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特開2024-29827亜鉛めっきスパングル鋼材およびその製造方法、並びに、亜鉛めっきスパングル鋼材の製造に用いる溶融亜鉛めっき鋼板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029827
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】亜鉛めっきスパングル鋼材およびその製造方法、並びに、亜鉛めっきスパングル鋼材の製造に用いる溶融亜鉛めっき鋼板
(51)【国際特許分類】
   C23C 28/00 20060101AFI20240229BHJP
   C23C 22/12 20060101ALI20240229BHJP
   C23C 2/06 20060101ALI20240229BHJP
   C23C 2/20 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C23C28/00 C
C23C22/12
C23C2/06
C23C2/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132224
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】507385903
【氏名又は名称】株式会社山形メタル
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】今田 弘昭
(72)【発明者】
【氏名】遅澤 謙二
(72)【発明者】
【氏名】安彦 光代視
【テーマコード(参考)】
4K026
4K027
4K044
【Fターム(参考)】
4K026AA02
4K026AA07
4K026AA13
4K026AA22
4K026BA04
4K026BB01
4K026CA16
4K026CA23
4K026DA03
4K027AA05
4K027AA22
4K027AB15
4K027AB42
4K027AC52
4K027AC82
4K027AE25
4K044AA02
4K044AA06
4K044AB02
4K044BA10
4K044BA21
4K044BB03
4K044BB04
4K044BB05
4K044BC09
4K044CA11
4K044CA16
4K044CA53
(57)【要約】
【課題】軽量で、かつ、意匠性の高いスパングル模様を有する亜鉛めっきスパングル鋼材およびその製造方法
【解決手段】
厚さ0.2mm~1.5mmの鋼板を溶融亜鉛めっき処理し、ガスワイプ処理して、鋼板表面に片面目付量20g/m~150g/mの溶融亜鉛めっき層を形成した後、表面化成処理被膜を介することなく、直接、リン酸亜鉛皮膜を形成することにより、筋目のない、明瞭で小さくかつ均一な美しいスパングル模様を有する亜鉛めっきスパングル鋼材が得られる。
【選択図】図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ0.2mm~1.5mmの鋼板を溶融亜鉛めっき槽に浸漬した後、ガスワイプ処理することにより、前記鋼板表面に片面目付量20g/m~150g/mの溶融亜鉛めっき層を形成する溶融亜鉛めっき鋼板製造工程、及び、
前記溶融亜鉛めっき層上に、表面化成処理被膜を介することなく、直接、リン酸亜鉛皮膜を設けることにより、スパングル模様を形成するリン酸亜鉛皮膜処理工程、
を含むことを特徴とする亜鉛めっきスパングル鋼材の製造方法。
【請求項2】
前記溶融亜鉛めっき鋼板製造工程において、
得られた溶融亜鉛めっき鋼板を、ロール状に巻き取ることを特徴とする請求項1に記載の亜鉛めっきスパングル鋼材の製造方法。
【請求項3】
ロール状に巻き取った前記溶融亜鉛めっき鋼板を、前記リン酸亜鉛皮膜処理工程の前に、切り出して板金成形加工することを特徴とする請求項2に記載の亜鉛めっきスパングル鋼材の製造方法。
【請求項4】
その表面にリン酸亜鉛皮膜を形成することにより、亜鉛めっきスパングル鋼材を製造するために用いる溶融亜鉛めっき鋼板であって、
厚さ0.2mm~1.5mmの鋼板の表面に片面目付量20g/m~150g/mの溶融亜鉛めっき層を有し、かつ、前記溶融亜鉛めっき層に表面処理が施されていないことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項5】
ロール状に巻き取られていることを特徴とする請求項4に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
