(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029855
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ナット脱落防止具
(51)【国際特許分類】
F16B 39/20 20060101AFI20240229BHJP
F16B 41/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
F16B39/20 A
F16B41/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132277
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000205557
【氏名又は名称】アイエスケー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(74)【代理人】
【識別番号】100142376
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】川原 貢
(72)【発明者】
【氏名】中川 宏起
(72)【発明者】
【氏名】坂上 雅夫
(57)【要約】
【課題】ナットとの共回りが生じたことが画像によって容易に検知可能となる。
【解決手段】ナット脱落防止具10は、リング部20と、脚部22,22の対と、摘部24,24の対とを備える。リング部20は線材を有する。この線材は環状に屈曲することで環状部40および交差箇所42を形成する。脚部22は、リング部20が有する線材の両端それぞれに連続するように設けられる。摘部24,24の対は、脚部22,22それぞれに1対1に連なる。摘部24,24の対は、平面領域をそれぞれ形成する。摘部24,24の対は、環状部40の中心軸に沿うよう脚部22,22それぞれから立つ。摘部24,24の対は互いに沿っている。摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bが環状部40の外径φAの1.02倍以上1.5倍以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に屈曲することで環状部および交差箇所を形成する線材を有するリング部と、
前記リング部が有する前記線材の両端それぞれに連続するように設けられる脚部の対と、
前記脚部それぞれに1対1に連なり平面領域をそれぞれ形成する摘部の対とを備えるナット脱落防止具であって、
前記摘部の対が、前記環状部の中心軸に沿うよう前記脚部それぞれから立ち、かつ、互いに沿っており、
前記摘部の対の一方と他方との外幅が前記環状部の外径の1.02倍以上1.5倍以下であることを特徴とするナット脱落防止具。
【請求項2】
前記摘部の対の一方と他方との外幅が前記環状部の外径の1.06倍以上1.3倍以下であることを特徴とする請求項1に記載のナット脱落防止具。
【請求項3】
前記摘部の対の一方と他方との外幅が前記環状部の外径の1.10倍以上1.22倍以下であることを特徴とする請求項1に記載のナット脱落防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナット脱落防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1はナット脱落防止具を開示する。このナット脱落防止具は、螺旋状のコイルバネ部と、一対の輪状の押圧部とを備える。コイルバネ部は、ボルトのネジ外径よりも小さな内径を有する。コイルバネ部は、平面視の一部分で重複する重複部を有する。押圧部は、コイルバネ部の両端から互いに対向してコイルバネ部の中心軸から遠ざかる平面方向に向けて延びるよう設けられる。このナット脱落防止具は、押圧部を互いに近接させた場合にコイルバネ部の内径がネジの外径よりも大きくなる様に構成される。これにより、このナット脱落防止具のコイルバネ部をボルトのネジ溝に沿って嵌めることが可能となる。押圧部の少なくとも一端には、コイルバネ部よりも中心軸に向けて延びる線状突起部が設けられている。特許文献1に開示されたナット脱落防止具は、ワンタッチで取付が可能で、構造が簡単で、かつ、長期の使用にも耐え得る。
【0003】
特許文献2はナット脱落防止具を開示する。このナット脱落防止具は、ボルトの先端部に装着して、そのボルトにねじ込まれているナットの脱落を防止するものである。このナット脱落防止具は、弾性を有する線材からなる。このナット脱落防止具は、リング部と、線材の両端部に形成してリング部を拡径操作する一対の操作部とを備える。リング部は、この線材の中央部に形成される。リング部は、ボルトの外周面を把持する。その線材の一端部は、ナットに接触してこのナットの移動を規制すると共に、ナットの緩み方向への回転力に起因する摩擦力により、リング部を縮径させる方向に変位するものである。特許文献2に開示されたナット脱落防止具は、ナットとの間の摩擦力が大きくなった場合にも、ナット脱落防止具とナットとが共回りして脱落するのを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-52648号公報
