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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029811
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】変位測定装置及び変位測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/00 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
G01B7/00 103M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132202
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】本堂 貴敏
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA04
2F063BA30
2F063BB01
2F063DA01
2F063DA05
2F063GA52
(57)【要約】
【課題】多軸変位を適切に測定可能な変位測定装置等を提供する。
【解決手段】第1の物体と第2の物体との相対変位を測定する変位測定装置を、第1の物体に固定された複数の磁性体MG1~MG2と、第2の物体に固定された複数の磁気検出部HD1~HD8と、第1の物体と第2の物体との相対変位に応じた複数の磁気検出部の出力変化を表す関数行列の逆行列を用いて、複数の磁気検出部の出力から第1の物体と第2の物体との相対変位を演算する演算部とを備える構成とする。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の物体と第2の物体との相対変位を測定する変位測定装置であって、
前記第1の物体に固定された複数の磁性体と、
前記第2の物体に固定された複数の磁気検出部と、
前記第1の物体と前記第2の物体との相対変位に応じた複数の前記磁気検出部の出力変化を表す関数からなるヤコビ行列の擬似逆行列を用いて、複数の前記磁気検出部の出力から前記第1の物体と前記第2の物体との相対変位を演算する演算部と
を備えることを特徴とする変位測定装置。
【請求項2】
前記変位測定装置は、少なくとも複数軸に沿った並進変位、及び、複数軸回りの回転変位を測定する機能を有し、
前記磁性体及び前記磁気検出部は、前記ヤコビ行列のランクが測定対象とする自由度数と同等以上となるよう配置されること
を特徴とする請求項1に記載の変位測定装置。
【請求項3】
前記磁気検出部の個数を、前記自由度よりも多くしたこと
を特徴とする請求項2に記載の変位測定装置。
【請求項4】
前記演算部は、複数の前記磁気検出部の出力から前記第1の物体と前記第2の物体との相対変位を演算する際に、非線形残差最小差問題として求解すること
を特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の変位測定装置。
【請求項5】
第1の物体と第2の物体との相対変位を測定する変位測定装置であって、
前記第1の物体に固定され着磁方向が平行となるよう配置された複数の磁性体と、
前記第2の物体に固定され検出方向が平行となるよう配置された複数の磁気検出部とを備え、
前記複数の磁性体は、
着磁方向が平行となるよう配列された第1の磁性体及び第2の磁性体と、
前記第1及び前記第2の磁性体に対してそれぞれ着磁方向に沿った方向に離間して配列された第3の磁性体及び第4の磁性体とを有し、
前記第1の磁性体及び前記第4の磁性体に対して、前記第2の磁性体と前記第3の磁性体は、着磁方向が逆となるように配置され、
前記磁気検出部は、前記第1の物体と前記第2の物体とが、前記着磁方向と前記検出方向とが平行となる所定の位置関係にあるときに、
前記第1の磁性体と前記第2の磁性体との間に配置される第1の磁気検出部と、
前記第3の磁性体と前記第4の磁性体との間に配置される第2の磁気検出部と、
前記第2の磁性体と前記第4の磁性体との間に配置される第3の磁気検出部と、
前記第1の磁性体と前記第3の磁性体との間に配置される第4の磁気検出部と、
前記第1の磁性体乃至前記第4の磁性体に対して、前記第1乃至前記第4の磁性体のうち少なくとも3つの磁性体が含まれる平面から離間する方向にオフセットしてそれぞれ配置される第5乃至第8の磁気検出部とを有すること
を特徴とする変位測定装置。
【請求項6】
第1の物体と第2の物体との相対変位を測定する変位測定装置であって、
前記第1の物体に固定され着磁方向が平行となるよう配置された複数の磁性体と、
前記第2の物体に固定され検出方向が平行となるよう配置された複数の磁気検出部とを備え、
前記複数の磁性体は、
前記着磁方向が逆となるように平行に配置された第1の磁性体及び第2の磁性体を有し、
前記複数の磁気検出部は、前記第1の物体と前記第2の物体とが、前記着磁方向と前記検出方向とが平行となる所定の位置関係にあるときに、
前記第1の磁性体に対して前記着磁方向に沿った一方側に配置された第1の磁気検出部と、
前記第2の磁性体に対して前記着磁方向に沿った一方側に配置された第2の磁気検出部と、
前記第1の磁性体に対して前記着磁方向に沿った他方側に配置された第3の磁気検出部と、
前記第2の磁性体に対して前記着磁方向に沿った他方側に配置された第4の磁気検出部と、
前記第1の磁性体と前記第2の磁性体の間に配置された第5の磁気検出部と
前記第1の磁性体及び前記第2の磁性体に対して、前記第1の磁性体の着磁方向と前記第2の着磁方向を含む平面から離間する方向にオフセットしてそれぞれ配置された第6の磁気検出部及び第7の磁気検出部とを有すること
を特徴とする変位測定装置。
【請求項7】
第1の物体と第2の物体との相対変位を測定する変位測定装置であって、
前記第1の物体に固定され着磁方向が平行となるよう配置された複数の磁性体と、
前記第2の物体に固定され検出方向が平行となるよう配置された複数の磁気検出部とを備え、
前記複数の磁性体は、前記着磁方向と直交する平面に沿って配列された第1乃至第5の磁性体を有し、
前記第2の磁性体は、前記第1の磁性体に対して、前記平面内における第1の方向に離間して配置され、
前記第3の磁性体は、前記第2の磁性体に対して、前記平面内における前記第1の方向と直交する第2の方向に離間して配置され、
前記第4の磁性体は、前記第1の磁性体に対して、前記第2の方向に離間して配置され、
前記第5の磁性体は、前記第1の磁性体と前記第3の磁性体との中間に配置され、
前記複数の磁気検出部は、第1乃至第6の磁気検出部を有し、
前記第1乃至第3の磁気検出部は、前記第1乃至第5の磁性体に対して前記着磁方向における位置が第1の方向に離間して配置され、
前記第1の磁気検出部は、前記着磁方向から見たときに前記第1の磁性体と前記第4の磁性体の中間に配置され、
前記第2の磁気検出部は、前記着磁方向から見たときに前記第1の磁性体と前記第2の磁性体との中間に配置され、
前記第3の磁気検出部は、前記着磁方向から見たときに前記第2の磁性体と前記第3の磁性体との中間に配置され、
前記第5乃至第6の磁気検出部は、前記第1乃至第5の磁性体に対して前記着磁方向における位置が前記第1の方向の反対側に離間して配置され、
前記第5の磁気検出部は、前記着磁方向から見たときに前記第2の磁性体と前記第3の磁性体との中間に配置され、
前記第6の磁気検出部は、前記着磁方向から見たときに前記第3の磁性体と前記第4の磁性体との中間に配置され、
前記第4の磁気検出部は、前記着磁方向から見たときに前記第5の磁性体と重なって配置されるとともに、前記第5の磁性体に対して、前記着磁方向における位置が前記第1の方向とは反対側に、前記第5乃至第6の磁気検出部に対してさらに大きく離間して配置されること
を特徴とする変位測定装置。
【請求項8】
非磁性体によって形成され、複数の前記磁性体を保持した状態で前記第1の物体に固定される磁性体保持部と、
非磁性体によって形成され、複数の前記磁気検出部を保持した状態で前記第2の物体に固定される磁気検出部保持部との少なくとも一方を有すること
を特徴とする請求項1、請求項5、請求項6、請求項7のいずれか1項に記載の変位測定装置。
【請求項9】
前記磁性体保持部と前記磁気検出部保持部との少なくとも一方が非金属材料によって構成されること
を特徴とする請求項8に記載の変位測定装置。
【請求項10】
第1の物体と第2の物体との相対変位を測定する変位測定方法であって、
前記第1の物体に複数の磁性体を固定し、
前記第2の物体に複数の磁気検出部を固定し、
前記第1の物体と前記第2の物体との相対変位に応じた複数の前記磁気検出部の出力変化を表す関数からなるヤコビ行列の擬似逆行列を用いて、複数の前記磁気検出部の出力から前記第1の物体と前記第2の物体との相対変位を演算すること
を特徴とする変位測定方法。
【請求項11】
前記変位測定方法は、少なくとも複数軸に沿った並進変位、及び、複数軸回りの回転変位を測定するものであり、
前記磁性体及び前記磁気検出部は、前記ヤコビ行列のランクが測定対象とする自由度数と同等以上となるよう配置されること
を特徴とする請求項10に記載の変位測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば弾性体の多軸変形などの測定に利用可能な変位測定装置及び変位測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の鉄道車両の台車などに多用される緩衝用のゴムブッシュ(弾性体ブッシュ)は、経時劣化が発生する部材であるため、劣化状態に応じて交換することが必要である。
ゴムブッシュは、例えば台車からの前後力(駆動力等)を車体へ伝達する牽引リンクの端部や、走行安定性を向上させるためのヨーダンパの端部など、車両の機能を維持する上で重要な部位に装備されているため、その機能を著しく損なう前に確実に交換する必要がある。
