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特開2024-29866路面状態検出装置および路面状態検出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029866
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】路面状態検出装置および路面状態検出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240229BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240229BHJP
   E01C 23/07 20060101ALI20240229BHJP
   G01B 11/30 20060101ALI20240229BHJP
   E01C 23/01 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G08G1/00 J
G06T7/00 650A
E01C23/07
G01B11/30 W
E01C23/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132301
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】519057081
【氏名又は名称】学校法人北海道科学大学
(71)【出願人】
【識別番号】591074161
【氏名又は名称】アジア航測株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522335723
【氏名又は名称】大陸建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522335734
【氏名又は名称】株式会社未来共創研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】佐野 実可子
(72)【発明者】
【氏名】亀山 修一
(72)【発明者】
【氏名】松井 晋
(72)【発明者】
【氏名】櫻庭 晃
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 晃
(72)【発明者】
【氏名】森岡 亨
(72)【発明者】
【氏名】塚田 真之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 洋一
(72)【発明者】
【氏名】菊池 拓
(72)【発明者】
【氏名】小松 大誠
(72)【発明者】
【氏名】峰 健吾
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 要
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 眞生
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 亮太
(72)【発明者】
【氏名】大友 正晴
【テーマコード(参考)】
2D053
2F065
5H181
5L096
【Fターム(参考)】
2D053AA32
2D053FA03
2F065AA49
2F065AA53
2F065CC40
2F065DD03
2F065FF12
2F065GG04
2F065HH04
2F065JJ00
2F065MM07
2F065MM16
2F065MM26
2F065PP22
2F065QQ03
2F065QQ31
2F065QQ43
2F065RR00
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC12
5H181CC27
5H181MC02
5H181MC16
5L096AA09
5L096BA03
5L096EA18
5L096FA35
5L096FA39
5L096FA67
5L096GA19
5L096GA51
5L096GA53
(57)【要約】
【課題】微小かつ急激な落差がある舗装の損傷を適切に検出する。
【解決手段】移動体が移動する道路に対して照射したレーザー光の反射光に基づいて道路の3次元座標を点群データとして生成する点群データ生成装置2から点群データを取得し、取得した点群データに基づいて道路の路面状態を検出する路面状態検出装置1であって、点群データを道路の進行方向および幅方向の勾配をなくすように水平化処理する水平化処理手段103と、水平処理化された点群データを、水平面において所定サイズのメッシュに分割し、メッシュ毎に点群データの標高値のヒストグラムを生成し、ヒストグラムの形状に基づいて、メッシュ内の路面の歪度を算出する歪度算出手段104と、算出された歪度が所定の閾値以下であるメッシュを路面の損傷個所として抽出する損傷個所抽出手段105と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が移動する道路に対して照射したレーザー光の反射光に基づいて前記道路の3次元座標を点群データとして生成する点群データ生成装置から前記点群データを取得し、前記取得した点群データに基づいて前記道路の路面状態を検出する路面状態検出装置であって、
前記点群データを前記道路の進行方向および幅方向の勾配をなくすように水平化処理する水平化処理手段と、
前記水平処理化された点群データを、水平面において所定サイズのメッシュに分割し、前記メッシュ毎に前記点群データの標高値のヒストグラムを生成し、前記ヒストグラムの形状に基づいて、前記メッシュ内の路面の歪度を算出する歪度算出手段と、
前記算出された歪度が所定の閾値以下であるメッシュを路面の損傷個所として抽出する損傷個所抽出手段と、
を備えたことを特徴とする路面状態検出装置。
【請求項2】
前記歪度算出手段は、
前記水平処理化された点群データを、水平面において複数のサイズのメッシュにそれぞれ分割し、前記複数のメッシュサイズ毎に、点群データそれぞれにおいてメッシュ毎に前記点群データの標高値のヒストグラムを生成し、前記ヒストグラムの形状に基づいて、前記メッシュ内の路面の歪度を算出し、前記算出したメッシュサイズ毎の歪度の最小値を合成して新たな歪度として算出する
ことを特徴とする請求項1記載の路面状態検出装置。
【請求項3】
前記水平化処理される前の点群データに基づいて、複数の3次元のセルに分割したデジタル標高モデルを生成し、生成したデジタル標高モデルに基づいて前記セルに向かう水の流向を算出し、前記流向が対象の前記セルに向くセル数を累積させることによりセルごとの累積流量を算出する累積流量算出手段と、
