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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029854
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】掛け布団
(51)【国際特許分類】
   A47G 9/02 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
A47G9/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132276
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】592150930
【氏名又は名称】富士ベッド工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520181733
【氏名又は名称】株式会社Morght
(74)【代理人】
【識別番号】100100011
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 省三
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】森 まどか
【テーマコード(参考)】
3B102
【Fターム(参考)】
3B102BA02
(57)【要約】
【課題】保温性を維持しつつ寝返り易い掛け布団を提供する。
【解決手段】肌掛け布団1は、短手方向キルティングC1及び長手方向キルティングC2によって区画室行列Pijに区分されている。区画室列P11、P21、…、P61;P17、P27、…、P67の短手方向長さLX1、LX7は大きく、区画室列P12、P22、…、P62;P13、P23、…、P63;…;P16、P26、…、P66の短手方向の長さLX2、LX3、LX4、LX5は小さい。区画室行P11、P12、…、P17;P41、P42、…、P47;…;P51、P52、…、P57;P61、P62、…、P67の面密度は小さく、区画室行P21、P22、…、P27;P31、P32、…、P37の面密度は大きい。線接触領域は、短手方向長さが小さくかつ面密度が大きい区画室P22、P23、P24、P25、P26;P32、P33、P34、P35、P36のみである。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周縁が縫い合わされた2つの生地によって構成された掛布団であって、
前記掛け布団の短手方向及び長手方向に平行な辺を有する矩形状の複数の区画室に区分され、
前記複数の区画室を、右端側区画室列、左端側区画室列及び前記右端側区画室列及び前記左端側区画室列に挟まれた中央側区画室行列とした場合、前記右側区画室列及び前記左端側区画室列の各区画室の短手方向長さは所定長さ以上かつ前記中央側区画室行列の各区画室の短手方向長さは前記所定長さ未満であり、
前記右端側区画室列及び前記左端側区画室列の少なくとも一部の区画室の充填部材面密度は所定面密度未満であり、前記中央側区画室行列の少なくとも一部の区画室の充填部材面密度は前記所定面密度以上である掛け布団。
【請求項2】
前記右端側区画室列は1つであり、
前記左端側区画室列は1つである請求項1に記載の掛け布団。
【請求項3】
外周縁が縫い合わされた2つの生地によって構成された掛布団であって、
前記掛け布団の短手方向及び長手方向に平行な辺を有する矩形状の複数の区画室に区分され、
前記複数の区画室を、右端側区画室列、左端側区画室列及び前記右端側区画室列及び前記左端側区画室列に挟まれた中央側区画室行列とした場合、前記右側区画室列及び前記左端側区画室列の各区画室の短手方向長さは所定長さ以上かつ前記中央側区画室行列の各区画室の短手方向長さは前記所定長さ未満であり、
前記複数の区画室を、上端側区画室行、下端側区画室行及び前記上端側区画室行及び前記下端側区画室行に挟まれた中央側区画室行とした場合、前記上端側区画室行及び前記下端側区画室行の各区画室の充填部材面密度は所定面密度未満であり、前記中央側区画室行の各区画室の充填部材面密度は前記の所定面密度以上である掛け布団。
【請求項4】
前記右端側区画室列は1つであり、
前記左端側区画室列は1つであり、
前記上端側区画室行は1つ又は複数であり、
前記下端側区画室行は1つ又は複数であり、
前記中央側区画室行は1つ又は複数である請求項3に記載の掛け布団。
【請求項5】
前記区画室の区分はキルティングによって行われる請求項1に記載の掛け布団。