しかし、ゴムブッシュの交換には大きなコスト、工数を要するため、交換周期の適正化が課題となっている。
【0003】
ゴムブッシュの劣化進展は、例えばオゾンや紫外線等の環境的な要因と、実使用時(車両走行時)の外力の作用状況によって特徴付けられることが明らかとなっている。
従来、ゴムブッシュを含む台車部品全体の前後変形及びねじり変形を考慮した劣化進展試験を通じて、ゴムブッシュの劣化進展傾向を評価することが提案されている。
一方、実走行中のゴムブッシュには、左右変形やこじり変形など、複数の方向の並進変位、及び、回転変位が同時に作用していると考えられ、理論的には並進3自由度、回転3自由度を含む6自由度の変形自由度を持っている。
しかし、実走行中のゴムブッシュの6自由度の変形を評価した事例はなく、また、6自由度の変形を測定可能なセンサも現時点では知られていない。
【0004】
ここで、一対の物体の相対変位等の測定に関する従来技術として、例えば、特許文献1には、複数のホール素子が相互間に所定の角度をあけてマグネットロータの周囲に配置される磁気式回転位置検出器が記載されている。
特許文献2には、手書き文字をコンピュータに入力するウェアラブルな入力装置において、指先に装着される磁石と、手首に装着される一対の磁気センサと、各磁気センサの出力信号の差分を出力する出力手段とを備えることが記載されている。
特許文献3には、カメラに設けられる光学式ブレ補正装置における可動光学系の位置を、位置検出用マグネット及びホール素子を用いて検出することが記載されている。
特許文献4には、磁石及びホール素子を用いて自動二輪車の転倒検知等に用いられる傾斜検知センサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平 7-260511号公報
【特許文献2】特開2004- 54390号公報
【特許文献3】特開2019-120747号公報
【特許文献4】特開2020-153855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ゴムブッシュ単体の6自由度変形を測定することができれば、外力を台車部品単位ではなくゴムブッシュ単体で評価できるようになるため、ゴムブッシュごとの外力条件の違いを考慮した交換周期を設定できる可能性がある。
特に、こじり変形については、例えば台車部品の前側のゴムブッシュか後側のゴムブッシュかによって、その変形量が異なる可能性があり、こじり変位の小さいゴムブッシュについては、交換周期をさらに延伸できる余地が残されている。
しかし、上述した各文献において、ゴムブッシュ等の弾性体により連結された一対の物体等の多軸変位を適切に測定可能な技術は提案されていない。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、多軸変位を適切に測定可能な変位測定装置及び変位測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様に係る変位測定装置は、第1の物体と第2の物体との相対変位を測定する変位測定装置であって、前記第1の物体に固定された複数の磁性体と、前記第2の物体に固定された複数の磁気検出部と、前記第1の物体と前記第2の物体との相対変位に応じた複数の前記磁気検出部の出力変化を表す関数からなるヤコビ行列の擬似逆行列を用いて、複数の前記磁気検出部の出力から前記第1の物体と前記第2の物体との相対変位を演算する演算部とを備えることを特徴とする。
これによれば、第1の物体と第2の物体との相対変位に応じた複数の磁気検出部の出力変化を表す関数行列の逆行列を用いて、複数の磁気検出部の出力から第1の物体と第2の物体との相対変位を演算することにより、第1の物体に複数の磁性体を設け、第2の物体に複数の磁気検出部を設ける簡単なセンサ構成により、例えば直交3軸の並進方向、及び、直交3軸のうち2軸あるいは3軸等の多軸変位を適切に検出することができる。
ここで、ヤコビ行列の擬似逆行列を用いて相対変位を演算するとは、後述するように複数の磁気検出部の出力から第1の物体と第2の物体との相対変位を演算する際に、非線形残差最小差問題として求解する構成も含むものとする。
【0008】
本発明において、前記変位測定装置は、少なくとも複数軸に沿った並進変位、及び、複数軸回りの回転変位を測定する機能を有し、前記磁性体及び前記磁気検出部は、前記ヤコビ行列のランクが測定対象とする自由度数と同等以上となるよう配置される構成とすることができる。
これによれば、所望の測定自由度の変位測定を確実に行うことができる。
【0009】
本発明において、前記磁気検出部の個数を、前記自由度よりも多くした構成とすることができる。
これによれば、磁気検出部の個数を、必要とされる自由度を確保するための最低限の個数よりも多く設定することにより、装置の冗長性を高めることができる。
【0010】
本発明において、前記演算部は、複数の前記磁気検出部の出力から前記第1の物体と前記第2の物体との相対変位を演算する際に、非線形残差最小差問題として求解する構成とすることができる。
これによれば、磁性体と磁気検出部とが基準配置から大きく変位した場合であっても、誤差を抑制して測定精度を確保することができる。
【0011】
上述した課題を解決するため、本発明の他の一態様に係る変位測定装置は、第1の物体と第2の物体との相対変位を測定する変位測定装置であって、前記第1の物体に固定され着磁方向が平行となるよう配置された複数の磁性体と、前記第2の物体に固定され検出方向が平行となるよう配置された複数の磁気検出部とを備え、前記複数の磁性体は、着磁方向が平行となるよう配列された第1の磁性体及び第2の磁性体と、前記第1及び前記第2の磁性体に対してそれぞれ磁気双極子モーメントに沿った方向に離間して配列された第3の磁性体及び第4の磁性体とを有し、前記第1の磁性体及び前記第4の磁性体に対して、前記第2の磁性体と前記第3の磁性体は、着磁方向が逆となるように配置され、前記磁気検出部は、前記第1の物体と前記第2の物体とが、前記着磁方向と前記検出方向とが平行となる所定の位置関係にあるときに、前記第1の磁性体と前記第2の磁性体との間に配置される第1の磁気検出部と、前記第3の磁性体と前記第4の磁性体との間に配置される第2の磁気検出部と、前記第2の磁性体と前記第4の磁性体との間に配置される第3の磁気検出部と、前記第1の磁性体と前記第3の磁性体との間に配置される第4の磁気検出部と、前記第1の磁性体乃至前記第4の磁性体に対して、前記第1乃至前記第4の磁性体のうち少なくとも3つの磁性体が含まれる平面から離間する方向にオフセットしてそれぞれ配置される第5乃至第8の磁気検出部とを有することを特徴とする。
これによれば、直交3軸方向の並進変位、及び、直交3軸回りの回転変位を含む6軸の変位を適切に測定することができる。
【0012】
上述した課題を解決するため、本発明の他の一態様に係る変位測定装置は、第1の物体と第2の物体との相対変位を測定する変位測定装置であって、前記第1の物体に固定され着磁方向が平行となるよう配置された複数の磁性体と、前記第2の物体に固定され検出方向が平行となるよう配置された複数の磁気検出部とを備え、前記複数の磁性体は、前記着磁方向が逆となるように平行に配置された第1の磁性体及び第2の磁性体を有し、前記複数の磁気検出部は、前記第1の物体と前記第2の物体とが、前記着磁方向と前記検出方向とが平行となる所定の位置関係にあるときに、前記第1の磁性体に対して前記着磁方向に沿った一方側に配置された第1の磁気検出部と、前記第2の磁性体に対して前記着磁方向に沿った一方側に配置された第2の磁気検出部と、前記第1の磁性体に対して前記着磁方向に沿った他方側に配置された第3の磁気検出部と、前記第2の磁性体に対して前記着磁方向に沿った他方側に配置された第4の磁気検出部と、前記第1の磁性体と前記第2の磁性体の間に配置された第5の磁気検出部と前記第1の磁性体及び前記第2の磁性体に対して、前記第1の磁性体の着磁方向と前記第2の着磁方向を含む平面から離間する方向にオフセットしてそれぞれ配置された第6の磁気検出部及び第7の磁気検出部とを有することを特徴とする。
これによれば、直交3軸方向の並進変位、及び、直交2軸回りの回転変位を含む5軸の変位を、簡単かつコンパクトな構成により適切に推定することができる。
【0013】
上述した課題を解決するため、本発明の他の一態様に係る変位測定装置は、第1の物体と第2の物体との相対変位を測定する変位測定装置であって、前記第1の物体に固定され着磁方向が平行となるよう配置された複数の磁性体と、前記第2の物体に固定され検出方向が平行となるよう配置された複数の磁気検出部とを備え、前記複数の磁性体は、前記着磁方向と直交する平面に沿って配列された第1乃至第5の磁性体を有し、前記第2の磁性体は、前記第1の磁性体に対して、前記平面内における第1の方向に離間して配置され、前記第3の磁性体は、前記第2の磁性体に対して、前記平面内における前記第1の方向と直交する第2の方向に離間して配置され、前記第4の磁性体は、前記第1の磁性体に対して、前記第2の方向に離間して配置され、前記第5の磁性体は、前記第1の磁性体と前記第3の磁性体との中間に配置され、前記複数の磁気検出部は、第1乃至第6の磁気検出部を有し、前記第1乃至第3の磁気検出部は、前記第1乃至第5の磁性体に対して前記着磁方向における位置が第1の方向に離間して配置され、前記第1の磁気検出部は、前記着磁方向から見たときに前記第1の磁性体と前記第4の磁性体の中間に配置され、前記第2の磁気検出部は、前記着磁方向から見たときに前記第1の磁性体と前記第2の磁性体との中間に配置され、前記第3の磁気検出部は、前記着磁方向から見たときに前記第2の磁性体と前記第3の磁性体との中間に配置され、前記第5乃至第6の磁気検出部は、前記第1乃至第5の磁性体に対して前記着磁方向における位置が前記第1の方向の反対側に離間して配置され、前記第5の磁気検出部は、前記着磁方向から見たときに前記第2の磁性体と前記第3の磁性体との中間に配置され、前記第6の磁気検出部は、前記着磁方向から見たときに前記第3の磁性体と前記第4の磁性体との中間に配置され、前記第4の磁気検出部は、前記着磁方向から見たときに前記第5の磁性体と重なって配置されるとともに、前記第5の磁性体に対して、前記着磁方向における位置が前記第1の方向とは反対側に、前記第5乃至第6の磁気検出部に対してさらに大きく離間して配置されることを特徴とする。
