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特開2024-2986抗原特異的T細胞を誘導する方法及び癌又はウイルス感染の治療におけるその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002986
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】抗原特異的T細胞を誘導する方法及び癌又はウイルス感染の治療におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20231228BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20231228BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231228BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
C12N5/0783
A61K35/17
A61P35/00
A61P31/12
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023103616
(22)【出願日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】63/354,868
(32)【優先日】2022-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516199061
【氏名又は名称】フルホープ バイオメディカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-モウ・リー
(72)【発明者】
【氏名】チー-ハオ・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ヤ-ファン・チェン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BB19
4B065BB25
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087DA31
4C087NA05
4C087ZB26
4C087ZB33
(57)【要約】
【課題】能動免疫療法は、抗原特異的免疫細胞、例えばキラーT細胞及び抗体産生B細胞の効率的な刺激に非常に依存している。T細胞を誘導して抗原特異性を生じる方法は、目下関心が持たれる重要な論題である。
【解決手段】本開示は、抗原特異的T細胞を誘導する方法及び癌又はウイルス感染の治療におけるその使用に関する。当該方法は、PBMCを抗原性ペプチド、IL-2、IL-15及びIFN-αとともに培養する工程を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原特異的T細胞を誘導する方法であって、
抗原性ペプチド、IL-2、IL-15及びIFN-αを含む第1の培養培地中で末梢血単核細胞(PBMC)を培養して、第1の細胞集団を得る工程と、
IL-2、IL-15及びIFN-αを含む第2の培養培地中で前記第1の細胞集団を培養して、第2の細胞集団を得る工程と、
IL-2及びIL-15を含む第3の培養培地中で前記第2の細胞集団を培養して、前記抗原特異的T細胞を得る工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記抗原性ペプチドが、1μg/mL~1mg/mLの濃度の癌又はウイルス由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記癌が、鼻咽頭癌、膀胱癌、胆道癌、骨癌、脳腫瘍、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、結腸癌、食道癌、表皮癌、胃癌、消化管間質腫瘍(GIST)、神経膠腫、リンパ系譜の造血器腫瘍、肝癌、非ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、白血病、肺癌、リンパ腫、腸癌、黒色腫、骨髄性白血病、膵癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、卵巣癌、腎細胞癌、脾臓癌、扁平上皮細胞癌、甲状腺癌、又は甲状腺濾胞癌を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記癌が、エプスタイン・バーウイルス(EBV)関連癌である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記癌が、EBV陽性胃癌、EBV陽性子宮頸癌、EBV陽性バーキットリンパ腫、EBV陽性T細胞リンパ腫、EBV陽性乳癌、EBV陽性平滑筋肉腫、EBV陽性平滑筋腫瘍、EBV陽性ホジキンリンパ腫、EBV陽性鼻咽頭癌、又はEBV陽性移植後リンパ増殖性障害(PTLD)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗原性ペプチドが、BMLF-1、EBVペプチドプール又はCMVペプチドプールを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の培養培地、前記第2の培養培地及び前記第3の培養培地が、それぞれ1日~3日間培養される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記IL-2が、1ng/mL~500ng/mLの濃度である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記IL-15が、1ng/mL~100ng/mLの濃度である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記IFN-αが、1ng/mL~100ng/mLの濃度である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の培養培地、前記第2の培養培地及び前記第3の培養培地が、それぞれAIM-V培地を更に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の培養培地、前記第2の培養培地及び前記第3の培養培地が、前記培養培地に基づいて1wt%~10wt%の濃度の血小板溶解物、好ましくはヒト血小板溶解物(HPL)を更に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
必要とする対象において癌若しくはウイルス感染を防止又は治療するための、治療上有効な量の請求項1から12のいずれか一項に記載の方法によって製造される前記抗原特異的T細胞及び薬学的に許容される担体を含む組成物の使用。
【請求項14】
必要とする対象において癌若しくはウイルス感染を防止又は治療するための医薬の製造のための、治療上有効な量の請求項1から12のいずれか一項に記載の方法によって製造される前記抗原特異的T細胞及び薬学的に許容される担体を含む組成物の使用。
