が小型化、高出力化するにつれて、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化に対する要求が増大している。
【0004】
一方、MLCCに使用される誘電体パウダーを製造する際に、誘電体パウダーを微粒化するためにミリング(milling)工程を用いることができるが、このとき、ジルコニウムビーズ(beads)を媒体(media)として使用することができる。ミリング工程の特性上、ジルコニウムビーズの一成分であるジルコニウム(Zr)が誘電体パウダーに不純物として流入することがあるが、不純物として流入するジルコニウムは、誘電体パウダーの電気的特性、誘電体の静電容量(dielectric capacity)、DF(誘電正接,dissipation factor)、BDV(破壊電圧,breakdown voltage)など、様々な特性に影響を及ぼし得る因子として究明されている。しかし、現在では、含量の制御が困難であるため、流入量の管理にのみ依存している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、誘電体組成物に安定化ジルコニアを添加して電気的特性、誘電体の静電容量、DF及びBDV等が向上した積層型電子部品を提供することである。
【0007】
但し、本発明が解決しようとするいくつかの課題は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品は、複数の第1誘電体層及び上記第1誘電体層を間に挟んで交互に配置される第1内部電極及び第2内部電極を含んで静電容量を形成する活性部を含み、第1方向に互いに対向する第1面及び第2面、上記第1面及び第2面と連結され、第2方向に互いに対向する第3面及び第4面、上記第1面~第4面と連結され、第3方向に互いに対向する第5面及び第6面を含む本体と、上記本体上に配置され、上記第1内部電極及び第2内部電極とそれぞれ連結される第1外部電極及び第2外部電極と、を含み、上記第1誘電体層は安定化ジルコニアを含むことができる。
【0009】
本発明の他の一実施形態に係る積層型電子部品は、複数の第1誘電体層及び上記第1誘電体層を間に挟んで交互に配置される第1内部電極及び第2内部電極を含んで静電容量を形成する活性部を含み、第1方向に互いに対向する第1面及び第2面、上記第1面及び第2面と連結され、第2方向に互いに対向する第3面及び第4面、上記第1面~第4面と連結され、第3方向に互いに対向する第5面及び第6面を含む本体と、上記本体上に配置され、上記第1内部電極及び第2内部電極とそれぞれ連結される第1外部電極及び第2外部電極と、を含み、上記第1誘電体層は第1誘電体組成物製であり、上記第1誘電体組成物は安定化ジルコニアを含み、且つ上記安定化ジルコニアは、イットリア安定化ジルコニア、酸化マグネシウム安定化ジルコニア、酸化セリウム安定化ジルコニア、酸化アルミニウム安定化ジルコニア、及び酸化カルシウム安定化ジルコニアのうち選択されたいずれか一つ以上を含むことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のいくつかの効果の一つは、積層型電子部品の電気的特性、誘電体の静電容量、DF及びBDVなどが向上することである。
【0011】
但し、本発明の多様かつ有益な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものである。
【
図2】本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の本体を分解して概略的に示したものである。
【
図3】
図1のI-I’線に沿った断面図を概略的に示したものである。
【
図4】
図1のII-II’線に沿った断面図を概略的に示したものである。
【
図5】本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の第1誘電体層をTEM‐EDSで撮影したイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために誇張されてもよく、図面上の同じ符号で示される要素は同じ要素である。
【0014】
そして、図面において、本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、図面に示された各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜上、任意に示しているため、本発明が必ずしも図示されたものに限定されるものではない。なお、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素については、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0015】
図面において、第1方向は積層方向又は厚さT方向、第2方向は長さL方向、第3方向は幅W方向と定義することができる。
【0016】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものであり、
図2は、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の本体を分解して概略的に示したものであり、
図3は、
図1のI-I’線に沿った断面図を概略的に示したものであり、
図4は、
図1のII-II’線に沿った断面図を概略的に示したものであり、
図5は、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の第1誘電体層をTEM‐EDSで撮影した画像イメージである。