【特許文献2】特開2019-203516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に開示されたナット脱落防止具には、万が一ナットとの共回りが生じた際には撮像装置を介してそのことを検知し難いという問題点がある。本発明は、このような問題を解決するものである。本発明の目的は、ナットとの共回りが生じたことを画像によって容易に検知可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
図面に基づき本発明のナット脱落防止具が説明される。なおこの欄で図中の符号を使用したのは発明の内容の理解を助けるためであって内容を図示した範囲に限定する意図ではない。
【0007】
上述された課題を解決するために、本発明のある局面に従うと、ナット脱落防止具10は、リング部20と、脚部22,22の対と、摘部24,24の対とを備える。リング部20は線材を有する。この線材は環状に屈曲することで環状部40および交差箇所42を形成する。脚部22は、リング部20が有する線材の両端それぞれに連続するように設けられる。摘部24,24の対は、脚部22,22それぞれに1対1に連なる。摘部24,24の対は、平面領域をそれぞれ形成する。摘部24,24の対は、環状部40の中心軸Lに沿うよう脚部22,22それぞれから立つ。摘部24,24の対は互いに沿っている。摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bが環状部40の外径φAの1.02倍以上1.5倍以下である。
【0008】
また、上述された摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bが環状部40の外径φAの1.06倍以上1.3倍以下であることが望ましい。
【0009】
また、上述された摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bが環状部40の外径φAの1.10倍以上1.22倍以下であることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ナットとの共回りが生じたことが画像によって容易に検知可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のある実施形態にかかるナット脱落防止具の平面図である。
【
図2】本発明のある実施形態にかかるナット脱落防止具の側面図である。
【
図3】本発明のある実施形態にかかるナット脱落防止具の背面図である。
【
図4】本発明のある実施形態にかかるナット脱落防止具がボルトに固定された状況が示されている図である。
【
図5】本発明の比較例にかかるナット脱落防止具の平面図である。
【
図6】本発明の実施例および比較例において用いられる模擬鉄塔の正面図である。
【
図7】本発明の実施例および比較例における撮像方向を示す概念図である。
【
図8】本発明の実施例および比較例にかかる撮像方向およびナット脱落防止具の方向ごとの正答率が示される図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明が図面に基づき詳細に説明される。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付される。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0013】
[構成の説明]
図1は、本発明のある実施形態にかかるナット脱落防止具10の平面図である。
図2は、本発明のある実施形態にかかるナット脱落防止具10の側面図である。
図3は、本発明のある実施形態にかかるナット脱落防止具10の背面図である。
図1乃至
図3に基づいて、本実施形態にかかるナット脱落防止具10の構成が説明される。
【0014】
本実施形態にかかるナット脱落防止具10は、リング部20と、脚部22,22の対と、摘部24,24の対とを備える。
【0015】
本実施形態にかかるリング部20と脚部22,22の対と摘部24,24の対とは線材によって構成される。リング部20は、その線材のうち中央付近部分からなる。その部分が、環状部40および交差箇所42を形成する。この環状部40において対向する箇所間の、環状部40の中心軸Lに直交する方向についての差し渡しの最小値(以下「環状部40の外径φA」と称される)に応じて、本実施形態にかかるナット脱落防止具10の使用に適したボルト120の呼び径が決まる。
【0016】
脚部22,22の対は、上述された線材のうちリング部20に連なる部分からなる。これにより、脚部22,22の対は、リング部20を構成する部分の両端それぞれに連続するように設けられることとなる。
【0017】
摘部24,24は、上述された線材のうち脚部22,22に連なる部分からなる。より具体的には、本実施形態にかかる摘部24,24は、上述された線材の両端を屈曲させたものからなる。その結果、摘部24,24は、脚部22,22それぞれに1対1に連なることとなる。
【0018】
摘部24は、軸状部60と、突出部62を有している。軸状部60は、脚部22,22それぞれに直接連なる。
【0019】
特に
