(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029769
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】ショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパンおよびその調製方法
(51)【国際特許分類】
A21D 2/18 20060101AFI20240228BHJP
【FI】
A21D2/18
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134072
(22)【出願日】2023-08-21
(31)【優先権主張番号】202211004922.0
(32)【優先日】2022-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521424024
【氏名又は名称】ヘナン・ジョンダ・ヘンユアン・バイオテクノロジー・ストック・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HENAN ZHONGDA HENGYUAN BIOTECHNOLOGY STOCK CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】EAST OF JINGER ROAD, NORTH OF WEIER ROAD, LINYING INDUSTRIAL PARK, LUOHE CITY, HENAN, CHINA, 462600
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】シュウジャオ・チェン
(72)【発明者】
【氏名】ジェンクィ・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ウェンジン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ジンジン・リウ
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤオ・ジャン
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB01
4B032DG02
4B032DK12
4B032DK22
4B032DK42
4B032DK45
4B032DK47
4B032DK54
4B032DK59
4B032DP08
4B032DP33
4B032DP40
(57)【要約】
【課題】本発明は、ショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパンおよびその調製方法を提供し、食品加工の技術分野に属する。
【解決手段】重量部で、小麦粉40~60部、グルテン粉末3~5部、D-アルロース5~10部、卵5~10部、牛乳5~10部、イースト3~5部、バター4~6部、複合細菌粉末0.4~0.6部、および水15~25部を含む。前記イーストは生イーストである。前記複合細菌粉末は、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ラムノサス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ラクティスのうちの1つまたは複数を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量部で、小麦粉40~60部、グルテン粉末3~5部、D-アルロース5~10部、卵5~10部、牛乳5~10部、イースト3~5部、バター4~6部、複合細菌粉末0.4~0.6部、水15~25部を含む、ことを特徴とするショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパン。
【請求項2】
前記小麦粉のタンパク質の含有量は11.5~13.5%である、ことを特徴とする請求項1に記載のショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパン。
【請求項3】
前記イーストは生イーストである、ことを特徴とする請求項1に記載のショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパン。
【請求項4】
前記複合細菌粉末は、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ラムノサス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ラクティスのうちの1つまたは複数を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパン。
【請求項5】