【0017】
以下、
図1~
図5を参照して、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品について詳細に説明する。但し、積層型電子部品の一例として、積層セラミックキャパシタについて説明するが、本発明は誘電体組成物を用いる様々な電子製品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、又はサーミスタなどにも適用することができる。
【0018】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品100は、複数の第1誘電体層111a及び上記第1誘電体層111aを間に挟んで交互に配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで静電容量(キャパシタンス)を形成する活性部Acを含み、第1方向に互いに対向する第1面1及び第2面2、上記第1面1及び第2面2と連結され、第2方向に互いに対向する第3面3及び第4面4、上記第1面~第4面(1、2、3、4)と連結され、第3方向に互いに対向する第5面5及び第6面6を含む本体と、上記本体110上に配置され、上記第1内部電極121及び第2内部電極122とそれぞれ連結される第1外部電極131及び第2外部電極132と、を含み、上記第1誘電体層111aは安定化ジルコニアを含むことができる。
【0019】
本明細書において、「誘電体層111」は、活性部Acに含まれる第1誘電体層111a、カバー部112、113に含まれる第2誘電体層111b及びマージン部114、115に含まれる第3誘電体層111bを意味することができる。第1誘電体層~第3誘電体層(111a、111b、111c)に対する詳細な説明は後述する。
【0020】
本体110は、第1誘電体層111a及び内部電極121、122が交互に積層されている。
【0021】
より具体的には、本体110は、本体110の内部に配置され、第1誘電体層111aを間に挟んで互いに対向するように交互に配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで静電容量を形成する活性部Acを含むことができる。
【0022】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように、本体110は六面体形状又はこれと類似の形状からなることができる。焼成工程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0023】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1面1及び第2面2、第1面1及び第2面2と連結され、第2方向に互いに対向する第3面3及び第4面4、第1面~第4面(1、2、3、4)と連結され、第3方向に互いに対向する第5面5及び第6面6を有することができる。
【0024】
本体110を形成する複数の第1誘電体層111aは焼成された状態であって、隣接する第1誘電体層111a間の境界は走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認し難いほど一体化することができる。
【0025】
第1誘電体層111aを形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り、制限されない。一般に、ペロブスカイト(ABO3)系材料を使用することができ、例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料又はチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができる。チタン酸バリウム系材料は、BaTiO3系セラミック粉末を含むことができ、セラミック粉末の例示として、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)等が一部固溶した(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)又はBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)などが挙げられる。
【0026】
また、第1誘電体層111aを形成する原料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などの粉末に、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などを添加することができる。
【0027】
一方、MLCCに使用される誘電体パウダーを製造する際に、誘電体パウダーを微粒化するためにミリング(milling)工程を用いることができるが、このとき、ジルコニウムビーズ(beads)を媒体(media)として使用することができる。ミリング工程の特性上、ジルコニウムビーズの一成分であるジルコニウム(Zr)が誘電体パウダーに不純物として流入することがあるが、不純物として流入するジルコニウムは、誘電体パウダーの電気的特性、誘電体の静電容量、DF(誘電正接,dissipation factor)、BDV(破壊電圧,breakdown voltage)など、様々な特性に影響を及ぼし得る因子として究明されている。しかし、現在では、含量の制御が困難であるため、流入量の管理にのみ依存している。
【0028】
本発明の一実施形態は、誘電体組成物に安定化ジルコニアを添加して積層型電子部品の電気的特性、容量特性、DF及びBDV特性を向上させることができる効果がある。
