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特開2024-29805積層造形システム、制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029805
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】積層造形システム、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/04 20060101AFI20240229BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20240229BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20240229BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20240229BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240229BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B23K9/04 G
B29C64/386
B33Y50/00
B29C64/118
B33Y30/00
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132194
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】初田 光嶺
(72)【発明者】
【氏名】椋田 雄
【テーマコード(参考)】
3C100
4F213
【Fターム(参考)】
3C100AA03
3C100AA13
3C100AA22
3C100AA29
3C100BB06
3C100BB11
4F213AR07
4F213AR11
4F213AR12
4F213WA25
4F213WA97
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL85
4F213WL96
(57)【要約】
【課題】積層造形物の造形中に、実績データの計画データからの乖離が発生した場合に、実行すべき工程の組み合わせを調整することを容易にする。
【解決手段】積層造形物を造形するためのビードの積層工程を実行可能な工程実行部と、積層工程の前工程又は後工程を実行可能な工程実行部とを含む複数の工程実行部と、複数の工程実行部に通信可能に構成され、複数の工程実行部のうちの実行すべき工程実行部の組み合わせを決定する制御部と、を備え、制御部は、複数の工程実行部のうちの少なくとも1つの工程実行部が工程を実行した際に得られた実績データを取得し、実績データの計画データからの乖離度合いに基づいて、組み合わせを決定する、積層造形システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形物を造形するためのビードの積層工程を実行可能な工程実行部と、当該積層工程の前工程又は後工程を実行可能な工程実行部とを含む複数の工程実行部と、
前記複数の工程実行部に通信可能に構成され、当該複数の工程実行部のうちの実行すべき工程実行部の組み合わせを決定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記複数の工程実行部のうちの少なくとも1つの工程実行部が工程を実行した際に得られた実績データを取得し、当該実績データの計画データからの乖離度合いに基づいて、前記組み合わせを決定する、
積層造形システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記複数の工程実行部の前記組み合わせが前記積層造形物に対して相対的に移動するように制御する、請求項1に記載の積層造形システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記積層造形物の欠陥発生確率が所定の設定値以下となることを満足しつつ工程の実行時間の合計を最小化する前記組み合わせを決定する、請求項1に記載の積層造形システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記積層造形物の欠陥発生確率をモデル化した欠陥発生確率モデルに基づいて、前記所定の設定値を求める、請求項3に記載の積層造形システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記実績データとして、前記少なくとも1つの工程実行部が工程を実行した後の前記積層造形物の形状を示す実績形状データを取得し、前記計画データとして、前記積層造形物の計画上の形状を示す計画形状データを用いる、請求項1に記載の積層造形システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記実績形状データとして、前記積層造形物の積層高さの実績値を取得し、前記計画形状データとして、前記積層造形物の積層高さの計画値を用い、前記乖離度合いとして、当該実績値と当該計画値との差分を用いる、請求項5に記載の積層造形システム。
【請求項7】
前記複数の工程実行部の前記組み合わせに含まれる各工程実行部を、当該各工程実行部が工程を実行する対象の前記積層造形物まで移動させる移動システムを更に備える、請求項1に記載の積層造形システム。
【請求項8】
前記移動システムは、