【請求項6】
厚さ0.2mm~1.5mmの鋼材、
前記鋼材上に形成された片面目付量20g/m~150g/mの溶融亜鉛めっき層、および、
前記溶融亜鉛めっき層上に、表面化成処理被膜を介することなく形成されたリン酸亜鉛皮膜を有することを特徴とする、亜鉛めっきスパングル鋼材。
【請求項7】
前記リン酸亜鉛皮膜上に、クリアコート層を有することを特徴とする請求項6に記載の亜鉛めっきスパングル鋼材。
【請求項8】
最外層に、抗菌・抗ウィルスコート層を有することを特徴とする請求項6に記載の亜鉛めっきスパングル鋼材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量で、かつ、意匠性の高いスパングル模様を有する亜鉛めっきスパングル鋼材およびその製造方法に関するものである。さらに、亜鉛めっきスパングル鋼材の製造に用いる溶融亜鉛めっき鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融亜鉛めっき鋼板、特に溶融亜鉛めっきの目付量が片面20g/m以上の所謂厚目付の溶融亜鉛めっき鋼板は、その優れた耐食性から、自動車、建築材等に広く使用されている。
【0003】
溶融亜鉛めっき鋼板は、その表面が特徴的な銀白色のスパングル模様を呈し、意匠性に優れるという特長がある。溶融亜鉛めっき鋼板の厚さとスパングルの大きさとの間には明確な相関があり、用いる鋼板の厚さが薄くなるほど、スパングル模様は小さくなることが知られている。かかる溶融亜鉛めっき鋼板に、リン酸亜鉛皮膜処理を施すことで、亜鉛めっきのぎらつき感を黒く艶消しし、スパングル模様をはっきりと出現させて意匠性を高める手法は、従来から汎用されている(特許文献1~特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62-50478号公報
【特許文献2】特開昭59-110785号公報
【特許文献3】特開平5-202485号公報
【特許文献4】特開平8-218181号公報
【特許文献5】特開平9-263956号公報
【特許文献6】特開2018-16861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
亜鉛めっきスパングル鋼板で成形加工品を製造する場合、従来は、図3Bに示すように、冷間圧延鋼板(SPCC)、熱間圧延軟鋼板(SPHC)などの鋼板を、曲げ加工や溶接加工によって予め所定の形状に成形加工してから(ステップS20)、高温の溶融亜鉛めっき槽にどぶ付けし(ステップS22)、その後、リン酸亜鉛皮膜処理をおこなっていた(ステップS24)。このように成形加工した後にどぶ付け亜鉛めっきを行う理由は、鋼板と比較して、溶融亜鉛めっき鋼板は、プレス成形性及び溶接加工性に劣るからである。しかし、成形加工後にどぶ付け亜鉛めっきを行うと、得られる亜鉛めっきスパングル鋼材は、亜鉛めっきの筋目が付きやすく、形状によっては亜鉛溜まりが生じ、仕上がりのばらつきが大きいといった問題があった。
【0006】
また、溶融亜鉛めっき槽は430℃~550℃と高温であるため、成形加工した鋼材が熱変形して歪みが生じやすいといった問題がある。このため、従来の工法では、1.5mm以下の薄い鋼板を用いることは難しく、実際、1.6mm~4mmの厚い鋼板が主流であり、その用途も車両用途、土木用途や建築材などに限られていた。また、成形品が重量物であるため、製造途中で傷が付きやすく、歩留まりが悪いといった問題もあった。また、厚い鋼板を用いるため、細かいスパングル模様を出現させることが難しいという課題もあった。
【0007】
本発明の目的は、亜鉛めっきスパングル鋼材を軽量化し、その用途範囲を広げることであり、薄い鋼板にも適用することができる亜鉛めっきスパングル鋼材およびその製造方法、並びに、亜鉛めっきスパングル鋼材の製造に用いる溶融亜鉛めっき鋼板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的に鑑み、鋭意研究の結果、本発明者らは、薄い鋼板を用いて亜鉛めっきスパングル鋼材を製造することができることを発見し、本発明に想到した。
【0009】