【請求項6】
外周縁が縫い合わされた2つの生地によって構成された掛布団であって、
前記掛け布団の短手方向及び長手方向に平行な辺を有する矩形状の複数の区画室に区分され、
前記複数の区画室を、右端側区画室列、左端側区画室列及び前記右端側区画室列及び前記左端側区画室列に挟まれた中央側区画室行列とした場合、前記右側区画室列及び前記左端側区画室列の各区画室の短手方向長さは所定長さ以上かつ前記中央側区画室行列の各区画室の短手方向長さは前記所定長さ未満であり、
前記右端側区画室列及び前記左端側区画室列の各区画室の充填部材面密度は所定密度未満であり、前記中央側区画室行列の各区画室の充填部材面密度は前記所定密度以上である掛け布団。
【請求項7】
前記右端側区画室列は1つであり、
前記左端側区画室列は1つである請求項6に記載の掛け布団。
【請求項8】
前記中央側区画室行列を上端側区画室行、下端側区画室行及び前記上端側区画室行及び前記下端側区画室行に挟まれた中央側区画室行とした場合、前記上端側区画室行及び前記下端側区画室行の各区画室の充填部材面密度は前記中央側区画室行列の各区画室の充填部材面密度より大きい請求項6に記載の掛け布団。
【請求項9】
前記上端側区画室行は1つ又は複数であり、
前記下端側区画室行は1つ又は複数であり、
前記中央側区画室行は1つ又は複数である
請求項8に記載の掛け布団。
【請求項10】
前記区画室の区分はキルティング、及び布製通路を用いたマチによって行われる請求項6に記載の掛け布団。
【請求項11】
外周縁が縫い合わされた2つの生地によって構成された掛布団であって、
前記掛け布団の短手方向及び長手方向に平行な辺を有する矩形状の複数の区画室に区分され、
前記掛け布団の中央部の前記各区画室は前記掛け布団の下部材に対する接触面積比が所定値未満の線接触領域であり、前記掛け布団の前記中央部以外の前記各区画室は、前記掛け布団の前記下部材に対する接触面積比が前記所定値以上の面接触領域である掛け布団。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は保温性を維持しつつ寝返り易い掛け布団に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、掛け布団は、外周縁を縫い合わされた上下の生地間に羽毛等の充填部材を充填し、その際に、充填部材の片寄りを防止するために、上下の生地間はキルティング(又はマチ)によって区画されている。通常、掛け布団はたとえば短手方向で4等分、長手方向で5等分されて複数の区画室が形成される。たとえば、区画室の短手方向(X方向)長さLX0=37.5cm、長手方向(Y方向)長さLY0=42cmとなり、充填部材の量(厚さt)も通常通りである。従って、図9の短手方向(X方向)の区画室P01、P02、P03、P04、P05に示すごとく、各区画室P01、P02、P03、P04、P05の下面の曲率は小さくなり、被験者(又は敷き布団)と掛け布団との接触は摩擦抵抗が大きい面接触となる。つまり、掛け布団全体がたとえば接触面積比70%~80%の面接触状態となる。この結果、被験者が寝返りすると、掛け布団も被験者に追随してずれることになる。
【0003】
図10は従来の掛け布団を示し、(A)は平面図、(B)は(A)のB-B線断面図である。尚、図10の(A)における上下左右方向は被験者から見た方向である。
【0004】
図10に示すように、掛け布団100は、外周縁が縫い合わされた短手方向(X方向)長さLたとえば150cm、長手方向(Y方向)長さLたとえば210cmの2枚の生地よりなり、羽毛等の充填部材が片寄らないようにキルティングCによって行列状の同一区画室Pij(i=1、2、3、4;j=1、2、…、7)に区分されている。この場合、区画室Pijの短手方向(X方向)の長さLX0’は通常の掛け布団のそれより短い(LX0’<LX0)。たとえば、区画室Pijの短手方向長さLX0’はL/7=28~30cmである。尚、区画室Pijの長手方向長さLY0はL/4=52~54cmである。また、図10の(B)に示すごとく、各区画室Pijへの充填部材の量(又は厚さt’)も通常の掛け布団のそれより増量されている(t’>t)。たとえば、区画室Pijの厚さt’は6cmである。この結果、区画室Pijの下面の曲率は大きくなり、線接触状態となる。
【0005】
図11図10の掛け布団100に対する被験者の寝返り動作を説明するための図である。
【0006】