レール装置と、
前記各工程実行部を、当該各工程実行部が工程を実行する対象の前記積層造形物の方向へ移動させるように、前記レール装置を切り替える切替装置と、
を備える、請求項7に記載の積層造形システム。
【請求項9】
積層造形物を造形するためのビードの積層工程を実行可能な工程実行部と、当該積層工程の前工程又は後工程を実行可能な工程実行部とを含む複数の工程実行部と、
前記複数の工程実行部に通信可能に構成され、当該複数の工程実行部のうちの実行すべき工程実行部の組み合わせを決定する制御部と、
を備えた積層造形システムにおいて、
前記制御部が、前記複数の工程実行部のうちの少なくとも1つの工程実行部が工程を実行した際に得られた実績データを取得するステップと、
前記制御部が、前記実績データの計画データからの乖離度合いに基づいて、前記組み合わせを決定するステップと、
を含む、制御方法。
【請求項10】
積層造形物を造形するためのビードの積層工程を実行可能な工程実行部と、当該積層工程の前工程又は後工程を実行可能な工程実行部とを含む複数の工程実行部と、
前記複数の工程実行部に通信可能に構成され、当該複数の工程実行部のうちの実行すべき工程実行部の組み合わせを決定する制御部と、
を備えた積層造形システムにおいて、
前記制御部に、
前記複数の工程実行部のうちの少なくとも1つの工程実行部が工程を実行した際に得られた実績データを取得する機能と、
前記実績データの計画データからの乖離度合いに基づいて、前記組み合わせを決定する機能と、
を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形システム、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、母材を積載した架台を外部から搬入する待機室と、母材上に金属を含む造形材料を用いて積層造形物を形成する積層室と、積層造形物に加工を施す加工室と、積層造形物や積層造形物を加工してなる加工物を検査する検査室とを有しており、各部屋間を、母材等を積載した架台が行き来できるようになっている構造体製造装置が記載されている。
特許文献2には、中央コントローラは、通信ネットワークを介して、各製造セルのセルコントローラから実際の溶接パラメータデータを収集し、製造セルの各々の中で溶接されている同じ種類の加工物に関する集合溶接パラメータデータを形成し、集合溶接パラメータデータを分析して、更新済みの溶接設定を生成し、更新済みの溶接設定は、通信ネットワークを介して、中央コントローラから製造セルの各々のセルコントローラに通信される、製造環境全体の溶接品質保証を支援するシステム及び方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-25120号公報
【特許文献2】特開2019-102086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層造形物の造形中に、実績データの計画データからの乖離が発生した場合に、最初に決めた実行すべき工程の組み合わせを調整することは困難である。
【0005】
本発明の目的は、積層造形物の造形中に、実績データの計画データからの乖離が発生した場合に、実行すべき工程の組み合わせを調整することを容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明は、積層造形物を造形するためのビードの積層工程を実行可能な工程実行部と、積層工程の前工程又は後工程を実行可能な工程実行部とを含む複数の工程実行部と、複数の工程実行部に通信可能に構成され、複数の工程実行部のうちの実行すべき工程実行部の組み合わせを決定する制御部と、を備え、制御部は、複数の工程実行部のうちの少なくとも1つの工程実行部が工程を実行した際に得られた実績データを取得し、実績データの計画データからの乖離度合いに基づいて、組み合わせを決定する、積層造形システムを提供する。
制御部は、複数の工程実行部の組み合わせが積層造形物に対して相対的に移動するように制御する、ものであってよい。
制御部は、積層造形物の欠陥発生確率が所定の設定値以下となることを満足しつつ工程の実行時間の合計を最小化する組み合わせを決定する、ものであってよい。その場合、制御部は、積層造形物の欠陥発生確率をモデル化した欠陥発生確率モデルに基づいて、所定の設定値を求める、ものであってよい。
制御部は、実績データとして、少なくとも1つの工程実行部が工程を実行した後の積層造形物の形状を示す実績形状データを取得し、計画データとして、積層造形物の計画上の形状を示す計画形状データを用いる、ものであってよい。その場合、制御部は、実績形状データとして、積層造形物の積層高さの実績値を取得し、計画形状データとして、積層造形物の積層高さの計画値を用い、乖離度合いとして、実績値と計画値との差分を用いる、ものであってよい。
積層造形システムは、複数の工程実行部の組み合わせに含まれる各工程実行部を、各工程実行部が工程を実行する対象の積層造形物まで移動させる移動システムを更に備える、ものであってよい。その場合、移動システムは、レール装置と、各工程実行部を、各工程実行部が工程を実行する対象の積層造形物の方向へ移動させるように、レール装置を切り替える切替装置と、を備える、ものであってよい。
【0007】
