(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029858
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】プリント配線板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/11 20060101AFI20240229BHJP
H05K 3/40 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H05K1/11 N
H05K3/40 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132282
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122622
【弁理士】
【氏名又は名称】森 徳久
(72)【発明者】
【氏名】池田 大介
【テーマコード(参考)】
5E317
【Fターム(参考)】
5E317AA24
5E317BB02
5E317BB12
5E317CC13
5E317CC25
5E317CC32
5E317CC33
5E317GG03
(57)【要約】
【課題】高い品質を有するプリント配線板の提供。
【解決手段】プリント配線板は、絶縁層と、前記絶縁層上に形成されている第1導体層と、前記絶縁層と前記第1導体層上に形成されていて、前記第1導体層を露出するビア導体用の開口を有する樹脂絶縁層と、前記樹脂絶縁層上に形成されている第2導体層と、前記開口内に形成されていて、前記第1導体層と前記第2導体層とを接続するビア導体、とを有する。前記第1導体層と前記第2導体層の少なくとも一方は、上に凸形状の上面を有する第1種導体回路を含み、前記第1種導体回路の前記上面と側面は絶縁性密着層で覆われている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、
前記絶縁層上に形成されている第1導体層と、
前記絶縁層と前記第1導体層上に形成されていて、前記第1導体層を露出するビア導体用の開口を有する樹脂絶縁層と、
前記樹脂絶縁層上に形成されている第2導体層と、
前記開口内に形成されていて、前記第1導体層と前記第2導体層とを接続するビア導体、とを有するプリント配線板であって、
前記第1導体層と前記第2導体層の少なくとも一方は、上に凸形状の上面を有する第1種導体回路を含み、
前記第1種導体回路の前記上面と側面は絶縁性密着層で覆われている。
【請求項2】
請求項1のプリント配線板であって、前記第2導体層は、前記ビア導体の上方に形成されていて、下に凹形状の上面を有する第2種導体回路を含み、前記第2種導体回路の前記上面と側面は前記絶縁性密着層で覆われている。
【請求項3】
請求項1のプリント配線板であって、前記第2導体層は、前記ビア導体の上方に形成されていて、上に凸形状の上面を有する第3種導体回路を含み、前記第3種導体回路の前記上面と側面は前記絶縁性密着層で覆われている。
【請求項4】
請求項1のプリント配線板であって、前記第2導体層は前記第1種導体回路を含み、前記第1種導体回路の下方には前記ビア導体が形成されていない。
【請求項5】
請求項1のプリント配線板であって、前記第1種導体回路の前記上面の突出量は0.5μm以上5μm以下であり、前記突出量は、前記第1種導体回路の前記上面の突出部分の開始地点に、前記第1種導体回路の下面と平行に引いた第1直線から上方に突出する量である。
【請求項6】
請求項2のプリント配線板であって、前記第2種導体回路の前記上面の凹み量は1μm以上10μm以下であり、前記凹み量は、前記第2種導体回路の前記上面の上端部分に、前記第2種導体回路の下面と平行に引いた第2直線から下方に凹む量である。
【請求項7】
請求項3のプリント配線板であって、前記第3種導体回路の前記上面の突出量は0.5μm以上7μm以下であり、前記突出量は、前記第3種導体回路の前記上面の上端部分に、前記第3種導体回路の下面と平行に引いた第3直線から上方に突出する量である。
【請求項8】
請求項1のプリント配線板であって、前記第1導体層の表面と前記第2導体層の表面の算術平均粗さ(Ra)は0.1μm以上0.5μm以下である。
