(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029823
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】基板の製造方法及びその製造方法により製造された基板
(51)【国際特許分類】
C03C 17/42 20060101AFI20240229BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20240229BHJP
B32B 37/02 20060101ALI20240229BHJP
B32B 17/00 20060101ALI20240229BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20240229BHJP
G02B 1/11 20150101ALI20240229BHJP
【FI】
C03C17/42
C03C21/00 101
B32B37/02
B32B17/00
G02B5/02 B
G02B1/11
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132220
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】300075751
【氏名又は名称】株式会社オプトラン
(74)【代理人】
【識別番号】100133411
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 龍郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067677
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 彰司
(72)【発明者】
【氏名】草島 子栄
(72)【発明者】
【氏名】石川 大貴
【テーマコード(参考)】
2H042
2K009
4F100
4G059
【Fターム(参考)】
2H042BA03
2H042BA12
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4G059HB14
(57)【要約】
【課題】基板の品質を損なうことなく生産性の向上を図ることが可能な基板の製造方法及びその製造方法により製造される基板の提供。
【解決手段】基板1は、透明基体10と、透明基体上に設けられる防眩層20と、防眩層20上に設けられる反射防止層30とを備えている。基板1の製造方法は、透明基体10上に防眩層20用の薄膜を形成する成膜工程と、成膜工程を行った後、エッチング処理を施すことにより薄膜の表面に凹凸パターン21を形成して、防眩層20を生成する防眩層生成工程と、防眩層20上に反射防止層30を形成する反射防止層形成工程とを含んでいる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基体と、該透明基体上に設けられる機能層とを備えた基板の製造方法であって、
前記透明基体上に前記機能層用の薄膜を形成する成膜工程と、
前記成膜工程を行った後、エッチング処理を施すことにより前記薄膜の表面に凹凸パターンを形成して、前記機能層を生成する機能層生成工程と、
を含む、基板の製造方法。
【請求項2】
前記基板は、前記機能層上に設けられる第2機能層を更に備え、
前記製造方法は、前記機能層上に前記第2機能層を形成する第2機能層形成工程を更に含む、請求項1に記載の基板の製造方法。
【請求項3】
前記透明基体は、化学強化ガラスである、請求項1に記載の基板の製造方法。
【請求項4】
前記成膜工程は、金属成分が非含有の金属成分非含有材料を用いて前記薄膜を形成する工程を含む、請求項1に記載の基板の製造方法。
【請求項5】
前記金属成分非含有材料は、シリカである、請求項3に記載の基板の製造方法。
【請求項6】
前記成膜工程は、前記透明基体と同一の材料を用いて前記薄膜を形成する工程を含む、請求項1に記載の基板の製造方法。
【請求項7】
前記第2機能層形成工程は、前記凹凸パターンの変形を阻止可能な膜厚で前記第2機能層を形成する工程を含む、請求項2に記載の基板の製造方法。
【請求項8】
前記第2機能層形成工程は、複数の層からなる前記第2機能層を形成する工程を含む、請求項7に記載の基板の製造方法。
【請求項9】
前記機能層は、防眩層である、請求項1~8の何れか1項に記載の基板の製造方法。
【請求項10】
前記第2機能層は、反射防止層である、請求項2、7及び8の何れか1項に記載の基板の製造方法。
【請求項11】
請求項1~8の何れか1項に記載の製造方法により製造される基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の製造方法及びその製造方法により製造される基板に関し、特に、透明基体と、透明基体上に設けられる機能層とを備えた基板の製造方法及びその製造方法により製造される基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像表示装置(例えば、液晶ディスプレイ)の表示面を構成する基板として、ガラス基体上に防眩層(機能層)が設けられたものが知られている。
