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特開2024-29772医薬品シェアリングシステム、医薬品シェアリング方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029772
(43)【公開日】2024-03-06
(54)【発明の名称】医薬品シェアリングシステム、医薬品シェアリング方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 40/00 20180101AFI20240228BHJP
【FI】
G16H40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134292
(22)【出願日】2023-08-21
(31)【優先権主張番号】P 2022132129
(32)【優先日】2022-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519338658
【氏名又は名称】寺脇 大
(74)【代理人】
【識別番号】100170014
【弁理士】
【氏名又は名称】蓼沼 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】寺脇 大
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA25
(57)【要約】
【課題】調剤を行う医療機関から独立して、医薬品の保管および出庫を行う保管庫を設け、当該保管庫の医薬品を複数の医療機関でシェアリングすること。
【解決手段】医薬品の保管および出庫を行う自動保管庫20を用いて、医療機関等において当該医薬品をシェアリングする医薬品シェアリングシステムS1であって、自動保管庫20の医薬品を管理する管理部12と、前記医療機関等から要求があった医薬品が、自動保管庫20に収納されているか否かを判定する保管判定部13と、保管判定部13が前記要求があった医薬品が格納されていると判定すると、当該要求があった医薬品を自動保管庫20から出庫するための認証情報を発行し、前記医療機関等に送信する認証発行部14と、自動保管庫20に前記医療機関等から入力された認証情報と、認証発行部14で発行した認証情報とが一致する場合に、自動保管庫20に前記要求があった医薬品の出庫を指示する出庫指示部15と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品の保管および出庫を行う自動保管庫を用いて、医療機関等において当該医薬品をシェアリングする医薬品シェアリングシステムであって、
前記自動保管庫の医薬品を管理する管理部と、
前記医療機関等から要求があった医薬品が、前記自動保管庫に収納されているか否かを判定する保管判定部と、
前記保管判定部が前記要求があった医薬品が格納されていると判定すると、当該要求があった医薬品を前記自動保管庫から出庫するための認証情報を発行し、前記医療機関等に送信する認証発行部と、
前記自動保管庫に前記医療機関等から入力された認証情報と、前記認証発行部で発行した認証情報とが一致する場合に、前記自動保管庫に前記要求があった医薬品の出庫を指示する出庫指示部と、
を備える医薬品シェアリングシステム。
【請求項2】
前記医療機関等が保管する医薬品の在庫情報を記憶する在庫情報記憶部と、
前記保管判定部が前記要求があった医薬品が格納されていないと判定すると、前記在庫情報記憶部を参照し、当該要求があった医薬品を保管する前記医療機関等を抽出する抽出部と、
前記抽出部が抽出した医療機関等に、前記要求があった医薬品の譲渡許諾を確認する許諾確認部と、
を備え、
前記認証発行部が、前記譲渡許諾をした医療機関等によって、前記要求があった医薬品が前記自動保管庫に保管されたことに応じて、前記認証情報を発行する請求項1に記載の医薬品シェアリングシステム。
【請求項3】
前記認証発行部が、前記要求があった医薬品を前記自動保管庫に入庫するための入庫認証情報を発行し、前記譲渡許諾をした医療機関等に送信し、
前記自動保管庫に入力された入庫認証情報と、前記認証発行部で発行した入庫認証情報とが一致する場合に、前記自動保管庫に前記要求があった医薬品の入庫を指示する入庫指示部を備える請求項2に記載の医薬品シェアリングシステム。
【請求項4】
前記自動保管庫から出庫された医薬品に関する料金の決済を行う決済部を備える請求項1に記載の医薬品シェアリングシステム。
【請求項5】
前記自動保管庫の在庫状況、および/または前記医薬品の前記自動保管庫への入庫に影響を与える入庫影響情報に基づいて、発注タイミングおよび/または発注量を決定して、発注を行う発注部を備える請求項1に記載の医薬品シェアリングシステム。
【請求項6】
前記自動保管庫が保管している医薬品が、使用頻度が低くかつ緊急性が高い医薬品、または使用頻度が低い医薬品である請求項1に記載の医薬品シェアリングシステム。
【請求項7】
医薬品の保管および出庫を行う自動保管庫を用いて、医療機関等において当該医薬品をシェアリングする医薬品シェアリングシステムにおける医薬品シェアリング方法であって、
前記自動保管庫の医薬品を管理するステップと、
前記医療機関等から要求があった医薬品が、前記自動保管庫に収納されているか否かを判定するステップと、
前記要求があった医薬品が格納されていると判定すると、当該要求があった医薬品を前記自動保管庫から出庫するための認証情報を発行し、前記医療機関等に送信するステップと、
前記自動保管庫に前記医療機関等から入力された認証情報と、発行した認証情報とが一致する場合に、前記自動保管庫に前記要求があった医薬品の出庫を指示するステップと、
を含む方法。
【請求項8】
医薬品の保管および出庫を行う自動保管庫を用いて、医療機関等において当該医薬品をシェアリングする医薬品シェアリングシステムを、
前記自動保管庫の医薬品を管理する管理部、
前記医療機関等から要求があった医薬品が、前記自動保管庫に収納されているか否かを判定する保管判定部、
前記保管判定部が前記要求があった医薬品が格納されていると判定すると、当該要求があった医薬品を前記自動保管庫から出庫するための認証情報を発行し、前記医療機関等に送信する認証発行部、および