前記複合細菌粉末は、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ラムノサス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ラクティスを質量比(0.5~2):(2~4):(0.5~2):(1~3):(1~3)で混合するものである、ことを特徴とする請求項4に記載のショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパン。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパンの調製方法であって、
(1)生イーストと複合細菌粉末を温水中で攪拌分散して混合菌液を得るステップと、
(2)小麦粉、グルテン粉末、D-アルロースをドウミキサーに入れ、第1混合条件で攪拌して混合乾燥粉末を得、
乾燥粉末に卵、牛乳および混合菌液を攪拌しながら加え、第2混合条件で攪拌、混錬して生地を得、
生地にバターを加え、第3混合条件で攪拌して成形生地を得るステップと、
(3)得られた成形生地を醗酵させるステップと、
(4)醗酵させた生地を秤量し、分割して単量30~60gの小生地を得、小生地を醗酵させてパン生地を得るステップと、
(5)パン生地をオーブンに入れ、焼いてショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパンを得るステップと、を含む、ことを特徴とする調製方法。
【請求項7】
ステップ(2)において、前記第1混合条件は、攪拌速度100~150r/min、攪拌時間2~3分であり、
前記第2混合条件は、攪拌速度100~150r/min、攪拌時間5~10分であり、
前記第3混合条件は、攪拌速度250~300r/min、攪拌時間3~5分である、ことを特徴とする請求項6に記載のショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパンの調製方法。
【請求項8】
ステップ(3)において、醗酵条件は、醗酵温度35~40℃、相対湿度80%~90%、醗酵時間60~90分である、ことを特徴とする請求項6に記載のショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパンの調製方法。
【請求項9】
ステップ(3)において、醗酵条件は、醗酵温度35~40℃、相対湿度80%~90%、醗酵時間80~100分である、ことを特徴とする請求項6に記載のショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパンの調製方法。
【請求項10】
ステップ(3)において、焼き条件は、オーブン温度180℃~210℃、焼き時間10~20分である、ことを特徴とする請求項6に記載のショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパンの調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品加工の技術分野に関し、特にショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパンのおよびその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ショ糖は、主にサトウキビおよびテンサイから加工される二糖類である。ショ糖は摂取後、人体内でグルコースとフルクトースに分解され、生命活動に必要なエネルギーを人体に供給する。ショ糖の適度な摂取は人体に害を与えないが、摂取しすぎると、ショ糖は体内でエネルギーに変換され、余分なエネルギーが利用できなくなると脂肪に変換され、肥満につながり、肥満は脳血管疾患、糖尿病などの危険因子の一つとなる。また、ショ糖にはある程度の粘着性があり、大量に摂取すると歯の表面に残りやすく、口腔内の細菌に利用されて酸性物質を発生させ、歯の表面をさらに傷つけ、長期的にはむし歯を誘発しやすくなる。
【0003】
ショ糖はパン作製の不可欠の原料として、従来のパン処方で主に2つの作用があり、一つは、パンに甘味を与えるために、パンに甘味物質の主な供給源を提供することであり、もう一つは、イースト中のインベルターゼによってグルコースとフルクトースに分解され、イーストのエネルギー源となることである。イーストはショ糖分解による単糖類を使用して醗酵し、大量の二酸化炭素を発生させ、生地を膨張させ、スポンジのようなゆるい気孔を形成することで、パンのボリュームが増し、ソフトな味わいが生まれる。
【0004】
パンは人々の日常生活において重要な食品の一つであり、従来のパンは、小麦粉、ショ糖、油を主原料として、生地を練り、醗酵させ、焼くといった工程を経て作られる便利な食事代替食品であり、持ち運びに便利で、消化吸収がよく、味が柔らかくて甘いので、特に学生やサラリーマンに好まれている。従来のパンはショ糖が添加され、高糖、高脂肪、高カロリーの食品であり、人間の栄養バランスと健康維持に非常に不利であり、肥満の人、高血糖の人、糖尿病の人には適さない。
【0005】
D-アルロースは分類上、ヘキソースとケトースに属し、CAS番号:551-68-8、分子式C6H12O6、分子量:180.16であり、D-フルクトースの第三炭素に対応するエピマーである。炭素数6の希少なケトースであるアルロースは溶解性が高く、甘味度はショ糖の70%であるが、カロリーはショ糖の1グラムあたり4キロカロリーに対し、0.4キロカロリーしかない。2011年、D-アルロースはFDAによって安全性が証明され、食品および食生活の分野で添加物として使用できるようになった。
