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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029784
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】積層熱伝導体
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20240229BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20240229BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H01L23/36 D
B32B7/027
B32B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132149
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000145987
【氏名又は名称】株式会社昭和丸筒
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】田口 正昭
【テーマコード(参考)】
4F100
5F136
【Fターム(参考)】
4F100AD11A
4F100AD11B
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA22
4F100DE02A
4F100DE02B
4F100GB41
4F100JJ01A
4F100JJ01B
4F100JK13C
4F100YY00A
4F100YY00B
5F136BA03
5F136BB18
5F136BC03
5F136DA33
5F136FA23
5F136FA25
5F136FA52
5F136FA53
5F136FA73
5F136FA82
(57)【要約】
【課題】三次元的に種々の方向への熱伝導性に優れ、実質的な熱輸送量が大きい積層熱伝導体を提供すること。
【解決手段】積層熱伝導体1は、所定の方向に延在する複数の熱伝導部10と、柔軟性を有する材料で構成され各熱伝導部10を接合する接合部20とを備える熱伝導体2を複数備え、少なくとも2つの熱伝導体2の間で、少なくとも一部が重なり合い、かつ、熱伝導体2の積層方向から観察した際に、熱伝導部の延在方向が非平行となるように、複数の熱伝導体2が積層されている。熱伝導体2の積層数は2以上10以下であることが好ましい。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に延在する複数の熱伝導部と、柔軟性を有する材料で構成され前記各熱伝導部を接合する接合部とを備える熱伝導体を複数備え、
少なくとも2つの前記熱伝導体の間で、少なくとも一部が重なり合い、かつ、前記熱伝導体の積層方向から観察した際に、前記熱伝導部の延在方向が非平行となるように、複数の前記熱伝導体が積層されていることを特徴とする積層熱伝導体。
【請求項2】
積層熱伝導体における前記熱伝導体の積層数が2以上10以下である請求項1に記載の積層熱伝導体。
【請求項3】
前記熱伝導体の平均厚さが100μm以上10,000μm以下である請求項1又は2に記載の積層熱伝導体。
【請求項4】
積層熱伝導体の厚さが200μm以上30,000μm以下である請求項1又は2に記載の積層熱伝導体。
【請求項5】
少なくとも2つの前記熱伝導体の間で、重なり合わない部分を有する請求項1又は2に記載の積層熱伝導体。
【請求項6】
積層熱伝導体は、前記熱伝導体の積層方向から観察した際に、前記熱伝導部の延在方向が直交する関係となる複数の前記熱伝導体を備えている請求項1又は2に記載の積層熱伝導体。
【請求項7】
前記熱伝導部は、所定の方向に配向した鱗片状黒鉛を含む材料で構成されたものである請求項1又は2に記載の積層熱伝導体。
【請求項8】
前記熱伝導体中に占める前記熱伝導部の割合が15体積%以上80体積%以下である請求項1又は2に記載の積層熱伝導体。
【請求項9】
前記熱伝導体中に占める前記接合部の割合が15体積%以上70体積%以下である請求項1又は2に記載の積層熱伝導体。
【請求項10】
複数の前記熱伝導体の積層方向で隣接する前記熱伝導体が接合されている請求項1又は2に記載の積層熱伝導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層熱伝導体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器や車両用ヘッドライト、車載電池等の発熱部材に対する放熱対策が急務となっている。例えば、コンピューターの中央演算処理装置、画像処理用演算プロセッサ、スマートフォンのSoC、組み込み機器のDSPやマイコン、あるいはトランジスタ等の半導体素子、レーザーダイオード、発光ダイオードやエレクトロルミネッセンス、液晶等の発光体といった電子部品の小型化、高集積化により、発熱量が大きくなる傾向にある。これらの電子部品の発熱による装置やシステムの寿命低下、誤作動が問題となってきており、電子部品の放熱対策への要求は、年々高まってきている。
【0003】
このような発熱部材等の高温部材に対する対策として、例えば、特許文献1には、複数の熱伝導部と、柔軟性を有する材料で構成され、各熱伝導部を接合する接合部とを備える熱伝導体が開示されている。
【0004】
この熱伝導体は、複数の熱伝導部と接合部とを有する複合積層体であり、所定の方向での熱伝導性に優れる。このような熱伝導体は、例えば、熱伝導体に冷却すべき部材等を接触させることにより用いられる。
【0005】
この熱伝導体は、熱伝導部の面内方向への熱伝導率が、熱伝導部と接合部との積層方向への熱伝導率よりも高い。これにより、熱伝導体は、所定の方向、言い換えると、熱伝導部の面内方向に効率よく熱を伝達することができるものであるが、熱伝導部と接合部との積層方向への熱伝導率は、上記方向に比較して低いため、全体としての実質的な熱輸送量を十分に大きいものとすることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-091211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、三次元的に種々の方向への熱伝導性に優れ、実質的な熱輸送量が大きい積層熱伝導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の積層熱伝導体は、所定の方向に延在する複数の熱伝導部と、柔軟性を有する材料で構成され前記各熱伝導部を接合する接合部とを備える熱伝導体を複数備え、
少なくとも2つの前記熱伝導体の間で、少なくとも一部が重なり合い、かつ、前記熱伝導体の積層方向から観察した際に、前記熱伝導部の延在方向が非平行となるように、複数の前記熱伝導体が積層されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、三次元的に種々の方向への熱伝導性に優れ、実質的な熱輸送量が大きい積層熱伝導体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の積層熱伝導体の一例を模式的に示す斜視図である。
図2】本発明の積層熱伝導体の他の一例を模式的に示す斜視図である。
図3】本発明の積層熱伝導体の他の一例を模式的に示す斜視図である。
図4】本発明の積層熱伝導体の他の一例を模式的に示す斜視図である。
図5】熱伝導体において、積層された熱伝導部及び接合部の部分を拡大して模式的に示す断面図である。
図6】熱伝導体を構成する熱伝導部の一例を模式的に示す平面図である。
図7】積層された複数の熱伝導部を分解して示す模式的な一部分解斜視図である。