前記自動保管庫に前記医療機関等から入力された認証情報と、前記認証発行部で発行した認証情報とが一致する場合に、前記自動保管庫に前記要求があった医薬品の出庫を指示する出庫指示部、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品シェアリングシステム、医薬品シェアリング方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薬局や病院等の医療機関が常備しなければならない医薬品の数が増加している。医薬品の中には利用頻度が低いものがあり、これらは、在庫管理の負担が増したり、使用されないまま破棄されてしまったりするために、常備しない医療機関も多い。しかしながら、利用頻度は低いものの、アナフィラキシー症状を抑える薬など緊急性が高い薬もあり、利用頻度が低い医薬品であっても、緊急性が高い医薬品でもある場合には特に、医療機関が常備しなくとも必要な時にすぐに入手できるようにしておくことが必要がある。
【0003】
そこで、地域医療連携システムの医療機関が使用する医薬品の在庫を共通に管理し、在庫の偏在状況を明確にし、在庫状況に応じて代替品を選択・推奨することで、医薬品の在庫管理を最適化できるシステムが提供されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6620302号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、地域医療連携システムの医療機関が常備している薬の在庫管理を最適化することはできるが、利用頻度が低い医薬品といったどの医療機関も常備したくない医薬品は、地域医療連携システム全体であっても常備されず、必要な時に入手できないという問題点があった。
【0006】
本発明は、調剤を行う医療機関から独立して、医薬品の保管および出庫を行う保管庫を設け、保管庫の医薬品を複数の医療機関でシェアリングする医薬品シェアリングシステム、医薬品シェアリング方法、およびプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、医薬品の保管および出庫を行う自動保管庫を用いて、医療機関等において当該医薬品をシェアリングする医薬品シェアリングシステムであって、前記自動保管庫の医薬品を管理する管理部と、前記医療機関等から要求があった医薬品が、前記自動保管庫に収納されているか否かを判定する保管判定部と、前記保管判定部が前記要求があった医薬品が格納されていると判定すると、当該要求があった医薬品を前記自動保管庫から出庫するための認証情報を発行し、前記医療機関等に送信する認証発行部と、前記自動保管庫に前記医療機関等から入力された認証情報と、前記認証発行部で発行した認証情報とが一致する場合に、前記自動保管庫に前記要求があった医薬品の出庫を指示する出庫指示部と、を備える医薬品シェアリングシステムを提供する。
【0008】
また、本発明は、前記医療機関等が保管する医薬品の在庫情報を記憶する在庫情報記憶部と、前記保管判定部が前記要求があった医薬品が格納されていないと判定すると、前記在庫情報記憶部を参照し、当該要求があった医薬品を保管する前記医療機関等を抽出する抽出部と、前記抽出部が抽出した医療機関等に、前記要求があった医薬品の譲渡許諾を確認する許諾確認部と、を備え、前記認証発行部が、前記譲渡許諾をした医療機関等によって、前記要求があった医薬品が前記自動保管庫に保管されたことに応じて、前記認証情報を発行する医薬品シェアリングシステムを提供する。
【0009】
また、本発明は、前記認証発行部が、前記要求があった医薬品を前記自動保管庫に入庫するための入庫認証情報を発行し、前記譲渡許諾をした医療機関等に送信し、前記自動保管庫に入力された入庫認証情報と、前記認証発行部で発行した入庫認証情報とが一致する場合に、前記自動保管庫に前記要求があった医薬品の入庫を指示する入庫指示部を備える医薬品シェアリングシステムを提供する。
【0010】
また、本発明は、前記自動保管庫から出庫された医薬品に関する料金の決済を行う決済部を備える医薬品シェアリングシステムを提供する。
【0011】
また、本発明は、前記自動保管庫の在庫状況、および/または前記医薬品の前記自動保管庫への入庫に影響を与える入庫影響情報に基づいて、発注タイミングおよび/または発注量を決定して、発注を行う発注部を備える医薬品シェアリングシステムを提供する。
【0012】
また、本発明は、前記自動保管庫が保管している医薬品が、少なくとも使用頻度が低い医薬品である医薬品シェアリングシステムを提供する。
【0013】
また、本発明は、医薬品の保管および出庫を行う自動保管庫を用いて、医療機関等において当該医薬品をシェアリングする医薬品シェアリングシステムにおける医薬品シェアリング方法であって、前記自動保管庫の医薬品を管理するステップと、前記医療機関等から要求があった医薬品が、前記自動保管庫に収納されているか否かを判定するステップと、前記要求があった医薬品が格納されていると判定すると、当該要求があった医薬品を前記自動保管庫から出庫するための認証情報を発行し、前記医療機関等に送信するステップと、前記自動保管庫に前記医療機関等から入力された認証情報と、発行した認証情報とが一致する場合に、前記自動保管庫に前記要求があった医薬品の出庫を指示するステップと、を含む方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、医薬品の保管および出庫を行う自動保管庫を用いて、医療機関等において当該医薬品をシェアリングする医薬品シェアリングシステムを、前記自動保管庫の医薬品を管理する管理部、前記医療機関等から要求があった医薬品が、前記自動保管庫に収納されているか否かを判定する保管判定部、前記保管判定部が前記要求があった医薬品が格納されていると判定すると、当該要求があった医薬品を前記自動保管庫から出庫するための認証情報を発行し、前記医療機関等に送信する認証発行部、および前記自動保管庫に前記医療機関等から入力された認証情報と、前記認証発行部で発行した認証情報とが一致する場合に、前記自動保管庫に前記要求があった医薬品の出庫を指示する出庫指示部、として機能させるプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、調剤を行う医療機関から独立して、医薬品の保管および出庫を行う保管庫を設け、当該保管庫の医薬品を複数の医療機関でシェアリングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る医薬品シェアリングシステムの概要を説明する図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る医薬品シェアリング装置の機能構成を説明する図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る医薬品情報DBを模式的に示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る出庫情報DBを模式的に示す図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る医薬品シェアリングシステムにおける保管庫シェアリング処理を示すフローチャートである。