【0029】
より具体的に、静電容量を形成する活性部Acに含まれる第1誘電体層111aは、安定化ジルコニアを含むことができる。
【0030】
ここで、安定化ジルコニアは、イットリア安定化ジルコニア、酸化マグネシウム安定化ジルコニア、酸化セリウム安定化ジルコニア、酸化アルミニウム安定化ジルコニア及び酸化カルシウム安定化ジルコニアのうち一つ以上を含むことができる。
【0031】
安定化ジルコニアとは、ジルコニウムの温度変化による体積変化時に伴われる可能性のある結晶粒(grain)が崩れるという問題点などを防止するために、ジルコニウムに安定化剤を添加した物質と定義することができる。例えば、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)は、酸化ジルコニウム(ジルコニア)に酸化イットリウム(イットリア)を添加して常温でも安定するようにした物質に該当する。ジルコニアにイットリアが添加されることによって、Zr4+イオンの一部がY3+に置き換えられる。これにより、4個のO2-イオンの代わりに3個のO2-イオンに置き換えられ、結果的に、酸素空孔(oxygen vacancy)が作られる。このようにして生成された酸素空孔によって、イットリア安定化ジルコニアはO2-イオン伝導性を有するようになり、温度が高いほど伝導度が良くなり、強度(toughness)及び靭性(strength)なども向上することができる。
【0032】
一方、安定化ジルコニアの種類は、前述した種類に限定されるものではなく、ミリング工程において、媒体(メディア)として使用されるビーズ(beads)の種類に応じて、又は様々な環境で電気的特性を向上させようとする場合に応じて、必要な種類の安定化ジルコニアを添加することができる。
【0033】
また、第1誘電体層111aは、第1誘電体組成物を用いて形成することができ、上記第1誘電体組成物は安定化ジルコニアを含むことができる。
【0034】
第1誘電体組成物に添加される安定化ジルコニアは、誘電体パウダーの焼結促進剤の役割を果たすことができ、これにより、焼成工程時に誘電体結晶粒(grain)が粒成長するようになり、誘電率が上昇して静電容量が増加する。すなわち、第1誘電体組成物に安定化ジルコニアを添加して第1誘電体層111aを形成する場合、活性部Acの電気的特性が向上できる。
【0035】
例えば、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)の場合、焼結温度が1,300℃以上であって、一般的な誘電体組成物として使用されるBaTiO3(BT)より高いため、BTとYSZとを混合して焼結すると、2次相として残っている合成物の形態となることができ、焼結温度をより高める場合には、YSZがイットリウム(Y)及びジルコニウム(Zr)に分解することもできる。熱処理温度、雰囲気、工程条件に応じて、YSZが焼成された後でも、分解せずにYSZとして残ることができ、又は一部がY及びZrに分解するか、すべてのYSZがY及びZrに分解することができる。このとき、YSZ、Y、Zrの如何なる形態で存在しても、電気的特性を向上させることができるため、製造工程に応じて適宜制御することが好ましい。
【0036】
このとき、イットリア安定化ジルコニアが微量(0ppm超)添加されても電気的特性が向上でき、200ppm以上添加されることが好ましい。
【0037】
本発明の一実施形態において、活性部Acに含まれる複数の第1誘電体層111aのうち少なくとも一つ以上はジルコニウム(Zr)を含むことができる。
【0038】
また、本発明の一実施形態において、活性部Acに含まれる複数の第1誘電体層111aのうち少なくとも一つ以上はイットリウム(Y)を含むことができる。
【0039】
第1誘電体層111aに含まれるジルコニウム(Zr)及びイットリウム(Y)は、第1誘電体組成物に安定化ジルコニア、例えば、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を添加することにより、第1誘電体層111aにジルコニウム(Zr)又はイットリウム(Y)元素が検出された結果によるものであることができる。
【0040】
図5を参照すると、透過型電子顕微鏡のエネルギー分散X線分光法(Transmission Electron Microscopy‐Energy Dispersive X-ray Spectroscopy、TEM‐EDS)を用いてイットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ジルコニウム(Zr)及びイットリウム(Y)の成分分析を行うことができる。
【0041】
焼成が完了した積層型電子部品であるチップ(chip)を、第1方向及び第2方向の断面を基準として第3方向の1/2地点まで研磨した後、任意の第1誘電体層111aをTEM‐EDSで分析して成分分析を行うことができる。このとき、第1方向及び第2方向の断面の中央地点を基準として設定した領域に位置するイットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ジルコニウム(Zr)及びイットリウム(Y)の成分を分析することができる。
【0042】
また、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ジルコニウム(Zr)及びイットリウム(Y)は、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma Optical Emission Spectroscopy、ICP‐OES)設備を用いて定量分析を行うことができる。
