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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029767
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】ビューイングパネルおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/34 20060101AFI20240228BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20240228BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20240228BHJP
   G02B 1/115 20150101ALI20240228BHJP
【FI】
C03C17/34 Z
B32B17/10
G02B5/26
G02B1/115
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023133979
(22)【出願日】2023-08-21
(31)【優先権主張番号】10 2022 121 125.8
(32)【優先日】2022-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(71)【出願人】
【識別番号】323003001
【氏名又は名称】ショット スイス エス・ア
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT Suisse SA
【住所又は居所原語表記】Rue Galilee 2,1400 Yverdon-les-Bains,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フランク ヴォルフ
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ ブラウンエック
【テーマコード(参考)】
2H148
2K009
4F100
4G059
【Fターム(参考)】
2H148FA05
2H148FA12
2H148FA24
2K009AA02
2K009BB02
2K009CC02
2K009CC03
4F100AA12B
4F100AA17B
4F100AB01B
4F100AG00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CC00B
4F100EH46B
4F100JA02A
4F100JN01
4F100JN06
4F100JN06B
4F100JN30
4G059AA11
4G059AB11
4G059AC04
4G059EA07
4G059EA12
4G059GA02
4G059GA04
4G059GA12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】カバーパネルとして使用するためのビューイングパネルを提供する。
【解決手段】パネル状のガラス質基材2と、該基材の少なくとも一方の表面上に配置されたコーティング30とを備えたビューイングパネル1であって、該ビューイングパネル1は、400~700nmの波長範囲において、15%未満、好ましくは10%未満の平均透過率τavg,400nm-700nmを有し、ここで、τavg,400nm-700nmは、

と定義され、かつ/または各波長において、15%未満、好ましくは10%未満、好ましくは5%未満、特に好ましくは1%未満の分光透過率を有し、875nm~1600nmの波長範囲において、少なくとも1つの波長において、少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%の透過率を有する、ビューイングパネル、および該ビューイングパネルの使用を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル状のガラス質基材と、前記基材の少なくとも一方の表面上に配置されたコーティングとを備えたビューイングパネルであって、
前記ビューイングパネルは、400~700nmの波長範囲において、15%未満、好ましくは10%未満の平均透過率τavg,400nm-700nmを有し、ここで、τavg,400nm-700nmは、
【数1】
と定義され、かつ/または
各波長において、15%未満、好ましくは10%未満、好ましくは5%未満、特に好ましくは1%未満の分光透過率を有し、
前記ビューイングパネルは、875nm~1600nmの波長範囲において、少なくとも1つの波長において、少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%の透過率を有する、ビューイングパネル。
【請求項2】
前記ビューイングパネルが、少なくとも0.5mmで最大で12mm、好ましくは少なくとも0.5mmで最大で6mm、特に好ましくは少なくとも2mmで最大で6mmの厚さを有する、請求項1記載のビューイングパネル。
【請求項3】
前記コーティングが、金属および/または半金属の酸化物および/または窒化物および/または酸窒化物を含む少なくとも1つの層を有する、請求項1または2記載のビューイングパネル。
【請求項4】
前記コーティングが、少なくとも125nmで有利には最大で2500nm、好ましくは最大で1500nmの厚さを有する、請求項1から3までのいずれか1項記載のビューイングパネル。
【請求項5】
前記ビューイングパネルが、875nm~1600nmの波長範囲において、少なくとも1つの波長において、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%、非常に特に好ましくは少なくとも97%の透過率を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載のビューイングパネル。
【請求項6】