これによれば、直交3軸方向の並進変位、及び、直交3軸回りの回転変位を含む6軸の変位を、簡単かつコンパクトな構成により適切に推定することができる。
なお、本項及び前2項記載の発明において、冗長性を持たせかつ実効的な感度を向上するため、さらに追加の磁性体、磁気検出部を備える構成としてもよい。
【0014】
上記各発明において、非磁性体によって形成され、複数の前記磁性体を保持した状態で前記第1の物体に固定される磁性体保持部と、非磁性体によって形成され、複数の前記磁気検出部を保持した状態で前記第2の物体に固定される磁気検出部保持部との少なくとも一方を有する構成とすることができる。
これによれば、第1の物体への複数の磁性体の取り付け、第2の物体への複数の磁気検出部の取り付けを一括して行うことが可能であり、変位測定装置の測定対象物への実装を容易化することができる。
上記発明において、前記磁性体保持部と前記磁気検出部保持部との少なくとも一方が非金属材料によって構成される構成とすることができる。
これによれば、測定対象となる変位が比較的高速(動的)である場合における渦電流の影響を抑制することができる。
【0015】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様に係る変位測定方法は、第1の物体と第2の物体との相対変位を測定する変位測定方法であって、前記第1の物体に複数の磁性体を固定し、前記第2の物体に複数の磁気検出部を固定し、前記第1の物体と前記第2の物体との相対変位に応じた複数の前記磁気検出部の出力変化を表す関数からなるヤコビ行列の擬似逆行列を用いて、複数の前記磁気検出部の出力から前記第1の物体と前記第2の物体との相対変位を演算することを特徴とする。
本発明において、前記変位測定方法は、少なくとも複数軸に沿った並進変位、及び、複数軸回りの回転変位を測定するものであり、前記磁性体及び前記磁気検出部は、前記ヤコビ行列のランクが測定対象とする自由度数と同等以上となるよう配置される構成とすることができる。
これらの各発明においても、上述した変位測定方法の発明の効果と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、軸変位を適切に測定可能な変位測定装置及び変位測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】永久磁石の周囲に形成される静磁場を模式的に示す図である。
図2】式4中の各変数の関係を模式的に示す図である。
図3】ホール素子と永久磁石の相対位置とホールセンサ出力の関係を調査した際の位置関係を示す図である。
図4】ホール素子と永久磁石の相対位置とホールセンサ出力の関係の検証実験の結果を示す図であって、永久磁石を単一の磁気双極子モデルとして取り扱った図である。
図5】ホール素子と永久磁石の相対位置とホールセンサ出力の関係の検証実験の結果を示す図であって、永久磁石を、径方向に2分割、周方向に4分割された分散双極子モデルとして取り扱った図である。
図6】ホール素子と永久磁石の相対位置とホールセンサ出力の関係の検証実験の結果を示す図であって、永久磁石を、径方向に4分割、周方向に8分割された分散双極子モデルとして取り扱った図である。
図7】ホール素子と永久磁石の相対位置とホールセンサ出力の関係の検証実験の結果を示す図であって、永久磁石を、径方向に8分割、周方向に16分割された分散双極子モデルとして取り扱った図である。
図8】ホール素子と永久磁石の相対位置とホールセンサ出力の関係の検証実験の結果を示す図であって、永久磁石を、径方向に16分割、周方向に32分割された分散双極子モデルとして取り扱った図である。
図9】ホール素子と永久磁石の相対位置とホールセンサ出力の関係の検証実験の結果を示す図であって、単一の双極子モデルにおいて表面磁束密度の設定値をカタログ値の2.5倍に設定した結果を示す図である。
図10】本発発明を適用した多軸変位測定装置の実施形態によるセンサの実施例1における永久磁石及びホール素子の配置を示す斜視図である。
図11】実施例1の永久磁石及びホール素子の配置をz軸方向から見た図である。
図12】実施例1の永久磁石及びホール素子の配置をy軸方向から見た図である。
図13】実施例1において各変数を独立に変化させた際の各ホール素子の出力変化の計算結果を示す図である。
図14】本発発明を適用した多軸変位測定装置の実施形態によるセンサの実施例2における永久磁石及びホール素子の配置を示す斜視図である。
図15】実施例2の永久磁石及びホール素子の配置をz軸方向から見た図である。
図16】実施例3の永久磁石及びホール素子の配置をy軸方向から見た図である。
図17】実施例2において各変数を独立に変化させた際の、各ホール素子の出力変化の計算結果を示す図である。
図18】実施例2のセンサにおける磁石ベースの外観斜視図である。
図19】実施例2のセンサにおける磁石ベースの分解斜視図である。
図20】実施例2のホール素子ベースの外観斜視図である。
図21】実施例2のセンサの磁石ベースとホール素子ベースとを組み合わせた状態を示す斜視図であって、センサが中立位置にある状態を示している。
図22】実施例2の基準配置において、並進変位のみを各軸独立に与えた場合の検証計算結果を示す図である。
図23】実施例2の基準配置において、回転変位のみを各軸独立に与えた場合の検証計算結果を示す図である。
図24】センサの実施例3における永久磁石及びホール素子の配置を示す斜視図である。
図25】実施例3の永久磁石及びホール素子の配置をz軸方向から見た図である。
図26】実施例3の永久磁石及びホール素子の配置をx軸方向から見た図である。
図27】実施例3において各変数を独立に変化させた際の、各ホール素子の出力変化の計算結果を示す図である。
図28】実施例3のセンサにおける磁石ベースの外観斜視図である。
図29】実施例3のセンサにおける磁石ベースの分解斜視図である。
図30】実施例3のセンサにおけるホール素子ベースの外観斜視図である。
図31】実施例3のセンサにおけるホール素子ベースの分解斜視図である。
図32】実施例4において各変数を独立に変化させた際の、各ホール素子の出力変化の計算結果を示す図である。
図33】実施例5において各変数を独立に変化させた際の、各ホール素子の出力変化の計算結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した変位測定装置及び変位測定方法の実施形態について説明する。
実施形態の変位測定装置及び変位測定方法は、磁性体(典型的には永久磁石)の静磁場を活用した例えば6軸の多軸変位センサを用いるものである。
以下、このような多軸変位センサの設計モデルについて説明する。
【0019】
図1は、永久磁石の周囲に形成される静磁場を模式的に示す図である。
静磁場(磁束密度)は、一般に永久磁石を原点とする位置に関するベクトル値関数である。言い換えれば、磁束密度の大きさと方向は、永久磁石との位置関係によって決定づけられる。
磁束密度の大きさは、例えばホール素子を有する磁気センサ(ホールセンサ)等の磁気検出部を用いて測定することができる。
このことは、磁石とホール素子の配置を所定の位置関係で配置することにより、ホール素子と磁石の相対位置と姿勢を測定できる可能性があることを示している。
【0020】
本明細書、特許請求の範囲において、相対位置(直交3軸方向(3自由度)への並進変位)と、姿勢(直交3軸回り(3自由度)の回転変位)とを、まとめて「6軸変位」と称する。
鉄道車両用のゴムブッシュが実走行状態で使用される際、一般的には、並進3自由度、回転3自由度の計6自由度の変形自由度を持つ。
この変形自由度を、ヨーダンパ等の台車部品と台車あるいは車体(以下、台車等と称する)の相対位置、姿勢として測定することを考えると、例えば台車部品側に永久磁石を固定し、台車等側にホール素子をそれぞれ固定することで、台車部品と台車等との相対変位を測定することができる。
【0021】
ただし、6軸全ての相対変位を測定するためには、少なくとも6個のホール素子を、各自由度を分離できるように配置する必要がある。
すなわち、ホール素子による6軸変位センサの設計は、基本的には測定すべき自由度を測定するためのホール素子と永久磁石との配置の決定が重要である。
また、その決定は、ホール素子と永久磁石による変位計測の数学モデルに基づいて行う。
以下、このような数学モデルの構築について説明する。
【0022】
一般的に、磁性体は、N極、あるいはS極を単体で取り出すことはできず、N極とS極は必ず対となっている。
このN極とS極の対を磁気双極子と呼び、数学的には、磁気の強さと磁場の方向の情報を持つ三次元ベクトル
【数1】
(磁気双極子モーメント)として表現できる。
一般的には、磁気双極子モーメントの方向は、磁石の着磁方向(N極とS極とを結んだ直線の方向)と一致する。
磁気双極子から十分離れた場所の磁束密度Bは、磁気双極子の中心からの相対距離
【数2】
の関数として、式1のように表せる。
【数3】
ただし、
【数4】
であり、μは真空の透磁率である。
【0023】
式中の磁気双極子モーメントmは、双極子の方向を表す単位ベクトル(すなわちS極からN極の方向を指す単位ベクトルを、d∈Rとして、式3のように計算する。

m=Φd (式3)

ただし、Φは定数であり、永久磁石の特性値である表面磁束密度を基に決定する。
【0024】
複数の磁気双極子からなるものとモデル化された永久磁石(磁石モデル)がつくる静磁場Bmagは、位置rの関数として以下の式4のように表せる。
【数5】
ただし、jは磁気双極子の識別番号、Ndpは磁石モデルを構成する磁気双極子の総数である。