また、本発明は、積層造形物を造形するためのビードの積層工程を実行可能な工程実行部と、積層工程の前工程又は後工程を実行可能な工程実行部とを含む複数の工程実行部と、複数の工程実行部に通信可能に構成され、複数の工程実行部のうちの実行すべき工程実行部の組み合わせを決定する制御部と、を備えた積層造形システムにおいて、制御部が、複数の工程実行部のうちの少なくとも1つの工程実行部が工程を実行した際に得られた実績データを取得するステップと、制御部が、実績データの計画データからの乖離度合いに基づいて、組み合わせを決定するステップと、を含む、制御方法も提供する。
【0008】
更に、本発明は、積層造形物を造形するためのビードの積層工程を実行可能な工程実行部と、積層工程の前工程又は後工程を実行可能な工程実行部とを含む複数の工程実行部と、複数の工程実行部に通信可能に構成され、複数の工程実行部のうちの実行すべき工程実行部の組み合わせを決定する制御部と、を備えた積層造形システムにおいて、制御部に、複数の工程実行部のうちの少なくとも1つの工程実行部が工程を実行した際に得られた実績データを取得する機能と、実績データの計画データからの乖離度合いに基づいて、組み合わせを決定する機能と、を実現させるためのプログラムも提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、積層造形物の造形中に、実績データの計画データからの乖離が発生した場合に、実行すべき工程の組み合わせを調整することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態における積層造形システムの全体構成例を示す図である。
図2】本実施の形態における造形ロボットの概略構成例を示す図である。
図3】本実施の形態における統括コントローラのハードウェア構成例を示す図である。
図4】(a)~(d)は、各モジュールの動作例を示すフローチャートである。
図5】本実施の形態における統括コントローラの機能構成例を示す図である。
図6】本実施の形態における統括コントローラの動作例を示すフローチャートである。
図7】本実施の形態における組み合わせ決定処理の内容を示すフローチャートである。
図8】本実施の形態における他の積層造形システムの全体構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
[積層造形システムの構成]
図1は、本実施の形態における積層造形システム1の全体構成例を示す図である。
図示するように、積層造形システム1は、機能によって分割された複数のモジュール10と、複数のモジュール10を統括して制御する統括コントローラ30とが、通信回線81を介して接続されることにより構成されている。
【0013】
図では、複数のモジュール10としてモジュール10a~10dを示している。例えば、モジュール10aは、積層造形物100を造形するための溶接ビード(以下、単に「ビード」という)の積層工程を実行可能な造形モジュールとしている。モジュール10b~10dは、ビードの積層工程の前工程又は後工程を実行可能なモジュールであれば、如何なるモジュールでもよい。ここでは、モジュール10bは、積層造形物100のUT探傷(超音波探傷)に必要な平滑面を出すための積層造形物100の切削工程を実行可能な切削モジュールとしている。モジュール10cは、積層造形物100のUT探傷工程を実行可能なUT探傷モジュールとしている。モジュール10dは、積層造形物100のUT探傷で発見された欠陥を補修する欠陥補修(ガウジング)工程を実行可能な欠陥補修モジュールとしている。以下では、モジュール10aを造形モジュール10aと称し、モジュール10bを切削モジュール10bと称し、モジュール10cをUT探傷モジュール10cと称し、モジュール10dを欠陥補修モジュール10dと称することもあるものとする。モジュール10は、工程実行部の一例である。
【0014】
各モジュール10はロボット化してもよい。即ち、造形モジュール10aは造形ロボットにより、切削モジュール10bは切削ロボットにより、UT探傷モジュール10cはUT探傷ロボットにより、欠陥補修モジュール10dは欠陥補修ロボットにより、実現してもよい。
或いは、各モジュール10は、複数の関節軸を有するマニピュレータの先端のツールを、各モジュール10の機能に対応するツールに交換することにより、実現してもよい。
また、積層造形システム1では、積層造形物100をラインで搬送するようにしている。図では、ラインを直線で示しているが、ラインは必ずしも直線でなくてよい。各モジュール10間での積層造形物100の認識(位置出し)は、例えば積層造形物100が置かれるベースプレート上に十字マークを付け、これを各モジュール10が認識することにより、実行してもよい。
【0015】
更に、図には示していないが、1つのラインで同時に複数の積層造形物100を造形してもよい。例えば、ある積層造形物100が造形モジュール10aにより造形されている間、別の積層造形物100が切削モジュール10bにより切削されていてもよい。また、複数の積層造形物100を同時に造形する場合、全体工程に占める各モジュール10の稼働時間の割合から、モジュール10の構成比を変えてもよい。例えば、切削に造形の2倍の時間がかかるとすれば、1つの造形モジュール10aに対して2つの切削モジュール10bを設けてもよい。
【0016】
また、各モジュール10はハードウェア、ソフトウェアとしては独立していてもよく、ユーザの希望に応じてモジュール10を減らしたり、新たなモジュール10を追加したり、モジュール10の順序を変更したりしてもよい。例えば、切削が不要なユーザは切削モジュール10bを省略してもよい。UT探傷ではなくPT探傷(浸透探傷)が必要なユーザはPT探傷モジュールを追加してもよい。UT探傷の前ではなく後で切削が必要なユーザは切削モジュール10bとUT探傷モジュール10cの順序を入れ換えてもよい。