【0043】
ICP‐OES分析のためには前処理条件が重要であり、前処理条件は以下の通りである。
【0044】
0.1~0.2gのサンプルチップ(chip)とLiBO2(リチウムメタボレート)1~2gを10~20倍希釈して白金るつぼに入れ、温度条件1050℃で3時間の間溶融を行う。溶融した白金るつぼを250mlのビーカー(beaker、low 250ml)に入れ、10%濃度の硝酸水溶液を白金るつぼが沈む(約200ml)まで注ぐ。時計皿でビーカーを覆った後、60~70℃の恒温槽で超音波溶解を60分間行う。このとき、白金るつぼの内部に残留物がなくなるまで超音波溶解を行う。白金るつぼをビーカーから取り出し、残留物が残っているか確認した後、超純水(UPW、ultrapure water)で濾液をすすぐ。サンプルチップが溶融した試料を常温から25℃まで降温させた後、250mlのフラスコ(flask)に注ぎ、超純水(UPW)を追加して250mlの容積に合わせる。
【0045】
その後、Prerkin Elmer Avio 200設備を用いてジルコニウム(Zr)及びイットリウム(Y)の含量を定量分析することができる。標準試料を用いて10倍、100倍、1000倍希釈して検量線を設定することができ、このとき、99.99%以上を満たす場合に有効性があると見なすことができる。標準試料によって設定された検量線を用いて成分分析を行う際に、定量化された試料のppmを分析することができる。このようにして測定された含量は平均含量を意味することができる。
【0046】
第1誘電体層111aの厚さtdは特に限定する必要はない。
【0047】
但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、第1誘電体層111aの厚さは0.6μm以下であってもよく、より好ましくは0.4μm以下であってもよい。
【0048】
ここで、第1誘電体層111aの厚さtdは、後述する第2誘電体層111b及び第3誘電体層(図示せず)の厚さを意味することができる。
【0049】
第1誘電体層111aの厚さtdは、第1内部電極121と第2内部電極122との間に配置される第1誘電体層111aの厚さtdを意味することができる。
【0050】
一方、第1誘電体層111aの厚さtdは、第1誘電体層111aの第1方向のサイズを意味することができる。また、第1誘電体層111aの厚さtdは、第1誘電体層111aの平均厚さtdを意味することができ、第1誘電体層111aの第1方向の平均サイズを意味することができる。
【0051】
第1誘電体層111aの第1方向の平均サイズは、本体110の第1及び第2方向の断面(cross‐section)を倍率1万倍の走査型電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、一つの第1誘電体層111aを第2方向に等間隔である30個の地点で第1方向のサイズを測定した平均値であってもよい。上記等間隔である30個の地点は活性部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の第1誘電体層111aに拡張して平均値を測定すると、第1誘電体層111aの第1方向の平均サイズをさらに一般化することができる。
【0052】
内部電極121、122は、第1誘電体層111aと交互に積層されてもよい。
【0053】
内部電極121、122は第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができ、第1内部電極121及び第2内部電極122は本体110を構成する第1誘電体層111aを間に挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3面3及び第4面4にそれぞれ露出することができる。
【0054】
より具体的に、第1内部電極121は第4面4と離隔し、第3面3を介して露出することができ、第2内部電極122は第3面3と離隔し、第4面4を介して露出することができる。本体110の第3面3には、第1外部電極131が配置されて第1内部電極121と連結され、本体110の第4面4には、第2外部電極132が配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0055】
すなわち、第1内部電極121は第2外部電極132とは連結されず、第1外部電極131と連結され、第2内部電極122は第1外部電極131とは連結されず、第2外部電極132と連結されることができる。このとき、第1内部電極121及び第2内部電極122は、その間に配置された第1誘電体層111aによって互いに電気的に分離されてもよい。
【0056】
一方、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと、第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層した後、焼成して形成されてもよい。
【0057】
内部電極121、122を形成する材料は特に制限されず、電気伝導性に優れた材料を使用することができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含むことができる。
【0058】
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを使用することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
一方、内部電極121、122の厚さteは特に限定する必要はない。
【0060】