このような基板によれば、太陽光や室内照明光等(以下、「外来光」という)の表示面への映り込み等を防止することが可能である。
【0003】
防眩層を備えた基板は、例えば、ガラス基体の表層にエッチング処理を施して防眩層を生成することにより製造される(特許文献1参照)。
【0004】
近年、基板全体の耐衝撃性や対傷性等を向上させる観点から、ガラス基体を構成する部材として、化学強化ガラスが広く採用されている。
【0005】
化学強化ガラスを製造する一般的な手法としては、例えば、イオン交換法が知られている。
このようなイオン交換法は、通常、溶融塩(例えば、カリウム塩)等の処理液にガラスを接触させることにより行われる。これにより、ガラスの表層側には、ガラス内のアルカリイオン(例えば、LiイオンやNaイオン)が、それよりもイオン半径の大きい、処理液中のアルカリイオン(例えば、Kイオン)に入れ替わるため、イオン半径の違いによる「圧縮応力」が生じるようになっている。一方、ガラスの内層側には、表層に生じる「圧縮応力」との均衡を取るための「引張応力」が生じるため、その結果、ガラスの強度を向上させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法では、防眩層を形成するために、化学強化ガラス(ガラス基体)の表層を部分的に除去(エッチング処理)すると、その除去量等によっては「圧縮応力」と「引張応力」との均衡が崩れるため、除去した部分に「引張応力」が集中しがちである。
このため、特許文献1に記載の製造方法では、ガラス基体に反りが生じる可能性が多分にあり、かかる場合、基板の品質が低下するといった問題があった。
【0008】
また、ガラス基体を構成するガラスは、一般に、原料を高温(例えば、1500℃)で溶かした後、急冷することによって作製される。このようにして作製されたガラスは、原子(例えば、SiやO)間の結合が強く安定しているため、その表面硬度が比較的高く、表層の一部を除去することが容易ではない。
すなわち、特許文献1に記載の製造方法では、ガラス基体の表層を直接エッジングすることにより、防眩層を形成しているため、その作業が困難になる場合が少なくなく、かかる場合、基板の生産性が低下するといった問題を招きやすい。
【0009】
さらに、ガラスは、一般に、金属成分(例えば、Al)を含んでいるため、表層をエッチング等した際に、多量のパーティクルが発生しやすい性質を有するものである。
このため、特許文献1に記載の製造方法では、防眩層を形成した後の製造過程等において、異物(パーティクル)が混入するおそれがあり、かかる場合、歩留まりが低下するなどの問題が生じる。
【0010】
このように、特許文献1に記載の基板の製造方法は、基板の品質や生産性の面において、十分とはいい難く、未だ改善の余地があるものといえる。なお、このような問題は、近年の画像表示装置の大型化、すなわち、基板面積の増大化に伴って、顕著になっていくことが想定される。
【0011】
本発明は、このような課題を解消するためになされたものであり、基板の品質を損なうことなく生産性を向上させることが可能な基板の製造方法及びその製造方法により製造される基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、透明基体と、該透明基体上に設けられる機能層とを備えた基板の製造方法であって、前記透明基体上に前記機能層用の薄膜を形成する成膜工程と、前記成膜工程を行った後、エッチング処理を施すことにより前記薄膜の表面に凹凸パターンを形成して、前記機能層を生成する機能層生成工程と、を含む、ことにより解決される。
【0013】
また、前記製造方法に係る発明においては、前記基板は、前記機能層上に設けられる第2機能層を更に備え、前記製造方法は、前記機能層上に前記第2機能層を形成する第2機能層形成工程を更に含む、と好適である。
【0014】
さらに、前記製造方法に係る発明においては、前記透明基体は、化学強化ガラスである、と好適である。
【0015】
また、前記製造方法に係る発明においては、前記成膜工程は、金属成分が非含有の金属成分非含有材料を用いて前記薄膜を形成する工程を含む、と好適である。
この場合、前記金属成分非含有材料は、シリカである、とさらに好適である。
【0016】
さらに、前記製造方法に係る発明においては、前記成膜工程は、前記透明基体と同一の材料を用いて前記薄膜を形成する工程を含む、と好適である。
【0017】
また、前記製造方法に係る発明においては、前記第2機能層形成工程は、前記凹凸パターンの変形を阻止可能な膜厚で前記第2機能層を形成する工程を含む、と好適である。
この場合、前記反射防止層形成工程は、前記第2機能層形成工程は、複数の層からなる前記第2機能層を形成する工程を含む、とさらに好適である。
【0018】
さらに、前記製造方法に係る発明においては、前記機能層は、防眩層である、と好適である。