図8】接合部を構成する硬化性樹脂材料の硬化物の一例の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[1]積層熱伝導体
本発明の積層熱伝導体について説明する。
図1は、本発明の積層熱伝導体の一例を模式的に示す斜視図である。図2は、本発明の積層熱伝導体の他の一例を模式的に示す斜視図である。図3は、本発明の積層熱伝導体の他の一例を模式的に示す斜視図である。図4は、本発明の積層熱伝導体の他の一例を模式的に示す斜視図である。
【0012】
なお、本明細書で参照する図面においては、各部材間の関係をわかりやすくするために、一部を縮小あるいは拡大して示している場合があり、図面に示す各部材間での大きさの比率は、実際の各部材間での大きさの比率を表しているものではない。
【0013】
積層熱伝導体1は、所定の方向に延在する複数の熱伝導部10と、柔軟性を有する材料で構成され各熱伝導部10を接合する接合部20とを備える熱伝導体2を複数備え、少なくとも2つの熱伝導体2の間で、少なくとも一部が重なり合い、かつ、熱伝導体2の積層方向から観察した際に、熱伝導部10の延在方向が、非平行となるように、複数の熱伝導体2が積層されていることを特徴とする。
【0014】
各熱伝導体2は、熱伝導性に異方性を有する。すなわち、熱伝導体2は、熱伝導部10の面内方向(図1中、上側の熱伝導体2についてはYZ平面の面内方向、図1中、下側の熱伝導体2についてはXZ平面の面内方向)への熱伝導率が、熱伝導部10と接合部20との積層方向(図1中、上側の熱伝導体2についてはX方向、図1中、下側の熱伝導体についてはYの面内方向)への熱伝導率よりも高い。
【0015】
なお、本明細書で参照する図では、熱伝導部10と接合部20との界面を明確に示しているが、例えば、熱伝導部10の一部が接合部20に侵入していること等により、熱伝導部10と接合部20との界面が不明確なものとなっていても構わない。
【0016】
積層熱伝導体1では、複数の熱伝導体2が積層されている。図1に示す例では、2つの熱伝導体2が積層された2段構成とされている。2つの熱伝導体2は、向きが異なるのみで、実質的に同じものであるが、これに限定されるものではない。
【0017】
積層熱伝導体1では、熱伝導体2の積層方向から観察した際に、熱伝導部10の延在方向が非平行となるように、複数の熱伝導体2が積層されている。
これにより、三次元的に種々の方向への熱伝導性に優れ、実質的な熱輸送量が大きい積層熱伝導体1を提供することができる。より具体的には、図1の構成では、X方向、Y方向、Z方向(積層熱伝導体1の上面と下面とを垂直に結ぶ第1の方向)のいずれにも熱伝導性に優れ、実質的な熱輸送量が大きい積層熱伝導体1を提供することができる。
【0018】
また、複数の熱伝導体2を積層することで、積層熱伝導体1の全体の厚さを比較的厚いものとすることができる。これにより、面内の温度の均一性をより高いものとすることができ、実質的な熱輸送量をより大きいものとすることができる。
【0019】
また、積層熱伝導体1を長時間押圧した状態で用いた場合でも、熱伝導部10を構成する、例えば、黒鉛や炭素繊維のような炭素材料を含む熱伝導部形成用シートのスベリを防止して、熱伝導部形成用シートのスベリに起因する熱伝導体2のダレ変形を効果的に防止することができる。これにより、例えば、積層熱伝導体1と接触する部材に対する面圧が経時的に低下することにより、積層熱伝導体1と接触する部材との密着性が低下し、熱抵抗が上昇してしまうという問題の発生を効果的に防止することができる。
【0020】
また、積層熱伝導体1において積層される複数の熱伝導体2の配列方向、言い換えると、熱伝導体2の積層方向から観察した際の複数の熱伝導体2間での熱伝導部10の延在方向がなす角度を変更することで、熱伝導体2の積層方向に直交する面での熱の拡散方向を所望の方向に設定できる。言い換えると、例えば、熱が伝導されにくい空間を設計しやすくなったり、熱伝導体2の積層方向に直交する面の各方向における熱伝導性をより高めたりすることができる。
【0021】
積層熱伝導体1の厚さ、すなわち、図1中T2で示す長さは、200μm以上30,000μm以下であることが好ましく、400μm以上20,000μm以下であることがより好ましく、500μm以上10,000μm以下であることがさらに好ましい。
これにより、実質的な熱輸送量を特に大きいものとすることができる。このため、例えば、積層熱伝導体1が適用される部材が発熱体である場合等における放熱性をより優れたものとすることができる。
【0022】
図2図4に示すように、積層熱伝導体1において、少なくとも2つの熱伝導体2の間で、重なり合わない部分を有していてもよい。
これにより、熱伝導体2の面内方向(熱伝導体2の積層方向に直交する面の面内方向)における熱の拡散方向を所望の方向により好適に設定できるとともに、実質的な熱伝導性をより優れたものとすることができる。
【0023】
接触する2つの熱伝導体2の間で、重なり合わない部分を有する積層熱伝導体1の構成としては、例えば、平面視した際の形状又は面積の異なる2つ以上の熱伝導体2を積層した構成や、平面視した際の形状及び面積が同じ2つ以上の熱伝導体2を、向きや位置をずらして積層した構成等が挙げられる。
【0024】
なお、本明細書において、「異なる」、「同じ」は、厳密な意味での「異なる」、「同じ」でなくてもよく、実質的に「異なる」、「同じ」とみなせるものであればよい。
より具体的には、接触する2つの熱伝導体2の間で、重なり合わない部分を有する構成の例として、図2に示す積層熱伝導体1(1A)が挙げられる。
図2に示す積層熱伝導体1としての積層熱伝導体1Aは、長方形状を有する熱伝導体2としての熱伝導体2aと、細長い長方形状を有し、熱伝導体2aよりも面積が小さい熱伝導体2としての熱伝導体2bとを有し、熱伝導体2aの端部に沿って、熱伝導体2a上に熱伝導体2bが積層されている。
【0025】
熱伝導体2aにおける熱伝導部10の延在方向、言い換えると、熱伝導体2aの面内における熱の伝導方向は、図中のX方向であり、熱伝導体2bにおける熱伝導部10の延在方向は、図中のY方向である。
このような積層熱伝導体1Aでは、例えば、上側の熱伝導体2b上に、発熱部材である電子部品200、例えば、発光ダイオードが複数並べて配される。
【0026】
発熱部材からの熱は、まず、上側の熱伝導体2bにおいて、面内のY方向に伝導されるとともに、下側の熱伝導体2aに伝導され、熱伝導体2aで面内のX方向に熱伝導(熱拡散)して放熱される。熱伝導体2aに比して小面積の熱伝導体2bからだけでなく、熱伝導体2bに比して大面積の熱伝導体2aで広げて拡散することで効率よく熱拡散することができ、実質的な熱輸送量をより大きいものとすることができる。
【0027】
なお、図2では、熱伝導体2bが細長い長方形状である場合を示したが、熱伝導体2bの形状はこれに限定されない。
また、熱伝導体2bに比して大面積の熱伝導体2a上に、熱伝導体2aに比して小面積の熱伝導体2bが積層されている場合、熱伝導体2a上に積層されている熱伝導体2bの数は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。熱伝導体2a上に、2つ以上の熱伝導体2bが配されている場合、熱伝導体2bは、例えば、島状に配置されていてもよい。
【0028】
また、接触する2つの熱伝導体2の間で、重なり合わない部分を有する構成の他の例として、図3に示す積層熱伝導体1(1B)が挙げられる。
図3に示す積層熱伝導体1としての積層熱伝導体1Bでは、積層熱伝導体1Bを平面視した際に、2つの熱伝導体2としての熱伝導体2c1、2c2が、L字形状をなすように積層して配されている。この2つの熱伝導体2c1、2c2は、平面視した際に略長方形状をなすものであり、同じ形状及び同じ面積を有するものであり、向きを変えて組み合わされることで、平面視した際にL字形状をなすように配されている。
【0029】