図6】本発明の第2の実施形態に係る医薬品シェアリングシステムの概要を説明する図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る医薬品シェアリング装置の機能構成を説明する図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る在庫情報DBを模式的に示す図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係る譲渡情報DBを模式的に示す図である。
図10】本発明の第2の実施形態に係る医薬品シェアリングシステムにおける医療機関間シェアリング処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。以降の図においては、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号または符号を付している。
<第1の実施形態>
【0018】
[基本概念/基本構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る医薬品シェアリングシステムS1の概要を説明するための図である。図に示すように、医薬品シェアリングシステムS1は、医薬品の入庫、保管、および出庫を行う自動保管庫20と、自動保管庫20にネットワークを介して接続される医薬品シェアリング装置10と、自動保管庫20および医薬品シェアリング装置10とネットワークを介して接続され、医療機関の従業員等が操作する端末30と、を含む。なお、自動保管庫および端末は、1台しか示さないが、複数台であってもよい。
【0019】
自動保管庫20は調剤を行う医療機関からは独立して設置される。ここで、調剤を行う医療機関とは、院内処方を行う病院、調剤を行う薬局といった、処方に基づいて患者に医療用医薬品を提供する医療機関である。自動保管庫20は、調剤を行う医療機関からは独立していれば任意の場所に設置されればよく、例えば、訪問看護ステーションや介護施設等の医療提供施設や調剤を行わない医療機関、市役所、保健所、図書館等の公共施設、トラックや電車等の移動可能な車両、駅、空港、商業施設等であってよい。なお、自動保管庫20は公共性が高いため、公共施設に設置されるのが望ましい。
【0020】
更に、自動保管庫20は、地域包括ケアシステムの1の地域に1以上設置されてもよいし、複数の地域に1つ設置されてもよい。地域包括ケアシステムの1の地域に、自動保管庫20を複数設置する場合には、介護施設に設置された自動保管庫20には高齢者の使用頻度が高い医薬品を保管、駅に設置された自動保管庫20には緊急性を要する医薬品を保管、といったように、設置される場所の特性にあった医薬品を自動保管庫20が保管することで、入手や提供がしやすくなり利便性を向上させることができる。また、自動保管庫20を複数設置する場合に、同一種類の医薬品を各自動保管庫に分散して保管することで、なんらかの要因で使用できない自動保管庫が生じた場合に、必要な医薬品を入手できなくなるリスクを回避することができる。
【0021】
自動保管庫20は、医薬品卸売会社や医薬品メーカー等(以下、卸等)により入庫された医薬品を保管し、要求に応じて保管している医薬品を出庫する。自動保管庫20は、医薬品を保管する機能、および要求に応じて入出庫する機能を少なくとも有すればよく、例えば、BD RowaTMやRIEDL PHASYSである。
【0022】
詳細には、まず、自動保管庫20は、卸等の医薬品を入庫する者の操作により当該医薬品に付与されているバーコードを読み取って、医薬品の情報を取得する。そして、自動保管庫20は、医薬品を入庫し、入庫した医薬品と取得した医薬品の情報と対応付けて保管する。ここで、医薬品の情報は、医薬品名、メーカー、薬価、問屋、薬価ベース購入金額、薬品コード、JANコード、入庫日等を含む。なお、医薬品の情報は、バーコードの読み取りに限らず、医薬品のパッケージを撮影した画像や、操作者からの入力等から取得してもよい。
【0023】
また、自動保管庫20は、出庫する医薬品の情報、例えば医薬品名と数量、が入力されると、入力された情報に基づいて、保管している医薬品を出庫する。更に、自動保管庫20は、保管している医薬品の在庫管理、例えば自動保管庫の在庫の一覧表を作成をも行う。
【0024】
医薬品シェアリング装置10は、自動保管庫20に保管されている医薬品を医療機関でシェアリングするためのシェアリング管理、および自動保管庫20に保管される医薬品の発注管理を行う。シェアリング管理は、詳細には、医薬品シェアリング装置10は、端末30からの要求に応じて、自動保管庫20から医薬品を出庫することが可能かを判断し、可能な場合に医薬品の出庫指示を自動保管庫20に行う。
【0025】
医薬品シェアリングシステムS1では、まず、端末30が、医療機関の従業員の操作によって、医薬品の要求を医薬品シェアリング装置10に送信する(S1)。ここで、要求する医薬品は、基本的には医療機関に在庫がないまたは在庫が不足している医薬品であるが、医療機関に在庫がある医薬品であってもよい。在庫を持っていても、在庫を使用できない/したくない事情がある場合もあるためである。
【0026】
医薬品シェアリング装置10は、端末30から要求された医薬品が自動保管庫20に保管されているか判定し、保管されている場合には認証情報(例えば、バーコード)を生成し(S3)、発行した認証情報を自身で保管するとともに端末30に送信する(S4)。なお、端末30から要求された医薬品が自動保管庫20に保管されていない場合には、その旨、端末30に通知する。
【0027】
端末30が受信した認証情報は、医療機関の従業員によって自動保管庫20に入力される(S5)。例えば、端末30に表示した認証情報を自動保管庫20のカメラ等が読み込むことで、自動保管庫20に入力される。自動保管庫20は、入力された認証情報を医薬品シェアリング装置10に送信する(S6)。
【0028】
医薬品シェアリング装置10は、受信した認証情報と保管している認証情報とが一致して認証が成功した場合に(S7)、端末30から要求された医薬品の出庫指示を自動保管庫20に送信する(S8)。自動保管庫20は、医薬品シェアリング装置10から受信した出庫指示に応じて、端末30から要求された医薬品を出庫し、医療機関の従業員は、医薬品を受け取る(S9)。そして、端末30は、受け取った医薬品の決済処理を医薬品シェアリング装置10と実行する(S10)。