【請求項15】
治療上有効な量の請求項1から12のいずれか一項に記載の方法によって製造される前記抗原特異的T細胞及び薬学的に許容される担体を含む、必要とする対象における癌若しくはウイルス感染の防止又は治療における使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原特異的T細胞を誘導する方法及び癌又はウイルス感染の治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は通常、手術、放射線療法、又は化学療法で治療される。癌のための手術は、身体への物理的損傷、例えば創傷を引き起こし、手術後に回復するのを困難にしている。放射線療法は創傷を引き起こさないが、放射線が身体中に残存するか、又は非癌性細胞に損傷を与える可能性があり、持続的な損傷を引き起こす。化学療法もまた、癌細胞を死滅させることと、他の正常な細胞に影響を及ぼすこととによって身体に害を引き起こし得る。
【0003】
免疫監視は癌に対して重要な役割を果たし、特に癌の管理における従来の手術、放射線及び化学療の多くの弱点に鑑みて、非常に魅力的な治療アプローチとなる。
【0004】
癌免疫療法では、免疫系は癌細胞を特異的に標的として死滅させるために受動的に又は能動的に使用されている。免疫療法は、強力な抗癌応答を依然と誘発しながら、オフターゲットの毒性を排除する標的特異性を提供する。受動免疫療法では、腫瘍細胞又はそれらの微小環境を標的とすることによって、内因性抗腫瘍免疫応答を高めることができ、腫瘍細胞増殖を抑制することができる。能動免疫療法では、免疫細胞は癌と闘うよう刺激される。
【0005】
能動免疫療法は、抗原特異的免疫細胞、例えばキラーT細胞及び抗体産生B細胞の効率的な刺激に非常に依存している。T細胞を誘導して抗原特異性を生じる方法は、目下関心が持たれる重要な論題である。本開示は、抗原特異的T細胞を誘導する方法及び癌又はウイルス感染の治療におけるその使用を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
当該技術分野における緊急の必要性を考慮して、癌の治療において安全且つ有効な抗原特異的T細胞を誘導する方法が本明細書中で提供される。更に、抗原特異的T細胞は、低コスト且つ高収率で製造しやすい。
【0007】
一実施形態では、本開示は、抗原特異的T細胞を誘導する方法であって、
抗原性ペプチド、IL-2、IL-15及びIFN-αを含む第1の培養培地中で末梢血単核細胞(PBMC)を培養して、第1の細胞集団を得る工程と、
IL-2、IL-15及びIFN-αを含む第2の培養培地中で前記第1の細胞集団を培養して、第2の細胞集団を得る工程と、
IL-2及びIL-15を含む第3の培養培地中で前記第2の細胞集団を培養して、前記抗原特異的T細胞を得る工程と
を含む方法を提供する。
【0008】
一実施形態では、抗原性ペプチドは、1μg/mL~1mg/mL、好ましくは5μg/mL~500μg/mL、好ましくは10μg/mL~100μg/mL若しくはより好ましくは10μg/mLの濃度の癌又はウイルス由来である。
【0009】
一実施形態では、癌は、鼻咽頭癌、膀胱癌、胆道癌、骨癌、脳腫瘍、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、結腸癌、食道癌、表皮癌、胃癌、消化管間質腫瘍(GIST)、神経膠腫、リンパ系譜の造血器腫瘍、肝癌、非ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、白血病、肺癌、リンパ腫、腸癌、黒色腫、骨髄性白血病、膵癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、卵巣癌、腎細胞癌、脾臓癌、扁平上皮細胞癌、甲状腺癌、又は甲状腺濾胞癌を含む。
【0010】
一実施形態では、癌は、エプスタイン・バーウイルス(EBV)関連癌である。
【0011】
一実施形態では、癌は、EBV陽性胃癌、EBV陽性子宮頸癌、EBV陽性バーキットリンパ腫、EBV陽性T細胞リンパ腫、EBV陽性乳癌、EBV陽性平滑筋肉腫、EBV陽性平滑筋腫瘍、EBV陽性ホジキンリンパ腫、EBV陽性鼻咽頭癌、又はEBV陽性移植後リンパ増殖性障害(PTLD)である。
【0012】
一実施形態では、抗原性ペプチドは、BMLF-1、EBVペプチドプール又はCMVペプチドプールを含む。
【0013】
一実施形態では、第1の培養培地、第2の培養培地及び第3の培養培地は、それぞれ1日~3日間培養される。
【0014】
一実施形態では、IL-2は、1ng/mL~500ng/mL、好ましくは5ng/mL~200ng/mL、10ng/mL~100ng/mL、20ng/mL~80ng/mL、より好ましくは40ng/mLの濃度である。
【0015】
一実施形態では、IL-15は、1ng/mL~100ng/mL、好ましくは2ng/mL~50ng/mL、2.5ng/mL~10ng/mL、より好ましくは2.5ng/mLの濃度である。
【0016】
一実施形態では、IFN-αは、1ng/mL~100ng/mL、好ましくは2ng/mL~50ng/mL、3ng/mL~25ng/mL、4ng/mL~10ng/mL、より好ましくは5ng/mLの濃度である。
【0017】
一実施形態では、第1の培養培地、第2の培養培地及び第3の培養培地は、それぞれAIM-V培地を更に含む。
【0018】
一実施形態では、第1の培養培地、第2の培養培地及び第3の培養培地は、1wt%~10wt%(培養培地に基づいて)、好ましくは2wt%~8wt%(培養培地に基づいて)、3wt%~6wt%(培養培地に基づいて)、より好ましくは4wt%(培養培地に基づいて)の濃度の血小板溶解物、好ましくはヒト血小板溶解物(HPL)を更に含む。
【0019】
本開示の幾つかの実施形態は、必要とする対象において癌若しくはウイルス感染を防止又は治療するための、治療上有効な量の上記抗原特異的T細胞及び薬学的に許容される担体を含む組成物の使用を提供する。
【0020】
本開示の更なる実施形態は、必要とする対象において癌若しくはウイルス感染を防止又は治療するための医薬の製造のための、治療上有効な量の上記抗原特異的T細胞及び薬学的に許容される担体を含む組成物の使用を提供する。
【0021】
本開示は、治療上有効な量の上記抗原特異的T細胞及び薬学的に許容される担体を含む、必要とする対象における癌若しくはウイルス感染の防止又は治療における使用のための組成物を更に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1-1】T細胞増殖サイトカインがBMLF1誘導EBV特異的CD8 T細胞の活性化及び増殖を促進したことを示す図である。
図1-2】T細胞増殖サイトカインがBMLF1誘導EBV特異的CD8 T細胞の活性化及び増殖を促進したことを示す図である。
図1-3】T細胞増殖サイトカインがBMLF1誘導EBV特異的CD8 T細胞の活性化及び増殖を促進したことを示す図である。
図1-4】T細胞増殖サイトカインがBMLF1誘導EBV特異的CD8 T細胞の活性化及び増殖を促進したことを示す図である。