前記損傷個所抽出手段により抽出された損傷個所と、前記累積流量算出手段により算出された累積流量を重ね合わせることにより、損傷が進行する可能性高い損傷候補箇所を特定する損傷候補箇所特性手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の路面状態検出装置。
【請求項4】
路面の水か流れるか留まるかを示す路面水状態と、前記累積流量と、損傷が進行する可能性の高さを示す危険度とを関連付けて危険テーブルとして記憶する危険テーブル記憶手段を、さらに備え、
前記損傷候補箇所特性手段は、
前記危険テーブルに基づいて、前記損傷個所抽出手段により抽出された損傷個所を含む所定領域内における、前記累積流量算出手段により算出された流向に基づいて算出した前記路面水状態と、前記累積流量とに対応する危険度を抽出することにより前記損傷候補箇所を特定する
ことを特徴とする請求項3記載の路面状態検出装置。
【請求項5】
移動体が移動する道路に対して照射したレーザー光の反射光に基づいて前記道路の3次元座標を点群データとして生成する点群データ生成装置から前記点群データを取得し、前記取得した点群データに基づいて前記道路の路面状態を検出する路面状態検出装置が実行する路面状態検出プログラムであって、
前記点群データを前記道路の進行方向および幅方向の勾配をなくすように水平化処理する水平化処理ステップと、
前記水平処理化された点群データを、水平面において所定サイズのメッシュに分割し、前記メッシュ毎に前記点群データの標高値のヒストグラムを生成し、前記ヒストグラムの形状に基づいて、前記メッシュ内の路面の歪度を算出する歪度算出ステップと、
前記算出された歪度が所定の閾値以下であるメッシュを路面の損傷個所として抽出する損傷個所抽出ステップと、
を前記路面状態検出装置に実行させることを特徴とする路面状態検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適切に路面状態を検出する路面状態検出装置および路面状態検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、道路維持管理業務の一環として、例えば、ポットホール、ひび割れ、わだち掘れなどの舗装の損傷は、交通事故等の要因となることから、交通量に応じたパトロールによる日常点検を実施している。特に、ポットホールは迅速な補修が求められるため、パトロールによる目視点検で異常個所を特定し補修しているが、事後保全となってしまっている。
【0003】
一方で、近年、道路維持管理業務の効率化及び高度化のため、MMS(Mobile Mapping System)によって取得した点群の活用が進んでいる。
【0004】
特許文献1には、3次元点群のうちの平面近似誤差が小さい3次元点からなる点群に対して、3次元点の法線方向の類似度を用いたクラスタリングを行い、3次元点群クラスタを、路面領域点群として検出し、路面領域点群のうちの3次元点について局所的に求めた平面候補と、近傍の3次元点について局所的に求めた平面候補とを連結する滑らかさと、平面候補の尤度とを評価する評価関数を最適化するように、3次元点の各々における平面を推定し、推定された平面より鉛直下側にある3次元点からなる点群をクラスタリングし、クラスタに属する3次元点における、推定された平面との法線方向の距離の最大値を、窪み量として推定する路面凹凸量推定装置に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-71973
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、推定された平面より鉛直下側にある3次元点からなる点群をクラスタリングし、クラスタに属する3次元点における、推定された平面との法線方向の距離の最大値を、窪み量として推定するので、所定の領域を有する窪みしか検出できず、微小かつ急激な落差があるようなポットホール、ひび割れ、わだち掘れなどの舗装の損傷については検出が困難であった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、微小かつ急激な落差がある舗装の損傷を適切に検出する路面状態検出装置および路面状態検出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決するため、本発明に係る路面状態検出装置の第1の特徴は、
移動体が移動する道路に対して照射したレーザー光の反射光に基づいて前記道路の3次元座標を点群データとして生成する点群データ生成装置から前記点群データを取得し、前記取得した点群データに基づいて前記道路の路面状態を検出する路面状態検出装置であって、
前記点群データを前記道路の進行方向および幅方向の勾配をなくすように水平化処理する水平化処理手段と、
前記水平処理化された点群データを、水平面において所定サイズのメッシュに分割し、前記メッシュ毎に前記点群データの標高値のヒストグラムを生成し、前記ヒストグラムの形状に基づいて、前記メッシュ内の路面の歪度を算出する歪度算出手段と、
前記算出された歪度が所定の閾値以下であるメッシュを路面の損傷個所として抽出する損傷個所抽出手段と、
を備えたことにある。
【0009】
本発明に係る路面状態検出装置の第2の特徴は、
前記歪度算出手段は、
前記水平処理化された点群データを、水平面において複数のサイズのメッシュにそれぞれ分割し、前記複数のメッシュサイズ毎に、点群データそれぞれにおいてメッシュ毎に前記点群データの標高値のヒストグラムを生成し、前記ヒストグラムの形状に基づいて、前記メッシュ内の路面の歪度を算出し、前記算出したメッシュサイズ毎の歪度の最小値を合成して新たな歪度として算出する
ことにある。
【0010】
本発明に係る路面状態検出装置の第3の特徴は、
前記水平化処理される前の点群データに基づいて、複数の3次元のセルに分割したデジタル標高モデルを生成し、生成したデジタル標高モデルに基づいて前記セルに向かう水の流向を算出し、前記流向が対象の前記セルに向くセル数を累積させることによりセルごとの累積流量を算出する累積流量算出手段と、
前記損傷個所抽出手段により抽出された損傷個所と、前記累積流量算出手段により算出された累積流量を重ね合わせることにより、損傷が進行する可能性高い損傷候補箇所を特定する損傷候補箇所特性手段と、
をさらに備えたことにある。
【0011】
本発明に係る路面状態検出装置の第4の特徴は、
