(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029814
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】粒子の加工方法及び加工装置
(51)【国際特許分類】
B01J 2/16 20060101AFI20240229BHJP
B01J 8/24 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B01J2/16
B01J8/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132207
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000222174
【氏名又は名称】東洋エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100106138
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 政幸
(72)【発明者】
【氏名】佐野 恵二
(72)【発明者】
【氏名】湊 拓弘
【テーマコード(参考)】
4G004
4G070
【Fターム(参考)】
4G004KA01
4G070AA01
4G070AB06
4G070BB32
4G070CA25
4G070CB03
4G070CB10
4G070CC02
4G070DA30
(57)【要約】
【課題】加熱された種粒子を造粒工程(gr)に供給して造粒装置(GR)内の温度の均一性を向上することによって、所望のレベルまで均一に乾燥され且つ所望の粒径を有する粒子を安定して造粒できる粒子の加工方法及び加工装置を提供する。
【解決手段】種粒子に対して下側からライン16を介して予備加熱用気体を供給することによって、種粒子の流動層を形成し且つ流動層中の種粒子を予備加熱する種粒子調節工程(sc)、及び、種粒子調節工程(sc)で加熱された種粒子をライン1を介して供給し、種粒子の表面に高温の雰囲気下で被覆用物質を被覆することによって造粒する造粒工程(gr)を有する粒子の加工方法;並びに、その各工程を行う為の種粒子調節装置(SC)及び造粒装置(GR)、又は、種粒子調節及び造粒装置(SC/GR)を有する粒子の加工装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
種粒子に対して下側から予備加熱用気体を供給することによって、該種粒子の流動層を形成し且つ該流動層中の種粒子を予備加熱する種粒子調節工程(sc)、及び、
前記種粒子調節工程(sc)で加熱された種粒子の表面に、高温の雰囲気下で、被覆用物質を被覆することによって造粒する造粒工程(gr)
を有する粒子の加工方法。
【請求項2】
予備加熱用気体の温度が80℃~140℃である請求項1に記載の粒子の加工方法。
【請求項3】
造粒工程(gr)において、高温の雰囲気を形成する気体の温度が、80℃~140℃である請求項1に記載の粒子の加工方法。
【請求項4】
種粒子に対して下側から予備加熱用気体を供給することによって、該種粒子の流動層を形成し且つ該流動層中の種粒子を予備加熱する種粒子調節装置(SC)、及び、
前記種粒子調節装置(SC)で加熱された種粒子の表面に、高温の雰囲気下で、被覆用物質を被覆することによって造粒する造粒装置(GR)
を有する粒子の加工装置。
【請求項5】
種粒子に対して下側から予備加熱用気体を供給することによって、該種粒子の流動層を形成し且つ該流動層中の種粒子を予備加熱する種粒子調節領域(SCZ)、及び、
前記種粒子調節領域(SCZ)で加熱された種粒子の表面に、高温の雰囲気下で、被覆用物質を被覆することによって造粒する造粒領域(GRZ)
を含む種粒子調節及び造粒装置(SC/GR)を有する粒子の加工装置。
【請求項6】
種粒子の表面に、高温の雰囲気下で、被覆用物質を被覆することによって造粒する造粒装置(GR)を有する既存の粒子の加工装置の改良方法であって、