【請求項9】
請求項1のプリント配線板であって、前記絶縁性密着層は、窒素系有機材料か、あるいは、シランカップリング剤を混合して形成されている。
【請求項10】
請求項1のプリント配線板であって、前記絶縁性密着層の厚みは、20nm以上500nm以下である。
【請求項11】
請求項1のプリント配線板であって、前記樹脂絶縁層は樹脂と無機粒子を含み、前記樹脂絶縁層中の前記無機粒子の量は70wt%以上85wt%以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、銅配線層と、銅配線層の表面を覆う窒化ケイ素製の密着層と、銅配線層上に形成されている樹脂絶縁層、とを有するプリント配線板を開示している。銅配線層の表面は粗化されていない。銅配線層と樹脂絶縁層は密着層を介して密着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
[特許文献1の課題]
特許文献1の技術では、例えば樹脂絶縁層内の無機フィラーの含有量が多い場合に銅配線層と樹脂絶縁層の密着性が不足すると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のプリント配線板は、絶縁層と、前記絶縁層上に形成されている第1導体層と、前記絶縁層と前記第1導体層上に形成されていて、前記第1導体層を露出するビア導体用の開口を有する樹脂絶縁層と、前記樹脂絶縁層上に形成されている第2導体層と、前記開口内に形成されていて、前記第1導体層と前記第2導体層とを接続するビア導体、とを有する。前記第1導体層と前記第2導体層の少なくとも一方は、上に凸形状の上面を有する第1種導体回路を含み、前記第1種導体回路の前記上面と側面は絶縁性密着層で覆われている。
【0006】
本発明の実施形態のプリント配線板では、第1導体層と第2導体層の少なくとも一方は上に凸形状の上面を有する第1種導体回路を含む。第1種導体回路の上面と側面の表面積は、上面が平坦な導体回路の表面積にくらべて大きい。絶縁性密着層を介して密着する第1種導体回路と樹脂絶縁層の面積が大きい。従って、実施形態のプリント配線板では、第1種導体回路と樹脂絶縁層の密着性が高い。第1種導体回路と樹脂絶縁層が剥がれにくい。高い品質を有するプリント配線板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態のプリント配線板を模式的に示す断面図。
【
図2】実施形態のプリント配線板の一部を模式的に示す拡大断面図。
【
図3】実施形態のプリント配線板の一部を模式的に示す拡大断面図。
【
図4A】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図4B】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図4C】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図4D】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図4E】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図4F】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図4G】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図4H】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図4I】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図5】改変例1のプリント配線板を模式的に示す断面図。
【
図6】改変例1のプリント配線板の一部を模式的に示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態]
図1は実施形態のプリント配線板2を示す断面図である。
図2と
図3は実施形態のプリント配線板2の一部を示す拡大断面図である。