有利には0°~60°、特に好ましくは0~70°の測定角度で求められた、875nm~1600nmの範囲の少なくとも1つの波長における分光反射率ρλが、最大で14%、好ましくは最大で12%、特に好ましくは最大で10%であり、
かつ/または
有利には0°~60°、好ましくは0~70°の測定角度で求められた、875nm~1600nmの範囲の少なくとも1つの波長における前記ビューイングパネルの前記分光反射率ρλが、前記ガラス質基材の(未コーティングの)表面の前記分光反射率よりも、少なくとも2%ポイント、好ましくは少なくとも4%ポイント、好ましくは少なくとも6%ポイント低く、
かつ/または
1530nm~1570nm、好ましくは1540nm~1560nmおよび/または880nm~930nm、好ましくは890nm~920nmおよび/または1300nm~1340nm、好ましくは1310~1330の波長範囲における前記ビューイングパネルの表面の平均分光反射率ρmittelが、0°~45°の測定角度では最大で4%、好ましくは最大で2%、特に好ましくは最大で1%であり、かつ/または60°の測定角度で測定した場合には最大で7%、好ましくは最大で5%、最大で4%である、請求項1から5までのいずれか1項記載のビューイングパネル。
【請求項7】
1530nm~1570nm、好ましくは1540nm~1560nmおよび/または880nm~930nm、好ましくは890nm~920nmおよび/または1300nm~1340nm、好ましくは1310~1330の波長範囲における前記平均透過率Tavgが、0°の測定角度では少なくとも90%、好ましくは少なくとも91%、特に好ましくは少なくとも93%、さらに好ましくは少なくとも96%であり、かつ/または45°の測定角度では少なくとも89%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも92%、さらに好ましくは少なくとも95%であり、かつ/または60°の測定角度では少なくとも87%、好ましくは少なくとも88%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも93%であり、かつ/または70°の測定角度では少なくとも84%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも87%、さらに好ましくは90%であり、
かつ/または
30~60°の少なくとも1つの測定角度での、875nm~1600nm、好ましくは880nm~1600nmの範囲の少なくとも1つの波長における前記ビューイングパネルのs偏光の前記分光透過率とp偏光の前記分光透過率との差ΔTs-p,polが、3%ポイント未満、好ましくは2%ポイント未満、特に好ましくは1%ポイント未満である、請求項1から6までのいずれか1項記載のビューイングパネル。
【請求項8】
前記ガラス質基材が、3×10-6/K~14×10-6/K、好ましくは5×10-6/K~12×10-6/K、特に好ましくは7×10-6/K~11×10-6/Kの熱膨張係数(-30℃~70℃)を有するガラスを含む、請求項1から7までのいずれか1項記載のビューイングパネル。
【請求項9】
ベイヤー試験後のヘイズ値が、最大で4%、好ましくは最大で2%、特に好ましくは最大で1%増加している、請求項1から8までのいずれか1項記載のビューイングパネル。
【請求項10】
0~30°、好ましくは0~45°、特に好ましくは0~60°の角度範囲での、CIE 1931に準拠した前記ビューイングパネルの明所視反射色が、x=0.20~0.4、y=0.20~0.4であり、好ましくはx=0.25~0.33、y=0.23~0.33である、請求項1から9までのいずれか1項記載のビューイングパネル。
【請求項11】
カバーパネルとしての、特にレーザのカバーパネルとしての、特にLIDARシステムの一部としてのレーザのカバーパネルとしての、または撮像システムのカバーパネルとしての、特に環境の3D測定用もしくは速度測定用機器の撮像システムのカバーパネルとしての、請求項1から10までのいずれか1項記載のビューイングパネルの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総じて、コーティングを備えた少なくとも1つのパネル状のガラス質基材を含むビューイングパネル、およびその使用に関する。
【0002】
発明の背景
ビューイングパネルとは、基材材料で構成された少なくとも1つのパネルを含むパネル状の構造体であって、該材料は、少なくとも選択された波長範囲に対して透明であるかまたは最低の透過率を有するものとする構造体であると理解される。この材料は通常は、非晶質材料であり、特にガラスである。パネル状の基材の片面または両面にコーティングを施すことができ、このコーティングは、その性質に応じて、ビューイングパネルの光学的特性および機械的特性の双方に影響を与えることができる。特にガラスの場合、1つ以上の適切なコーティングを施すことで、それぞれの用途に望ましい有利な、またはさらには必要な特性を得ることができる。例えば、適切なコーティングを施すことで、ガラスの機械的耐久性を著しく向上させることができる。例えば、適切にコーティングを施した板ガラスは、耐傷性の向上を示し得るため、機械的負荷の増大を考慮しなければならない用途にも、こうした板ガラスを使用することができる。
【0003】
原理的には、このようなビューイングパネルを、総じて、部品を保護するカバーパネルとして使用することもできる。例えば、このようなカバーパネルを、例えば車両の距離測定用のレーザを具備したシステムの保護に使用することもできる。
【0004】
安全性の観点からは、レーザを具備したシステム向けのこのようなカバーパネルは、可視スペクトル範囲では低い透過率しか有しないことが有利となり得る。
【0005】