また、rは、着目する位置rから磁気双極子jまでの距離であり、uは、磁気双極子の位置から着目する位置rへ向かう方向の単位ベクトルである。
は、磁気双極子jの双極子モーメントであり、その方向ベクトルをdとして、ここでは、以下の式5のように定義する。

=Φmag (式5)

ただし、Φmagは、式3の定数Φに相当する定数であり、以下の手順により計算する。
・Φmagの暫定値
【数6】
を用いて、分散双極子モデルを構築する。
・磁石の全長をLとして、r=(L/2)dの位置における磁束密度ベクトルB(rs)を計算する。これは、磁石の磁荷方向断面の中心における磁束密度に相当する。
・磁石の特性値としての表面磁束密度Bと、計算した磁束密度ベクトルのノルムの比、α=B/||B(r)||を計算する。
【数7】
とする。
【0025】
図2は、式4中の各変数の関係を模式的に示す図である。
図2中のベクトルrを用いれば、r及びuは、それぞれ、以下の式6、式7のように定義できる。
【数8】
実際にセンサを構成する上では、単一の永久磁石はなく、複数の永久磁石を配置することが想定される。
この場合、センサ系を構成する全ての磁気双極子が作る磁場を足し合わせることで、静磁場を計算することができる。
以降、センサ系全体の静磁場をBtotal(r)と標記する。
【0026】
ホール素子が、上述したBtotal(r)の中の位置rに配置されている時、その位置における磁束密度は、Btotal(r)と表される。
磁束密度は、大きさと方向を持つベクトル量であるが、単一のホール素子では、ベクトル3成分全てを測定することはできず、ホール素子の感度方向の成分のみが測定される。
すなわち、ホール素子の配置方向を表す単位ベクトルをdとすると、計測値Bは、スカラー量として、以下の式8のように表現できる。
【数9】
【0027】
ホール素子も、永久磁石と同じく、複数配置することを前提としている。
複数のホール素子を、識別子kによって区別する。
すなわち、ホール素子kについて、式9の関係が成立するものとする。
【数10】
【0028】
永久磁石とホール素子を6軸変位計測へ応用するためには、まずその設計モデルとして、ホール素子が永久磁石に対して変位したときに、計測値BHkがどのように変化するかを計算するモデルを構築する必要がある。
ここでは、先ずホール素子kの「基準配置」を、位置ベクトル
【数11】
及び方向ベクトル
【数12】
によって定義する。
すなわち、ホール素子kが基準位置にある場合に、6軸変位が全てゼロであると定義する。
【0029】
ホール素子kが、基準位置から並進変位s=[s,s,s、回転変位q=[Φ,θ,ψ]だけ変位した場合、変位後のホール素子の位置ベクトル及び方向ベクトルは、式10、式11のように表せる。
【数13】
【0030】
ただし、Rは、回転変位pに対応する回転行列であり、ここではロール、ピッチ、ヨーの順番に回転変換を行う行列を採用する。
以上より、ホール素子kによる計測値BHkは、並進及び回転変位の関数として、式12のように表せる。
【数14】
【0031】
求めるべき未知数は、3次元ベクトルs及びqが2つ、すなわち、6個のスカラー量であるため、ホール素子を6個配置すれば、式の数の上では、非線形連立方程式を解くことで、ホール素子による計測値から6軸変位を計算することができる。
ただし、実際には、構成した連立方程式が一次独立である必要があり、数学的に可解で、かつ実際に永久磁石とホール素子を設置可能な配置パターンを決定することが必要となる。
このような具体的なセンサ構造については、後に詳しく説明する。
【0032】
センサの設計モデルの評価用に選定した永久磁石及びホール素子の主要スペックを以下に示す。
・永久磁石
メーカ・型番:MISUMIマグネット丸タイプHXNN10-10
磁石タイプ:ネオジム磁石
形状:円柱形状
断面直系:10mm
長さ:10mm
表面磁束密度(カタログ値):5500-5800G(550-580mT)
重量(実測値):7.9g
・ホール素子
メーカ・型番:Texas Instruments Analog-Bipolar Hall Effect Sensor DRV5053OAQLPG
感度:-11mV/mT
測定レンジ:±73mT
【0033】
なお、選定したホール素子の測定レンジ(±73mT)は、永久磁石の表面磁束密度(550-580mT)と比較するとかなり小さいが、表面磁束密度はあくまで磁石表面の磁束密度であり、磁石から遠ざかるにつれて、距離の3乗に反比例して小さくなる。
したがって、変位センサとして仕様することが想定される位置(磁石から例えば十数mm程度離れた位置)においては、選定したホール素子のよって適切に磁束密度を計測できると考えられる。
【0034】
ホール素子と永久磁石の相対位置を変化させ、相対位置と、ホール素子を含むホールセンサ出力の関係を調査した。
図3は、ホール素子と永久磁石の相対位置とホールセンサ出力の関係を調査した際の位置関係を示す図である。
図3に示すように、永久磁石の磁化方向とホール素子の感度方向とが平行となるようにそれぞれ配置し、磁化方向の相対位置(図3におけるx軸方向の相対位置)を変化させたときの、ホール素子出力を取得した。
すなわち、図3におけるz軸方向の相対位置を固定し、x軸方向のホール素子位置を段階的に変化させた。
【0035】
z軸方向の相対位置は、磁石の磁化方向に垂直な断面の中心位置をz=0mmと定義し、z=0mm,5mm,7.5mm,10mmの4段階で設定した。
なお、図3の紙面と垂直方向(y軸方向)については、永久磁石による磁場が軸対象となることが想定される。
ホール素子出力は、永久磁石とホール素子の相対位置を任意の目標値に設定した状態でオシロスコープを用いて一定時間分収録した。
さらに、収録したデータの平均値を、設定した相対位置におけるホール素子出力として評価した。
【0036】
図4乃至図8は、ホール素子と永久磁石の相対位置とホールセンサ出力の関係の検証実験の結果を示す図である。
図4乃至図8において、横軸はx軸方向の相対位置を示し、縦軸は感度軸方向の磁束密度を示している。
図4乃至図8において、プロットが実験結果を示し、曲線が計算結果を示している。
図4乃至図8の各図の違いは、計算モデルの違いであり、実験結果は5図全てで同じである。
図4においては、永久磁石を単一の磁気双極子モデルとして取り扱っている。
図5においては、永久磁石を、径方向に2分割、周方向に4分割された複数の磁気双極子(分散双極子)モデルとして取り扱っている。
図6においては、永久磁石を、径方向に4分割、周方向に8分割された複数の磁気双極子モデルとして取り扱っている。
図7においては、永久磁石を、径方向に8分割、周方向に16分割された複数の磁気双極子モデルとして取り扱っている。
図8においては、永久磁石を、径方向に16分割、周方向に32分割された複数の磁気双極子モデルとして取り扱っている。
また、全ての計算モデルにおいて、表面磁束密度は5500g(550mT)に設定した。
【0037】
先ず、図4について見ると、計算結果は実験結果を定性的に表現しているが、実験結果よりも全体的に磁束密度の大きさが小さい。
これに対し、永久磁石モデルの分割数を増加させると、全体的に磁束密度の大きさが増加し、図7図8では、z=0mm及びz=5mmにおける計算結果と実験結果の乖離が小さくなっている。
一方、z=7.5mm及びz=10mmにおいては、図4とは逆に、計算モデルが磁束密度の大きさを過大に見積もっている。
要するに、分散双極子もでるにおける分割数を増加させることで、永久磁石の磁化方向の中心軸に比較的近い位置での精度は向上するが、永久磁石の半径方向に遠ざかった位置では、磁束密度の大きさを過大に見積もる傾向があることが明らかとなった。
【0038】
ここで、図4に示す単一の双極子モデルにおいて、計算された磁束密度が実験結果より全体的に小さいことに着目する。
図9は、単一の双極子モデルにおいて表面磁束密度の設定値をカタログ値の2.5倍に設定した結果を示す図である。
図9によれば、図4乃至図8に示す5つのモデルと比較すると、全体的に実験結果との乖離が小さいことがわかる。
このモデルでは、表面磁束密度の設定値を現実よりも大きく設定しているため、より永久磁石に近接する領域では、計算誤差が大きくなるものと推測される。
しかし、今回選定した永久磁石とホール素子の組み合わせでは、図示する実験条件よりも永久磁石に近い領域では、ホール素子の出力が飽和し、6軸変位センサとしては機能しない領域となる。
したがって、構造検討を行う上では、図9のモデルで十分であると考えられる。
【0039】
上述した式9の右辺において、Btotal(r)は、センサを構成する、一般に複数の永久磁石がつくる静磁場の総和であり、永久磁石の諸元と配置が決まれば一意に定まる関数である。
また、ベクトル
【数15】
及び
【数16】
は、ホール素子の基準配置を決定づけるベクトルであり、測定対象となる並進変位s及び姿勢ベクトルqとは独立して決定するベクトルである。
【0040】
センサの実使用においては、変位ベクトルs及び姿勢ベクトルqは、ゴムブッシュの6軸変位と一致する。
実際には、ゴムブッシュの6軸相対変位を測定するためには、少なくとも6個のホール素子を適切に配置する必要がある。
すなわち、式9が少なくとも6本得られ、それらを連立させることで、センサ全体の測定モデルが構成される。
以下、多軸変位計測に好適なホール素子の基準配置、及び、静磁場を実現する永久磁石の配置について説明する。
【0041】
測定対象となるs及びqについて補足説明する。
先ず、並進変位sは、直交座標系における並進変位であり、式13の通り定義する。
【数17】
一方、姿勢変化qについては、ロール角φ、ピッチ角θ、ヨー角ψをパラメータとして、式14の通り定義する。
【数18】
【0042】
対する回転変換行列Rは、式15の通り定義する。

=RψθΦ (式15)

ただし、右辺の各行列の定義は、式16乃至式18の通りである。
【数19】
【0043】
以上を踏まえると、ホール素子による磁場の計測結果は、並進変位を表す変数x,y,zと、姿勢変化を表す変数φ,θ,ψの、全6変数のスカラー値関数として表現できる。