図2において明らかなように、軸状部60は、環状部40の中心軸Lに沿うよう脚部22,22それぞれから立つ。これにより、摘部24が、環状部40の中心軸Lに沿うよう脚部22,22それぞれから立つこととなる。その結果、摘部24,24の対がそれぞれ有する軸状部60,60は、互いに沿っていることとなる。
【0020】
突出部62は、軸状部60に連なる。突出部62のうち付け根部分は、環状部40から離れる方向に向かって軸状部60から突出する。本実施形態の場合、その環状部40から離れる方向とは、環状部40の中心から交差箇所42へ向かう方向である。突出部62のうち先端部分は、軸状部60に沿って延びる。突出部62がこのようになっていることにより、摘部24,24の対は、軸状部60と突出部62とで囲まれる平面領域をそれぞれ形成することとなる。その結果、摘部24,24の対がそれぞれ有する突出部62,62も、互いに沿っていることとなる。摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bは、環状部40の外径φAの1.02倍以上1.5倍以下である。
【0021】
[製造方法の説明]
本実施形態にかかるナット脱落防止具10は、周知の線材が周知の方法で加工されることにより製造される。したがって、その詳細な説明は繰り返されない。
【0022】
[使用方法の説明]
本実施形態にかかるナット脱落防止具10は、ボルト120にねじ込まれたナット122がそのボルト120から抜けることを防止するために使用される。本実施形態にかかるナット脱落防止具10は、次に述べられる手順で使用される。
【0023】
本実施形態にかかるナット脱落防止具10を使用する者(以下「使用者」と称される)は、ナット脱落防止具10のうち一個を周知の容器からつまみ取る。使用者は、容器からつまみ取ったナット脱落防止具10の摘部24,24の対をつまんでそれらを近づける。これにより、摘部24,24の対は互いに近づく方向の力を受けることとなる。摘部24,24の対がその力を受けたことにより、環状部40の外径φAは大きくなる。
【0024】
摘部24,24の対が互いに近づくように変形すると、使用者は、摘部24,24の対をつまんだまま環状部40をボルト120に嵌める。環状部40がボルト120に嵌められると、使用者は、摘部24,24の対から手を離す。摘部24,24の対から使用者の手が離れると、環状部40は元に戻る。環状部40が元に戻ったことに伴い、環状部40はボルト120を締め付ける。環状部40がボルト120を締め付けることで、本実施形態にかかるナット脱落防止具10はボルト120に固定される。
図4は、本実施形態にかかるナット脱落防止具10がボルト120に固定された状況が示されている図である。本実施形態にかかるナット脱落防止具10がボルト120に固定されると、ナット122がゆるんだ際にそのナット122の動きが妨げられるので、そのナット122の脱落は防止される。
【0025】
[効果の説明]
本実施形態にかかるナット脱落防止具10によれば、ナット122との共回りが生じたことが画像によって容易に検知可能となる。
【0026】
〈変形例の説明〉
上述されたナット脱落防止具10は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものである。上述されたナット脱落防止具10は、本発明の技術的思想の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【実施例0027】
以下、本発明の一実施形態における実施例1~17が比較例1~10と共に説明される。なお、実施例1~17および比較例1~10において用いられたナット脱落防止具の形態は、特に説明される点を除き、
図1乃至
図4に示されたナット脱落防止具10の形態と同様であることとする。
【0028】
[実施例1]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具の製造に用いられた線材の太さγ(ひいては環状部40および交差箇所42を形成する線材の太さγ、以下「線径γ」と称される)は直径1.3ミリメートルであった。環状部40の外径φAは16.4ミリメートルであった。摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bは18.5ミリメートルであった。したがって、摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bを環状部40の外径φAで除算して得られる値(以下「B/φA」と称される。)は1.13であった。摘部24,24それぞれにおける、環状部40に近い側の端から遠い側の端までの距離C(以下「摘部24の幅C」と称される。
図1参照。)は5.1ミリメートルであった。環状部40の底から摘部24,24の対のうち低い方の下端までの高さD(以下「摘部24の一方下端高さD」と称される。
図3参照。)は1.2ミリメートルであった。環状部40の底から摘部24,24の対のうち高い方の下端までの高さE(以下「摘部24の他方下端高さE」と称される。
図3参照。)は2.7ミリメートルであった。環状部40の底から摘部24,24の対のうち低い方の上端までの高さF(以下「摘部24の一方突出高さF」と称される。
図3参照。)は10.3ミリメートルであった。環状部40の底から摘部24,24の対のうち高い方の上端までの高さG(以下「摘部24の他方突出高さG」と称される。