路面の水か流れるか留まるかを示す路面水状態と、前記累積流量と、損傷が進行する可能性の高さを示す危険度とを関連付けて危険テーブルとして記憶する危険テーブル記憶手段を、さらに備え、
前記損傷候補箇所特性手段は、
前記危険テーブルに基づいて、前記損傷個所抽出手段により抽出された損傷個所を含む所定領域内における、前記累積流量算出手段により算出された流向に基づいて算出した前記路面水状態と、前記累積流量とに対応する危険度を抽出することにより前記損傷候補箇所を特定することにある。
【0012】
本発明に係る路面状態検出プログラムの第1の特徴は、
移動体が移動する道路に対して照射したレーザー光の反射光に基づいて前記道路の3次元座標を点群データとして生成する点群データ生成装置から前記点群データを取得し、前記取得した点群データに基づいて前記道路の路面状態を検出する路面状態検出装置が実行する路面状態検出プログラムであって、
前記点群データを前記道路の進行方向および幅方向の勾配をなくすように水平化処理する水平化処理ステップと、
前記水平処理化された点群データを、水平面において所定サイズのメッシュに分割し、前記メッシュ毎に前記点群データの標高値のヒストグラムを生成し、前記ヒストグラムの形状に基づいて、前記メッシュ内の路面の歪度を算出する歪度算出ステップと、
前記算出された歪度が所定の閾値以下であるメッシュを路面の損傷個所として抽出する損傷個所抽出ステップと、
を前記路面状態検出装置に実行させることにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る路面状態検出装置および路面状態検出プログラムによれば、微小かつ急激な落差がある舗装の損傷を適切に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態である路面状態検出システムの概略構成を示した概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態である路面状態検出システムが備える点群データ生成装置2による点群データの生成を模式的に説明した説明図である。
図3】本発明の一実施形態である路面状態検出システムが備える水平化処理手段による縦断方向の水平化処理を模式的に説明した説明図である。(a)は、道路の赤色立体図であり、(b)は、図3(a)におけるA-B断面の高さを示した断面図であり、(c)は、(b)の勾配をなくすように水平化処置した後の高さを示した断面図である。
図4】本発明の一実施形態である路面状態検出システムが備える水平化処理手段103による横断方向の水平化処理を模式的に説明した説明図である。(a)は、道路の赤色立体図であり、(b)は、図4(a)におけるA-B断面の高さを示した断面図であり、(c)は、(b)の勾配をなくすように水平化処置した後の高さを示した断面図である。
図5】本発明の一実施形態である路面状態検出システムが備える歪度算出手段により生成されるヒストグラムの例を示した図である。
図6】本発明の一実施形態である路面状態検出システムが備える歪度算出手段による処理内容を模式的に説明した説明図である。
図7】本発明の一実施形態である路面状態検出システムが備える歪度算出手段による分割および歪度算出処理内容を模式的に説明した説明図である。
図8】本発明の一実施形態である路面状態検出システムが備える歪度算出手段による範囲設定内容を模式的に説明した説明図である。(a)は、オーバーラップを模式的に示した図であり、(b)は、L1cm×L1cmサイズでオーバーラップさせてメッシュをさらに細分化して範囲を設定したメッシュの一例を示しており、(c)は、L2cm×L2cmサイズでオーバーラップさせてメッシュをさらに細分化して範囲を設定したメッシュの一例を示しており、(d)は、L3cm×L3cmサイズでオーバーラップさせてメッシュをさらに細分化して範囲を設定したメッシュの一例を示しており、(e)は、(b)~(d)を合成したメッシュの一例を示している。
図9】本発明の一実施形態である路面状態検出システムが備える累積流量算出手段による累積流量の算出処理内容を模式的に説明した説明図である。(a)は、デジタル標高モデルを示しており、(b)は、流向モデルを示しており、(c)は、累積流量モデルを示している。
図10】本発明の一実施形態である路面状態検出システムが備える損傷個所抽出手段により抽出された損傷個所と、累積流量算出手段により算出された累積流量を重ね合わせた例を示した図である。
図11】本発明の一実施形態である路面状態検出システムが備える累積流量算出手段による累積流量の算出処理内容を模式的に説明した説明図である。
図12】本発明の一実施形態である路面状態検出システムが備える危険テーブル記憶部が記憶する危険テーブルの一例を示した図である。
図13】本発明の一実施形態である路面状態検出システムの処理手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一若しくは同等の部位や構成要素には、同一若しくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0016】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
<路面状態検出装置の構成>
以下、本発明の一実施形態である路面状態検出装置を備えた路面状態検出システムについて説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態である路面状態検出システムの概略構成を示した概略構成図である。
【0019】
図1に示すように、路面状態検出システム100は、路面Rに沿って移動する台車(移動体)3に搭載されており、路面状態検出装置1と、点群データ生成装置2と、モニタ5とを備えている。
【0020】
路面状態検出システム100が搭載された台車3が移動中に、点群データ生成装置2は台車3が走行する道路の路面Rに対してレーザー光を照射する。そして、点群データ生成装置2は、照射したレーザー光の反射光に基づいて路面Rの3次元座標を点群データとして生成する。詳細は後述する。
【0021】
路面状態検出装置1は、点群データ生成装置2から点群データを取得し、取得した点群データに基づいて点群データに基づいて道路の路面状態を検出する。例えば、路面状態検出装置1は、ポットホール、ひび割れ、わだち掘れなどの舗装の損傷などを検出し、今後、損傷が進行する可能性高い損傷候補箇所を特定する。
【0022】
モニタ5は、路面状態検出装置1により検出された区画線を表示する画面など各種画面を表示する。