【0006】
食品分野では、D-アルロースは甘味度が高く、ショ糖に近い味を持つだけでなく、ショ糖とは代謝が異なり、血糖値を上昇させないため、血糖値を気にする消費者にとって、D-アルロースは非常に魅力的なショ糖代替食品である。他方、D-フルクトースやD-グルコースと比較すると、D-アルロースは食品中のタンパク質と反応してより多くのメイラード生成物を生成し、食品の風味を向上させ、食品の抗酸化レベルを長期間維持することができる。
【0007】
しかし、D-アルロースをパンに使用した場合、単糖に分解することができないため、イースト菌によって分解・利用されず、エネルギー源となることができない。逆に、パン中にD-アルロースを添加すると、イーストの活性も阻害されるため、イーストによる澱粉の分解により生成する麦芽糖の利用にも影響を及ぼし、その結果、イーストの増殖・生育が遅くなり、パン中にアルロースを添加した後の生地が醗酵しにくくなったり、気孔が少なくなり、ソフトで繊細な味が形成されにくくなる。したがって、パン生地の正常な醗酵を確保することを前提に、ショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパン処方において、各種原料の種類と配合割合をどのように選択するかが特に重要である。
【0008】
したがって、ショ糖の代わりにD-アルロースを原料として、肥満者、三高者、糖尿病患者にも適した低糖質、低カロリーのパンを開発することは、当業者にとって喫緊の課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパンを提供することであり、甘味料としてD-アルロースを使用し、高甘味度の味覚体験を考慮するだけでなく、血糖値を上昇させず、健康的な食事の目的を達成する。
【0010】
本発明が提供する技術的解決策は、D-アルロースをパンに適用した場合、イーストによって分解・利用できず、エネルギー源にならないという技術的問題を解決する。一方、豊富な原料を用いて、栄養価が高く、健康的で、風味の良いパン製品を調製する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、ショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパンを提供し、重量部で、
小麦粉40~60部、グルテン粉末3~5部、D-アルロース5~10部、卵5~10部、牛乳5~10部、イースト3~5部、バター4~6部、複合細菌粉末0.4~0.6部、水15~25部を含む。
【0012】
好ましい実施形態では、前記小麦粉のタンパク質の含有量は11.5~13.5%である。
【0013】
好ましい実施形態では、前記イーストは生イーストである。
【0014】
好ましい実施形態では、前記複合細菌粉末は、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ラムノサス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ラクティスのうちの1つまたは複数を含む。
【0015】
好ましい実施形態では、前記複合細菌粉末は、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ラムノサス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ラクティスを質量比(0.5~2):(2~4):(0.5~2):(1~3):(1~3)で混合するものである。
【0016】
本発明のもう1つの目的は、ショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパンの調製方法を提供することであり、従来の家庭用設備及び環境で完了することができる。全体的な調製工程が簡便かつ安全であり、強い操作性と良好な普遍性を有し、家庭での調製に適しているだけでなく、大規模な工業的生産操作にも適している。
【0017】
上記目的を達成するために、本発明は、ショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパンの調製方法を提供し、具体的には、
(1)生イーストと複合細菌粉末を温水中で攪拌分散して混合菌液を得るステップと、
(2)小麦粉、グルテン粉末、D-アルロースをドウミキサーに入れ、第1混合条件で攪拌して混合乾燥粉末を得、
乾燥粉末に卵、牛乳および混合菌液を攪拌しながら加え、第2混合条件で攪拌、混錬して生地を得、
生地にバターを加え、第3混合条件で攪拌して成形生地を得るステップと、
(3)得られた成形生地を醗酵させるステップと、
(4)醗酵させた生地を秤量し、分割して単量30~60gの小生地を得、小生地を醗酵させてパン生地を得るステップと、
(5)パン生地をオーブンに入れ、焼いてショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパンを得るステップと、を含む。
【0018】
好ましい実施形態では、ステップ(2)において、前記第1混合条件は、攪拌速度100~150r/min、攪拌時間2~3分であり、
