(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029847
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】反応槽を備える紫外線照射設備、及び反応槽
(51)【国際特許分類】
C02F 1/32 20230101AFI20240229BHJP
【FI】
C02F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132266
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸次
(72)【発明者】
【氏名】牧瀬 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】城田 昭彦
【テーマコード(参考)】
4D037
【Fターム(参考)】
4D037AA05
4D037AB03
4D037BA18
4D037BB01
4D037BB02
4D037BB04
4D037CA01
4D037CA02
4D037CA08
4D037CA16
(57)【要約】
【課題】紫外線照射設備において、反応槽内部の部品が処理水の偏流や渦流等によって破損してしまうことを防ぐとともに、紫外線照射設備の設置面積が増大することを抑制する。
【解決手段】処理対象となる処理水を給水する給水口、該処理水を排水する排水口、及び紫外線を照射する紫外線照射部材を有し、該給水口から該排水口に向かう方向に該処理水を通過させつつ該処理水に対して該紫外線照射部材から紫外線を照射する反応槽と、前記反応槽の前記給水口の前に配置される設備部品と、該設備部品と該給水口との間に配設され前記処理水の流れを整える整流部材を内部に備えた配管と、を備え、前記処理水の殺菌処理、又は不活性化処理を行う紫外線照射設備。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象となる処理水を給水する給水口、該処理水を排水する排水口、及び紫外線を照射する紫外線照射部材を有し、該給水口から該排水口に向かう方向に該処理水を通過させつつ該処理水に対して該紫外線照射部材から紫外線を照射する反応槽と、
前記反応槽の前記給水口の前に配置される設備部品と、
該設備部品と該給水口との間に配置されるとともに、前記処理水の流れを整える整流部材が内部に延在するように挿入された配管と、を備え、前記処理水の殺菌処理、消毒処理、又は不活性化処理を行う紫外線照射設備。
【請求項2】
処理対象となる処理水を給水する給水口、該処理水を排水する排水口、及び紫外線を照射する紫外線照射部材を有し、該給水口から該排水口に向かう方向に該処理水を通過させつつ該処理水に対して該紫外線照射部材から紫外線を照射する反応槽と、
前記反応槽の前記排水口の後に配置される設備部品と、
該設備部品と該排水口との間に配置されるとともに、前記処理水の流れを整える整流部材が内部に延在するように挿入された配管と、を備え、前記処理水の殺菌処理、消毒処理、又は不活性化処理を行う紫外線照射設備。
【請求項3】
処理対象となる処理水を給水する給水口、該処理水を排水する排水口、及び紫外線を照射する紫外線照射部材を有し、該給水口から該排水口に向かう方向に該処理水を通過させつつ該処理水に対して該紫外線照射部材から紫外線を照射する反応槽と、
前記反応槽の前記給水口の前、及び前記反応槽の前記排水口の後にそれぞれ配置される設備部品と、
前記給水口の前に配置された該設備部品と該給水口との間、及び前記排水口の後に配置された該設備部品と該排水口との間にそれぞれ配置されるとともに、前記処理水の流れを整える整流部材が内部に延在するように挿入された配管と、を備え、前記処理水の殺菌処理、消毒処理、又は不活性化処理を行う紫外線照射設備。
【請求項4】
前記整流部材は、前記配管の延在方向に沿って延在する複数の仕切り板と、該仕切り板により仕切られた正六角形の通水孔と、を備え、該通水孔を前記配管内に該配管の径方向及び周方向において隙間なく複数並べて形成された請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の紫外線照射設備。
【請求項5】
前記整流部材の前記正六角形の通水孔を形成する1つの前記仕切り板と、該1つの仕切り板に該通水孔の中心を挟んで対向する別の前記仕切り板との距離を仕切り寸法とし、
前記配管の長さを該仕切り寸法の10倍以上の長さとした請求項4に記載の紫外線照射設備。
【請求項6】
前記整流部材は、前記配管の延在方向に沿って延在する複数の仕切り板と、該仕切り板により仕切られた正方形の通水孔と、を備え、該通水孔を前記配管内に該配管の径方向及び周方向において隙間なく複数並べて形成された請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の紫外線照射設備。
【請求項7】
前記整流部材の前記正方形の通水孔を形成する1つの前記仕切り板と、該1つの仕切り板に該通水孔の中心を挟んで対向する別の前記仕切り板との距離を仕切り寸法とし、
前記配管の長さを該仕切り寸法の10倍以上の長さとした請求項6に記載の紫外線照射設備。
【請求項8】
前記整流部材は、前記配管の延在方向に沿って延在し内径がそれぞれ異なる複数の円筒を備え、該円筒の中心を中心とする同心円状に複数の該円筒と該円筒との間に所定の間隔を通水孔として設けつつ該複数の円筒を重ねて形成された請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の紫外線照射設備。
【請求項9】
前記整流部材の前記円筒と前記円筒との間の所定の間隔を仕切り寸法とし、
前記配管の長さを該仕切り寸法の10倍以上の長さとした請求項8に記載の紫外線照射設備。
【請求項10】
一端の内径と該一端の反対側の他端の内径とが異なるテーパ配管を前記配管に接続した請求項8に記載の紫外線照射設備。
【請求項11】
前記整流部材は、同心円状に重ねられた複数の前記円筒を固定するための固定棒を備え、
該固定棒は、下記式(1)を満たす直径D0を有する請求項8に記載の紫外線照射設備。
換算流速(基準)Vr=U/(fn×D0)<1・・・(1)
D0:固定棒の直径
平均基準流速U=Qmax/Sd
Qmax:最大流量
Sd:流路断面積
固有振動数fn=(λ2)/(2πL2)×(EI/(m+mw))1/2
固有値λ=3.1415
固定棒の長さ:L
固定棒の材質のヤング率:E