【0023】
<点群データ生成装置2による点群データの生成>
図2は、本発明の一実施形態である路面状態検出システム100が備える点群データ生成装置2による点群データの生成を模式的に説明した説明図である。
【0024】
図2に示すように、点群データ生成装置2は、レーザースキャナ21と、GNSS(Global Navigation Satellite System )22と、IMU(Inertial Measurement Unit)23と、データ収集手段24と、データ一時記憶部25とを備えている。
【0025】
レーザースキャナ21は、台車3の後方に設けられており、路面Rに向かってレーザー光を照射する。照射するレーザー光の到達距離は80m~100mの範囲であり、例えば、200Hz周期で回転し、1000kHzでレーザー光を発射する。そして、レーザースキャナ21は、発射したレーザー光の反射光を受光し、受光した反射光に基づいて受光した測定時刻と路面Rまでの角度と距離と反射強度とを示すレーザデータ(Time,θ,L,I)を取得する。
【0026】
GNSS22は、人工衛星から発射される信号を用いてGNSSデータ(位置座標)を取得する。
【0027】
IMU23は、点群データ生成装置2の姿勢を検出することができる。これらのIMU23で取得した姿勢はGNSSデータに対応させてPOS(Position and Orientation System)データとしてデータ収集手段24に供給される。すなわち、POSデータは、GNSS22からのGNSSデータ(位置座標)と検出した姿勢とを組み合わせた、基準となるIMU23の位置姿勢(測定時刻、位置座標、傾き)を示すデータ(Time,xi,yi,zi,Roll,Pitch,Yaw)を含んでいる。ziは、グランドレベルからのIMU23が取り付けられている標高値となる。
【0028】
IMU23を基準としたレーザースキャナ21の位置座標は、(Δx,Δy,Δz)で示すことできる。
【0029】
データ収集手段24は、IMU23から取得したPOSデータと、レーザースキャナ21から取得したレーザデータとに基づいて、地物の位置を示す3次元座標の集まりを点群データ(X,Y,Z,I)として生成する。
【0030】
データ一時記憶部25は、データ収集手段24により生成された点群データ(X,Y,Z,I)を一時的に記憶する。記憶された点群データは、路面状態検出装置1に供給される。ここでは、データ一時記憶部25に記憶された点群データは、リアルタイムで路面状態検出装置1へと供給されるようにしたが、これに限らず、台車3には点群データ生成装置2のみが搭載され、点群データの一時保存の後、点群データ生成装置2と路面状態検出装置1とが接続された際に、データ一時記憶部25から路面状態検出装置1へ点群データが供給されるようにしてもよい。
【0031】
<路面状態検出装置1の構成>
図1に戻り、路面状態検出装置1は、点群データ取得手段101と、点群データ記憶部102と、水平化処理手段103と、歪度算出手段104と、損傷個所抽出手段105と、損傷個所記憶部106と、累積流量算出手段107と、累積流量記憶部108と、損傷候補箇所特定手段109と、危険テーブル記憶部110と、表示制御手段111とを有している。
【0032】
点群データ取得手段101は、点群データ生成装置2のデータ一時記憶部25から供給される点群データを取得し、取得した点群データを点群データ記憶部102に記憶する。
【0033】
点群データ記憶部102は、例えば、ハードディスクドライブなどで構成され、点群データ(X,Y,Z)が記憶されている。
【0034】
水平化処理手段103は、点群データ記憶部102に記憶された点群データを道路の進行方向および幅方向の勾配をなくすように水平化処理する。
【0035】
図3は、本発明の一実施形態である路面状態検出システム100が備える水平化処理手段103による縦断方向の水平化処理を模式的に説明した説明図である。(a)は、道路の赤色立体図であり、(b)は、図3(a)におけるA-B断面の高さを示した断面図であり、(c)は、(b)の勾配をなくすように水平化処置した後の高さを示した断面図である。なお、赤色立体図とは、点群データを用いて作成された方向依存性のない地図画像である。
【0036】
図3(b)に示すように、図3(a)に示す道路の進行方向に沿ったA-B断面の高さは、地点Aから地点Bに向かって低くなるような勾配を有している。
【0037】
水平化処理手段103は、この進行方向の勾配をなくすように水平化処理することにより、図3(c)に示す高さ情報を得る。具体的には、水平化処理手段103は、計測した点群データの標高値(Z座標)から、計測した際のレーザースキャナ21の標高値(Z座標)を減算することにより縦断方向の勾配を除去する。
【0038】
図4は、本発明の一実施形態である路面状態検出システム100が備える水平化処理手段103による横断方向の水平化処理を模式的に説明した説明図である。(a)は、道路の赤色立体図であり、(b)は、図4(a)におけるA-B断面の高さを示した断面図であり、(c)は、(b)の勾配をなくすように水平化処置した後の高さを示した断面図である。
【0039】
図4(b)に示すように、図4(a)に示す道路の幅方向(進行方向に直行する方向)に沿ったA-B断面の高さは、地点Aから地点Bに向かって低くなるような勾配を有している。
【0040】
水平化処理手段103は、この幅方向の勾配をなくすように水平化処理することにより、図4(c)に示す高さ情報を得る。具体的には、水平化処理手段103は、計測した際のIMU23の位置姿勢を示すデータの1つであるYawの回転角を「0」とすることで横断方向の勾配を除去する。
【0041】
歪度算出手段104は、水平化処理手段103により水平処理化された点群データを、水平面において10cm×10cmサイズのメッシュに分割し、メッシュ毎に点群データの標高値のヒストグラムを生成し、ヒストグラムの形状に基づいて、メッシュ内の路面の歪度を算出する。
【0042】
図5(a)~(c)は、本発明の一実施形態である路面状態検出システム100が備える歪度算出手段104により生成されるヒストグラムの例を示した図である。
【0043】
路面上に凹凸がなく正常な状態であると、図5(b)に示すように、ヒストグラムは正規分布を示し、その際の歪度は「0」となる。
【0044】
