(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029868
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
B41J2/01 129
B41J2/01 303
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132304
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】谷本 里香
(72)【発明者】
【氏名】井出 典孝
(72)【発明者】
【氏名】田端 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】野澤 大
(72)【発明者】
【氏名】花岡 幸弘
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EA25
2C056EB03
2C056EB11
2C056EB29
2C056EC03
2C056EC14
2C056EC28
2C056FA04
2C056FA09
2C056FA10
2C056HA38
2C056HA44
2C056HA52
(57)【要約】
【課題】光硬化型のインクに光を照射することで媒体にインクを硬化定着させるとともに、手動で移動させられる間に印刷を行う印刷装置を提供すること。
【解決手段】手動で移動させられる間に印刷を行う印刷装置であって、第1光を照射する第1光源と、第2光を照射する第2光源と、第1光及び第2光の出力を制御する光源制御部と、駆動素子を駆動する駆動信号を出力する駆動回路と、印刷装置の移動方向を判定する方向判定部と、を備え、走査軸に沿って、第1光源、吐出部、第2光源の順に位置し、第1光源から第2光源に向かう第1走査方向に印刷装置が移動させられている期間において、第1光を印刷面に照射させ、第2光を前記印刷面に照射させず、第2光源から第1光源に向かう第2走査方向に印刷装置が移動させられている期間において、第1光を印刷面に照射させず、第2光を印刷面に照射させる、印刷装置。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体の印刷面上を走査軸に沿って手動で移動させられる間に、前記印刷面に印刷を行う印刷装置であって、
前記印刷面に第1光を照射する第1光源と、
前記印刷面に第2光を照射する第2光源と、
前記第1光源からの前記第1光の出力、及び前記第2光源からの前記第2光の出力を制御する光源制御部と、
前記第1光及び前記第2光に反応する液体を吐出する吐出部と、
前記吐出部から液体を吐出させる駆動素子を駆動する駆動信号を出力する駆動回路と、
前記印刷装置の移動に伴う位置情報信号を出力するエンコーダーと、
前記位置情報信号に基づいて、前記印刷装置の移動方向を判定する方向判定部と、
を備え、
前記第1光源、前記第2光源、及び前記吐出部は、前記走査軸に沿って、前記第1光源、前記吐出部、前記第2光源の順に位置し、
前記走査軸に沿って前記第1光源から前記第2光源に向かう第1走査方向に前記印刷装置が移動させられている期間において、前記光源制御部は、前記第1光を前記印刷面に照射させ、前記第2光を前記印刷面に照射させず、
前記走査軸に沿って前記第2光源から前記第1光源に向かう第2走査方向に前記印刷装置が移動させられている期間において、前記光源制御部は、前記第1光を前記印刷面に照射させず、前記第2光を前記印刷面に照射させる、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記方向判定部は、Dフリップフロップ回路を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記第1光源及び前記第2光源は、発光ダイオードを含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記エンコーダーが、前記印刷装置が移動していないことを示す前記位置情報信号を出力している場合、
前記吐出部は、液体を吐出しない、
ことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記吐出部から液体が吐出され得る期間において、前記方向判定部が、前記印刷装置の移動方向が前記第1走査方向から前記第2走査方向になったと判定した場合、又は前記印刷装置の移動方向が前記第2走査方向から前記第1走査方向になったと判定した場合、
前記吐出部は、液体を吐出せず、
前記光源制御部は、前記第1光及び前記第2光を前記印刷面に照射させない、
ことを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記第1光源に電流を供給するか否かを切り替える第1スイッチ回路と、
前記第2光源に電流を供給するか否かを切り替える第2スイッチ回路と、
を備え、
前記光源制御部は、前記第1スイッチ回路及び前記第2スイッチ回路の導通状態を制御することで、前記第1光源からの前記第1光の出力、及び前記第2光源からの前記第2光の出力を制御し、
前記第1スイッチ回路及び前記第2スイッチ回路は、Pチャネル型のMOS-FETである、
ことを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記駆動回路は、
前記駆動信号の基となる基駆動信号を変調した変調信号を出力する変調回路と、
前記変調信号を増幅した増幅変調信号を出力する増幅回路と、
前記増幅変調信号の基準電位をレベルシフトしたレベルシフト増幅変調信号を出力するレベルシフト回路と、
前記レベルシフト増幅変調信号を復調することで前記駆動信号を出力する復調回路と、
を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
普通紙を代表とする様々な媒体に対して印刷可能な印刷装置には、当該媒体上に着弾したインクを定着させるために、光硬化型インクが用いられる場合がある。このような光硬化型インクを用いた印刷装置には、通常、インクの硬化を促進し媒体に定着させるための光照射装置が配設されている。そして、印刷装置は、媒体に画像を形成する際、媒体にインクを着弾させた直後に、当該光照射装置からインクの硬化を促進させる光を一定時間及び一定回数照射することで、媒体にインクを硬化定着させている。
【0003】
例えば、特許文献1には、光硬化型のインクであるカチオン重合性化合物を含むインクを吐出し、当該インクが吐出された媒体に紫外線を照射することで、媒体に吐出されたインクを硬化定着させるインクジェット記録装置(印刷装置)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、光硬化型のインクに光を照射し、媒体に吐出されたインクを硬化定着させる技術を、手動で移動させられる間に媒体に印刷を行う所謂ハンディ―プリンター等の印刷装置に適用した場合、特許文献1に記載の技術のみでは十分ではなく、改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る印刷装置の一態様は、
媒体の印刷面上を走査軸に沿って手動で移動させられる間に、前記印刷面に印刷を行う印刷装置であって、
前記印刷面に第1光を照射する第1光源と、
前記印刷面に第2光を照射する第2光源と、
前記第1光源からの前記第1光の出力、及び前記第2光源からの前記第2光の出力を制御する光源制御部と、
前記第1光及び前記第2光に反応する液体を吐出する吐出部と、
前記吐出部から液体を吐出させる駆動素子を駆動する駆動信号を出力する駆動回路と、
前記印刷装置の移動に伴う位置情報信号を出力するエンコーダーと、
前記位置情報信号に基づいて、前記印刷装置の移動方向を判定する方向判定部と、
を備え、
前記第1光源、前記第2光源、及び前記吐出部は、前記走査軸に沿って、前記第1光源、前記吐出部、前記第2光源の順に位置し、
前記走査軸に沿って前記第1光源から前記第2光源に向かう第1走査方向に前記印刷装置が移動させられている期間において、前記光源制御部は、前記第1光を前記印刷面に照射させ、前記第2光を前記印刷面に照射させず、
前記走査軸に沿って前記第2光源から前記第1光源に向かう第2走査方向に前記印刷装置が移動させられている期間において、前記光源制御部は、前記第1光を前記印刷面に照射させず、前記第2光を前記印刷面に照射させる、
ことを特徴とする印刷装置。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】複数の吐出部の内の1個の概略構造の一例を示す図である。
【
図3】印刷装置をZ軸に沿って-Z側見た場合の図である。
【
図5】移動方向判定回路の構成の一例を示す図である。
【
図6】印刷装置がX軸に沿って順方向に移動している場合の移動方向判定回路の動作の一例を示す図である。
【
図7】印刷装置がX軸に沿って逆方向に移動している場合の移動方向判定回路の動作の一例を示す図である。
【
図10】駆動信号COMの信号波形の一例を示す図である。
【
図11】駆動信号選択制御回路の構成を示す図である。
【
図12】デコーダーにおけるデコード内容の一例を示す図である。
【
図13】吐出部の個分に対応する選択回路の構成を示す図である。
【
図14】駆動信号選択制御回路の動作を説明するための図である。
【
図15】印刷装置の印刷動作の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。用いる図面は説明の便宜上のものである。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
以下の説明では、互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸を図示して説明を行う。このとき、図示するX軸を示す矢印の起点側を-X側、先端側を+X側と称し、図示するY軸を示す矢印の起点側を-Y側、先端側を+Y側と称し、図示するZ軸を示す矢印の起点側を-Z側、先端側を+Z側と称する場合がある。
【0010】
1.印刷装置の概要
図1は、印刷装置1の構成の一例を示す図である。本実施形態の印刷装置1は、パーソナルコンピューター、タブレット、及びスマートフォンなどのホストコンピューターから供給される駆動電圧により駆動するとともに、使用者が手動で印刷装置1を移動させることで、当該ホストコンピューターから入力された画像データに応じた画像を媒体に形成する所謂ハンディープリンターであって、液体の一例として光に反応して硬化する光硬化型のインクを吐出し、吐出された光硬化型のインクに光を照射することで、媒体にインクを硬化定着させる光硬化型のハンディープリンターである。
【0011】