さらに、レーザの波長範囲では十分に高い透過率を有しつつ、可視スペクトル範囲では低い光透過率しか有しないフィルターガラスが知られている。多くの場合、これらの光学フィルターガラスは、自動車分野のカバーパネルに要求される十分な機械的および/または化学的安定性を有していない。要するに、このようなカバーの環境は過酷であり、こうした環境には、特に自動車分野での使用の場合、例えば、飛び石などの機械的負荷に加えて、洗車、湿気負荷、温度変動、塩霧、太陽光線も含まれる。
【0006】
適切ないわゆる「テクニカルガラス」、すなわち、追加のコーティングなしですでにビューイングパネルに使用できるガラス質材料は、多くの場合、十分なフィルター特性を有していない。
【0007】
そのため、電子部品、特にレーザを具備した電子部品には、良好な光学フィルター効果に加えて、自動車用途での使用に十分な機械的および化学的耐久性を有するカバーパネルが必要とされている。
【0008】
発明の課題
本発明の課題は、先行技術の前述の欠点を少なくとも部分的に緩和する、カバーパネルとして使用するためのビューイングパネルを提供することである。もう1つの態様は、該ビューイングパネルの使用に関する。
【0009】
発明の概要
本発明の課題は、独立請求項の主題によって解決される。好ましい実施形態および特定の実施形態は、従属請求項、明細書、図面およびさらなる開示に見出すことができる。
【0010】
したがって、本開示は、パネル状のガラス質基材と、該基材の少なくとも一方の表面上に配置されたコーティングとを備えたビューイングパネルに関する。ビューイングパネルは、400~700nmの波長範囲において、15%未満、好ましくは10%未満の平均透過率τavg,400nm-700nmを有し、ここで、τavg,400nm-700nmは、
【数1】
と定義される。
【0011】
代替的または付加的に、ビューイングパネルは、各波長において、15%未満、好ましくは10%未満、特に好ましくは5%未満、非常に特に好ましくは1%未満の分光透過率を有する。
【0012】
ビューイングパネルの透過率は、875nm~1600nmの波長範囲において、少なくとも1つの波長において、少なくとも75%、好ましくは80%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも97%である。
【0013】
ビューイングパネルのパネル状の基材は、カラーガラスを含む。これには特に、パネル状の基材がカラーガラスからなる場合、またはカラーガラスから形成されている場合も含まれる。
【0014】
可視スペクトル範囲で前述の透過特性を有するカラーガラスを使用することで、得られるビューイングパネルが人間の目に対して十分に不透明となるように調整される。そのため、何気なく見た人が、複合体の背後に何が配置されているかを認識することはできない。これにより、均一な色の印象が生まれる。さらに、場合により生じ得る、見る人の目の損傷を防ぐことができる。
【0015】
ビューイングパネルは有利には、カラーガラスが、875nm~1600nmの範囲とすることができるレーザ波長の範囲において、少なくとも1つの波長において、少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも97%の非常に高い純透過率を有するように構成されている。言い換えれば、カラーガラスは、レーザ光に対して十分な透明性を有する。
【0016】
一実施形態は、カチオンパーセント(Cat%)単位で以下のガラス組成を有するカラーガラスの使用を対象とする:
ケイ素 30~80、好ましくは35~75、特に好ましくは40~70
ホウ素 0~20
アルミニウム 0~2
ナトリウム 5~35、好ましくは7.5~30、特に好ましくは12~20、非常に特に好ましくは14~18
カリウム 2~25、好ましくは5~20、特に好ましくは6~15
ニッケル 0~0.5
クロム 0~0.5
コバルト 0.03~0.5
ここで、
Σナトリウム+カリウム 15~50、好ましくは20~45、特に好ましくは25~30
Σニッケル+クロム 0.1~0.5
であり、ニッケルとコバルトとの合計に対するナトリウムとカリウムとの合計の比に関して、
Σナトリウム+カリウム/Σニッケル+コバルト=70:1~200:1
が成り立つ。
【0017】
有利には、ガラスは、0.3:1~0.9:1の範囲、好ましくは0.4:1~0.8:1の範囲、非常に特に好ましくは0.6:1~0.7:1の範囲の、カリウムカチオン対ナトリウムカチオンのモル比を有する。
【0018】
ここで、「カチオンパーセント」という表現は、全カチオン含有量(単位:モル)に対するそれぞれのカチオンの相対的なモル割合であると理解される。ガラスには、カチオンの他にアニオンも含まれている。アニオン含有量は、同様にアニオンパーセント(アニオン%)で示される。上記組成を有するガラスは、アニオンとして有利にはO2-アニオン、Fアニオン、Brアニオン、Clアニオンおよび/またはSO 2-アニオンを含む。有利には、O2-イオンの割合は、少なくとも50アニオン%、有利には少なくとも70アニオン%、特に好ましくは少なくとも90アニオン%である。特に好ましい一実施形態では、O2-イオンの割合が、少なくとも98アニオン%、またはさらには少なくとも99アニオン%であることが提供される。一実施形態によれば、ガラス全体が酸化物系であり、すなわち、O2-イオンの割合は、100アニオン%である。
【0019】
さらなる一実施形態によれば、ガラスは、わずかな割合のハロゲン化物(Cl、Fおよび/またはI)しか含まない。有利には、ハロゲン化物の割合は、最大で3アニオン%、好ましくは最大で1アニオン%である。有利には、ガラスは、ハロゲン化物を含まない。他の実施形態は、少なくとも0.1アニオン%、好ましくは少なくとも0.2アニオン%、特に好ましくは0.5アニオン%、少なくとも1アニオン%、少なくとも2アニオン%、または少なくとも3アニオン%の塩化物含有量を対象とする。一実施形態によれば、ガラスは、0.5~10アニオン%の範囲、好ましくは1~5アニオン%の範囲の塩化物含有量を有する。
【0020】
代替的な一実施形態は、カチオン%単位で以下のガラス組成を有するガラスの、基材としての使用を提供する:
ケイ素 40~80、好ましくは50~70、特に好ましくは60~70