一方、路面上にポットホール、ひび割れ、わだち掘れなどの凹形状の損傷がある場合、図5(a)に示すように、ヒストグラムはマイナス方向に延びるような形状を有し、その際の歪度はマイナス(ここでは、-1.24)となる。また、路面上に凸形状の変形がある場合、図5(c)に示すように、ヒストグラムはプラス方向に延びるような形状を有し、その際の歪度はプラス(ここでは、1.24)となる。
【0045】
図6は、本発明の一実施形態である路面状態検出システム100が備える歪度算出手段104による処理内容を模式的に説明した説明図である。
【0046】
歪度算出手段104は、図6(a)に示す水平化処理手段103により水平処理化された点群データを、図6(b)に示すように水平面においてL1cm×L1cm(ここでは、10cm×10cm)サイズのメッシュに分割する。
【0047】
そして、歪度算出手段104は、L1cm×L1cmサイズのメッシュ毎に点群データを抽出し、図6(c)に示すように、抽出した点群データのZ座標(標高値)のヒストグラムを生成する。さらに、歪度算出手段104は、ヒストグラムの形状に基づいて、L1cm×L1cmサイズのメッシュ内の路面の歪度を算出する。
【0048】
また、歪度算出手段104は、複数のメッシュサイズで分割する。
【0049】
図7は、本発明の一実施形態である路面状態検出システム100が備える歪度算出手段104による分割および歪度算出処理内容を模式的に説明した説明図である。
【0050】
図7に示すように、歪度算出手段104は、水平処理化された点群データG101を複数のサイズのメッシュにそれぞれ分割する。図7に示した点群データG101には、ポットホールG101aが含まれている。
【0051】
歪度算出手段104は、水平処理化された点群データG101をL1cm×L1cm(ここでは、10cm×10cm)サイズのメッシュに分割し、L1cm×L1cmサイズのメッシュ毎に点群データのZ座標(標高値)のヒストグラムを生成し、ヒストグラムの形状に基づいて、L1cm×L1cmサイズのメッシュ内の路面の歪度を算出する。そして、歪度算出手段104は、L1cm×L1cmサイズのメッシュ毎に歪度に段彩を施し、L1メッシュ分割歪度段彩画像G111を生成する。
【0052】
歪度算出手段104は、水平処理化された点群データG101をL2cm×L2cm(ここでは、30cm×30cm)サイズのメッシュに分割し、L2cm×L2cmサイズのメッシュ毎に点群データのZ座標(標高値)のヒストグラムを生成し、ヒストグラムの形状に基づいて、L2cm×L2cmサイズのメッシュ内の路面の歪度を算出する。そして、歪度算出手段104は、L2cm×L2cmサイズのメッシュ毎に歪度に段彩を施し、L2メッシュ分割歪度段彩画像G112を生成する。
【0053】
歪度算出手段104は、水平処理化された点群データG101をL3cm×L3cm(ここでは、50cm×50cm)サイズのメッシュに分割し、L3cm×L3cmサイズのメッシュ毎に点群データのZ座標(標高値)のヒストグラムを生成し、ヒストグラムの形状に基づいて、L3cm×L3cmサイズのメッシュ内の路面の歪度を算出する。そして、歪度算出手段104は、L3cm×L3cmサイズのメッシュ毎に歪度に段彩を施し、L3メッシュ分割歪度段彩画像G113を生成する。
【0054】
ここで、L1メッシュ分割歪度段彩画像G111におけるポットホールG101aに対応する位置の歪度G111aは、「1.5」となっている。これは、メッシュサイズが小さすぎることで、ポットホール内にL1cm×L1cmサイズのメッシュ全体が入ってしまい、歪度が低い値となっていない。
【0055】
一方、L2メッシュ分割歪度段彩画像G112におけるポットホールG101aに対応する位置の歪度G112aは、「-1.5」と低い値となっており、また、L3メッシュ分割歪度段彩画像G113におけるポットホールG101aに対応する位置の歪度G113aも、「-1.5」と低い値となっている。
【0056】
このように、メッシュサイズによって歪度に差が生じる場合がある。具体的には、メッシュサイズが小さすぎると、上述したように、ポットホール内にメッシュ全体が入ってしまい、ポットホールが存在しているにもかかわらず歪度が低い値とならず、メッシュサイズが大きすぎると、メッシュサイズに対するポットホールに相当する点群データ点数が少なくなり、ポットホールが存在しているにもかかわらず歪度が低い値とならない。
【0057】
そこで、歪度算出手段104は、L1cm×L1cmサイズ、L2cm×L2cmサイズ、L3cm×L3cmサイズそれぞれのメッシュ内の路面の歪度を算出し、算出したメッシュサイズ毎の歪度の最小値を合成して新たな歪度として算出する。
【0058】
例えば、L1cm×L1cmメッシュG111aは、L2cm×L2cmメッシュG112aの範囲内に含まれており、また。L3cm×L3cmメッシュG113aの範囲内に含まれている。
【0059】
L1cm×L1cmメッシュG111aの歪度は、「1.5」であり、L2cm×L2cmメッシュG112aの歪度は、「-1.5」であり、L3cm×L3cmメッシュG113aの歪度は、「-1.5」であるので、歪度算出手段104は、L1cm×L1cmメッシュG111aの歪度を最小値である「-1.5」とする。
【0060】
このように、算出したメッシュサイズ毎の歪度の最小値を合成して新たな歪度として算出し、合成画像G121を得る。これにより、合成画像G121では、ポットホールG101aに対応する位置の歪度G121aは、「-1.5」と低い値となり、適切な歪度を得ることができる。
【0061】
なお、それぞれメッシュサイズで単純に分割して歪度を算出すると、分割したメッシュの境界部分に検出漏れが生じる場合がある。そこで、分割したメッシュの境界部分の検出漏れを防止するために、メッシュの上下左右に50(%)ずつオーバーラップさせてメッシュをさらに細分化して範囲を設定するようにしてもよい。
【0062】
図8は、本発明の一実施形態である路面状態検出システム100が備える歪度算出手段104による範囲設定内容を模式的に説明した説明図である。(a)は、オーバーラップを模式的に示した図であり、(b)は、L1cm×L1cmサイズでオーバーラップさせてメッシュをさらに細分化して範囲を設定したメッシュの一例を示しており、(c)は、L2cm×L2cmサイズでオーバーラップさせてメッシュをさらに細分化して範囲を設定したメッシュの一例を示しており、(d)は、L3cm×L3cmサイズでオーバーラップさせてメッシュをさらに細分化して範囲を設定したメッシュの一例を示しており、(e)は、(b)~(d)を合成したメッシュの一例を示している。なお、(b)~(e)では、歪度が高いメッシュを薄い濃度で示し、歪度が低いメッシュを濃い濃度で示している。