ここで、本実施形態の印刷装置1では、印刷装置1が吐出する光硬化型のインクは、紫外光に反応する紫外線硬化型のインクであり、当該光硬化型のインクに照射される光は、紫外光であるとして説明をおこなう。これにより、印刷装置1が吐出するインクが空間を照射する太陽光や照明などに反応することにより意図せず硬化するおそれが低減するとともに、可視光に対してエネルギーが大きな短波長の紫外光を用いることで、当該紫外光を出力する光源が小さな場合であっても、大きなエネルギーを出力することができる。ここで、光硬化型のインクに照射される紫外光とは、波長が10nm以上、400nm以下の電磁波を含む光であって、具体的には、10nm以上、400nm以下の波長範囲に少なくとも1つ以上の発光スペクトルのピークを有する光である。なお、印刷装置1が吐出する光硬化型のインクが反応する光の波長は、紫外領域に限るものではなく、それ故に、当該光硬化型のインクに照射される光は、紫外光に限られるものではない。また、以下の説明において、光硬化型のインクを単にインクと称する場合がある。
【0012】
図1に示すように、印刷装置1は、筐体5と、筐体5に収容された配線基板10、吐出ヘッド20、インク容器40、ローラー31,32、及びLEDモジュール71,72と、を有する。
【0013】
ローラー31は、筐体5の-Z側の面から少なくとも一部が露出した状態で、回転軸がY軸に沿った方向となるように設けられている。ローラー32は、ローラー31の+X側に位置し、筐体5の-Z側の面から少なくとも一部が露出した状態で、回転軸がY軸に沿った方向となるように設けられている。そして、使用者が、印刷装置1をX軸に沿って-X側から+X側に向かい手動で移動させた場合、ローラー31,32は、媒体に接触した状態で
図1における時計回りに回転し、使用者が、印刷装置1をX軸に沿って+X側から-X側に向かい手動で移動させた場合、ローラー31,32は、媒体に接触した状態で
図1における反時計回りに回転する。ここで、以下の説明において、ローラー31,32が
図1において時計回りに回転する場合を順回転と称し、ローラー31,32が
図1において反時計回りに回転する場合を逆回転と称する場合がある。また、印刷装置1をX軸に沿って-X側から+X側に向かい手動で移動させる方向を順方向Fwと称し、印刷装置1をX軸に沿って+X側から-X側に向かい手動で移動させる方向を逆方向Rvと称する場合がある。
【0014】
配線基板10は、筐体5の-X側の面に沿って延在する板状部材であって、配線基板10には、ホストコンピューターが出力する駆動電圧、及び画像データが入力されるコネクターCNが設けられているとともに、コネクターCNを介して入力された画像データと、ローラー31,32の回転量、及び回転方向と、に基づいて、後述する吐出ヘッド20、及びLEDモジュール71,72等の動作を制御する各種回路が設けられている。なお、以下の説明において、印刷装置1が有する配線基板10は1個であるとして説明を行うが、印刷装置1は、複数の配線基板10を有してもよい。
【0015】
インク容器40は、筐体5の+X側の面に沿って位置し、吐出ヘッド20から吐出される光硬化型のインクを貯留するとともに、貯留する光硬化型のインクを吐出ヘッド20に供給する。このようなインク容器40は、例えば、インクカートリッジや可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパックであってもよく、インクの補充が可能なインクタンクであってもよい。
【0016】
吐出ヘッド20は、X軸に沿った方向において、配線基板10とインク容器40との間に位置している。また、吐出ヘッド20は、媒体にインクを吐出する複数の吐出部600を有する。このような吐出ヘッド20は、X軸に沿った方向において、配線基板10とインク容器40との間に位置し、筐体5の-Z側の面の内、ローラー31とローラー32との間の領域から複数の吐出部600が露出するように設けられている。
【0017】
ここで、吐出ヘッド20が有する吐出部600の構造の一例について説明する。
図2は、複数の吐出部600の内の1個の概略構造の一例を示す図である。なお、
図2には、吐出部600に加えて、複数の吐出部600に共通に設けられたリザーバー641と、リザーバー641にインクを供給する供給口661と、を図示している。
【0018】
図2に示すように、吐出部600は、圧電素子60、振動板621、キャビティー631、及びノズルプレート632を含む。
【0019】
圧電素子60は、圧電体601と電極611,612とを含む。そして、圧電素子60において、電極611,612は、圧電体601を挟むように位置している。以上のように構成された圧電素子60は、電極611に供給される電圧と電極612に供給される電圧との電位差に応じて、圧電体601の中央部分が上下方向に変位するように駆動する。
【0020】
振動板621は、
図2における圧電素子60の下方に位置している。すなわち、圧電素子60は、振動板621の
図2における上方の面に形成されている。このような振動板621は、圧電素子60の駆動に伴う上下方向への変位に伴い、上下方向に変形する。
【0021】
振動板621の
図2における下方には、キャビティー631が位置している。キャビティー631は、リザーバー641と連通している。これにより、インク容器40から供給口661を介して供給されたインクが、リザーバー641を経由してキャビティー631の内部に供給される。このようなキャビティー631は、振動板621の上下方向の変位に伴い内部容積が変化する。すなわち、振動板621はキャビティー631の内部容積を変化させるダイヤフラムとして機能し、キャビティー631は振動板621の変位に伴い内部圧力が変化する圧力室として機能する。
【0022】
ノズルプレート632には、ノズル651が形成されている。ノズル651は、ノズルプレート632に設けられ開口部であって、キャビティー631と連通している。そして、キャビティー631の内部に充填されたインクは、キャビティー631の内部容積の変化に応じてノズル651から吐出される。
【0023】
以上のように構成された吐出部600において、圧電素子60が上方向に撓むように駆動した場合、振動板621が上方向に変位する。これにより、キャビティー631の内部容積が拡大し、その結果、リザーバー641に貯留されているインクが、キャビティー631に引き込まれる。一方で、圧電素子60が下方向に撓むように駆動した場合、振動板621が下方向に変位する。これにより、キャビティー631の内部容積が縮小し、その結果、キャビティー631の内部容積の縮小の程度に応じた量のインクが、ノズル651から吐出される。なお、圧電素子60は、駆動によりノズル651からインクを吐出できる構造であればよく、
図2に示す構造に限られるものではない。
【0024】
図1に戻り、LEDモジュール71は、1又は複数のLED素子710を含み、LEDモジュール72は、1又は複数のLED素子720を含む。1又は複数のLED素子710及び1又は複数のLED素子720は、吐出ヘッド20から吐出された光硬化型のインクを媒体上で硬化、定着させるための波長の光であって、例えば、紫外光を出力する。なお、LEDモジュール71,72は、吐出ヘッド20から吐出された光硬化型のインクを媒体上で硬化、定着させるための波長の光を出力できる光源であればよく、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプなどであってもよい。
【0025】
LEDモジュール71は、X軸に沿った方向においてローラー31と吐出ヘッド20との間に位置し、筐体5の-Z側の面の内、ローラー31と吐出ヘッド20との間の領域から1又は複数のLED素子710が露出するように設けられている。また、LEDモジュール72は、X軸に沿った方向においてローラー32と吐出ヘッド20との間に位置し、筐体5の-Z側の面の内、ローラー32と吐出ヘッド20との間の領域から1又は複数のLED素子720が露出するように設けられている。すなわち、X軸に沿った方向において、吐出ヘッド20の両側に、吐出ヘッド20から吐出された光硬化型のインクを媒体上で硬化、定着させるためのLEDモジュール71,72が位置している。換言すれば、1又は複数のLED素子710をLEDモジュール71、1又は複数のLED素子720をLEDモジュール72、及び複数の吐出部600を含む吐出ヘッド20は、X軸に沿って、順方向FwにおいてLEDモジュール71、吐出ヘッド20、LEDモジュール72の順に位置している。
【0026】
図3は、印刷装置1をZ軸に沿って-Z側から見た場合の図である。
図3に示すように、吐出ヘッド20において複数の吐出部600は、複数の吐出部600のそれぞれに含まれるノズル651がY軸に沿って2列で並ぶように設けられている。すなわち、吐出ヘッド20は、筐体5の-Z側の面の内のローラー31とローラー32との間の領域から2列で並設されたノズル651が露出するように設けられている。ここで、
図3では、Y軸に沿って2列で並んで設けられた複数のノズル651が、X軸に沿った方向において略同じ位置となる場合を図示しているが、Y軸に沿って2列で並んで設けられたノズル651のX軸に沿った方向の位置が相互に異なる位置であってもよい。すなわち、吐出ヘッド20が有する2列のノズル651は、所謂千鳥状に配置されていてもよい。これにより、媒体に形成される画像の解像度を高めることができる。
【0027】
また、吐出ヘッド20において、LEDモジュール71が有する1又は複数のLED素子710は、Y軸に沿って並設される複数のノズル651の-X側において、Y軸に沿って並設され、LEDモジュール72が有する1又は複数のLED素子720は、Y軸に沿って並設される複数のノズル651の+X側において、Y軸に沿って並設されている。すなわち、1又は複数のLED素子710と1又は複数のLED素子720とは、吐出ヘッド20が有する複数のノズル651が並設する方向と同じ方向に並設されている。これにより、吐出ヘッド20が有する複数のノズル651から吐出され、媒体に着弾したインクに対して、1又は複数のLED素子710のそれぞれが出力する光、及び1又は複数のLED素子720のそれぞれが出力する光を略均一に、且つ効率よく照射することができる。その結果、媒体に着弾したインクの硬化、及び媒体へのインクの定着度合いにばらつきが生じるおそれが低減する。
【0028】
以上のように構成された印刷装置1は、コネクターCNを介して入力される画像データに基づいて、配線基板10に設けられた各種回路が吐出ヘッド20の動作を制御する各種信号を生成するとともに、インク容器40に貯留された光硬化型のインクが不図示のインク供給チューブを介して吐出ヘッド20が有する複数の吐出部600のそれぞれのキャビティー631に供給される。そして、使用者が印刷装置1をX軸に沿って手動で移動させることで生じるローラー31,32の回転に同期して、吐出ヘッド20からインクが吐出される。このとき、吐出ヘッド20の両側に設けられたLEDモジュール71,72が、吐出されたインクが着弾した媒体に光を照射する。これにより、媒体に着弾したインクの硬化が促進され、媒体に所望の画像が硬化定着する。
【0029】