前記第2混合条件は、攪拌速度100~150r/min、攪拌時間5~10分であり、
前記第3混合条件は、攪拌速度250~300r/min、攪拌時間3~5分である。
【0019】
好ましい実施形態では、ステップ(3)において、醗酵条件は、醗酵温度35~40℃、相対湿度80%~90%、醗酵時間60~90分である。
【0020】
好ましい実施形態では、ステップ(3)において、醗酵条件は、醗酵温度35~40℃、相対湿度80%~90%、醗酵時間80~100分である。
【0021】
好ましい実施形態では、ステップ(3)において、焼き条件は、オーブン温度180℃~210℃、焼き時間10~20分である。
【0022】
先行技術と比較すると、本発明の技術的解決策は以下の利点を有する。
【0023】
本発明は、先行技術において、パンを調製するためにショ糖の代わりにD-アルロースを直接使用した場合に、醗酵効果が低く、味が悪いという問題を解決し、原料および使用量を最適化設計することにより、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ラムノサス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ラクティスから調製した複合細菌粉末、グルテン粉末および生イーストを処方に添加し、パンの醗酵効果およびイーストによるD-アルロースの利用を多面的に改善する。これにより、パン生地の通常の醗酵に影響を与えず、焼き上がったパンはふっくらと柔らかく、甘くて美味しく、色、香り、味も良い。同時に、D-アルロースは低カロリー、低血糖反応という利点があるため、消費者の「健康的な食事」の追求も満足させる。調製されたパンは、内部構造において大きく均一な気孔を有し、豊かで、柔らかく、繊細な味を有し、糖質制御を必要とする消費者に新しいパンの選択肢を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施例および比較例の官能評価レーダーチャートであるる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
当業者が本発明をよりよく理解できるように、以下、具体的な実施形態と併せて本発明をより詳細に説明するが、本発明の保護範囲は具体的な実施形態によって限定されるものではないことを理解されたい。
【0026】
本発明の実施例は、ショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパンおよびその調製方法を提供し、D-アルロースをパンに適用した場合、イーストによって分解・利用できず、イーストが澱粉を分解して麦芽糖を形成する能力に影響を与え、パンの醗酵が困難になり、気孔が少なくなり、味が悪くなるという先行技術の問題を解決する。
【0027】
上記の問題を解決するために、本発明の技術的解決策は大体以下のとおりである。
【0028】
本発明はショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパンを提供し、重量部で、小麦粉40~60部、グルテン粉末3~5部、D-アルロース5~10部、卵5~10部、牛乳5~10部、イースト3~5部、バター4~6部、複合細菌粉末0.4~0.6部、水15~25部を含む。
【0029】
好ましい実施形態では、重量部で、小麦粉45~55部、グルテン粉末3.5~4.5部、D-アルロース6~9部、卵7~8部、牛乳7~8部、イースト3.5~4.5部、バター4.5~5.5部、複合細菌粉末0.45~0.55部、水18~22部を含む。
【0030】
好ましい実施形態では、重量部で、小麦粉50部、グルテン粉末4部、D-アルロース8部、卵7部、牛乳7部、イースト4部、バター5部、複合細菌粉末0.5部、水20部を含む。
【0031】
好ましい実施形態では、前記小麦粉のタンパク質の含有量は11.5~13.5%である。小麦粉中のタンパク質の含有量はこの範囲内であれば、小麦粉はより良好な吸水性を有することができ、攪拌および混練後に生地が膜状に形成されるため、調製されたパンはよりふわふわで膨らみのある口当たりを有することになる。
【0032】
好ましい実施形態では、前記イーストは生イーストである。本発明において、ドライイーストの代わりに生イーストを使用することにより、醗酵しやすくなり、ショ糖をD-アルロースに置き換えた後、イースト醗酵への影響を低減することができる。さらに、生イーストは、より良好な活力を有し、生地の醗酵および気孔の形成に寄与する。
【0033】
好ましい実施形態では、前記複合細菌粉末は、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ラムノサス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ラクティスのうちの1つまたは複数を含む。
【0034】
好ましい実施形態では、前記複合細菌粉末は、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ラムノサス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ラクティスを質量比(0.5~2):(2~4):(0.5~2):(1~3):(1~3)で混合するものである。