図11に示すごとく、被験者200が寝返りすると、被験者200とたとえば区画室P24との接触は、区画室P24の下面の曲率が大きくなっているので、面接触状態でなく凸状接触状態つまり線接触状態に近くなる。つまり、掛け布団全体がたとえば接触面積比55%~65%の線接触状態となる。従って、摩擦抵抗が小さくなるので、被験者200が寝返りしても掛け布団100は被験者200に追随しなくなり、この結果、掛け布団100がずれることがなくなり、寝返りし易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3185781号公報
【特許文献2】特開2003-144285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図12図10の従来の掛け布団の課題を説明するための図である。すなわち、短手方向(X方向)が小さい区画室の領域は、図12の(A)に示すごとく、掛け布団100全体であり、羽毛の充填部材の増量の区画室の領域も、図12の(B)に示すごとく、掛け布団100全体である。従って、短手方向(X方向)が小さくかつ羽毛の充填部材が増量された区画室の下面の曲率が大きくなる摩擦抵抗が小さい線接触領域は、図12の(A)の領域と図12の(B)の領域とのアンド条件となるので、図12の(C)に示すごとく、掛け布団100全体となる。しかしながら、上述の図12の(B)に示すごとく、全区画室Pijに充填部材を増量すると、掛け布団100の総重量が増加して被験者200が寝苦しくなると共に、掛け布団の製造コストも上昇するという課題がある。また、図12の(A)に示すごとく、掛け布団100の錘として作用する右端側区画室列P11、P21、P31、P41図10の(A))及び左端側区画室列P17、P27、P37、P47図10の(A))の短手方向(X方向)長さLX0’は短くなり、従って、右端側及び左端側の摩擦抵抗が小さくなり、掛け布団100が安定しないという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、本発明に係る掛け布団は、外周縁が縫い合わされた2つの生地によって構成された掛布団であって、掛け布団の短手方向及び長手方向に平行な辺を有する矩形状の行列状に配置された複数の区画室に区分され、複数の区画室を、右端側区画室列、左端側区画室列及び右端側区画室列及び左端側区画室列に挟まれた中央側区画室行列とした場合、右側区画室列及び左端側区画室列の各区画室の短手方向長さは所定長さ以上かつ中央側区画室行列の各区画室の短手方向長さは所定長さ未満であり、右端側区画室列及び左端側区画室列の少なくとも一部の区画室の充填部材面密度は所定面密度未満であり、中央側区画室行列の少なくとも一部の区画室の充填部材面密度は所定面密度以上である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、充填部材の増量領域が減少して掛け布団の総重量が減少するので、被験者の寝苦しさを解消でき、掛け布団の製造コストを低減できる。また、右端側区画室列、左端側区画室列の短手方向長さを大きくでき、掛け布団を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る掛け布団の第1の実施の形態を示す平面図である。
図2図1の掛け布団の線接触領域を説明するための図である。
図3図1の掛け布団の製造方法を説明するための図である。
図4】本発明に係る掛け布団の第2の実施の形態を示す平面図である。
図5図4の充填口形成前の斜視図であって、(A)は全体斜視図、(B)は部分斜視図である。
図6図4の掛け布団の線接触領域を説明するための図である。
図7図4の掛け布団の製造方法を説明するための図である。
図8図4の掛け布団の寝返りによるずれを説明する表及び棒グラフである。
図9】通常の掛け布団を示す横断面図である。
図10】従来の掛け布団を示し、(A)は平面図、(B)は(A)のB-B線断面図である。
図11図10の掛け布団に対する被験者の寝返り動作を説明するための図である。
図12図10の掛け布団の課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明に係る掛け布団の第1の実施の形態を示す正面図である。尚、図1の掛け布団は肌掛け布団である。また、上下左右方向は被験者から見た方向である。さらに、区画室行とは短手方向(X方向)の区画室の配列であり、区画室列とは長手方向(Y方向)の区画室の配列であり、区画室行列とは短手方向(X方向)及び長手方向(Y方向)の区画室の配列である。
【0013】