以上のように本実施形態の印刷装置1は、媒体の印刷面上をX軸に沿って手動で移動させられる間に、媒体の印刷面に印刷を行う印刷装置1であって、発光ダイオードである1又は複数のLED素子710を含み、媒体の印刷面に光を照射するLEDモジュール71と、発光ダイオードである1又は複数のLED素子720を含み、媒体の印刷面に光を照射するLEDモジュール72と、LEDモジュール71が照射する光、及びLEDモジュール72が照射する光に反応する液体の一例としての光硬化型のインクを吐出する複数の吐出部600を含む吐出ヘッド20と、を備える。
【0030】
2.印刷装置の機能構成
次に、印刷装置1の機能構成について説明する。
図4は、印刷装置1の機能構成の一例を示す図である。
図4に示すように、印刷装置1は、配線基板10、吐出ヘッド20、エンコーダー80、及びLEDモジュール71,72を備える。
【0031】
配線基板10には、コネクターCN、USBインターフェース回路100、ヘッド制御回路110、移動方向判定回路120、LED駆動回路130、切替回路140、及びヘッド駆動回路50が設けられている。
【0032】
コネクターCNには、USB(Universal Serial Bus)通信規格に準拠した信号であって、ホストコンピューターが出力する電圧信号Vdd、グラウンド信号Vss、及び差動信号D+,D-が入力される。すなわち、コネクターCNは、USB通信規格に準拠した形状のUSBコネクターであり、ホストコンピューターが出力する電圧信号Vdd、グラウンド信号Vss、及び差動信号D+,D-は、USB通信規格に準拠した形状のUSBケーブルを伝搬し、印刷装置1に入力される。そして、印刷装置1は、入力される電圧信号Vddとグラウンド信号Vssとの電位差により駆動するとともに、入力される差動信号D+,D-に含まれる画像データに対応する画像を媒体に形成する。
【0033】
USBインターフェース回路100には、コネクターCNを介して入力される電圧信号Vdd、グラウンド信号Vss、及び差動信号D+,D-が入力される。USBインターフェース回路100は、入力される差動信号D+,D-をシングルエンドの信号に復元するとともに、復元した信号に含まれる画像データから画像情報信号PDをヘッド制御回路110に出力する。このようなUSBインターフェース回路100は、1又は複数の半導体装置を含んで構成されている。
【0034】
ヘッド制御回路110には、USBインターフェース回路100が出力する画像情報信号PDに加えて、位置情報信号PS1,PS2、及び移動方向信号DMが入力される。
【0035】
ヘッド制御回路110に入力される位置情報信号PS1,PS2は、エンコーダー80が出力する。エンコーダー80は、インクリメンタル方式のロータリーエンコーダーを含む。そして、エンコーダー80は、印刷装置1の移動に伴い生じるローラー31及びローラー32の回転を検出し、ローラー31及びローラー32の少なくとも一方の回転量に応じたパルス信号を出力する。具体的には、本実施形態のエンコーダー80は、ローラー31及びローラー32の回転量に応じたパルス信号であって、位置情報信号PS1と、位置情報信号PS1に対して位相が4分の1周期だけずれた位置情報信号PS2と、をヘッド制御回路110に出力する。
【0036】
詳細には、印刷装置1がX軸に沿って順方向Fwに移動している場合、すなわち、ローラー31,32が順回転している場合、エンコーダー80は、位置情報信号PS1の位相が位置情報信号PS2の位相よりも4分の1周期だけ進んだ位置情報信号PS1,PS2をヘッド制御回路110に出力する。一方で、印刷装置1がX軸に沿って逆方向Rvに移動している場合、すなわち、ローラー31,32が逆回転している場合、エンコーダー80は、位置情報信号PS2の位相が位置情報信号PS1の位相よりも4分の1周期だけ進んだ位置情報信号PS1,PS2をヘッド制御回路110に出力する。なお、エンコーダー80は、印刷装置1がX軸に沿って順方向Fwに移動している場合に位置情報信号PS2の位相が位置情報信号PS1の位相よりも4分の1周期だけ進んだ位置情報信号PS1,PS2をヘッド制御回路110に出力し、印刷装置1がX軸に沿って逆方向Rvに移動している場合に位置情報信号PS1の位相が位置情報信号PS2の位相よりも4分の1周期だけ進んだ位置情報信号PS1,PS2をヘッド制御回路110に出力してもよい。
【0037】
ヘッド制御回路110に入力される移動方向信号DMは、移動方向判定回路120が出力する。移動方向判定回路120には、エンコーダー80が出力する位置情報信号PS1,PS2が入力される。移動方向判定回路120は、入力される位置情報信号PS1の位相と位置情報信号PS2の位相とに基づいて、印刷装置1の移動方向を判定する。そして、移動方向判定回路120は、判定結果に基づく移動方向信号DMをヘッド制御回路110に出力する。
【0038】
具体的には、移動方向判定回路120は、入力される位置情報信号PS1の位相が位置情報信号PS2の位相よりも進んでいるのか、又は入力される位置情報信号PS2の位相が位置情報信号PS1の位相よりも進んでいるのかを判定する。そして、移動方向判定回路120は、位置情報信号PS1の位相が位置情報信号PS2の位相よりも進んでいる場合、Lレベルの移動方向信号DMをヘッド制御回路110に出力し、位置情報信号PS2の位相が位置情報信号PS1の位相よりも進んでいる場合、Hレベルの移動方向信号DMをヘッド制御回路110に出力する。すなわち、本実施形態の移動方向判定回路120は、印刷装置1がX軸に沿って順方向Fwに移動している場合、Lレベルの移動方向信号DMをヘッド制御回路110に出力し、印刷装置1がX軸に沿って逆方向Rvに移動している場合、Hレベルの移動方向信号DMをヘッド制御回路110に出力する。
【0039】
なお、移動方向判定回路120は、印刷装置1の移動方向に応じた移動方向信号DMを出力できればよい。そのため、移動方向判定回路120は、例えば、印刷装置1がX軸に沿って順方向Fwに移動している場合にHレベルの移動方向信号DMをヘッド制御回路110に出力し、印刷装置1がX軸に沿って逆方向Rvに移動している場合にLレベルの移動方向信号DMをヘッド制御回路110に出力してもよい。また、印刷装置1の移動方向が順方向Fwであるのか逆方向Rvであるのかの情報を含むコマンド信号を移動方向信号DMとしてヘッド制御回路110に出力してもよい。なお、移動方向判定回路120の構成、及び動作の詳細は後述する。
【0040】
ヘッド制御回路110は、移動方向判定回路120から入力される移動方向信号DMに基づいて、印刷装置1の移動方向を把握する。そして、ヘッド制御回路110は、入力される移動方向信号DMに応じた論理レベルの点灯制御信号LSW1,LSW2を切替回路140に出力する。
【0041】
切替回路140には、ヘッド制御回路110が出力する点灯制御信号LSW1,LSW2に加えて、LED駆動回路130が出力するLED駆動信号LDRが入力される。LED駆動回路130は、電圧信号Vddに基づく定電流信号のLED駆動信号LDRを生成し、切替回路140に出力する。なお、LED駆動回路130は、電圧信号Vddを昇圧した後、昇圧した電圧に基づいて定電流信号のLED駆動信号LDRを生成し、切替回路140に出力してもよい。このようなLED駆動回路130としては、既存の定電流出力回路を用いることができる。
【0042】
切替回路140は、入力される点灯制御信号LSW1の論理レベルに基づいて、LED駆動信号LDRをLED駆動信号LDR1としてLEDモジュール71に出力するか否かを切り替える。これにより、LEDモジュール71が有する1又は複数のLED素子710の点灯と消灯とが制御される。また、切替回路140は、入力される点灯制御信号LSW2の論理レベルに基づいて、LED駆動信号LDRをLED駆動信号LDR2としてLEDモジュール72に出力するか否かを切り替える。これにより、LEDモジュール72が有する1又は複数のLED素子720の点灯と消灯とが制御される。すなわち、切替回路140は、LEDモジュール71,72のそれぞれの点灯と消灯とを切り替えるスイッチ回路として機能し、ヘッド制御回路110は、LEDモジュール71が有する1又は複数のLED素子710からの光の出力、及びLEDモジュール72が有する1又は複数のLED素子720からの光の出力を制御する。なお、切替回路140の構成、及び動作の詳細は後述する。
【0043】
また、ヘッド制御回路110は、位置情報信号PS1の立ち上り及び立下りをカウントするとともに、位置情報信号PS2の立ち上り及び立下りをカウントすることで、ローラー31及びローラー32の少なくとも一方の回転量を把握する。そして、ヘッド制御回路110はローラー31及びローラー32の少なくとも一方の回転量から印刷装置1の移動量を算出する。ここで、ヘッド制御回路110は、位置情報信号PS1又は位置情報信号PS2の一方のみを用いて印刷装置1の移動量を算出してもよいが、ヘッド制御回路110は、
図4に示すように、位置情報信号PS1及び位置情報信号PS2の双方を用いて印刷装置1の移動量を算出することが好ましい。
【0044】
本実施形態の印刷装置1では、エンコーダー80が出力する位置情報信号PS1の位相と位置情報信号PS2の位相とが4分の1周期だけずれている。そのため、ヘッド制御回路110は、位置情報信号PS1、又は位置情報信号PS2の一方のみで印刷装置1の移動量を算出する場合と比較して、2倍の分解能で印刷装置1の移動量をより算出することができる。これにより、後述する吐出ヘッド20からのインクの吐出タイミングを精度よく制御することができ、その結果、媒体へのインクの吐出精度が向上する。
【0045】
また、ヘッド制御回路110は、入力される画像情報信号PDを記憶回路112に記憶する。そして、ヘッド制御回路110は、エンコーダー80から位置情報信号PS1,PS2が入力されることで、記憶回路112に記憶する画像情報信号PDを読み出すとともに、移動方向判定回路120が出力する移動方向信号DMに応じたクロック信号SCK、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び基駆動信号dAを生成し保持する。その後、ヘッド制御回路110は、エンコーダー80から入力される位置情報信号PS1,PS2に基づいて算出される印刷装置1の移動量に応じて、保持するクロック信号SCK、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHを吐出ヘッド20に出力するとともに、保持する基駆動信号dAをヘッド駆動回路50に出力する。このようなヘッド制御回路110は、画像情報信号PDを記憶する記憶回路112と、クロック信号SCK、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び基駆動信号dAを保持する不図示のレジスターと、を含む1又は複数の半導体装置を含んで構成されている。
【0046】
ヘッド駆動回路50は、ヘッド制御回路110から入力される基駆動信号dAをアナログ信号に変換した後、変換したアナログ信号を増幅することで駆動信号COMを生成する。そして、ヘッド駆動回路50は、生成した駆動信号COMを吐出ヘッド20に出力する。なお、ヘッド駆動回路50の構成、及び動作の詳細は後述する。