【0029】
医薬品シェアリング装置10の発注管理は、ネットワークを介して卸等に自動保管庫20に入庫する医薬品の発注を行う。発注は、医薬品シェアリング装置10が保持している、自動保管庫20に保管されている医薬品の情報に基づいて行う。また、発注管理は、ネットワークを介して卸等に、使用期限が近付いた医薬品の回収要求を行う。
【0030】
このような医薬品共用管理システムによれば、調剤を行う医療機関から独立した自動保管庫を用いて、自動保管庫の医薬品を複数の医療機関でセキュアに共用することができる。それにより、使用頻度が低く各医療機関では常備されにくい医薬品、特に、前述の医薬品であってかつ緊急性が高い医薬品を、医療機関が必要な時に迅速に入手することが可能となる。その結果、医薬品を患者に適切に供給することが可能となる。また、医薬品共用管理システムによれば、医薬品シェアリング装置10が卸等に発注を行うことで、自動保管庫20の在庫を管理することができる。
【0031】
[医薬品共用管理装置の機能構成]
図2は、本発明の第1の実施形態に係る医薬品シェアリング装置10の機能構成を示す図である。医薬品シェアリング装置10は、送受信部11と、管理部12と、保管判定部13と、認証発行部14と、出庫指示部15と、決済部16と、発注部17、記憶部18と、を備える。本実施形態において、医薬品シェアリング装置10は、クラウドサーバとするが、オンプレミスであってもよい。また、本実施形態では、医薬品シェアリング装置10と自動保管庫20とは別の装置として説明するが、自動保管庫20を省略し、上述した自動保管庫20の機能を、医薬品シェアリング装置10が備えてもよい。
【0032】
記憶部18は、医薬品情報DB181、および出庫情報DB182を含む。本実施形態において医薬品シェアリング装置10はクラウドサーバであるので、記憶部18は、クラウドストレージや分散型台帳で構築されるのが望ましいが、ハードディスクや半導体メモリ、記憶媒体、メモリカードなどで構成されてもよい。なお、この明細書および図面において、DBはデータベースの略称として用いる。
【0033】
送受信部11は、自動保管庫20および端末30それぞれとネットワークを介して情報の送受信を行う。
【0034】
管理部12は、自動保管庫20に保管されている医薬品の情報の管理を行う。詳細には、管理部12は、自動保管庫20から送受信部11を介して取得した医薬品情報に基づいて、医薬品情報DB181を生成・更新して記憶部18に記録して、管理する。なお、医薬品情報DB181の医薬品情報は、自動保管庫20の医薬品情報と同期されている。
【0035】
図3は、第1の実施形態に係る医薬品情報DB181を模式的に示す図である。医薬品情報DB181の医薬品情報には、医薬品を識別する医薬品ID、医薬品名称、薬品コード、JANコード、規格、医薬品を製造しているメーカー、薬価、自動保管庫20が保管している数量等を示す情報が含まれている。ここで、医薬品名は、一般名(薬物名)および/または商品名である。なお、医薬品情報は、自動保管庫20で保管している医薬品情報のうち医薬品シェアリング装置10で利用する情報だけであってもよいが、自動保管庫20で保管している医薬品情報全てであってもよい。
【0036】
保管判定部13は、端末30から要求された医薬品(以下、要求医薬品ともいう)が、自動保管庫20に保管されているか否かを判定する。詳細には、保管判定部13は、送受信部11を介して、端末30から要求医薬品の情報を取得する。要求医薬品の情報は、少なくとも医薬品を特定する情報を含み、数量を含んでもよい。本実施形態では、医薬品を特定する情報は、要求医薬品名称とするが、薬品コード、JANコードであってもよい。
【0037】
続いて、保管判定部13は、医薬品情報DB181を参照し、取得した要求医薬品名称の医薬品情報の有無によって、要求医薬品が自動保管庫20に保管されているか否かを判定する。要求医薬品名称の医薬品情報が医薬品情報DB181にある場合には、保管判定部13は、要求医薬品が自動保管庫20に保管されていると判定する。一方、要求医薬品の名称の医薬品情報が医薬品情報DB181にない場合には、保管判定部13は、要求医薬品が自動保管庫20に保管されていないと判定する。
【0038】
端末30から要求医薬品名称と併せて数量(以下、要求数量ともいう)を取得した場合には、保管判定部13は、医薬品情報DB181から要求医薬品名称に基づいて抽出した医薬品情報の数量が要求数量以上であるか否かを判定する。抽出した医薬品情報の数量が要求数量以上である場合は、保管判定部13は、要求医薬品が自動保管庫20に保管されていると判定する。一方、抽出した医薬品情報の数量が要求数量未満である場合は、自動保管庫20に保管されていないと判定してもよいし、後述する認証情報と併せて数量を通知してもよい。
【0039】
認証発行部14は、要求医薬品を自動保管庫20から出庫するための認証情報を端末30に発行する。詳細には、認証発行部14は、保管判定部13で要求医薬品が保管されていると判定されたことに応じて、自動保管庫20から要求医薬品を出庫するために用いる認証情報を生成する。
【0040】
ここで、認証情報は、要求医薬品の出庫を許可する医療機関であることを認証するための情報であって、QRコード(登録商標)、バーコード、または数字、記号、文字等で構成される文字列等である。認証情報には、要求医薬品の情報、医療機関を識別する医療機関ID、認証情報の生成日や有効期限などに基づいて生成されてもよい。
【0041】
認証発行部14は、生成した認証情報を端末30に送受信部11を介して送信する。併せて、認証発行部14は、生成した認証情報を要求医薬品の情報と対応付けて出庫情報DB182に記憶する。
【0042】
図4は、第1の実施形態に係る出庫情報DB182を模式的に示す図である。出庫情報DB182の出庫情報は、自動保管庫20で医薬品を出庫するために用いる情報であって認証情報、認証情報を発行した発行日時、要求医薬品名称、数量等を示す情報が含まれる。なお、認証情報に複数の要求医薬品名称が対応付けられてもよい。発行日時は、認証情報に有効期限を設定する場合に用いられる。
【0043】
出庫指示部15は、自動保管庫20に入力された認証情報と、認証発行部14で発行した認証情報とが一致する場合に、自動保管庫20に出庫指示を行う。詳細には、出庫指示部15は、自動保管庫20から認証情報を取得すると、出庫情報DB182を参照し、取得した認証情報と一致する出庫情報を取得する。
【0044】
続いて、出庫指示部15は、自動保管庫20に、取得した出庫情報の要求医薬品の情報とともに出庫指示を行う。出庫情報が取得できなかった場合には、出庫指示部15は、認証できなかった旨の通知を自動保管庫20に送信する。なお、出庫指示部15は、後述する決済部16で出庫した医薬品の決済を行う場合には、取得した出庫情報を一時記憶する。