但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、内部電極121、122の厚さは0.6μm以下であってもよく、より好ましくは0.4μm以下であってもよい。
【0061】
ここで、内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の第1方向のサイズを意味することができる。また、内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の平均厚さteを意味することができ、内部電極121、122の第1方向の平均サイズを意味することができる。
【0062】
内部電極121、122の第1方向の平均サイズは、本体110の第1及び第2方向の断面(cross‐section)を倍率1万倍の走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、一つの内部電極121、122を第2方向に等間隔である30個の地点で第1方向のサイズを測定した平均値であってもよい。上記等間隔である30個の地点は活性部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の内部電極121、122に拡張して平均値を測定すると、内部電極121、122の第1方向の平均サイズをさらに一般化することができる。
【0063】
一方、本体110は、活性部Acの第1方向の両端面(end‐surface)上に配置されるカバー部112、113を含むことができる。
【0064】
より具体的に、活性部Acの第1方向の上部に配置される上部カバー部112、及び活性部Acの第1方向の下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。
【0065】
本発明の一実施形態において、カバー部112、113は第2誘電体層111bを含み、第2誘電体層111bは第2誘電体組成物を用いて形成されるが、第2誘電体組成物は安定化ジルコニアを含まなくてもよい。このとき、第2誘電体層111bには安定化ジルコニアを含まないことが好ましい。
【0066】
より具体的に、上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の第2誘電体層111b又は2つ以上の第2誘電体層111bを活性部Acの第1方向の上下面にそれぞれ第1方向に積層して形成することができる。
【0067】
第2誘電体層111bは、第2誘電体組成物を用いて形成されてもよく、第1誘電体層111aを形成する第1誘電体組成物とは異なり、第2誘電体組成物は安定化ジルコニアを含まなくてもよい。
【0068】
第1誘電体組成物に添加される安定化ジルコニアは電気的特性を向上させるためのものであって、誘電体の静電容量に寄与しないカバー部112、113の第2誘電体層111bを形成する第2誘電体組成物には、安定化ジルコニアが添加されなくてもよい。
【0069】
本発明の一実施形態において、第1誘電体層111aに含まれるジルコニウム(Zr)の平均含量は、第2誘電体層111bに含まれるジルコニウム(Zr)の平均含量より高くてもよい。また、第1誘電体層111aに含まれるイットリウム(Y)の平均含量は、第2誘電体層111bに含まれるイットリウム(Y)の平均含量より高くてもよい。
【0070】
積層型電子部品の焼成過程のうち、第1誘電体層111aを含む活性部Acと第2誘電体層111bを含むカバー部112、113との境界面において熱処理による拡散が行われることによって、第1誘電体組成物に含まれた安定化ジルコニア、例えば、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)によりカバー部112、113の第2誘電体層111bにジルコニウム(Zr)又はイットリウム(Y)などが含まれることができる。
【0071】
第1誘電体層111a及び第2誘電体層111bに含まれたジルコニウム(Zr)又はイットリウム(Y)の平均含量は、前述のICP‐OES分析装置を用いた定量分析により測定することができ、活性部Acとカバー部112、113、又は後述するマージン部114、115とを区分して各構成に含まれた成分を定量的に分析することができる。
【0072】
第2誘電体組成物は、安定化ジルコニアを除いては、第1誘電体組成物と同じ材料を含むことができる。
【0073】
すなわち、カバー部112、113はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0074】
カバー部112、113は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0075】
また、上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極121、122を含まなくてもよい。
【0076】
一方、カバー部112、113の厚さtcは特に限定する必要はない。
【0077】
但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さtcは100μm以下であってもよく、好ましくは30μm以下であってもよく、超小型製品では、より好ましく20μm以下であってもよい。
【0078】
ここで、カバー部112、113の厚さtcは、カバー部112、113の第1方向のサイズを意味することができる。また、カバー部112、113の厚さtcは、カバー部112、113の平均厚さtcを意味することができ、カバー部112、113の第1方向の平均サイズを意味することができる。
【0079】