図1に示されるように、プリント配線板2は、絶縁層4と第1導体層10と第1樹脂絶縁層20と第2導体層30と第1ビア導体40と第2樹脂絶縁層120と第3導体層130と第2ビア導体140を有する。
【0009】
絶縁層4は樹脂を用いて形成される。絶縁層4はシリカ等の無機粒子を含んでもよい。絶縁層4は、ガラスクロス等の補強材を含んでもよい。絶縁層4は、第1面6(図中の上面)と第1面6と反対側の第2面8(図中の下面)を有する。
【0010】
第1導体層10は絶縁層4の第1面6上に形成されている。第1導体層10は信号配線12とパッド14を含む。図に示されていないが、第1導体層10は信号配線12とパッド14以外の導体回路も含んでいる。信号配線12の上面とパッド14の上面は上方に凸形状に形成されている。信号配線12とパッド14の表面(上面と側面)は低粗度に形成されている。信号配線12とパッド14の表面の算術平均粗さ(Ra)は0.1μm以上0.5μm以下である。
【0011】
第1導体層10は主に銅によって形成される。第1導体層10は、絶縁層4上のシード層10aとシード層10a上の電解めっき層10bで形成されている。シード層10aは第1面6上の第1層11aと第1層11a上の第2層11bで形成されている。第1層11aは銅とケイ素とアルミニウムを含む銅合金で形成されている。第2層11bは銅で形成されている。電解めっき層10bは銅で形成されている。第1層11aは絶縁層4に接している。シード層10aは、単層の無電解銅めっきで形成されてもよい。
【0012】
第1層11aを形成している銅合金中の銅の含有率は90at%より大きい。第1層11aの銅合金中の銅の含有率は99at%未満である。銅合金中の銅の含有率は98at%以下である。第2層11bを形成している銅の含有率は99.9at%以上である。第2層11b中の銅の含有率は99.95at%以上であることが好ましい。
【0013】
第1導体層10の表面は第1表面と第2表面で形成される。第1表面は開口26から露出していて、絶縁性密着層50で覆われていない。第2表面は第1表面以外の部分であって、絶縁性密着層50で覆われている。すなわち第1導体層10の表面は、開口26から露出する部分(第1表面)を除いて絶縁性密着層50で覆われている。また、第1導体層10から露出する絶縁層4の第1面6は絶縁性密着層50で覆われている。
【0014】
絶縁性密着層50は、ケイ素と窒素と酸素を含む。絶縁性密着層50は窒化ケイ素層である。他の例では絶縁性密着層50は窒化ケイ素と酸化ケイ素の混合層である。である。他の例では絶縁性密着層50はシランカップリング剤を混合して形成されている。
【0015】
絶縁性密着層50は、第1導体層10と第2導体層30を電気的に絶縁するとともに、第1導体層10と第1樹脂絶縁層20を密着させる機能を果たす。絶縁性密着層50は均一密度及び均一組成を有している。窒化ケイ素と酸化ケイ素の化合物が均一に分布している。実施形態の絶縁性密着層50はスパッタによって形成されるスパッタ膜である。絶縁性密着層50の厚みは20nm以上500nm以下である。
【0016】
第1樹脂絶縁層20は、絶縁性密着層50を介し絶縁層4の第1面6と第1導体層10上に形成されている。絶縁性密着層50は第1導体層10と第1樹脂絶縁層20で挟まれている。第1樹脂絶縁層20は第3面22(図中の上面)と第3面22と反対側の第4面24(図中の下面)を有する。第1樹脂絶縁層20の第4面24は第1導体層10と対向する。第1樹脂絶縁層20はパッド14を露出する開口26を有している。第1樹脂絶縁層20はエポキシ系樹脂とエポキシ系樹脂内に分散されている無機粒子で形成されている。樹脂の例は熱硬化性樹脂と光硬化性樹脂である。無機粒子は、例えば、シリカやアルミナである。第1樹脂絶縁層20中の無機粒子の量は70wt%以上85wt%以下である。
【0017】
第1樹脂絶縁層20の第3面22には無機粒子がほとんど露出しない。そのため第3面22はほぼ平滑に形成されている。開口26の内壁面は樹脂と無機粒子の平坦面で形成されている。内壁面は平滑に形成されている。無機粒子の平坦面は、球状の無機粒子を平面で切断することで得られる。
【0018】