【0035】
本発明において、ビフィズス菌は、グリコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、ガラクトシダーゼ、アミラーゼ等を放出することにより、糖代謝を改善し、高分子糖類、澱粉等を分解し、イーストと協力して生地の醗酵量を増加させることができる。ラクトバチルス・カゼイは、醗酵過程で通性異種醗酵を行い、ガスを発生させ、生地の醗酵量を大幅に増加させることができ、D-アルロースが単糖に分解できず、イーストで分解・利用できないという問題を解決することができる。さらに、乳酸菌とビフィズス菌は醗酵と代謝の過程で、グルカン、フルクタン、ヘテロ多糖の3種類のエキソ多糖を生成する。これらのエキソ多糖類は安定剤と乳化剤の機能を持ち、生地の三次元網目構造の安定性を高め、ガス保持能力を高め、醗酵量を増加させることができる。
【0036】
多くの実験と探求の結果、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ラムノサス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ラクティスの複合プロバイオティクス粉末を添加することにより、パンの醗酵が困難であるという問題を効果的に解決し、パンの味と風味を豊かにすることができることが見出された。
【0037】
本発明のもう1つの目的は、ショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパンの調製方法を提供することであり、従来の家庭用設備及び環境で完了することができる。全体的な調製工程が簡便かつ安全であり、強い操作性と良好な普遍性を有し、家庭での調製に適しているだけでなく、大規模な工業的生産操作にも適している。
【0038】
上記目的を達成するために、本発明はショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパンの調製方法を提供し、具体的に、
(1)生イーストと複合細菌粉末を温水中で攪拌分散して混合菌液を得るステップと、
(2)小麦粉、グルテン粉末、D-アルロースをドウミキサーに入れ、第1混合条件で攪拌して混合乾燥粉末を得、
乾燥粉末に卵、牛乳および混合菌液を攪拌しながら加え、第2混合条件で攪拌、混錬して生地を得、
生地にバターを加え、第3混合条件で攪拌して成形生地を得るステップと、
(3)得られた成形生地を醗酵させるステップと、
(4)醗酵させた生地を秤量し、分割して単量30~60gの小生地を得、小生地を醗酵させてパン生地を得るステップと、
(5)パン生地をオーブンに入れ、焼いてショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパンを得るステップと、を含む。
【0039】
好ましい実施形態では、ステップ(2)において、前記第1混合条件は、攪拌速度100~150r/min、攪拌時間2~3分であり、
前記第2混合条件は、攪拌速度100~150r/min、攪拌時間5~10分であり、
前記第3混合条件は、攪拌速度250~300r/min、攪拌時間3~5分である。
【0040】
好ましい実施形態では、ステップ(3)において、醗酵条件は、醗酵温度35~40℃、相対湿度80%~90%、醗酵時間60~90分である。
【0041】
好ましい実施形態では、ステップ(3)において、醗酵条件は、醗酵温度35~40℃、相対湿度80%~90%、醗酵時間80~100分である。
【0042】
好ましい実施形態では、ステップ(3)において、焼き条件は、オーブン温度180℃~210℃、焼き時間10~20分である。
【0043】
以下、具体的な実施例により本出願の技術的解決策を詳細に説明する。
【0044】
特に断らない限り、本発明で使用される技術的手段は、当業者に周知の通常手段であり、本発明で使用される各種の原料、試薬、器具および装置などは、いずれも市販されるか、既存の方法で調製することができる。
【0045】
本発明において、重量部は、μg、mg、g、kgなどの当業者に周知の重量単位であり得、また、その倍数、例えば1/10、1/100、10倍、100倍などであってもよい。
【実施例0046】
〔実施例1〕
ショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパンは、その処方中の各原料成分の重量比は以下のとおりである。
小麦粉40部
グルテン粉末5部
D-アルロース8部
卵5部
牛乳5部
生イースト4部
バター5部
複合細菌粉末0.4部
水16部
【0047】
このうち、複合細菌粉末は、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ラムノサス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ラクティスを質量比1:3:1:2:2で混合したものである。
【0048】
調製工程は、
(1)生イーストと複合細菌粉末を30℃~40℃の温水中で攪拌分散して混合菌液を得るステップと、