図1において、肌掛け布団1は、外周縁C0が縫い合わされた短手方向(X方向)長さLたとえば155cm、長手方向(Y方向)長さLたとえば215cmの2枚の生地よりなり、羽毛よりなる充填部材が片寄らないように短手方向(X方向)キルティングC1及び長手方向(Y方向)キルティングC2によって行列状区画室Pij(i=1、2、…、6;j=1、2、…、7)に区分されている。この場合、右端側区画室列P11、P21、…、P61;左端側区画室列P17、P27、…、P67の短手方向(X方向)の長さLX1、LX7は31.0cmと大きく、また、右端側区画室列及び左端側区画室列に挟まれた中央側区画室列の区画室列P12、P22、…、P62;P13、P23、…、P63;P14、P24、…、P64;P15、P25、…、P65;P16、P26、…、P66の短手方向(X方向)の長さLX2、LX3、LX4、LX5は18.6cmと小さい。他方、区画室行P11、P12、…、P17;P21、P22、…、P27;…;P61、P62、…、P67の長手方向(Y方向)長さLY1、LY2、…、LY6はすべて25.8cmである。つまり、短手方向(X方向)の長さが小さい領域は、図2の(A)に示すごとく、右端側区画室列P11、P21、…、P61及び左端側区画室列P17、P27、…、P67に挟まれた中央側区画室行列Pij(i=1、2、…、6;j=2、3、…、6)である。
【0014】
図1における羽毛の充填部材の面密度wを説明する。区画室行P11、P12、…、P17;P41、P42、…、P47;…;P51、P52、…、P57;P61、P62、…、P67については、w=w=w=w=8.8mg/cmつまり一区画室行当り重量35gであり、また、区画室行P21、P22、…、P27;P31、P32、…、P37については、w=w=13.8mg/cmつまり一区画室行当り重量55gである。従って、充填部材の増量領域は、図2の(B)に示すごとく、第1行目の上端側区画室行及び第4行目、第5行目、第6行目の下端側区画室行に挟まれた第2行目、第3行目の中央側区画室行のみである。この場合、充填部材の増量領域は被験者の胸部近傍の保温領域として作用し、保温性を維持できる。但し、肌掛けの場合、保温領域は比較的少なくてもよい。尚、右端側区画室列は1列であり、左端側区画室列は1列であり、上端側区画室行は1行又は複数行であり、下端側区画室行は1行又は複数行であり、中央側区画室行は1行又は複数行である。
【0015】
短手方向(X方向)が小さい領域と充填部材の増量領域とのアンド条件領域である線接触領域は、区画室P22、P23、P24、P25、P26;P32、P33、P34、P35、P36のみであり、図2の(C)に示すごとく、肌掛け布団1の中央上部のみであり、その他は面接触領域である。つまり、線接触領域は肌掛け布団1の一部分のみである。
【0016】
このように、図1の肌掛け布団1においては、羽毛の充填部材の増量領域は図2の(B)に示すごとく、上中央部の一部に限定されるので、肌掛け布団1の総重量が減少して被験者が寝苦しくなることはなく、また、肌掛け布団1の製造コストを低減できる。さらに、図2の(A)に示すごとく、錘として作用する左端側区画室列及び右端側区画室列の短手方向(X方向)長さが大きいので、その部分の摩擦抵抗が大きくなり、肌掛け布団1は安定する。
【0017】
図1の掛け布団(肌掛け布団)の製造方法を図3を参照して説明する。
【0018】
始めに、図3の(A)の短手方向(X方向)キルティング加工工程を参照すると、外周縁C0が縫い合わされた短手方向(X方向)長さL=155cm、長手方向(Y方向)長さL=215cmの2枚の生地に対して短手方向(X方向)キルティングC1を施して第1の区画室行P、第2の区画室行P、…、第6の区画室行Pを形成する。このキルティングC1の外周縁C0側に羽毛を充填するためのパイプを挿入するための孔H1を設ける。尚、11は羽毛の充填口である。
【0019】
次に、図3の(B)の羽毛充填工程を参照すると、羽毛を充填するためのパイプ先端(図示せず)を充填口11から外周縁C0に沿ってキルティングC1の孔H1に挿入する。始めに、パイプ先端を第1の区画室行Pまで挿入して羽毛を35g封入する。次に、パイプ先端を第2の区画室行Pに後退させて羽毛を55g封入する。次に、パイプ先端を反転させて第6の区画室行Pまで挿入して羽毛を35g封入する。次に、パイプ先端を第5の区画室行Pまで後退させて羽毛を35g封入する。次に、パイプ先端を第4の区画室行Pまで後退させて羽毛を35g封入する。次に、パイプ先端を第3の区画室行Pまで後退させて羽毛を55g封入する。そして、パイプを充填口11から引抜く。次いで、各区画室行P、P、…、P間の孔H1を縫合して塞ぎ、区画室行間の羽毛の移動を防止する。さらに、充填口11を縫合する。
【0020】