下側の熱伝導体2c1における熱伝導部10の延在方向、言い換えると、熱伝導体2c1の面内における熱の伝導方向は、図中のX方向であり、上側の熱伝導体2c2における熱伝導部10の延在方向は、図中のY方向である、言い換えると、2つの熱伝導体2c1、2c2における熱伝導部10の延在方向が直交する関係にある。
【0030】
このようなL字形状の積層熱伝導体1Bの内角部分に、熱に弱い部材、例えば、電子部品210を配しておくことで、積層熱伝導体1Bに沿ってL字状に、熱を迂回させて伝導することができる。これにより、不本意な熱伝導を防止することができ、例えば、電子部品210に、熱による悪影響が及ぶことを効果的に防止することができる。
【0031】
積層熱伝導体1は、例えば、電子装置において、発熱部材である電子部品からの熱を、放熱部材、例えば、金属放熱板に伝導し、金属放熱板から効率よく放熱するための伝熱部材として用いることができるが、積層熱伝導体1の用途は、これに限定されるものではない。
例えば、積層熱伝導体1それ自体を、放熱部材、例えば、ヒートシンクとして用いることもできる。
【0032】
図4に示す積層熱伝導体1としての積層熱伝導体1Cは、接触する2つの熱伝導体2の間で、重なり合わない部分を有する構成の他の例であり、熱伝導体2としての熱伝導体2dと、熱伝導体2としての熱伝導体2eとが積層されており、熱伝導体2eの少なくとも表面の一部に凹部120及び凸部130による凹凸が形成されている。この凹凸は、縦断面視で櫛歯状に形成されている。
【0033】
少なくとも表面の一部に凹凸が設けられていることにより、熱伝導体2eの表面積が増大し、例えば、放熱部分として機能する部位(例えば、外気や冷却水等と接触する部位)の面積を増大させることができる。その結果、積層熱伝導体1C全体としての放熱効率を高めることができる。また、このとき、隣り合う凸部130の間の凹部120が冷却媒体としての流体(例えば、空気等の気体や、水等の液体)の流路となり前記流体の対流が起きることで、積層熱伝導体1Cの表面からの放熱をより効率よく行うことができる。
【0034】
前記凹凸は、冷却フィンとして機能することができ、例えば、羽形状を有するものとすることができる。
積層熱伝導体1Cにおいて、熱伝導体2eの少なくとも表面の一部に形成される前記凹凸の形状や大きさ(深さ)は、特に限定されるものではない。
また、前記凹凸の形成パターンも特に限定されず、規則的なものであってもよいし、不規則なものであってもよい。
図4に示す積層熱伝導体1は、ヒートシンクとして好適に用いることができる。
【0035】
積層熱伝導体1を平面視した際(熱伝導体2の積層方向から観察した際)の積層熱伝導体1の形状、積層熱伝導体1の横断面形状は、図1では、いずれも長方形であるが、これに限定されず、例えば、円形、楕円形、多角形、及びこれらを組み合わせた形状等が挙げられる。また、積層熱伝導体1についての縦断面形状としては、例えば、厚さ方向に一定の幅を有するものであってもよいし、厚さ方向で幅が変化する部位を有するものであってもよい。
【0036】
積層熱伝導体1を平面視した際の形状、積層熱伝導体1の横断面形状が多角形状、例えば、四角形状である場合、当該四角形の最大となる1辺の長さは、5mm以上15cm以下であることが好ましく、7mm以上10cm以下であることがより好ましい。
これにより、熱伝導に十分な面積を確保することができ、より確実に、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0037】
具体的には、例えば、積層熱伝導体1を平面視した際の形状が、5mm×5mm角よりも大きい四角形状であることが好ましい。
これにより、上述した効果をさらに顕著に発揮させることができる。
【0038】
なお、積層熱伝導体1の大きさは、厚さ方向で一定であってもよいし、一定でなくてもよい。厚さ方向で積層熱伝導体1の大きさの異なる部位を有する場合、積層熱伝導体1の1辺の長さが最大となる部位での1辺の値が、前記範囲内の値であることが好ましい。
【0039】
積層熱伝導体1を構成する熱伝導体2は、平坦なシート状のものに限定されず、ブロック状のものであってもよいし、異形のもの、例えば、厚さが途中で変わる部分を有し、側面視で階段状のもの等であってもよい。
【0040】
[1-1]熱伝導体
次に、本発明の積層熱伝導体を構成する熱伝導体について説明する。
図5は、熱伝導体において積層された熱伝導部及び接合部の部分を拡大して模式的に示す断面図である。図6は、熱伝導体を構成する熱伝導部の一例を模式的に示す平面図である。図7は、積層された複数の熱伝導部を分解して示す模式的な一部分解斜視図である。図8は、接合部を構成する硬化性樹脂材料の硬化物の一例の概念図である。なお、図5では、樹脂繊維の図示を省略している。
【0041】
熱伝導体2は、全体として柔軟性を有するものであり、複数の熱伝導部10と、柔軟性を有する樹脂材料21を含む材料で構成され、各熱伝導部10を接合する接合部20とを備える。
【0042】
熱伝導体2は、少なくとも1つの接合部20を備えていればよいが、図1に示す例では、複数の熱伝導部10と複数の接合部20とを備えており、これらの積層方向の両端には熱伝導部10が配されている。
【0043】
熱伝導体2の平均厚さ、すなわち、熱伝導体2の積層方向の厚さ(図1中T1で示す長さ)は、100μm以上10,000μm以下であることが好ましく、200μm以上5,000μm以下であることがより好ましく、300μm以上3,000μm以下であることがさらに好ましい。
これにより、隣接する熱伝導体2同士を好適に密着させることができ、実質的な熱伝導性を優れたものとすることができる。
【0044】
[1-1-1]熱伝導部
複数ある熱伝導部10は、熱伝導体2の全体における熱伝導性、特に、熱伝導部10の面内方向の熱伝導性に主に寄与する部分である。
【0045】
複数の熱伝導部10のうち少なくとも一部は、熱伝導体2の内部、特に、一対の面を垂直に結ぶ第1の方向について、熱伝導体2の内部に連続して設けられるとともに、熱伝導体2の異なる2つの面に露出していることが好ましい。
これにより、第1の方向についての実質的な熱伝導性をより優れたものとすることができる。
【0046】
熱伝導部10は、熱伝導性を有していれば特に限定されず、熱伝導部10を構成する材料としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、アルミナ等のセラミックス材料、黒鉛、炭素繊維等の炭素材料、銅、アルミニウム等の金属材料等が挙げられるが、炭素材料を含む材料で構成されていることが好ましく、黒鉛を含む材料で構成されていることがより好ましい。
これにより、熱伝導体2の実質的な熱伝導性をより優れたものとしつつ、熱伝導体2の製造コストを抑制することができる。
【0047】
また、熱伝導部10が黒鉛を含む材料で構成されていると、各黒鉛粒子を好適に密着させつつ、黒鉛粒子間に適度な空間を設けることができる。これにより、後述する金属層を設ける場合において、アンカー効果が得られ、隣接する熱伝導体2同士を接合する場合に、金属層と熱伝導体2との密着性を特に優れたものとすることができる。
【0048】
[1-1-1-1]炭素材料
特に、熱伝導部10が、黒鉛や炭素繊維のような炭素材料を含む熱伝導部形成用シートにより形成されたものであると、前述した効果に加え、さらに、以下のような効果が得られる。すなわち、熱伝導体2のしなやかさ、柔軟性をより優れたものとすることができ、例えば、熱伝導体2が折れ曲がった時の復元力、さらには、内部の空隙によるクッション性、適度な変形により、積層熱伝導体1が適用される部材との密着性の向上等をより優れたものとすることができる。特に、このような効果は、炭素材料として黒鉛を用いた場合に、より顕著に発揮される。
【0049】
熱伝導部10を構成する黒鉛としては、鱗片状黒鉛を用いることが好ましい。