更に、各モジュール10は単一の機能でなく、複数の機能を有してもよい。例えば、UT探傷と欠陥補修とを一体化した探傷補修モジュールを設けてもよい。
【0017】
統括コントローラ30は、各モジュール10を駆使して、積層造形物100を製作する。具体的には、統括コントローラ30は、積層計画データを管理する機能と、各モジュール10を使用するか否かを判定する機能とを有する。統括コントローラ30は、複数の工程実行部に通信可能に構成され、複数の工程実行部のうちの実行すべき工程実行部の組み合わせを決定する制御部の一例である。
【0018】
[造形ロボットの構成]
本実施の形態におけるモジュール10を実現するロボットの一例として、造形モジュール10aを実現する造形ロボット20の構成について説明する。
図2は、造形ロボット20の概略構成例を示す図である。
【0019】
造形ロボット20は、複数の関節を有する腕(アーム)21を備え、図示しないロボットコントローラからの指示に従って動作することで造形作業を行う。また、造形ロボット20は、腕21の先端に手首部22を介して、積層造形物100を造形するための溶接トーチ23を有している。そして、造形ロボット20は、軟鋼製の溶加材(ワイヤ)24を溶融しながら、溶接トーチ23を移動させて、積層造形物100を造形する。具体的には、溶接トーチ23は、溶加材24を供給しつつ、シールドガスを流しながらアークを発生させて溶加材24を溶融及び固化し、母材90上に複数層のビード101を積層して積層造形物100を造形する。尚、ここでは、溶加材24を溶融する熱源としてアークを用いるが、レーザやプラズマを用いてもよい。また、造形ロボット20は、この他に、溶加材24を送給する送給装置等も含むが、これについては説明を省略する。
【0020】
[統括コントローラのハードウェア構成]
図3は、統括コントローラ30のハードウェア構成例を示す図である。
図示するように、統括コントローラ30は、例えば汎用のPC(Personal Computer)等により実現され、演算手段であるCPU41と、記憶手段であるメインメモリ42及び磁気ディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)43とを備える。ここで、CPU41は、OS(Operating System)やアプリケーションソフトウェア等の各種プログラムを実行し、統括コントローラ30の各機能を実現する。また、メインメモリ42は、各種プログラムやその実行に用いるデータ等を記憶する記憶領域であり、HDD43は、各種プログラムに対する入力データや各種プログラムからの出力データ等を記憶する記憶領域である。
また、統括コントローラ30は、外部との通信を行うための通信I/F44と、ビデオメモリやディスプレイ等からなる表示機構45と、キーボードやマウス等の入力デバイス46と、記録媒体に対してデータの読み書きを行うためのドライバ47とを備える。尚、図3は、統括コントローラ30をコンピュータシステムにて実現した場合のハードウェア構成を例示するに過ぎず、統括コントローラ30は図示の構成に限定されない。
【0021】
[本実施の形態の背景及び概要]
このような構成を備えた積層造形システム1で積層造形物100を製造する場合、積層途中に欠陥が生じたり欠陥の発生が懸念されたりすれば、予め決めた工程から逸脱して臨機応変に各工程を組み直して製造を続行する必要がある。特に大きな積層造形物100を製造する場合には、製造が1日で完結せず長期にわたる。そのため、いくら精密に製造工程の計画を立てても、異常や計画からの乖離が発生した場合は工程の組み直しが難しい。
また、異常や計画からの乖離が発生しないように検査や補修等の工程を都度組み込むと、生産性が著しく低下する。従って、可能な限り生産性を犠牲しない形で造形状況に応じて工程の組み合わせを自動的に最適化する方法が求められる。
【0022】
そこで、本実施の形態では、統括コントローラ30が、複数のモジュール10のうちの少なくとも1つのモジュール10が工程を実行した際に得られた実績データを取得し、実績データの計画データからの乖離度合いに基づいて、実行すべきモジュール10の組み合わせを決定する。
【0023】
[各モジュールの動作]
図4(a)~(d)は、各モジュール10の動作例を示すフローチャートである。
【0024】
図4(a)は、造形モジュール10aの動作例を示す。
図示するように、造形モジュール10aは、積層計画データを統括コントローラ30から受信し(ステップ111)、これを読み込む(ステップ112)。そして、造形モジュール10aは、造形を行って(ステップ113)、造形結果ログを積層計画データに記録(追記)する(ステップ114)。ここで、造形結果ログとは、例えば、造形後の形状データである。その後、造形モジュール10aは、造形結果ログが記録された積層計画データを統括コントローラ30へ送信する(ステップ115)。
【0025】
図4(b)は、切削モジュール10bの動作例を示す。
図示するように、切削モジュール10bは、積層計画データを統括コントローラ30から受信し(ステップ121)、これを読み込む(ステップ122)。そして、切削モジュール10bは、切削を行って(ステップ123)、切削結果ログを積層計画データに記録(追記)する(ステップ124)。ここで、切削結果ログとは、例えば、切削後の形状データである。その後、切削モジュール10bは、切削結果ログが記録された積層計画データを統括コントローラ30へ送信する(ステップ125)。