ホウ素 0~20、好ましくは1~19、特に好ましくは5~15
アルミニウム 0~25、好ましくは2~20、特に好ましくは5~12
ナトリウム 2~22、好ましくは3~20、特に好ましくは4~18
カリウム 0.1~10、好ましくは1~8、特に好ましくは2~5
クロム 0.05~0.5、好ましくは0.1~0.4、特に好ましくは0.15~0.3
コバルト 0.03~0.5、好ましくは0.04~0.3、特に好ましくは0.05~0.2
ここで、
Σナトリウム+カリウム=10~25、好ましくは12~20、特に好ましくは15~20
Σクロム+コバルト=0.15~0.55、好ましくは0.17~0.5、特に好ましくは0.19~0.4
であり、ニッケルとコバルトとの合計に対するナトリウムとカリウムとの合計の比に関して、
Σナトリウム+カリウム/Σニッケル+コバルト=25:1~150:1、好ましくは30:1~125:1、特に好ましくは40:1~90:1
が成り立つ。
【0021】
ガラスには、カチオンの他にアニオンも含まれている。アニオン含有量は、同様にアニオンパーセント(アニオン%)で示される。上記組成を有するガラスは、アニオンとして有利にはO2-アニオン、Fアニオン、Brアニオン、Clアニオンおよび/またはSO 2-アニオンを含む。有利には、O2-イオンの割合は、少なくとも50アニオン%、有利には少なくとも70アニオン%、特に好ましくは少なくとも90アニオン%である。特に好ましい一実施形態では、O2-イオンの割合が、少なくとも98アニオン%、またはさらには少なくとも99アニオン%であることが提供される。一実施形態によれば、ガラス全体が酸化物系であり、すなわち、O2-イオンの割合は、100アニオン%である。
【0022】
さらなる一実施形態によれば、ガラスは、わずかな割合のハロゲン化物(Cl、Fおよび/またはI)しか含まない。有利には、ハロゲン化物の割合は、最大で3アニオン%、好ましくは最大で1アニオン%である。有利には、ガラスは、ハロゲン化物を含まない。他の実施形態は、少なくとも0.1アニオン%、好ましくは少なくとも0.2アニオン%、特に好ましくは0.5アニオン%、少なくとも1アニオン%、少なくとも2アニオン%、または少なくとも3アニオン%の塩化物含有量を対象とする。一実施形態によれば、ガラスは、0.5~10アニオン%の範囲、好ましくは1~5アニオン%の範囲の塩化物含有量を有する。
【0023】
さらなる一実施形態によれば、カラーガラスは、重量%単位で以下のガラス組成を有する:
【表1】
ここで、
ΣNaO+KO+LiO=5~30、好ましくは10~25、特に好ましくは15~20
である。有利には、ガラス組成は、以下の条件のうち少なくとも1つを満たす:
ΣMnO+Cr=2.7~8、好ましくは3~7、特に好ましくは3.5~5.5であり、かつ/または
MnO/CrO=1.5:1~12.5:1、好ましくは1.6:1~10:1、特に好ましくは1.7:1~7.5、非常に特に好ましくは1.9:1~4:1である。
【0024】
基材は、少なくとも0.5mmで最大で12mmの厚さを有する。有利な一実施形態によれば、基材の厚さは、0.5~6mmの範囲、有利には2mm~6mmの範囲、有利には2~4mmの範囲である。対応する基材の厚さにより、十分に高い強度が保証される。
【0025】
基材は、パネル状でありかつ2つの面を有しており、これらの面を、以下では上面および下面と称する。ここで、上面とは、基材面のうち、基材がビューイングパネルの一部として使用されるときにビューイングパネルの動作前面を形成するものであると理解される。したがって、上面とは、基材面のうち、ビューイングパネルとして使用されるときに、見る人に面している方の面を形成するものである。下面とは、基材面のうち、コーティングされた基材が電子部品を覆うためにビューイングパネルとして使用されるときに動作背面を形成し、したがって電子部品に面した基材面を表すものであると理解される。ビューイングパネルは、両面のうち少なくとも一方に、金属および/または半金属の酸化物および/または窒化物および/または酸窒化物を含む少なくとも1つの層を有する。この層は有利には、コーティングまたはコーティングの一部として形成されている。好ましくは、この層状パネルは、少なくともカラーガラスの動作前面あるいは上面側にコーティングを有する。いくつかの実施形態において、本発明によるビューイングパネルは有利には、動作前面側のコーティングに加えて、いわゆる動作背面側にさらなるコーティングを有し、これは特に、反射防止コーティングおよび/または疎水性コーティングおよび/または撥油性コーティングおよび/または不凍性コーティングおよび/または防曇性コーティングおよび/または加熱可能なコーティングであり、特に反射防止コーティングおよび/または加熱可能なコーティングの機能を果たすコーティングである。
【0026】
コーティングは総じて、さらなる機能を有することができ、例えば、反射防止コーティングとして、傷防止コーティングとして、例えば色反射を伴う光学コーティングとして、耐候コーティングとして、イージークリーンコーティングとして、疎水性、撥油性、不凍性、防曇性および/または加熱可能なコーティングとして構成されていてよい。コーティングは、マルチレイヤーコーティングとして実施されていてよく、したがって複数の層を含むことができる。1つのコーティングが異なる機能を同時に果たすことが可能であり、例えば、反射防止効果を生み出すための光学コーティングがさらに、例えば防曇性または疎水性コーティングとして実施されている最上層を有する。
【0027】
有利には、コーティングは、屈折率の異なる複数のレイヤーあるいは層から構成されたマルチレイヤー反射防止コーティングである。ここで、より高い屈折率を有するレイヤーと、より低い屈折率を有するレイヤーとが交互に存在する。低屈折率のレイヤーは、例えばケイ素酸化物を含む。さらなる一実施形態によれば、低屈折率のレイヤーは、ある割合のアルミニウムを含むケイ素酸化物をベースとする。有利な一実施形態によれば、低屈折率層は、以下の関係によるケイ素とアルミニウムとの物質量比を有する:
n(Al)/(n(Si)+n(Al))>0.02
ここで、n(Al)は、アルミニウムの物質量を表し、n(Si)は、ケイ素の物質量を表す。驚くべきことに、アルミニウムあるいはアルミニウム酸化物を混合することで、高屈折率のケイ素窒化物層と比較して軟質で低屈折率のケイ素酸化物層に、引掻きや摩耗に対する著しくより高い耐久性が付与されることが判明した。一実施形態によれば、比n(Al)/(n(Si)+n(Al))は0.05より大きく、有利には0.1より大きい。ここで、比n(Al)/(n(Si)+n(Al))が0.8未満、好ましくは0.5未満、特に好ましくは0.25未満であると有利であることが判明した。
【0028】
より高い屈折率を有するレイヤーは有利には、ケイ化物、酸化物または窒化物を含む。高屈折率層には、窒化ケイ素が特に適している。
【0029】
反射防止コーティングのレイヤーの好ましい成膜方法としては、スパッタリング、特にマグネトロンスパッタリングが用いられる。この場合、低屈折率レイヤーのケイ素酸化物と高屈折率レイヤーの好ましく使用されるケイ素窒化物との双方を同じターゲットで製造できるため、反応性スパッタリングがここでは特に有利である。異なる層材料への切り替えは、プロセスパラメータの変更、特にプロセスガスの組成の変更を行うことで容易に可能である。
【0030】
コーティングは有利には、少なくとも125nmで最大で2500nm、好ましくは最大で1500nmの厚さを有する。驚くべきことに、対応する反射防止層は、比較的小さな層厚ですでに耐久性のある傷防止性を提供することが判明した。したがって、好ましい実施形態での反射防止コーティングは、合計で200nm~400nmの範囲の層厚を有する。特に好ましい層厚は、250nm~300nmの範囲である。比較のため、典型的な傷防止または硬質材料コーティングは一般に、1μmを超える厚さである。
【0031】
例えばガラス組成やガラス厚などの基材の特性を選択し、またコーティングを選択することにより、ビューイングパネルを、それぞれの使用分野およびその要求に柔軟に適合させることができる。
【0032】
一実施形態によれば、ビューイングパネルは、875nm~1600nmの範囲の少なくとも1つの波長において、最大で14%、好ましくは最大で12%、特に好ましくはまたはさらには最大で10%の分光反射率ρλを有する。ここで、波長λの反射率は、以下のように定義される:
ρλ=P/P
ここで、Pは、反射力を表し、Pは、入射力を表す。
【0033】
代替的または付加的に、ビューイングパネルは、875nm~1600nmの範囲において、最大で14%、好ましくは最大で12%、特に好ましくは最大で10%の平均分光反射率ρmittelを有し、ここで、平均分光反射率ρmittelは、試験する波長範囲の個々の分光反射率ρλの算術平均値を表す。
【0034】
ここで、反射率は有利には、0°~60°の測定角度、特に好ましくは0°~70°の測定角度で求められる。したがって、有利な一構成によれば、ビューイングパネルは、広い角度範囲にわたって低い反射性を示す。
【0035】
代替的または付加的に、875nm~1600nmの波長範囲の少なくとも1つの波長の分光反射率ρλは、未コーティングの基材の対応する反射率よりも、少なくとも2%ポイント、好ましくは少なくとも4%ポイント、特に好ましくは少なくとも6%ポイント低い。
【0036】
代替的または付加的に、1530nm~1570nm、好ましくは1540nm~1560nmの波長範囲における0°~45°の範囲の測定角度でのビューイングパネルの表面の平均分光反射率ρmittelは、最大で4%、好ましくは最大で2%、特に好ましくは最大で1%である。一実施形態によれば、60°の測定角度でのこの波長範囲における平均分光反射率ρmittelは、最大で7%、好ましくは最大で5%、特に好ましくは最大で4%、非常に特に好ましくは最大で3%である。
【0037】
一実施形態は、880nm~930nm、好ましくは890nm~920nmの波長範囲における0°~45°の範囲の測定角度でのビューイングパネルの表面の平均分光反射率ρmittelが、最大で4%、好ましくは最大で3%、特に好ましくは最大で2%、非常に特に好ましくは最大で1%であることを提供する。一実施形態によれば、60°の測定角度でのこの波長範囲における平均分光反射率ρmittelは、最大で7%、好ましくは最大で5%、特に好ましくは最大で4%、非常に特に好ましくは最大で3%である。
【0038】
さらなる一実施形態によれば、1300nm~1340nm、好ましくは1310nm~1330nmの波長範囲における0°~45°の範囲の測定角度でのビューイングパネルの表面の平均分光反射率ρmittelは、最大で4%、好ましくは最大で2%、特に好ましくは最大で1%である。一実施形態によれば、60°の測定角度でのこの波長範囲における平均分光反射率ρmittelは、最大で7%、好ましくは最大で5%、特に好ましくは最大で4%、非常に特に好ましくは最大で3%である。
【0039】
ビューイングパネルは、平均透過率Tavgを有し、ここで、平均透過率Tavgとは、指定された波長範囲内の個々の波長の透過率の算術平均値である。一実施形態によれば、1530nm~1570nm、好ましくは1540~1560nmの波長範囲における平均透過率Tavgは、0°の測定角度で、少なくとも90%、少なくとも91%、好ましくは少なくとも93%、特に好ましくは少なくとも96%である。代替的または付加的に、45°の測定角度でのこの波長範囲における透過率Tavgは、少なくとも89%、好ましくは少なくとも90%、少なくとも92%、特に好ましくは少なくとも95%である。一実施形態によれば、ビューイングパネルは、60°の測定角度で前記波長範囲において、少なくとも87%、好ましくは少なくとも88%、特に好ましくは少なくとも90%、非常に特に好ましくは少なくとも93%の透過率Tavgを有する。ビューイングパネルは、上記波長範囲においてさらに、70°の測定角度で少なくとも84%、好ましくは少なくとも85%、特に好ましくは少なくとも87%、非常に特に好ましくは少なくとも90%の透過率Tavgを有することができる。