固定棒の断面二次モーメントI=π(D04)/64
固定棒の単位あたりの質量m=S×ρs
固定棒の断面積S=π(D0/2)2
固定棒の密度:ρs
単位当たりの排除マスmw=Sw×ρw
排除面積Sw=π(D0/2)2
水密度:ρw
【請求項12】
処理対象となる処理水の殺菌処理、消毒処理、又は不活性化処理を行う紫外線照射設備に配設され、
該処理水を給水する給水口と、
該処理水を排水する排水口と、
紫外線を該処理水に対して照射する紫外線照射部材と、
該給水口の前、又は該排水口の後の少なくともいずれか一方に配置された設備備品が発生させる前記処理水の偏流、乱流、又は渦流による該紫外線照射部材の破損を防ぐための整流部材と、を備える反応槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、反応槽を備える紫外線照射設備、及び反応槽に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の消毒設備においては、例えば上下水道(水道水または地下水等)の殺菌若しくは消毒、工業用水の脱臭、脱色、殺菌若しくは消毒、パルプの漂白、又は医療機器の殺菌若しくは消毒等を行うために、オゾンや塩素等の薬品が用いられている。しかし、該消毒設備では、オゾンや塩素等の薬品を処理水に均一に溶け込ませる必要があるため、上記薬品を攪拌させる処理水を溜める貯留槽(滞留槽)やスプレーポンプ等の攪拌装置が必要となり、処理水の水質や水量の変化に対し即時に対応することが困難である。
【0003】
このような問題に対応すべく、紫外線照射によって、上下水道の殺菌若しくは消毒、又は工業用水の殺菌若しくは消毒を行う紫外線照射設備がある。この紫外線照射設備は、処理水を、反応槽を通過させつつ反応槽内で紫外線照射を行い、処理水の水質や水量の変化に対し即時に対応することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の紫外線照射設備においては、紫外線を照射する反応槽の前後に配置される各種設備部品(例えば、ストレーナ、L字配管、T字配管、又は流量計等)、によって発生した処理水の偏流、乱流、又は渦流により、反応槽内部の部品(例えば、保護管、紫外線ランプ、又はその他のサポート部品等)が、破損することがある。そこで、反応槽内に偏流、乱流、又は渦流等を有する処理水が流入することを抑制するために、処理水の偏流、乱流、又は渦流を消失させるための配管を反応槽の出入口に接続している。この配管は、配管内に他の部品が配設されていない単純な直管であり、配管の内直径の例えば10倍の長さを備えることで、配管内を通過する処理水の渦流等を消失させている。
【0006】
そして、紫外線照射設備においては、反応槽内部の部品が処理水の偏流や渦流等によって破損してしまうことを防ぐとともに、紫外線照射設備の設置面積が大きくなってしまわないようにするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本実施形態の紫外線照射設備は、処理対象となる処理水を給水する給水口、該処理水を排水する排水口、及び紫外線を照射する紫外線照射部材を有し、該給水口から該排水口に向かう方向に該処理水を通過させつつ該処理水に対して該紫外線照射部材から紫外線を照射する反応槽と、前記反応槽の前記給水口の前に配置される設備部品と、該設備部品と該給水口との間に配置されるとともに、前記処理水の流れを整える整流部材が内部に延在するように挿入された配管と、を備え、前記処理水の殺菌処理、消毒処理、又は不活性化処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態の紫外線照射設備が組み込まれた上水処理システムの一例を示すフロー図である。
【
図2】
図2は、濾過後の処理水の紫外線照射設備における流れを示すフロー図である。
【
図4】
図4は、反応槽をZ軸方向に沿って切断して示す縦断面図である。
【
図5】
図5は、反応槽をX軸Y軸平面に沿って切断して示す横断面図である。
【
図6】
図6は、第一例の整流部材を備えた前配管を説明する斜視図である。
【
図7】
図7は、第一例の整流部材の正六角形の通水孔の仕切り寸法を説明するための説明図である。
【
図8】
図8は、第二例の整流部材を備えた前配管を説明する斜視図である。
【
図9】
図9は、第二例の整流部材の正方形の通水孔の仕切り寸法を説明するための説明図である。
【
図10】
図10は、第三例の整流部材を備えた前配管を説明する斜視図である。
【
図11】
図11は、第三例の整流部材を備えた前配管の通水孔を説明する説明図である。
【
図12】
図12は、第三例の整流部材を備えた前配管に接続されるテーパ配管を説明するための斜視図である。
【
図13】
図13は、第三例の整流部材を備えた前配管にテーパ配管が接続された状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本実施形態の紫外線照射設備1が組み込まれた上水処理システムにおける処理の流れの概要を、
図1を参照して説明する。
図1は、上水処理システムの処理手順を示すフローチャートである。まず、川、湖または地下水から原水を処理水Wとして取水し(ステップS1)、取水した処理水Wを凝集沈殿槽に導入し、これに凝集剤を添加して懸濁物の土粒子等を凝集・沈殿させる(ステップS2)。次に、凝集沈殿槽の上澄み水を活性炭濾過槽に送って異物を濾過し(ステップS3)、濾過した処理水Wを紫外線照射設備1の反応槽2(
図2、
図3参照)に送る。そして、反応槽2内を処理水Wを通過させるとともに、処理水Wに対して紫外線(UV)を照射し(ステップS4)、紫外線照射により殺菌、消毒、又は不活性処理された処理水Wを塩素注入槽に送って塩素を注入(ステップS5)した後に、一般家庭や事業所などに配水する。
【0010】
図2は、実施形態の紫外線照射設備1における濾過後の処理水Wの流れを示すフロー図である。本実施形態の紫外線照射設備1は、例えば、紫外線照射設備1において濾過された後の処理水Wが最初に流れる流量計30と、流量計30の後に配設された前ストレーナ31と、前ストレーナ31の後に配設された前配管41Aと、前配管41Aの後に配設された反応槽2と、反応槽2の後に配設された後配管42と、後配管42の後に配設された後ストレーナ32と、後ストレーナ32の後に配設された緊急遮断弁50と、を備えている。
【0011】