第2導体層30は第1樹脂絶縁層20の第3面22上に形成されている。第2導体層30は信号配線32とパッド34とランド36とを含む。図に示されていないが、第2導体層30は信号配線32とパッド34とランド36以外の導体回路も含んでいる。信号配線32の上面とパッド34の上面は上方に凸形状に形成されている。ランド36の上面は下方に凹形状に形成されている。信号配線32とパッド34とランド36の表面(上面と側面)は低粗度に形成されている。信号配線32とパッド34とランド36の表面の算術平均粗さ(Ra)は0.1μm以上0.5μm以下である。
【0019】
第2導体層30は主に銅によって形成される。第2導体層30は、第3面22上のシード層30aとシード層30a上の電解めっき層30bで形成されている。シード層30aは第3面22上の第1層31aと第1層31a上の第2層31bで形成されている。第1層31aは銅とケイ素とアルミニウムを含む合金(銅合金)で形成されている。第2層31bは銅で形成されている。電解めっき層30bは銅で形成されている。第1層31aは第3面22に接している。シード層30aは、単層の無電解銅めっきで形成されてもよい。
【0020】
第1層31aを形成している銅合金中の銅の含有率は90at%より大きい。第1層31aの銅合金中の銅の含有率は99at%未満である。銅合金中の銅の含有率は98at%以下である。第2層31bを形成している銅の含有率は99.9at%以上である。第2層31b中の銅の含有率は99.95at%以上であることが好ましい。
【0021】
第2導体層30の表面は第3表面と第4表面で形成される。第3表面は開口126から露出していて、絶縁性密着層70で覆われていない。第4表面は第3表面以外の部分であって、絶縁性密着層70で覆われている。すなわち第2導体層30の表面は、開口126から露出する部分(第3表面)を除いて絶縁性密着層70で覆われている。また、第2導体層30から露出する第1樹脂絶縁層20の第3面22は絶縁性密着層70で覆われている。
【0022】
絶縁性密着層70は、ケイ素と窒素と酸素を含む。絶縁性密着層70は窒化ケイ素層である。他の例では絶縁性密着層70は窒化ケイ素と酸化ケイ素の混合層である。他の例では絶縁性密着層70はシランカップリング剤を混合して形成されている。
【0023】
絶縁性密着層70は、第2導体層30と第3導体層130を電気的に絶縁するとともに、第2導体層30と第2樹脂絶縁層120を密着させる機能を果たす。絶縁性密着層70は均一密度及び均一組成を有している。窒化ケイ素と酸化ケイ素の化合物が均一に分布している。実施形態の絶縁性密着層70はスパッタによって形成されるスパッタ膜である。絶縁性密着層70の厚みは20nm以上500nm以下である。
【0024】
第1ビア導体40は開口26内に形成されている。第1ビア導体40は第1導体層10と第2導体層30を接続する。
図1では第1ビア導体40はパッド14とランド36を接続する。第1ビア導体40はシード層30aとシード層30a上の電解めっき層30bで形成されている。第1ビア導体40を形成するシード層30aと第2導体層30を形成するシード層30aは共通である。
【0025】
第2樹脂絶縁層120は第1樹脂絶縁層20の第3面22と第2導体層30上に形成されている。第2樹脂絶縁層120は第5面122(図中の上面)と第5面122と反対側の第6面124(図中の下面)を有する。第2樹脂絶縁層120の第6面124は第2導体層30と対向する。第2樹脂絶縁層120はランド36を露出する開口126を有している。第2樹脂絶縁層120はエポキシ系樹脂とエポキシ系樹脂内に分散されている無機粒子で形成されている。樹脂の例は熱硬化性樹脂と光硬化性樹脂である。無機粒子は、例えば、シリカやアルミナである。第2樹脂絶縁層120中の無機粒子の量は70wt%以上85wt%以下である。
【0026】
第3導体層130は第2樹脂絶縁層120の第5面122上に形成されている。第3導体層130はランド132と信号配線134を含む。図に示されていないが、第3導体層130はランド132と信号配線134以外の導体回路も含んでいる。ランド132の上面は下方に凹形状に形成されている。ランド132の上面と信号配線134の上面は上方に凸形状に形成されている。ランド132と信号配線134の表面(上面と側面)は低粗度に形成されている。ランド132と信号配線134の表面の算術平均粗さ(Ra)は0.1μm以上0.5μm以下である。改変例ではランド132と信号配線134の表面(上面と側面)は粗化されていてもよい。算術平均粗さ(Ra)は0.5μm以上であってもよい。