【0047】
吐出ヘッド20は、駆動信号選択制御回路200と複数の吐出部600とを有する。
【0048】
駆動信号選択制御回路200には、ヘッド制御回路110が出力するクロック信号SCK、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHと、ヘッド駆動回路50が出力する駆動信号COMと、が入力される。駆動信号選択制御回路200は、入力されるクロック信号SCK、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHに基づいて、駆動信号COMに含まれる信号波形を選択、又は非選択とすることで、複数の吐出部600のそれぞれに対応する駆動信号VOUTを生成する。そして、駆動信号選択制御回路200は、生成した駆動信号VOUTを対応する吐出部600に出力する。なお、駆動信号選択制御回路200の構成、及び動作の詳細は後述する。
【0049】
複数の吐出部600のそれぞれは、前述のとおり圧電素子60を含む。圧電素子60の一端であって、例えば電極611には、駆動信号選択制御回路200が出力する駆動信号VOUTが供給される。また、圧電素子60の他端であって、例えば電極612には、基準電圧信号VBSが供給される。そして、圧電素子60は、電極611に供給される駆動信号VOUTの電圧値と、電極612に供給される基準電圧信号VBSの電圧値との電位差に応じて駆動する。その結果、駆動する圧電素子60に対応する吐出部600のノズル651から圧電素子60の駆動量に応じた量のインクが吐出される。
【0050】
ここで、圧電素子60の電極612に供給される基準電圧信号VBSは、電圧値がグラウンド信号Vssと同じグラウンド電位の信号であってもよく、電圧値が5.5Vや6V等で一定の直流電圧信号であってもよい。このような基準電圧信号VBSは、圧電素子60の駆動の基準電位として機能する。
【0051】
以上のように、本実施形態の印刷装置1は、媒体の印刷面に光を照射する1又は複数のLED素子710を有するLEDモジュール71と、媒体の印刷面に光を照射する1又は複数のLED素子720を有するLEDモジュール72と、LEDモジュール71が有する1又は複数のLED素子710からの光の出力、及びLEDモジュール72が有する1又は複数のLED素子720からの光の出力を制御するヘッド制御回路110と、LEDモジュール71が有する1又は複数のLED素子710から出力される光、及びLEDモジュール72が有する1又は複数のLED素子720から出力される光に反応する光硬化型のインクを吐出する複数の吐出部600を有する吐出ヘッド20と、吐出ヘッド20からインクを吐出させる圧電素子60を駆動する駆動信号COMを出力するヘッド駆動回路50と、印刷装置1の移動に伴う位置情報信号PS1,PS2を出力するエンコーダー80と、位置情報信号PS1,PS2に基づいて、印刷装置1の移動方向を判定する移動方向判定回路120と、を備える。
【0052】
3.移動方向判定回路の機能構成
次に、移動方向判定回路120の構成、及び動作の一例について説明する。
図5は、移動方向判定回路120の構成の一例を示す図である。
図5に示すように、移動方向判定回路120は、Dフリップフロップ回路122を含む。
【0053】
Dフリップフロップ回路122のデータ入力端子であるD端子には、位置情報信号PS2が入力される。また、Dフリップフロップ回路122のクロック入力端子であるCK端子には、位置情報信号PS1が入力される。そして、移動方向判定回路120は、Dフリップフロップ回路122のデータ出力端子であるQ端子から出力される信号を、移動方向信号DMとして出力する。すなわち、移動方向判定回路120は、位置情報信号PS1の立ち上がりのタイミングにおける位置情報信号PS2の論理レベルを、移動方向信号DMとして出力する。
【0054】
図6は、印刷装置1がX軸に沿って順方向Fwに移動している場合の移動方向判定回路120の動作の一例を示す図である。前述のとおり、印刷装置1が順方向Fwに移動している場合、すなわち、ローラー31,32が順回転している場合、エンコーダー80は、位置情報信号PS1の位相が位置情報信号PS2の位相よりも4分の1周期だけ進んだ位置情報信号PS1,PS2を出力する。そして、エンコーダー80が出力する位置情報信号PS2はDフリップフロップ回路122のD端子に入力され、エンコーダー80が出力する位置情報信号PS1はDフリップフロップ回路122のCK端子に入力される。この場合において、位置情報信号PS1の位相が位置情報信号PS2の位相よりも4分の1周期だけ進んでいるが故に、位置情報信号PS1の立ち上がりのタイミングにおける位置情報信号PS2の論理レベルは、常にLレベルとなる。したがって、印刷装置1がX軸に沿って順方向Fwに移動している場合、移動方向判定回路120は、Lレベルの移動方向信号DMを出力する。
【0055】
図7は、印刷装置1がX軸に沿って逆方向Rvに移動している場合の移動方向判定回路120の動作の一例を示す図である。前述のとおり、印刷装置1が逆方向Rvに移動している場合、すなわち、ローラー31,32が逆回転している場合、エンコーダー80は、位置情報信号PS2の位相が位置情報信号PS1の位相よりも4分の1周期だけ進んだ位置情報信号PS1,PS2を出力する。そして、エンコーダー80が出力する位置情報信号PS2はDフリップフロップ回路122のD端子に入力され、エンコーダー80が出力する位置情報信号PS1はDフリップフロップ回路122のCK端子に入力される。この場合において、位置情報信号PS2の位相が位置情報信号PS1の位相よりも4分の1周期だけ進んでいるが故に、位置情報信号PS1の立ち上がりのタイミングにおける位置情報信号PS2の論理レベルは、常にHレベルとなる。したがって、印刷装置1がX軸に沿って逆方向Rvに移動している場合、移動方向判定回路120は、Hレベルの移動方向信号DMを出力する。
【0056】
以上のように、移動方向判定回路120は、Dフリップフロップ回路122を含み、エンコーダー80が出力する位置情報信号PS1,PS2に基づいて、印刷装置1の移動方向を判定し、判定結果を示す移動方向信号DMを出力する。
【0057】
4.切替回路の機能構成
次に、切替回路140の構成、及び動作の一例について説明する。
図8は、切替回路140の構成の一例を示す図である。
図8に示すように、切替回路140は、トランジスター141,142,143,144と、抵抗素子146,147と、を含む。ここで、トランジスター141,142は、Pチャネル型のMOS-FETであって、トランジスター143,144は、Nチャネル型のMOS-FETである。
【0058】
図8に示すように、トランジスター141のソース端子にはLED駆動回路130が出力するLED駆動信号LDRが入力され、トランジスター141のゲート端子はトランジスター143のドレイン端子と電気的に接続し、トランジスター141のドレイン端子からLED駆動信号LDR1が出力される。すなわち、トランジスター141のドレイン端子は、LEDモジュール71と電気的に接続している。トランジスター143のゲート端子には点灯制御信号LSW1が入力され、トランジスター143のソース端子にはグラウンド電位の信号が供給されている。また、抵抗素子146の一端はトランジスター141のソース端子と電気的に接続し、抵抗素子146の他端はトランジスター141のゲート端子と電気的に接続している。
【0059】
同様に、トランジスター142のソース端子にはLED駆動回路130が出力するLED駆動信号LDRが入力され、トランジスター142のゲート端子はトランジスター144のドレイン端子と電気的に接続し、トランジスター142のドレイン端子からLED駆動信号LDR2が出力される。すなわち、トランジスター142のドレイン端子とLEDモジュール72とが電気的に接続している。トランジスター144のゲート端子には点灯制御信号LSW2が入力され、トランジスター144のソース端子にはグラウンド電位の信号が供給されている。抵抗素子147の一端はトランジスター142のソース端子と電気的に接続し、抵抗素子147の他端はトランジスター142のゲート端子と電気的に接続している。
【0060】
以上のように構成された切替回路140にHレベルの点灯制御信号LSW1が入力された場合、トランジスター143のドレイン端子とソース端子との間が導通に制御される。これにより、トランジスター141のゲート端子には、トランジスター143を介してグラウンド電位が供給される。したがって、トランジスター141のソース端子とドレイン端子との間も導通に制御される。その結果、切替回路140は、LED駆動信号LDRをLED駆動信号LDR1としてLEDモジュール71に出力する。一方で、切替回路140にLレベルの点灯制御信号LSW1が入力された場合、トランジスター143のドレイン端子とソース端子との間が非導通に制御される。これにより、トランジスター141のゲート端子には、抵抗素子146を介してLED駆動信号LDRが供給される。したがって、トランジスター141のソース端子とドレイン端子との間も非導通に制御される。その結果、切替回路140は、LED駆動信号LDRをLED駆動信号LDR1としてLEDモジュール71に出力しない。
【0061】
すなわち、切替回路140にHレベルの点灯制御信号LSW1が入力された場合、LEDモジュール71に含まれる1又は複数のLED素子710は点灯し、切替回路140にLレベルの点灯制御信号LSW1が入力された場合、LEDモジュール71に含まれる1又は複数のLED素子710は消灯する。
【0062】
同様に、切替回路140にHレベルの点灯制御信号LSW2が入力された場合、トランジスター144のドレイン端子とソース端子との間が導通に制御される。これにより、トランジスター142のゲート端子には、トランジスター144を介してグラウンド電位が供給される。したがって、トランジスター142のソース端子とドレイン端子との間も導通に制御される。その結果、切替回路140は、LED駆動信号LDRをLED駆動信号LDR2としてLEDモジュール72に出力する。一方で、切替回路140にLレベルの点灯制御信号LSW2が入力された場合、トランジスター144のドレイン端子とソース端子との間が非導通に制御される。これにより、トランジスター142のゲート端子には、抵抗素子147を介してLED駆動信号LDRが供給される。したがって、トランジスター142のソース端子とドレイン端子との間も非導通に制御される。その結果、切替回路140は、LED駆動信号LDRをLED駆動信号LDR2としてLEDモジュール72に出力しない。
【0063】
すなわち、切替回路140にHレベルの点灯制御信号LSW2が入力された場合、LEDモジュール72に含まれる1又は複数のLED素子720は点灯し、切替回路140にLレベルの点灯制御信号LSW2が入力された場合、LEDモジュール72に含まれる1又は複数のLED素子720は消灯する。
【0064】