種粒子に対して下側から予備加熱用気体を供給することによって該種粒子の流動層を形成し且つ該流動層中の種粒子を予備加熱する種粒子調節装置(SC)を、前記既存の粒子の加工装置に追加し、該造粒装置(GR)において、該種粒子調節装置(SC)で加熱した後の種粒子に対して、高温の雰囲気下で、被覆用物質を被覆することによって造粒する、あるいは、
種粒子に対して下側から予備加熱用気体を供給することによって該種粒子の流動層を形成し且つ該流動層中の種粒子を予備加熱する種粒子調節領域(SCZ)、及び、該種粒子調節領域(SCZ)で加熱された種粒子の表面に、高温の雰囲気下で、被覆用物質を被覆することによって造粒する造粒領域(GRZ)を含む種粒子調節及び造粒装置(SC/GR)を、前記造粒装置(GR)と交換し、該造粒領域(GRZ)において、該種粒子調節領域(SCZ)で加熱した後の種粒子に対して、高温の雰囲気下で、被覆用物質を被覆することによって造粒する
ことを特徴とする既存の粒子の加工装置の改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望のレベルまで均一に乾燥され且つ所望の粒径を有する粒子を安定して造粒できる粒子の加工方法及び加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粒状製品(例えば、化学製品、薬品、食品)を製造する際は、固体物質を所望の粒径の粒子に加工する必要がある。粒状製品の大量生産に適した加工方法としては、例えば、流動層方式、又は、流動層/噴流層方式の造粒装置を用い、種粒子(上記の固体物質からなる小さな粒子)を肥大化することによって所望の粒径の粒子を得る方法が知られている。具体的には、種粒子に対して下側から気体を供給することによって種粒子の流動層(又は、流動層及び噴流層)を形成し、この層中の種粒子に対して被覆用物質(上記の固体物質)を含む溶液を噴霧することによって液滴状の溶液を付着させ、同時に乾燥させる。その結果、種粒子の表面が溶液中の被覆用物質で被覆され、種粒子よりも大きなサイズの粒子が得られる。
【0003】
特許文献1には、流動層/噴流層方式の造粒装置を用いた粒子の加工方法が記載されている。その
図1には、多孔板である底床6から流動床用気体(流動層を形成する為の気体)を均一に供給することによって加工粒子の流動床用の空間7(流動層)を形成し、同時に供給管12から気体(噴流層を形成する為の気体)を噴出し、ノズル13から被覆用物質を含む溶液を噴霧することによって加工粒子の上昇落下空間8(噴流層)を形成した状態が記載されている。そして、このノズル13から噴霧される液滴状の被覆用物質が加工粒子(種粒子)の表面に付着して、肥大化した粒子が得られる。
【0004】
流動層方式、又は、流動層/噴流層方式の造粒装置で得た粒子は、通常、広い粒度分布を有する。したがって、この粒子を、製品サイズの粒子(目的とする粒径を有する粒子)と、製品サイズを超える大きな粒子と、製品サイズ未満の小さな粒子に分級する必要がある。そして、製品サイズの粒子を回収する。一方、大きな粒子は破砕してサイズを小さくし、これを種粒子として造粒装置に供給し、リサイクルする。小さな粒子は、そのまま種粒子として造粒装置に供給し、リサイクルする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上説明した方法においては、種粒子の温度を、乾燥を促進できるような適切な温度に維持することが望ましい。したがって従来の一般的な方法においては、例えば、流動層を形成する為の気体(又は、流動層を形成する為の気体及び噴流層を形成する為の気体)を加熱して、この気体によって被覆による造粒を行う領域を常温より高い温度の雰囲気に維持しようとしている。
【0007】
一方、分級工程などの各工程を経た後に種粒子としてリサイクルされる粒子は、その各工程において放熱して温度が低下する。したがって、造粒装置に供給される種粒子の温度は、通常、造粒装置内の温度よりも低い。