図3参照。)は12.0ミリメートルであった。環状部40から交差箇所42へ向かう方向についての交差箇所42から摘部24の付け根までの距離H(以下「間隙距離H」と称される)は12.9ミリメートルであった。
【0029】
[実施例2]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bは19.8ミリメートルであった。他の点は実施例1と同様であった。したがって、B/φA は「1.21」であった。
【0030】
[実施例3]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bは18.0ミリメートルであった。他の点は実施例1と同様であった。したがって、B/φA は「1.10」であった。
【0031】
[実施例4]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bは17.5ミリメートルであった。他の点は実施例1と同様であった。したがって、B/φA は「1.07」であった。
【0032】
[実施例5]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bは21.0ミリメートルであった。他の点は実施例1と同様であった。したがって、B/φA は「1.28」であった。
【0033】
[実施例6]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bは16.8ミリメートルであった。他の点は実施例1と同様であった。したがって、B/φA は「1.02」であった。
【0034】
[実施例7]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bは22.5ミリメートルであった。他の点は実施例1と同様であった。したがって、B/φA は「1.37」であった。
【0035】
[実施例8]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bは24.0ミリメートルであった。他の点は実施例1と同様であった。したがって、B/φA は「1.46」であった。
【0036】
[実施例9]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bは24.6ミリメートルであった。他の点は実施例1と同様であった。したがって、B/φA は「1.50」であった。
【0037】
[実施例10]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、環状部40の外径φAは19.3ミリメートルであった。摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bは20.5ミリメートルであった。他の点は実施例1と同様であった。したがって、B/φAは「1.06」であった。
【0038】
[実施例11]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bは22.0ミリメートルであった。他の点は実施例10と同様であった。したがって、B/φAは「1.14」であった。
【0039】
[実施例12]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bは23.5ミリメートルであった。他の点は実施例10と同様であった。したがって、B/φAは「1.22」であった。
【0040】
[実施例13]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bは25.0ミリメートルであった。他の点は実施例10と同様であった。したがって、B/φAは「1.30」であった。
【0041】
[実施例14]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bは19.7ミリメートルであった。他の点は実施例10と同様であった。したがって、B/φAは「1.02」であった。
【0042】
[実施例15]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bは26.5ミリメートルであった。他の点は実施例10と同様であった。したがって、B/φAは「1.37」であった。
【0043】
[実施例16]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bは28.0ミリメートルであった。他の点は実施例10と同様であった。したがって、B/φAは「1.45」であった。
【0044】
[実施例17]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bは29.0ミリメートルであった。他の点は実施例10と同様であった。したがって、B/φAは「1.50」であった。
【0045】
[比較例1]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bは16.5ミリメートルであった。他の点は実施例1と同様であった。したがって、B/φA は「1.01」であった。
【0046】