図2に示すように、紫外線照射設備1は、例えば2つ並べて互いがバックアップ可能に上水処理システムに組み込まれており、2系統の処理水Wの流路が確保されている。2つの紫外線照射設備1のうちの片方の紫外線照射設備1の各構成の交換やメンテナンス、又は故障等が発生した場合においても、もう片方の紫外線照射設備1による処理水Wの殺菌、消毒、又は不活性化処理を継続的に行うことができるようになっている。即ち、
図2に示す例においては、濾過された後の処理水Wは、分岐管を介して2つの紫外線照射設備1のそれぞれの流量計30に流入する。また、殺菌処理等がそれぞれの紫外線照射設備1で行われた後の処理水Wは、例えば合流してから塩素注入が行われる。
【0012】
図3は反応槽2の一例を示す斜視図である。反応槽2は、処理対象となる処理水Wを給水する給水口200、処理水Wを排水する排水口202、及び紫外線を照射する紫外線照射部材22を有し、給水口200から排水口202に向かう方向に処理水Wを通過させつつ処理水Wに対して紫外線照射部材22から紫外線を照射することができる。なお、以下の説明では、X軸Y軸Z軸直交座標系を用いる。X軸方向は、+X方向と-X方向とを含む。Y軸方向は、+Y方向と-Y方向とを含む。Z軸方向は、+Z方向と-Z方向とを含む。例えば、X軸Y軸平面は水平面であり、Z軸方向は鉛直方向である。
【0013】
反応槽2は、殺菌、消毒、又は不活化処理を行う処理水Wを通過させるものであり、例えば略直方体形状に形成されたハウジング20を備えている。ハウジング20は、処理水Wを給水(流入)する給水ポートが取り付けられた給水口200と、UV照射による殺菌処理等を施した処理水Wを排出(流出)する排水ポートが取り付けられた排水口202とを有している。この給水口200と排水口202とは、ハウジング20におけるY軸方向における対向する側壁20aと側壁20bとに形成されている。
【0014】
給水口200は、給水口200の径方向に延出されたフランジ部200aを備えており、フランジ部200aには図示しないボルト孔が形成されている。また排水口202は、排水口202の径方向に延出されたフランジ部202aを備えており、フランジ部202aには図示しないボルト孔が形成されている。
【0015】
処理水Wは、給水口200から排水口202に向かう方向(
図3においては、-Y方向から+Y方向)に流れて反応槽2を通過する。
図4、
図5に示す反応槽2に配設された紫外線照射部材22は、例えば、保護管221を備えている。保護管221は、紫外線が透過可能な誘電体で形成されており、例えば石英ガラスで形成されている。そして、保護管221の内部には、給水口200から排水口202に向かって通過する処理水Wに紫外線を照射する紫外線ランプ225が収納されている。
図4に示すように、紫外線ランプ225は、例えば、その両端部に紫外線ランプ225へ給電を行うための配線が接続され、該配線を介して、電力の供給を行う電力供給源228に接続されている。紫外線光源となる紫外線ランプ225は、例えば、LED、水銀ランプ、又はメタルハライドランプ等であり、所定波長の紫外線光227を出射できる。
【0016】
例えば、
図3、
図4に示す保護管221は、ハウジング20の内部に、給水口200から排水口202に向かう方向であるY軸方向と交差するX軸方向に延在するように4本設けられている。具体的には、本実施形態の保護管221は、ハウジング20の内部に、ハウジング20の側壁20cと、側壁20cとX軸方向において対向する側壁20dとを貫通して4本設けられている。なお、本実施形態の保護管221および紫外線ランプ225が紫外線照射部材22となる。
【0017】
図4に示すように、例えば、反応槽2は、紫外線モニタユニット243を設置するため紫外線監視窓24を備えている。紫外線監視窓24は、例えば、ハウジング20の側壁20a、側壁20b、側壁20c、及び側壁20dに垂直に接続された天板20eに二つ配設されている。紫外線監視窓24に取り付けられた紫外線モニタユニット243は、例えば、紫外線強度計や制御盤を備えており、紫外線ランプ225から処理水Wに照射される紫外線照射量、並びに紫外線ランプ225及び保護管221の状態を監視する。
【0018】
図4、
図5に示すように、ハウジング20は、保護カバー25によって覆われている。保護カバー25は、紫外線ランプ225から照射された紫外線光227が外部に漏れるのを遮蔽するものであり、ハウジング20の側壁20cと側壁20dの外側に設けられている。なお、
図3は、保護カバー25を省略した図である。
【0019】
図3、
図5に示すリブ26は、反応槽2における内部圧力の上昇による全体の変形を抑制するものであり、反応槽2の外周、すなわち、側壁20cと、側壁20dと、天板20eと、天板20eとZ軸方向において対向する底板20fとに設けられている。また、リブ26は、ハウジング20のY軸方向における中央近傍に設けられている。
【0020】
図2に示す流量計30は、反応槽2の前に配置される設備部品の一例であり、例えば、電磁式、差圧式、超音波式、渦式、又は容量式の流量計が用いられるが、本例に限定されるものではない。
【0021】
図2に示す前ストレーナ31は、例えば、コニカルストレーナ、Y型ストレーナ、又はT型ストレーナ等であるが、これ以外のストレーナを用いてもよい。本実施形態においては、流量計30と前ストレーナ31とが、反応槽2の給水口200(
図3参照)の前に配置された設備部品となる。なお、反応槽2の給水口200の前に配置される設備部品は、上記2つの例に限定されるものではなく、例えば、設備部品として、L字配管、T字配管、各種バルブ、又はテーパ配管等が配置されていてもよい。
【0022】
図6は、
図2に示す前ストレーナ31と反応槽2の給水口200との間に配置されるとともに、処理水Wの流れを整える整流部材43(以下、第一例の整流部材43とする)が内部にY軸方向に延在するように挿入された前配管41Aの一例を示す斜視図である。前配管41Aは、例えば、円筒状の円筒部410と、円筒部410の両端において径方向外側にそれぞれ一体的に延出された円環板状の2つの取付フランジ411と、を備えている。例えば、円筒部410の内径を内径Jとする。
【0023】
図2に示す設備部品である流量計30や前ストレーナ31内において、処理水Wには乱流、渦流、又は偏流等が発生しやすく、処理水Wが仮に乱流、渦流、又は偏流を有したまま反応槽2内に流入してしまうと、反応槽2内の