【0040】
1530nm~1570nmの範囲で高い透過率を示すため、ビューイングパネルは特に、前記波長範囲、特に1550nmに中心波長を有するレーザと組み合わせて使用するのに適している。この場合、干渉光学コーティングを施しているにもかかわらず、透過率は角度にほとんど依存しない。
【0041】
代替的または付加的に、ビューイングパネルは、890nm~930nm、好ましくは890~920nmの波長範囲において、0°の測定角度で、少なくとも91%、好ましくは少なくとも93%、特に好ましくは少なくとも96%の平均透過率Tavgを有する。代替的または付加的に、45°の測定角度でのこの波長範囲における透過率Tavgは、少なくとも89%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%である。一実施形態によれば、ビューイングパネルは、60°の測定角度で前記波長範囲において、少なくとも87%、好ましくは少なくとも88%、特に好ましくは少なくとも90%、非常に特に好ましくは少なくとも93%の透過率Tavgを有する。ビューイングパネルは、上記波長範囲においてさらに、70°の測定角度で少なくとも84%、好ましくは少なくとも85%、特に好ましくは少なくとも87%、非常に特に好ましくは少なくとも90%の透過率Tavgを有することができる。
【0042】
890nm~930nmの範囲で高い透過率を示すため、ビューイングパネルは特に、前記波長範囲、特に905nmに中心波長を有するレーザと組み合わせて使用するのに適している。この場合にも、透過率は角度にほとんど依存しない。
【0043】
代替的または付加的に、ビューイングパネルは、1300nm~1340nm、好ましくは1310~1330nmの波長範囲において、0°の測定角度で、少なくとも91%、好ましくは少なくとも93%、特に好ましくは少なくとも96%の平均透過率Tavgを有する。代替的または付加的に、45°の測定角度でのこの波長範囲における透過率Tavgは、少なくとも89%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%である。一実施形態によれば、ビューイングパネルは、60°の測定角度で前記波長範囲において、少なくとも87%、好ましくは少なくとも88%、特に好ましくは少なくとも90%、非常に特に好ましくは少なくとも93%の透過率Tavgを有する。ビューイングパネルは、上記波長範囲においてさらに、70°の測定角度で少なくとも84%、好ましくは少なくとも85%、特に好ましくは少なくとも87%、非常に特に好ましくは少なくとも90%の透過率Tavgを有することができる。
【0044】
1300nm~1340nmの範囲で高い透過率を示すため、ビューイングパネルは特に、前記波長範囲、特に1310nmおよび/または1320nmに中心波長を有するレーザと組み合わせて使用するのに適している。この場合にも、透過率は角度にほとんど依存しない。
【0045】
ビューイングパネルまたは干渉光学コーティングが、偏光分離を示さないかまたはわずかにしか示さないように形成されていると有利であることが判明した。したがって、一実施形態では、30~60°の少なくとも1つの測定角度での、875nm~1600nm、好ましくは880nm~1600nmの範囲の少なくとも1つの波長におけるビューイングパネルのs偏光の分光透過率とp偏光の分光透過率との差ΔTs-p,polが、3%ポイント未満、好ましくは2%ポイント未満、特に好ましくは1%ポイント未満であることが提供される。一実施形態では、30°~60°の範囲の少なくとも1つの測定角度での、890nm~910nm、1310nm~1330nmおよび/または1540nm~1560nmの波長範囲のうち少なくとも1つにおけるビューイングパネルのs偏光の分光透過率とp偏光の分光透過率との差ΔTs-p,polが、3%ポイント未満、好ましくは2%ポイント未満、特に好ましくは1%ポイント未満であることが提供される。
【0046】
有利に、ガラス質基材は、-30℃~70℃の範囲の温度で3×10-6/K~14×10-6/Kの範囲の熱膨張係数を有するガラスを含む。好ましくは、熱膨張係数は、5×10-6/K~12×10-6/Kの範囲、特に好ましくは7×10-6/K~11×10-6/Kの範囲である。指定された値は、ISO 7991に準拠した公称平均線熱膨張係数であり、静的測定で求められる。その熱膨張係数ゆえ、ガラスは高い温度変化耐久性を有する。
【0047】
上記のような構成は、ビューイングパネルで保護された電子部品の動作中に大きな温度変動が起こる場合に特に有利となり得る。なぜならば、この場合、基材の熱膨張係数とコーティングの熱膨張係数とが互いに適合しており、コーティングと基材との間および/またはコーティング内で剥離を引き起こすほど大きな機械的応力が発生し得ないためである。したがって、コーティングは、基材との良好な密着性を示し、このことは、ビューイングパネルの機械的耐久性に有利な効果をもたらす。
【0048】
特に、層複合体、すなわち基材とコーティングとの複合体、および層複合体、すなわちコーティング内の個々の部分層の良好な機械的耐久性を、ベイヤー試験により実証することもできる。よって、変更された試験規格ASTM F735-11(変更されたベイヤー試験、8000サイクル、SiOの代わりに2kgの溶融アルミナ(Al)を装填;充填高さは2cm)に準拠してベイヤー試験を実施した後に、ビューイングパネルは、ベイヤー試験前に測定されたビューイングパネルのヘイズ値と比較して、最大で4%、好ましくは最大で2%、特に好ましくは最大で1%増加したヘイズ値を有する。ヘイズ値は、ASTM D1003-95に準拠して求められ、曇り具合の指標である。ここで、例えば傷などの表面欠陥は、ヘイズ値の増加につながる。
【0049】