すなわち、式19の通り表せる。
【数20】
【0044】
K個のホール素子を使用すれば、センサシステム全体として、K次元のベクトル値関数である式20を構成することができる。
【数21】
いま、6軸変位(x,y,z,Φ,θ,ψ)をまとめてベクトル
【数22】
で表現する。
ホール素子の計測値を用いて6軸変位を求めるためには、式20の逆関数である式21が存在しなければならない。

V=f-1(B) (式21)
【0045】
逆関数f-1が存在することは、逆関数定理より、関数fのヤコビ行列である式22が正則であることと同値である。
【数23】
一方、センサの構成として、ホール素子を7個以上使用する冗長な構成とした場合には、ヤコビ行列の階数が6であることが、6軸変位全てを計算することができる必要十分条件である。
ここでは、少なくとも基準配置近傍においてセンサとして成立するかどうかを評価するため、v=0におけるヤコビ行列である式23の特異値を、評価指標のひとつとして採用する。
【数24】
なお、本実施形態では、ヤコビ行列は、差分近似を用いて計算する。
【0046】
<実施例1>
6軸変位全てを測定可能な永久磁石及びホール素子の基準配置の実施例1を、表1、及び、図10乃至図12に示す。
【表1】
図10は、センサの実施例1における永久磁石及びホール素子の配置を示す斜視図である。
図11は、実施例1の永久磁石及びホール素子の配置をz軸方向から見た図である。
図12は、実施例1の永久磁石及びホール素子の配置をy軸方向から見た図である。
【0047】
なお、図10乃至図12では、永久磁石にはMGにIDを付したものを符号として用い、ホール素子にはHDにIDを付したものを符号として用いている。
図10等に示すように、x,y,z直交座標系において、永久磁石のN極とS極との着磁方向(磁気双極子モーメントの方向・磁化方向)、及び、ホール素子の検出方向を、y軸に沿って配置するものとする。
【0048】
永久磁石MG1と永久磁石MG2とは、x軸方向に、中心間距離において例えば50mm間隔を隔てて配列されている。
永久磁石MG3は、永久磁石MG1に対して、y軸方向の一方側に間隔を隔てて配列されている。
永久磁石MG4は、永久磁石MG2に対して、y軸方向の一方側に間隔を隔てて配列されている。
永久磁石MG3と永久磁石MG4とは、x軸方向に、中心間距離において例えば50mm間隔を隔てて配列されている。
永久磁石MG1と永久磁石MG4とは、着磁方向が同一である。
永久磁石MG2と永久磁石MG3は、永久磁石MG1に対して着磁方向(N極とS極の方向)が逆向きとなっている。
【0049】
ホール素子HD1は、永久磁石MG1と永久磁石MG2との中間に配置されている。
ホール素子HD2は、永久磁石MG3と永久磁石MG4との中間に配置されている。
ホール素子HD3は、永久磁石MG2と永久磁石MG4との中間に配置されている。
ホール素子HD4は、永久磁石MG1と永久磁石MG3との中間に配置されている。
【0050】
ホール素子HD5、ホール素子HD6、ホール素子HD7、ホール素子HD8は、永久磁石MG1、永久磁石MG2、永久磁石MG3、永久磁石MG4に対して、それぞれz軸方向における一方向(図10乃至12においては上方)に、例えば中心間距離において15mm間隔を隔てて配置されている。
【0051】
図9に示すように、表面磁束密度を、カタログ値の2.5倍に設定した単一双極子モデルを用いると、基準配置におけるヤコビ行列JV=0は、式24の通り計算される。
【数25】
また、この行列の特異値は、大きい順に、10231.4,3802.02,1968.8,256.812,235.166,104.819であり、6個の特異値全てが0でないことから、少なくとも基準配置近傍においては、6軸変位センサとして機能することがわかる。
【0052】
図13は、実施例1において各変数を独立に変化させた際の各ホール素子の出力変化の計算結果を示す図である。
図13に示すように、非線形性は見られるものの、各変位が変化した際に、いずれかのホール素子の出力変化が見られる。
非線形性を考慮した、ホール素子出力から変位への変換方法については、後に説明する。
【0053】
<実施例2>
上述した6軸変位全てを測定可能な実施例1の基準配置は、永久磁石を4個必要とし、また、専有面積も大きいため、実際に鉄道台車等への装着を容易とするため、6軸変位のうちロール角に関する感度を喪失する代わりに、よりコンパクトに構成できる実施例2の基準配置について以下説明する。
5軸変位を測定可能な基準配置の実施例2を、表2、及び、図14乃至図16に示す。
【表2】
【0054】
図14は、センサの実施例2における永久磁石及びホール素子の配置を示す斜視図である。
図15は、実施例2の永久磁石及びホール素子の配置をz軸方向から見た図である。
図16は、実施例2の永久磁石及びホール素子の配置をy軸方向から見た図である。
【0055】
なお、図14乃至図16では、永久磁石にはMG1にIDを付したものを符号として用い、ホール素子にはHD1にIDを付したものを符号として用いている。
図14等に示すように、x,y,z直交座標系において、永久磁石のN極とS極との着磁方向(磁気双極子モーメントの方向・磁化方向)、及び、ホール素子の検出方向を、y軸に沿って配置するものとする。
【0056】
永久磁石MG11と永久磁石MG12とは、x軸方向に、例えば中心間距離にして50mm間隔を隔てて配列されている。
永久磁石MG11と永久磁石MG12の着磁方向は逆向きとなっている。
ホール素子HD11は、永久磁石MG11に対して、y軸方向の一方側に、例えば25mm間隔を隔てて配列されている。
ホール素子HD12は、永久磁石MG12に対して、y軸方向の一方側に、例えば25mm間隔を隔てて配列されている。
ホール素子HD11とホール素子HD12とは、x軸方向に沿って配列されている。
【0057】
ホール素子HD13は、永久磁石MG11に対して、y軸方向の他方側(ホール素子HD11の反対側)に、例えば25mm間隔を隔てて配列されている。
ホール素子HD14は、永久磁石MG12に対して、y軸方向の他方側(ホール素子HD12の反対側)に、例えば25mm間隔を隔てて配列されている。
ホール素子HD13とホール素子HD14とは、x軸方向に沿って配列されている。
【0058】
ホール素子HD15は、永久磁石MG11と永久磁石MG12との間に、x軸方向に沿って配列されるよう(典型的には永久磁石MG11と永久磁石MG12との間隔を2分するよう)配置されている。
ホール素子HD16、ホール素子HD17は、永久磁石MG11、永久磁石MG12に対して、それぞれz軸方向の一方側に、例えば中心間距離において15mmオフセットして配置されている。
【0059】
実施例2の構成は、2個の永久磁石と、7個のホール素子を使用している。
上述したように表面磁束密度をカタログ値の2.5倍に設定した単一双極子モデルを用いると、基準配置におけるヤコビ行列JV=0は、式25の通り計算される。
【数26】
【0060】
また、この行列の特異値は、大きい順に、7187.92,6497.93,1320.97,180.287,160.956,0であり、特異値のひとつが0であることから、少なくとも基準配置近傍においてランクが1落ちていることが分かる。
図17は、実施例2において各変数を独立に変化させた際の、各ホール素子の出力変化の計算結果を示す図である。
6軸変位のうち、ロール角の変化に対して、すべてのホール素子の出力がほとんど変化しておらず、この基準配置ではロール角を測定することができないことがわかる。
一方、その他の5軸変位については、各変位が変化した際に、いずれかのホール素子の出力変化が見られる。
【0061】
次に、上述した実施例2の基準配置を実現するための機械的構造の一例について説明する。
磁石そのものに追加工を行うことは物性上困難であり、かつ、追加工を行うことで磁場特性が変化する可能性がある。
したがって、実施例2の基準配置においてセンサを構成する場合には、以下説明する構成を用いることができる。
図18は、実施例2のセンサにおける磁石ベースの外観斜視図である。
図19は、実施例2のセンサにおける磁石ベースの分解斜視図である。
【0062】
磁石ベース100は、変位を測定すべき弾性体と連結された一方の部材(第1の物体)に固定され、永久磁石MG11、MG12を保持する磁性体保持部である。
磁石ベース100は、磁石ホルダ110,120、ベースプレート130等を有する。
【0063】
磁石ホルダ110,120は、例えば、直方体状のブロック形に形成されている。
磁石ホルダ110,120は、x,y,z軸方向にそれぞれ沿った辺部を有する。
磁石ホルダ110,120は、所定の長手方向(z軸方向・図18図19における上下方向)に沿った辺が他の辺よりも長い形状を有する。
磁石ホルダ110,120の上端部近傍には、穴部111,121がそれぞれ設けられている。
【0064】
穴部111,121は、それぞれ永久磁石MG11,MG12が挿入される円形断面の貫通穴である。
穴部111,121の中心軸は、x軸方向に沿って配置されている。
穴部111,121の両端部には、カバー112,122が取り付けられる。
カバー112,122は、穴部111,121を閉塞し、永久磁石MG11,MG12の脱落を防止する。
カバー112,122は、例えば、矩形状の平面形を有する平板状の部材とすることができる。
【0065】
磁石ホルダ110,120は、x軸方向に間隔を有して並行して配置されている。
ベースプレート130は、磁石ホルダ110,120を連結する平板状の部材である。
ベースプレート130は、磁石ホルダ110,120の穴部111,121側とは反対側の端部(図18図19の下側)に取り付けられる。
ベースプレート130は、磁石ホルダ110,120をy軸方向(穴部111,121の中心軸方向)に挟んで一対設けられる。
【0066】
図20は、実施例2のホール素子ベースの外観斜視図である。