[比較例2]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bは16.0ミリメートルであった。他の点は実施例1と同様であった。したがって、B/φA は「0.98」であった。
【0047】
[比較例3]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bは25.0ミリメートルであった。他の点は実施例1と同様であった。したがって、B/φA は「1.52」であった。
【0048】
[比較例4]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bは25.5ミリメートルであった。他の点は実施例1と同様であった。したがって、B/φA は「1.55」であった。
【0049】
[比較例5]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bは19.0ミリメートルであった。他の点は実施例10と同様であった。したがって、B/φAは「0.98」であった。
【0050】
[比較例6]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bは19.4ミリメートルであった。他の点は実施例10と同様であった。したがって、B/φAは「1.01」であった。
【0051】
[比較例7]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bは29.4ミリメートルであった。他の点は実施例10と同様であった。したがって、B/φAは「1.52」であった。
【0052】
[比較例8]
(ナット脱落防止具のサイズ)
本実施例にかかるナット脱落防止具において、摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bは30.0ミリメートルであった。他の点は実施例10と同様であった。したがって、B/φAは「1.55」であった。
【0053】
[比較例9]
(ナット脱落防止具のサイズ)
図5は、本比較例にかかるナット脱落防止具210の平面図である。
図5によって明かな通り、本比較例にかかるナット脱落防止具210において摘部224,224は環状部40の中心軸に直交する方向に延びていた。すなわち、これら摘部224,224の対は、脚部22,22それぞれから立っていなかった。したがって、本比較例において摘部224の一方下端高さDと摘部224の他方下端高さEと摘部224の一方突出高さFと摘部224の他方突出高さGとは存在しなかった。本比較例にかかるナット脱落防止具210において、摘部224,224の対の一方と他方との外幅Bは18.5ミリメートルであった。他の点は実施例1と同様であった。したがって、B/φAは「1.13」であった。
【0054】
[比較例10]
(ナット脱落防止具のサイズ)
比較例9と同様に、本比較例にかかるナット脱落防止具においても摘部224,224は環状部40の中心軸に直交する方向に延びていた。すなわち、これら摘部224,224の対は、脚部22,22それぞれから立っていなかった。したがって、本比較例において摘部224の一方下端高さDと摘部224の他方下端高さEと摘部224の一方突出高さFと摘部224の他方突出高さGとは存在しなかった。本比較例にかかるナット脱落防止具において、摘部224,224の対の一方と他方との外幅Bは22.0ミリメートルであった。他の点は実施例10と同様であった。したがって、B/φAは「1.14」であった。
【0055】
[方向識別実験]
後述される実験が行われた。その実験の目的は、上述された実施例および比較例にかかるナット脱落防止具の方向が次に述べられる画像によって識別可能か否かを確認することである。その画像は、無人航空機に搭載されている撮像装置が次に述べられるものを撮像することにより得られた画像である。その撮像されたものは、鉄塔の部品となっているボルト120へナット122と共に取り付けられている、上述された実施例および比較例にかかるナット脱落防止具であった。したがって、それらの画像には、上述された実施例および比較例にかかるナット脱落防止具がナット122と共にボルト120に取り付けられた状態で写っていることとなる。なお、実施例1~実施例9と比較例1~比較例4と比較例9とにおけるボルト120およびナット122の呼び径は「M16」であった。実施例10~実施例17と比較例5~比較例8と比較例10とにおけるボルト120およびナット122の呼び径は「M20」であった。
【0056】
以下、上述された実験の手順が説明される。
図6は、この実験で用いられる模擬鉄塔300の正面図である。この模擬鉄塔300にナット122と共に取り付けられている7個のボルト120それぞれへナット脱落防止具が取り付けられた。それらのナット脱落防止具は、同一の実施例又は同一の比較例にかかるものであった。それらのナット脱落防止具において、ボルト120の中心から摘部24,24の対の中央へ向かう方向は、時計の短針で言う12時・1時・2時・3時・4時・5時・6時であった。
【0057】
次いで、それらのナット脱落防止具それぞれが、デジタルカメラ(ソニー株式会社 DSC-HX99、1800万画素)により撮像された。そのナット脱落防止具それぞれは、正面方向および斜め方向から撮像された。