図4に示す紫外線ランプ225や保護管211が破損したり、紫外線ランプ225から適切に処理水Wに紫外線が照射されなかったりする場合がある。そのため、前ストレーナ31と反応槽2の給水口200との間に、整流部材43を備える前配管41Aを配設して、前配管41Aによって処理水Wの乱流、渦流、又は偏流を消失させて、処理水Wを層流にしてから反応槽2に流入させる。
【0024】
例えば、
図6に示す前配管41Aの取付フランジ411のY軸方向における円環状の端面は、他の部材と連結される連結面となっており、連結面には周方向に等間隔を空けて図示しないボルト孔が形成されている。例えば、-Y方向側の取付フランジ411の連結面に対して、
図2に示す前ストレーナ31がボルト固定されて、前配管41Aと前ストレーナ31とが連通する。また、+Y方向側の取付フランジ411の連結面に対して、
図3に示す反応槽2の給水口200のフランジ部200aがボルト固定されて、前配管41Aと反応槽2とが連通する。例えば、前配管41Aの円筒部410の断面における中心と給水口200の中心とが略合致した状態になる。
【0025】
前配管41Aの円筒部410内に配設された第一例の整流部材43は、前配管41Aの延在方向(Y軸方向)に沿って延在する複数の仕切り板431と、仕切り板431により仕切られた正六角形の通水孔432と、を備え、通水孔432を前配管41A内に前配管41Aの径方向及び周方向において隙間なく複数並べて形成されている。換言すれば、第一例の整流部材43は、処理水Wの流れる方向に対して剛性を備えるハニカム構造を備えている。
【0026】
前配管41Aの製造においては、例えば、所定の金属部材等(SUS等)を、熱間圧延または熱間押し出しによって正六角柱の筒状中間体として作製する。該正六角柱の筒状中間体の6つの側板が仕切り板431となり、該筒状中間体の筒内が正六角形の通水孔432となる。そして、該正六角柱の筒状中間体を複数、それぞれ溶接等によって接合する。複数が接合された筒状中間体の外周部分を前配管41Aの円筒部410内に嵌合可能にサークルカットして、複数の正六角柱が接合され全体として円柱状の整流部材43となる。そして、円筒部410内部に整流部材43が円筒部410の延在方向に沿って押し込まれるようにして挿入されていき、整流部材43が円筒部410に嵌合されて円筒部410に対して固定される。したがって、前配管41Aの円筒部内410内部に、例えば金属で形成された複数の仕切り板431によって区切られた正六角形の複数の通水孔432が円筒部410の径方向、及び周方向において隙間なく並べて配設された状態になる。また、それぞれの仕切り板431の延在方向は円筒部410の延在方向と平行、又は略平行となる。
【0027】
整流部材43は、仕切り板431で形成された正六角形の複数の通水孔432を前配管41Aの径方向及び周方向に隙間なく並べた構造(ハニカム構造)を備えているため、乱流や渦流等を有した状態で前配管41Aに流入してきた処理水Wの流れる方向(Y軸方向)と直交するX軸方向及びZ軸方向において、歪みに強いという性質を有している。
【0028】
例えば、
図6、
図7に示す整流部材43の一つの通水孔432を形成する仕切り板431と、該1つの仕切り板431に通水孔432の中心を挟んで180度離れた位置において対向する仕切り板431との距離は、前配管41Aの内部を仕切り板431が仕切る仕切り寸法daとなる。
【0029】
図6に示す前配管41Aの長さK1は、第一例の整流部材43の仕切り寸法daに基づいて設定される。即ち、第一例の整流部材43を備える前配管41Aが処理水Wに対する整流機能を発揮させるために、例えば、前配管41Aの長さK1=10×daとなっている。なお、前配管41Aの長さK1を仕切り寸法daの10倍を超える長さとしてもよい。
【0030】
第一例の整流部材43は、例えば、前配管41Aの延在方向(Y軸方向)における一端から他端まで延在するように前配管41A内に配設されている。即ち、
図6に示す例においては、整流部材43のY軸方向における長さは、前配管41AのY軸方向における長さK1と同一、又は略同一となっている。なお、第一例の整流部材43の長さに対して前配管41Aの長さが所定長さ分さらに長く設定されており、例えば、整流部材43が前配管41Aの一端から円筒部410の内部の所定の位置まで延在しており、該所定の位置から前配管41Aの他端までは円筒部410内に整流部材43が配設されていない流路が形成されていてもよい。
【0031】
図2に示す後配管42は、例えば、第一例の整流部材43を備えており、前配管41Aと同様の構成となっているため、説明を省略する。後配管42の処理水Wの流れる方向における上流側となる一端には、反応槽2の排水口202が連通する。後配管42の処理水Wの流れる方向における下流側となる他端には、後ストレーナ32が連通する。
【0032】
図2に示す後ストレーナ32は、例えば、前ストレーナ31と同様のものが用いられる。後ストレーナ32の上流側となる一端には後配管42が連通して、下流側となる他端は緊急遮断弁50が連通する。後ストレーナ32は、反応槽2において
図4に示す紫外線照射部材22の保護管221や紫外線ランプ225が破損した場合に、破損部品の回収を行い、
図1に示すステップS5の塩素注入槽に破損部品が流出しないようにする。
【0033】
図2に示す緊急遮断弁50は、例えば、
図4に示す紫外線モニタユニット243の制御盤等に電気的に接続された電磁弁であり、紫外線モニタユニット243からの指令を受けて開閉可能である。なお、緊急遮断弁50は電磁弁に限定されるものではなく、簡素な構造の機械式弁であってもよい。緊急遮断弁50は、反応槽2内で保護管211や紫外線ランプ225が破損した場合に、保護管211や紫外線ランプ225の壊れた部品が
図1に示すステップS5の塩素注入槽に流出しないように、紫外線照射設備1の流路を閉じる。
【0034】
本実施形態においては、
図2に示す後ストレーナ32と緊急遮断弁50とが、反応槽2の排水口202の後に配置された設備部品となる。なお、反応槽2の排水口202の後に配置される設備部品は、上記2つの例に限定されるものではなく、例えば、設備部品として、L字配管、T字配管、流量計、又はテーパ配管等が配置されていてもよい。
【0035】