(2)小麦粉、グルテン粉末、D-アルロースをドウミキサーに入れ、100~150r/minで2~3分攪拌して乾燥粉末を均一に混合した後、攪拌しながら順次卵、牛乳および混合菌液を加え、100~150r/minで5~10分攪拌し、混錬して成形生地を得、次にバターを加え、250~300r/minで3~5分攪拌し、最終成形生地を得るステップと、
(3)得られた生地を温度35~40℃、相対湿度80%~90%の条件下で60~90分醗酵させるステップと、
(4)醗酵した生地を秤量し、30gの小生地に分割し、温度35~40℃、相対湿度80%~90%の条件下で80~100分醗酵させてパン生地を得るステップと、
(5)パン生地をオーブンに入れ、オーブン温度180℃~210℃とし、13分焼いた後取り出すステップとを含む。
【0049】
〔実施例2〕
ショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパンは、その処方中の各原料成分の重量比は以下のとおりである。
小麦粉60部
グルテン粉末3部
D-アルロース10部
卵10部
牛乳10部
生イースト5部
バター6部
複合細菌粉末0.6部
水24部、
【0050】
このうち、複合細菌粉末はラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ラムノサス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ラクティスを質量比1.5:2.5:1.5:1.5:1.5で混合したものである。
【0051】
調製工程は、
(1)生イーストと複合細菌粉末を30℃~40℃の温水中で攪拌分散して混合菌液を得るステップと、
(2)小麦粉、グルテン粉末、D-アルロースをドウミキサーに入れ、100~150r/minで2~3分攪拌して乾燥粉末を均一に混合した後、攪拌しながら順次卵、牛乳および混合菌液を加え、100~150r/minで5~10分攪拌し、混錬して成形生地を得、次にバターを加え、250~300r/minで3~5分攪拌し、最終成形生地を得るステップと、
(3)得られた生地を温度35~40℃、相対湿度80%~90%の条件下で60~90分醗酵させるステップと、
(4)醗酵した生地を秤量し、40gの小生地に分割し、温度35~40℃、相対湿度80%~90%の条件下で80~100分醗酵させてパン生地を得るステップと、
(5)パン生地をオーブンに入れ、オーブン温度を180℃~210℃とし、15分焼いて取り出すステップとを含む。
【0052】
〔実施例3〕
ショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパンは、その処方中の各原料成分の重量比は以下のとおりである。
小麦粉50部
グルテン粉末5部
D-アルロース10部
卵5部
牛乳10部
生イースト5部
バター4部
複合細菌粉末0.4部
水20部
【0053】
このうち、複合細菌粉末はラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ラムノサス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ラクティスを質量比0.5:3.5:0.5:2.5:2.5で混合したものである。
【0054】
調製工程は、
(1)生イーストと複合細菌粉末を30℃~40℃の温水中で攪拌分散して混合菌液を得るステップと、
(2)小麦粉、グルテン粉末、D-アルロースをドウミキサーに入れ、100~150r/minで2~3分攪拌して乾燥粉末を均一に混合した後、攪拌しながら順次卵、牛乳および混合菌液を加え、100~150r/minで5~10分攪拌し、混錬して成形生地を得、次にバターを加え、250~300r/minで3~5分攪拌し、最終成形生地を得るステップと、
(3)得られた生地を温度35~40℃、相対湿度80%~90%の条件下で60~90分醗酵させるステップと、
(4)醗酵した生地を秤量し、50gの小生地に分割し、温度35~40℃、相対湿度80%~90%の条件下で80~100分醗酵させてパン生地を得るステップと、
(5)パン生地をオーブンに入れ、オーブン温度を180℃~210℃とし、16分焼いて取り出すステップとを含む。
【0055】
〔実施例4〕
ショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパンは、その処方中の各原料成分の重量比は以下のとおりである。
小麦粉50部
グルテン粉末4部
D-アルロース8部
卵7部
牛乳7部
生イースト4部
バター5部
複合細菌粉末0.5部
水20部
【0056】
このうち、複合細菌粉末はラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ラムノサス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ラクティスを質量比1.5:1.5:0.5:1:3で混合したものである。
【0057】
調製工程は、
(1)生イーストと複合細菌粉末を30℃~40℃の温水中で攪拌分散して混合菌液を得るステップと、
(2)小麦粉、グルテン粉末、D-アルロースをドウミキサーに入れ、100~150r/minで2~3分攪拌して乾燥粉末を均一に混合した後、攪拌しながら順次卵、牛乳および混合菌液を加え、100~150r/minで5~10分攪拌し、混錬して成形生地を得、次にバターを加え、250~300r/minで3~5分攪拌し、最終成形生地を得るステップと、