鱗片状黒鉛を用いることで、後述するような方法により、鱗片状黒鉛を所定方向(より具体的には、熱伝導部10の面内方向)に好適に配向させることができ、熱伝導部10の面内方向への熱伝導性を特に優れたものとすることができる。また、鱗片状黒鉛を用いることで、熱伝導部10の後述する孔部11以外の部位、特に熱伝導部10の面内方向の法線方向である熱伝導部10の厚さ方向の中心部付近の部位に、後述するような空隙部4を好適に設けることができ、後述するような効果を得ることができる。
【0050】
熱伝導部10は、実質的に単一成分で構成されていることが好ましい。
これにより、熱伝導部10の熱伝導性をさらに優れたものとすることができる。また、一般に、熱伝導体2の製造コストを抑制する上でも有利である。
なお、「実質的に単一成分から構成される」とは、対象となる部位での主成分の割合が、95重量%以上であることをいうものとする。主成分の割合は97重量%以上であることが好ましく、99重量%以上であることがより好ましい。
【0051】
ただし、熱伝導部10中に、空気等のガスが含まれる場合は、当該ガスの含有量は無視することとする。また、熱伝導部10が金属材料で構成される場合、その表面には不動態膜のような、熱伝導部10を構成する金属の酸化被膜が形成されていても構わない。このような酸化被膜が形成されている場合も、「実質的に単一成分から構成される」ものとして取り扱うものとする。
【0052】
20℃における熱伝導部10の面内方向の熱伝導率は、7W/(m・K)以上2500W/(m・K)以下であることが好ましく、20W/(m・K)以上1800W/(m・K)以下であることがより好ましい。
なお、熱伝導率の値は、レーザーフラッシュ法に準拠した、非定常熱線法による測定で求めることができる。
【0053】
図1中のt10で示す熱伝導部10の積層方向についての厚さは、5μm以上500μm以下であることが好ましく、20μm以上150μm以下であることがより好ましく、40μm以上120μm以下であることがさらに好ましい。
これにより、熱伝導体2中に占める熱伝導部10の割合を十分に高いものとしつつ、熱伝導体2全体としての柔軟性もより優れたものとしやすく、より確実に、前述したような効果をより顕著に発揮させることができる。
ただし、ここで、熱伝導部10の厚さとは、以下に述べる孔部11が設けられていない部位における厚さのことを言う。
【0054】
図5に示すように、熱伝導体2を構成する各熱伝導部10には、その厚さ方向に凹部が設けられていてもよい。
これにより、熱伝導部10と接合部20との接合強度をより優れたものとすることができる。
【0055】
特に、図5に示す各熱伝導部10では、凹部は、熱伝導部10の厚さ方向に貫通する孔部11である。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0056】
図6に示す構成では、単一の熱伝導部10に設けられた複数個の孔部11は、千鳥状に配置されているが、単一の熱伝導部10の面内方向での複数個の孔部11の配置パターンは、これに限定されず、いかなるものであってもよく、例えば、ランダムに設けられたものであってもよい。
【0057】
孔部11の少なくとも一部には樹脂材料21が侵入している。言い換えると、凹部を介して、当該凹部が設けられた熱伝導部10の内部に硬化性樹脂材料の硬化物が侵入している。
特に、熱伝導部10に設けられた孔部11に樹脂材料21が侵入していることにより、熱伝導部10と接合部20との接合をより強固にすることができ、積層熱伝導体1が適用される部材、例えば、発熱部材や放熱部材等の表面形状への形状適合性や熱伝導体2の耐久性をより良好なものとすることができる。
【0058】
図7に示すように、熱伝導部10を接合部20との積層方向から観察した際に、複数の熱伝導部10で、重なり合わない孔部11が存在していることが好ましい。
これにより、孔部11に侵入した接合部20の樹脂材料21のすり抜けが防止され、熱伝導部10同士の接合をより強固なものとすることができる。
【0059】
なお、図7では、熱伝導部10の部分のみを抜き出して示しており、接合部20は省略している。
孔部11の形状は、特に限定されるものではなく、熱伝導部10を平面視した際の孔部11の形状、熱伝導部10についての孔部11の横断面形状としては、例えば、円形、楕円形、多角形等が挙げられる。また、熱伝導部10についての縦断面形状としては、例えば、孔部11の深さ方向に一定の幅を有するものであってもよいし、孔部11の深さ方向で幅が変化する部位を有するものであってもよい。
【0060】
熱伝導部10を平面視した際の孔部11の形状、熱伝導部10についての孔部11の横断面形状が円形である場合、当該孔部11の直径は、20μm以上300μm以下であることが好ましく、30μm以上200μm以下であることがより好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0061】
熱伝導体2(ただし、空隙部4を除く実体部)中に占める熱伝導部10の割合は、15体積%以上80体積%以下であることが好ましく、20体積%以上60体積%以下であることがより好ましく、30体積%以上50体積%以下であることがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0062】
[1-1-1-2]その他の成分
熱伝導部10は、上述した成分以外の成分を含んでいてもよい。以下、この項目内において、このような成分をその他の成分と言う。
ただし、熱伝導部10中におけるその他の成分の含有率は、5重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることがより好ましい。
【0063】
[1-1-2]接合部
接合部20は、隣り合う2つの熱伝導部10の間に配されて、熱伝導部10同士を接合するものであり、柔軟性を有する樹脂材料21を含んで構成される。
接合部20が柔軟性を有する樹脂材料21を含むことで、積層熱伝導体1が適用される部材との密着性や、前記部材の温度変化による膨張収縮に対する追従性がより優れたものとなる。熱伝導体2は、積層熱伝導体1が適用される部材の表面形状への形状適合性がより優れたものとなる。また、接合部20が柔軟性を有する樹脂材料21を含むことで、熱伝導体2が変形した際に、熱伝導体2が損傷することを好適に防止することができる。
【0064】
[1-1-2-1]樹脂材料
接合部20を構成する樹脂材料21としては、柔軟性を有するものであれば特に限定されず、例えば、柔軟性エポキシ樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性エラストマー等が挙げられるが、樹脂材料21は、図8に示すように、環状分子51と、直鎖状の分子構造を有し環状分子51を串刺し状に包接する第1のポリマー52と、第1のポリマー52の両端付近に設けられた封鎖基53とを有するポリロタキサン50、及び、第2のポリマー60を含み、環状分子51を介して、ポリロタキサン50と第2のポリマー60とが結合しているものであることが好ましい。
これにより、熱伝導体2における熱伝導部10と接合部20との接合強度等をより優れたものとすることができ、熱伝導体2の耐久性をより優れたものとすることができる。また、熱伝導体2の柔軟性、耐熱性等を特に優れたものとすることができる。
【0065】
特に、図8(A)に示すような状態の樹脂材料21に、矢印方向の応力が付加された場合、樹脂材料21は、図8(B)に示すような形態を採ることができる。すなわち、樹脂材料21では、環状分子51が第1のポリマー52に沿って移動可能であるため、すなわち、第1のポリマー52が環状分子51内を移動可能であるため、変形の応力を樹脂材料21中で効率よく吸収することができる。したがって、ひねり変形力等の大きな外力が加わった場合であっても、接合部20が破壊されたり、熱伝導部10同士の接合が破壊されてしまったりすることが効果的に防止される。また、積層熱伝導体1が適用される部材との密着性や、前記部材の温度変化による膨張収縮に対する追従性がさらに優れたものとなる。