カバー部112、113の第1方向の平均サイズは、本体110の第1及び第3方向の断面(cross‐section)を倍率1万倍の走査型電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、一つのカバー部112、113を第3方向に等間隔である30個の地点で厚さを測定した平均値を測定することができる。上記等間隔である30個の地点は、上部カバー部112で指定することができる。また、このような平均値の測定を下部カバー部113に拡張して平均値を測定すると、カバー部112、113の第1方向の平均サイズをさらに一般化することができる。
【0080】
本発明の一実施形態によると、本体110は、活性部Acの第3方向の両端面(end‐surface)上に配置されるマージン部114、115をさらに含むことができる。
【0081】
より具体的に、マージン部114、115は、活性部Acの第5面5上に配置された第1マージン部114及び第6面6上に配置された第2マージン部115を含むことができる。
【0082】
マージン部114、115は、図示のように、本体110の第1及び第3方向に切断した断面(cross‐section)を基準として、第1及び第2内部電極121、122の第3方向の両端と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0083】
マージン部114、115は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0084】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部114、115が形成される箇所を除き、導電性ペーストを塗布して内部電極121、122を形成し、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極121、122が活性部Acの第5面5及び第6面6に露出するように切断した後、単一の第3誘電体層(図示せず)又は2つ以上の第3誘電体層(図示せず)を活性部Acの第3方向の両端面(end‐surface)上に第3方向に積層して形成することができる。
【0085】
本発明の一実施形態において、マージン部114、115は第3誘電体層(図示せず)を含み、第3誘電体層(図示せず)は第3誘電体組成物を用いて形成されるが、第3誘電体組成物は安定化ジルコニアを含まなくてもよい。
【0086】
このとき、第1マージン部114及び第2マージン部115は、単一の第3誘電体層(図示せず)又は2つ以上の第3誘電体層(図示せず)を活性部Acの第3方向の両端面(end‐surface)にそれぞれ第3方向に積層して形成することができる。
【0087】
第3誘電体層(図示せず)は、第3誘電体組成物を用いて形成されてもよく、第1誘電体層111aを形成する第1誘電体組成物とは異なり、第3誘電体組成物は安定化ジルコニアを含まなくてもよい。
【0088】
第1誘電体組成物に添加される安定化ジルコニアは電気的特性を向上させるためのものであり、誘電体の静電容量に寄与しないマージン部114、115の第3誘電体層(図示せず)を形成する第3誘電体組成物には安定化ジルコニアが添加されなくてもよい。
【0089】
本発明の一実施形態において、第1誘電体層111aに含まれるジルコニウム(Zr)の平均含量は、第3誘電体層(図示せず)に含まれるジルコニウム(Zr)の平均含量より高くてもよく、第1誘電体層111aに含まれるイットリウム(Y)の平均含量は、第3誘電体層(図示せず)に含まれるイットリウム(Y)の平均含量より高くてもよい。
【0090】
積層型電子部品の焼成過程のうち、第1誘電体層111aを含む活性部Acと第3誘電体層(図示せず)を含むマージン部114、115との境界面において熱処理による拡散が行われることによって、第1誘電体組成物に含まれた安定化ジルコニア、例えば、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)により、マージン部114、115の第3誘電体層にジルコニウム(Zr)又はイットリウム(Y)などが含まれることができる。
【0091】
マージン部114、115の第3誘電体層(図示せず)に含まれたジルコニウム(Zr)又はイットリウム(Y)の平均含量は、ICP‐OES分析装置を用いた定量分析により測定することができる。
【0092】
第3誘電体組成物は、安定化ジルコニアを除いては第1誘電体組成物と同じ材料を含むことができる。あるいは、第3誘電体組成物は、第2誘電体組成物と同じ材料に該当することができる。
【0093】
すなわち、マージン部114、115はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0094】
マージン部114、115は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0095】
また、第1マージン部114及び第2マージン部115は、内部電極121、122を含まなくてもよい。
【0096】
一方、マージン部114、115の幅は特に限定する必要はない。
【0097】
但し、積層型電子部品100の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、マージン部114、115の幅は100μm以下であってもよく、好ましくは30μm以下であってもよく、超小型製品では、より好ましく20μm以下であってもよい。
【0098】
ここで、マージン部114、115の幅は、マージン部114、115の第3方向のサイズを意味することができる。また、マージン部114、115の幅は、マージン部114、115の平均幅を意味することができ、マージン部114、115の第3方向の平均サイズを意味することができる。