図2-1】0日目及び3日目のIFN-αの添加が4-1BB+CD8 T細胞増殖を促進したことを示す図である。
図2-2】0日目及び3日目のIFN-αの添加が4-1BB+CD8 T細胞増殖を促進したことを示す図である。
図2-3】0日目及び3日目のIFN-αの添加が4-1BB+CD8 T細胞増殖を促進したことを示す図である。
図2-4】0日目及び3日目のIFN-αの添加が4-1BB+CD8 T細胞増殖を促進したことを示す図である。
図2-5】0日目及び3日目のIFN-αの添加が4-1BB+CD8 T細胞増殖を促進したことを示す図である。
図3-1】0日目及び3日目のIFN-αの添加が4-1BB+CD8 T細胞増殖を促進したことを示す図である。
図3-2】0日目及び3日目のIFN-αの添加が4-1BB+CD8 T細胞増殖を促進したことを示す図である。
図3-3】0日目及び3日目のIFN-αの添加が4-1BB+CD8 T細胞増殖を促進したことを示す図である。
図3-4】0日目及び3日目のIFN-αの添加が4-1BB+CD8 T細胞増殖を促進したことを示す図である。
図3-5】0日目及び3日目のIFN-αの添加が4-1BB+CD8 T細胞増殖を促進したことを示す図である。
図4-1】0日目及び3日目のIFN-αの添加が4-1BB+CD8 T細胞増殖を促進したことを示す図である。
図4-2】0日目及び3日目のIFN-αの添加が4-1BB+CD8 T細胞増殖を促進したことを示す図である。
図4-3】0日目及び3日目のIFN-αの添加が4-1BB+CD8 T細胞増殖を促進したことを示す図である。
図4-4】0日目及び3日目のIFN-αの添加が4-1BB+CD8 T細胞増殖を促進したことを示す図である。
図5-1】0日目及び3日目のIFN-αの添加が4-1BB+BMLF1特異的CD8 T細胞増殖を促進したことを示す図である。
図5-2】0日目及び3日目のIFN-αの添加が4-1BB+BMLF1特異的CD8 T細胞増殖を促進したことを示す図である。
図5-3】0日目及び3日目のIFN-αの添加が4-1BB+BMLF1特異的CD8 T細胞増殖を促進したことを示す図である。
図5-4】0日目及び3日目のIFN-αの添加が4-1BB+BMLF1特異的CD8 T細胞増殖を促進したことを示す図である。
図6-1】0日目及び3日目のIFN-αの添加が4-1BB+BMLF1特異的CD8 T細胞増殖を促進したことを示す図である。
図6-2】0日目及び3日目のIFN-αの添加が4-1BB+BMLF1特異的CD8 T細胞増殖を促進したことを示す図である。
図6-3】0日目及び3日目のIFN-αの添加が4-1BB+BMLF1特異的CD8 T細胞増殖を促進したことを示す図である。
図7-1】9日の培養期間が最良の4-1BB+BMLF1特異的CD8 T細胞増殖を明示したことを示す図である。
図7-2】9日の培養期間が最良の4-1BB+BMLF1特異的CD8 T細胞増殖を明示したことを示す図である。
図8-1】0日目及び3日目のIFN-αの添加が4-1BB+BMLF1特異的CD8 T細胞の最良のT依存性細胞傷害性を示したことを示す図である。
図8-2】0日目及び3日目のIFN-αの添加が4-1BB+BMLF1特異的CD8 T細胞の最良のT依存性細胞傷害性を示したことを示す図である。
図8-3】0日目及び3日目のIFN-αの添加が4-1BB+BMLF1特異的CD8 T細胞の最良のT依存性細胞傷害性を示したことを示す図である。
図9-1】BMLF1誘導EBV特異的CD8 T細胞応答を促進するよう種々のIL-2がIL-15と相乗作用を有したことを示す図である。
図9-2】BMLF1誘導EBV特異的CD8 T細胞応答を促進するよう種々のIL-2がIL-15と相乗作用を有したことを示す図である。
図9-3】BMLF1誘導EBV特異的CD8 T細胞応答を促進するよう種々のIL-2がIL-15と相乗作用を有したことを示す図である。
図9-4】BMLF1誘導EBV特異的CD8 T細胞応答を促進するよう種々のIL-2がIL-15と相乗作用を有したことを示す図である。
図10-1】IFN-α誘導EBV特異的T細胞(EBaT8)の表現型分析を示す図である。
図10-2】IFN-α誘導EBV特異的T細胞(EBaT8)の表現型分析を示す図である。
図10-3】IFN-α誘導EBV特異的T細胞(EBaT8)の表現型分析を示す図である。
図11-1】EBaT8の機能性分析を示す図である。EBaT8の細胞傷害性の評価は、PanToxiluxキット(OncoImmunin社)によって実施された。
図11-2】EBaT8の機能性分析を示す図である。EBaT8の細胞傷害性の評価は、PanToxiluxキット(OncoImmunin社)によって実施された。
図11-3】EBaT8の機能性分析を示す図である。EBaT8の細胞傷害性の評価は、PanToxiluxキット(OncoImmunin社)によって実施された。
図12】PepTivator EBVペプチドプールがIFN-αの存在下でEBV特異的T細胞(EBaT8)増殖を誘導することが可能であることを示す図である。
図13】PepTivator EBVペプチドプールがIFN-αの存在下でEBV特異的T細胞(EBaT8)増殖を誘導することが可能であることを示す図である。
図14】PepTivator EBVペプチドプール及びIFN-αから生成されたEBV特異的T細胞(EBaT8)がT依存性細胞傷害性を示したことを示す図である。
図15】PepTivator CMVペプチドプールがIFN-αの存在下でCMV特異的T細胞増殖を誘導することが可能である(細胞は6日目に収集)ことを示す図である。
図16】PepTivator CMVペプチドプールがIFN-αの存在下でCMV特異的T細胞増殖を誘導することが可能である(細胞は6日目に収集)ことを示す図である。
図17】PepTivator CMVペプチドプール及びIFN-αから生成されたCMV特異的T細胞がT依存性細胞傷害性を示した(細胞は6日目に収集)ことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ここで、本開示の前述の態様及び他の態様を、本明細書中に記載する他の実施形態に関してより詳細に記載する。本発明は種々の形態で具現化することができ、本明細書中に記載する実施形態に限定されるものと解釈されるべきではないことが理解されよう。より正確に言えば、これらの実施形態は、本開示が完璧且つ完全であるように提供され、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるであろう。
【0024】
本明細書中の本発明の説明に使用する専門用語は、特定の実施形態のみを説明する目的であり、本発明の限定であると意図されない。本発明の説明及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに他の状況を示さない限りは、同様に複数形も包含すると意図される。
【0025】