ビューイングパネルは、0°~30°の角度範囲で、明所視反射色、すなわちCIE 1931に準拠した視感度曲線で重み付けされた反射率を有し、ここで、色座標xは、0.20~0.4の範囲であり、yは、0.20~0.4の範囲であり、有利にはxは、0.25~0.33の範囲であり、yは、0.23~0.33の範囲である。これにより、ビューイングパネルは、見る人に黒色に見える。好ましい一実施形態によれば、ビューイングパネルは、0°~45°、またはさらには0°~60°の範囲の角度で上記の色座標を有する。
【0050】
実施形態によるビューイングパネルは特に、カバーパネルとして、特にレーザのカバーパネルとして、例えばLIDARシステムの一部としてのレーザのカバーパネルとして、または撮像システムのカバーパネルとして、特に環境の3D測定用もしくは速度測定用機器の撮像システムのカバーパネルとして使用することができる。
【0051】
図面の説明
以下、図1図15を参照して、本発明を実施形態例につきより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】第1の実施形態による断面の概略図である。
図2】第2の実施形態による断面の概略図である。
図3】動作背面にさらなるコーティングを施した第3の実施形態の断面の概略図である。
図4】異なる記録角度での第1の実施形態例の反射スペクトルを示す図である。
図5】第2の実施形態例の反射スペクトルを示す図である。
図6】異なる記録角度での第3の実施形態例の反射スペクトルを示す図である。
図7】異なる記録角度での第3の実施形態例の反射スペクトルを示す図である。
図8】異なる記録角度での第4の実施形態例の反射スペクトルを示す図である。
図9】それぞれベイヤー試験の実施前後の、異なる記録角度での第5の実施形態例の反射スペクトルを示す図である。
図10】第5の実施形態例の異なる偏光角を有する電磁放射線の反射スペクトルを示す図である。
図11】第5の実施形態例の異なる偏光角を有する電磁放射線の反射スペクトルを示す図である。
図12】第6の実施形態例の異なる測定角度を有する電磁放射線の反射スペクトルを示す図である。
図13】第6の実施形態例の異なる測定角度を有する電磁放射線の反射スペクトルを示す図である。
図14】CIE 1931のx-y線図による、角度に依存した第6の実施形態例の反射色のシフトを示す図である。
【0053】
図1は、一実施形態によるビューイングパネル1の概略図による断面を示す。ビューイングパネル1は、パネル状のガラス質基材2としてのカラーガラスと、基材2の表面4上に成膜されたコーティング30とを備えている。図1に示す例では、コーティング30は、4層で形成されている。コーティングは、少なくとも1つの金属および/または半金属の酸化物、窒化物および/または酸窒化物を含む。コーティング30は、低屈折率層34,32と、より高い屈折率を有する層31,33とを含む。ここで、層33は、材料SiN、Si、SiAlO、SiXN:H、Si:Hおよび/またはAlのうちの少なくとも1つを含む。
【0054】
図1に示す実施形態は、電子発光部品のカバーに使用される。放出された電磁放射線は、矢印7で表され、層状パネル1を通過する。基材2の側面のうち、部品に面した方(図1では参照符号5を付与)は、下面または動作背面とも称される。これに応じて、基材の他方の側面4は、上面または動作前面とも称される。図1に示す実施形態では、コーティング30は、基材2の上面4に施されている。
【0055】
コーティング30の層厚は、125nm~2500nmの範囲、有利には125nm~1500nmの範囲である。ここで、最後から2番目の層33は、可能な限り大きな層厚を有し、有利には少なくとも100nm、好ましくは少なくとも150nm、特に好ましくは少なくとも200nmの層厚を有する。ここで、硬質材料層33の比較的大きな層厚が、コーティング30およびビューイングパネル1の双方の耐傷性および機械的耐久性に大きく寄与している。最上層34は好ましくは、可能な限り小さい層厚を有する。一実施形態によれば、層34の層厚は、300nm未満、またはさらには100nm未満である。
【0056】
ビューイングパネル1は、400~700nmの波長範囲において、15%未満、好ましくは10%未満の平均透過率τavg,400nm-700nmを有し、ここで、τavg,400nm-700nmは、
【数2】
と定義される。
【0057】
代替的または付加的に、ビューイングパネル1は、各波長において、10%未満、好ましくは5%未満、特に好ましくは1%未満の分光透過率を有する。
【0058】
図2は、さらなる一実施形態によるビューイングパネルの概略図を示す。ここで、ビューイングパネルは、4つの各層31,32,33,34を有するコーティング30に加えて、さらなる層8を備えている。ここで、層8は、干渉光学コーティング8の層ではなく、その組成および機能の双方に関してコーティング30と異なることができる。図2に示す実施形態例では、水との接触角が105°を超える、いわゆる「イージークリーン」層である。
【0059】
図3は、ビューイングパネル1のさらなる一実施形態を示す。ここで、基材2は、動作前面4上の各層31,32,33,34を有する干渉光学コーティング30に加えて、さらなるコーティング40を有する。コーティング40は、干渉光学層41,42,43と、任意に導電層50とを含む。層41,42,43は、反射防止コーティングを形成しており、そのようにして放射光7の後方散乱を低減する。層50は、10~150Ω/sqの範囲のシート抵抗を有し、電源に接続可能な接点(図示せず)を有する。したがって、層50は、加熱層の機能を果たすことができる。
【0060】
コーティング40は、カラーガラス2の下面5に施されている。コーティング40は、例えば、カラーガラス2を通過する前の放射光7の反射を低減する機能を果たすことができる。
【0061】
図4は、異なる反射角における、総層厚約530nmの(SiOおよびTaの交互の)7層を含むコーティングを含む実施形態例の反射スペクトルを示す。本実施形態例は、905nmの範囲の発光波長を有するレーザとの併用に向けて最適化されている。したがって、この波長範囲での反射スペクトルは、特に低反射率を示す。ここで、この波長範囲では、60°の高反射角でも反射率はわずか4%である。