【0099】
マージン部114、115の第3方向の平均サイズは、本体110の第1及び第3方向の断面(cross‐section)を倍率1万倍の走査型電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、一つのマージン部114、115を第1方向に等間隔である30個の地点で第3方向のサイズを測定した平均値であってもよい。上記等間隔である30個の地点は、第1マージン部114で指定することができる。また、このような平均値の測定を第2マージン部115に拡張して平均値を測定すると、マージン部114、115の第3方向の平均サイズをさらに一般化することができる。
【0100】
本発明の一実施形態では、セラミック電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造について説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは、内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変わることができる。
【0101】
外部電極131、132は、本体110上に配置されて内部電極121、122と連結されてもよい。
【0102】
より具体的に、外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4にそれぞれ配置され、第1内部電極121及び第2内部電極122とそれぞれ連結される第1外部電極131及び第2外部電極132を含むことができる。すなわち、第1外部電極131は、本体の第3面3に配置されて第1内部電極121と連結されることができ、第2外部電極132は、本体の第4面4に配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0103】
外部電極131、132は、金属などのように電気伝導性を有するものであれば、如何なる物質を使用して形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されてもよく、さらに、多層構造を有してもよい。
【0104】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132a、及び電極層131a、132a上に配置されるめっき層131b、132bを含むことができる。
【0105】
電極層131a、132aに対するより具体的な例として、電極層131a、132aは、導電性金属及びガラスを含む焼成電極であってもよく、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であってもよい。
【0106】
また、電極層131a、132aは、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順次に形成された形態であってもよい。
【0107】
また、電極層131a、132aは、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されてもよく、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであってもよい。
【0108】
電極層131a、132aに使用される導電性金属は、静電容量の形成のために上記内部電極121、122と電気的に連結できる材質であれば、特に制限されず、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。電極層131a、132aは、上記導電性金属粉末にガラスフリットを添加して設けられた導電性ペーストを塗布した後、焼成することにより形成することができる。
【0109】
めっき層131b、132bは実装特性を向上させる役割を果たす。
【0110】
めっき層131b、132bの種類は特に限定されず、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む単一層のめっき層131b、132bであってもよく、複数の層で形成されてもよい。
【0111】
めっき層131b、132bに対するより具体的な例として、めっき層131b、132bは、Niめっき層又はSnめっき層であってもよく、電極層131a、132a上にNiめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であってもよく、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であってもよい。また、めっき層131b、132bは、複数のNiめっき層及び/又は複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0112】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品100は、3216(長さ×幅、3.2mm×1.6mm)サイズを一実施形態として説明したが、特にこれに限定されるものではない。
【0113】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これは、発明の具体的な理解を助けるためのものであって、本発明の範囲が実施例によって限定されるものではない。
【0114】
(実施例)
下記表1は、活性部Acの領域である第1誘電体層111aにYSZを添加せずにサンプルチップを製造した試料1及びYSZを添加してサンプルチップを製造した試料2と試料3の電気的特性を評価したデータである。