【0027】
第3導体層130は主に銅によって形成される。第3導体層130は、第5面122上のシード層130aとシード層130a上の電解めっき層130bで形成されている。シード層130a、電解めっき層130bは第2導体層30のシード層30a、電解めっき層30bと同様である。シード層130aは第5面122上の第1層131aと第1層131a上の第2層131bで形成されている。第1層131aは銅とケイ素とアルミニウムを含む銅合金で形成されている。第2層131bは銅で形成されている。電解めっき層130bは銅で形成されている。シード層130aは、単層の無電解銅めっきで形成されてもよい。
【0028】
第1層131aを形成している銅合金中の銅の含有率は90at%より大きい。第1層131aの銅合金中の銅の含有率は99at%未満である。銅合金中の銅の含有率は98at%以下である。第2層131bを形成している銅の含有率は99.9at%以上である。第2層131b中の銅の含有率は99.95at%以上であることが好ましい。
【0029】
第2ビア導体140は開口126内に形成されている。第2ビア導体140は第2導体層30と第3導体層130を接続する。
図1では第2ビア導体140はパッド34とランド132を接続する。第2ビア導体140はシード層130aとシード層130a上の電解めっき層130bで形成されている。第2ビア導体140を形成するシード層130aと第3導体層130を形成するシード層130aは共通である。
【0030】
上記の通り、信号配線12とパッド14と信号配線32とパッド34と信号配線134は、上方に凸形状の上面を有する。信号配線12とパッド14と信号配線32とパッド34と信号配線134の下方にはビア導体(
図1の40、140等)が形成されていない。
図2は、信号配線32と信号配線32の表面(上面と側面)を覆う絶縁性密着層70を示す。
図2に示されるように、信号配線32の上面は上方に突出する凸形状である。信号配線32の上面の突出量D1は0.5μm以上5μm以下である。突出量D1は、信号配線32の上面の突出部分の開始地点に、信号配線32の下面と平行に引いた第1直線L1から上方に突出する量である。
図2は信号配線32の例を示しているが、パッド14と信号配線32とパッド34と信号配線134の各上面も同様の形状を有する。パッド14と信号配線32とパッド34と信号配線134の上面の突出量(
図2のD1参照)も0.5μm以上5μm以下である。
【0031】
一方、ランド36とランド132は、下方に凹形状の上面を有する。ランド36は第1ビア導体40の上方に形成されている。ランド132は第2ビア導体140の上方に形成されている。
図3は、ランド36とランド36の表面(上面と側面)を覆う絶縁性密着層70を示す。
図3に示されるように、ランド36の上面は下方に凹む凹形状である。ランド36の上面のうち開口26の上方は凹形状である。なおランド36の上面のうち開口26の周囲の上方は僅かに上に凸形状である。ランド36の上面の凹み量D2は1μm以上10μm以下である。凹み量D2は、ランド36の上面の上端部分(開口26の周囲の上方部分)に、ランド36の下面と平行に引いた第2直線L2から下方に凹む量である。
図3はランド36の例を示しているが、ランド132の上面も同様の形状を有する。ランド132の上面の凹み量(
図3のD2参照)も1μm以上10μm以下である。
【0032】
[実施形態のプリント配線板2の製造方法]
図4A~
図4Iは実施形態のプリント配線板2の製造方法を示す。
図4A~
図4Iは断面図である。
図3Aは絶縁層4と絶縁層4の第1面6上に形成されている第1導体層10を示す。第1導体層10はセミアディティブ法によって形成される。第1層11aと第2層11bはスパッタで形成される。電解めっき層10bは電解めっきで形成される。この時点で、信号配線12の上面とパッド14の上面は上方に凸形状を有する。
【0033】