本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材の製造方法では、厚さ0.2mm~1.5mmの鋼板を溶融亜鉛めっき槽に浸漬した後、ガスワイプ処理することにより、前記鋼板表面に片面目付量20g/m~150g/mの溶融亜鉛めっき層を形成する溶融亜鉛めっき鋼板製造工程、及び、前記溶融亜鉛めっき層上に、表面化成処理被膜を介することなく、直接、リン酸亜鉛皮膜を設けることにより、スパングル模様を形成するリン酸亜鉛皮膜処理工程、を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材の製造方法では、前記溶融亜鉛めっき鋼板製造工程において、得られた溶融亜鉛めっき鋼板を、ロール状に巻き取ることを特徴とする。
【0011】
本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材の製造方法では、ロール状に巻き取った前記溶融亜鉛めっき鋼板を、前記リン酸亜鉛皮膜処理工程の前に、切り出して板金成形加工することを特徴とする。
【0012】
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板では、その表面にリン酸亜鉛皮膜を形成することにより、亜鉛めっきスパングル鋼材を製造するために用いる溶融亜鉛めっき鋼板であって、厚さ0.2mm~1.5mmの鋼板の表面に片面目付量20g/m~150g/mの溶融亜鉛めっき層を有し、かつ、前記溶融亜鉛めっき層に表面処理が施されていないことを特徴とする。
【0013】
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板では、ロール状に巻き取られていることを特徴とする。
【0014】
本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材では、厚さ0.2mm~1.5mmの鋼材、前記鋼材上に形成された片面目付量20g/m~150g/mの溶融亜鉛めっき層、および、前記溶融亜鉛めっき層上に、表面化成処理被膜を介することなく形成されたリン酸亜鉛皮膜を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材では、前記リン酸亜鉛皮膜上に、クリアコート層を有することを特徴とする。
【0016】
本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材では、最外層に、抗菌・抗ウィルスコート層を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材の製造方法では、厚さ0.2mm~1.5mmの比較的薄い鋼板を用い、かつ、ガスワイプ処理して溶融亜鉛めっき層の厚さをコントロールすることにより、筋目のない、明瞭で小さくかつ均一な美しいスパングル模様を有する亜鉛めっきスパングル鋼材が得られる。また、表面化成処理被膜を介することなく、直接、溶融亜鉛めっき層上にリン酸亜鉛皮膜を形成するため、短時間に均一なリン酸亜鉛皮膜が形成される。
【0018】
本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材の製造方法では、得られた溶融亜鉛めっき鋼板をロール状に巻き取りコイルとすることにより、溶融亜鉛めっき層に空気が触れにくい状態であるため、白錆が発生しにくい状態で長期保管が可能となる。このため、溶融亜鉛めっき層の表面に、別途、表面化成処理被膜を設ける必要がなくなる。
【0019】
本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材の製造方法では、溶融亜鉛めっき処理後に板金成形加工を行うため、溶融亜鉛めっきの熱変形による歪みがない成形加工品を製造することが可能となる。
【0020】
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板では、表面化成処理被膜が介在しないため、溶融亜鉛めっき層上に直接リン酸亜鉛皮膜を形成することが可能となり、短時間に均一なリン酸亜鉛皮膜が形成される。
【0021】
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板では、得られた溶融亜鉛めっき鋼板をロール状に巻き取ってコイルとすることにより、溶融亜鉛めっき層が空気に触れにくい状態で溶融亜鉛めっき鋼板を保管することが可能となる。このため、溶融亜鉛めっき層の表面に、表面化成処理被膜を設けなくても、酸化しにくい状態で長期保管が可能となる。
【0022】
本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材では、厚さ0.2mm~1.5mmの鋼材を用いることにより、従来技術では難しかった細かなスパングル模様を形成することが可能となる。