本明細書中で使用する用語、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「包含する(includes)」、「包含する(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains)」、「含有する(containing)」、「を特徴とする(characterized by)」又はそれらの任意の他の変形は、明示された任意の限定を受けて、非排他的な包含を網羅すると意図される。例えば、要素のリストを含む組成物、混合物、プロセス又は方法は、それらの要素のみに必ずしも限定されず、明らかに列挙されていないか、又はかかる組成物、混合物、プロセス、若しくは方法に固有の他の要素を包含してもよい。
【0026】
移行句「からなる(consisting of)」は、明記されていない任意の要素、工程、又は成分を排除する。特許請求の範囲の場合、移行句「からなる(consisting of)」は、通常付随する不純物を除く、列挙したもの以外の材料の包含に対して特許請求の範囲を遮断している。語句「からなる(consisting of)」は、プリアンブルの直後ではなく、クレームボディの条項に出現する場合、それは当該条項に記載する要素のみを限定し、他の要素は全体としてその特許請求の範囲から排除されない。
【0027】
本出願人が「含む(comprising)」などの非限定的(open-ended)な用語を用いて本発明又はその一部を規定した場合、(別記しない限り)説明は同様に用語「からなる(consisting of)」を使用してかかる本発明を説明するものと解釈されるべきであることが容易に理解されよう。
【0028】
本明細書中の数字は全て、「約」によって修飾されると理解され得る。本明細書中で使用する場合、用語「約」は、値が例えば測定デバイスに関する誤差の固有の変動を包含することを示すのに使用され、当該方法は、研究対象間に存在する値、又は変動を決定するのに使用される。通常、当該用語は、状況に応じておよそ1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%若しくは20%又は1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%若しくは20%未満の変動性を包含すると意図される。
【0029】
特許請求の範囲における用語「又は」の使用は、代替物のみを指すと明示されない限り、又は代替物が相互排他的でない限り、「及び/又は」を意味するのに使用されるが、本開示は、代替物のみ並びに「及び/又は」を指す定義を支持する。
【0030】
「対象」は本明細書中で使用する場合、例えば、癌を有するか、若しくは発症すると診断されたか、又は癌を有するか、若しくは発症することが疑われる哺乳動物対象を含む動物を指す。一実施形態では、用語「対象」は、癌を有する脊椎動物又は癌治療を必要とすると思われる脊椎動物を指し得る。対象として、温血動物、例えば哺乳動物、例えば霊長類、より好ましくはヒトが挙げられる。非ヒト霊長類も同様に対象である。対象という用語は、ペット、例えばネコ、イヌ、類人猿など、家畜(例えば、畜牛、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)及び実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、スナネズミなど)を包含する。したがって、獣医学的使用及び医療配合物が本明細書で意図される。
【0031】
「投与すること」又は「投与」は本明細書中で、本出願の抗原特異的T細胞又は医薬組成物を対象に提供することとして言及される。例として、また限定的ではなく、投与は、非経口、皮下、筋内、静脈内、関節内、気管支内、腹部内、嚢内、軟骨内、体腔内(intracavitary)、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頸椎内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎内、網膜内、脊髄内、滑膜内、胸腔内、子宮内、膀胱内、ボーラス、膣、直腸、口腔、舌下、鼻腔内、及び経皮を介して実施され得る。例えば、注射は、静脈内(i.v.)注射、皮下(s.c.)注射、皮内(i.d.)注射、腹腔内注射(i.p.)注射、又は筋内(i.m.)注射によって実施され得る。1つ又は複数のかかる経路が用いられてもよい。非経口投与は、例えばボーラス注射によるか、又は時間をかけたゆっくりとした灌流による可能性が高い。或いは、又は同時に、投与は経口経路によるものであってもよい。
【0032】
「治療すること」又は「治療」という用語の使用は、障害、障害の症状、障害に続発する疾患状態、若しくは障害への傾向を治癒、軽減、緩和、改善、防止、又は回復する目的での抗原特異的T細胞又は医薬組成物の、対象への投与として言及される。「阻害すること」、「低減すること」若しくは「防止」という用語又はこれらの用語の任意の変形は、特許請求の範囲及び/又は明細書中で使用する場合、所望の結果を達成するための任意の測定可能な減少又は完全な阻害を包含する。
【0033】
本出願の医薬組成物によって治療され得る「癌」として、口腔及び咽頭(唇、舌、唾液腺、口腔底、歯肉及び他の口、上咽頭、扁桃腺、中咽頭、下咽頭、他の口腔/咽頭)の癌;消化器系の癌(食道;胃;小腸;結腸及び直腸;肛門、肛門管、及び肛門直腸;肝臓;肝内胆管;胆嚢;他の胆汁;膵臓;後腹膜;腹膜、網、及び腸間膜;他の又は消化器)の癌;呼吸器系(鼻腔;内耳;及び洞;喉頭;肺及び気管支;胸膜;気管、横隔、及び他の呼吸器系)の癌;心臓を含む骨及び関節、並びに軟組織の中皮腫の癌;黒色腫及び他の非上皮性皮膚癌を含む皮膚癌;カポジ肉腫及び乳癌;女性生殖器系(子宮頸部;子宮体;子宮、及び卵巣;膣;外陰部;及び他の女性生殖器)の癌;男性生殖器系(前立腺;精巣;陰茎;及び他の男性生殖器)の癌;泌尿器系(膀胱;腎臓及び腎盂;尿管;及び他の泌尿器)の癌;眼及び眼窩の癌;脳及び神経系(脳;及び他の神経系)の癌;内分泌系(甲状腺及び胸腺を含む他の内分泌系)の癌;リンパ腫(ホジキン病及び非ホジキンリンパ腫)、多発性骨髄腫、及び白血病(リンパ球性白血病;骨髄性白血病;単球性白血病;及び他の白血病)を含む部位によって分類されるものが挙げられる。
【0034】