【0066】
以下、ポリロタキサン50と第2のポリマー60とを含む樹脂材料21について詳細に説明する。
ポリロタキサン50を構成する環状分子51は、第1のポリマー52に沿って移動可能なものであればよいが、置換されていてもよいシクロデキストリン分子であることが好ましく、該シクロデキストリン分子がα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン及びγ-シクロデキストリン、並びにその誘導体からなる群から選択されるものであることが特に好ましい。
【0067】
ポリロタキサン50中の環状分子51の少なくとも一部は、上述のように、第2のポリマー60の少なくとも一部と結合する。
環状分子51が有する官能基(第2のポリマー60と結合する官能基)としては、例えば、-OH基、-NH基、-COOH基、エポキシ基、ビニル基、チオール基、及び光架橋基等が挙げられる。なお、光架橋基としては、例えば、ケイ皮酸、クマリン、カルコン、アントラセン、スチリルピリジン、スチリルピリジニウム塩、スチリルキノリウム塩等が挙げられる。
【0068】
環状分子51が第1のポリマー52により串刺し状に包接される際に環状分子51が最大限に包接される量を1とした場合、第1のポリマー52に串刺し状に包接されている環状分子51の量は、0.001以上0.6以下であることが好ましく、0.05以上0.4以下であることがより好ましい。なお、異なる2種以上の環状分子51を用いてもよい。
【0069】
ポリロタキサン50を構成する第1のポリマー52としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん等及び/又はこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びその他オレフィン系単量体との共重合樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル-スチレン共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートや(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル-メチルアクリレート共重合樹脂等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等;及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ナイロン等のポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエン等のポリジエン類、ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類、並びにこれらの誘導体が挙げられ、特にポリエチレングリコールであることが好ましい。
【0070】
第1のポリマー52の重量平均分子量は、1万以上であることが好ましく、3.5万以上であることがより好ましい。なお、異なる2種以上の第1のポリマー52を用いてもよい。
環状分子51と第1のポリマー52との組み合わせとしては、環状分子51が置換されていてもよいα-シクロデキストリンであり、第1のポリマー52がポリエチレングリコールであることが好ましい。
【0071】
ポリロタキサン50を構成する封鎖基53は、環状分子51が第1のポリマー52から脱離することを防止する機能を有する基であれば特に限定されないが、例えば、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、ピレン類、置換ベンゼン類(置換基として、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、スルホニル、カルボキシル、アミノ、フェニル等が挙げられる。置換基は1つ又は複数存在してもよい。)、置換されていてもよい多核芳香族類、ステロイド類等が挙げられる。
【0072】
置換ベンゼン類、置換多核芳香族類を構成する置換基としては、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、スルホニル、カルボキシル、アミノ、フェニル等が挙げられる。置換基は1つ又は複数存在してもよい。なお、異なる2つ以上の封鎖基53を用いてもよい。
【0073】
樹脂材料21中において、少なくとも一部のポリロタキサン50が、環状分子51を介して、第2のポリマー60と結合しているが、樹脂材料21中には、第2のポリマー60と結合していないポリロタキサン50が含まれていてもよいし、ポリロタキサン50同士が結合していてもよい。
【0074】
第2のポリマー60は、環状分子51を介して、ポリロタキサン50と結合するものである。第2のポリマー60が有する環状分子51と結合する官能基としては、例えば、-OH基、-NH基、-COOH基、エポキシ基、ビニル基、チオール基、光架橋基等が挙げられる。なお、光架橋基としては、例えば、ケイ皮酸、クマリン、カルコン、アントラセン、スチリルピリジン、スチリルピリジニウム塩、スチリルキノリウム塩等が挙げられる。
【0075】
第2のポリマー60としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん等及び/又はこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びその他オレフィン系単量体との共重合樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレンやアクリロニトリル-スチレン共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートや(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル-メチルアクリレート共重合樹脂等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等;及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ナイロン等のポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエン等のポリジエン類、ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類の各種樹脂の骨格を有し、前述した官能基を有するものが挙げられる。
【0076】
接合部20中における樹脂材料21の含有率は、5体積%以上90体積%以下であることが好ましく、25体積%以上75体積%以下であることがより好ましい。
これにより、接合部20による熱伝導部10の接合強度をより優れたものとしつつ、接合部20が樹脂繊維22を含む場合には、接合部20中における樹脂繊維22の含有率を十分に確保することができ、樹脂繊維22を含むことによる効果を十分に発揮させることができる。
【0077】
[1-1-2-2]樹脂繊維
接合部20は、前述したような樹脂材料21とともに、樹脂繊維22を含んでいてもよい。
これにより、積層熱伝導体1を長時間用いた場合でも、熱伝導体2がダレ変形してしまうことを効果的に防止することができ、積層熱伝導体1が適用される部材との密着性が低下し、熱抵抗が上昇してしまうという問題の発生を効果的に防止することができる。
【0078】
接合部20中に含まれる樹脂繊維22の太さは、1.0μm以上30μm以下であることが好ましく、2.0μm以上25μm以下であることがより好ましく、3.0μm以上20μm以下であることがさらに好ましく、4.0μm以上15μm以下であることが最も好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0079】