【0023】
本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材では、リン酸亜鉛皮膜上にクリアコート層を設けることにより、意匠性に優れかつ耐久性にも優れたスパングル模様が得られる。
【0024】
本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材では、亜鉛めっきスパングル鋼材の最外層に、抗菌・抗ウィルスコート層を設けることにより、公共の場で人の手が触れる製品についても好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材の断面図を示す。
図2】本発明の他の実施の形態による亜鉛めっきスパングル鋼材の断面図を示す。
図3A】本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材の製造方法を示すフローチャートである。
図3B】従来工法による亜鉛めっきスパングル鋼材の製造方法を示すフローチャートである。
図4】本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材の製造方法に用いるインラインめっき装置の概略図を示す。
図5】実施例1の亜鉛めっきパングル鋼材の表面写真を示す。
図6】実施例2の亜鉛めっきパングル鋼材の表面写真を示す。
図7】実施例3の亜鉛めっきパングル鋼材の表面写真を示す。
図8】実施例4の亜鉛めっきパングル鋼材の表面写真を示す。
図9】比較例1の亜鉛めっきパングル鋼材の表面写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材及びその製造方法について、詳細に説明する。なお、本願明細書において、「鋼材」と表記する場合はその形状は特に限定されず成形加工品を含むこととし、「鋼板」と表記する場合は板状の鋼材を意味するものとする。
【0027】
図1は本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材の断面図である。本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材は、厚さ0.2mm~1.5mmの鋼板10の表面に、片面換算で、目付量20g/m~150g/mの溶融亜鉛めっき層11を形成した後、前記溶融亜鉛めっき層11上に表面処理を施すことなく、直接、リン酸亜鉛皮膜12を形成したものである。図1では、鋼板10の両面にリン酸亜鉛皮膜12を形成しているが、鋼板10の片面のみに形成してもよい。
【0028】
本発明においては、鋼板10として、板厚0.2mm~1.5mmの薄い鋼板を用いる。鋼板としては、冷間圧延鋼板(SPCC)、熱間圧延軟鋼板(SPHC)を用いることが好ましい。鋼板が薄いほど、細かなスパングル模様を得ることができる。好ましくは板厚1.2mm以下、より好ましくは1.0mm以下、更に好ましくは0.8mm以下、特に好ましくは0.6mm以下の鋼板を用いることが望ましい。板厚0.2mm未満の場合、インライン方式により溶融亜鉛めっき処理を施すことが難しくなるといった問題がある。
【0029】
溶融亜鉛めっき層11は、亜鉛または亜鉛合金からなる。すなわち、亜鉛を主成分として、スパングル模様を出現させるめっきであれば、その種類は特に限定されない。亜鉛合金を用いる場合、亜鉛を40重量%以上含有していればよく、例えば、ガルバリウム(55重量%アルミ、シリコン0重量%~2重量%で残部亜鉛)、アルミニウム・亜鉛・マグネシウム合金(アルミニウム4重量%~10重量%、マグネシウム3重量%以下、その他元素0.3重量%以下で残部亜鉛)などを用いることができる。本発明においては、亜鉛95重量%以上含有する亜鉛めっきであることが特に好ましい。
【0030】
本発明においては、溶融亜鉛めっき層11を、片面換算で、目付量20g/m~150g/mとする。より好ましい付着量は、目付量40g/m~75g/mである。溶融亜鉛めっき層11の付着量が20g/m に達しないと、防錆性が低下する。逆に150g/m を超える付着量では、加工性が悪いといった問題が生じる。
【0031】
溶融亜鉛めっき層11上に形成されるリン酸亜鉛皮膜12は、白色透明なホパイト結晶[Zn(PO ・4H O]であり、Zn以外にもFe、Ni、Co、Mn、Mg、Cr、Sb等の元素やアルカリ土類金属等を不純物程度に微量含んでいても良い。また、リン酸亜鉛化成処理液中に添加剤として使用される有機物を溶融亜鉛めっき層11中に含んでいてもよい。
【0032】