本出願による治療用組成物に適した標的であり得る、組織学的なタイプによって分類される他の癌として、新生物、悪性;癌腫、特定不能の(NOS);癌腫、未分化、NOS;巨細胞癌及び紡錘細胞癌;小細胞癌、NOS;乳頭癌、NOS;扁平上皮細胞癌、NOS;リンパ上皮癌;基底細胞癌、NOS;石灰化上皮腫癌;移行上皮癌、NOS;乳頭状移行上皮癌;腺癌、NOS;ガストリノーマ、悪性;胆管細胞癌;肝細胞癌、NOS;複合型肝細胞癌及び胆管細胞癌;索状腺癌;腺様嚢胞癌;腫瘍性ポリープ内腺癌;腺癌、家族性大腸ポリポーシス;固形癌、NOS;カルチノイド腫瘍、悪性;細気管支肺胞上皮腺癌;乳頭状腺癌、NOS;嫌色素癌;好酸性癌;好酸性腺癌;好塩基性癌;明細胞腺癌、NOS;顆粒細胞癌;濾胞腺癌、NOS;乳頭状濾胞腺癌;非被包性硬化性癌;副腎皮質癌;類内膜癌;皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;皮脂腺癌;耳垢腺癌;粘表皮癌;嚢胞腺癌、NOS;乳頭状嚢胞腺癌、NOS;乳頭状漿液性嚢胞腺癌;粘液性嚢胞腺癌、NOS;粘液性腺癌;印環細細胞癌;浸潤性乳管癌;髄様癌、NOS;小葉癌;炎症性癌;パジェット病、乳腺;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平上皮化生を伴う腺癌;胸腺腫、悪性;卵巣間質性腫瘍、悪性;莢膜細胞腫、悪性;顆粒膜細胞腫、悪性;アンドロブラストーマ、悪性;セルトリ細胞癌;ライディッヒ細胞腫、悪性;脂質細胞腫瘍、悪性;パラガングリオーマ、悪性;乳房外パラガングリオーマ、悪性;褐色細胞腫;グロマンギオ肉腫(Glomangiosarcoma);悪性黒色腫、NOS;無色素性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大色素性母斑における悪性黒色腫;類上皮細胞黒色腫;青色母斑、悪性;肉腫、NOS;線維肉腫、NOS;線維性組織球腫、悪性;粘液肉腫;脂肪肉腫、NOS;平滑筋肉腫、NOS;横紋筋肉腫、NOS;胎児性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質性肉腫、NOS;混合腫瘍、悪性、NOS;ミュラー管混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;癌肉腫、NOS;間葉腫、悪性;ブレンナー腫瘍、悪性;葉状腫瘍、悪性;滑膜肉腫、NOS;中皮腫、悪性;未分化胚細胞腫;胚性癌腫、NOS;奇形腫、悪性、NOS;卵巣甲状腺腫、悪性;絨毛癌;中腎腫、悪性;血管肉腫;血管内皮腫、悪性;カポジ肉腫;血管周皮腫、悪性;リンパ管肉腫;骨肉腫、NOS;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫、NOS;軟骨芽細胞腫、悪性;間葉性軟骨肉腫;骨巨細胞腫;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性;エナメル上皮肉腫;エナメル上皮腫、悪性;エナメル上皮線維肉腫;松果体腫、悪性;脊索腫;神経膠腫、悪性;上衣腫、NOS;星状細胞腫、NOS;原形質性星状細胞腫;線維性星状細胞腫;星状芽細胞腫;神経膠芽腫、NOS;乏突起神経膠腫、NOS;乏突起膠腫;原始神経外胚葉性;小脳肉腫、NOS;神経節芽細胞腫;神経芽細胞腫、NOS;網膜芽細胞腫、NOS;嗅神経原腫瘍;髄膜腫、悪性;神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性;顆粒細胞腫、悪性;悪性リンパ腫、NOS;ホジキン病、NOS;側肉芽腫、NOS;悪性リンパ腫、小リンパ球性;悪性リンパ腫、大細胞型、びまん性;悪性リンパ腫、濾胞性、NOS;菌状息肉腫;他の指定非ホジキンリンパ腫;悪性組織球増殖症;多発性骨髄腫;マスト細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病、NOS;リンパ性白血病、NOS;形質細胞性白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞白血病;骨髄性白血病、NOS;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病、NOS;マスト細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄肉腫;及び有毛細胞白血病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
「有効な量」は本明細書中で使用する場合、体重減少、疼痛又は触知可能な塊として臨床上、若しくは各種造影手段を通じて放射線学的に検出可能な腫瘍塊を含むがこれらに限定されない癌の症状及び兆候を低減するのに十分な改変された抗原特異的T細胞又は医薬組成物の用量を指す。
【0036】
ある特定の実施形態では、腫瘍又は癌病変のサイズを制限、低減、又は改良せることが望ましい。投与経路は当然、病変の位置及び性質又は標的とされ得る部位によって変化し、例えば局所的、非経口、静脈内、筋内、及び/又は全身の投与及び配合を含み得る。直接的な注射或いは臓器若しくは組織への、及び臓器若しくは組織からの、及び臓器若しくは組織内の血管系又は血管への注射は、標的領域に関して明確に意図されている。局所投与、限局的投与、又は全身投与も適切であり得る。
【0037】
本明細書中の開示において、FACS/フローサイトメトリー分析を使用した細胞表面抗原の発現レベル又は表面密度をTable 1(表1)に定義する。Table 1(表1)における様々な発現レベルに関する解釈は、細胞表面抗原の発現レベルを定義する一例である。フローサイトメトリーシグナルレベル強度は下記因子:フローサイトメトリー、ソフトウェア及び使用した抗体の種々のバッチによって変化することに留意すべきである。
【0038】
【表1】
【0039】
別記しない限り、本明細書中で使用する技術用語及び化学用語は全て、本発明が属する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中で引用する刊行物、特許出願、特許及び他の参照文献は全て、参照文献が提示される文章及び/又は段落に関連する教示に関してそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
T細胞機能を調節することができるI型インターフェロンは周知されている:例えば、
1.配列内シグナル伝達:TCRエンゲージメントに対する同時の又はわずかに遅延したI型IFNシグナル伝達は、生存、エフェクター細胞分化を促進する。
2.配列外シグナル伝達:T細胞への、TCRエンゲージメントに関するI型IFNへの前曝露は、STAT1依存性抗増殖性且つアポトーシス促進性のプログラムを誘導する。
【0041】
本開示は、抗原特異的T細胞を誘導する方法であって、抗原性ペプチド、IL-2、IL-15及びIFN-αを含む第1の培養培地中で末梢血単核細胞(PBMC)を培養して、第1の細胞集団を得る工程と、IL-2、IL-15及びIFN-αを含む第2の培養培地中で前記第1の細胞集団を培養して、第2の細胞集団を得る工程と、IL-2及びIL-15を含む第3の培養培地中で前記第2の細胞集団を培養して、前記抗原特異的T細胞を得る工程とを含む方法を提供する。
【0042】
抗原性ペプチドは、1μg/mL~1mg/mL、好ましくは5μg/mL~500μg/mL、好ましくは10μg/mL~100μg/mL又はより好ましくは10μg/mLの濃度であり得る。
【0043】
抗原性ペプチドは、癌又はウイルス由来であり得る。癌は、鼻咽頭癌、膀胱癌、胆道癌、骨癌、脳腫瘍、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、結腸癌、食道癌、表皮癌、胃癌、消化管間質腫瘍(GIST)、神経膠腫、リンパ系譜の造血器腫瘍、肝癌、非ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、白血病、肺癌、リンパ腫、腸癌、黒色腫、骨髄性白血病、膵癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、卵巣癌、腎細胞癌、脾臓癌、扁平上皮細胞癌、甲状腺癌、又は甲状腺濾胞癌を含み得る。