【0062】
図5には、第2の実施形態例の反射スペクトルが示されている。本実施形態例では、ビューイングパネルは、動作背面上にさらなるコーティングを有する。このコーティングは、干渉光学反射防止コーティングとITO層とを含む。こうして、第2の実施形態例は、図3に示すような構造体を有する。ここでも、905nm付近の波長範囲の反射スペクトルは、特に低い反射率を示す。ここで、この波長範囲では、60°の高反射角でも反射率は4%未満である。
【0063】
図6および図7は、異なる反射角での第2の実施形態例の反射スペクトルを示す。ここで、曲線10は、反射角6°での反射曲線に相当し、曲線11は、反射角30°での反射曲線に相当し、曲線12は、反射角40°での反射曲線に相当し、曲線13は、反射角60°での反射曲線に相当する。
【0064】
ビューイングパネルは、ビューイングパネルの動作前面に総層厚約1050nmの4層の反射防止コーティング(SiAl、SiAl、SiAl、SiAl)を備えている。ビューイングパネルは、1310nmの発光波長を有するレーザとの併用に向けて、その透過率および反射率の点で最適化されている。そのため、ビューイングパネルは、1290~1330nmの範囲の波長について、試験したすべての反射角で特に低い反射率値を示す。以下の表1は、1290nm~1300nmの波長範囲で平均をとった平均反射率を、異なる反射角r-polについて示したものである。
【0065】
【表2】
【0066】
表1から、45°までの角度での反射率は、角度にほとんど依存しないことがわかる。60°の大きな角度でも、非常に低い反射率値を得ることができる。
【0067】
可視スペクトル範囲では、図6に示すすべての反射スペクトル10,11,12,13は、複数の反射極大を示す。コーティングのそれぞれの設計に応じて、これらの反射極大は、異なる強度および/または異なる波長範囲で発生し、したがって、見る人が感じるビューイングパネルの色の印象に影響を与える。
【0068】
図8は、異なる反射角での第3の実施形態例の反射スペクトルを示す。第3の実施形態例では、カチオン%単位で以下のガラス組成を有するカラーガラスを基材ガラスとして用いた:
反射防止コーティングは、4層(Si、SiAlN、Si、SiAlNy、総層厚約620nm)を有し、これは、図1による実施形態例に対応する。
【0069】
第3の実施形態例は、特に890nm~920nmの範囲の波長の光源用のビューイングパネルとして適している。図8から、ここで該当する890nm~920nmの波長範囲では、測定角度0°、30°および45°において反射率がほぼ同じであることが明らかである。よって、この角度範囲では、反射率は角度にほとんど依存しない。測定角度が60.5°と大きくても、対応する波長範囲での反射率は、5%以下である。
【0070】
図9は、ベイヤー試験の実施前後の第3の実施形態例の反射スペクトルを示す。ベイヤー試験により、表面の機械的耐久性、特にその耐傷性を評価することができる。図9から、ベイヤー試験の実施後の反射率が、ベイヤー試験前の反射率に比べて最小限度しか増加していないことが明らかである。例えば、ベイヤー試験後の反射スペクトルは、測定角度60°では1%以下の反射率の増加を示し、さらに、測定角度0°および45°では、反射率の増加は0.5%未満である。このように、ビューイングパネルは、極めて高い耐傷性を示している。
【0071】
図10および図11に、第4の実施形態例の反射スペクトルを示す。ここでは、測定角度0°(曲線9)、30°(曲線11)、45°(曲線14)および60°(曲線13)で反射率を測定した。第4の実施形態例は、6層の干渉光学コーティングを有し、各層は、以下の組成を有する:SiAl、SiAl、SiAl、SiAl、SiAl、SiAl。総層厚は、約570nmである。ここで、コーティングは、1290nm~1330nmの波長範囲での可能な限り低い反射率、および約380~780nmの可視波長範囲での低減された反射率に関して、最適化されている。実施形態例1~実施形態例3と同様に、本実施形態例も、ほぼ角度に依存しない反射率を示している。表2に、1290nm~1330nmの波長範囲の平均反射率値を示す。
【0072】
【表3】
【0073】
第6の実施形態例は、1530nm~1570nmの範囲での最適な光学特性と、青みがかった反射色とに関して設計されたものである。
【0074】
図12および図13は、異なる測定角度での反射スペクトルを示す。各層Si、SiAl、Si、SiAl、Si、SiAlを含む総層厚約1124nmの6層の干渉光学コーティングを用いた本実施形態例も、45°までの大きさの角度で、該当する波長範囲においてほぼ一定の反射挙動を示している。60°の角度でも、該当する1530~1570nmの波長範囲における平均反射率は、3%以下である。表3は、異なる角度での平均反射率値Ravgを示している。
【0075】
【表4】
【0076】
図14は、CIE 1931のx-y線図による0°~60°の範囲での反射色のシフト15、および0°~60°の範囲での透過色のシフト16を示す。図15から、本実施形態例のビューイングパネルが、青みがかった反射色を示すことが明らかである。
【符号の説明】
【0077】
1 ビューイングパネル
2 カラーガラス
4 動作前面
5 動作背面
7 レーザ光
8 コーティング
9 0°での反射スペクトル
10 6°での反射スペクトル
11 30°での反射スペクトル
12 40°での反射スペクトル
13 60°での反射スペクトル
14 45°での反射スペクトル
15 0°~60°での反射色のシフト
16 0°~60°での透過色のシフト
30 干渉光学コーティング
31,32,33,34 コーティング30の各層
40 第2の干渉光学コーティング
41,42,43 コーティング40の各層
50 ITOコーティング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【外国語明細書】