【0026】
図4(c)は、UT探傷モジュール10cの動作例を示す。
図示するように、UT探傷モジュール10cは、積層計画データを統括コントローラ30から受信し(ステップ131)、これを読み込む(ステップ132)。そして、UT探傷モジュール10cは、UT探傷を行って(ステップ133)、探傷結果ログを積層計画データに記録(追記)する(ステップ134)。ここで、探傷結果ログとは、例えば、UT探傷で発見された欠陥の寸法及び位置を示すデータである。その後、UT探傷モジュール10cは、探傷結果ログが記録された積層計画データを統括コントローラ30へ送信する(ステップ135)。
【0027】
図4(d)は、欠陥補修モジュール10dの動作例を示す。
図示するように、欠陥補修モジュール10dは、積層計画データを統括コントローラ30から受信し(ステップ141)、これを読み込む(ステップ142)。そして、欠陥補修モジュール10dは、欠陥補修を行って(ステップ143)、補修結果ログを積層計画データに記録(追記)する(ステップ144)。ここで、補修結果ログとは、例えば、補修後の形状データである。その後、欠陥補修モジュール10dは、補修結果ログが記録された積層計画データを統括コントローラ30へ送信する(ステップ145)。
【0028】
[統括コントローラの機能構成]
図5は、本実施の形態における統括コントローラ30の機能構成例を示す図である。図示するように、本実施の形態における統括コントローラ30は、受信部31と、積層計画データ取得部32と、組み合わせ決定部33と、記憶部34と、使用可否判定部35と、送信部36とを備える。
【0029】
受信部31は、各モジュール10が作業の実行後にログデータを記録した積層計画データを、そのモジュール10から通信回線81を介して受信する。モジュール10が造形モジュール10aである場合、ログデータは造形結果ログである。モジュール10が切削モジュール10bである場合、ログデータは切削結果ログである。モジュール10がUT探傷モジュール10cである場合、ログデータは探傷結果ログである。モジュール10が欠陥補修モジュール10dである場合、ログデータは補修結果ログである。ログデータは、複数の工程実行部のうちの少なくとも1つの工程実行部が工程を実行した際に得られた実績データの一例であり、受信部31は、制御部における、実績データを取得する機能の一例である。造形結果ログ、切削結果ログ、及び補修結果ログは、少なくとも1つの工程実行部が工程を実行した後の積層造形物の形状を示す実績形状データの一例であり、受信部31は、制御部における、実績形状データを取得する機能の一例である。造形結果ログ、切削結果ログ、及び補修結果ログは、積層造形物の積層高さの実績値の一例でもあり、受信部31は、制御部における、実績値を取得する機能の一例でもある。
【0030】
積層計画データ取得部32は、積層計画データを取得する。
例えば、造形の開始時には、積層計画データ取得部32は、次のようにして積層計画データを取得する。即ち、積層計画データ取得部32は、図示しないCAD装置から、積層造形物100の三次元形状を表す三次元CADデータを取得する。そして、積層計画データ取得部32は、この三次元CADデータを複数の層に分割(スライス)することで、各層の形状をそれぞれが表す複数の層形状データを生成する。その後、積層計画データ取得部32は、この複数の層形状データの各層の高さ及び幅に合ったビード101を溶着する際の溶接条件やアーク狙い位置を含む積層計画データを生成する。
また、造形の開始後は、積層計画データ取得部32は、受信部31から、各モジュール10がログデータを記録した積層計画データを取得する。
【0031】
組み合わせ決定部33は、複数のモジュール10のうち、使用するモジュール10の組み合わせを決定する。
例えば、組み合わせ決定部33は、各モジュール10が積層造形物100の1層に対して行う作業の平均的な所要時間を表すベクトルtを取得する。また、組み合わせ決定部33は、各モジュール10がi番目の層の全面のうち作業を実施する度合いを表すベクトルxを取得する。ベクトルxの各要素の値は「0」以上「1」以下とする。値「0」はi番目の層に対して作業を実施しないことを示し、値「1」はi番目の層の全面に対して作業を実施することを示す。更に、組み合わせ決定部33は、各モジュール10の作業が生み出す品質効果の重みを表すベクトルwを取得する。品質効果の重みとは、ここでは、欠陥の発生し易さとする。ベクトルwはユーザが事前に与えてよい。尚、ベクトルは、後述する式(1)~(3)においては太字かつ斜体で示すが、テキストにおいては通常の太さで立体の文字で示すものとする。
ここで、ベクトルとは、各モジュール10に対する値を、対応する要素に持つものである。例えば、造形が順調である場合のベクトルxは[数1]のようになる。造形中に高さずれ等が発生すると、ベクトルxの要素の値が変更され、各モジュール10の作業割合が変化する。尚、[数1]はi層の形成に切削を必須としない場合について示したものであり、当初から切削を予定する場合は造形が順調であっても切削モジュールに関する要素の値が0でない等、他の例もあり得る。
【0032】
【数1】
【0033】