図4Bに示されるように、第1導体層10の表面と第1導体層10から露出する絶縁層4の第1面6上に絶縁性密着層50が形成される。絶縁性密着層50はスパッタによって形成される。絶縁性密着層50の厚みは20nm以上500nm以下である。信号配線12とパッド14の表面が絶縁性密着層50によって覆われる。
【0034】
図4Cに示されるように、絶縁性密着層50で覆われている絶縁層4と第1導体層10上に第1樹脂絶縁層20と保護膜200が形成される。第1樹脂絶縁層20の第4面24が絶縁性密着層50を介して絶縁層4の第1面6と対向している。第1樹脂絶縁層20の第3面22上に保護膜200が形成されている。
【0035】
保護膜200は第1樹脂絶縁層20の第3面22を完全に覆っている。保護膜200の例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルムである。保護膜200と第1樹脂絶縁層20との間に離型剤が形成されている。
【0036】
図4Dに示されるように、保護膜200の上からレーザ光Lが照射される。レーザ光Lは保護膜200と第1樹脂絶縁層20を同時に貫通する。パッド14を覆う絶縁性密着層50に至るビア導体用の開口26が形成される。レーザ光Lは例えばUVレーザ光、CO2レーザ光である。レーザ光Lによっては絶縁性密着層50が完全に除去されない。開口26によりパッド14を覆う絶縁性密着層50が露出される。開口26が形成される時、第3面22は保護膜200で覆われている。そのため、開口26が形成される時、樹脂が飛散しても、第3面22に樹脂が付着することが抑制される。
【0037】
図4Eに示されるように、開口26内が洗浄される。開口26内を洗浄することにより開口26から露出する絶縁性密着層50が除去される。開口26からパッド14が露出する。開口26形成時に発生する樹脂残渣が除去される。開口26内の洗浄はプラズマによって行われる。即ち洗浄はドライプロセスで行われる。洗浄はデスミア処理を含む。第1樹脂絶縁層20の第4面24とパッド14の間に形成されている絶縁性密着層50は除去されない。そのため、第1樹脂絶縁層20の第4面24とパッド14の間に隙間が形成されない。プラズマにより、樹脂から突出している無機粒子が選択的に除去される。プラズマの影響で、開口26の形成時に開口26の内壁面から突出していた球状の無機粒子が平面で切断され、平坦部が形成される。この結果、開口26の内壁面は、第1樹脂絶縁層20を形成する樹脂と無機粒子の平坦部とによって平滑に形成される。一方、第1樹脂絶縁層20の第3面22は保護膜200で覆われている。第3面22はプラズマの影響を受けない。第1樹脂絶縁層20の第3面22には凹凸が形成されない。
【0038】
図4Fに示されるように、第1樹脂絶縁層20から保護膜200が除去される。保護膜200除去後、第1樹脂絶縁層20の第3面22がクリーニングされる。第3面22がドライエッチングされる。ドライエッチングはアルゴンガスを用いたスパッタリング(アルゴンスパッタリング)によって行われる。ドライエッチングにより第3面22にわずかに無機粒子が露出する。第3面22はほぼ平滑に形成されている。第1樹脂絶縁層20の第3面22を荒らすことは行われない。
【0039】
図4Gに示されるように、第1樹脂絶縁層20の第3面22上にシード層30aが形成される。シード層30aはスパッタによって形成される。シード層30aの形成はドライプロセスで行われる。第1層31aが第3面22上に形成される。同時に、開口26から露出する内壁面とパッド14上に第1層31aが形成される。その後、第1層31a上に第2層31bが形成される。シード層30aは開口26から露出するパッド14の上面と開口26の内壁面にも形成される。第1層31aは銅とケイ素とアルミニウムを含む合金で形成される。第2層31bは銅で形成される。
【0040】
図4Hに示されるように、シード層30a上にめっきレジスト210が形成される。めっきレジスト210は、信号配線32とパッド34とランド36(
図1)を形成するための開口を有する。
【0041】