本実施形態における紫外線照射設備1においては、反応槽2の給水口200の前に設備部品として流量計30及び前ストレーナ31を配置しているため、整流部材43を備える前配管41Aを前ストレーナ31と給水口200との間に配置しているが、仮に、紫外線照射設備1が反応槽2の給水口200の前に設備部品を配置しない構成となっている場合には、前配管41Aも備えていなくてもよい。また、本実施形態における紫外線照射設備1においては、反応槽2の排水口202の後に設備部品として後ストレーナ32と緊急遮断弁50とを配置しているため、整流部材43を備える後配管42を後ストレーナ32と排水口202との間に配置しているが、仮に、紫外線照射設備1が反応槽2の排水口202の後に設備部品を配置しない構成となっている場合には、後配管42も備えていなくてもよい。
【0036】
本実施形態の紫外線照射設備1は、
図6に示す第一例の整流部材43を備える前配管41Aに代えて、
図8に示す第二例の整流部材44を備える前配管41Bを、設備部品である
図2に示す前ストレーナ31と反応槽2の給水口200との間に配置した構成となっていてもよい。
【0037】
以下、第二例の整流部材44を備える前配管41Bについて説明する。なお、前配管41Bにおいて、
図6に示す第一例の整流部材43を備える前配管41Aと同様の構成については、前配管41Aと同様の符号を付して説明を省略する。前配管41Bの円筒部410内に挿入された第二例の整流部材44は、前配管41Bの延在方向(Y軸方向)に沿って延在する複数の仕切り板441と、仕切り板441により仕切られた正方形の通水孔442と、を備え、通水孔442を前配管41B内に前配管41Bの径方向及び周方向において隙間なく複数並べて形成されている。換言すれば、第二例の整流部材44は、処理水Wの流れる方向に対して剛性を備える格子状構造を備えている。
【0038】
前配管41Bの製造においては、例えば、所定の金属部材等(SUS等)を、熱間圧延または熱間押し出しによって正四角柱の筒状中間体として作製する。該正四角柱の筒状中間体の4つの側板が仕切り板441となり、該筒状中間体の筒内が正方形の通水孔442となる。そして、該正四角柱の筒状中間体を複数、それぞれ溶接等によって接合する。複数が接合された筒状中間体の外周部分を前配管41Bの円筒部410内に嵌合可能にサークルカットして、複数の正四角柱が接合され全体として円柱状の整流部材44となる。そして、円筒部410内部に整流部材44が円筒部410の延在方向に沿って押し込まれるようにして挿入されていき、整流部材44が円筒部410に嵌合されて円筒部410に固定される。したがって、前配管41Bの円筒部内410内部に、例えば金属で形成された複数の仕切り板441によって区切られた正方形の複数の通水孔442が円筒部410の径方向、及び周方向において隙間なく並べて配設された状態になる。
【0039】
例えば、
図8、
図9に示す整流部材44の一つの通水孔442を形成する仕切り板441と、該1つの仕切り板441に通水孔442の中心を挟んで180度離れた位置において対向する仕切り板441との距離は、前配管41Aの内部を仕切り板441が仕切る仕切り寸法dbとなる。
【0040】
図8に示す前配管41Bの長さK2は、第二例の整流部材44の仕切り寸法dbに基づいて設定される。即ち、第二例の整流部材44を備える前配管41Bが処理水Wに対する整流機能を発揮させるために、例えば、前配管41Bの長さK2=10×dbとなっている。なお、前配管41Bの長さK2を仕切り寸法dbの10倍を超える長さとしてもよい。
【0041】
第二例の整流部材44は、例えば、前配管41Bの延在方向(Y軸方向)における一端から他端まで延在するように前配管41B内に配設されている。即ち、
図8に示す例においては、整流部材44のY軸方向における長さは、前配管41BのY軸方向における長さK2と同一、又は略同一となっている。なお、第二例の整流部材44の長さに対して前配管41Bの長さが所定長さ分さらに長く設定されており、例えば、整流部材44が前配管41Bの一端から円筒部410の内部の所定の位置まで延在しており、該所定の位置から前配管41Bの他端までは円筒部410内に整流部材44が配設されていない流路が形成されていてもよい。
【0042】
本実施形態の紫外線照射設備1は、
図2に示す第一例の整流部材43を備える後配管42に代えて、
図8に示す第二例の整流部材44を備えた後配管を、設備部品である後ストレーナ32と反応槽2の排水口202との間に配置した構成となっていてもよい。
【0043】
本実施形態の紫外線照射設備1は、
図6に示す第一例の整流部材43を備える前配管41Aに代えて、
図10に示す第三例の整流部材45を備える前配管41Cを、設備部品である
図2に示す前ストレーナ31と反応槽2の給水口200との間に配置した構成となっていてもよい。
【0044】
以下、
図10に示す第三例の整流部材45を備える前配管41Cについて説明する。なお、前配管41Cにおいて、
図6に示す第一例の整流部材43を備える前配管41Aと同様の構成については、前配管41Aと同様の符号を付して説明を省略する。
【0045】
前配管41Cの円筒部410内に配設された第三例の整流部材45は、前配管41Cの延在方向に沿って延在し内径がそれぞれ異なる複数(図示の例においては3つ)の円筒451、円筒452、及び円筒453を備え、円筒451~円筒453の中心を中心とする同心円状に円筒451と円筒452との間、円筒452と円筒453との間に所定の間隔を通水孔452a、及び通水孔453aとして設けつつ、複数の円筒451~円筒453を重ねて形成されている。また、第三例の整流部材45は、例えば、同心円状に重ねられた複数の円筒451~円筒453を固定するための2本の固定棒457を備えている。2本の固定棒457の寸法は同一に設定されている。また、固定棒457の長さは、例えば、最も大きな内径を備える円筒453の外径と同じに設定されている。
【0046】
図10、
図11に示す例においては、例えば円柱状の固定棒457と円柱状の固定棒457とが十字状に溶接されて一体となった形状で使用される。なお、一本の固定棒457のみで、同心円状に重ねられた複数の円筒451~円筒453を固定してもよい。また、固定棒457の各先端が円筒部410の内側面に接合されてもよい。また、第三例の整流部材45の同心円状に重ねられる円筒の数は、3つに限定されず、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。また、円筒部410の内側面と第三例の整流部材45の円筒453の外側面とが接触しておらず、円筒部410の内側面と第三例の整流部材45の円筒453の外側面との間に、所定の間隔が通水孔として設けられていてもよい。
【0047】