以上のように切替回路140は、LEDモジュール71に含まれる1又は複数のLED素子710に電流を供給するか否かを切り替えるトランジスター141と、LEDモジュール72に含まれる1又は複数のLED素子720に電流を供給するか否かを切り替えるトランジスター142と、を備え、ヘッド制御回路110は、トランジスター141及びトランジスター142の導通状態を制御することで、LEDモジュール71に含まれる1又は複数のLED素子710からの光の出力、及びLEDモジュール72に含まれる1又は複数のLED素子720からの光の出力を制御する。このような切替回路140において、トランジスター141及びトランジスター142は、Pチャネル型のMOS-FETで構成されている。これにより、LEDモジュール71に含まれる1又は複数のLED素子710の駆動に伴うトランジスター141での電力損失、及びLEDモジュール72に含まれる1又は複数のLED素子720の駆動に伴うトランジスター142での電力損失を低減することが可能となり、その結果、印刷装置1の消費電力を低減することができる。
【0065】
5.駆動回路の機能構成
次に、駆動信号COMを出力するヘッド駆動回路50の構成、及び動作について説明する。
図9は、ヘッド駆動回路50の機能構成の一例を示す図である。
図9に示すようにヘッド駆動回路50は、昇圧回路502、DAC(Digital to Analog Converter)510、加算器515,516、変調回路520、増幅回路550、復調回路560、帰還回路570、及びレベルシフト回路580を有する。
【0066】
昇圧回路502には、電圧信号Vddが入力される。昇圧回路502は、入力される電圧信号Vddを昇圧することで、電圧信号VHV,Vmを含む複数の電圧値の信号を生成する。そして、昇圧回路502は、電圧信号VHV,Vmをヘッド駆動回路50に含まれる各種の構成に出力する。ここで、昇圧回路502が生成する電圧信号VHVは、例えば、20Vの直流電圧であり、電圧信号Vmは、例えば、7.5Vの直流電圧である。
【0067】
DAC回路510には、基駆動信号dAが入力される。DAC回路510は、入力される基駆動信号dAをデジタル-アナログ変換することでアナログ信号の基駆動信号aAを出力する。
【0068】
加算器515の+側の入力端には、基駆動信号aAが入力される。加算器515の-側の入力端には、帰還信号VFB1が入力される。そして、加算器515は、基駆動信号aAから帰還信号VFB1を差し引いた信号を出力する。ここで、加算器515に入力される帰還信号VFB1は、駆動信号COMが帰還回路570を介して帰還した信号であって、駆動信号COMの電圧値を減衰した信号である。
【0069】
加算器516の+側の入力端には、加算器515が出力する信号が入力される。加算器516の-側の入力端には、帰還信号VFB2が入力される。そして、加算器516は、加算器515が出力する信号から帰還信号VFB2を差し引いた信号を補正基駆動信号oAとして出力する。ここで、加算器516に入力される帰還信号VFB2は、駆動信号COMが帰還回路570を介して帰還した信号であって、駆動信号COMに含まれる高周波リップル成分の信号を抽出するとともに、抽出した高周波リップル成分の信号の電圧値を減衰した信号である。
【0070】
変調回路520は比較器を含み、補正基駆動信号oAをパルス変調した変調信号MSを出力する。具体的には、変調回路520は、補正基駆動信号oAの電圧値と所定の電圧値の閾値電圧とを比較する。そして、変調回路520は、補正基駆動信号oAの電圧値が閾値電圧の電圧値よりも大きい場合にHレベルとなり、補正基駆動信号oAの電圧値が閾値電圧の電圧値よりも小さい場合にLレベルとなる変調信号MSを出力する。
【0071】
増幅回路550は、ゲートドライブ回路530、ダイオードD1、コンデンサーC1、及びトランジスターM1,M2を含む。増幅回路550は、変調信号MSを増幅することで増幅変調信号AMS1を中点CP1に出力する。
【0072】
変調回路520が出力する変調信号MSは、ゲートドライブ回路530が有するゲートドライバー531に入力される。ゲートドライバー531は、入力される変調信号MSの電圧値をレベルシフトしたゲート信号HGD1を出力する。また、変調回路520が出力する変調信号MSは、インバーター521において論理レベルが反転された後、ゲートドライブ回路530が有するゲートドライバー532に入力される。ゲートドライバー532は、入力される変調信号MSの論理レベルが反転された信号の電圧値をレベルシフトしたゲート信号LGD1を出力する。
【0073】
トランジスターM1,M2は、Nチャネル型のMOS-FETである。ゲートドライバー531が出力するゲート信号HGD1は、トランジスターM1のゲート端子に入力される。トランジスターM1のドレイン端子には、電圧信号VHVが入力されている。トランジスターM1のソース端子は、中点CP1と電気的に接続している。また、ゲートドライバー532が出力するゲート信号LGD1は、トランジスターM2のゲート端子に入力される。トランジスターM2のドレイン端子は、中点CP1と電気的に接続している。トランジスターM2のソース端子には、グラウンド電位が供給されている。そして、トランジスターM1がゲート信号HGD1に基づき動作し、トランジスターM2がゲート信号LGD1に基づき動作することで、トランジスターM1とトランジスターM2とが接続された中点CP1に、変調信号MSを電圧信号VHVで増幅した増幅変調信号AMS1が生成される。
【0074】
ここで、ゲート信号HGD1及びゲート信号LGD1を出力するゲートドライブ回路530の動作について説明する。ゲートドライブ回路530は、ゲートドライバー531,532を含む。前述のとおり、ゲートドライバー531には、変調信号MSが入力される。また、ゲートドライバー532には、変調信号MSの論理レベルがインバーター521により反転された信号が入力される。すなわち、ゲートドライバー531に入力される信号とゲートドライバー532に入力される信号とは、排他的にHレベルとなる。ここで、排他的にHレベルとなるとは、ゲートドライバー531とゲートドライバー532とに同時にHレベルの信号が入力されないことが含まれる。すなわち、排他的にHレベルとなるとは、ゲートドライバー531とゲートドライバー532とに同時にLレベルの信号が入力される場合を除外するものではない。
【0075】
ゲートドライバー531の低電位側の電源端子は、中点CP1と電気的に接続している。したがって、ゲートドライバー531の低電位側の電源端子には、中点CP1に生じた電圧値の電圧信号HVS1が供給される。ゲートドライバー531の高電位側の電源端子は、ダイオードD1のカソード端子、及びコンデンサーC1の一端と電気的に接続している。また、ダイオードD1のアノード端子には、電圧信号Vmが供給され、コンデンサーC1の他端は、中点CP1と電気的に接続している。すなわち、ゲートドライバー531の高電位側の電源端子には、ダイオードD1とコンデンサーC1とを含むブートストラップ回路の出力電圧が供給される。これにより、ゲートドライバー531の高電位側の電源端子には、中点CP1の電圧値であって電圧信号HVS1の電圧値よりも電圧信号Vmの電圧値だけ大きな電圧値の電圧信号HVD1が供給される。そして、ゲートドライバー531は、Hレベルの変調信号MSが入力された場合、電圧信号HVD1の電圧値のゲート信号HGD1を出力し、Lレベルの変調信号MSが入力された場合、電圧信号HVS1の電圧値のゲート信号HGD1を出力する。
【0076】
ゲートドライバー532の低電位側の電源端子には、グラウンド電位の電圧信号LVS1が供給される。ゲートドライバー532の高電位側の電源端子には、電圧信号Vmの電圧値の電圧信号LVD1が供給される。そして、ゲートドライバー532は、Lレベルの変調信号MSの論理レベルがインバーター521によって反転されたHレベルの信号が入力された場合、電圧信号LVD1の電圧値のゲート信号LGD1を出力し、Hレベルの変調信号MSの論理レベルがインバーター521によって反転されたLレベルの信号が入力された場合、電圧信号LVS1の電圧値のゲート信号LGD1を出力する。
【0077】
以上のように、増幅回路550は、変調信号MSに基づいてゲート信号HGD1、及びゲート信号LGD1を出力するゲートドライブ回路530と、一端であるドレイン端子に電圧信号VHVが供給され、他端であるソース端子が中点CP1と電気的に接続し、ゲート端子に入力されるゲート信号HGD1に基づいて動作するトランジスターM1と、一端であるドレイン端子が中点CP1と電気的に接続し、他端であるソース端子にグラウンド電位が供給され、ゲート端子に入力されるゲート信号LGD1に基づいて動作するトランジスターM2と、を有する。そして、増幅回路550は、トランジスターM1とトランジスターM2とが接続される中点CP1に、変調信号MSを電圧信号VHVの電圧値で増幅した増幅変調信号AMS1を出力する。
【0078】
レベルシフト回路580は、基準レベル切替回路582、ゲートドライブ回路590、ダイオードD11,D12、コンデンサーC11,C12、トランジスターM3,M4、及びブートストラップ回路BSを含む。そして、レベルシフト回路580は、増幅変調信号AMS1の基準電位をレベルシフトしたレベルシフト増幅変調信号AMS2を生成し、中点CP2に出力する。
【0079】
レベルシフト回路580が有する基準レベル切替回路582には、基駆動信号dAが入力される。基準レベル切替回路582は、入力される基駆動信号dAにより規定される電圧値が、所定の電圧値以上である場合にHレベルの基準レベル切替信号LSをゲートドライブ回路590に出力し、入力される基駆動信号dAにより規定される電圧値が、所定の電圧値未満である場合にLレベルの基準レベル切替信号LSをゲートドライブ回路590に出力する。ここで、所定の電圧値とは、増幅回路550に供給される電圧信号VHVの電圧値以下であって、好ましくは、電圧信号VHVの電圧値の近傍の電圧値である。
【0080】
ゲートドライブ回路590は、基準レベル切替回路582が出力する基準レベル切替信号LSの論理レベルに応じて、トランジスターM3を駆動するゲート信号HGD2と、トランジスターM4を駆動するゲート信号LGD2と、を出力する。
【0081】
基準レベル切替回路582が出力する基準レベル切替信号LSは、ゲートドライブ回路590が有するゲートドライバー591に入力される。ゲートドライバー591は、入力される基準レベル切替信号LSの電圧値をレベルシフトしたゲート信号HGD2を出力する。また、基準レベル切替回路582が出力する基準レベル切替信号LSは、インバーター584において論理レベルが反転された後、ゲートドライブ回路590が有するゲートドライバー592に入力される。ゲートドライバー592は、入力される基準レベル切替信号LSの論理レベルが反転された信号の電圧値をレベルシフトしたゲート信号LGD2を出力する。
【0082】