【0008】
さらに造粒装置に供給する種粒子は、供給の前に外気に晒されて吸湿し、その含水率が高くなる場合がある。また、季節の気温差や昼夜の気温差によって温度が変動する場合もある。
【0009】
以上説明したとおり、造粒装置に供給する種粒子の温度及び含水率は様々な原因によって変化する。そして本発明者らは、温度が低い又は含水率が高い種粒子を造粒装置に供給すると、造粒装置内(特に種粒子の供給口付近)の温度が部分的に低下し、乾燥が不十分又は不均一となるので製品品質が低下してしまう点に着目し、これを改善する必要があると考えた。
【0010】
すなわち本発明の目的は、所望のレベルまで均一に乾燥され且つ所望の粒径を有する粒子を安定して造粒できる粒子の加工方法及び加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成する為に鋭意検討した結果、造粒工程の前に予備加熱用気体及び流動層を利用した種粒子調節工程を追加し、この種粒子調節工程において種粒子の予備加熱を行うことが非常に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は、種粒子に対して下側から予備加熱用気体を供給することによって、該種粒子の流動層を形成し且つ該流動層中の種粒子を予備加熱する種粒子調節工程(sc)、及び、
前記種粒子調節工程(sc)で加熱された種粒子の表面に、高温の雰囲気下で、被覆用物質を被覆することによって造粒する造粒工程(gr)
を有する粒子の加工方法である。
【0013】
また本発明は、種粒子に対して下側から予備加熱用気体を供給することによって、該種粒子の流動層を形成し且つ該流動層中の種粒子を予備加熱する種粒子調節装置(SC)、及び、
前記種粒子調節装置(SC)で加熱された種粒子の表面に、高温の雰囲気下で、被覆用物質を被覆することによって造粒する造粒装置(GR)
を有する粒子の加工装置である。
【0014】
また本発明は、種粒子に対して下側から予備加熱用気体を供給することによって、該種粒子の流動層を形成し且つ該流動層中の種粒子を予備加熱する種粒子調節領域(SCZ)、及び、
前記種粒子調節領域(SCZ)で加熱された種粒子の表面に、高温の雰囲気下で、被覆用物質を被覆することによって造粒する造粒領域(GRZ)
を含む種粒子調節及び造粒装置(SC/GR)を有する粒子の加工装置である。
【0015】
また本発明は、種粒子の表面に、高温の雰囲気下で、被覆用物質を被覆することによって造粒する造粒装置(GR)を有する既存の粒子の加工装置の改良方法であって、
種粒子に対して下側から予備加熱用気体を供給することによって該種粒子の流動層を形成し且つ該流動層中の種粒子を予備加熱する種粒子調節装置(SC)を、前記既存の粒子の加工装置に追加し、該造粒装置(GR)において、該種粒子調節装置(SC)で加熱した後の種粒子に対して、高温の雰囲気下で、被覆用物質を被覆することによって造粒する、あるいは、
種粒子に対して下側から予備加熱用気体を供給することによって該種粒子の流動層を形成し且つ該流動層中の種粒子を予備加熱する種粒子調節領域(SCZ)、及び、該種粒子調節領域(SCZ)で加熱された種粒子の表面に、高温の雰囲気下で、被覆用物質を被覆することによって造粒する造粒領域(GRZ)を含む種粒子調節及び造粒装置(SC/GR)を、前記造粒装置(GR)と交換し、該造粒領域(GRZ)において、該種粒子調節領域(SCZ)で加熱した後の種粒子に対して、高温の雰囲気下で、被覆用物質を被覆することによって造粒する
ことを特徴とする既存の粒子の加工装置の改良方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の粒子の加工方法は、種粒子調節工程(sc)を有することを特徴とする。この種粒子調節工程(sc)においては、予備加熱用気体によって種粒子を予備加熱する。したがって、種粒子の温度が高くなる。この種粒子を使用して造粒を行えば、造粒装置(GR)内、特に種粒子の供給口付近の温度の均一性及び乾燥の均一性の低下を抑制できる。