ホール素子ベース200は、変位を測定すべき弾性体と連結された他方の部材(第2の物体)に固定され、ホール素子HD11乃至HD17を保持する磁気検出部保持部である。
ホール素子ベース200は、センタプレート210、第1アウタプレート220、第2アウタプレート230、ブラケット240,250等を有する。
【0067】
センタプレート210、第1アウタプレート220、第2アウタプレート230は、それぞれx軸方向、z軸方向に沿って延在する平板状に形成されている。
センタプレート210は、一体に形成された本体部211、突出部212を有する。
本体部211は、y軸方向から見た平面形が、x軸方向に沿った長辺、及び、z軸方向に沿った短辺を有する矩形状に形成されている。
本体部211のx軸方向における両端部近傍には、ホール素子HD16,HD17(図20では図示しない)がそれぞれ取り付けられる。
突出部212は、本体部211のx軸方向における中央部から下方に突出したタブ状の面部である。
突出部212の下端部近傍には、ホール素子HD15が取り付けられる。
【0068】
第1アウタプレート220は、センタプレート210に対してy軸方向に間隔を設けて対向して配置されている。
第1アウタプレート220は、一体に形成された本体部221、突出部222を有する。
本体部221は、y軸方向から見た平面形が、x軸方向に沿った長辺、及び、z軸方向に沿った短辺を有する矩形状に形成されている。
本体部221のx軸方向における両端部近傍には、ホール素子HD11,HD12(図20では図示しない)がそれぞれ取り付けられる。
突出部222は、本体部221のx軸方向における中央部から、上方に突出したタブ状の面部である。
【0069】
第2アウタプレート230は、センタプレート210に対してy軸方向かつ第1アウタプレート220とは反対側に間隔を設けて対向して配置されている。
第2アウタプレート230は、一体に形成された本体部231、突出部232を有する。
本体部231は、y軸方向から見た平面形が、x軸方向に沿った長辺、及び、z軸方向に沿った短辺を有する矩形状に形成されている。
本体部231のx軸方向における両端部近傍には、ホール素子HD13,HD14がそれぞれ取り付けられる。
突出部232は、本体部231のx軸方向における中央部から、上方に突出したタブ状の面部である。
【0070】
ブラケット240は、センタプレート210と第1アウタプレート220とを連結し、これらの相対変位を拘束する部材である。
ブラケット240は、センタプレート取付面部241、第1アウタプレート取付面部242、上面部243を有する。
センタプレート取付面部241、第1アウタプレート取付面部242は、x軸方向及びz軸方向に沿って延在する平板状の部分である。
センタプレート取付面部241は、センタプレート210の本体部211におけるx軸方向中央部に重ね合わせた状態で固定されている。
第1アウタプレート取付面部242は、第1アウタプレート220の突出部222に重ね合わせた状態で固定されている。
【0071】
センタプレート取付面部241、第1アウタプレート取付面部242の上端部は、センタプレート210、第1アウタプレート220の上端部に対して上方へ突出して配置されている。
上面部243は、センタプレート取付面部241、第1アウタプレート取付面部242の上端縁部にわたして設けられた部分である。
上面部243は、x軸方向、y軸方向に沿って延在する平板状に形成されている。
センタプレート取付面部241、第1アウタプレート取付面部242、上面部243は、例えば、1枚のプレートを曲げ加工して一体に形成することができる。
【0072】
ブラケット250は、センタプレート210と第2アウタプレート230とを連結し、これらの相対変位を拘束する部材である。
ブラケット250は、センタプレート取付面部251、第2アウタプレート取付面部252、上面部253を有する。
センタプレート取付面部251、第2アウタプレート取付面部252は、x軸方向及びz軸方向に沿って延在する平板状の部分である。
センタプレート取付面部251は、センタプレート210の本体部211におけるx軸方向中央部に重ね合わせた状態で固定されている。
第2アウタプレート取付面部252は、第2アウタプレート230の突出部232に重ね合わせた状態で固定されている。
【0073】
センタプレート取付面部251、第2アウタプレート取付面部252の上端部は、センタプレート210、第2アウタプレート230の上端部に対して上方へ突出して配置されている。
上面部253は、センタプレート取付面部251、第2アウタプレート取付面部252の上端縁部にわたして設けられた部分である。
上面部253は、x軸方向、y軸方向に沿って延在する平板状に形成されている。
センタプレート取付面部251、第2アウタプレート取付面部252、上面部253は、例えば、1枚のプレートを曲げ加工して一体に形成することができる。
【0074】
図21は、実施例2のセンサの磁石ベースとホール素子ベースとを組み合わせた状態を示す斜視図であって、センサが中立位置にある状態を示している。
実施例2のセンサは、中立状態において、永久磁石MG11乃至MG12と、ホール素子HD11乃至HD17が、図14乃至図16に示す位置関係(基準位置・中立位置)となるように、例えば鉄道車両用の台車の台車枠と、台車枠にゴムブッシュ等の弾性体を介して連結される一例として牽引リンク、ヨーダンパ等の台車部品との一方に磁石ベース100を固定し、他方にホール素子ベース200を固定する。
なお、上述した実施例1においても、同様の考え方により磁石ベース、ホール素子ベースを適宜構成することが可能である。
【0075】
次に、ホール素子出力から、多軸変位を算出する計算手法について説明する。
ホール素子出力から変位を計算するためには、センサ特性が線形であれば、校正係数、もしくは交差感度も含めた構成係数行列を用いて計算することができる。
一方、上述した計算結果からも明らかなように、6軸変位、あるいは、5軸変位に対するホール素子の出力変化特性は、比較的強い非線形性を持っている。
【0076】
例えば、原点(基準配置・中立位置)近傍のヤコビ行列を校正係数行列として使用した場合、基準配置から離れた位置では、変位の演算誤差が大きくなる。
さらに、上述した実施例1、実施例2の基準配置は、いずれもホール素子を冗長に配置する構成であり、方程式の冗長性への対処も必要である。
そこで、本実施形態では、ホール素子の出力からの変位の計算を、非線形残差最小化問題として解くこととした。
すなわち、ホール素子出力から変位を計算するために、式20の関係を直接利用する。
【0077】
残差ベクトルe(v)を、式26のように定義する。

e(v)=B-f(v) (式26)

ここで、BHは、実際のホール素子から得られた磁束密度計算結果であり、磁気双極子モデルから計算される磁束密度f(v)とは一般に異なることに注意する。
いま、残差ノルム
【数27】
を、式27の通り定義する。
【数28】
変位vを求める問題を、残差ノルムの最小化問題(式28)として解くことを考える。
【数29】
【0078】
残差ノルムを変数vで偏微分すると、式29を得る。
【数30】
【0079】
式29を利用し、最急降下法により、変数vを漸化的に更新すると、式30が得られる。
【数31】
ただし、tは最急降下法の更新ステップであり、Aは半正定値対角行列である。
【0080】
最急降下法の初期値には、基準配置近傍における線形近似解を利用する。
すなわち、v=0において、線形連立方程式である式31を考える。
【数32】
そして、ヤコビ行列の擬似逆行列J(0)を用いて、誤差ノルム最小解
【数33】
を式32のように計算する。
【数34】
【0081】
このとき、疑似逆行列J(0)の計算方法には注意が必要である。
実施例2のように、ヤコビ行列が列フルランクでない場合、式33の定義式では、疑似逆行列を適切に計算することができない。
【数35】
【0082】
これは、正方行列J(0)J(0)がランク落ちしており、逆行列を定義できないためである。
そこで、特異分散値を用いて疑似逆行列を計算する。
行列が式34の通り特異値分解されるものとすると、疑似逆行列J(0)は、式35のように表される。
【数36】
【0083】
ここで、行列Σは、特異値を対角成分に持つ対角行列Δを用いて、式36のように表される。
【数37】
その疑似逆行列は、式37のように表される。
【数38】
【0084】
ここで、式38の通り置くと、式39が得られる。
【数39】
【0085】
1×1行列(すなわちスカラー)xに対する擬似逆行列は、式40により定義される。
【数40】
これらを用いてΣを計算することができ、さらに、J(0)を計算することができる。
【0086】
以上説明した計算手法の原理的な妥当性を検証するため、計算で求められたホール素子出力Bから、位置姿勢変数vを逆算することを試みた。
すなわち、
1.位置姿勢変数vを適当に設定する。
2.BH=f(v)を計算する。
3.計算されたBから、上述した方法を用いてvを逆算する。
という手順で検証計算を実施した。
なお、本検証では、永久磁石及びホール素子の配置として、実施例2の配置を想定した。
【0087】
図22は、実施例2の基準配置において、並進変位のみを各軸独立に与えた場合の検証計算結果を示す図である。
図23は、実施例2の基準配置において、回転変位のみを各軸独立に与えた場合の検証計算結果を示す図である。
なお、図22図23において、位置姿勢変数vの計算方法として、以下の3種類の計算方法を適用した場合の結果を示している。

・Linear:基準配置近傍における線形関係式(式32)を用いた計算結果
・Stepest descent(1):最急降下法において、
【数41】
とした場合の計算結果
・Stepest descent(2):最急降下法において、
【数42】
とした場合の計算結果
【0088】
Stepest descent(2)は、構造上感度を持たないロール角に対する変数の更新を行わない計算法である。
最急降下法の反復計算は、いずれの方法についても500回とした。