【0019】
また、前記製造方法に係る発明においては、前記第2機能層は、反射防止層である、と好適である。
【0020】
、上記課題は、前記製造方法により製造される基板であることにより解決される。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明に係る基板の製造方法及びその製造方法により製造される基板によれば、比較的簡易な構成でありながらも、基板の品質を損なうことなく生産性を確実に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明に係る基板の一実施形態を示す断面模式図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る基板の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図2の製造方法を説明するための断面模式図であり、(a)は透明基体を示す図、(b)は透明基体上に薄膜を形成した状態を示す図、(c)は薄膜に凹凸パターンを形成して防眩層を生成した状態を示す図、(d)は防眩層上に反射防止層を形成した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の基板及びその製造方法を、その好ましい一実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係る基板1を説明するための断面模式図、
図2は基板1の製造方法を説明するためのフローチャート、
図3は基板1の製造過程を説明するための断面模式図である。
【0024】
<基板1の構成>
本実施形態に係る基板1は、ガラス基板であり、例えば、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display)や有機ELディスプレイ(Organic ElectroLuminescence Display)の画像表示装置の表示面を構成する部材として用いることが可能なものである。
図1に示すように、基板1は、板状の透明基体10と、防眩層20と、反射防止層30とを含んで構成されている。なお、上記基板1と、透明基体10と、防眩層20と、反射防止層30とが、それぞれ、特許請求の範囲に記載の「基板」と、「透明基体」と、「機能層」と、「第2機能層」とに該当する。
【0025】
(透明基体10)
本実施形態に係る透明基体10は、化学強化ガラスであり、外面を構成する表層11と、表層11に覆われる内層12とを有している。透明基体10は、ガラスを強化する公知の手法、例えば、イオン交換法を用いて作製することが可能である。
【0026】
ここで、イオン交換法を用いた化学強化ガラスの作成方法について説明する。
イオン交換法を用いた強化ガラスの作製は、素材としてのガラス(以下、「ガラス素板」という)を所定の処理液に浸漬することにより行われる。処理液としては、例えば、溶融塩(例えば、カリウム塩)を用いることが可能である。
ガラス素板を処理液に浸漬すると、表層11内のアルカリイオン(例えば、LiイオンやNaイオン)が、それよりもイオン半径が大きい、処理液中のアルカリイオン(例えば、Kイオン)に入れ替わるようになっている。その結果、表層11においては、イオン半径の違いによる「圧縮応力」が生じると共に、内層12においては、表層11に生じる「圧縮応力」との均衡を取るための「引張応力」が生じることとなる。
これにより、ガラス素板は、表層11に加わる「圧縮応力」と、内層12に加わる「引張応力」とによって、その強度が向上されるようになっている。
【0027】
ガラス素板は、板形状を有し、平面視において、例えば、矩形状に形成されている。平面視におけるガラス素板の形状が矩形状である場合、長辺の長さを、生産性等を向上させる観点から、例えば、20mm以上3000mm以下とすることが可能である。なお、ガラス素板の平面視における形状は、矩形状に形成する場合に限られず、他の形状、例えば、正方形、円形に形成することができる。
ガラス素板の板厚は、基板1の使用用途(例えば、携帯端末)に応じて適宜設定することができるが、強度を確保等する観点から、0.5mm以上とすることが好ましい。
【0028】
ガラス素板としては、組成中に、SiO2(シリカ)やAl2O3(酸化アルミニウム)等の成分を含有する公知のガラス、例えば、ソーダライムガラス、混合アルカリ系ガラス、マイクロシートガラス、バイコールガラスなどを用いることができる。なお、透明基体10は、ガラス素板を予め所望のサイズに切断した後に強化ガラス化してもよく、また、強化ガラス化した後に切断することも可能である。また、本実施形態では、透明基体10として、化学強化ガラスを用いたが、ガラス素板そのものを用いても構わない。
【0029】
(防眩層20)
防眩層20は、外来光を散乱又は拡散させるための層である。
本実施形態に係る防眩層20は、透明基体10の一面(光の入射面側の面、以下、「主面」という)上に積層(形成)され、その表面に凹凸パターン21を形成することによって、外来光を散乱又は拡散させることが可能になっている。