【0044】
癌は、エプスタイン・バーウイルス(EBV)関連癌であり得る。癌は、EBV陽性胃癌、EBV陽性子宮頸癌、EBV陽性バーキットリンパ腫、EBV陽性T細胞リンパ腫、EBV陽性乳癌、EBV陽性平滑筋肉腫、EBV陽性平滑筋腫瘍、EBV陽性ホジキンリンパ腫、EBV陽性鼻咽頭癌、又はEBV陽性移植後リンパ増殖性障害(PTLD)であり得る。
【0045】
抗原性ペプチドは、BMLF-1又はEBVペプチドプールを含み得る。ペプチドはまた、サイトメガロウイルス(CMV)ペプチドプール又は他の腫瘍関連抗原由来であり得る。
【0046】
第1の培養培地、第2の培養培地及び第3の培養培地は、それぞれ1日~3日間培養され得る。他方で、IL-2は、1ng/mL~500ng/mL、好ましくは5ng/mL~200ng/mL、10ng/mL~100ng/mL、20ng/mL~80ng/mL、より好ましくは40ng/mLの濃度であり得る。更に、IL-15は、1ng/mL~100ng/mL、好ましくは2ng/mL~50ng/mL、2.5ng/mL~10ng/mL、より好ましくは2.5ng/mLの濃度であり得る。更に好ましくは、IFN-αは、1ng/mL~100ng/mL、好ましくは2ng/mL~50ng/mL、3ng/mL~25ng/mL、4ng/mL~10ng/mL、より好ましくは5ng/mLの濃度である。
【0047】
第1の培養培地、第2の培養培地及び第3の培養培地は、AIM-V培地を更に含み得る。第1の培養培地、第2の培養培地及び第3の培養培地は、1wt%~10wt%(培養培地に基づいて)、好ましくは2wt%~8wt%(培養培地に基づいて)、3wt%~6wt%(培養培地に基づいて)、より好ましくは4wt%(培養培地に基づいて)の濃度の血小板溶解物、好ましくはヒト血小板溶解物(HPL)を更に含み得る。
【0048】
治療上有効な量の上記抗原特異的T細胞を含む組成物は上述の方法によって製造されてもよく、組成物は薬学的に許容される担体と組み合わせてもよい。組成物は、必要とする対象において癌若しくはウイルス感染を防止又は治療するために使用され得る。更に、組成物は、必要とする対象において癌若しくはウイルス感染を防止又は治療するための医薬の製造のために使用され得る。
【0049】
以下の実施例は、抗原T細胞を誘導する種々の戦略を示し、最終的にはその好適な手順を見出している。
【実施例0050】
(実施例1)
図1を参照されたい。図1は、T細胞増殖サイトカインがBMLF1誘導EBV特異的CD8 T細胞の活性化及び増殖を促進したことを示す。レスポンダーPBMCをCell-Trace Violetで標識した後、AIM-V培地及び4%HPL中で9日間培養した。それぞれの特定の群において、hIL-2(40ng/ml)及びhIL-15(2.5ng/ml)、BMLF1ペプチド(10μg/ml)、及びBMLF1ペプチド(10μg/ml)+hIL-2(40ng/ml)及びhIL-15(2.5ng/ml)の存在下で、レスポンダーPBMCをそれぞれ培養した。9日目に総細胞を収集して、4-1BB-PE、CD8-APC-Alexa Flour 700、CD56-APC-Cy7、CD14-APC-Alexa Flour 750、CD19APC-Alexa Flour 750、及びCD3-Krome Orangeに対するmAbで染色した。Navios Flow Cytometerによる試料取得及びKaluzaソフトウェアによるデータ解析。
【0051】
図1に示すように、IL-2及びIL-15はPBMCの分化を誘導し得る。ペプチド(BMLF1)の例は、PBMCの分化を誘導しない。L-2及びIL-15及びBMLF1の組合せは、PBMCの著しい分化を示す。BMLF1のみによって誘導された例は、TCR閾値が高すぎるためCD8 T細胞の複製を効率的に促進することができない。しかしながら、IL-2/IL-15によって誘導された例は、TCR閾値を低減させる機能を有し、T細胞を複製させることが可能となる。したがって、IL-2/IL-15を活用して、IL-2/IL-15によって誘導された例は、BMLFペプチド誘導CD8 T細胞の複製及び4-1BBの発現に寄与する。結果として、IL-2及びIL-15は個々にT細胞分化を誘導する機能を有し得るが、BMLF1の抗原ペプチドとの組合せでより良好に働く。
【0052】
(実施例2)
図2図4を参照されたい。図2図4は、0日目及び3日目のIFN-αの添加が4-1BB+CD8 T細胞増殖を促進したことを示す。レスポンダーPBMCをCell-Trace Violetで標識した後、AIM-V培地及びHPL(4%)、hIL-2(40ng/ml)及びhIL-15(2.5ng/ml)中で9日間培養した。それぞれの特定の群において、レスポンダーPBMCを、0日目、3日目、0日目+3日目又は0日目+3日目及び6日目に5ng/mlのIFN-αで処理した。9日目に総細胞を収集して、4-1BB-PE、CD8-APC-Alexa Flour 700、CD56-APC-Cy7、CD14-APC-Alexa Flour 750、CD19APC-Alexa Flour 750、及びCD3-Krome Orangeに対するmAbで染色した。Navios Flow Cytometerによる試料取得及びKaluzaソフトウェアによるデータ解析。データの統計解析はダネットの多重比較検定で実施した。*、P<0.05。
【0053】
図2図4に示すように、この例は、CD8 T細胞及び4-1BB+CD8 T細胞の比率に対するIFN-α作用時間の影響を確認するためのIFN-αに対する種々の添加タイミングに関する実験である。0/3日目のIFN-α誘導、即ち0日目及び3日目の両方に添加したIFN-αは、0日目又は3日目のみのIFN-αの添加と比較して、より多くのCD8 T細胞及び4-1BB+CD8 T細胞の割合を誘導することができる。しかしながら、0/3/6日目のIFN-αの添加と比較して差は見られない。各群及びIFN-αを有さない群の間の割合の増加の差の更なる算出により、IFN-α誘導時間が少なくても0/3日目でなくてはならないことが観察され得る。したがって、IFN-αの添加タイミングは下記実験では0/3日目と設定した。
【0054】
更に、図4に示すように、IFN-αによる処理は明らかに、CD8 T細胞の分化を誘導する。しかしながら、3日目に適用された処理の割合の増加は、0日目の処理を含む群よりも著しく低く、これは、IFN-αによる処理がT細胞分化の初期段階で良好に働くことを意味する。
【0055】
(実施例3)