最後に、図3の(C)の長手方向キルティング工程を参照すると、長手方向(Y方向)キルティングC2を施して第1の区画室行P、第2の区画室行P、…、第6の区画室行Pを分断し、区画室P11、P12、…、P17;P21、P22、…、P27;…;P61、P62、…、P67を形成する。
【0021】
図1の第1の実施の形態において、区画室P11、P21、…、P61;P17、P27、…、P67の短手方向(X方向)の長さLX1、LX7は31.0cmであり、区画室P12、P22、…、P62;P13、P23、…、P63;…;P16、P26、…、P66の短手方向(X方向)の長さLX2、LX3、…、LX6は18.6cmであるが、区画室P11、P21、…、P61;P17、P27、…、P67の短手方向(X方向)の長さLX1、LX7は所定値たとえば24.8cm以上であればよく、区画室P12、P22、…、P62;P13、P23、…、P63;…;P16、P26、…、P66の短手方向(X方向)の長さLX2、LX3、…、LX6は所定値たとえば24.8cm未満であればよい。尚、所定値は掛け布団の種類、サイズ、充填部材等によって変化する。また、区画室P11、P12、…、P17;P41、P42、…、P47;P51、P52、…、P57;P61、P62、…、P67の面密度は8.8mg/cmであり、区画室P21、P22、…、P27;P31、P32、…、P37の面密度は13.8mg/cmであるが、区画室P11、P12、…、P17;P41、P42、…、P47;P51、P52、…、P57;P61、P62、…、P67の面密度は所定値たとえば11.3mg/cm未満であればよく、区画室P21、P22、…、P27;P31、P32、…、P37の面密度は所定値たとえば11.3mg/cm以上であればよい。尚、所定値は掛け布団の種類、サイズ、充填部材等によって変化する。
【0022】
図4は本発明に係る掛け布団の第2の実施の形態を示す正面図、図5図4の充填口形成前の斜視図であって、(A)は全体斜視図、(B)は部分斜視図である。尚、図4図5の掛け布団は合掛け布団である。また、上下左右方向は被験者から見た方向である。さらに、区画室行とは短手方向(X方向)の区画室の配列であり、区画室列とは長手方向(Y方向)の区画室の配列であり、区画室行列とは短手方向(X方向)及び長手方向(Y方向)の区画室の配列である。
【0023】
図4図5において、合掛け布団2は、外周縁C0が縫い合わされた短手方向(X方向)長さLたとえば155cm、長手方向(Y方向)長さLたとえば220cmの2枚の生地よりなり、羽毛よりなる充填部材が片寄らないように短手方向(X方向)キルティングC1、長手方向(Y方向)キルティングC2及びマチMによって右端側区画室列P11、P21、…、P51、左端側区画室列P18、P28、…、P58及び右端側区画室列及び左端側区画室列に挟まれた中央側区画室行列Pij(i=1、2、3;j=2、3、…、7)に区分されている。この場合、右端側区画室列P11、P21、…、P51及び左端側区画室列P18、P28、…、P58の短手方向(X方向)の長さLX1、LX8は31.0cmと大きく、また、区画室行列Pijの区画室列P12、P22、P32;P13、P23、P33;P14、P24、P34;P15、P25、P35;P16、P26、P36;P17、P27、P37の短手方向(X方向)の長さLX2、LX3、LX4、LX5、LX6、LX7は15.5cmと小さい。他方、区画室行列Pijの上端側区画室行P12、P13、…、P17;中央側区画室行P22、P23、…、P27;下端側区画室行P32、P33、…、P37の長手方向(Y方向)長さLY1、LY2、LY3は、それぞれ、66cm、88cm、66cmであり、区画室P11、P21、P31、P41、P51;P18、P28、P38、P48、P58の長手方向(Y方向)の長さはすべて44cmである。つまり、短手方向(X方向)の長さが小さい領域は、図6の(A)に示すごとく、右端側区画室列P11、P21、…、P51及び左端側区画室列P18、P28、…、P58に挟まれた区画室行列Pij(i=1、2、3;j=2、3、…、7)である。尚、右端側区画室列P11、P21、…、P51は1列であり、左端側区画室列P18、P28、…、P58は1列であり、区画室行列Pijの上端側区画室行P12、P13、…、P17は1行又は複数行であり、下端側区画室行P32、P33、…、P37は1行又は複数行であり、中央側区画室行P22、P23、…、P27も1行又は複数行である。
【0024】