また、組み合わせ決定部33は、品質に要求される基準を表す設定値bを取得する。設定値bは、例えば、表面直下Smm以下にある直径Dmm以上の欠陥を発見する確率であってよい。組み合わせ決定部33は、例えば、積層造形物の欠陥発生確率をモデル化した欠陥発生確率モデルに基づいて、設定値bを取得するとよい。欠陥については全範囲の探傷が難しい場合もあるので、欠陥発生確率モデルで管理した方が品質失敗による損失を抑制し易いからである。尚、欠陥発生確率モデルは、予め用意された確率分布モデルに対して欠陥が観測された造形物の事例に基づいて、分布モデルのパラメータが調整されたものであってよい。また、欠陥発生確率モデル以外に、高さばらつき量、計画高さと実績高さの差分等を用いてもよい。設定値bは、所定の設定値の一例であり、組み合わせ決定部33は、制御部における、積層造形物の欠陥発生確率をモデル化した欠陥発生確率モデルに基づいて、所定の設定値を求める機能の一例である。
【0034】
そして、組み合わせ決定部33は、式(2)に示す品質に対する制約を満たしつつ、式(1)に示すように全体の所要時間を最小化するベクトルxを求める。
【0035】
【数2】
【0036】
以上の問題は一般的な線形計画問題として捉えられるので、シンプレックス法等の公知の計算手法によって解くことができる。これにより、組み合わせ決定部33は、各層における各モジュール10の実施有無を決定する。組み合わせ決定部33は、制御部における、積層造形物の欠陥発生確率が所定の設定値以下となることを満足しつつ工程の実行時間の合計を最小化する組み合わせを決定する機能の一例である。
【0037】
尚、ここでは、式(2)によって品質に対する制約を表したため、ベクトルwを欠陥の増加に対する寄与度合いとしたが、これには限らない。他の式によって品質に対する制約を表した場合、ベクトルwは例えば欠陥の低減に対する寄与度合いとしてもよい。
【0038】
一方、造形中においては、各モジュール10が作業の実行後に積層計画データにログデータを記録する。そこで、組み合わせ決定部33は、ログデータと積層計画データとの比較に基づいて品質へのペナルティ項Σuを計算する。ここで、特に、ログデータが造形結果ログ、切削結果ログ、及び補修結果ログの何れかである場合を考える。その場合、ペナルティ項のuは、ログデータにおける実績の形状データと、積層計画データにおける計画の形状データとの差分に依存した量(スカラー)であってよい。また、ペナルティ項のuは、ログデータにおける実績高さと、積層計画データにおける計画高さとの差分に依存した量(スカラー)であってもよい。実績高さと計画高さとの差分であれば、各モジュール10からのデータに基づき、比較的容易に求めることができる。組み合わせ決定部33は、このペナルティ項を式(2)に付加することにより、式(3)の制約条件を設定する。そして、組み合わせ決定部33は、上記と同様に、式(3)に示す品質に対する制約を満たしつつ、式(1)のように全体の所要時間を最小化するベクトルxを求める。
【0039】
【数3】
【0040】
このように、組み合わせ決定部33は、最適化問題を造形中に解くことで、品質条件をカバーしつつ生産時間を最小化するモジュール10の組み合わせを逐次更新する。積層計画データは、計画データの一例であり、ペナルティ項のuは、実績データの計画データからの乖離度合いの一例である。積層計画データにおける計画の形状データは、積層造形物の計画上の形状を示す計画形状データの一例である。積層計画データにおける計画高さは、積層造形物の積層高さの計画値の一例であり、ペナルティ項のuは、実績値と計画値との差分の一例である。
【0041】
尚、ここでは、組み合わせ決定部33が、全てのモジュール10を対象として、使用するモジュール10の組み合わせを決定したが、これには限らない。造形モジュール10aは必ず使用するものとしてベクトルxの造形モジュール10aに対応する要素の値を「1」とし、他のモジュール10を対象として、使用するモジュール10の組み合わせを決定するようにしてもよい。
【0042】
記憶部34は、組み合わせ決定部33が決定したモジュール10の組み合わせを示す組み合わせ情報を記憶する。
【0043】
使用可否判定部35は、記憶部34に記憶された組み合わせ情報を参照して、各モジュール10を使用するか否かを判定する。
【0044】
送信部36は、使用可否判定部35が使用すると判定したモジュール10に対し、積層計画データを、通信回線81を介して送信する。また、送信部36は、使用可否判定部35が使用すると判定したモジュール10に対し、積層造形物100に対して相対的に移動するように指示する移動指示を、通信回線81を介して送信する。送信部36は、制御部における、複数の工程実行部の組み合わせが積層造形物に対して相対的に移動するように制御する機能の一例である。
【0045】
[統括コントローラの動作]
図6は、本実施の形態における統括コントローラ30の動作例を示すフローチャートである。尚、この動作例では、1層目を積層する際に使用するモジュール10の組み合わせは予め決められており、この組み合わせを示す組み合わせ情報が予め記憶部34に記憶されているものとする。また、この動作例では、造形モジュール10aは必ず使用するように設定されているものとする。
【0046】
統括コントローラ30では、まず、積層計画データ取得部32が、積層計画データを取得する(ステップ301)。
次に、統括コントローラ30は、造形モジュール10aを動作させる(ステップ302)。具体的には、1層目を造形する場合は、送信部36が、ステップ301で取得された積層計画データを造形モジュール10aへ送信する。i層目(i≧2)を造形する場合は、送信部36が、(i-1)層目の処理時に受信された積層計画データを造形モジュール10aへ送信する。そして、受信部31が、造形モジュール10aが造形結果ログを追記した積層計画データを受信する。
【0047】