リン酸亜鉛皮膜12を設けることで、溶融亜鉛めっき層11のぎらつき感を黒く艶消しし、スパングル模様をはっきりと出現させることができる。また、耐食性を向上させ、クリアコート層等の塗料との密着性を高める効果がある。
【0033】
本発明においては、リン酸亜鉛皮膜12の付着量を片面換算で、2g/m~4g/m とすることが好ましい。リン酸亜鉛皮膜12の付着量が2g/m に達しないと、リン酸亜鉛皮膜12によって溶融亜鉛めっき層11の表面を均一に被覆することができず、金属光沢が残存して色調ムラを発生させる。逆に4g/mを超える付着量では、リン酸亜鉛皮膜12の形成に長時間を要し、コストがかさむ。
【0034】
本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材は、図1に示す層構成に限定されるものではなく、更に、リン酸亜鉛皮膜12上に、他の機能性コート層を積層してもよい。例えば、図2に示すように、リン酸亜鉛皮膜12上に、アクリル樹脂等からなるクリアコート層13を設けることができる。クリアコート層13を設けることにより、意匠性が高まるだけでなく、リン酸亜鉛皮膜12の剥離を防止することができる。また、着色顔料を含有するカラークリアコート層を設けることも好ましい。カラークリアコート層を設ける場合、その厚さを5μm~50μmの範囲でコントロールすることにより、表面風合を調整することができる。
【0035】
また、最外層に、抗菌機能及び/又は抗ウィルス機能を備えた抗菌・抗ウィルスコート層14を設けることもできる。
【0036】
次に、本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材の製造方法について説明する。本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材の製造方法は、(1)インライン方式による連続溶融亜鉛めっきラインにて、ガスワイピング処理することにより、鋼板10の表面に溶融亜鉛めっき層11を形成する溶融亜鉛めっき鋼板製造工程、(2)溶融亜鉛めっき鋼板を、リン酸亜鉛皮膜処理工程の前に、板金成形加工する成形加工工程、及び、(3)溶融亜鉛めっき層11上に、リン酸亜鉛皮膜12を形成することにより、スパングル模様を形成するリン酸亜鉛皮膜処理工程からなる。
【0037】
本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材の製造方法を、従来工法と比較しながら説明する。図3Aは本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材の製造方法を、図3Bは従来工法を示すフローチャートである。本発明の製造方法は、溶融亜鉛めっき鋼板製造工程において、インライン方式による連続溶融亜鉛めっきラインにて、ガスワイピング処理を行う点に特徴を有する。
【0038】
図4に、本発明に用いるインラインめっき装置の概略図を示す。まず、ホットコイルを塩酸等の酸溶液を用いて酸洗浄し(ステップS11)、表面の付着物や錆び、不動態膜を除去する。次いで、圧延装置21にて圧延した後(ステップS12)、焼鈍装置22にて焼鈍し(ステップS13)、更に、圧延装置23にて調質圧延することにより(ステップS14)、板厚を0.2mm~1.5mmに調整する。
【0039】
板厚0.2mm~1.5mmに調整された鋼板10を、溶融亜鉛めっき槽24に浸漬した後(ステップS15)、通板速度に応じてスロットノズル25の噴射速度を適宜制御しながらガスワイプ処理する(ステップS16)。これによって、鋼板10の表面に、片面換算で、目付量20g/m~150g/mの溶融亜鉛めっき層11を形成する。得られた溶融亜鉛めっき鋼板を常温に冷却した後(ステップS17)、巻き取り機でロール状に巻き取る(ステップS18)。
【0040】
本発明では、ロール状に巻き取られた溶融亜鉛めっき鋼板コイルにすることにより、溶融亜鉛めっき層表面に空気が触れにくい状態で溶融亜鉛めっき鋼板を保管できる。したがって、白錆が発生しにくい状態で長期保管が可能となる。保管可能な期間は、保管条件にもよるが、コイルセンター等の適切な管理下においては、通常2年以上保管することが可能である。
【0041】
従来は、溶融亜鉛めっき層を形成した後、連続的にリン酸亜鉛皮膜処理を行わない場合は、溶融亜鉛めっき層の酸化による白錆を防ぐため、表面処理(クロメート処理、あるいは、クロムフリーの有機系表面化成処理または無機系表面化成処理)により表面化成処理被膜を設ける必要があったが、本発明では、ロール状に巻き取った溶融亜鉛めっき鋼板コイルとして保管することにより、表面化成処理被膜を形成する必要がなくなる。