樹脂繊維22は、主として樹脂材料で構成されたものであればよく、樹脂繊維22を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール等が挙げられるが、樹脂繊維22は、ポリエステルで構成されたものであることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートで構成されたものであることがより好ましい。
これにより、樹脂繊維22自体の強度をより優れたものとすることができ、前述したような接合部20中に樹脂繊維22を含むことによる効果をより効果的に発揮することができるとともに、樹脂繊維22と樹脂材料21との密着性をより優れたものとすることができ、熱伝導体2の耐久性、信頼性をより優れたものとすることができる。
【0080】
接合部20中における樹脂繊維22の含有率は、2体積%以上70体積%以下であることが好ましく、4体積%以上50体積%以下であることがより好ましく、6体積%以上30体積%以下であることがさらに好ましい。
これにより、前述した樹脂繊維22を含むことによる効果をより顕著に発揮させることができるとともに、接合部20中における樹脂材料21の含有率を十分に確保することができ、接合部20による熱伝導部10の接合強度を十分に優れたものとすることができる。
【0081】
[1-1-2-3]その他の成分
接合部20は、上述した成分以外の成分を含んでいてもよい。
このような成分としては、例えば、金属粒子、セラミックス粒子、可塑剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、改質剤、防錆剤、充填剤、フェライト等の電磁波吸収材、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、プライマー、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、レベリング剤、増粘剤、分散剤、老化防止剤、難燃剤、加水分解防止剤等が挙げられる。
ただし、接合部20中におけるこれらの成分の含有率は、5重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることがより好ましい。
【0082】
図1中、t20で示す熱伝導部10と接合部20との積層方向についての接合部20の厚さは、0.1μm以上1000μm以下であることが好ましく、5.0μm以上100μm以下であることがより好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
ただし、ここで、接合部20の厚さとは、接触する熱伝導部10に孔部11が設けられていない部位における厚さのことを言う。
【0083】
熱伝導体2(ただし、空隙部4を除く実体部)中に占める接合部20の割合は、15体積%以上70体積%以下であることが好ましく、16体積%以上60体積%以下であることがより好ましく、18体積%以上50体積%以下であることがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0084】
[1-1-3]空隙部
図示の構成では、熱伝導体2は、熱伝導部10、接合部20に加えて、熱伝導部10及び接合部20が存在していない空隙部4を有している。
空隙部4は、熱伝導体2において、熱伝導部10及び接合部20が存在していない部分である。空隙部4には、通常、空気や、接合部20を構成する樹脂材料21が硬化した際に発生するガス等の気体が含まれている。
このような空隙部4を有することにより、熱伝導体2に好適な柔軟性を付与することが可能となり、積層熱伝導体1が適用される部材と、積層熱伝導体1との密着性を優れたものとすることができ、前記部材と積層熱伝導体1との間での密着性、実質的な熱伝導性を優れたものとすることができる。
【0085】
熱伝導体2中に占める空隙部4の割合(自然状態での割合。以下同様。)は、5体積%以上65体積%以下であることが好ましく、5体積%以上50体積%以下であることがより好ましく、6体積%以上40体積%以下であることがさらに好ましく、7体積%以上32体積%以下であることが最も好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0086】
自然状態における熱伝導体2の密度は、0.6g/cm以上2.5g/cm以下であることが好ましく、0.9g/cm以上2.0g/cm以下であることがより好ましい。
【0087】
熱伝導体2における熱伝導部10及び接合部20を構成する材料として、上述したような材料を用いることにより、全体としての密度を低くすることができる。
これにより、熱伝導体2を特に軽量なものとすることができる。そして、熱伝導体2を有する電子装置が電子機器等に搭載された場合に、該電子機器等の軽量化を妨げない。すなわち、電子機器等をより軽量なものとすることができる。
【0088】
[1-2]熱伝導体の積層の形態の詳細
本発明においては、積層熱伝導体を構成する複数の熱伝導体のうち、少なくとも2つの熱伝導体の間で、少なくとも一部が重なり合い、かつ、熱伝導体の積層方向から観察した際に、熱伝導部の延在方向が非平行となっていればよいが、積層熱伝導体を構成する2つの熱伝導体の間での、熱伝導体の積層方向から観察した際の熱伝導部の延在方向のなす角は、20°以上90°以下(90°以上160°以下)であることが好ましく、40°以上90°以下(90°以上140°以下)であることがより好ましく、60°以上90°以下(90°以上120°以下)であることがさらに好ましく、特に、熱伝導体2の積層方向から観察した際に、熱伝導部10の延在方向が直交する関係となることが好ましい。
これにより、前述した本発明による効果がより顕著に発揮される。
積層熱伝導体1における熱伝導体2の積層数が3以上である場合、熱伝導部10の延在方向の重なり合う角度がそれぞれ異なっていてもかまわず、周辺におかれた電子部品などの影響を考慮して、積層熱伝導体1が最も均熱になるように組み合わせることができる。
【0089】
なお、本明細書において、「直交」とは、数学的な意味での厳密な「直交」ではなく、若干のずれを許容するものである。具体的には、例えば、85°以上90°以下(90°以上95°以下)の範囲で交差していればよい。
【0090】
図1図4では、2つの熱伝導体2を積層した場合を例に挙げて示しているが、積層される熱伝導体2の数は、特に限定されない。積層される熱伝導体2の数は、例えば、3層以上であってもよい。
ただし、積層される熱伝導体2の数が多いと、隣接する熱伝導体2間での界面数が増えることで、全体としての界面熱抵抗が増加し、積層熱伝導体1の実質的な熱伝導性を低下させてしまう。
【0091】
そのため、積層熱伝導体1における熱伝導体2の積層数は、2以上10以下であることが好ましく、2以上8以下であることがより好ましく、2以上5以下であることがさらに好ましい。
これにより、界面熱抵抗の増加をより効果的に抑制することができ、前述した本発明による効果がより顕著に発揮される。
なお、本明細書において、熱伝導体2の積層数は、積層熱伝導体1の厚さ方向、言い換えると、上面と下面とを結ぶ第1の方向(Z方向)における積層数のことを意味する。
【0092】
積層熱伝導体1において、積層方向で隣接する熱伝導体2は、密着していることが好ましく、接合されていることがより好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。例えば、隣接する熱伝導体2間での界面熱抵抗をより低く抑えて、積層熱伝導体1の実質的な熱伝導性をより高めることができる。
また、面圧をかけなくても、隣接する熱伝導体2間での良好な密着性を確保することができ、隣接する熱伝導体2のうち少なくとも一方が、面圧をかけることが困難なものであっても、積層熱伝導体1を構成することができる。