次いで、使用可否判定部35が、切削モジュール10bを使用するか否かを判定する(ステップ303)。具体的には、1層目を造形する場合は、使用可否判定部35は、予め記憶部34に記憶された組み合わせ情報を参照して、切削モジュール10bを使用するか否かを判定する。i層目(i≧2)を造形する場合は、使用可否判定部35は、(i-1)層目の処理時にステップ310で記憶部34に記憶された組み合わせ情報を参照して、切削モジュール10bを使用するか否かを判定する。
ステップ303で切削モジュール10bを使用すると判定されれば、統括コントローラ30は、切削モジュール10bを動作させる(ステップ304)。具体的には、送信部36が、ステップ302で造形モジュール10aから受信された積層計画データを切削モジュール10bへ送信する。そして、受信部31が、切削モジュール10bが切削結果ログを追記した積層計画データを受信する。
【0048】
次いで、使用可否判定部35が、UT探傷モジュール10cを使用するか否かを判定する(ステップ305)。具体的には、1層目を造形する場合は、使用可否判定部35は、予め記憶部34に記憶された組み合わせ情報を参照して、UT探傷モジュール10cを使用するか否かを判定する。i層目(i≧2)を造形する場合は、使用可否判定部35は、(i-1)層目の処理時にステップ310で記憶部34に記憶された組み合わせ情報を参照して、UT探傷モジュール10cを使用するか否かを判定する。
ステップ305でUT探傷モジュール10cを使用すると判定されれば、統括コントローラ30は、UT探傷モジュール10cを動作させる(ステップ306)。具体的には、切削モジュール10bが動作していれば、送信部36が、ステップ304で切削モジュール10bから受信された積層計画データをUT探傷モジュール10cへ送信する。切削モジュール10bが動作していなければ、送信部36が、ステップ302で造形モジュール10aから受信された積層計画データをUT探傷モジュール10cへ送信する。そして、受信部31が、UT探傷モジュール10cが探傷結果ログを追記した積層計画データを受信する。
【0049】
次いで、使用可否判定部35が、欠陥補修モジュール10dを使用するか否かを判定する(ステップ307)。具体的には、1層目を造形する場合は、使用可否判定部35は、予め記憶部34に記憶された組み合わせ情報を参照して、欠陥補修モジュール10dを使用するか否かを判定する。i層目(i≧2)を造形する場合は、使用可否判定部35は、(i-1)層目の処理時にステップ310で記憶部34に記憶された組み合わせ情報を参照して、欠陥補修モジュール10dを使用するか否かを判定する。
ステップ307で欠陥補修モジュール10dを使用すると判定されれば、統括コントローラ30は、欠陥補修モジュール10dを動作させる(ステップ308)具体的には、UT探傷モジュール10cが動作していれば、送信部36が、ステップ306でUT探傷モジュール10cから受信された積層計画データを欠陥補修モジュール10dへ送信する。UT探傷モジュール10cが動作せずに切削モジュール10bが動作していれば、送信部36が、ステップ304で切削モジュール10bから受信された積層計画データを欠陥補修モジュール10dへ送信する。UT探傷モジュール10c及び切削モジュール10bの何れも動作していなければ、送信部36が、ステップ302で造形モジュール10aから受信された積層計画データをUT探傷モジュール10cへ送信する。そして、受信部31が、欠陥補修モジュール10dが補修結果ログを追記した積層計画データを受信する。
【0050】
このように、積層造形システム1は、統括コントローラ30を介して各モジュール10間で統一された積層計画データを送受信することにより、積層造形物100を製作する。例えば、欠陥補修モジュール10dでは、UT探傷モジュール10cで記録された欠陥の寸法及び位置を示す丈情報を読み込むことで、補修が必要な位置を割り出す。
【0051】
その後、統括コントローラ30は、積層する層が造形を終了する層に到達したか否かを判定する(ステップ309)。即ち、統括コントローラ30は、積層する層の番号iが層の番号の最大値に到達したか否かを判定する。
ステップ309で積層する層が造形を終了する層に到達していないと判定されれば、組み合わせ決定部33が、使用するモジュール10の組み合わせを決定する組み合わせ決定処理を実行する(ステップ310)。具体的には、組み合わせ決定処理は、造形モジュール10a、切削モジュール10b、UT探傷モジュール10c、及び欠陥補修モジュール10dから、使用するモジュール10の組み合わせを決定する処理である。組み合わせ決定処理で決定されたモジュール10の組み合わせを示す組み合わせ情報は、記憶部34に記憶される。そして、統括コントローラ30は、処理をステップ302へ戻す。
ステップ309で積層する層が造形を終了する層に到達したと判定されれば、統括コントローラ30は、処理を終了する。
【0052】
図7は、本実施の形態における組み合わせ決定処理の内容を示すフローチャートである。
【0053】
まず、組み合わせ決定部33は、i番目の層に対する作業の所要時間を表すベクトルtiを取得する(ステップ351)。また、組み合わせ決定部33は、i番目の層に対する作業を実施する度合いを表すベクトルxを取得する(ステップ352)。更に、組み合わせ決定部33は、i番目の層に対する作業が生み出す品質効果の重みを表すベクトルwを取得する(ステップ353)。
次に、組み合わせ決定部33は、品質に要求される基準を表す設定値bを取得する(ステップ354)。
【0054】