【0042】
次に、溶融亜鉛めっき鋼板コイルから必要分を切り出して、曲げ加工等によって所定の形状に成形加工する(ステップS20)。
【0043】
成形加工した溶融亜鉛めっき鋼材を、アルカリ系脱脂剤等を用いて脱脂し、水洗することにより表面の汚れを除去した後(ステップS21)、リン酸亜鉛化成処理液に浸漬あるいはスプレーすることにより、リン酸亜鉛皮膜処理をおこなう(ステップS24)。リン酸亜鉛皮膜処理を施すためのリン酸亜鉛化成処理液としては、Znイオン、Niイオン、リン酸イオン、硝酸イオン等を含む市販の処理液を用いればよい。リン酸亜鉛皮膜処理後、残ったリン酸亜鉛化成処理液を水洗し、温風乾燥することにより(ステップS25)、本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材が得られる。
【0044】
本発明においては、溶融亜鉛めっき鋼材の溶融亜鉛めっき層11上に、表面化成処理被膜が設けられていないため、溶融亜鉛めっき層11とリン酸亜鉛皮膜処理剤とが反応しやすく、短時間に均一なリン酸亜鉛皮膜12が形成される。
【0045】
溶融亜鉛めっき層11の酸化を防ぐためには、溶融亜鉛めっき鋼板コイルから必要分を切り出してからリン酸亜鉛皮膜処理工程を完了させるまでの時間は、できるだけ短期間である方がよい。湿度条件・温度条件にもよるが、溶融亜鉛めっき鋼板を切り出してから、10日以内にリン酸亜鉛皮膜処理を行うことが好ましい。
【0046】
従来工法では、図3Bに示すように、冷間圧延鋼板(SPCC)、熱間圧延軟鋼板(SPHC)などの鋼板を、所定の形状に成形加工してから(ステップS20)、脱脂水洗した後(ステップS21)、高温の溶融亜鉛めっき槽でどぶ付けめっきしていた(ステップS22)。このため、亜鉛めっきの筋目が付きやすく、形状によっては亜鉛溜まりが生じ、仕上がりのばらつきが大きかった。これに対し、本発明の製造方法では、図3Aに示すように、鋼板の調整~溶融亜鉛めっき処理~ガスワイプ処理~巻取りまでの一連の工程(ステップS11~ステップS18)を、所謂、ロールtoロール方式で鋼板に張力をかけながら連続的に行うので、筋目のない、均一で美しいスパングル模様が得られる。
【0047】
従来工法では、溶融亜鉛めっき処理時の熱変形を防ぐため、2mm以上の厚い鋼板を用いる必要があり、細かいスパングル模様を出現させることが難しかったが、本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材の製造方法によれば、板厚1.5mm以下の薄い鋼板を用いることができるため、従来品と比較して、細かいスパングル模様を出現させることが可能となる。本発明は、得られるスパングル模様のサイズを特に限定するものではないが、例えば、1.0mmの鋼板を用いた場合、平均スパングル径40mm以下、0.8mmの鋼板を用いた場合、平均スパングル径30mm以下、0.5mmの鋼板を用いた場合、平均スパングル径15mm以下、0.35mmの鋼板を用いた場合、平均スパングル径10mm以下と、極めて細かいスパングル模様を形成することが可能である。
【実施例0048】
以下、本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材およびその製造方法について、実施例により、さらに詳しく説明する。
【0049】
(実施例1)
厚さ1.0mmの鋼板(SPCC)を用いて、インライン方式によって、500℃の溶融亜鉛めっき槽に浸漬した後、ガスワイプ処理することにより、鋼板表面に、片面換算で、目付量60g/mの溶融亜鉛めっき層を形成して溶融亜鉛めっき鋼板を調整し、これをロール状に巻き取った。溶融亜鉛めっき層の厚さは、15μmであった。
【0050】
60日経過後、溶融亜鉛めっき鋼板コイルを切り出したところ、外気に触れていたコイルの最外層では、溶融亜鉛めっき層に白錆が発生していたが、コイル内側の溶融亜鉛めっき層では変化はなかった。
【0051】
白錆が発生したコイルの最外層の溶融亜鉛めっき鋼板はカットして廃棄し、コイル最外層を除去した溶融亜鉛めっき鋼板を30cm四方に切り出しサンプルとした。このサンプルを、液温50℃のアルカリ系脱脂剤で脱脂した後、上水をスプレーして水洗した。市販のリン酸亜鉛化成処理液(ミリオン化学社製、「GR1001M」)を用いて、浸漬時間3.5分でリン酸亜鉛皮膜処理をおこなった後、水洗し、温風乾燥して、亜鉛めっきスパングル鋼材を調整した。リン酸亜鉛皮膜の厚さは、0.5μmであった。得られた亜鉛めっきスパングル鋼材の表面写真を図5に示す。実施例1では、平均スパングル径は、40mmであった。