【0093】
また、積層熱伝導体1の強度を優れたものとすることができる。より具体的には、例えば、隣接する熱伝導体2間の界面での不本意な剥離が防止される。また、例えば、ねじ止め用等の目的で、熱伝導体2の厚さ方向(積層熱伝導体1での熱伝導体2の積層方向)に貫通する孔部を開ける場合に、熱伝導部10の延在方向が非平行となるように、複数の熱伝導体2が積層、接合されていることで、熱伝導部10と接合部20とが剥がれる力が分散されることとなり、熱伝導部10や接合部20が剥離、脱離すること等が好適に防止され、積層熱伝導体1全体としての強度を高めることができる。
【0094】
なお、本発明において、複数の熱伝導体の積層方向で隣接する熱伝導体が接合されている積層熱伝導体の形態には、例えば、隣接する2つの熱伝導体において対向する部分の全体が接合されている構成のほか、対向する部分の一部のみが接合されている構成も含まれ、また、3枚以上の熱伝導体が積層された構成においては、上記のように他の熱伝導体に接合された熱伝導体に加えて、他の熱伝導体に接合されていない熱伝導体を備える構成も含まれる。
【0095】
例えば、積層熱伝導体1を熱伝導体2の積層方向に押圧することによって、隣接する熱伝導体2同士を密着させることができる。
【0096】
また、積層方向で隣接する熱伝導体2を接合する手段としては、例えば、融着、溶着、接着、粘着剤による接合等が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
例えば、複数の熱伝導体2を積層した状態で、押圧や加熱をすることにより、隣接する熱伝導体2を融着、溶着により接合することができる。
【0097】
また、積層方向で隣接する熱伝導体2が接合されている場合、熱伝導体2の表面の少なくとも一部には、例えば、湿式めっきや乾式めっき、ペースト焼き付け、溶射等による金属層が設けられていてもよい。
これにより、例えば、はんだ付けにより隣接する熱伝導体2を接合する場合における、熱伝導体2同士の接合強度をより優れたものとすることができる。
【0098】
前記金属層を構成する材料としては、例えば、金、銀、ニッケル、銅、亜鉛、スズ等が挙げられるが、金、ニッケルのうちの少なくとも一方であることが好ましい。
【0099】
金は、金属材料の中でも延性が比較的高く、熱伝導体2が変形した場合にも好適に追従することができる。言い換えると、熱伝導体2の柔軟性を妨げない。また、熱伝導率にも優れている。また、前記金属層と熱伝導体2(特に、後述するような黒鉛を含む材料で構成された熱伝導部10)との密着性をより優れたものとすることができる。
【0100】
前記金属層の厚さは、0.1μm以上20μm以下であることが好ましく、0.5μm以上15μm以下であることがより好ましく、1.0μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。
これにより、上述した効果をより好適なものとすることができる。
【0101】
熱伝導体2の表面の少なくとも一部に前記金属層が設けられている場合、前記金属層の一部が、熱伝導体2の内部に侵入していることが好ましい。
ここで、「金属層の一部が、熱伝導体2の内部に侵入する」とは、熱伝導体2の表面の微細な凹凸、あるいは、熱伝導体2の表面に露出する熱伝導部10及び接合部20の微細な空隙に、前記金属層の一部が侵入していることをいう。
これにより、アンカー効果により、熱伝導体2と前記金属層との密着性がより優れたものとなり、前述したような効果がより顕著に発揮される。また、積層熱伝導体1が変形することにより前記金属層が熱伝導体2から剥離してしまうことが好適に防止され、積層熱伝導体1の耐久性をより良好なものとすることができる。このようなアンカー効果は、熱伝導部10が前述したような黒鉛を含む材料で構成されたものである場合に、このような効果はより顕著に発揮される。
【0102】
熱伝導体2に前記金属層が設けられている場合、前記金属層は、熱伝導部10の表面に選択的に設けられていること、言い換えると、接合部20の表面には前記金属層が実質的に設けられていないことが好ましい。
これにより、積層熱伝導体1としての柔軟性をより好適なものとすることができる。
また、前記金属層が、熱伝導部10の表面に選択的に設けられていることで、積層熱伝導体1が変形することにより前記金属層が引っ張られて熱伝導体2から剥離してしまうことが好適に防止され、積層熱伝導体1の耐久性をより良好なものとすることができる。
【0103】
また、積層熱伝導体1を構成する前記金属層が、熱伝導部10の表面に選択的に設けられていることで、積層されている熱伝導体2間での熱伝導性をより良好なものとすることができる。
【0104】
前記金属層を、熱伝導部10の表面に選択的に形成する方法は、特に限定されないが、例えば、前記金属層を電解めっき法により形成することで、前記金属層は、導電性に優れた熱伝導部10の部分に優先的に付着することになる。これにより、前記金属層を、熱伝導部10の表面に選択的に形成することができる。また、接合部20が後述するような材料で構成されたものである場合、無電解めっき法により前記金属層を形成した場合であっても、熱伝導部10の表面に優先的に前記金属層を形成することができる。
【0105】
熱伝導体2を平面視した際(積層熱伝導体1における熱伝導体2の積層方向から観察した際)の熱伝導部10の面積比が大きい場合、電解めっきにより熱伝導部10の表面に選択的に形成される前記金属層の面積も、より広い面積とすることができる。これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0106】
なお、本明細書において、前記金属層について「熱伝導部10の表面に選択的に設けられている」とは、熱伝導部10の表面における前記金属層の被覆率が、接合部20の表面における前記金属層の被覆率よりも高い状態のことを言う。
すなわち、前記金属層が、熱伝導部10の表面にのみ設けられている場合に限らず、熱伝導部10の表面に加えて、接合部20の表面に設けられていてもよく、熱伝導部10の表面における前記金属層の被覆率が、接合部20の表面における前記金属層の被覆率よりも高ければ、熱伝導部10の表面に選択的に設けられていると言える。
【0107】
はんだ付けは、接合する部材(母材)よりも融点の低いはんだを溶かして一種の接着剤として用いる溶着方法であり、例えば、はんだとしては、低温はんだを用いることができる。
【0108】
ここで、「低温はんだ」とは、スズ(Sn)又は鉛(Pb)をベースとして、カドミウム(Cd)、ビスマス(Bi)、インジウム(In)等を配合することで、一般的なSn-37Pb共晶はんだ(融点183℃)よりも融点を低くしたはんだのことを言う。環境汚染を防止する観点から、スズ(Sn)をベースとして、ビスマス(Bi)、インジウム(In)を配合した、鉛フリー低温はんだであることが好ましい。
【0109】
低温はんだの融点は、110℃以上160℃以下であることが好ましい。
低温はんだとしては、熱伝導率がよいものを選択して用いることが好ましい。
このような鉛フリー低温はんだとしては、Sn-58Bi共晶はんだ(融点138℃)、Sn-52In合金はんだ(融点118℃)等が挙げられる。
このような低温はんだを用いることにより、隣接する熱伝導体2同士の接合力を優れたものとすることができるとともに、熱伝導体2同士の接合時に熱伝導体2に損傷等が生じることを防止することができる。
【0110】
また、隣接する熱伝導体2同士の接合に用いる接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、合成ゴム系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、PCM(Phase Change Material)等が挙げられる。
【0111】
[2]積層熱伝導体の製造方法