前配管41Cの製造においては、例えば、所定の金属部材等(SUS等)を、熱間圧延または熱間押し出しによって、内径がそれぞれ異なる円筒451、円筒452、及び円筒453を作製する。円筒453の内径は円筒452の内径よりも大きく、円筒452の内径は円筒451の内径よりも大きくなっている。例えば、円筒453の外径は、円筒部410の内径Jよりも少しだけ小さく設定されている。また、円筒451、円筒452、及び円筒453のY軸方向における長さは、例えば同一に設定されている。そして、円筒451~円筒453の中心を中心とする同心円状に円筒451と円筒452との間、円筒452と円筒453との間に所定の間隔を設けて、該間隔を通水孔452a~通水孔453aとして、複数の円筒451~円筒453が重ねられた状態になる。また、所定の間隔、即ち、通水孔452a~通水孔453aの幅は、仕切り寸法dcとなる。
【0048】
さらに、該同心円状に重ねられた複数の円筒451~円筒453の一端側、及び他端側に、十字状に形成された固定棒457が溶接等によって接合される。なお、二本で十字状に形成された固定棒457が、該同心円状に重ねられた複数の円筒451~円筒453の一端側のみ、又は他端側のみに溶接によって接合されていてもよい。これによって、円筒451~円筒453が十字状の固定棒457によって所定の仕切り寸法dcを間に設けつつ同心円状に重ねられて固定された第三例の整流部材45が形成される。さらに円筒部410内部に整流部材45が円筒部410の延在方向に沿って押し込まれるようにして挿入されていき、
図10、
図11に示すように、整流部材45が円筒部410に嵌合されて円筒部410に固定される。即ち、図示の例においては、円筒453が円筒部410に嵌合した状態になる。なお、図示の例においては、円筒451の内径が仕切り寸法dcと同一の値に設定されている。したがって、円筒部410の内部流路は、円筒451内部の断面視円形で仕切り寸法dcである通水孔451a、円筒451の外側面と円筒452の内側面との間の仕切り寸法dcの断面視円環状の通水孔452a、及び円筒452の外側面と円筒453の内側面との間の仕切り寸法dcの断面視円環状の通水孔453aの3つに区切られている。また、整流部材45の十字状に接合された2本の固定棒457は、それぞれ、円筒451~円筒453と直交している。
【0049】
図10に示す前配管41Cの長さK3は、第三例の整流部材45の仕切り寸法dcに基づいて設定される。即ち、第三例の整流部材45を備える前配管41Cが処理水Wの整流機能を発揮させるために、例えば、前配管41Cの長さK3=10×dcとなっている。なお、前配管41Cの長さK3を仕切り寸法dcの10倍を超える長さとしてもよい。
【0050】
第三例の整流部材45は、例えば、前配管41Cの延在方向(Y軸方向)における一端から他端まで延在するように前配管41C内に配設されている。即ち、
図10に示す例においては、十字状の2つの固定棒457及び円筒451~円筒453を備える整流部材44のY軸方向における全体の長さは、前配管41CのY軸方向における長さK3と同一、又は略同一となっている。
【0051】
例えば、
図12に示すテーパ配管46の一端を
図2に示す前ストレーナ31の処理水Wの流れる方向における下流側に接続する場合に、テーパ配管46の他端に第三例の整流部材45を備える前配管41Cが接続されて用いられてもよい。
図12に示すテーパ配管46は、例えば、前ストレーナ31が接続される-Y方向側の一端の内径よりも、該一端の反対側(+Y方向側)の他端の内径が大きくなっており、前ストレーナ31を通過した後の処理水Wの流量を増加させるために用いられる。
【0052】
テーパ配管46は、例えば、+Y方向の他端側に径方向に延出されたフランジ部460を備えており、フランジ部460には図示しないボルト孔が形成されている。そして、テーパ配管46のフランジ部460と
図13に示す前配管41Cの取付フランジ411とが、図示しない固定ボルトによって接続され、テーパ配管46と前配管41Cとが連通する。また、
図13に示すようにテーパ配管46の流路断面における中心と前配管41Cの円筒部410の流路断面における中心(通水孔451aの中心)とが略合致した状態になる。
【0053】
図2に示す前ストレーナ31から
図13に示すテーパ配管46に流入した処理水Wは、テーパ配管46内の中心に近い領域における流速がテーパ配管46の径方向外側に近い領域における流速よりも速くなるため、渦流や乱流等を生み出す場合がある。しかし、下流側に第三例の整流部材45を備える前配管41Cを接続することで、処理水Wの該渦流や乱流等を消失させることができる。なお、テーパ配管46に、
図6に示す第一例の整流部材43を備える前配管41A、又は
図8に示す第二例の整流部材44を備える前配管41Bを接続してもよい。
【0054】
以下に、
図2に示す紫外線照射設備1を用いて処理水Wの殺菌処理、消毒処理、又は不活性化処理を行う場合について説明するとともに、紫外線照射設備1の各構成に機能について説明する。まず、
図1に示すステップS3における活性炭濾過槽で濾過がされた処理水Wが、
図2に示す流量計30を通過して前ストレーナ31に流入する。流量計30は、主に、反応槽2の処理水Wの消毒等の処理能力が超えてしまうことがないように、紫外線照射設備1に流入する処理水Wの流量を計測する。
【0055】
また、例えば、紫外線照射設備1において、処理水Wの処理を実施し続けると、前ストレーナ31のメッシュに砂や石等が堆積し、フィルタとしての機能が失われる。その結果、紫外線照射設備1内の圧力が高くなり許容値を超えたことを流量計30が測定する。そして、流量計30が紫外線照射設備1内の圧力が高くなり許容値を超えたことを測定すると、図示しない警報手段が、例えば前ストレーナ31の交換やメンテナンス等の必要が生じていることを作業者に警告してもよい。
【0056】
流量計30を通過した処理水Wが次に通過する前ストレーナ31は、主に、
図1に示すステップS3の活性炭濾過を通り抜けた処理水W中の石や砂を除去することで、該石や砂が反応槽2に流入することを防ぎ、
図4に示す反応槽2の保護管221や紫外線ランプ225が該石や砂によって破損してしまうといった事態を生じさせないようにする。ここで、処理水Wは、前ストレーナ31を通過することによって乱流、渦流、又は偏流を有する場合がある。
【0057】
前ストレーナ31を通過し乱流、渦流、又は偏流を有する処理水Wは、
図6に示す前配管41Aの第一例の整流部材43の複数の通水孔432に沿って-Y方向から+Y方向に向かって流れていくとともに層流に整えられ、前配管41Aが連通する