トランジスターM3,M4は、Nチャネル型のMOS-FETである。ゲートドライバー591が出力するゲート信号HGD2は、トランジスターM3のゲート端子に入力される。トランジスターM3のドレイン端子には、ブートストラップ回路BSが出力するレベルシフト電圧信号Vlsが入力されている。トランジスターM3のソース端子は、中点CP2と電気的に接続している。また、ゲートドライバー592が出力するゲート信号LGD2は、トランジスターM4のゲート端子に入力される。トランジスターM4のドレイン端子は、中点CP2と電気的に接続している。トランジスターM4のソース端子は、中点CP1と電気的に接続している。そして、トランジスターM3がゲート信号HGD2に基づき動作し、トランジスターM4がゲート信号LGD2に基づき動作することで、トランジスターM3とトランジスターM4とが接続される中点CP2には、中点CP1に出力された増幅変調信号AMS1の基準電位を電圧信号VHVに基づいてレベルシフトしたレベルシフト増幅変調信号AMS2が出力される。
【0083】
すなわち、レベルシフト回路580に含まれるトランジスターM3は、一端であるドレイン端子にブートストラップ回路BSが出力するレベルシフト電圧信号Vlsが供給され、他端であるソース端子が中点CP2と電気的に接続し、ゲートドライバー591が出力するゲート信号HGD2に基づいて動作し、レベルシフト回路580に含まれるトランジスターM4は、一端であるドレイン端子が中点CP2と電気的に接続し、他端であるソース端子に増幅回路550が出力する増幅変調信号AMS1が供給され、ゲートドライバー592が出力するゲート信号LGD2に基づいて動作する。そして、レベルシフト回路580は、トランジスターM3とトランジスターM4とが接続される中点CP2に生成された信号を、レベルシフト増幅変調信号AMS2として出力する。
【0084】
ブートストラップ回路BSは、ダイオードD13とコンデンサーC13とを含む。ダイオードD13のアノード端子には、電圧信号VHVが供給されている。ダイオードD13のカソード端子は、コンデンサーC13の一端と電気的に接続している。また、コンデンサーC13の他端は中点CP1と電気的に接続している。すなわち、ブートストラップ回路BSには、電圧信号VHVと中点CP1に出力された増幅変調信号AMS1とが入力される。そして、ブートストラップ回路BSは、電圧信号VHVの電圧値に増幅変調信号AMS1の電圧値を加算したレベルシフト電圧信号Vlsを生成し、トランジスターM3のドレイン端子に出力する。換言すれば、ブートストラップ回路BSは、電圧信号VHVと増幅変調信号AMS1とに応じた信号であって、増幅変調信号AMS1の基準電位を電圧信号VHVに基づいてレベルシフトしたレベルシフト電圧信号Vlsを出力する。
【0085】
ここで、ゲート信号HGD2及びゲート信号LGD2を出力するゲートドライブ回路590の動作について説明する。ゲートドライブ回路590は、ゲートドライバー591,592を含む。前述のとおり、ゲートドライバー591には、基準レベル切替信号LSが入力される。また、ゲートドライバー592には、基準レベル切替信号LSの論理レベルがインバーター584により反転された信号が入力される。すなわち、ゲートドライバー591に入力される信号とゲートドライバー592に入力される信号とは、排他的にHレベルとなる。
【0086】
ゲートドライバー591の低電位側の電源端子は、中点CP2と電気的に接続している。したがって、ゲートドライバー591の低電位側の電源端子には、中点CP2に生じた電圧値の電圧信号HVS2が供給される。ゲートドライバー591の高電位側の電源端子は、ダイオードD11のカソード端子、及びコンデンサーC11の一端と電気的に接続している。また、ダイオードD11のアノード端子には、電圧信号Vmが供給され、コンデンサーC11の他端は、中点CP2と電気的に接続している。すなわち、ゲートドライバー591の高電位側の電源端子には、ダイオードD11とコンデンサーC11とを含むブートストラップ回路の出力電圧が供給される。これにより、ゲートドライバー591の高電位側の電源端子には、中点CP2の電圧値であって電圧信号HVS2の電圧値よりも電圧信号Vmの電圧値だけ大きな電圧値の電圧信号HVD2が供給される。そして、ゲートドライバー591は、Hレベルの基準レベル切替信号LSが入力された場合、電圧信号HVD2の電圧値のゲート信号HGD2を出力し、Lレベルの基準レベル切替信号LSが入力された場合、電圧信号HVS2の電圧値のゲート信号HGD2を出力する。
【0087】
ゲートドライバー592の低電位側の電源端子は、中点CP1と電気的に接続している。したがって、ゲートドライバー592の低電位側の電源端子には、中点CP1に生じた信号であって、増幅変調信号AMS1が電圧信号LVS2として供給される。ゲートドライバー592の高電位側の電源端子は、ダイオードD12のカソード端子、及びコンデンサーC12の一端と電気的に接続している。また、ダイオードD12のアノード端子には、電圧信号Vmが供給され、コンデンサーC12の他端は、中点CP1と電気的に接続している。すなわち、ゲートドライバー592の高電位側の電源端子には、ダイオードD12とコンデンサーC13とを含むブートストラップ回路の出力電圧が供給される。これにより、ゲートドライバー592の高電位側の電源端子には、電圧信号LVS2の電圧値よりも電圧信号Vmの電圧値だけ大きな電圧値の電圧信号LVD2が供給される。そして、ゲートドライバー592は、Lレベルの基準レベル切替信号LSの論理レベルがインバーター584によって反転されたHレベルの信号が入力された場合、電圧信号LVD2の電圧値のゲート信号LGD2を出力し、Hレベルの基準レベル切替信号LSの論理レベルがインバーター584によって反転されたLレベルの信号が入力された場合、電圧信号LVS2の電圧値のゲート信号HGD2を出力する。
【0088】
以上のように構成されたレベルシフト回路580において、ゲート信号HGD2に基づきトランジスターM3のドレイン端子とソース端子とが非導通に制御され、且つゲート信号LGD2に基づきトランジスターM4のドレイン端子とソース端子とが導通に制御されている場合、すなわち、基準レベル切替回路582がLレベルの基準レベル切替信号LSを出力している場合、増幅回路550の中点CP1とレベルシフト回路580の中点CP2とは、トランジスターM4を介して電気的に接続される。したがって、レベルシフト回路580は、トランジスターM4を介して中点CP2に供給される増幅変調信号AMS1を、レベルシフト増幅変調信号AMS2として出力する。
【0089】
一方で、ゲート信号HGD2に基づきトランジスターM3のドレイン端子とソース端子とが導通に制御され、且つゲート信号LGD2に基づきトランジスターM4のドレイン端子とソース端子とが非導通とが導通に制御されている場合、すなわち、基準レベル切替回路582がHレベルの基準レベル切替信号LSを出力している場合、増幅回路550の中点CP1とレベルシフト回路580の中点CP2とは、ブートストラップ回路BS、及びトランジスターM3を介して電気的に接続される。したがって、レベルシフト回路580は、増幅変調信号AMS1の基準電位を電圧信号VHVに基づいてレベルシフトしたレベルシフト電圧信号Vlsを、レベルシフト増幅変調信号AMS2として出力する。
【0090】
レベルシフト回路580が出力するレベルシフト増幅変調信号AMS2は、復調回路560に入力される。復調回路560は、入力されるレベルシフト増幅変調信号AMS2を平滑することで復調し、駆動信号COMを生成する。そして、復調回路560で生成された駆動信号COMがヘッド駆動回路50から出力される。換言すれば、復調回路560は、レベルシフト増幅変調信号AMS2を復調することで駆動信号COMを出力する。
【0091】
復調回路560は、インダクターL10とコンデンサーC10とを含む。インダクターL10の一端は、中点CP2と電気的に接続している。インダクターL10の他端は、コンデンサーC10の一端と電気的に接続している。コンデンサーC10の他端には、グラウンド電位が供給されている。すなわち、インダクターL10とコンデンサーC10とは、ローパスフィルター回路を構成する。そして、レベルシフト回路580から出力されたレベルシフト増幅変調信号AMS2は、当該ローパスフィルター回路によって平滑され、ヘッド駆動回路50は、平滑されたレベルシフト増幅変調信号AMS2を駆動信号COMとして出力する。
【0092】
帰還回路570は、第1帰還回路572、及び第2帰還回路574を含む。第1帰還回路572及び第2帰還回路574には、復調回路560が出力する駆動信号COMが入力される。
【0093】
第1帰還回路572は、入力される駆動信号COMの電圧値を減衰する。そして、第1帰還回路572は、減衰した信号を帰還信号VFB1として加算器515に帰還する。第2帰還回路574は、入力される駆動信号COMの低周波成分が除去し高周波リップル成分の信号を抽出する不図示のハイパスフィルター回路と、当該高周波リップル成分の信号に重畳するノイズ成分を除去するローパスフィルター回路と、を含む。そして、第2帰還回路574は、駆動信号COMに含まれる高周波リップル成分の信号からノイズ成分が除去された信号を減衰し、帰還信号VFB2として加算器516に帰還する。
【0094】
以上のように、ヘッド駆動回路50が出力する駆動信号COMは、増幅変調信号AMS1の基準電圧をレベルシフトしたレベルシフト増幅変調信号AMS2を復調回路560に含まれるローパスフィルターによって平滑することで生成される。このような駆動信号COMを、第1帰還回路572によって減衰し加算器515に帰還することで、ヘッド駆動回路50は、第1帰還回路572の遅延と帰還の伝達関数とで定まる周波数で自励発振する。しかしながら、第1帰還回路572を介した帰還経路のみでは遅延量が大きく、それ故に、駆動信号COMの信号波形の精度を十分に確保できるほどに、ヘッド駆動回路50の自励発振の周波数を高くすることができない場合があった。本実施形態のヘッド駆動回路50では、第1帰還回路572を介した帰還経路とは別に、駆動信号COMに含まれる高周波リップル成分を帰還する第2帰還回路574を設けることで、ヘッド駆動回路50の回路全体でみた場合における遅延量を小さくし、変調信号MSの周波数を駆動信号COMの信号波形の精度を十分に確保できるほどに高くすることができる。これにより、ヘッド駆動回路50の自励発振の周波数を駆動信号COMの信号波形の精度を十分に確保できる程度に高くすることができ、その結果、ヘッド駆動回路50が出力する駆動信号COMの波形精度を高めることができる。
【0095】
以上のように、本実施形態のヘッド駆動回路50は、駆動信号COMの基となる基駆動信号dA,aAを変調した変調信号MSを出力する変調回路520と、変調信号MSを増幅した増幅変調信号AMS1を出力する増幅回路550と、増幅変調信号AMS1の基準電位をレベルシフトしたレベルシフト増幅変調信号AMS2を出力するレベルシフト回路580と、レベルシフト増幅変調信号AMS2を復調することで駆動信号COMを出力する復調回路560と、を有する。
【0096】