【0045】
決済部16は、自動保管庫20から医薬品が出庫されたことに応じて、当該医薬品に関する料金の決済を行う。詳細には、決済部16は、自動保管庫20から医薬品が出庫されたことに応じて、一時記憶している出庫情報の医薬品名称に基づいて、医薬品情報DB181から出庫された医薬品の薬価を取得する。続いて、決済部16は、取得した薬価と出庫情報の数量とに基づいて、出庫した医薬品の請求額を算出する。
【0046】
決済部16は、算出した請求額を、端末30に送信し、端末30から決済方法を受信すると、外部の決済サーバ(図示せず)と連携して決済処理を行う。決済方法は、出庫した医薬品の決済をどのようにして行うかを示す情報であり、「クレジット決済」、「口座引き落とし」、「電子マネー」、などの種類を有する。また、決済方法が「クレジット決済」の場合はクレジット番号、「口座引き落とし」の場合は口座番号、「電子マネー」の場合は電子マネーの種類およびID等も含まれる。外部の決済サーバは、決済方法に応じて決まり、例えば、クレジット会社、銀行、電子マネー提供会社のサーバ等である。
【0047】
決済部16は、決済サーバから決済した結果を示す決済情報を受信すると、決済が完了した旨の通知を端末30に送信する。
【0048】
発注部17は、ネットワークを介して卸等に発注を行う。詳細には、発注部17は、医薬品情報DB181を参照して、補充が必要な医薬品および当該医薬品の発注量を特定する。そして、発注部17は、特定した医薬品および発注量を、予め保持している連絡先に基づいて卸等に発注を行う。なお、自動保管庫20が卸等の発注システムと連携している場合には、当該発注システムに、自動保管庫20が補充が必要な医薬品および当該医薬品の発注量を送信してもよい。更には、卸等の在庫管理システムとも連携し、補充が必要な医薬品および当該医薬品の発注量の在庫があるか否かを判定し、在庫がある卸等に送信するようにしてもよい。
【0049】
発注量は、例えば、医薬品情報DB181の医薬品情報の数量が予め設定された閾値以下の場合や、使用期限まで所定の期間以上ある医薬品情報の数量が予め設定された閾値以下の場合に、医薬品毎に予め設定された保管数と医薬品情報DB181の医薬品情報の数量とに基づいて決定する。
【0050】
発注部17は、自動保管庫20から取得した在庫管理の情報と併せて、医薬品の入庫に影響を及ぼす情報(入庫影響情報)をインターネット上から取得し、発注タイミングや発注量を決定してもよい。ここで、入庫影響情報とは、自動保管庫20が設置されている地域の天候、災害、道路状況といった、医薬品が卸等に発注されてから自動保管庫20に入庫されるまでの期間に影響を及ぼす情報、特に、当該期間が長くなる要因となる情報である。例えば、発注部17は、台風の予測進路を取得し、自動保管庫20が予測進路上にある場合に、発注を決める予め設定された閾値を大きくし、通常時よりも早くに発注するようにする。
【0051】
また、発注部17は、予め天候や災害時に医療機関で不足することが予測される医薬品リストを保持し、医薬品の入庫に影響を及ぼす情報から該当する天候や災害の恐れがあると判定すると、保持しているリストに基づいて発注を行ってもよい。
【0052】
また、医薬品情報DB181の医薬品情報に医薬品の使用期限が含まれる場合には、発注部17は、使用期限が近付いた医薬品の回収要求を予め保持している連絡先に基づいて卸等に行う。
【0053】
上記の本システムの機能構成は、あくまで一例であり、1つの機能ブロック(データベース及び機能処理部)を分割したり、複数の機能ブロックをまとめて1つの機能ブロックとして構成したりしてもよい。各機能処理部は、装置や端末に内蔵されたCPU(Central Processing Unit)が、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、ハードディスク等の記憶装置(記憶部)に格納されたコンピュータ・プログラム(例えば、基幹ソフトや上述の各種処理をCPUに実行させるアプリ等)を読み出し、CPUにより実行されたコンピュータ・プログラムによって実現される。すなわち、各機能処理部は、このコンピュータ・プログラムが、記憶装置に格納されたデータベース(DB;Data Base)やメモリ上の記憶領域からテーブル等の必要なデータを読み書きし、場合によっては、関連するハードウェア(例えば、入出力装置、表示装置、通信インターフェース装置)を制御することによって実現される。また、本発明の実施形態におけるデータベースは、商用データベースであってよいが、単なるテーブルやファイルの集合体をも意味し、データベースの内部構造自体は問わないものとする。
【0054】
図5を用いて、第1の実施形態に係る医薬品シェアリングシステムS1における自動保管庫20の医薬品をシェアリングする保管庫シェアリング処理について説明する。本処理は、医薬品シェアリング装置10が実行する。
【0055】
保管判定部13は、端末30から要求医薬品の情報を受信する(S11)。続いて、保管判定部13は、S11で受信した要求医薬品の情報に基づいて、医薬品情報DB181を参照し、要求医薬品が自動保管庫20に保管されているか否か判定する(S12)。
【0056】
要求医薬品が自動保管庫20に保管されていないと判定した場合には、S13に処理を進め、一方、要求された医薬品が自動保管庫20に保管されていると判定した場合にはS14に処理を進める。続いて、保管判定部13は、要求医薬品が自動保管庫20に保管されていない旨を通知する(S13)。
【0057】
認証発行部14は、要求医薬品を自動保管庫20から出庫するのに用いる認証情報を発行する(S14)。認証発行部14は、S14で発行した認証情報とS11で取得した要求医薬品の情報とを合わせて出庫情報として、出庫情報DB182に記憶する(S15)。認証発行部14は、S14で発行した認証情報を端末30に送信する(S16)。なお、S15とS16の順は逆であってもよい。
【0058】
出庫指示部15は、自動保管庫20に入力された認証情報を受信したことに応じて、受信した認証情報を含む出庫情報が出庫情報DB182に記憶されているか否かによって認証を行う(S17)。出庫情報が出庫情報DB182に記憶されていて認証成功と判定した場合には、S19に処理を進め、一方、出庫情報が出庫情報DB182に記憶されておらず認証失敗と判定した場合には、自動保管庫20に認証不可な旨を通知し表示させる(S18)。
【0059】