【0017】
また、この種粒子調節工程(sc)においては、予備加熱用気体を供給することによって種粒子の流動層を形成する。その結果、流動層中の種粒子がこの予備加熱用気体によって加熱される。このような流動層を利用した加熱方法は、他の加熱方法と比較して種粒子の温度の均一性の点で優れている。したがって、造粒装置(GR)内の温度の均一性及び乾燥の均一性の低下をさらに効果的に抑制できる。
【0018】
以上説明したとおり、本発明の粒子の加工方法は種粒子調節工程(sc)を有するので、造粒装置(GR)内の温度の均一性及び乾燥の均一性の低下を抑制できる。したがって、本発明によれば、所望のレベルまで均一に乾燥され且つ所望の粒径を有する粒子を安定して造粒できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の方法及び装置の一実施形態を示すプロセスフロー図である。
【
図2】本発明の方法及び装置の他の一実施形態を示すプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<造粒工程(gr)>
本発明において、造粒工程(gr)は、種粒子調節工程(sc)で加熱された種粒子の表面に、高温の雰囲気下で、被覆用物質を被覆することによって造粒する工程である。また、造粒装置(GR)は、種粒子調節装置(SC)で加熱された種粒子の表面に、高温の雰囲気下で、被覆用物質を被覆することによって造粒する装置である。
【0021】
造粒工程(gr)における造粒方法は特に限定されず、種粒子の表面に、高温の雰囲気下で、被覆用物質を被覆する方法であれば良い。例えば、種粒子に対して被覆用物質を含む被覆用溶液を噴霧することによって、種粒子の表面に被覆用物質を被覆する方法を用いることができる。この方法によれば、種粒子の表面に液滴状の溶液が付着し且つ乾燥され、種粒子よりも大きな粒子を造粒できる。
【0022】
このような造粒方法としては、被覆状態の均一性及び乾燥の均一性の点から、流動層を形成して造粒を行う流動層方式による造粒方法、及び、流動層及び噴流層を形成して造粒を行う流動層/噴流層方式による造粒方法が好ましく、特に流動層/噴流層方式による造粒方法がより好ましい。ただし、造粒方法はこれらに限定されず、他の方法を用いることも可能である。他の方法としては、例えば、転動造粒方式又は撹拌造粒方式による造粒方法が挙げられる。
【0023】
造粒工程(gr)において、流動層方式、又は、流動層/噴流層方式による造粒を行う場合は、種粒子に対して下側から加熱された流動化気体を供給することによって種粒子の流動層を形成する。「流動層」とは、浮遊し且つ流動する種粒子を含む層状の空間を意味する。「流動化気体」とは、そのような流動層を形成する為に種粒子に対して下側から多孔板などの部材を介してほぼ均等に供給する気体を意味する。さらに、造粒工程(gr)における「種粒子」とは、造粒前の種粒子(供給時点の何も被覆されていない種粒子)だけでなく、造粒途中の種粒子(被覆用物質である程度被覆された種粒子)も包含する意味である。
【0024】
流動層方式による造粒を行う場合は、流動層中の種粒子に対して被覆用物質を含む溶液を噴霧することによって、種粒子の表面に被覆用物質を被覆する。この被覆用物質を含む溶液は、流動化気体の供給箇所とは異なる箇所から噴霧しても良いし、流動化気体と共に噴霧しても良い。特に、流動化気体と共に噴霧することが好ましい。
【0025】
一方、流動層/噴流層方式による造粒を行う場合は、流動層だけでなく、種粒子に対して加熱された噴流化気体を下側から噴出することによって噴流層も形成する。「噴流層」とは、浮遊し且つ上下に流動する種粒子を含む突出状の空間を意味する。「噴流化気体」とは、そのような噴流層を形成する為に種粒子に対して下側から部分的に噴出する気体を意味する。流動層/噴流層方式による造粒を行う場合、被覆用物質を含む溶液は、噴流化気体と共に噴霧することが好ましい。
【0026】