図7は撮像方向を示す概念図である。
図7において、模擬鉄塔300のボルト120に取り付けられ、かつ、ボルト120の中心から摘部の対の中央へ向かう方向が3時であるナット脱落防止具を上から見た図が示されている。
図7において矢印Mで示された方向がここで言う正面方向である。
図7において矢印Nで示された方向がここで言う斜め方向である。本実施例の場合、正面方向と斜め方向とがなす角度はπ/4ラジアンであった。上述されたデジタルカメラのレンズはナット122と同じ高さであった。いずれの画像も、逆光にて撮像された。その際、天候は晴天であった。ボルト120からデジタルカメラまでの距離は8メートルであった。これにより、実施例および比較例それぞれにおいて、14枚ずつの画像が得られたこととなる。
【0058】
次いで、審査員10名が次に述べられる手順でナット脱落防止具の方向を識別した。すなわち、まず図示されないディスプレイ(日本エイサー株式会社 K242HL、解像度1920ドット×1080ドット)に上述された画像が1枚ずつ表示された。それらの画像は、ディスプレイ表面上で原寸大となるように表示された。表示時間は1枚の画像につき5秒間であった。得られた画像の表示順序はランダムになるよう定められた。1枚の画像につき表示は5回実施された。ディスプレイ表面から審査員の目までの距離は60センチメートルとなるように調整された。14枚の画像が5回ずつ表示されたので、実施例および比較例それぞれについて、審査員は70枚の画像を見たこととなる。各審査員は、表示された画像に現れたナット脱落防止具の方向を記録した。ここで言う「方向」とは、ナット脱落防止具が取り付けられているボルト120の中心からそのナット脱落防止具の摘部の対の中央へ向かう方向である。したがって、その方向は時計の短針で言う12時・1時・2時・3時・4時・5時・6時のいずれかとなる。これにより、審査員10名がナット脱落防止具の方向を識別したので、1枚の画像につき上述された方向についての50個のデータが得られたこととなる。その後、これらの50個のデータにおける正解率が算出された。この「正解率」とは、審査員が記録したナット脱落防止具の方向が上述された画像におけるナット脱落防止具の方向を正しく示していたデータの数をすべてのデータ数すなわち「50」で除算し「100」を乗算して得られる値のことである。
【0059】
なお、上述された審査員は、いずれも次に述べられる試験に合格した者であった。その試験は、次に述べられる課題を達成するというものである。その課題は、所定の試験片1002個の中から所定の欠陥を有するものを発見するというものである。これらの所定の試験片のうちある1個にバリが形成されていた。これらの所定の試験片のうち他の1個に傷が形成されていた。残り1000個の試験片にはそれらの欠陥が形成されていなかった。この課題へ3度取り組む間にそれら2個の試験片を発見できた者がこの課題を達成したものとみなされた。上述された所定の試験片は、3種類の円筒材である。それらの円筒材の長さはいずれも100ミリメートルであった。それらの円筒材の内径は、80ミリメートル、60ミリメートル、あるいは、40ミリメートルであった。1種類の試験片ごとに上述された1002個の試験片が用意された。それら3種類の試験片それぞれについて上述の課題を達成した者が合格者とされた。
【0060】
図8は、撮像方向およびナット脱落防止具の方向ごとの正答率が示される図である。実施例にかかるナット脱落防止具の正解率と比較例にかかるナット脱落防止具の正解率とを比較すると、後者の場合には90%を下回る場合がある一方、前者の場合にはそのようなことはない。このことから、次に述べられる3種類の要件が満たされる場合、撮像装置の撮像により得られた画像であってもナット脱落防止具10の方向を容易に認識できることが明らかである。それら3種類の要件の1つ目は、摘部24,24の対が環状部40の中心軸Lに沿うよう脚部22,22それぞれから立つことである。それら3種類の要件の2つ目は、摘部24,24の対が互いに沿っていることである。それら3種類の要件の3つ目は、摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bが環状部40の外径φAの1.02倍以上1.5倍以下であることである。ナット脱落防止具10の方向を容易に認識できると、ナット122との共回りが生じたことを画像によって容易に検知可能とすることができる。
【0061】
また、実施例1~実施例5と実施例10~実施例13とにかかるナット脱落防止具の正解率は98%以上である。このことから、摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bが環状部40の外径φAの1.06倍以上1.3倍以下であると、撮像装置の撮像により得られた画像であってもナット脱落防止具10の方向を精度よく認識できることが明らかである。
【0062】
また、実施例1~実施例3,11,12にかかるナット脱落防止具の正解率はすべて100%である。このことから、摘部24,24の対の一方と他方との外幅Bが環状部40の外径φAの1.10倍以上1.22倍以下であると、撮像装置の撮像により得られた画像であってもナット脱落防止具10の方向を極めて精度よく認識できることが明らかである。