出庫指示部15は、自動保管庫20から受信した認証情報を含む出庫情報に基づいて、自動保管庫20に要求医薬品の出庫を指示する(S19)。決済部16は、自動保管庫20が医薬品を出庫したことを受信すると、要求医薬品、すなわち出庫した医薬品の請求額を算出し、端末30と決済処理を行う(S20)。
【0060】
以上説明したように、医薬品シェアリングシステムは、自動保管庫に保管されている医薬品について、医療機関から要求された医薬品の保管有無の判定処理、当該医薬品の出庫に必要な認証処理、および出庫された医薬品の決済処理を行うことができる。
【0061】
したがって、医薬品シェアリングシステムは、調剤を行う医療機関から独立した自動保管庫を用いて、当該自動保管庫に保管されている医薬品を複数の医療機関でセキュアにシェアリングすることができる。それにより、使用頻度が低く各医療機関では常備されにくい医薬品、特に、前述の医薬品であっても緊急性が高い医薬品を自動保管庫に保管することで、各医療機関が在庫として持たなくとも、必要な時に迅速に入手することが可能となる。
【0062】
また、医薬品シェアリングシステムは、離島や僻地等において、天候不良や災害によって卸等が医療機関に医薬品を供給できないことが予測される際に、予め自動保管庫に多めに医薬品を保管したり、不足が予測される医薬品を保管して備蓄基地として用いることで、天候不良時や災害時においても医薬品の供給をスムーズにすることができる。
【0063】
[第2の実施形態]
図6~10を用いて、本発明の第2の実施形態について説明する。本発明の第2の実施形態に係る医薬品シェアリングシステムは、自動保管庫20を用いて、自動保管庫20に保管されていない医薬品を医療機関間で譲渡することができるシステムである。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる構成について説明する。
【0064】
[基本概念/基本構成]
図6は、本発明の第2の実施形態に係る医薬品シェアリングシステムS2の概要を説明するための図である。医薬品シェアリングシステムS2は、医薬品を譲受する医療機関(以下、譲受医療機関ともいう)の端末(以下、譲受端末ともいう)300Aと、医薬品を譲渡する医療機関(以下、譲渡医療機関ともいう)の端末(以下、譲渡端末ともいう)300Bと、を含む。なお、譲渡医療機関は譲受医療機関とのなり得るし、譲受医療機関は譲渡医療機関ともなり得ることができる。また、譲渡医療機関および譲受医療機関は、調剤を行い、医薬品の在庫を保持する医療機関である。
【0065】
医薬品シェアリング装置100は、譲受端末300Aから要求医薬品の情報を受信する(S1)と、要求医薬品が自動保管庫20に保管されているか判定し、保管されていない場合には、予め保持している各医療機関の在庫情報を参照して、要求医薬品を保管している医療機関を特定する(S22)。医薬品シェアリング装置100は、S22で特定した医療機関(譲渡医療機関)の端末(譲渡端末)300Bと要求医薬品の譲渡許諾処理を行う(S23)。
【0066】
続いて、医薬品シェアリング装置100は、S23の譲渡許諾処理の結果、譲渡端末300Bから譲渡を許諾したことを受信すると、認証情報を発行する(S24)。本実施形態において、発行する認証情報は、要求医薬品を自動保管庫20に入庫するのに用いる認証情報(入庫)と、要求医薬品を自動保管庫20から出庫するのに用いる認証情報(出庫)との2つである。なお、要求医薬品の入庫時に認証を行わない場合には、認証情報(出庫)のみであってもよい。医薬品シェアリング装置100は、S24で発行した認証情報(入庫)を譲渡端末300Bに送信する(S25)。
【0067】
譲渡端末300Bが受信した認証情報(入庫)は、譲渡医療機関の従業員によって自動保管庫20に入力され、入力された認証情報(入庫)に基づいて、自動保管庫20は医薬品シェアリング装置100と認証処理を行う(S26a)。自動保管庫20は、認証処理の結果、入庫指示を受信すると、譲渡医療機関の従業員による要求医薬品の入庫を受け付ける(S26b)。
【0068】
医薬品シェアリング装置100は、S24で発行した認証情報(出庫)を譲受端末300Aに送信する(S27)。送信するタイミングは、医薬品シェアリング装置100が入庫許可を送信した後であってもよいし、医薬品シェアリング装置100が自動保管庫20から入庫を受け付けた旨の通知を受信した後であってもよい。
【0069】
続いて、譲受端末300Aが受信した認証情報(出庫)は、譲受医療機関の従業員によって自動保管庫20に入力され、入力された認証情報(出庫)に基づいて、自動保管庫20は医薬品シェアリング装置100と認証処理を行う(S28a)。自動保管庫20は、認証処理の結果、出庫指示を受信すると、譲受医療機関の従業員に要求医薬品の出庫を行う(S28b)。そして、譲受医療機関の従業員は、要求医薬品を受け取る。
【0070】
譲受端末300Aは、受け取った要求医薬品の決済処理を医薬品シェアリング装置10と実行し、譲渡医療機関に要求医薬品の代金を支払う(S29)。
【0071】
このような医薬品シェアリングシステムによれば、調剤を行う医療機関から独立した自動保管庫を用いて、医療機関間で医薬品をセキュアに譲渡することができる。それにより、複数の医療機関が、互いの在庫をシェアリングすることができる。その結果、一部の医療機関が過剰在庫を抱えるために、不足が生じている医薬品を他の医療機関に入手しやすくでき、また、使用期限切れで廃棄される医薬品を減らすこともできる。
【0072】
[医薬品シェアリング装置の機能構成]
図7は、本発明の第2の実施形態に係る医薬品シェアリング装置100の機能構成を示す図である。医薬品シェアリング装置100は、送受信部11と、管理部12と、保管判定部13と、抽出部111と、許諾確認部112と、認証発行部113と、入庫指示部114と、出庫指示部115と、決済部116と、発注部17を備える。また、記憶部118は、医薬品情報DB181、在庫情報DB183、および譲渡情報DB184を含む。
【0073】
抽出部111は、保管判定部13が自動保管庫20に要求医薬品が保管されていないと判定すると、在庫情報DB183を参照し、要求医薬品を保管する医療機関を抽出する。詳細には、抽出部111は、保管判定部13が自動保管庫20に要求医薬品が保管されていないと判定したことに応じて、在庫情報DB183を参照し、取得した要求医薬品名称の在庫情報の有無によって、要求医薬品を保管する医療機関を抽出する。なお、要求医薬品名称と併せて数量(以下、要求数量ともいう)を取得した場合には、抽出部111は、在庫情報DB183から要求医薬品名称に基づいて抽出した在庫情報のうち、数量が要求数量以上の在庫情報を有する医療機関を抽出する。
【0074】