造粒工程(gr)においては、高温の雰囲気下で造粒を行うことによって、被覆状態及び乾燥状態を調整できる。「高温の雰囲気下で造粒を行う」とは、常温(大気温度)よりも高い温度の気体の下で造粒を行うことを意味する。例えば
図1に示す実施形態においては、造粒装置(GR)内の少なくとも造粒を行う領域の気体の温度が常温よりも高い。粒子の温度も、この雰囲気と同程度の温度になる。この雰囲気を形成する気体は、代表的には空気である。ただし、本発明はこれに限定されず、窒素などの空気以外の気体も使用可能である。
【0027】
造粒工程(gr)において上記の雰囲気を形成する気体は、例えば、流動層方式により造粒を行う場合は流動層を形成する為に供給した気体を含む気体であり、流動層/噴流層方式による造粒を行う場合は流動層を形成する為に供給した気体及び噴流層を形成する為に供給した気体を含む気体である。例えば、このような目的で供給する気体をあらかじめ適度に加熱してから供給することにより、造粒を行う領域の気体の温度を調整できる。造粒を行う雰囲気の具体的な温度は特に限定されず、目的とする粒状製品の種類に応じて適宜決定すれば良い。ただし、好ましくは80℃~140℃である。例えば尿素粒子などの粒子を製造する場合は、より好ましくは95℃~120℃、特に好ましくは110℃~120℃である。また、例えば尿素粒子などの粒子を製造する場合、被覆用物質を含む溶液の温度は、好ましくは125℃~145℃である。
【0028】
流動化気体及び噴流化気体の供給又は噴出圧力、供給又は噴出速度及び供給又は噴出流量は、使用する種粒子及び造粒後の粒子の粒径、重さ及び量などの諸条件に応じて、流動層及び噴流層を適切に形成できるように適宜調整すれば良い。また、被覆用物質を含む溶液の噴霧圧力、噴霧速度及び噴霧流量も、使用する種粒子及び造粒後の粒子の上記諸条件に応じて、適宜調整すれば良い。
【0029】
造粒工程(gr)に使用する被覆用物質を含む溶液において、被覆用物質の濃度は、良好な被覆状態となるように適宜調整すれば良い。また、この溶液を造粒工程(gr)に使用する前に、蒸発工程(ev)において溶液中の液体の一部を蒸発させて被覆用物質の濃度を高めても良い。造粒工程(gr)に使用する溶液における被覆用物質の濃度は、使用する種粒子及び造粒後の粒子の材料の種類及び粒径などの諸条件に応じて適宜調整すれば良い。例えば尿素粒子などの粒子を製造する場合、溶液における被覆用物質の濃度は、好ましくは94質量%~98.5質量%である。溶媒は水であることが好ましい。ただし、本発明はこれに限定されない。
【0030】
造粒工程(gr)において得られる粒子の平均粒径は、好ましくは0.4mm~10mm、より好ましくは1mm~6mmである。この平均粒径は、JIS Z 8815に準ずるふるい分け試験方法によって測定した値である。例えば、このような平均粒径を有する粒子を分級することによって、製品サイズの粒子(目的とする粒径を有する粒子)を得ることができる。
【0031】
造粒工程(gr)において得られる粒子の含水率は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下である。この含水率は、カールフィッシャー滴定法によって測定した値である。このような低い含水率の粒子は、取り扱い性が優れている。
【0032】
造粒工程(gr)において得た粒子は、粒子分級工程(pc)において分級し、製品サイズの粒子(目的とする粒径を有する粒子)を回収することが好ましい。粒子分級工程(pc)については、後に詳述する。
【0033】
造粒工程(gr)から排出される気体中には、通常、少量のダストが混在している。造粒工程(gr)で排出されるダストを含む気体は、例えばガス洗浄工程(gw)において洗浄し、ダストを除去し、洗浄後の気体を排気し、一方、除去したダストは被覆用物質を含む溶液(例えば、溶液タンク中の溶液)に戻してリサイクルすることが好ましい。
【0034】
図1は、本発明の方法及び装置の一実施形態を示すプロセスフロー図である。
【0035】