(3)得られた生地を温度35~40℃、相対湿度80%~90%の条件下で60~90分醗酵させるステップと、
(4)醗酵した生地を秤量し、55gの小生地に分割し、温度35~40℃、相対湿度80%~90%の条件下で80~100分醗酵させてパン生地を得るステップと、
(5)パン生地をオーブンに入れ、オーブン温度を180℃~210℃とし、17分焼いて取り出すステップとを含む。
【0058】
〔実施例5〕
ショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパンは、その処方中の各原料成分の重量比は以下のとおりである。
小麦粉55部
グルテン粉末3部
D-アルロース5部
卵10部
牛乳10部
生イースト3部
バター5部
複合細菌粉末0.5部
水22部
【0059】
このうち、複合細菌粉末はラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ラムノサス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ラクティスを質量比2:2:1:3:1で混合したものである。
【0060】
調製工程は、
(1)生イーストと複合細菌粉末を30℃~40℃の温水中で攪拌分散して混合菌液を得るステップと、
(2)小麦粉、グルテン粉末、D-アルロースをドウミキサーに入れ、100~150r/minで2~3分攪拌して乾燥粉末を均一に混合した後、攪拌しながら順次卵、牛乳および混合菌液を加え、100~150r/minで5~10分攪拌し、混錬して成形生地を得、次にバターを加え、250~300r/minで3~5分攪拌し、最終成形生地を得るステップと、
(3)得られた生地を温度35~40℃、相対湿度80%~90%の条件下で60~90分醗酵させるステップと、
(4)醗酵した生地を秤量し、60gの小生地に分割し、温度35~40℃、相対湿度80%~90%の条件下で80~100分醗酵させてパン生地を得るステップと、
(5)パン生地をオーブンに入れ、オーブン温度を180℃~210℃とし、18分焼いて取り出すステップとを含む。
【0061】
〔比較例1〕
実施例1とは以下の点を除いて同様であり、D-アルロースを同量の白色グラニュー糖に置き換える。
【0062】
〔比較例2〕
実施例3とは以下の点を除いて同様であり、生イーストを同量のドライイースト粉に置き換える。
【0063】
〔比較例3〕
実施例3とは以下の点を除いて同様であり、複合細菌粉末を省略する。
【0064】
〔比較例4〕
実施例3とは以下の点を除いて同様であり、複合細菌粉末を同量のラクトバチルス・アシドフィルスに置き換える。
【0065】
〔比較例5〕
実施例3とは以下の点を除いて同様であり、複合細菌粉末を同量のビフィドバクテリウム・ロンガムに置き換える。
【0066】
〔効果例〕
上記ショ糖の代わりにD-アルロースを使用したパンについて、20名の評価者に官能評価を依頼し、評価基準とその根拠を表1に、総合点数を表2に示すが、点数は20名の評価者の平均点数である(実施例および比較例の官能評価レーダーチャートは
図1に示される)。
【0067】
【0068】
【0069】
表2の評価点数の結果から分かるように、5組の比較例の合計点数はいずれも80ポイント前後であり、本発明の実施例1~5のD-アルロースパンの合計点数は96ポイント前後であり、本発明により提供されるパンは、黄金色で食欲をそそる、ふんわりとした美味しいパンである。
【0070】
本発明では、パンに一部のグルテン粉末を添加し、グルテン粉末中のタンパク質の含有量は比較的高く、アミノ酸組成は比較的完全であるため、栄養価の高い植物性タンパク質源であり、パンの栄養価を向上させる。これに加えて、伸展性とフィルム成形性がよく、グルテンネットワークの弾力性とパンの噛みごたえを向上させる。
【0071】
乳酸菌とビフィズス菌は、醗酵過程で有機酸を生成し、生地のpH値を下げ、生地中の酵素活性を高め、タンパク質と澱粉の加水分解を促進し、パンの食感を向上させるだけでなく、ノナノン、ヘプタナール、カプロン酸エチルなどの風味前駆体を多く生成し、パンの風味を豊かにする。
【0072】
D-アルロースはタンパク質と反応してメイラード生成物を多く生成し、パンの色を良くし、パンの香りを増すことができ、パンの「色、香り、味」が同時に改善され、さらに重要なことは、パンが血糖値を上げず、カロリーが非常に低く、人々の健康に非常に優しいということである。
【0073】
以上、本発明の具体的な例示的な実施形態に関する説明は、説明および例示の目的で提示されたものである。これらの記載は、本発明を開示された特定の形態に限定することを意図するものではなく、明らかに、上記の教示に照らして多くの修正および変形がなされ得る。例示的な実施例の選択および説明の目的は、本発明の特定原理およびその実際的な適用を説明することであり、それによって、当業者は本発明の様々な例示的な実施形態および様々な選択と変更を実現および利用することができる。本発明の範囲は特許請求の範囲およびその均等物によって定義されることが意図される。