【0052】
次に、亜鉛めっきスパングル鋼材の表面に、フッ素樹脂およびアクリル樹脂を主成分とする赤色のカラークリアコート層を設けた。10μmのカラークリアコート層を形成した場合、艶無しでブロンズ系の素材感のある表面風合が得られた。また、20μmのカラークリアコート層を形成した場合、スパングル模様が鮮明となり、30μmのカラークリアコート層を形成した場合、鮮明なスパングル模様に奥行きが現れた。
【0053】
また、フッ素樹脂およびアクリル樹脂を主成分とする黒色のカラークリアコート層を設けた場合は、シルバー系の素材感のある表面風合が得られ、黄色のカラークリアコート層を設けた場合は、ゴールド系の素材感のある表面風合が得られた。このように、本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材は、クリアコートの色および膜厚をコントロールすることにより、表面風合にバリエーションを持たせることができる。
【0054】
(実施例2)
厚さ0.8mmの鋼板(SPCC)を用いて、インライン方式によって、500℃の溶融亜鉛めっき槽に浸漬した後、ガスワイプ処理することにより、鋼板表面に、片面換算で、目付量60g/mの溶融亜鉛めっき層を形成して溶融亜鉛めっき鋼板を調整し、これをロール状に巻き取った。溶融亜鉛めっき層の厚さは、15μmであった。
【0055】
コイル最外層を除去した溶融亜鉛めっき鋼板を30cm四方にカットし、アルカリ系脱脂剤で脱脂した後、水洗した。市販のリン酸亜鉛化成処理液(ミリオン化学社製、「GR1001M」)を用いて、浸漬時間を3分で、リン酸亜鉛皮膜処理をおこなった後、水洗・乾燥して、亜鉛めっきスパングル鋼材を調整した。リン酸亜鉛皮膜の厚さは、0.5μmであった。得られた亜鉛めっきスパングル鋼材の表面写真を図6に示す。実施例2では、平均スパングル径は、30mmであった。
【0056】
(実施例3)
厚さ0.5mmの鋼板(SPCC)を用いて、インライン方式によって、500℃の溶融亜鉛めっき槽に浸漬した後、ガスワイプ処理することにより、鋼板表面に、片面換算で、目付量60g/mの溶融亜鉛めっき層を形成して溶融亜鉛めっき鋼板を調整し、これをロール状に巻き取った。溶融亜鉛めっき層の厚さは、15μmであった。
【0057】
コイル最外層を除去した溶融亜鉛めっき鋼板を30cm四方にカットし、アルカリ系脱脂剤で脱脂した後、水洗した。市販のリン酸亜鉛化成処理液(ミリオン化学社製、「GR1001M」)を用いて、浸漬時間を3分で、リン酸亜鉛皮膜処理をおこなった後、水洗・乾燥して、亜鉛めっきスパングル鋼材を調整した。リン酸亜鉛皮膜の厚さは、0.5μmであった。得られた亜鉛めっきスパングル鋼材の表面写真を図7に示す。実施例3では、平均スパングル径は、15mmであった。
【0058】
(実施例4)
厚さ0.35mmの鋼板(SPCC)を用いて、インライン方式によって、500℃の溶融亜鉛めっき槽に浸漬した後、ガスワイプ処理することにより、鋼板表面に、片面換算で、目付量60g/mの溶融亜鉛めっき層を形成して溶融亜鉛めっき鋼板を調整し、これをロール状に巻き取った。溶融亜鉛めっき層の厚さは、15μmであった。
【0059】
コイル最外層を除去した溶融亜鉛めっき鋼板を30cm四方にカットし、アルカリ系脱脂剤で脱脂した後、水洗した。市販のリン酸亜鉛化成処理液(ミリオン化学社製、「GR1001M」)を用いて、浸漬時間を2.5分で、リン酸亜鉛皮膜処理をおこなった後、水洗・乾燥して、亜鉛めっきスパングル鋼材を調整した。リン酸亜鉛皮膜の厚さは、0.5μmであった。得られた亜鉛めっきスパングル鋼材の表面写真を図8に示す。実施例4では、平均スパングル径は、10mmであった。
【0060】
(実施例5)
厚さ0.8mmの鋼板(SPCC)を用いて、インライン方式によって、500℃の溶融亜鉛めっき槽に浸漬した後、ガスワイプ処理することにより、鋼板表面に、片面換算で、目付量90g/mの溶融亜鉛めっき層を形成して溶融亜鉛めっき鋼板を調整し、これをロール状に巻き取った。溶融亜鉛めっき層の厚さは、22μmであった。
【0061】
60日経過後、溶融亜鉛めっき鋼板コイルを切り出したところ、外気に触れていたコイルの最外層では、溶融亜鉛めっき層に白錆が発生していたが、コイル内側の溶融亜鉛めっき層では変化はなかった。
【0062】