図1においては、種粒子調節装置(SC)で加熱された種粒子を、ライン1を介して流動層/噴流層方式の造粒装置(GR)に供給する。また、溶液タンク(ST)からの溶液(被覆用物質を含む溶液)を、ライン2、蒸発ユニット(EV)及びライン3を介して造粒装置(GR)に供給する。この蒸発ユニット(EV)においては、溶液中の液体の一部を蒸発させて被覆用物質の濃度を高めている。また、噴流化気体をライン4から造粒装置(GR)に供給し、流動化気体をライン5から造粒装置(GR)に供給し、これにより流動層及び噴流層を形成する。さらに、造粒装置(GR)内においては、噴流化気体と共に被覆用物質を含む溶液を噴霧することによって、種粒子の表面に被覆用物質を被覆して造粒する。造粒後の粒子は、ライン6を介して粒子分級装置(PC)に供給する。
【0036】
図1において、造粒装置(GR)から排出されるダストを含む気体は、ライン7を介してスクラバーなどの装置を備えたガス洗浄装置(GW)に供給する。このガス洗浄装置(GW)において、気体を洗浄してダストを除去し、洗浄後の気体をライン8から排気する。また、除去したダストは、溶媒に溶解されて溶液として、ライン9を介して溶液タンク(ST)へ供給し、リサイクルする。
【0037】
<粒子分級工程(pc)及び破砕工程(cr)>
本発明の方法は、造粒工程(gr)において造粒した粒子を分級する粒子分級工程(pc)を有し、この分級によって得た製品サイズの粒子(目的とする粒径を有する粒子)を回収することが好ましい。また、この分級によって得た製品サイズ未満の粒子は、種粒子としてリサイクルすることも好ましい。さらに本発明の方法は、粒子分級工程(pc)の分級によって得た製品サイズを超える大きな粒子を破砕する破砕工程(cr)を有し、この破砕によってサイズが小さくなった粒子を種粒子としてリサイクルすることも好ましい。
【0038】
本発明の装置は、造粒装置(GR)において造粒した粒子を分級する粒子分級装置(PC)を有し、この分級によって得た製品サイズの粒子を回収することが好ましい。また、この分級によって得た製品サイズ未満の粒子は、種粒子としてリサイクルすることも好ましい。さらに本発明の装置は、粒子分級装置(PC)の分級によって得た製品サイズを超える大きな粒子を破砕する破砕装置(CR)を有し、この破砕によってサイズが小さくなった粒子を種粒子としてリサイクルすることも好ましい。
【0039】
以上の各説明において「種粒子としてリサイクルする」とは、具体的には、種粒子調節や造粒において種粒子として使用することを意味する。
【0040】
粒子分級工程(pc)における分級方法としては、例えば、スクリーン又は篩を使用して、造粒工程(gr)において造粒した粒子を、製品サイズの粒子と、製品サイズを超える大きな粒子と、製品サイズ未満の小さな粒子に分級する方法がある。ただし、本発明はこれに限定されない。
【0041】
図1においては、造粒装置(GR)において造粒した粒子を、ライン6を介して粒子分級装置(PC)に供給する。粒子分級装置(PC)の内部には、2つのスクリーン(S1)及び(S2)が設けられている。まず、製品サイズを超える大きな粒子はスクリーン(S1)を通過せず、それ以外の粒子は通過する。次に、製品サイズの粒子はスクリーン(S2)を通過せず、製品サイズ未満の小さな粒子は通過する。そして、製品サイズを超える粒子は、ライン10を介して破砕装置(CR)に供給する。製品サイズの粒子は、ライン11を介して回収する。製品サイズ未満の粒子は、ライン12及び14を介して種粒子調節装置(SC)に供給する。また、破砕装置(CR)において所望の粒径になるまで破砕した後の粒子は、ライン13及び14を介して種粒子調節装置(SC)に供給する。
【0042】
<種粒子調節工程(sc)>
本発明において、種粒子調節工程(sc)は、種粒子に対して下側から予備加熱用気体を供給することによって、該種粒子の流動層を形成し且つ該流動層中の種粒子を予備加熱する工程である。また、種粒子調節装置(SC)は、種粒子に対して下側から予備加熱用気体を供給することによって、該種粒子の流動層を形成し且つ該流動層中の種粒子を予備加熱する装置である。