図5及び図6を参照されたい。図5及び図6は、0日目及び3日目のIFN-αの添加が4-1BB+BMLF1特異的CD8 T細胞増殖を促進したことを示す。レスポンダーPBMCをCell-Trace Violetで標識した後、AIM-V培地及びHPL(4%)、hIL-2(40ng/ml)及びhIL-15(2.5ng/ml)中で9日間培養した。特定の群において、レスポンダーPBMCを、0日目及び3日目に5ng/mlのIFN-αで処理した。9日目に総細胞を収集して、4-1BB-PE、BMLF1-ペンタマー-APC、CD8-APC-Alexa Flour 700、CD56-APC-Cy7、CD14-APC-Alexa Flour 750、CD19APC-Alexa Flour 750、及びCD3-Krome Orangeに対するmAbで染色した。Navios Flow Cytometerによる試料取得及びKaluzaソフトウェアによるデータ解析。データの統計解析はダネットの多重比較検定で実施した。*、P<0.05。
【0056】
図5及び図6に示すように、IL-2及びIL-15及びBMLF1の組合せは、CD8 T細胞へのPBMCのより多くの分化を誘導し、0/3日目のIL-2及びIL-15及びBMLF1及びIFN-αの組合せは、それよりも著しく良好である。
【0057】
(実施例4)
図7を参照されたい。図7は、9日の培養期間が最良の4-1BB+BMLF1特異的CD8 T細胞増殖を明示したことを示す。レスポンダーPBMCを、AIM-V培地及びHPL(4%)、BMLF1ペプチド(10μg/ml)、hIL-2(40ng/ml)、hIL-15(2.5ng/ml)及びIFN-α(5ng/ml)中で培養した。9日目及び12日目に総細胞を収集して、4-1BB-PE、BMLF1-ペンタマー-APC、CD8-APC-Alexa Flour 700、CD56-APC-Cy7、CD14-APC-Alexa Flour 750、CD19APC-Alexa Flour 750、及びCD3-Krome Orangeに対するmAbで染色した。Navios Flow Cytometerによる試料取得及びKaluzaソフトウェアによるデータ解析。
【0058】
実施例4はタイムラプス実験である。0/3日目のIFN-αの添加は9日目に最も多くの4-1BB+T細胞を誘導し得ることが示される。したがって、その培養時間は下記実験に関して9日に設定する。
【0059】
(実施例5)
図8を参照されたい。図8は、0日目及び3日目のIFN-αの添加が4-1BB+BMLF1特異的CD8 T細胞の最良のT依存性細胞傷害性を示したことを示す。EBaT8の細胞傷害性の評価は、PanToxiluxキット(OncoImmunin社)によって実施した。自己BMLF1負荷PBMCは標的細胞として機能し、最適濃度下で50分間、TFL4で染色した。37℃で30分間のカスパーゼ基質とのTFL-4標識標的細胞及びレスポンダー細胞の同時インキュベーション。細胞を取集して、フローサイトメトリーによりTFL-4+基質+のシグナルを分析した。
【0060】
図8に示すように、0日目及び3日目のIFN-α添加を有する群はより高いカスパーゼを示し、これは、0/3日目に誘導された分化細胞の細胞傷害性が他の2つの群よりも高いことを意味する。
【0061】
(実施例6)
図9を参照されたい。図9は、BMLF1-誘導EBV特異的CD8 T細胞応答を促進するよう種々のIL-2がIL-15と相乗作用を有したことを示す。レスポンダーPBMCをCell-Trace Violetで標識した後、AIM-V培地及びHPL(4%)、hIL-2(40ng/ml)及びIFN-α(5ng/ml)中で9日間培養した。それぞれの特定の群において、レスポンダーPBMCを、2.5ng/ml又は10ng/mlのhIL-15で9日間処理した。9日目に総細胞を収集して、4-1BB-PE、BMLF1-ペンタマー-APC、CD8-APC-Alexa Flour 700、CD56-APC-Cy7、CD14-APC-Alexa Flour 750、CD19APC-Alexa Flour 750、及びCD3-Krome Orangeに対するmAbで染色した。Navios Flow Cytometerによる試料取得及びKaluzaソフトウェアによるデータ解析。データの統計解析はダネットの多重比較検定で実施した。*、P<0.05。
【0062】
図9に示すように、それぞれ、IL-2は40ng/mlで3つの群に添加し、IL-15は2.5ng/ml及び10ng/mlで2つの群に添加する。結果により、IL-2+IL-15+BMLF-1及び0/3日目のIFN-αが最良の培養条件であることが示された。
【0063】
(実用例1)
図10は、フローサイトメトリーによる脱顆粒分子の表現型分析及び放出の結果を示す。図11を参照されたい。図11は、EBaT8の機能性分析を示す。EBaT8の細胞傷害性の評価は、PanToxiluxキット(OncoImmunin社)によって実施した。自己BMLF1負荷PBMCは標的細胞として機能し、最適濃度下で50分間、TFL4で染色した。37℃で30分間のカスパーゼ基質とのTFL-4標識標的細胞及びEBaT8又はバイスタンダーサイトカイン活性化T細胞の同時インキュベーション。細胞を取集して、フローサイトメトリーによりTFL-4+基質+のシグナルを分析した。
【0064】
図11に示すように、IL-2+IL-15+BMLF-1及び0/3日目のIFN-αの添加を伴う培養細胞(EbaT8)は、BMLF負荷標的細胞を死滅させる可能性を有する。
【0065】
(実用例2)
図12及び図13の結果を参照されたい。レスポンダーPBMCをCell-Trace Violetで標識した後、AIM-V培地及びHPL(4%)、PepTivator EBV(0.5mg/ml)、hIL-2(40ng/ml)、hIL-15(2.5ng/ml)及びIFN-α(5ng/ml)中で培養した。9日目に、総細胞を収集して、4-1BB-PE、CD8-APC-Alexa Flour 700、CD56-APC-Cy7、CD14-APC-Alexa Flour 750、CD19APC-Alexa Flour 750、及びCD3-Krome Orangeに対するmAbで染色した。試料取得は、Navios Flow Cytometerによって実施され、データはKaluzaソフトウェアによって解析される。更に図14の結果を参照されたい。EBaT8の細胞傷害性の評価は、PanToxiluxキット(OncoImmunin社)によって実施した。自己PepTivator BMLF1負荷PBMCは標的細胞として機能し、最適濃度下で50分間、TFL4で染色した。37℃で30分間のカスパーゼ基質とのTFL-4標識標的細胞及びEBaT8の同時インキュベーション。細胞を取集して、フローサイトメトリーによりTFL-4+基質+のシグナルを分析する。
【0066】
図12図14に示すように、PepTivator EBVペプチドプールは、IFN-αの存在下でEBV特異的T細胞(EBaT8)増殖を誘導することが可能であり、PepTivator EBVペプチドプール及びIFN-αから生成されたEBaT8はT依存性細胞傷害性を示した。結果により、4-1BB+CD8 T細胞は、種々の配列を含むEBVペプチドプールによって誘導されてもよく、T細胞依存性死滅を発生させることができることが示される。したがって、その臨床試験の実行可能性が改善され得る。
【0067】
(実用例3)