図4における羽毛の充填部材の面密度wを説明する。右端側区画室列P11、P21、…、P51;左端側区画室列P18、P28、…、P58については、w=w=18.2mg/cmつまり一区画室列当り重量124gである。区画室行列Pijの上端側区画室行P12、P13、…、P17;中央側区画室行P22、P23、…、P27;下端側区画室行P32、P33、…、P37については、w=36.2mg/cm、w=31.5mg/cm、w=36.2mg/cmつまり一区画室行当り重量37g、43g、37gである。従って、充填部材の増量領域は、図6の(B)に示すごとく、上端側区画室行、下端側区画室行、上端側区画室行及び下端側区画室行に挟まれた中央側区画室行のみであり、充填部材の増量領域は図1の肌掛け布団の場合より広い保温領域として作用し、保温性を維持できる。
【0025】
図4図6の(B)において、充填部材の増量領域である上端側区画室行P12、P13、…、P17及び下端側区画室行P32、P33、…、P37の面密度36.2mg/cmは中央側区画室行P22、P23、…、P27の面密度31.5mg/cmより大きくなっている。つまり、上端側区画室行P12、P13、…、P17及び下端側区画室行P32、P33、…、P37の線接触面積は中央側区画室行P22、P23、…、P27の線接触面積より小さくなっている。これにより、合掛け布団はより安定する。
【0026】
短手方向(X方向)が小さい領域と充填部材の増量領域とのアンド条件領域である線接触領域は、図6の(C)に示すごとく、区画室行列Pij(i=1、2、3;j=2、3、…、7)であり、その他は面接触領域である。
【0027】
このように、図4の合掛け布団2においては、羽毛の充填部材の増量領域は図6の(B)に示すごとく、中央部に限定されるので、合掛け布団2の総重量が減少して被験者が寝苦しくなることはなく、また、合掛け布団2の製造コストを低減できる。さらに、図6の(A)に示すごとく、錘として作用する右端側区画室列及び左端側区画室列の短手方向(X方向)長さが大きいので、その部分の摩擦抵抗が大きくなり、合掛け布団2は安定する。
【0028】
図4の掛け布団(合掛け布団)の製造方法を図7を参照して説明する。
【0029】
始めに、図7の(A)のマチ加工工程及び長手方向(Y方向)キルティング加工工程を参照すると、短手方向(X方向)長さL=155cm、長手方向(Y方向)長さL=220cmの2枚の生地に対して高さ3cm程度のマチMを形成すると共に、長手方向(Y方向)キルティングC2を施し、この結果、上端側区画室行P12、P13、…、P17、中央側区画室行P22、P23、P24、P25、P26、P27、下端側区画室行P32、P33、…、P37を形成する。この場合、マチMが交差する部分に布製通路H2を設け、上下の区画室を連通させる(参照:特許文献2)。すなわち、布製通路H2に羽毛を充填するためのパイプを挿入したときに上の区画室が下の区画室に連通し、上の区画室に羽毛を確実に充填できる。また、充填終了後に布製通路H2からパイプを抜き取ると、布製通路H2は上の区画室の羽毛によって圧迫されて、布製通路H2は閉塞するので、上下の区画室間の羽毛の移動を防止できる。
【0030】
次に、図7の(B)の羽毛充填工程を参照すると、羽毛を充填するためのパイプ先端(図示せず)を充填口11-1、11-2、11-3、11-4、11-5から挿入して羽毛充填を行う。
【0031】
始めに、パイプ先端を充填口11-1の左側から区画室P12まで挿入して羽毛を37g封入する。次に、パイプ先端を区画室P22に後退させて羽毛を43g封入する。次に、パイプ先端を区画室P32まで後退させて羽毛を37g封入する。同様に、パイプ先端を充填口11-1の右側から区画室P13まで挿入して羽毛を37g封入する。次に、パイプ先端を区画室P23に後退させて羽毛を43g封入する。次に、パイプ先端を区画室P33まで後退させて羽毛を37g封入する。そして、パイプを充填口11-1から引抜く。
【0032】
次に、パイプ先端を充填口11-2の左側から区画室P14まで挿入して羽毛を37g封入する。次に、パイプ先端を区画室P24に後退させて羽毛を43g封入する。次に、パイプ先端を区画室P34まで後退させて羽毛を37g封入する。同様に、パイプ先端を充填口11-2の右側から区画室P15まで挿入して羽毛を37g封入する。次に、パイプ先端を区画室P25に後退させて羽毛を43g封入する。次に、パイプ先端を区画室P35まで後退させて羽毛を37g封入する。そして、パイプを充填口11-2から引抜く。
【0033】