【0063】
図8(a)に示した例では、L1cm×L1cm(ここでは、10cm×10cm)サイズのメッシュ(例えばメッシュF101)を左右上下に50(%)ずつオーバーラップさせている。この場合、上下左右でオーバーラップした範囲として、L1cmの50(%)の長さであるL12cm(ここでは、5cm)を1辺とするL12cm×L12cmサイズのメッシュ(例えばメッシュF102)が形成される。また、図示しないが、同様に、L2cm×L2cm(ここでは、30cm×30cm)サイズのメッシュ(を左右上下に50(%)ずつオーバーラップさせ、L3cm×L3cm(ここでは、50cm×50cm)サイズのメッシュ(を左右上下に50(%)ずつオーバーラップさせる。
【0064】
歪度算出手段104は、この上下左右にオーバーラップしたL12cm×L12cmサイズのメッシュに分割し、L12cm×L12cmサイズのメッシュ毎に点群データのZ座標(標高値)のヒストグラムを生成し、ヒストグラムの形状に基づいて、L12cm×L12cmサイズのメッシュ内の路面の歪度を算出するようにしてもよい。
【0065】
図8(b)は、L12cm×L12cmサイズに分割されたL12メッシュ分割歪度段彩画像G501を示している。L12メッシュ分割歪度段彩画像G501は、L1cm×L1cm(ここでは、10cm×10cm)サイズのメッシュを左右上下に50(%)ずつオーバーラップさせて、L12cm×L12cm(ここでは、5cm×5cm)サイズのメッシュに分割され、L12cm×L12cmサイズのメッシュ毎に点群データのZ座標(標高値)のヒストグラムが生成され、ヒストグラムの形状に基づいて、L12cm×L12cmサイズのメッシュ内の路面の歪度が算出されている。
【0066】
図8(c)は、L22cm×L22cmサイズに分割されたL22メッシュ分割歪度段彩画像G502を示している。L22メッシュ分割歪度段彩画像G502は、L2cm×L2cm(ここでは、30cm×30cm)サイズのメッシュを左右上下に50(%)ずつオーバーラップさせて、L22cm×L22cm(ここでは、15cm×15cm)サイズのメッシュに分割され、L22cm×L22cmサイズのメッシュ毎に点群データのZ座標(標高値)のヒストグラムが生成され、ヒストグラムの形状に基づいて、L22cm×L22cmサイズのメッシュ内の路面の歪度が算出されている。
【0067】
図8(d)は、L32cm×L32cmサイズに分割されたL32メッシュ分割歪度段彩画像G503を示している。L32メッシュ分割歪度段彩画像G503は、L3cm×L3cm(ここでは、50cm×50cm)サイズのメッシュを左右上下に50(%)ずつオーバーラップさせて、L32cm×L32cm(ここでは、25cm×25cm)サイズのメッシュに分割され、L32cm×L32cmサイズのメッシュ毎に点群データのZ座標(標高値)のヒストグラムが生成され、ヒストグラムの形状に基づいて、L32cm×L32cmサイズのメッシュ内の路面の歪度が算出されている。
【0068】
図8(e)は、図8(b)に示すL12メッシュ分割歪度段彩画像G501と、図8(c)に示すL22メッシュ分割歪度段彩画像G502と、図8(d)に示すL32メッシュ分割歪度段彩画像G503とを合成した合成画像G504である。
【0069】
合成することにより、合成画像G504は、L12メッシュ分割歪度段彩画像G501と、L22メッシュ分割歪度段彩画像G502と、L32メッシュ分割歪度段彩画像G503との中で最もメッシュサイズが小さいL12cm×L12cmサイズのメッシュ単位で最小値となる歪度が新たな歪度として設定されている。
【0070】
損傷個所抽出手段105は、算出された歪度が所定の閾値Th以下であるメッシュを路面の損傷個所として抽出する。ここで、閾値Thは、実際に発生しているポットホールの位置と比較しながら最適値を、例えば「-0.4」などいうように予め決定しておく。
【0071】
損傷個所記憶部106は、例えば、ハードディスクドライブなどで構成され、損傷個所抽出手段105により抽出された損傷個所の点群データを記憶する。
【0072】
累積流量算出手段107は、水平化処理される前の点群データに基づいて、複数の3次元のセルに分割したデジタル標高モデルを生成し、生成したデジタル標高モデルに基づいてセルに向かう水の流向を算出し、流向が対象のセルに向くセル数を累積させることによりセルごとの累積流量を算出する。
【0073】
図9は、本発明の一実施形態である路面状態検出システム100が備える累積流量算出手段107による累積流量の算出処理内容を模式的に説明した説明図である。(a)は、デジタル標高モデルを示しており、(b)は、流向モデルを示しており、(c)は、累積流量モデルを示している。
【0074】
図9(a)に示すように、累積流量算出手段107は、水平化処理される前の点群データに基づいて、複数の3次元のセルに分割したデジタル標高モデル(DEM)G201を生成する。ここで、デジタル標高モデル(DEM)G201のセル内に記載した数値は、標高値(Z座標)を示している。
【0075】
累積流量算出手段107は、例えば、Flow Direction関数を用いて、生成したデジタル標高モデル(DEM)G201に基づいてセルに向かう水の流向を算出する。
【0076】
デジタル標高モデルG201に示した例では、8つに分割されたセルのうち、数値が大きい(標高値が高い)セルから、数値が小さい(標高値が低い)セルへ水が流れると仮定し、そのセルの方向を流向とする。
【0077】
例えば、図9(b)に示す流向モデルG202において、標高値が「53」であるG202aを注目セルとすると、注目セルG202aの周囲8セルにおいて、最も数値が小さい(標高値が低い)セルは、セルG202bであり、標高値は「41」である。G202aの標高値よりG202の標高値の方が低いので、注目セルG202aにおける流向F202は、セルG202bへ向かう斜め右下方向となる。
【0078】
累積流量算出手段107は、流向が対象のセルに向くセル数を累積させることによりセルごとの累積流量を算出する。具体的には、累積流量算出手段107は、Flow Accumulation関数を用いて、流向が対象のセルに向くセルの数を、次々に累積させて計算することにより、各ピクセルに流れ込むピクセルの数を算出し、ピクセル値とする。このピクセル値が大きいほど流れが集中していることを示している。例えば、図9(c)に示す累積流量モデルG203において、G202aの累積流量は「1」であり、G202bの累積流量は「8」として算出されている。