複数の医療機関が抽出される場合には、予め設定された条件に基づいて、1の医療機関を抽出する。例えば、在庫数が最も多い医療機関、譲受医療機関や自動保管庫20から最も近い医療機関を1つ抽出する。
【0075】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る在庫情報DB183を模式的に示す図である。在庫情報DB183の在庫情報は、医療機関を識別する医療機関ID、医薬品名称、薬品コード、JANコード、規格、メーカー、薬価、医療機関が保管している数量等を示す情報が含まれている。
【0076】
許諾確認部112は、抽出部111で抽出された医療機関に、要求医薬品の譲渡許諾を確認する。詳細には、許諾確認部112は、送受信部11を介して、抽出部111で抽出された医療機関の端末、すなわち譲渡端末300Bに要求医薬品の譲渡許諾を確認する通知を送信し、結果を譲渡端末300Bから受信する。通知の送信先は、上述した在庫情報に含まれていてもよいし、医療機関IDに、医療機関名称、医療機関の住所、メールアドレス、電話番号等の連絡先が対応付けられた医療機関情報を記憶する医療機関DB(図示せず)などから取得してもよい。
【0077】
認証発行部113は、許諾確認部112が譲渡端末300Bから譲渡許諾の結果を受信すると、認証情報(入庫)および認証情報(出庫)を発行する。認証発行部113は、生成した認証情報(入庫)を譲渡端末300Bに送受信部11を介して送信する。併せて、認証発行部113は、生成した認証情報(入庫)および認証情報(出庫)を要求医薬品情報と対応付けて譲渡情報DB184に記憶する。
【0078】
また、認証発行部113は、後述する入庫指示部114から認証情報(出庫)の送信指示を受信すると、認証情報(出庫)を譲受端末300Aに送信する。なお、自動保管庫20への入庫時に認証を行わない場合には、認証発行部113は認証情報(出庫)のみを発行する。この場合、認証発行部113は、後述する入庫指示部114から認証情報(出庫)の送信指示を受信すると、認証情報(出庫)を発行し、譲受端末300Aに送信する。
【0079】
図9は、第2の実施形態に係る譲渡情報DB184を模式的に示す図である。譲渡情報DB184の譲渡情報は、自動保管庫20において、譲渡医療機関から医薬品を入庫および当該入庫された医薬品を出庫するために用いる情報であって、認証情報(入庫)、認証情報(出庫)、認証情報を発行した発行日時、要求医薬品名称、数量等を示す情報が含まれる。なお、認証情報に複数の要求医薬品名称が対応付けられてもよい。
【0080】
入庫指示部114は、譲渡情報DB184を参照し、自動保管庫20から取得した認証情報(入庫)を含む譲渡情報があるか否かによって認証を行う。詳細には、入庫指示部114は、譲渡情報DB184を参照し、自動保管庫20から取得した認証情報(入庫)を含む譲渡情報があった場合には、自動保管庫20に入庫指示を送信する。入庫指示には、入庫される要求医薬品名称を含め、自動保管庫20が入庫される医薬品が入庫予定の要求医薬品であるか否かの判定を行ってもよい。
【0081】
なお、自動保管庫20から取得した認証情報を含む譲渡情報がなかった場合には、認証不可である旨を通知、自動保管庫20に送信し表示させる。
【0082】
入庫指示部114は、自動保管庫20から要求医薬品が入庫されたことを受信すると、認証発行部113に認証情報(出庫)の送信指示を行う。なお、入庫指示部114は、自動保管庫20に入庫指示を送信するのと併せて、認証発行部113に認証情報(出庫)の送信指示を行ってもよい。
【0083】
出庫指示部115は、自動保管庫20に入力された認証情報(出庫)と、認証発行部113で発行した認証情報(出庫)とが一致する場合に、自動保管庫20に出庫指示を行う。詳細には、出庫指示部15は、自動保管庫20から認証情報(出庫)を取得すると、譲渡情報DB184を参照し、取得した認証情報(出庫)と一致する譲渡情報を取得する。
【0084】
続いて、出庫指示部115は、自動保管庫20に、取得した譲渡情報の要求医薬品の情報とともに出庫指示を行う。譲渡情報が取得できなかった場合には、出庫指示部115は、認証不可である旨の通知を自動保管庫20に送信する。なお、出庫指示部115は、後述する決済部116で出庫した医薬品の決済を行う場合には、取得した譲渡情報を一時記憶する。
【0085】
決済部116は、自動保管庫20から医薬品が出庫されたことに応じて、自動保管庫20を介して譲渡された医薬品の決済を行う。詳細には、出庫指示部115は、自動保管庫20から医薬品が出庫されたことに応じて、一時記憶している譲渡情報の要求医薬品名称に基づいて、出庫された医薬品の薬価を取得する。続いて、決済部116は、取得した薬価と譲渡情報の数量とに基づいて、出庫した医薬品の請求額を算出する。
【0086】
決済部116は、算出した請求額を端末300Aに送信し、端末300Aから決済方法を受信すると、外部の決済サーバ(図示せず)と連携して譲受医療機関と譲渡医療機関との決済処理を行う。例えば、決済方法に譲受医療機関の口座が含まれる場合には、決済部116は、予め保持している譲渡医療機関の口座に譲受医療機関の口座から請求額を振り込む処理を決済サーバに指示する。なお、譲受医療機関の決済方法も医薬品シェアリング装置100が保持し、譲渡医療機関は受信した請求額の承認を送信するだけでもよい。
【0087】
決済部116は、決済サーバから決済した結果を示す決済情報を受信すると、決済が完了した旨の通知を譲受端末300Aおよび譲渡端末300Bに送信する。
【0088】
図10を用いて、第2の実施形態に係る医薬品シェアリングシステムS2における自動保管庫20を用いて医療機関間で医薬品をシェアリングする医療機関間シェアリング処理について説明する。本処理は、医薬品シェアリング装置100が実行する。
【0089】
S12で要求医薬品が自動保管庫20に保管されていないと判定されたことに応じて、抽出部111は、要求医薬品を保持する医療機関を抽出する(S112)。なお、S12で要求医薬品が自動保管庫に保管されていると判定された場合、図5に示した保管庫シェアリング処理のS14~S20の処理を実行する(S111)。
【0090】
許諾確認部112は、S112で抽出された医療機関に、要求医薬品の譲渡許諾を確認する(S113)。譲渡許諾には、少なくとも要求医薬品名が含まれる。続いて、認証発行部113は、譲渡端末300BからS113で送信された譲渡許諾の確認に対して譲渡許諾の結果を受信すると、認証情報(入庫)および認証情報(出庫)を発行し、認証情報(入庫)を譲渡端末300Bに送信する(S114)。なお、譲渡許諾されなかった場合には、その旨を譲受端末300Aに送信し、処理を終了する。