図5に示す給水口200から反応槽2に流入する。そして、処理水Wが、反応槽2内を排水口202に向かって流れていくとともに、保護管211に収納された紫外線ランプ225から照射された紫外線光227により、処理水W内に含まれる細菌等が殺菌、消毒、又は不活化される。そして、処理が施された処理水Wが排水口202から排出される。その後、処理水Wは、
図2に示す第一例の整流部材43を備える後配管42、後ストレーナ32、及び緊急遮断弁50を順に通過して、紫外線照射設備1から排出されて、ステップS5の塩素注入槽に至る。
【0058】
本実施形態の紫外線照射設備1は、前ストレーナ31と反応槽2の給水口200との間に配設されるとともに、処理水Wの流れを整える例えば第一例の整流部材43が内部に延在するように挿入された前配管41Aを備えている。そのため、前ストレーナ31を通過することで乱流、偏流、又は渦流等を有した処理水Wを、前配管41A内で層流にしてから反応槽2内に流入させることができる。よって、反応槽2内に配設されている紫外線照射部材22の紫外線ランプ225や保護管211が、処理水Wの乱流や渦流によって破損してしまうことを防ぐことができる。
【0059】
また、本実施形態の紫外線照射設備1は、後ストレーナ32と反応槽2の排水口202との間に配置されるとともに、処理水Wの流れを整える例えば第一例の整流部材43が内部に延在するように挿入された後配管42を備える。そのため、例えば、紫外線照射設備1における処理水Wの流れを一時停止させた場合等において、後ストレーナ32を一度通過することで乱流や渦流等を有した処理水Wが反応槽2側へ逆流してくる際等に、後配管42内で層流にしてから反応槽2内に流入させることができる。そのため、反応槽2内に配設されている紫外線照射部材22の紫外線ランプ225や保護管211が、処理水Wの乱流や渦流等によって破損してしまうことを防ぐことができる。なお、本効果は、後配管42が、
図6に示す第一例の整流部材43に代えて、
図8に示す第二例の整流部材44、又は
図10に示す第三例の整流部材45を備えている場合においても、同様に得ることが可能である。
【0060】
図6に示す第一例の整流部材43は、前配管41Aの延在方向に沿って延在する複数の仕切り板431と、仕切り板431により仕切られた正六角形の通水孔432と、を備え、通水孔432を前配管41A内に前配管41Aの径方向及び周方向において隙間なく複数並べて形成されている。即ち、第一例の整流部材43は、所謂ハニカム構造を備えている。したがって、第一例の整流部材43は、処理水Wの流れる方向(Y軸方向)と直交するX軸方向及びZ軸方向における歪みに強いという性質を有しているため、前ストレーナ31を通過することで乱流や渦流等を有した状態で前配管41Aに処理水Wが流入してきても、処理水Wの水圧により変形してしまうことが防がれる。
【0061】
仮に
図6に示す前配管41A内に第一例の整流部材43を備えていない場合には、整流部材43を備えていない前配管41Aの長さは、前配管41A内で処理水Wを乱流や渦流等を消失させて層流とするため(整流機能を発揮させるため)に、例えば、円筒部410の内径Jの10倍以上の長さとする必要がある。したがって、
図2に示す紫外線照射設備1の全体の大きさが大きくなり設置面積が増大する要因となる。対して、本実施形態の紫外線照射設備1の前配管41Aは、内部に第一例の整流部材43を備えていることで、前配管41Aの長さを仮に整流部材43を備えていない場合の長さに比べて大幅に短い長さK1とすることが可能となる。即ち、円筒部410の円形の内部流路を、複数の仕切り板431により正六角形の複数の通水孔432に区分けすることで、前配管41A内を処理水Wがそれぞれの通水孔432に分けられて、かつ、Y軸方向に平行に延在する各通水孔432に沿って通過していくため、各通水孔432内において処理水Wの渦流や乱流等が消失させて層流とすることができる。したがって、前配管41Aの長さを仮に整流部材43を備えていない場合の長さに比べて大幅に短くしても、前配管41Aを通過する処理水Wに対する整流機能を発揮できる。
【0062】
例えば、上記第一例の整流部材43の正六角形の通水孔432を形成する1つの仕切り板431と、該1つの仕切り板431に通水孔432の中心を挟んで対向する別の仕切り板431との距離を仕切り寸法daとし、前配管41Aの長さK1=10×daとすることで、前配管41Aは通過する処理水Wに対する整流機能を十分に発揮できる。
【0063】
本実施形態の紫外線照射設備1が、
図6に示す第一例の整流部材43を備える前配管41Aに代えて、
図8に示す第二例の整流部材44を備える前配管41Bを
図2に示す前ストレーナ31と給水口200との間に備えている場合について説明する。整流部材44は、仕切り板441で形成された正方形の複数の通水孔442を前配管41Bの径方向及び周方向に隙間なく並べた構造を備えている。したがって、乱流や渦流等を有した状態で前配管41Bに流入してきた処理水Wの流れる方向(Y軸方向)と直交するX軸方向及びZ軸方向における歪みに強い性質を備えているため、処理水Wから受ける水圧により変形してしまうことが防がれる。
【0064】
また、円筒部410の円形の内部流路を、複数の仕切り板441により正方形の複数の通水孔442に区分けすることで、前配管41B内を処理水Wがそれぞれの通水孔442に分けられて、かつ、Y軸方向に平行に延在する各通水孔442に沿って通過していくため、各通水孔442内において処理水Wの渦流や乱流等が消失する。したがって、前配管41Bの長さを仮に整流部材44を備えていない場合の長さに比べて大幅に短くしても、前配管41Bは通過する処理水Wに対して整流機能を発揮できる。
【0065】
例えば、上記第二例の整流部材44の正方形の通水孔442を形成する1つの仕切り板441と、該1つの仕切り板441に通水孔442の中心を挟んで対向する別の仕切り板441との距離を仕切り寸法dbとし、前配管41Bの長さK2=10×daとすることで、前配管41Bを通過する処理水Wに対する整流機能を十分に発揮することが可能となる。
【0066】
本実施形態の紫外線照射設備1が、
図6に示す第一例の整流部材43を備える前配管41Aに代えて、
図10に示す第三例の整流部材45を備える前配管41Cを
図2に示す前ストレーナ31と給水口200との間に備えている場合について説明する。