【0079】
累積流量記憶部108は、例えば、ハードディスクドライブなどで構成され、算出した累積流量とセルの位置座標とを関連付けて記憶する。
【0080】
損傷候補箇所特定手段109は、損傷個所抽出手段105により抽出されたポットホール(損傷個所)と、累積流量算出手段107により算出された累積流量を重ね合わせることにより、損傷が進行する可能性が高い損傷候補箇所を特定する。
【0081】
図10は、損傷個所抽出手段105により抽出されたポットホール(損傷個所)と、累積流量算出手段107により算出された累積流量を重ね合わせた例を示した図である。
【0082】
図10に示すように、損傷個所抽出手段により抽出されたポットホール(損傷個所)と、累積流量算出手段により算出された累積流量を重ね合わせた合成画像G301を示している。累積流量ごとに色を変えることにより累積流量の視認性を向上させるようにしてもよい。
【0083】
合成画像G302,G303は、合成画像G301に含まれる一部の拡大図である。
【0084】
合成画像G302に示すように、損傷個所抽出手段105により抽出された損傷個所であるポットホールPH01と、累積流量算出手段107により算出された大きい累積流量F01(200-500)とが重なり合っている。そのため、このポットホールPH01の箇所において流れが集中していることを示している。そこで、損傷候補箇所特定手段109は、ポットホールPH01と、累積流量F01(200-500)とが重なり合った箇所を、損傷が進行する可能性が高い損傷候補箇所として特定してもよい。
【0085】
一方、合成画像G303に示すように、損傷個所抽出手段105により抽出された損傷個所であるポットホールPH02には、累積流量が大きい流れが重なっていないので、流れの集中がないことを示している。そのため、損傷候補箇所特定手段109は、ポットホールPH02の箇所を、損傷が進行する可能性が高い損傷候補箇所とは特定しない。
【0086】
なお、損傷候補箇所特定手段109は、損傷個所抽出手段105により抽出されたポットホール(損傷個所)と、累積流量算出手段107により算出された累積流量を重ね合わせることにより、水の流れの終点を水が溜まる場所(路面滞水)とし、水が溜まるポットホールを損傷が進行する可能性が高い損傷候補箇所として特定してもよい。
【0087】
図11は、本発明の一実施形態である路面状態検出システム100が備える累積流量算出手段107による累積流量の算出処理内容を模式的に説明した説明図である。
【0088】
図11に示すように、合成画像G401では、累積流量算出手段107により算出された流向に基づいて、水の流れの終点として、流水終点地点P401~P408が抽出されている。この流水終点地点P401~P408が、水が溜まりやすい場所(路面滞水)となる。
【0089】
そこで、損傷候補箇所特定手段109は、流水終点地点(路面滞水)と、損傷個所抽出手段105により抽出された損傷個所であるポットホールが重なり合う場所が、水が溜まり損傷が進行する可能性が高い損傷候補箇所として特定してもよい。
【0090】
合成画像G401では、流水終点地点P401~P408と、損傷個所抽出手段105により抽出された損傷個所であるポットホールPH401とは重なり合わないので、ポットホールPH401は、水が溜まりにくく損傷候補箇所として特定されない。
【0091】
一方、合成画像G402では、累積流量算出手段107により算出された累積流量に基づいて、水の流れの終点として、流水終点地点P411~P416が抽出されている。
【0092】
そして、流水終点地点P416と、損傷個所抽出手段105により抽出された損傷個所であるポットホールPH411とが重なり合うので、ポットホールPH411は、水が溜まると推測できるので損傷候補箇所として特定される。
【0093】
また、損傷候補箇所特定手段109は、累積流量算出手段107により算出された流向に基づいて路面水状態を算出し、危険テーブルに基づいて、所定領域内における、路面水状態と、損傷個所抽出手段105により抽出されたポットホール数(損傷個所の数)と、累積流量算出手段107により算出された累積流量とに対応する危険度を抽出することにより損傷候補箇所を特定するようにしてもよい。
【0094】
危険テーブル記憶部110は、例えば、ハードディスクドライブなどで構成され、路面の水か流れるか留まるかを示す路面水状態と、累積流量と、損傷個所の数と、損傷が進行する可能性の高さを示す危険度とを関連付けて記憶する。
【0095】
図12は、本発明の一実施形態である路面状態検出システム100が備える危険テーブル記憶部110が記憶する危険テーブルの一例を示した図である。
【0096】
図12に示すように、危険テーブルは、路面水状態D101と、累積流量D102と、危険度D103とが、関連付けられて記憶されている。
【0097】
路面水状態D101は、水が集中しないか、路面の水か流れることを示す路面流水か、路面の水か留まることを示す路面滞水かのいずれかを示す。
【0098】
危険度D103は、損傷が進行する可能性の高さを示している。ここでは、危険度D104は、「1」~「5」でランク付けされており、「5」が最も危険度が高い値として設定されている。
【0099】
危険テーブルは、路面水状態が路面滞水であり、累積流量D102が多いほど損傷が進行する可能性高くなるため危険度D103が高くなるように設定されている。特に、積雪寒冷地では、路面に生じたポットホールなどから侵入した水がアスファルト混合物層に侵入し、凍結融解を繰り返すことでポットホールが拡大することから、多量の水が溜まりやすい箇所ほど危険度が高くなるように設定している。
【0100】
損傷候補箇所特定手段109は、累積流量算出手段により算出された流向に基づいて、路面水状態を算出する。そして、損傷候補箇所特定手段109は、危険テーブル記憶部110に記憶された危険テーブルに基づいて、損傷個所抽出手段105により抽出された損傷個所を含む所定領域内における、算出した路面水状態と、累積流量とに対応する危険度を抽出することにより損傷候補箇所を特定する。これにより、任意に設定した所定の領域内に損傷箇所が含まれる場合、危険テーブルに基づいて危険度を抽出することができるので、危険度が高い領域を損傷候補箇所として特定することができる。
【0101】
表示制御手段111は、損傷候補箇所特定手段109に記憶された損傷候補箇所をモニタ5に表示させる。
【0102】
<路面状態検出システムの作用>
次に、本発明の一実施形態である路面状態検出装置を備えた路面状態検出システム100の作用について説明する。