詳しくは後述するが、防眩層20は、透明基体10の主面に薄膜を形成(成膜)した後、この薄膜の表面にエッチング処理を施すことにより形成されるようになっている。なお、上記凹凸パターン21が特許請求の範囲に記載の「凹凸パターン」に該当する。
【0030】
防眩層20を構成する薄膜は、透明基体10(ガラス素板)と同一の材料、または、金属成分が非含有の材料を用いて形成することが可能である。例えば、前者の材料として、組成中、シリカ(SiO2)や酸化アルミニウム(Al2O3)等の成分を含有する材料を用いることができ、後者の材料として、シリカ(SiO2)を用いることができる。この理由については後述する。なお、上記金属成分が非含有の材料が特許請求の範囲に記載の「金属成分非含有材料」に該当する。
【0031】
防眩層20の表面に形成される凹凸パターン21は、透明基体10に入射する外来光を良好に散乱又は拡散させる観点から、凹凸高さH1や、凹凸高さH1の半値(H1/2)における凹幅W1及び凸幅W2を、5μm以上20μm以下の範囲に設定することが好ましい(
図4参照)。凹凸パターン21を形成する手法については後述する。
【0032】
(反射防止層30)
反射防止層30は、外来光の鏡面反射による背景の映り込みを防止する層である。
本実施形態に係る反射防止層30は、防眩層20の凹凸パターン21上に積層(形成)され、基板1の使用用途に応じて、公知の反射防止層の中から適宜選択して用いることが可能である。
反射防止層30の膜厚は、基板1の反射防止層30側の面に荷重が作用した状態(例えば、人力で押圧した状態)で、凹凸パターン21を圧潰しない膜厚を有している。このような膜厚は、例えば、凹凸パターン21の凹凸高さH1や、凹幅W1及び凸幅W2を、5μm以上20μm以下の範囲に設定した場合(
図4参照)、0.05μm以上5μm以下とすることが好ましい(
図1の「膜厚H2」参照)。
【0033】
反射防止層30は、単層構造としてもよいが、
図1に示すように、複層構造とすることも可能である(「第1反射防止層30a~第3反射防止層30c」参照)。
このような複層構造は、例えば、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層し、最表面が低屈折率層となる様に多層化(マルチコート)することが考えられる。この場合、高屈折率層としては、チタン、タンタル、ジルコニウム、インジウム等の金属酸化物微粒子を含有する高屈折率層形成用樹脂組成物や、その硬化物を用いることができ、低屈折率層としては、フッ素系の樹脂や、中空シリカ微粒子等を含有する低屈折率層形成用樹脂組成物や、その硬化物を用いることが可能である。
【0034】
反射防止層30を複数構造とすることにより、凹凸パターン21の圧潰を効果的に防止することができる他、層界面で生じる反射光を干渉によって相殺することができるので、基板1の表面における反射を良好に防止することが可能になる。反射防止層30を形成する手法については後述する。
【0035】
<基板1の製造方法>
次に、基板1の製造方法について
図2及び
図3を参照しつつ説明する。
以下においては、(1)透明基体10が化学強化ガラスにより構成されていること、(2)反射防止層30が複層構造となっていること、を前提として説明する。
【0036】
本実施形態に係る基板1の製造方法は、成膜工程S100と、防眩層生成工程S200と、反射防止層形成工程S300とを含んで構成されている。なお、上記成膜工程S100と、防眩層生成工程S200と、反射防止層形成工程S300とが、それぞれ、特許請求の範囲に記載の「成膜工程」と、「機能層生成工程」と、「第2機能層形成工程」とに該当する。
【0037】
(成膜工程S100)
本実施形態に係る基板1の製造方法は、
図2に示すように、成膜工程S100を行うことから始まる。
具体的に、成膜工程S100では、化学強化ガラスである透明基体10の主面に、薄膜を形成する作業を行う(
図3(a)及び(b)参照)。
薄膜の材料としては、上記したように、好ましくは、透明基体10と同一の材料(例えば、シリカ(SiO
2)や酸化アルミニウム(Al
2O
3)等を含有する材料)を用いることができ、より好ましくは、金属成分が非含有のシリカ(SiO
2)を用いることができる。この理由については後述する。
【0038】
成膜する手法としては、透明基体10の主面に薄膜を密着して形成することができればよく、例えば、スピンコーター等による塗布、バーコーター、浸漬、コンマコート、スプレーコート、ロールコート、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等の手法を採用することが可能である。また、このような成膜を連続的に行うため、例えば、成膜室を有したマルチチャンバー型のスパッタリング装置や、ターゲットを有したスパッタリング装置又はPLD(パルスレーザー蒸着)装置を用いることもできる。
【0039】
本実施形態では、上記成膜工程S100を行った後、防眩層生成工程S200を行うように構成されている(
図2参照)。