次に、パイプ先端を充填口11-3の左側から区画室P16まで挿入して羽毛を37g封入する。次に、パイプ先端を区画室P26に後退させて羽毛を43g封入する。次に、パイプ先端を区画室P36まで後退させて羽毛を37g封入する。同様に、パイプ先端を充填口11-3の右側から区画室P17まで挿入して羽毛を37g封入する。次に、パイプ先端を区画室P27に後退させて羽毛を43g封入する。次に、パイプ先端を区画室P37まで後退させて羽毛を37g封入する。そして、パイプを充填口11-3から引抜く。
【0034】
次に、パイプ先端を充填口11-4に挿入して右端側区画室列に羽毛を124g封入し、パイプを充填口11-4から引抜く。また、パイプ先端を充填口11-5に挿入して左端側区画室列に羽毛を124g封入し、パイプを充填口11-5から引抜く。
【0035】
最後に、図7の(C)の短手方向キルティング加工工程を参照すると、まず、充填口11-1、11-2、11-3、11-4、11-5を縫合する。次に、短手方向(X方向)キルティングC1を施して右端側区画室列、左端側区画室列を分断し、区画室P11、P21、…、P51;P18、P28、…、P58を形成する。
【0036】
図4の第2の実施の形態において、区画室P11、P21、…、P51;P18、P28、…、P58の短手方向(X方向)の長さLX1、LX8は31.0cmであり、区画室P12、P13、…、P17;P22、P23、…、P27;P32、P33、…、P37の短手方向(X方向)の長さLX2、LX3、…、LX7は15.5cmであるが、区画室P11、P21、…、P51;P18、P28、…、P58の短手方向(X方向)の長さLX1、LX8は所定値たとえば24.8cm以上であればよく、区画室P12、P13、…、P17;P22、P23、…、P27;P32、P33、…、P37の短手方向(X方向)の長さLX2、LX3、…、LX7は所定値たとえば24.8cm未満であればよい。尚、所定値は掛け布団の種類、サイズ、充填部材等によって変化する。また、区画室P11、P21、…、P51;P18、P28、…、P58の面密度w、wは18.2mg/cmであり、区画室P12、P13、…、P17;P32、P33、…、P37の面密度w、wは36.2mg/cmであり、区画室P22、P23、…、P27の面密度wは31.5mg/cmであるが、区画室P11、P12、…、P51;P18、P28、…、P58;P12、P13、…、P17の面密度は所定値たとえば27.0mg/cm未満であればよく、区画室P12、P13、…、P17;P22、P23、…、P27;P32、P33、…、P37の面密度は所定値たとえば27.0mg/cm以上であればよい。尚、所定値は掛け布団の種類、サイズ、充填部材等によって変化する。
【0037】
図8図4の合掛け布団の寝返りによるずれを示し、(A)は表、(B)は棒グラフである。155cm×220cmの同一サイズの短手方向(X方向)に4分割、長手方向(Y方向)に5分割した通常の合掛け布団と比較した。すなわち、被験者を同一ベッド中央部に仰向けに寝せ、顎下部に各合掛け布団の中央部を配し、被験者の自然の寝返りした際に、眉間と顎中央部と結ぶ延長線上の眉間上部を起点として各合掛け布団の中央部のずれを観測した。この結果、通常の合掛け布団の場合、最小値18cm~最大値56cm、平均値42cmであるのに対し、第2の実施の形態の合掛け布団の場合、最小値20cm~最大値47cm、平均値35cmであった。このように、第2の実施の形態によれば、寝返りの際の掛け布団のずれは小さいことが分った。
【0038】
上述の実施の形態において、肌掛け布団、合掛け布団を用いている。肌掛け布団は薄く、たとえば夏用であり、合掛け布団は若干厚く、たとえば春、秋用であり、肌掛け布団と合掛け布団とを組合せてたとえば冬用となる。しかし、本発明は肌掛け布団、合掛け布団以外にも通常の掛け布団にも適用し得る。つまり、図1の肌掛け布団は肌掛け布団を含むすべての掛け布団に適用でき、また、図4の合掛け布団は合掛け布団を含むすべての掛け布団に適用できる。
【0039】
また、上述の実施の形態においては、充填部材として羽毛以外を用いることもできる。
【0040】
さらに、本発明は上述の実施の形態の自明の範囲のいかなる変更にも適用し得る。
【符号の説明】
【0041】
01、P02、…、P05;P11、P12、…;P21、P22、…;P31、P32、…;P41、P42、…;P51、P52、…;P61、P62、…:区画室
、P、…:区画室行
11、11-1、…、11-5:充填口
1:肌掛け布団
2:合掛け布団
100:掛け布団
C0:外周縁
C1:短手方向(X方向)キルティング
C2:長手方向(Y方向)キルティング
M:マチ
H1:孔
H2:布製通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12