それぞれの計算法について、位置姿勢変数vのひとつだけを独立に変化させた場合の、位置姿勢の逆算結果を評価している。
例えば、図22(a)は、変数xのみを変化させた場合の、x,y,z,φ,θ,ψの逆算結果を示している。
【0089】
先ず、線形関係式を用いた逆算結果(図中”Linear”)については、全ての変数が0である基準配置近傍では、計算条件として与えた位置姿勢変数と、逆算結果の位置姿勢変数が一致しているものの、計算条件として与えた位置姿勢変数が基準配置から離れるにつれて、誤差が大きくなることがわかる。
【0090】
具体的には、例えば図22(a)において、計算条件として与えた変数xが大きくなるにつれて、逆算結果としてのxがやや大きく見積もられる傾向にある。
また、計算条件としては0に固定している変数zについては、xが大きい条件において0ではなくなっている。
すなわち、基準配置近傍における線形関係式を用いた変換では、計測結果の直線性誤差が大きくなること、及び、クロストークが大きくなることが懸念される。
【0091】
続いて、Stepest descent(1)及び(2)についてみると、構造上感度を持たないロール角φ以外の変数については、線形関係式を用いた逆算よりも精度が向上していることがわかる。
(1)と(2)ではおおよそ同様の結果が得られているが、図23(b)に示す変数yを変化させた条件においてのみ、Stepest descent(1)のクロストークが大きくなっている。
したがって、今回比較した3方式のなかでは、計算結果の観点ではStepest descent(2)が最良であることがわかった。
このような演算は、例えば、図示しないコンピュータ等の演算部を用いて、例えば鉄道車両の車上でオンラインかつ実時間で、あるいは、ホール素子の出力データをラボ等に持ち帰り、オフラインで行うことができる。
このような演算部(コンピュータ)は、永久磁石、ホール素子、各ベース部材からなるセンサと協働して、本発明の変位測定装置を構成する。
【0092】
<実施例3>
次に、6軸変位を全て測定可能であって、例えば実施例1の構成よりもコンパクトな構成を有する実施例3について説明する。
実施例1,2では、測定可能な自由度の数よりも、使用するホール素子の数が多い冗長な構成であったが、実施例3では、非冗長な配置(すなわち、測定対象自由度6に対してホール素子数6とできるような配置)としている。
6個のホール素子により6軸変位を測定可能な基準配置の実施例3を、表3、及び、図24乃至図26に示す。
【表3】
【0093】
図24は、センサの実施例3における永久磁石及びホール素子の配置を示す斜視図である。
図25は、実施例3の永久磁石及びホール素子の配置をz軸方向から見た図である。
図26は、実施例3の永久磁石及びホール素子の配置をx軸方向から見た図である。
【0094】
実施例3では、5個の永久磁石と6個のホール素子を使用する構成としている。
なお、図24乃至図26では、永久磁石にはMG2にIDを付したものを符号として用い、ホール素子にはHD2にIDを付したものを符号として用いている。
図24等に示すように、基準配置においては、x,y,z直交座標系において、永久磁石のN極とS極との着磁方向(磁気双極子モーメントの方向・磁化方向)、及び、ホール素子の検出方向を、x軸に沿って配置するものとする。
【0095】
永久磁石MG21と永久磁石MG22とは、y軸方向に、中心間距離において例えば20mm間隔を隔てて配列されている。
永久磁石MG23は、永久磁石MG22に対して、z軸方向の一方側(図24においては下側)に例えば20mm間隔を隔てて配列されている。
永久磁石MG24は、永久磁石MG21に対して、z軸方向の一方側に例えば20mm間隔を隔てて配列されている。
【0096】
永久磁石MG25は、永久磁石MG21と永久磁石MG23との中間(永久磁石MG22と永久磁石MG24との中間・表3における原点でもある)に配置されている。
永久磁石MG21、永久磁石MG23、永久磁石MG25は、x軸方向における一方側(図24においては右下側)がN極となり、永久磁石MG22、永久磁石MG24は、x軸方向における他方側がN極となるように配置されている。
【0097】
ホール素子HD21、ホール素子HD22、ホール素子HD23は、x軸方向における位置が、各永久磁石に対して一方側へ例えば15mmオフセットして配置されている。
図26に示すように、x軸方向から見たときに、ホール素子HD21は、永久磁石MG21と永久磁石MG24との中間に配置されている。
x軸方向から見たときに、ホール素子HD22は、永久磁石MG21と永久磁石MG22との中間に配置されている。
x軸方向から見たときに、ホール素子HD23は、永久磁石MG22と永久磁石MG24との中間に配置されている。
【0098】
ホール素子HD24は、x軸方向から見たときに、永久磁石MG25と重なる位置に配置されている。
ホール素子HD24は、x軸方向における位置が、永久磁石MG25に対して他方側(ホール素子HD21などがある方向と反対側)に、例えば20mmオフセットして配置されている。
【0099】
ホール素子HD25、ホール素子HD26は、x軸方向における位置が、各永久磁石に対して他方側(ホール素子HD21等とは反対側)に例えば15mmオフセットして配置されている。
x軸方向から見たときに、ホール素子HD25は、永久磁石MG22と永久磁石MG23との中間に配置されている。
x軸方向から見たときに、ホール素子HD26は、永久磁石MG23と永久磁石MG24との中間に配置されている。
【0100】
以上説明した配置において、表面磁束密度をカタログ値の2.5倍に設定した単一双極子モデルを用いると、基準配置においてヤコビ行列JV=0は、式41の通り計算される。
【数43】
【0101】
また、この行列の特異値は、大きい順に、1553.1,5197.93,3321.69,173.953,73.2168,51.0348であり、6個の特異値全てが0でないことから、少なくとも基準配置近傍においては、6軸変位センサとして機能することがわかる。
【0102】
この配置では、ホール素子HD24と永久磁石MD25の組み合わせで主に前後方向の感度を確保しており、それ以外のホール素子、永久磁石によって、前後変位以外の変位に対する感度を確保している。
ホール素子の配置については、実施例1,2と同様に、ある程度複数のホール素子が同一の平面内に同じ方向に配置されるように配慮し、基本的には2枚のプレートでホール素子を拘束可能とすることを想定している。
ただし、ホール素子HD24については、隣接するホール素子HD25,HD26とは段違いの位置に配置している。
これらは同一平面内に配置したほうが機械的な構造としては簡素化できるが、ホール素子DH24が磁石に近接しすぎると、ホール素子の測定レンジ上、十分なストロークを確保できない可能性がある。
【0103】
図27は、実施例3において各変数を独立に変化させた際の、各ホール素子の出力変化の計算結果を示す図である。
非線形性は見られるものの、各変位が変化した際に、いずれかのホール素子の出力変化がみられる。
全体的な傾向として、角度変化(ロール、ピッチ、ヨー)に対するホール素子出力の変化感度は、実施例1,2の配置よりもやや小さいものの、コンパクトな構成により6軸全てに感度を有することがわかる。
【0104】
次に、上述した実施例3の基準配置を実現するための機械的構造の一例について説明する。
図28は、実施例3のセンサにおける磁石ベースの外観斜視図である。
図29は、実施例3のセンサにおける磁石ベースの分解斜視図である。
図30は、実施例3のセンサにおけるホール素子ベースの外観斜視図である。
図31は、実施例3のセンサにおけるホール素子ベースの分解斜視図である。
【0105】
磁石ベース300は、変位を測定すべき弾性体と連結された一方の部材(第1の物体)に固定され、永久磁石MG21乃至MG25を保持する磁性体保持部である。
磁石ベース300は、磁石ホルダ310、カバープレート320等を有する。
【0106】
磁石ホルダ310は、例えば、直方体状のブロック形に形成されている。
磁石ホルダ310は、x,y,z軸方向にそれぞれ沿った辺部を有する。
磁石ホルダ310は、所定の長手方向(z軸方向・図28図29における上下方向)に沿った辺が他の辺よりも長い形状を有する。
磁石ホルダ310の上端部近傍には、開口311乃至315、ビス穴316が設けられている。
開口311乃至315は、それぞれ永久磁石MG21乃至MG25が収容される部分である。
開口311乃至315は、磁石ホルダ310をx軸方向に貫通した円形の開口として構成されている。
ビス穴316は、磁石ホルダ310にカバープレート320を締結する図示しないビス等の機械的締結手段が挿通される開口である。
ビス穴316は、磁石ホルダ310をx軸方向に貫通し、複数箇所形成されている。
【0107】
カバープレート320は、磁石ホルダ310をx軸方向に挟んだ両側にそれぞれ設けられる平板状の部材である。
カバープレート320は、磁石ホルダ310の開口311乃至315を閉塞し、永久磁石MG21乃至MG25の脱落を防止する機能を有する。
カバープレート320には、ビス穴321が設けられている。
カバープレート320は、ビス穴321及び磁石ホルダ310のビス穴316に挿入される図示しないビス等の機械的締結手段によって、磁石ホルダ310に固定される。
【0108】
ホール素子ベース400は、第1ホール素子ホルダ410、第2ホール素子ホルダ420、連結部材430、カバープレート440,450等を有する。
第1ホール素子ホルダ410は、ホール素子HD21乃至HD23が取り付けられる部材である。
第2ホール素子ホルダ420は、ホール素子HD24乃至HD26が取り付けられる部材である。
第1ホール素子ホルダ410、第2ホール素子ホルダ420は、例えば、y軸方向及びz軸方向に沿った辺部を有する矩形状のプレートとして構成することができる。
第1ホール素子ホルダ410、第2ホール素子ホルダ420は、x軸方向に所定の間隔を有して平行に配置される。