【0040】
(防眩層生成工程S200)
防眩層生成工程S200では、エッチング処理を施すことにより成膜工程S100で形成した薄膜の表面に凹凸パターン21を形成して、防眩層20を生成する作業を行う(
図3(c)参照)。なお、ここでいう「エッチング処理」とは、薄膜の表面を直接除去して粗面化する処理を意味し、薄膜にコーティング等して粗面化する処理(例えば、スプレーコート法)を含まない意味である。
【0041】
エッチング処理の手法としては、公知の手法、例えば、ドライエッチング法、ウエットエッチング法、サンドブラスト法等が挙げられる。なお、ドライエッチング方法は、反応性の気体(エッチングガス)やイオン、ラジカルによってエッチング(薄膜の表面を除去)する方法、ウエットエッチング法は、液体によってエッチングを行う方法、サンドブラスト法は、研磨材を吹き付けてエッチングする方法である。
【0042】
エッチング処理は、凹凸パターン21の凹凸高さH1、凹幅W1及び凸幅W2(
図4参照)の各値が、例えば、上記したような値(5μm以上20μm以下)となるように、薄膜の表面を除去する加工を行う。これにより、防眩層20が生成されることとなる。
【0043】
ここで、透明基体10上に成膜される薄膜と、透明基体10を構成するガラス素板との性質の違いについて、当該薄膜を構成する材料が、ガラス素板と同一の材料、例えば、組成中、シリカ(SiO2)や酸化アルミニウム(Al2O3)等の成分を含有する材料である場合を例にとって説明する。
【0044】
ガラス素板は、原料を高温(例えば、1500℃)で溶かした後、急冷することで作製される。このため、ガラス素板は、作製された状態で、SiやO等の原子間の結合が強く安定した状態となっているため、その表面硬度が比較的高くなる、といった性質を有する。
これに対し、透明基体10の主面上に形成(成膜)される薄膜は、上記したような高温の状況下で加熱等されないため、ガラス素板に比べて、原子間の結合度合いが弱く、その表面硬度も低いものなっている。
このように、薄膜とガラス素板とが同一の材料で形成されていた場合でも、表面硬度はガラス素板よりも薄膜の方が低くなるため、薄膜の表面とガラス素板の表面をそれぞれエッチングした場合、前者の方が、その作業を容易且つ短時間で行うことが可能である。
【0045】
しかも、薄膜をガラス素板と同一の材料で形成した場合にあっては、上記したように、透明基体10と薄膜との間に化学変化等が生じることがないので、薄膜を透明基体10上に、安定的且つ強固に形成することができる。
【0046】
薄膜の材料は、上記したように、ガラス素板と同一の材料の他、金属成分が非含有の材料である、シリカ(SiO2)を用いることが可能である。
一般に、シリカは、ガラス素板の組成物中に占める割合が、例えば、50%~80%といったように比較的高い成分であるため、薄膜をガラス素板と同一の材料で形成した場合と同様に、薄膜を透明基体10上に、馴染んだ状態で良好に形成することが可能である。
また、薄膜の材料としてシリカを用いた場合でも、薄膜をガラス素板と同一の材料で形成した場合と同様に、表面硬度がガラス素板のそれよりも低いため、エッチング処理を容易且つ短時間で行うことができる。
【0047】
さらに、シリカ(SiO
2)は、金属成分(例えば、Al)を含んでいないため、当該金属成分を含むガラス素板、例えば、組成物中に酸化アルミニウム(Al
2O
3)を含有するガラス素板に比べて、エッチングした際に生じるパーティクル量(発塵量)を低減することが可能である。その結果、その後の製造過程(例えば、後述する「反射防止層形成工程S300」(
図2参照))において、異物(パーティクル)の混入を抑えることができるので、歩留まりが低下するなどの問題を確実に抑制することが可能である。
この点で、薄膜の材料として、シリカを用いた場合、ガラス素板と同一の材料を用いた場合と比べて有利となる。
【0048】
なお、本実施形態では、金属成分が非含有の材料として、シリカ(SiO2)を例示したが、透明性が確保等されていれば、シリカに限られず、他の材料、例えば、セラミックであっても構わない。このように構成しても、シリカと同様に、ゴミ量の削減や基板1の品質向上を期待することができる。
【0049】
本実施形態では、上記したエッチング処理を行った後、防眩層生成工程S200を終了し、その後、次工程である反射防止層形成工程S300を行うように構成されている(
図2参照)。
【0050】
(反射防止層形成工程S300)
反射防止層形成工程S300では、防眩層20の表面に反射防止層30を形成する作業を行う(
図3(d)参照)。
具体的に、反射防止層形成工程S300では、反射防止層30が多層構造である場合、例えば、最表面が低屈折率層となるように、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層する作業を行う。例えば、反射防止層30が3層構造である場合(
図1参照)、(1)先ず、防眩層20上に低屈折率層である第1反射防止層30aを積層する(