図15及び図16の結果を参照されたい。レスポンダーPBMCをCell-Trace Violetで標識した後、AIM-V培地及びHPL(4%)、PepTivator CMV(0.5 mg/ml)、hIL-2(40ng/ml)、hIL-15(2.5ng/ml)及びIFN-α(5ng/ml)中で培養した。6日目に、総細胞を収集して、4-1BB-PE、CD8-APC-Alexa Flour 700、CD56-APC-Cy7、CD14-APC-Alexa Flour 750、CD19APC-Alexa Flour 750、及びCD3-Krome Orangeに対するmAbで染色した。Navios Flow Cytometerによる試料取得及びKaluzaソフトウェアによるデータ解析。更に図17の結果を参照されたい。EBaT8の細胞傷害性の評価は、PanToxiluxキット(OncoImmunin社)によって実施した。自己PepTivator EBV負荷PBMCは標的細胞として機能し、最適濃度下で50分間、TFL4で染色した。37℃で30分間のカスパーゼ基質とのTFL-4標識標的細胞及びEBaT8の同時インキュベーション。細胞を取集して、フローサイトメトリーによりにTFL-4+基質+のシグナルを分析する。
【0068】
図15図17に示すように、6日目に、PepTivator CMVペプチドプールは、IFN-αの存在下でCMV特異的T細胞増殖を誘導することが可能であり、PepTivator CMVペプチドプール及びIFN-αから生成されたCMV特異的T細胞はT依存性細胞傷害性を示した。結果により、4-1BB+CD8 T細胞はまた、IL-2+IL-15を有するペプチドプール-CMV及び0/3日目のIFN-αの添加によって誘導されてもよく、T細胞依存性死滅を発生させることができることが示され、これは、CMV、HPV又は他の腫瘍関連抗原がまた、本明細書中に記載する方法を用いて抗原特異的T細胞増殖を誘導するのに使用され得ることを意味する。
【0069】
上記の説明は単なる例示であり、限定的ではない。本発明の主旨及び範囲を逸脱することなく行われたいかなる等価な修正も変更も、特許請求の範囲によって規定される範囲に包含されよう。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図3-5】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図9-4】
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図11-1】
図11-2】
図11-3】
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2023-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原特異的T細胞を誘導する方法であって、
抗原性ペプチド、IL-2、IL-15及びIFN-αを含む第1の培養培地中で末梢血単核細胞(PBMC)を培養して、第1の細胞集団を得る工程と、
IL-2、IL-15及びIFN-αを含む第2の培養培地中で前記第1の細胞集団を培養して、第2の細胞集団を得る工程と、
IL-2及びIL-15を含む第3の培養培地中で前記第2の細胞集団を培養して、前記抗原特異的T細胞を得る工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記抗原性ペプチドが、1μg/mL~1mg/mLの濃度の癌又はウイルス由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記癌が、鼻咽頭癌、膀胱癌、胆道癌、骨癌、脳腫瘍、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、結腸癌、食道癌、表皮癌、胃癌、消化管間質腫瘍(GIST)、神経膠腫、リンパ系譜の造血器腫瘍、肝癌、非ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、白血病、肺癌、リンパ腫、腸癌、黒色腫、骨髄性白血病、膵癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、卵巣癌、腎細胞癌、脾臓癌、扁平上皮細胞癌、甲状腺癌、又は甲状腺濾胞癌を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記癌が、エプスタイン・バーウイルス(EBV)関連癌である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記癌が、EBV陽性胃癌、EBV陽性子宮頸癌、EBV陽性バーキットリンパ腫、EBV陽性T細胞リンパ腫、EBV陽性乳癌、EBV陽性平滑筋肉腫、EBV陽性平滑筋腫瘍、EBV陽性ホジキンリンパ腫、EBV陽性鼻咽頭癌、又はEBV陽性移植後リンパ増殖性障害(PTLD)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗原性ペプチドが、BMLF-1、EBVペプチドプール又はCMVペプチドプールを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の培養培地、前記第2の培養培地及び前記第3の培養培地が、それぞれ1日~3日間培養される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記IL-2が、1ng/mL~500ng/mLの濃度である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記IL-15が、1ng/mL~100ng/mLの濃度である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記IFN-αが、1ng/mL~100ng/mLの濃度である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の培養培地、前記第2の培養培地及び前記第3の培養培地が、それぞれAIM-V培地を更に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の培養培地、前記第2の培養培地及び前記第3の培養培地が、前記培養培地に基づいて1wt%~10wt%の濃度の血小板溶解物、好ましくはヒト血小板溶解物(HPL)を更に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
必要とする対象において癌若しくはウイルス感染を防止又は治療するための、治療上有効な量の請求項1から6のいずれか一項に記載の方法によって製造される前記抗原特異的T細胞及び薬学的に許容される担体を含む組成物の使用。
【請求項14】
必要とする対象において癌若しくはウイルス感染を防止又は治療するための医薬の製造のための、治療上有効な量の請求項1から6のいずれか一項に記載の方法によって製造される前記抗原特異的T細胞及び薬学的に許容される担体を含む組成物の使用。
【請求項15】
治療上有効な量の請求項1から6のいずれか一項に記載の方法によって製造される前記抗原特異的T細胞及び薬学的に許容される担体を含む、必要とする対象における癌若しくはウイルス感染の防止又は治療における使用のための組成物。
【外国語明細書】