【0115】
試料として使用されたサンプルチップ(chip)のサイズは、3216(長さ×幅、3.2mm×1.6mm)サイズで作製された。
【0116】
試料1は、YSZを添加しなかったBaTiO3系誘電体組成物を用いて作製したサンプルチップに該当する。
【0117】
試料2は、YSZを200ppm添加した誘電体組成物を用いて作製したサンプルチップに該当する。YSZを除く誘電体組成物の成分は試料1と同じである。
【0118】
試料3は、YSZを400ppm添加した誘電体組成物を用いて作製したサンプルチップに該当する。添加されたYSZの含量は試料2よりも高い。YSZを除く誘電体組成物の成分は試料1と同じである。
【0119】
DF(dissipation factor)は、誘電体において、原子周辺の電子の振動により、入力信号が有するエネルギーが失われ、入力信号の大きさが減少し、熱が発生した程度を示す誘電体の固有定数である。Cは誘電体の静電容量(キャパシタンス)を表す値であって、単位はμFである。静電容量百分率(キャパシタンスパーセンテージ)は、3216(長さ×幅、3.2mm×1.6mm)サイズのうち、基準となるいずれか一つの静電容量値である4.7μFに対する静電容量の変化率を意味する。
【0120】
定量分析の方法としてはICP‐OESによる分析が可能であり、ICP‐OES分析のためには前処理条件が重要であり、前処理条件は以下の通りである。
【0121】
0.1~0.2gのサンプルチップ(chip)とLiBO2(リチウムメタボレート)1~2gを10~20倍希釈して白金るつぼに入れ、1050℃で3時間の間溶融を行う。溶融した白金るつぼを250mlのビーカー(beaker)に入れ、10%の硝酸水溶液を白金るつぼが沈む(約200ml)まで注ぐ。時計皿でビーカーを覆った後、60~70℃の恒温槽で超音波溶解を60分間行う。白金るつぼの内部に残留物がなくなるまで超音波溶解を行う。白金るつぼをビーカーから取り出し、残留物を確認した後、超純水(UPW)で濾液をすすぐ。
【0122】
チップが溶融した試料を常温に放置して25℃まで降温されると、250mlのフラスコ(flask)に注ぎ、超純水(UPW)を追加して250mlの容積に合わせる。
【0123】
Prerkin Elmer Avio 200設備でZr及びY含量の定量分析を行い、標準試料を用いて10倍、100倍、1000倍希釈して検量線を設定し、99.99%以上を満たす場合に有効性を有する。標準試料によって設定された検量線を用いて成分分析を行うときに、定量化された試料のppmを分析することができる。
【0124】
【0125】
試料1はYSZが添加されていない比較例であって、添加剤として添加されるZrO2及びY2O3に対するICP‐OES分析時にZr及びYが検出された。
【0126】
試料2及び試料3は、YSZがそれぞれ200ppm及び400ppmずつ添加された実施例であって、YSZが添加されていない試料1に比べて、電気的特性である平均DF(DF Avg)、平均C(C avg)及び静電容量百分率(キャパシタンスパーセンテージ)が増加したことが確認できる。
【0127】
添加されたYSZの含量は、試料1<試料2<試料3(試料1はYSZ未添加)を満たし、添加されるYSZの含量が増加するほど、最終製品であるチップにおけるZr及びYの検出含量が増大することが確認できると共に、電気的特性が向上することが分かる。
【0128】
要するに、誘電体の静電容量を形成する活性部Acの第1誘電体層を、YSZを添加した誘電体組成物を用いて形成する場合、YSZを添加しなかった誘電体組成物を用いて形成する場合に比べて電気的特性が向上することが確認できる。
【0129】
本明細書で使用される「一実施形態」という表現は、互いに同じ実施形態を意味するものではなく、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかし、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と結合して実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態で説明された事項が他の一実施形態に説明されていなくても、他の一実施形態においてその事項と反対又は矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連する説明と理解することができる。
【0130】
以上のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定されるものとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者により様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属すると言える。
【0131】
本発明で使用される用語は、単に一実施形態を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。このとき、単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味ではない限り、複数の表現を含む。
【符号の説明】
【0132】
100:積層型電子部品
110:本体
111:誘電体層
111a:第1誘電体層
111b:第2誘電体層
112、113:カバー部
114、115:マージン部
121、122:内部電極
131、132:外部電極
131a、132a:電極層
131b、132b:めっき層