【0043】
種粒子調節工程(sc)で予備加熱する種粒子としては、例えば、先に述べた粒子分級工程(pc)の分級によって得た製品サイズ未満の粒子、並びに、先に述べた粒子分級工程(pc)の分級によって得た製品サイズを超える粒子を破砕工程(cr)で破砕して得た粒子を使用できる。ただし、本発明はこれらに限定されない。粒子分級工程(pc)を経ていない粒子、例えば、特開平11-137988号公報において造粒器に供給される核のように、あらかじめ用意しておいた種粒子も使用できる。
【0044】
種粒子調節工程(sc)で予備加熱する種粒子の平均粒径は、好ましくは0.4mm~3mm、より好ましくは1mm~2mmである。この平均粒径は、先に述べた方法によって測定した値である。
【0045】
種粒子調節工程(sc)においては、種粒子に対して下側から予備加熱用気体を供給することによって、その種粒子の流動層を形成する。すなわち、予備加熱用気体を流動化気体としても機能させる。この予備加熱用気体は、代表的には空気である。ただし、本発明はこれに限定されず、窒素などの空気以外の気体も使用可能である。
【0046】
種粒子調節工程(sc)における予備加熱用気体の温度は、好ましくは80℃~140℃、より好ましくは90℃~120℃である。この予備加熱用気体は、造粒装置(GR)内(特に種粒子の供給口付近)の温度の均一性及び乾燥の均一性の低下を抑制する為の予備加熱手段である。したがって、予備加熱用気体の温度は、造粒工程(gr)における先に述べた雰囲気の温度と同じ又は近似していることが好ましい。
【0047】
種粒子調節工程(sc)における予備加熱用気体の供給圧力、供給速度及び供給流量は、使用する種粒子の粒径、重さ及び量などの諸条件に応じて、流動層を適切に形成できるように適宜調整すれば良い。
【0048】
以上説明したように、本発明においては、造粒工程(gr)に使用する前の種粒子をあらかじめ種粒子調節工程(sc)において予備加熱するので、造粒装置(GR)内の温度の均一性及び乾燥の均一性の低下を抑制できる。さらに、種粒子調節工程(sc)で加熱された種粒子は、連続工程の容易性及び温度の安定性の点から、装置を直接接続して粒子を重力流動にて送る方法で造粒工程(gr)に供給することが好ましい。
【0049】
図1においては、破砕装置(CR)からの破砕後の粒子をライン13及び14を介して種粒子調節装置(SC)に供給し、また粒子分級装置(PC)からの製品サイズ未満の粒子をライン12及び14を介して種粒子調節装置(SC)に供給し、種粒子として使用する。
【0050】
図1においては、ライン15を介して気体を加熱器(H)に供給し、加熱器(H)の内部配管18内に流れるスチームの熱によって気体の温度を上げる。そして、この加熱器(H)で加熱された気体を、ライン16を介して種粒子調節装置(SC)に予備加熱用気体として供給する。この予備加熱用気体を種粒子に対して下側から供給することによって、種粒子の流動層を形成し且つ流動層中の種粒子を予備加熱する。予備加熱した後の種粒子は、ライン1を介して造粒装置(GR)に供給する。
【0051】
図1においては、種粒子調節装置(SC)の上部からダストを含む気体を排出し、ライン17を介してスクラバーなどの装置を備えたガス洗浄装置(GW)に供給する。先に説明したように、このガス洗浄装置(GW)においては、気体を洗浄してダストを除去し、洗浄後の気体をライン8から排気する。また、除去したダストは、溶媒に溶解されて溶液となった状態で、ライン9を介して溶液タンク(ST)へ供給し、リサイクルする。
【0052】
以上の説明においては、
図1に示すように種粒子調節装置(SC)と造粒装置(GR)が別の装置である場合について述べた。ただし、本発明はこれに限定されない。例えば
図2に示すように、種粒子調節領域(SCZ)及び造粒領域(GRZ)を含む一つの装置、すなわち種粒子調節及び造粒装置(SC/GR)を用いても良い。