図3(d)参照)、(2)次に、第1反射防止層30a上に高屈折率層である第2反射防止層30bを積層する、(3)その後、第2反射防止層30b上に低屈折率層である第3反射防止層30cを積層する、といった作業を順に行えばよい。なお、
図1に示す例では、反射防止層30を3層構造としたが、2層構造または4層以上の構造としてもよく、また、上記したように、単層構造であってもよい。また、反射防止層30は、多層構造とした場合、最表面を低屈折率層とする場合に限られず、高屈折率層としてもよく、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層しなくても構わない。
【0051】
反射防止層30を防眩層20上に形成することにより、外来光を良好に散乱又は拡散させることができるので、外来光の映り込みによる眩しさを低減することができる。また、基板1が画像表示装置の表示面に用いられる場合にあっては、装置本体から出射される光の透過率を上げることが可能なため、当該画像表示装置の視認性も向上させることが可能である。
【0052】
さらに、反射防止層30は、上記したような眩しさを低減等する機能を有する他、防眩層20の凹凸パターン21の圧潰を防止する機能も有している。なお、反射防止層30は、眩しさを低減等する機能、及び防眩層20の圧潰を防止する機能の両方を有効に発揮させるため、その膜厚H2(
図1参照)を、上記したように、0.05μm以上5μm以下の範囲に設定することが好ましい。
【0053】
反射防止層30を形成する手法としては、例えば、(1)スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、スリットコート法、スプレーコート法等により塗布した後、必要に応じて加熱処理する方法、(2)密着層の表面に化学的気相蒸着法(CVD法)、(3)スパッタリング法やPLD法のような物理的気相蒸着法(PLD法)等の公知の手法を採用することが可能である。
【0054】
本実施形態では、上記した反射防止層形成S300を行った後、本基板1の製造方法による作業を終了する(
図2参照)。
【0055】
以上のように、本実施形態では、透明基体10(化学強化ガラス)に薄膜を形成した後、当該薄膜にエッチング処理を施すことにより、防眩層20が生成されるように構成されている。このため、本実施形態では、透明基体10の表層に何ら加工を施すことなく、防眩層20が生成されるように構成されているため、透明基体10が反るなどの事態が生じることがない。
【0056】
また、本実施形態では、透明基体10に薄膜が形成された状態、すなわち、透明基体10が、いわば補強された状態で、エッチング処理を施すように構成されている。
その結果、透明基体10の強度(剛性)を高めることができるので、例えば、エッチング処理を施している最中に、透明基体10が破損・損傷等することを有効に防止することが可能である。
【0057】
さらに、本実施形態では、エッチング処理が施される薄膜の表面硬度が、ガラス素板のそれよりも低いため、透明基体(ガラス素板)に直接エッチング処理を施す場合(従来技術)と比べて、作業負担の軽減化並びに作業時間の短縮化を図ることができる。
【0058】
したがって、本実施形態に係る基板1の製造方法によれば、簡易な構成でありながらも、基板1の品質を確保しつつ生産性を向上させることができる。
【0059】
なお、本実施形態では、「機能層」として、防眩層20(外来光の散乱又は拡散させる層)を例示したが、表面にエッチング処理が施されていれば、その他の機能を発揮する層、例えば、美観(見た目)や触り心地等を向上させる層とすることも可能である。
【0060】
また、本実施形態では、「第2機能層」として、反射防止層30(外来光の鏡面反射による背景の映り込みを防止する層)を例示したが、その他の機能を発揮する層、例えば、従来技術(特許第6809482号)のような、印刷層や撥水撥油層とすることもできる。
【0061】
さらに、本実施形態では、透明基体10上に防眩層20及び反射防止層30を順に積層するように構成したが、これに加えて、例えば、防眩層20と反射防止層30との間や、反射防止層30上に、上記した印刷層や撥水撥油層等の他の機能層を付加しても構わない。
【0062】
また、本実施形態では、防眩層20等の「機能層」上に反射防止層30等の「第2機能層」を形成したが、このような「第2機能層」を省略することも可能である。
【0063】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述および図面により、本発明は限定されるものではない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実例および運用技術等はすべて本発明の範疇に含まれることはもちろんであることを付け加えておく。
【符号の説明】
【0064】
1 基板
10 透明基体
11 表層
12 内層
20 防眩層
21 凹凸パターン
30 反射防止層
30a 第1反射防止層
30b 第2反射防止層
30c 第3反射防止層
H1 凹凸高さ
H2 膜厚
W1 凹幅
W2 凸幅