白錆が発生したコイルの最外層の溶融亜鉛めっき鋼板はカットして廃棄し、コイル最外層を除去した溶融亜鉛めっき鋼板を30cm四方に切り出しサンプルとした。このサンプルを、液温50℃のアルカリ系脱脂剤で脱脂した後、上水をスプレーして水洗した。市販のリン酸亜鉛化成処理液(ミリオン化学社製、「GR1001M」)を用いて、浸漬時間4分でリン酸亜鉛皮膜処理をおこなった後、水洗し、温風乾燥して、亜鉛めっきスパングル鋼材を調整した。リン酸亜鉛皮膜の厚さは、0.5μmであった。実施例5では、平均スパングル径は35mmであった。
【0063】
(実施例6)
厚さ0.5mmの鋼板(SPCC)を用いて、インライン方式によって、500℃の溶融亜鉛めっき槽に浸漬した後、ガスワイプ処理することにより、鋼板表面に、片面換算で、目付量110g/mの溶融亜鉛めっき層を形成して溶融亜鉛めっき鋼板を調整し、これをロール状に巻き取った。溶融亜鉛めっき層の厚さは、29μmであった。
【0064】
60日経過後、溶融亜鉛めっき鋼板コイルを切り出したところ、外気に触れていたコイルの最外層では、溶融亜鉛めっき層に白錆が発生していたが、コイル内側の溶融亜鉛めっき層では変化はなかった。
【0065】
白錆が発生したコイルの最外層の溶融亜鉛めっき鋼板はカットして廃棄し、コイル最外層を除去した溶融亜鉛めっき鋼板を30cm四方に切り出しサンプルとした。このサンプルを、液温50℃のアルカリ系脱脂剤で脱脂した後、上水をスプレーして水洗した。市販のリン酸亜鉛化成処理液(ミリオン化学社製、「GR1001M」)を用いて、浸漬時間4分でリン酸亜鉛皮膜処理をおこなった後、水洗し、温風乾燥して、亜鉛めっきスパングル鋼材を調整した。リン酸亜鉛皮膜の厚さは、0.5μmであった。実施例6では、平均スパングル径は25mmであった。
【0066】
(比較例1)
厚さ2.3mmの鋼板(SPCC)を30cm四方にカットし、これをアルカリ系脱脂剤で脱脂した後、水洗した。次いで、鋼板を、520℃の溶融亜鉛めっき槽に15分間どぶ付けした後、水洗・乾燥することにより、片面換算で、目付量150g/mの溶融亜鉛めっき層を形成した。溶融亜鉛めっき層の厚さは、40μmであった。
【0067】
次いで、市販のリン酸亜鉛化成処理液(ミリオン化学社製、「GR1001M」)を用いて、リン酸亜鉛皮膜処理をおこなった後、水洗・乾燥させて、亜鉛めっきスパングル鋼材を調整した。リン酸亜鉛皮膜の厚さは、0.8μmであった。得られた亜鉛めっきスパングル鋼材の表面写真を図9に示す。比較例1では、平均スパングル径は50mmであり、筋目が目立った。
【0068】
(比較例2)
厚さ1.6mmの鋼板(SPCC)を30cm四方にカットし、これをアルカリ系脱脂剤で脱脂した後、水洗した。次いで、鋼板を、520℃の溶融亜鉛めっき槽に10分間どぶ付けした後、水洗・乾燥することにより、溶融亜鉛めっき層を形成してなる溶融亜鉛めっき鋼板を調整した。得られた溶融亜鉛めっき鋼板は、熱変形による歪みおよび撓みが生じ、実用には適さないものであった。
【0069】
【表1】
【0070】
従来の製造方法は、溶融亜鉛めっき処理工程で熱変形が生じやすく、比較例2のように、厚さ1.5mm以下の鋼板に適用することが難しかったが、本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材の製造方法によれば、実施例1~実施例6のように、厚さ1.0mm以下の薄い鋼板であっても、歪みが生じることがない。
【0071】
また、表面写真を比較すると、比較例1では、図9に示すように溶融亜鉛めっき槽から引き上げる際に生じる筋目が見られたが、実施例1~実施例4では、図5図8に示すように、表面に筋目がなく、スパングル模様が明瞭で均一であり、意匠性が高い亜鉛めっきスパングル鋼材が得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上詳述したように、本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材の製造方法によれば、薄い鋼板を用い、かつ、溶融亜鉛めっき処理後にガスワイプ処理することにより、軽量、かつ、意匠性の高い亜鉛めっきスパングル鋼材を提供することができる。本発明の亜鉛めっきスパングル鋼材は、建築・建設資材、スチール家具、機械筐体、家電、鉄道車両など、幅広い用途に利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
10 鋼板
11 溶融亜鉛めっき層
12 リン酸亜鉛皮膜
13 クリアコート層
14 抗菌・抗ウイルスコート層
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9