次いで、組み合わせ決定部33は、受信部31が受信した積層計画データに追記されたログデータを取得する(ステップ355)。ログデータは、少なくとも造形結果ログを含む。切削モジュール10bが動作していれば、ログデータは、切削結果ログを更に含む。UT探傷モジュール10cが動作していれば、ログデータは、探傷結果ログを更に含む。欠陥補修モジュール10dが動作していれば、ログデータは、補修結果ログを更に含む。
これにより、組み合わせ決定部33は、品質に対するペナルティ項のuを算出する(ステップ356)。具体的には、組み合わせ決定部33は、積層計画データとログデータとの比較に基づいて、ペナルティ項のuを算出する。特に、ログデータが造形結果ログ、切削結果ログ、及び補修結果ログの何れかであれば、組み合わせ決定部33は、積層計画データにおける計画の形状データと、ログデータにおける実績の形状データとの比較に基づいて、ペナルティ項のuを算出する。
【0055】
その後、組み合わせ決定部33は、式(3)に示す品質に対する制約を満たしつつ、式(1)に示すように全体の所要時間を最小化するベクトルxを算出する(ステップ357)。
【0056】
【数4】
【0057】
[変形例]
上記では、1層のビードを形成する毎に、使用するモジュール10の組み合わせを決定するようにしたが、これには限らない。例えば、1パスのビードを形成する毎に、使用するモジュール10の組み合わせを決定するようにしてもよい。或いは、1層のビード又は1パスのビードを形成する途中で、1つのモジュール10を動作させる都度、使用するモジュール10の組み合わせを決定するようにしてもよい。
【0058】
また、上記では、固定位置に配置された各モジュール10がライン上を搬送される積層造形物100に対して作業を行うようにしたが、これには限らない。固定位置に配置された積層造形物100に対して移動可能な各モジュール10が作業を行うようにしてもよい。以下、この場合の積層造形システムを、積層造形システム2として説明する。
【0059】
図8は、本実施の形態における積層造形システム2の全体構成例を示す図である。尚、図では、同種の構成要素であっても添え字を付して区別しているが、説明においてこれらを区別する必要がない場合は添え字を付さないものとする。
【0060】
図示するように、本実施の形態における積層造形システム2は、統括コントローラ30と、工場システム50とが、通信回線82を介して接続されることにより構成されている。
工場システム50では、積層造形物100~100がそれぞれ作業台150~150に配置されている。そして、統括コントローラ30が決定した組み合わせに含まれる各モジュール10が目的の積層造形物100が配置された作業台150の横まで移動するようになっている。工場システム50は、複数の工程実行部の組み合わせに含まれる各工程実行部を、各工程実行部が工程を実行する対象の積層造形物まで移動させる移動システムの一例である。
【0061】
具体的には、工場システム50は、レール51~51と、転轍機52~52とを含む。
レール51は、モジュール10が移動する軌道を画定するものである。例えば、モジュール10として、ユニットを取り付けた架台を用意し、その架台がレール51上を移動できるようにすればよい。ここで、モジュール10が造形モジュール10aであれば、ユニットは、例えば、熱源及びワイヤ送給機を含む装置であればよく、モジュール10が切削モジュール10bであれば、ユニットは、例えば、切削工具を稼働する装置であればよい。レール51は、レール装置の一例である。
また、統括コントローラ30は、積層造形物100が配置された作業台150の位置と、積層造形物100に対して行うべき作業の内容とに応じて、最適なモジュール10及び積層造形物100までの経路を選択し、転轍機52にレール51の切替指示を出力する。すると、転轍機53が、この切替指示に応じて、レール51に沿った進行方向を切り替える。例えば、モジュール10及びモジュール10が、作業台150に配置された積層造形物100に対して作業を行う必要が生じたとする。この場合、転轍機52が、モジュール10がレール51の方向へ向かうように進行方向を切り替え、モジュール10が作業台150の紙面上側から作業を行うようにする。また、転轍機52が、モジュール10がレール51の方向へ向かうように進行方向を切り替え、モジュール10が作業台150の紙面下側から作業を行うようにする。転轍機52は、各工程実行部を、各工程実行部が工程を実行する対象の積層造形物の方向へ移動させるように、レール装置を切り替える切替装置の一例である。
【0062】
図8のようにモジュール10をレール51に沿って移動させることにより、モジュール10の数が限られていたとしても、組み合わせるモジュール10の数や対応できる積層造形物100の数を増やすことができる。
【0063】
[本実施の形態の効果]
本実施の形態では、積層造形物100の造形中に、ログデータの積層計画データからの乖離度合いに応じて、実行すべきモジュール10の組み合わせを決定するようにした。これにより、積層造形物100の造形中に、ログデータの積層計画データからの乖離が発生した場合に、実行すべきモジュール10の組み合わせを調整することが容易になった。
【符号の説明】
【0064】
1,2…積層造形システム、10…モジュール、20…造形ロボット、30…統括コントローラ、31…受信部、32…積層計画データ取得部、33…組み合わせ決定部、34…記憶部、35…使用可否判定部、36…送信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8