【0109】
第1ホール素子ホルダ410、第2ホール素子ホルダ420は、x軸方向に沿った厚みが例えば5mmとなっている。これは、ホール素子HD24の、ホール素子HD25,HD26に対するx軸方向のオフセット量に相当する。
第2ホール素子ホルダ420には、ホール素子HD24が収容される開口421が形成されている。
ホール素子HD24は、開口421に挿入され、底部となるカバープレート450に突き当たった状態で取り付けられることにより、この5mmのオフセットが得られるようになっている。
なお、部品の共通化を図るため、第1ホール素子ホルダ410にも同様の開口411が設けられる。
【0110】
連結部材430は、磁石ベース300との干渉を避けた位置において、第1ホール素子ホルダ410、第2ホール素子ホルダ420を連結するブロック状の部材である。
連結部材430は、例えば、第1ホール素子ホルダ410、第2ホール素子ホルダ420のz軸方向における一方側の端部(図30,31の場合には上端部)に設けることができる。
連結部材430は、第1ホール素子ホルダ410、第2ホール素子ホルダ420に形成されたビス穴412等(第2ホール素子ホルダ420側のビス穴は不図示)から、ビス等の機械的締結手段を挿入し、締結することで、第1ホール素子ホルダ410、第2ホール素子ホルダ420と固定される。
【0111】
カバープレート440,450は、開口411,421をそれぞれ閉塞するように、第1ホール素子ホルダ410、第2ホール素子ホルダ420にx軸方向外側から取り付けられる平板状の部材である。
カバープレート440,450は、第1ホール素子ホルダ410、第2ホール素子ホルダ420に形成されたビス穴413,423に、カバープレート440,450に形成されたビス穴441,451を介して、図示しないビス等の機械的締結手段を挿入、締結することで固定される。
磁石ベース300、ホール素子ベース400を構成する各部材も、実施例2と同様に、例えばアルミニウム系合金などにより構成することができる。
磁石ベース300,ホール素子ベース400は、相対変位の測定対象となる一対の物体(例えばゴムブッシュを介して連結される台車枠と台車部品)にそれぞれ固定される。
【0112】
<実施例4>
次に、6軸変位を全て測定可能な構成のバリエーションである実施例4について説明する。
実施例4は、実施例3の永久磁石、ホール素子の配置を基本的に踏襲し、磁石及びホール素子どうしの間隔を例えば5mm拡大したものである。
実施例4における永久磁石及びホール素子の基準配置を表4に示す。
【表4】
【0113】
実施例4の基準配置におけるヤコビ行列JV=0は、式42の通り計算される。
【数44】
この行列の特異値は、大きい順に、6455.85,3409.69,2050.65,94.1448,28.3462,2.85635である。
6個の特異値全てが0でないことから、少なくとも基準配置近傍においては6軸変位センサとして機能することがわかる。
ただし、特異値の大きさは実施例3に対して小さく、特に最小特異値については、1桁オーダであることから、いずれかの自由度の感度が低下することが示唆される。
【0114】
図32は、実施例4において各変数を独立に変化させた際の、各ホール素子の出力変化の計算結果を示す図である。
全体的な傾向として、角度変化(ロール、ピッチ、ヨー)に対するホール素子出力の変化感度は実施例3の基準配置と比較して小さく、これらの感度を十分に確保するためには、永久磁石どうし、あるいは、ホール素子どうしの間隔は近いほうが有利であることが示唆される。
これは、磁気双極子の静磁場の強さは、距離の3乗に反比例するため、磁石どうしを近接させたほうが、高い磁束密度を確保できるためだと考えられる。
【0115】
一方、角度が変化した場合のホール素子の並進変位の大きさという観点では、ホール素子どうしの間隔は広いほうが有利である。
しかし、この効果は距離の1乗に比例する効果であるため、結果として、間隔を狭くして磁束密度を高くする効果が上回るものと考えられる。
【0116】
<実施例5>
次に、ホール素子を冗長化し、前後方向の対称性を向上させた実施例5の基準配置を表5に示す。
【表5】
【0117】
実施例5において、基準配置におけるヤコビ行列JV=0は、式43のように計算される。
【数45】
この行列の特異値は、大きい順に16988.3,5424.54,5039.99,151.357,134.103,52.2954である。
6個の特異値全てが0でないことから、少なくとも基準配置近傍においては6軸変位センサとして機能することがわかる。
特異値のみを単純に比較すると、実施例3とほぼ同等であるが、実施例5においては、後述するように、例えばx軸方向の感度について、プラス方向に変位した場合とマイナス方向に変位した場合の感度変化を対称にすることができる効果がある。
【0118】
図33は、実施例5において各変数を独立に変化させた際の、各ホール素子の出力変化の計算結果を示す図である。
各ホール素子どうしの距離や、永久磁石との間隔については、実施例3と同等としているため、ホール素子単体の感度特性は実施例3と大きくは変わらない。
一方で、例えばx軸方向の変位に着目すると、実施例3では、x軸方向変位に対して測定レンジ全域において大きな感度を持つのは一つのみであるのに対して、実施例5では2つのホール素子がx軸方向変位に対して大きな感度を持つ。
なおかつ、その出力変化特性は、x=0mmを境に対称である。
【0119】
すなわち、実施例3では、xがマイナス方向に変化する場合に感度が低下し、SN比が悪化すると考えられるが、実施例5では、マイナス方向に変位した場合のホール素子HD1の感度低下を、ホール素子HD2で補うことができる。
同様の効果は、ピッチ角、ヨー角についても僅かではあるが見られ、出力特性を対称にすることで、実効的な感度の向上を図ることができる。
【0120】
以上説明した実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)第1の物体(一例としてゴムブッシュの一方側に連結された台車枠等)と第2の物体(一例としてゴムブッシュの他方側に連結されたヨーダンパ、牽引リンクなどの台車部品等)との相対変位に応じた複数のホール素子の出力変化を表す関数行列の逆行列を用いて、複数のホール素子の出力から第1の物体と第2の物体との相対変位を演算することにより、第1の物体側に複数の永久磁石を設け、第2の物体側に複数のホール素子を設ける簡単なセンサ構成により、例えば直交3軸の並進方向、及び、直交3軸のうち2軸あるいは3軸等の多軸変位を適切に検出することができる。
(2)関数行列は、測定可能な自由度(実施例1の場合は6自由度、実施例2の場合は5自由度)と同等以上のランクを有するヤコビ行列であることにより、所望の測定自由度の変位測定を確実に行うことができる。
(3)センサに設けられるホール素子の個数を、測定すべき多軸変位の自由度よりも多く設定することにより、装置の冗長性を高めることができる。
(4)演算部は、複数のホール素子の出力から第1、第2の物体との相対変位を演算する際に、非線形残差最小差問題として求解することにより、永久磁石とホール素子とが基準配置から大きく変位した場合であっても、誤差を抑制して測定精度を確保することができる。
【0121】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)変位測定装置、変位測定方法の具体的構成は、上述した実施形態に限定されることなく、適宜変更することができる。
例えば、磁性体、磁気検出部の具体的配列、各ベース部材(保持部)の具体的構成、測定すべき自由度の数、演算部における数式等は、適宜変更することができる。
(2)実施形態において、多軸変位の測定対象の一例として、ゴムブッシュ等の弾性体を介して連結された台車枠及び台車部品を示しているが、本発明における測定対象はこれらに限定されず、適宜変更することができる。
(3)実施形態においては、磁石ベース(磁性体保持部)、及び、ホール素子ベース(磁気検出部保持部)をともにアルミニウム系合金によって構成しているが、これらの材料はこれに限らず適宜変更することができる。
この場合、各部材を構成する材料は、非磁性体であって、透磁率が真空の透磁率に可能な限り近いことが好ましい。
また、測定対象となる変位が比較的高速(動的)である場合には、渦電流による影響を抑制するため、各部材を例えばエンジニアリングプラスティック(樹脂系材料)や、セラミクス等の非金属材料(絶縁材料)によって構成することが好ましい。
【符号の説明】
【0122】
MG1~MG4 永久磁石
HD1~HD8 ホール素子
MG11~MG12 永久磁石
HD11~HD17 ホール素子
MG21~MG25 永久磁石
HD21~HD26 ホール素子
100 磁石ベース 110 磁石ホルダ
111 穴部 112 カバー
120 磁石ホルダ 121 穴部
122 カバー 130 ベースプレート
200 ホール素子ベース 210 インナプレート
211 本体部 212 突出部
220 第1アウタプレート 221 本体部
222 突出部 230 第2アウタプレート
231 本体部 232 突出部
240 第1ブラケット 241 センタプレート取付面部
242 第1アウタプレート取付面部 243 上面部
250 第2ブラケット 251 センタプレート取付面部
252 第2アウタプレート取付面部 253 上面部
300 磁石ベース 310 磁石ホルダ
311~315 開口 316 ビス孔
320 カバープレート 321 ビス孔
400 ホール素子ベース 410 第1ホール素子ホルダ
411 開口 412 ビス穴
413 ビス穴 420 第2ホール素子ホルダ
421 開口 423 ビス穴
430 連結部材 440 カバープレート
441 ビス穴 450 カバープレート
451 ビス穴
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