【0091】
認証発行部113は、S114で発行した認証情報とS11で取得した要求医薬品の情報とを合わせて譲渡情報として、譲渡情報DB184に記憶する(S115)。
【0092】
入庫指示部114は、譲渡情報DB184を参照し、自動保管庫20から取得した認証情報(入庫)を含む譲渡情報があると判定(認証成功)した場合に、自動保管庫20に入庫指示を送信する(S116)。なお、自動保管庫20から取得した認証情報(入庫)を含む譲渡情報がないと判定(認証失敗)した場合には、その旨を自動保管庫20に送信し、処理を終了する。
【0093】
認証発行部113は、自動保管庫20から要求医薬品の入庫が完了したことを受け付けると、譲受端末300Aに認証情報(出庫)を送信する(S117)。
出庫指示部115は、譲渡情報DB184を参照し、自動保管庫20から取得した認証情報(出庫)を含む譲渡情報があると判定(認証成功)した場合に、自動保管庫20に出庫の指示を送信する(S118)。なお、自動保管庫20から取得した認証情報(出庫)を含む譲渡情報がないと判定した(認証不可)場合には、その旨を自動保管庫20に送信し、処理を終了する。
【0094】
決済部116は、自動保管庫20が要求医薬品を出庫したことを受信すると、要求医薬品、すなわち出庫した医薬品の請求額を算出し、譲受端末300Aと決済処理を行う(S119)。
【0095】
以上説明したように、医薬品シェアリングシステムによれば、調剤を行う医療機関から独立した自動保管庫を用いて、医療機関間で医薬品をセキュアに譲渡することができる。それにより、複数の医療機関が、互いの在庫をセキュアに共有することができる。その結果、一部の医療機関が過剰在庫を抱えるために、不足が生じている医薬品を入手しやすくでき、また、使用期限切れで廃棄される医薬品を減らすこともできる。
【0096】
また、在庫を保持していなくても、必要に応じて他の医療機関から自動保管庫を介して、医薬品を譲渡してもらうことができるので、在庫を持たないまたは少量の在庫しかもつことができない移動薬局を実現することが可能となる。更に、自動保管庫を介して医薬品の譲渡を行うことで、医薬品の流れを管理することができ、医療機関間での医薬品の譲渡においてもトレーサビリティを担保することができる。
【0097】
(変形例1)
第1および第2の実施形態において、医薬品シェアリング装置10,100に、医療機関からの医薬品の要求があった際に、自動保管庫20の利用が許可されている医療機関であるか否かの判定を行ってもよい。それにより、許可されている医療機関のみが自動保管庫20を用いて医薬品をシェアリングできるようにすることができる。
【0098】
(変形例2)
第1および第2の実施形態において、医薬品シェアリング装置10,100は、自動保管庫20から医薬品が出庫された後に決済を行っているが、出庫指示の前に決済を行い、決済後に自動保管庫20から医薬品を出庫できるようにしてもよい。それにより、出庫された医薬品の決済がされないことを防ぐことができる。
【0099】
(変形例3)
第1および第2の実施形態において、医薬品シェアリング装置10,100は、医薬品の出庫の都度、決済を行っているが、翌月に前月分の決済をまとめて行うといった掛売での決済を行ってもよい。その場合、決済部16は、医薬品が出庫された後に、医療機関毎に決済情報を保持しておき、所定時に所定期間の請求額、例えば翌月20日に前月分の請求額をまとめて端末30に送信し、上述したように外部サーバと連携して決済処理を行う。決済情報は、料金に関する情報、および医薬品が出庫された医療機関を特定する情報(例えば、医療機関名称)である。また、料金に関する情報は、出庫毎の医薬品および当該医薬品の数量、または出庫毎の医薬品および当該医薬品の数量と薬価とから算出した請求額である。それにより、医療機関は、決済を効率化でき、自動保管庫20を用いた医薬品のシェアリングを柔軟に行うことができる。
【0100】
(変形例4)
第1および第2の実施形態において、医薬品シェアリング装置10,100が複数の自動保管庫20とネットワークを介して接続されている場合には、医薬品を要求する医療機関や譲受医療機関や譲渡医療機関と自動保管庫20との距離や、自動保管庫20に保管されている医薬品の使用期限や数量に基づいて、出庫する自動保管庫を決定する。また、複数の医薬品シェアリング装置10,100がネットワークを介して接続されてもよく、医薬品シェアリング装置10,100が自身が接続している自動保管庫20に要求医薬品がない場合に、自動保管庫に要求医薬品がある他の医薬品シェアリング装置と連携して、要求医薬品を医療機関に提供することもできる。
【0101】
(変形例5)
第1の実施形態において、決済部16は、自動保管庫20から医薬品が出庫されたことに応じて、当該医薬品に関する料金の決済を行っているが、決済に必要な情報を卸等のシステム(例えば、発注システム)に送信し、卸等のシステムにおいて決済を行ってもよい。決済は、出庫の都度での決済であってもよいし、掛売での決済であってもよい。それにより、卸等が自動保管庫20に入庫した医薬品の流れを管理することが可能になり、トレーサビリティを担保することができる。
【0102】
(変形例6)
第2の実施形態において、譲渡医療機関を医薬品シェアリング装置100が決定していたが、譲受医療機関が指定してもよい。この場合、抽出部111は、指定された医療機関に在庫があるか否かを判定する。在庫がある場合には、許諾確認部112は、指定された医療機関に譲渡許諾の確認を送信する。一方、指定された医療機関に在庫がない場合には、在庫がある医療機関を、譲受医療機関に提案し、選択させてもよい。
【0103】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。なお、上記の実施形態では、本発明を物の発明として、医薬品シェアリングシステムについて説明したが、本発明において医薬品シェアリングシステムが実行する方法や、医薬品シェアリングシステムを各種手段として機能させるプログラムの発明と捉えることもできる。
【符号の説明】
【0104】
S1,S2 医薬品シェアリングシステム
10,100 医薬品シェアリング装置
11 送受信部
12 管理部
13 保管判定部
14,113 認証発行部
114 入庫指示部
15,115 出庫指示部
16,116 決済部
17 発注部
18,118 記憶部
181 医薬品情報DB
182 出庫情報DB
183 在庫情報DB
184 譲渡情報DB
20 自動保管庫
30 端末
300A 譲受端末
300B 譲渡端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10