図4Iに示されるように、めっきレジスト210から露出するシード層30a上に電解めっき層30bが形成される。電解めっき層30bは銅で形成される。電解めっき層30bは開口26を充填する。第3面22上のシード層30aと電解めっき層30bによって、信号配線32とパッド34とランド36が形成される。第2導体層30が形成される。開口26内のシード層30aと電解めっき層30bによって、第1ビア導体40が形成される。第1ビア導体40は、パッド14とランド36を接続する。
【0042】
電解めっき層30bの形成条件が調整されることによって、信号配線32の上面とパッド34の上面は上方に凸形状に形成される(
図2参照)。信号配線32とパッド34の下方には開口26が存在しない。そのため下方に開口26が存在するランド36に比べて電解めっきによって銅が高く形成されやすいためである。一方、ランド36の上面は、下方に凹形状に形成される(
図3参照)。ランド36の下方には開口26が存在する。電解めっき層30bは開口26から順に形成される。そのため、信号配線32とパッド34に比べて、銅が高く形成されにくいためである。
【0043】
その後、めっきレジスト210が除去される。電解めっき層30bから露出するシード層30aが除去される。第2導体層30と第1ビア導体40は同時に形成される。
【0044】
その後、第2導体層30と第3面22上に、絶縁性密着層70と第2樹脂絶縁層120と第3導体層130と第2ビア導体140が形成される。絶縁性密着層70と第2樹脂絶縁層120と第3導体層130と第2ビア導体140は、第1樹脂絶縁層20と第2導体層30と第1ビア導体40が形成された方法と同様の方法で形成される。実施形態のプリント配線板2(
図1)が得られる。
【0045】
実施形態のプリント配線板2では、第1導体層10は上に凸形状の上面を有する信号配線12とパッド14を有する。第2導体層30は上に凸形状の上面を有する信号配線32とパッド34とを有する。信号配線12とパッド14と信号配線32とパッド34の各表面積(上面と側面の総面積)は、上面が平坦な導体回路の表面積に比べて大きい。そのため、絶縁性密着層50を介して密着する信号配線12と第1樹脂絶縁層20の面積及び絶縁性密着層50を介して密着するパッド14と第1樹脂絶縁層20の面積が大きい。信号配線12及びパッド14と第1樹脂絶縁層20の密着性が高い。特に、第1樹脂絶縁層20中の無機粒子の量が多い(70wt%以上85wt%以下)場合であっても信号配線12及びパッド14と第1樹脂絶縁層20の密着性が高い。信号配線12及びパッド14と第1樹脂絶縁層20が剥がれにくい。同様に、絶縁性密着層70を介して密着する信号配線32と第2樹脂絶縁層120の面積及び絶縁性密着層70を介して密着するパッド34と第2樹脂絶縁層120の面積が大きい。信号配線32及びパッド34と第2樹脂絶縁層120の密着性が高い。特に、第2樹脂絶縁層120中の無機粒子の量が多い(70wt%以上85wt%以下)場合であっても信号配線32及びパッド34と第2樹脂絶縁層120の密着性が高い。信号配線32及びパッド34と第2樹脂絶縁層120が剥がれにくい。従って、高い品質を有するプリント配線板2が提供される。
【0046】
実施形態のプリント配線板2では、さらに、第2導体層30は下に凹形状の上面を有するランド36を有する。ランド36の表面積(上面と側面の総面積)は、上面が平坦な導体回路の表面積に比べて大きい。そのため、絶縁性密着層70を介して密着するランド36と第2樹脂絶縁層120の面積が大きい。ランド36と第2樹脂絶縁層120の密着性が高い。特に、第2樹脂絶縁層120中の無機粒子の量が多い(70wt%以上85wt%以下)場合であってもランド36と第2樹脂絶縁層120の密着性が高い。ランド36と第2樹脂絶縁層120が剥がれにくい。より高い品質を有するプリント配線板2が提供される。
【0047】
信号配線12とパッド14と信号配線32とパッド34が「第1種導体回路」の一例である。ランド36が「第2種導体回路」の一例である。
【0048】
[実施形態の改変例1]
図5は実施形態の改変例1を示す。
図5に示されるように、改変例1のプリント配線板502では、ランド36、132の上面は上に凸形状である。
図6は、改変例1のランド36とランド36の表面(上面と側面)を覆う絶縁性密着層70を示す。