以上のように構成されたヘッド駆動回路50は、基駆動信号dA,aAを変調した変調信号MSを増幅し復調することとで駆動信号COMを生成する所謂D級増幅回路を含む。これにより、本実施形態のヘッド駆動回路50は、A級増幅回路、B級増幅回路、及びAB級増幅回路を用いた場合と比較して、高効率で増幅することが可能となり、ヘッド駆動回路50における消費電力を低減することができる。さらに、本実施形態のヘッド駆動回路50では、増幅回路550が変調信号MSを増幅することにより生成した増幅変調信号AMS1の基準電位を、レベルシフト回路580によってシフトさせることで、駆動信号COMを生成している。このようなヘッド駆動回路50では、電圧信号VHVの電圧値を出力する駆動信号COMの電圧値よりも低くすることが可能となり、それ故に、増幅回路550に含まれるトランジスターM1,M2における電力損失を低減することができる。すなわち、本実施形態のヘッド駆動回路50では、A級増幅回路、B級増幅回路、及びAB級増幅回路を用いた場合と比較して、消費電力が低減することは勿論のこと、従前のD級増幅回路を用いた場合と比較しても、消費電力を低減することができる。
【0097】
6.駆動信号選択制御回路の機能構成
次に、駆動信号選択制御回路200の構成、及び動作について説明する。前述の通り、駆動信号選択制御回路200は、クロック信号SCK、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHに基づいて、駆動信号COMに含まれる信号波形を選択又は非選択とすることで、複数の吐出部600のそれぞれに対応する駆動信号VOUTを生成し、対応する吐出部600に出力する。そこで、駆動信号選択制御回路200の構成、及び動作を説明するにあたり、まず、駆動信号選択制御回路200に入力される駆動信号COMの信号波形の一例について説明する。
【0098】
図10は、駆動信号COMの信号波形の一例を示す図である。
図10に示すように、駆動信号COMは、ラッチ信号LATが立ち上がってからチェンジ信号CHが立ち上がるまでの期間T1に配置された台形波形Adpと、チェンジ信号CHが立ち上がってから次にチェンジ信号CHが立ち上がるまでの期間T2に配置された台形波形Bdpと、チェンジ信号CHが立ち上がってからラッチ信号LATが立ち上がるまでの期間T3に配置された台形波形Cdpと、を含む。台形波形Adpは、圧電素子60に供給された場合に当該圧電素子60に対応する吐出部600から所定量のインクが吐出するように圧電素子60を駆動する信号波形である。台形波形Bdpは、圧電素子60に供給された場合に当該圧電素子60に対応する吐出部600から所定量よりも少量のインクが吐出するように圧電素子60を駆動する信号波形である。台形波形Cdpは、圧電素子60に供給された場合に当該圧電素子60に対応する吐出部600からインクが吐出されない程度に圧電素子60を駆動する信号波形である。ここで、台形波形Cdpが圧電素子60に供給された場合、当該圧電素子60は、対応する吐出部600のノズル開孔部付近のインクを振動させる。これにより、ノズル開孔部付近のインク粘度が増大するおそれが低減する。
【0099】
また、台形波形Adp,Bdp,Cdpのそれぞれは、開始タイミングでの電圧値、及び終了タイミングでの電圧値がいずれも電圧Vcで共通である。すなわち、台形波形Adp,Bdp,Cdpのそれぞれは、電圧Vcで開始し電圧Vcで終了する信号波形である。
【0100】
以下の説明において、圧電素子60に台形波形Adpが供給された場合に、当該圧電素子60に対応する吐出部600から吐出される所定量のインクの量を中程度の量と称し、圧電素子60に台形波形Bdpが供給された場合に、当該圧電素子60に対応する吐出部600から吐出される所定量のよりも少ないインクの量を小程度の量と称する場合がある。また、圧電素子60に台形波形Cdpが供給された場合に、当該圧電素子60に対応する吐出部600のノズル開孔部付近のインクを振動させてインク粘度の増大を防止するための動作を微振動と称する場合がある。なお、
図10に示す駆動信号COMの信号波形は一例であってこれに限られるものではない。駆動信号COMの信号波形は、吐出されるインクの性質や、インクが着弾する媒体の材質等に応じた様々な形状の信号波形を組み合わせることができる。
【0101】
本実施形態の駆動信号選択制御回路200は、期間T1,T2,T3を含む周期Taにおいて、台形波形Adp,Bdp,Cdpのそれぞれを選択又は非選択とすることで、吐出部600から吐出されるインクの量を制御する。すなわち、周期Ta毎に媒体に形成されるドットサイズが制御される。以下の説明において、期間T1,T2,T3を含む周期Taを、所定のサイズのドットを媒体に形成するドット形成周期と称する場合がある。
【0102】
次に、駆動信号COMに含まれる信号波形を選択又は非選択とすることで駆動信号VOUTを生成する駆動信号選択制御回路200の構成、及び動作について説明する。
図11は、駆動信号選択制御回路200の構成を示す図である。
図11に示すように、駆動信号選択制御回路200は、選択制御回路210と複数の選択回路230を有する。
【0103】
選択制御回路210には、クロック信号SCK、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHが入力される。また、選択制御回路210には、シフトレジスター(S/R)212とラッチ回路214とデコーダー216との組が、複数の吐出部600の各々に対応して設けられている。すなわち、吐出ヘッド20がp個の吐出部600を有する場合、駆動信号選択制御回路200は、p個のシフトレジスター212と、p個のラッチ回路214と、p個のデコーダー216とを含む。
【0104】
印刷データ信号SIは、クロック信号SCKに同期して選択制御回路210に入力される。印刷データ信号SIは、周期Ta毎に「大ドットLD」、「中ドットMD」、「小ドットSD」、及び「非記録ND」のいずれかを選択するための2ビットの印刷データ[SIH,SIL]を、p個の吐出部600の各々に対応してシリアルに含む。すなわち、印刷データ信号SIは、少なくとも2pビットのシリアル信号である。印刷データ信号SIに含まれる印刷データ[SIH,SIL]は、p個の吐出部600のそれぞれに対応するp個のシフトレジスター212に保持される。
【0105】
具体的には、吐出部600に対応したp個のシフトレジスター212が互いに縦続接続しているとともに、シリアルで入力された印刷データ信号SIが、クロック信号SCKに従って順次後段のシフトレジスター212に転送される。そして、印刷データ[SIH,SIL]が対応するシフトレジスター212に保持されると、クロック信号SCKが停止する。換言すれば、クロック信号SCKの供給が停止することで、印刷データ信号SIに含まれる印刷データ[SIH,SIL]が対応するシフトレジスター212に保持される。なお、
図11では、p個のシフトレジスター212を区別するために、印刷データ信号SIが入力される上流側から順番に1段、2段、…、p段と表記して説明を行う。
【0106】
p個のラッチ回路214の各々は、ラッチ信号LATの立ち上がりで対応するシフトレジスター212に保持された印刷データ[SIH,SIL]を一斉にラッチする。そして、ラッチ回路214がラッチした印刷データ[SIH,SIL]は、対応するデコーダー216に入力される。
図12は、デコーダー216におけるデコード内容の一例を示す図である。デコーダー216は、期間T1,T2,T3のそれぞれにおいて、入力される印刷データ[SIH,SIL]で規定される論理レベルの選択信号Sを出力する。例えば、デコーダー216に印刷データ[SIH,SIL]=[1,0]が入力された場合、デコーダー216は、選択信号Sの論理レベルを、期間T1,T2,T3においてH,L,Lレベルとして出力する。
【0107】
デコーダー216が出力する選択信号Sは、選択回路230に入力される。選択回路230は、p個の吐出部600のそれぞれに対応して設けられている。すなわち、駆動信号選択制御回路200は、吐出部600と同数のp個の選択回路230を有する。
図13は、吐出部600の1個分に対応する選択回路230の構成を示す図である。
図13に示すように、選択回路230は、NOT回路であるインバーター232とトランスファーゲート234とを含む。
【0108】
選択信号Sは、トランスファーゲート234において丸印が付されていない正制御端に入力されるとともに、インバーター232によって論理レベルが反転された後、トランスファーゲート234において丸印が付された負制御端にも入力される。また、トランスファーゲート234の入力端には、駆動信号COMが供給されている。そして、トランスファーゲート234の入力端と出力端とは、Hレベルの選択信号Sが入力された場合に導通となり、Lレベルの選択信号Sが入力された場合に非導通となる。すなわち、トランスファーゲート234は、Hレベルの選択信号Sが入力されている場合に駆動信号COMに含まれる信号波形を出力端から出力し、Lレベルの選択信号Sが入力されている場合に駆動信号COMに含まれる信号波形を出力端から出力しない。
【0109】
そして、駆動信号選択制御回路200は、選択回路230が有するトランスファーゲート234の出力端に出力された信号を、駆動信号VOUTとして出力する。
【0110】
ここで、
図14を用いて駆動信号選択制御回路200の動作について説明する。
図14は、駆動信号選択制御回路200の動作を説明するための図である。印刷データ信号SIは、クロック信号SCKに同期したシリアル信号として選択制御回路210に入力される。印刷データ信号SIは、クロック信号SCKに同期して、p個の吐出部600のそれぞれに対応するp個のシフトレジスター212において順次転送される。その後、クロック信号SCKの入力が停止すると、シフトレジスター212には、p個の吐出部600のそれぞれに対応した印刷データ[SIH,SIL]が保持される。
【0111】
そして、ラッチ信号LATが立ち上がると、ラッチ回路214のそれぞれは、シフトレジスター212に保持されている印刷データ[SIH,SIL]を一斉にラッチする。なお、
図14に示すLT1、LT2、…、LTpは、1段、2段、…、p段のシフトレジスター212に対応するラッチ回路214によってラッチされた印刷データ[SIH,SIL]を示す。
【0112】
デコーダー216は、ラッチされた印刷データ[SIH,SIL]で規定されるドットのサイズに応じて、期間T1,T2,T3のそれぞれにおいて、選択信号Sの論理レベルを
図10に示す内容で出力する。そして、選択回路230が、デコーダー216が出力する選択信号Sの論理レベルに応じて駆動信号COMに含まれる信号波形を選択又は非選択とすることで、駆動信号VOUTを生成する。
【0113】
具体的には、デコーダー216に印刷データ[SIH,SIL]=[1,1]が入力された場合、デコーダー216は、選択信号Sの論理レベルを期間T1,T2,T3においてH,H,Lレベルとする。これにより、選択回路230は、期間T1において台形波形Adpを選択し、期間T2において台形波形Bdpを選択し、期間T3において台形波形Cdpを選択しない。その結果、駆動信号選択制御回路200は、「大ドットLD」に対応する駆動信号VOUTを出力する。