【0053】
図2においては、種粒子調節及び造粒装置(SC/GR)内で、隔壁19で仕切られた種粒子調節領域(SCZ)及び造粒領域(GRZ)が、各々、先に説明した種粒子調節装置(SC)及び造粒装置(GR)と同じ機能を奏する。種粒子調節領域(SCZ)で予備加熱された粒子は重力流動による落下によって造粒領域(GRZ)に供給される。なお、
図2においては
図1との比較の便宜上、両領域を横並びに記載したが、重力流動による落下によって粒子を造粒領域(GRZ)に供給する場合は、種粒子調節及び造粒装置(SC/GR)内の種粒子調節領域(SCZ)は造粒領域(GRZ)よりも上側に位置することが好ましい。
【0054】
<既存の粒子の加工装置の改良方法>
本発明の加工装置は、既存の粒子の加工装置の改良を行うことによって実現しても良い。
【0055】
例えば、造粒装置(GR)を有する既存の粒子の加工装置に種粒子調節装置(SC)を追加する改良を行うことによって、本発明の粒子の加工装置(
図1参照)を実現できる。この場合は、造粒装置(GR)において、種粒子調節装置(SC)で加熱した後の種粒子に対して、高温の雰囲気下で、被覆用物質を被覆することによって造粒する。また例えば、既存の粒子の加工装置における造粒装置(GR)を、種粒子調節及び造粒装置(SC/GR)と交換する改良を行うことによって、本発明の粒子の加工装置(
図2参照)を実現できる。この場合は、造粒領域(GRZ)において、種粒子調節領域(SCZ)で加熱した後の種粒子に対して、高温の雰囲気下で、被覆用物質を被覆することによって造粒する。
【0056】
<粒状製品>
本発明によって得られる粒子は、例えば、化学製品、薬品、食品などの様々な粒状製品として有用である。特に、種粒子を用いた造粒が工業的に行われている粒状製品の製造に対して、本発明を適用することが好ましい。そのような粒状製品の好ましい具体例としては、特に尿素粒子が挙げられる。ただし、本発明はこれに限定されない。例えば硝酸アンモニウム粒子、硫酸アンモニウム粒子などの尿素粒子以外の粒状製品の製造に対しても、本発明は適用できる。
【0057】
本発明によって尿素粒子を得る場合、種粒子は尿素粒子であり、被覆用物質を含む溶液は尿素水溶液である。粒状製品としての尿素粒子の平均粒径は、好ましくは1mm~5mm、より好ましくは2mm~4mmである。尿素粒子の含水率は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下である。この平均粒径及び含水率は、先に述べた方法によって測定した値である。このような平均粒径及び含水率の尿素粒子は、肥料などの用途に有用である。
【0058】
本発明においては、以上説明した尿素粒子のように、種粒子と被覆用物質が同じ材料であることが好ましい。ただし、本発明はこれに限定されない。目的とする粒状製品の種類によっては、種粒子と被覆用物質に異なる材料を用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、所望のレベルまで均一に乾燥され且つ所望の粒径を有する粒子を安定して造粒できる粒子の加工方法及び加工装置として有用である。
【符号の説明】
【0060】
SC 種粒子調節装置
GR 造粒装置
ST 溶液タンク
EV 蒸発ユニット
GW ガス洗浄装置
PC 粒子分級装置
S1、S2 スクリーン
CR 破砕装置
H 加熱器
1 ライン(種粒子)
2 ライン(溶液)
3 ライン(溶液)
4 ライン(噴流化気体)
5 ライン(流動化気体)
6 ライン(粒子)
7 ライン(排気)
8 ライン(洗浄後の気体)
9 ライン(ダストが溶解した溶液)
10 ライン(製品サイズを超える粒子)
11 ライン(製品サイズの粒子)
12 ライン(製品サイズ未満の粒子)
13 ライン(破砕後の粒子)
14 ライン(製品サイズ未満の粒子及び破砕後の粒子)
15 ライン(気体)
16 ライン(予備加熱用気体)
17 ライン(ダストを含む気体)
18 内部配管(スチーム)
19 隔壁