図6に示されるように、ランド36の上面は上方に突出する凸形状である。ランド36の上面の突出量D3は0.5μm以上7μm以下である。突出量D3は、ランド36の上面の突出部分の開始地点に、ランド36の下面と平行に引いた第3直線L3から上方に突出する量である。
図6はランド36の例を示しているが、ランド132の上面も同様の形状を有する。ランド132の上面の突出量(
図6のD3参照)も0.5μm以上7μm以下である。
【0049】
電解めっき層30bの形成条件が調整されることによって、ランド36の上面は上方に凸形状に形成される(
図6参照)。ランド36の下方には開口26が存在するが、電解めっき層30bを多めに形成させることで、ランド36の上面を上方に凸形状に形成することができる。
【0050】
改変例1のプリント配線板502では、第2導体層30は上に凸形状の上面を有するランド36を有する。ランド36の表面積(上面と側面の総面積)は、上面が平坦な導体回路の表面積に比べて大きい。そのため、絶縁性密着層70を介して密着するランド36と第2樹脂絶縁層120の面積が大きい。ランド36と第2樹脂絶縁層120の密着性が高い。特に、第2樹脂絶縁層120中の無機粒子の量が多い(70wt%以上85wt%以下)場合であってもランド36と第2樹脂絶縁層120の密着性が高い。ランド36と第2樹脂絶縁層120が剥がれにくい。従って、高い品質を有するプリント配線板502が提供される。改変例1のランド36が「第3種導体回路」の一例である。
【0051】
[改変例1の別例]
改変例1の別例では、第2導体層30は、上に凸形状の上面を有するランド(
図3参照)と、下に凹形状の上面を有するランド(
図6参照)を両方有している。さらに他の例では、上に凸形状の上面を有するランド(
図3参照)と、下に凹形状の上面を有するランド(
図6参照)が複数の導体層内に亘って存在していてもよい。
【0052】
[実施形態の改変例2]
改変例2のプリント配線板2では、絶縁性密着層50、70は有機製の材料で形成されている。有機製の材料は窒素系有機化合物(窒素系有機材料)である。窒素系有機化合物は例えばテトラゾール化合物である。窒素系有機化合物の例は特開2015-54987号公報に開示されている。改変例2では、絶縁性密着層50は第1導体層10から露出する絶縁層4の第1面6を覆っていない。絶縁性密着層70は第2導体層30から露出する第1樹脂絶縁層20の第3面22を覆っていない。
【0053】
絶縁性密着層50は、第1導体層10が形成されている途中基板を窒素系有機化合物を含む薬液に浸漬することによって形成される。薬液のphは7以下である。途中基板が薬液に浸漬される前に第1導体層10の上面と側面の酸化膜が除去される。他の例では絶縁性密着層50は、第1導体層10上に薬液を塗布することによって形成される。同様に、絶縁性密着層70は、第2導体層30が形成されている途中基板を窒素系有機化合物を含む薬液に浸漬することによって形成される。薬液のphは7以下である。途中基板が薬液に浸漬される前に第2導体層30の上面と側面の酸化膜が除去される。他の例では絶縁性密着層50は、第1導体層10上に薬液を塗布することによって形成される。
【0054】
[実施形態の改変例3]
改変例3のプリント配線板2では、第1導体層10のシード層10aと第2導体層30のシード層30aは無電解めっき膜である。シード層10a、30aは1つの層で形成されている。
【0055】
[実施形態の改変例4]
改変例4のプリント配線板2では、第1導体層10は上に凸形状の上面を有する信号配線12とパッド14を有し、第2導体層30は上に凸形状の上面を有する導体回路を有さない。改変例4の別例では、第2導体層30は上に凸形状の上面を有する信号配線32とパッド34とを有し、第1導体層10は上に凸形状の上面を有する導体回路を有さない。
【符号の説明】
【0056】
2:プリント配線板
4:絶縁層
10:第1導体層
12:信号配線
14:パッド
20:第1樹脂絶縁層
26:開口
30:第2導体層
32:信号配線
34:パッド
36:ランド
40:第1ビア導体
50:絶縁性密着層
70:絶縁性密着層
120:第2樹脂絶縁層
126:開口
130:第3導体層
132:ランド
134:信号配線
140:第2ビア導体