図10に示す円筒部410の円形の内部流路を、複数の円筒451~円筒453により3つの通水孔451a~通水孔453aに区分けしている。したがって、前配管41C内を処理水Wがそれぞれの通水孔451a~453aに分けられて、かつ、Y軸方向に平行に延在する通水孔451a~453aに沿って通過していくため、通水孔451a~453a内において処理水Wの渦流や乱流等が消失する。したがって、前配管41Cの長さを仮に整流部材45を備えていない場合の長さに比べて大幅に短くしても、前配管41Cは通過する処理水Wに対して整流機能を発揮できる。
【0067】
例えば、上記第三例の整流部材45の円筒451と円筒452との間の間隔(通水孔452a)、及び円筒452と円筒453との間の間隔(通水孔453a)をそれぞれ仕切り寸法dcとし、前配管41Cの長さK3=10×dcとすることで、前配管41Cは通過する処理水Wに対する整流機能を十分に発揮できる。
【0068】
図10に示す前配管41Cを処理水Wが通過する際に、前配管41C内において、複数の円筒451~円筒453に掛かる水圧よりも大きな水圧が固定棒457に掛かる。そこで、固定棒457は、前配管41Cを通過する処理水Wの乱流、又は渦流等により振動破損してしまうことがないように、例えば、その直径D0が下記の式(1)を満たすように設定される。
換算流速(基準)Vr=U/(fn×D0)<1・・・(1)
D0:固定棒457の直径(断面直径)
平均基準流速U=Qmax/Sd
Qmax:最大流量
Sd:流路断面積
固有振動数fn=(λ
2)/(2πL
2)×(EI/(m+mw))
1/2
固有値λ=3.1415
固定棒457の長さ:L
固定棒457の材質のヤング率:E
固定棒457の断面二次モーメントI=π(D0
4)/64
固定棒457の単位あたりの質量m=S×ρs
固定棒457の断面積S=π(D0/2)
2
固定棒457の密度:ρs
単位当たりの排除マスmw=Sw×ρw
排除面積Sw=π(D0/2)
2
水密度:ρw
【0069】
以下に、
図10に示す1本の固定棒457の長さL=0.7mであり、固定棒457の材質がSUS316L(オーステナイト系ステンレス)であり、基準流量Q=50000m
3/日であり、最大流量Qmax=100000m
3/日である場合において、固定棒457の直径D0=28.5mmとした場合に、式(1)を満たすか否かについて、以下に説明する。
【0070】
D0:固定棒の直径=28.5mm=0.0285m
固定棒457の長さ:L=700mm=0.7m
固定棒457の材質のヤング率:E=201000N/mm2[MPa]=201000000000N/m2[Pa]
固定棒457の密度:ρs=8000kg/m3
固定棒457の断面積S=π(D0/2)2=0.00063794m2
固定棒457の単位あたりの質量m=S×ρs=5.103517266kg/m
固定棒457の断面二次モーメントI=π(D04)/64=3.24×10-8
水密度:ρw=996.66Kg/m3 (290K,0.1MPa条件)
排除面積Sw=π(D0/2)2=0.00063794m2
単位当たりの排除マスmw=Sw×ρw=0.63580894kg/m
固有値λ=3.1415
(Formulas for natural frequency and modeshape,R.D.Blevins,Krieger Publishing company)
固有振動数fn=(λ2)/(2πL2)×(EI/(m+mw))1/2=107.9607867Hz
基準流量Q=50000m3/日=0.578703704m3/s
最大流量Qmax=100000m3/日=1.157407407m3/s
円筒部410の内径J=0.7m(固定棒457の長さLと同一)
円筒部410の断面積Sd=0.3848451m2
平均基準流速U=Qmax/Sd=1.503731511m/s
平均最大流速Umax=3.007463021m/s
換算流速(基準)Vr=0.4887192
換算流速(最大)Vr=0.9774384
【0071】
このようにして得られた基準流量Q時(平均基準流速U時)の換算流速(基準)Vrは、Vr=U/(fn×D0)=0.4887192は1より小さく、また、最大流量Qmax時(平均最大流速Umax時)時の換算流速(最大)VrのVr=U/(fn×D0)=0.9774384が1より小さいので、式(1)を満足していることがわかる。即ち、固定棒457の処理水Wによる振動破断等の発生が抑制される。
【0072】
例えば、
図2~
図5に示す反応槽2自体が、給水口200の前に配置された設備部品である前ストレーナ31が発生させる処理水Wの偏流、乱流、又は渦流による紫外線照射部材22の破損を防ぐための第一例の整流部材43を備えていてもよい。即ち、
図6に示す第一例の整流部材43を備える前配管41Aを、
図3に示す反応槽2の給水口200のフランジ部200aに接続するのではなく、給水口200の内部に第一例の整流部材43を配設してもよい。なお、給水口200の内部に、第一例の整流部材43に代えて、第二例の整流部材44、又は第三例の整流部材45を配設してもよい。この場合においても、乱流、偏流、又は渦流等を消失させて層流とした処理水Wを、反応槽2内流入させることができる。よって、反応槽2内に配設されている紫外線照射部材22の紫外線ランプ225や保護管211が、処理水Wの乱流や渦流によって破損してしまうことを防ぐことができる。なお、同様に反応槽2の排水口202に、第一例の整流部材43、第二例の整流部材44、又は第三例の整流部材45を備える後配管42を接続するのではなく、排水口202の内部に、第一例の整流部材43、第二例の整流部材44、又は第三例の整流部材45を配設してもよい。
【0073】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1:紫外線照射設備
2:反応槽
20:ハウジング
200:給水口 202:排水口
22:紫外線照射部材 221:保護管 225:紫外線ランプ
30:流量計
31:前ストレーナ
32:後ストレーナ
41A:第一例の整流部材を備える前配管
41B:第二例の整流部材を備える前配管
41C:第三例の整流部材を備える前配管
42:後配管
43:第一例の整流部材 431:仕切り板 432:正六角形の通水孔
44:第二例の整流部材 442:仕切り板 442:正方形の通水孔
45:第三例の整流部材
451、452、453:円筒
451a、452a、453a:通水孔
457:固定棒
50:緊急遮断弁