次に、積層熱伝導体1の製造方法について説明する。
積層熱伝導体1は、熱伝導部10の延在方向が非平行となるように、複数の熱伝導体2を積層することにより製造することができる。
【0112】
[2-1]熱伝導体の製造
次に、積層熱伝導体1を構成する熱伝導体2は、例えば、以下のようにして製造することができる。
すなわち、熱伝導体2は、例えば、少なくとも一方の面に、接合部20の形成に用いる接合部形成用組成物が付与された、熱伝導部10の形成に用いる熱伝導部形成用シート(熱伝導部形成用部材)を、巻取ロールの周面に巻回することで、熱伝導部10と接合部20とを交互に積層形成することで、好適に製造することができる。
【0113】
熱伝導体2の製造方法は、例えば、硬化性樹脂材料を含む組成物である接合部形成用組成物が付与され、凹部(孔部)11が形成された熱伝導部10の形成に用いる熱伝導部形成用シートを、巻取ロールの周面に巻回し、筒状の巻回体を得る巻回工程と、巻回体を、ロールの軸方向に対して非垂直な方向で切り開き、切開体を得る切開工程と、切開体中に含まれる硬化性樹脂材料を硬化させ、接合部20を形成する硬化工程とを有する。
【0114】
接合部形成用組成物が付与された熱伝導部形成用シートを、巻取ロールの周面に巻回することで、例えば、枚葉のシート状原料を用いる場合等に比べて、熱伝導体2を効率よく製造することができる。また、巻回体を切開した後で硬化性樹脂材料を硬化させることにより、樹脂材料21を含む接合部20に比べて、より柔らかい状態で切開することができる。このため、巻回により発生するひずみを好適に矯正することができ、巻回体よりも平坦性の高い切開体とするのに際し、熱伝導部10に対応する部位である熱伝導部形成用シートと、接合部20に対応する部位である接合部形成用組成物との間での剥離や密着性の低下等が生じることを効果的に防止することができる。その結果、最終的に得られる熱伝導体2を、ひずみが好適に除去されるとともに、熱伝導部10と接合部20との間での剥離や密着性の低下、接合部20の破壊、熱伝導部10同士の接合の破壊等が効果的に防止され、熱伝導部10と接合部20とが強固に密着したものとすることができる。
【0115】
製造すべき熱伝導体2が、シート状をなすものである場合、前述した硬化工程の後に、両面において、熱伝導部10及び接合部20が表出するシート状にカットするカット工程を行う。
これにより、例えば、所望の厚さを有するシート状の熱伝導体2を得ることができる。
【0116】
また、熱伝導体2の製造方法では、例えば、巻回工程に先立って、凹部(孔部)11が設けられた熱伝導部形成用シートに接合部形成用組成物を付与する接合部形成用組成物付与工程を有していてもよい。
【0117】
また、上述した説明では、接合部形成用組成物を付与した熱伝導部形成用シートを巻回して巻回体とし、巻回体を切開する方法を用いて熱伝導体2を製造する方法について説明したが、熱伝導体2は、例えば、接合部形成用組成物が付着した枚葉の熱伝導部形成用部材を積層して積層体とする方法を用いて製造されたものであってもよい。
【0118】
[2-2]熱伝導体の積層
熱伝導部10の延在方向が非平行となるように、複数の熱伝導体2を積層する方法としては、例えば、熱伝導部10の延在方向が面内でX方向となるように配置した熱伝導体2と、熱伝導部10の延在方向が面内でY方向となるように配置した熱伝導体2とを積層する方法が挙げられる。
【0119】
また、例えば、積層熱伝導体1を熱伝導体2の積層方向に押圧することによって、隣接する熱伝導体2同士を密着させてもよい。
【0120】
さらに、複数の熱伝導体2の積層方向で隣接する熱伝導体2を接合することが好ましい。
積層方向で隣接する熱伝導体2を接合する手段としては、例えば、上記[1-2]で説明したものが挙げられる。
【0121】
隣接する熱伝導体2を接合する際に押圧する場合、複数の熱伝導体2を積層した状態で、熱伝導体2の積層方向に押圧する。
このときの圧力は、0.5MPa以上2.0MPa以下であることが好ましく、0.6MPa以上1.5MPa以下であることがより好ましく、0.8MPa以上1.2MPa以下であることがさらに好ましい。
これにより、隣接する熱伝導体2同士をより好適に接合することができる。
【0122】
隣接する熱伝導体2を接合する際に加熱する場合、複数の熱伝導体2を積層した状態で、熱伝導体2の積層体を加熱する。
このときの加熱温度は、80℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上280℃以下であることがより好ましく、150℃以上250℃以下であることがさらに好ましい。
これにより、隣接する熱伝導体2同士をより好適に接合することができる。
【0123】
加熱、押圧による接合の処理時間としては、1分以上60分以下であることが好ましく、1分以上30分以下であることがより好ましく、1分以上10分以下であることがさらに好ましい。
【0124】
低温はんだを用いたはんだ付けを行う場合、例えば、熱伝導体2上に設けられた前記金属層の接合面に低温はんだペーストを印刷した後、リフローする方法、あるいは、低温はんだボールやリボン状の低温はんだを搭載したのちリフローする方法が挙げられる。
【0125】
低温はんだペースト又は低温はんだボールは、溶融して熱伝導体2上に設けられた前記金属層と物理的に接合し得る状態になる。そして、低温はんだが固化することにより、低温はんだを介して隣接する熱伝導体2上に設けられた前記金属層同士が接合される。
【0126】
さらに、リフロー時に、前記金属層が設けられた複数の熱伝導体2を積層した状態で、前記金属層が設けられた熱伝導体2の積層方向に押圧してもよい。押圧の条件については、上述した条件と同様とすることができる。
【0127】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0128】
例えば、前述した説明では、熱伝導体2を構成する熱伝導部10及び接合部20が平面状のものである場合について中心的に説明したが、熱伝導体2を構成する熱伝導部10、接合部20のうちの少なくとも一部は、非平面状をなすもの、例えば、湾曲面状のもの、屈曲面状のもの等であってもよい。
【0129】
また、前述した説明では、熱伝導体2を構成する各熱伝導部10に、孔部11が設けられている場合について代表的に説明したが、熱伝導体2を構成する複数の熱伝導部10のうちの一部については、孔部11が設けられていなくてもよい。
【0130】
また、熱伝導部10には、前述した孔部11の代わりに又は前述した孔部11に加えて、熱伝導部10の厚さ方向に貫通しない凹部、すなわち、有底凹部が設けられていてもよい。また、熱伝導部10には、凹部が設けられていなくてもよい。
【0131】
また、熱伝導体2は、前述した熱伝導部10、接合部20、空隙部4以外の構成を有するものであってもよい。
【0132】
また、熱伝導体2及び積層熱伝導体1は、上記のような方法で製造されたものに限定されない。例えば、熱伝導体2の製造方法又は積層熱伝導体1の製造方法においては、前述した工程に加え、他の工程(前処理工程、中間処理工程、後処理工程等)をさらに有していてもよい。
【符号の説明】
【0133】
1 :積層熱伝導体
1A :積層熱伝導体
1B :積層熱伝導体
1C :積層熱伝導体
2 :熱伝導体
2a :熱伝導体
2b :熱伝導体
2c1 :熱伝導体
2c2 :熱伝導体
2d :熱伝導体
2e :熱伝導体
4 :空隙部
10 :熱伝導部
11 :孔部(凹部)
20 :接合部
21 :樹脂材料
22 :樹脂繊維
50 :ポリロタキサン
51 :環状分子
52 :第1のポリマー
53 :封鎖基
60 :第2のポリマー
120 :凹部
130 :凸部
200 :電子部品
210 :電子部品
T1 :厚さ
T2 :長さ
10 :厚さ
20 :厚さ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8