【0103】
図13は、本発明の一実施形態である路面状態検出システム100の処理手順を示したフローチャートである。
【0104】
図13に示すように、ステップS101において、点群データ取得手段101は、点群データ生成装置2のデータ一時記憶部25から供給される点群データを取得し、ステップS103において、取得した点群データを点群データ記憶部102に記憶する。
【0105】
ステップS105において、水平化処理手段103は、点群データ記憶部102に記憶された点群データを道路の進行方向および幅方向の勾配をなくすように水平化処理する。
【0106】
ステップS107において、歪度算出手段104は、水平化処理手段103により水平処理化された点群データを、水平面において複数のサイズのメッシュにそれぞれ分割する。
【0107】
ステップS109において、歪度算出手段104は、複数のメッシュサイズ毎に、点群データそれぞれにおいてメッシュ毎に点群データの標高値のヒストグラムを生成する。
【0108】
ステップS111において、歪度算出手段104は、複数のメッシュサイズ毎に、ヒストグラムの形状に基づいて、メッシュ内の路面の歪度を算出し、算出したメッシュサイズ毎の歪度の最小値を合成して新たな歪度として算出する。
【0109】
ステップS113において、損傷個所抽出手段105は、算出された歪度が所定の閾値Th以下であるメッシュを路面の損傷個所として抽出する。
【0110】
ステップS201において、累積流量算出手段107は、水平化処理される前の点群データに基づいて、複数の3次元のセルに分割したデジタル標高モデルを生成し、生成したデジタル標高モデルに基づいてセルに向かう流向を算出する。
【0111】
ステップS203において、累積流量算出手段107は、流向が対象のセルに向くセル数を累積させることによりセルごとの累積流量を算出する。
【0112】
ステップS210において、損傷候補箇所特定手段109は、損傷個所抽出手段105により抽出された損傷個所と、累積流量算出手段107により算出された累積流量を重ね合わせることにより、損傷が進行する可能性が高い損傷候補箇所を特定する。
【0113】
なお、ここでは、路面の損傷個所として、ポットホールを例に挙げて説明したが、ポットホールに限らず、ひび割れ、わだち掘れなどのような微小かつ急激な落差がある舗装の損傷を適切に検出することができる。
【0114】
以上のように、本発明の一実施形態である路面状態検出システム100によれば、移動体が移動する道路に対して照射したレーザー光の反射光に基づいて道路の3次元座標を点群データとして生成する点群データ生成装置2から点群データを取得し、取得した点群データに基づいて道路の路面状態を検出する路面状態検出装置1であって、点群データを道路の進行方向および幅方向の勾配をなくすように水平化処理する水平化処理手段103と、水平処理化された点群データを、水平面において所定サイズのメッシュに分割し、メッシュ毎に点群データの標高値のヒストグラムを生成し、ヒストグラムの形状に基づいて、メッシュ内の路面の歪度を算出する歪度算出手段104と、算出された歪度が所定の閾値以下であるメッシュを路面の損傷個所として抽出する損傷個所抽出手段105と、を備える。
【0115】
これにより、例えば、ポットホール、ひび割れ、わだち掘れなどのような微小かつ急激な落差がある舗装の損傷を適切に検出することができる。
【0116】
また、本発明の一実施形態である路面状態検出システム100によれば、歪度算出手段104は、水平処理化された点群データを、水平面において複数のサイズのメッシュにそれぞれ分割し、複数のメッシュサイズ毎に、点群データそれぞれにおいてメッシュ毎に点群データの標高値のヒストグラムを生成し、ヒストグラムの形状に基づいて、メッシュ内の路面の歪度を算出し、算出したメッシュサイズ毎の歪度の最小値を合成して新たな歪度として算出する。
【0117】
これにより、ポットホール、ひび割れ、わだち掘れなどのような舗装の損傷の大きさにかかわらず、適切に歪度を算出できるので、より適切に舗装の損傷を検出することができる。
【0118】
また、本発明の一実施形態である路面状態検出システム100によれば、水平化処理される前の点群データに基づいて、複数の3次元のセルに分割したデジタル標高モデルを生成し、生成したデジタル標高モデルに基づいてセルに向かう水の流向を算出し、流向が対象のセルに向くセル数を累積させることによりセルごとの累積流量を算出する累積流量算出手段107と、損傷個所抽出手段105により抽出された損傷個所と、累積流量算出手段107により算出された累積流量を重ね合わせることにより、損傷が進行する可能性高い損傷候補箇所を特定する損傷候補箇所特定手段109と、を備える。
【0119】
これにより、今後損傷が進行する可能性高い、すなわち将来的に補修が必要となる損傷候補箇所を特定することができるので、損傷が進行する前に予防保全を行うことが可能となる。
【0120】
また、本発明の一実施形態である路面状態検出システム100によれば、路面の水か流れるか留まるかを示す路面水状態と、累積流量と、損傷が進行する可能性の高さを示す危険度とを関連付けて危険テーブルとして記憶する危険テーブル記憶部110を、さらに備え、損傷候補箇所特性手段109は、危険テーブルに基づいて、損傷個所抽出手段105により抽出された損傷個所を含む所定領域内における、累積流量算出手段107により算出された流向に基づいて算出した路面水状態と、累積流量とに対応する危険度を抽出することにより損傷候補箇所を特定する。
【0121】
これにより、路面水状態と、累積流量とに基づいて、総合的に損傷候補箇所を特定することができるので、より適切に損傷候補箇所を特定することができる。
【0122】
なお、上述した実施形態は、コンピュータにインストールした路面状態検出プログラムを実行させることにより実現することもできる。
【符号の説明】
【0123】
1 路面状態検出装置
2 点群データ生成装置
3 台車(移動体)
5 モニタ
21 レーザースキャナ
24 データ収集手段
25 データ一時記憶部
100 路面状態検出システム
101 点群データ取得手段
102 点群データ記憶部
103 水平化処理手段
104 歪度算出手段
105 損傷個所抽出手段
106 損傷個所記憶部
107 累積流量算出手段
108 累積流量記憶部
109 損傷候補箇所特定手段
110 危険テーブル記憶部
111 表示制御手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13