【0114】
「大ドットLD」に対応する駆動信号VOUTが吐出部600が有する圧電素子60に供給された場合、吐出部600は、期間T1において中程度の量のインクを吐出し、期間T2において小程度の量のインクを吐出し、期間T3においてインクを吐出しない。そして、吐出部600から吐出された中程度の量のインクと小程度の量のインクとが媒体に着弾し結合することで、媒体に「大ドットLD」が形成される。
【0115】
また、デコーダー216に印刷データ[SIH,SIL]=[1,0]が入力された場合、デコーダー216は、選択信号Sの論理レベルを期間T1,T2,T3においてH,L,Lレベルとする。これにより、選択回路230は、期間T1において台形波形Adpを選択し、期間T2において台形波形Bdpを選択せず、期間T3において台形波形Cdpを選択しない。その結果、駆動信号選択制御回路200は、「中ドットMD」に対応する駆動信号VOUTを出力する。
【0116】
「中ドットMD」に対応する駆動信号VOUTが吐出部600が有する圧電素子60に供給された場合、吐出部600は、期間T1において中程度の量のインクを吐出し、期間T2においてインクを吐出せず、期間T3においてインクを吐出しない。そして、吐出部600から吐出された中程度の量のインクが媒体に着弾することで、媒体に「中ドットMD」が形成される。
【0117】
また、デコーダー216に印刷データ[SIH,SIL]=[0,1]が入力された場合、デコーダー216は、選択信号Sの論理レベルを期間T1,T2,T3においてL,H,Lレベルとする。これにより、選択回路230は、期間T1において台形波形Adpを選択せず、期間T2において台形波形Bdpを選択し、期間T3において台形波形Cdpを選択しない。その結果、駆動信号選択制御回路200は、「小ドットSD」に対応する駆動信号VOUTを出力する。
【0118】
「小ドットSD」に対応する駆動信号VOUTが吐出部600が有する圧電素子60に供給された場合、吐出部600は、期間T1においてインクを吐出せず、期間T2において小程度の量のインクを吐出し、期間T3においてインクを吐出しない。そして、吐出部600から吐出された小程度の量のインクが媒体に着弾することで、媒体に「小ドットSD」が形成される。
【0119】
また、デコーダー216に印刷データ[SIH,SIL]=[0,0]が入力された場合、デコーダー216は、選択信号Sの論理レベルを期間T1,T2,T3においてL,L,Hレベルとする。これにより、選択回路230は、期間T1において台形波形Adpを選択せず、期間T2において台形波形Bdpを選択せず、期間T3において台形波形Cdpを選択する。その結果、駆動信号選択制御回路200は、「非記録ND」に対応する駆動信号VOUTを出力する。
【0120】
「非記録ND」に対応する駆動信号VOUTが吐出部600が有する圧電素子60に供給された場合、吐出部600は、期間T1においてインクを吐出せず、期間T2においてインクを吐出せず、期間T3においてインクを吐出しない。したがって、吐出部600からインクが吐出されず、媒体にドットが形成されない「非記録ND」となる。
【0121】
このとき、対応する選択回路230は、台形波形Cdpを含む駆動信号VOUTを出力する。したがって、対応する吐出部600に対して微振動が実行される。その結果、対応する吐出部600のノズル開孔部付近のインク粘度が増大するおそれが低減する。
【0122】
7.印刷装置の動作
以上のように構成された印刷装置1の動作について説明する。
図15は、印刷装置1の印刷動作の一例を説明するための図である。ここで、以下の説明において、使用者が印刷装置1を移動させることで媒体に画像を形成させる動作を印刷動作と称し、印刷装置1が印刷動作を実行している期間において、吐出ヘッド20からインクが吐出される処理を印刷処理と称する。
【0123】
前述のとおり、本実施形態の印刷装置1は、コネクターCNを介して入力された画像データから画像情報信号PDを生成し、生成した画像情報信号PDを記憶回路112に記憶する。その後、印刷装置1が媒体の印刷面上をX軸に沿って手動で移動させられることで、エンコーダー80は、位置情報信号PS1,PS2を出力する。エンコーダー80が出力する位置情報信号PS1,PS2は、ヘッド制御回路110に入力される。換言すれば、ヘッド制御回路110に位置情報信号PS1,PS2が入力される(ステップS110)ことで、印刷装置1は印刷動作を開始する。そして、印刷動作が開始することで、ヘッド制御回路110は、記憶回路112に記憶されている画像情報信号PDを読み出し、画像情報信号PDに対応する画像を媒体に形成する。すなわち、ヘッド制御回路110は、記憶回路112から画像情報信号PDを読み出す(ステップS120)。
【0124】
また、エンコーダー80が出力する位置情報信号PS1,PS2は、移動方向判定回路120にも入力される。移動方向判定回路120は、入力される位置情報信号PS1,PS2に基づいて、印刷装置1の移動方向を判定し、判定結果を示す移動方向信号DMをヘッド制御回路110に出力する。ヘッド制御回路110は、入力される移動方向信号DMの論理レベルに基づいて、印刷装置1の移動方向が順方向Fwであるのか、若しくは逆方向Rvであるのかを判定する。すなわち、ヘッド制御回路110は、印刷装置1の移動方向を判定する(ステップS130)。
【0125】
ヘッド制御回路110が印刷装置1の移動方向が順方向Fwであると判定した場合(ステップS130のFw)、ヘッド制御回路110は、記憶回路112から読み出した画像情報信号PDに基づいて、印刷装置1の順方向Fwの移動に対応する印刷データ信号SIを生成する(ステップS140)とともに、LEDモジュール71が有する1又は複数のLED素子710の点灯及び消灯を規定する点灯制御情報Lf1としてのHレベルの情報と、LEDモジュール72が有する1又は複数のLED素子720の点灯及び消灯を規定する点灯制御情報Lf2としてのLレベルの情報と、を保持する。すなわち、ヘッド制御回路110は、点灯制御情報Lf1=“H”と点灯制御情報Lf2=“L”とを保持する(ステップS150)。
【0126】
一方で、ヘッド制御回路110が印刷装置1の移動方向が逆方向Rvであると判定した場合(ステップS130のRv)、ヘッド制御回路110は、記憶回路112から読み出した画像情報信号PDに基づいて、印刷装置1の逆方向Rvの移動に対応する印刷データ信号SIを生成する(ステップS160)とともに、LEDモジュール71が有する1又は複数のLED素子710の点灯及び消灯を規定する点灯制御情報Lf1としてのLレベルの情報と、LEDモジュール72が有する1又は複数のLED素子720の点灯及び消灯を規定する点灯制御情報Lf2としてのHレベルの情報と、を保持する。すなわち、ヘッド制御回路110は、点灯制御情報Lf1=“L”と点灯制御情報Lf2=“H”とを保持する(ステップS170)。
【0127】
ステップS150又はステップS170において、ヘッド制御回路110が所定の論理レベルの点灯制御情報Lf1と点灯制御情報Lf2とを保持した後、ヘッド制御回路110は、エンコーダー80から入力される位置情報信号PS1,PS2に基づいて、印刷装置1は移動しているか(ステップS180)の判定を実行する。すなわち、ヘッド制御回路110は、印刷装置1が継続している移動しているか否かを判定する。これにより、印刷装置1の移動が、使用者が印刷を意図し手動で移動している状態なのか、若しくは外的要因等によって、意図せず突発的に移動した状態であるのかを識別することができる。ここで、印刷装置1が移動していない場合、ローラー31,32は回転しない。したがって、エンコーダー80が出力する位置情報信号PS1,PS2は、Lレベル又はHレベルの論理レベルの信号を継続する。すなわち、ヘッド制御回路110は、エンコーダー80から入力される位置情報信号PS1,PS2としてパルス信号が入力されている場合、印刷装置1は移動していると判断し、エンコーダー80から入力される位置情報信号PS1,PS2の論理レベルが一定期間変化しない場合、印刷装置1は移動していないと判断する。換言すれば、論理レベルが一定期間変換しない位置情報信号PS1,PS2が、印刷装置1が移動していないことを示す位置情報信号PS1,PS2に相当する。
【0128】
ヘッド制御回路110が、位置情報信号PS1,PS2に基づいて、印刷装置1は移動していないと判定した場合(ステップS180のN)、ヘッド制御回路110は、点灯制御信号LSW1の論理レベルをLレベルにするとともに、点灯制御信号LSW2の論理レベルをLレベルにする。すなわち、ヘッド制御回路110は、点灯制御信号LSW1=“L”と点灯制御信号LSW2=“L”とを出力する(ステップS190)。その結果、切替回路140は、LED駆動信号LDR1としてのLED駆動信号LDRをLEDモジュール71に供給せず、LED駆動信号LDR2としてのLED駆動信号LDRをLEDモジュール72に供給しない。したがって、LEDモジュール71が有する1又は複数のLED素子710、及びLEDモジュール72が有する1又は複数のLED素子720は、いずれも消灯する。すなわち、ヘッド制御回路110は、印刷装置1が移動していないことを示す位置情報信号PS1,PS2が入力された場合、LEDモジュール71が有する1又は複数のLED素子710、及びLEDモジュール72が有する1又は複数のLED素子720を消灯する。換言すれば、ヘッド制御回路110は、印刷装置1が移動していないことを示す位置情報信号PS1,PS2が入力された場合、LEDモジュール71が有する1又は複数のLED素子710、及びLEDモジュール72が有する1又は複数のLED素子720に媒体の印刷面を照射させない。
【0129】
一方で、ヘッド制御回路110が、位置情報信号PS1,PS2に基づいて、印刷装置1は移動していると判定した場合(ステップS180のY)、ヘッド制御回路110は、移動方向判定回路120が出力する移動方向信号DMに基づいて、印刷装置1の移動法方向は反転していないか(ステップS200)の判定を行う。前述のとおり、移動方向判定回路120は、印刷装置1が順方向Fwに移動している場合、Lレベルの移動方向信号DMを出力し、印刷装置1が逆方向Rvに移動している場合、Hレベルの移動方向信号DMを出力する。すなわち、印刷装置1が順方向Fw、又は逆方向Rvに移動している期間において、移動方向判定回路120は、同じ論理レベルの移動方向信号DMを継続して出力する。換言すれば、印刷装置1の移動方向が順方向Fwから逆方向Rvとなった場合、又は逆方向Rvから順方向Fwに反転した場合、移動方向判定回路120は、移動方向信号DMの論理レベルを反転する。ヘッド制御回路110は、移動方向信号DMの論理レベルが反転する際に生じるエッジを検出することで、印刷装置1の移動方向が反転していないかの判定を実行する。
【0130】
ヘッド制御回路110が印刷装置1の移動法方向は反転していない(ステップS200のY)と判定した場合、ヘッド制御回路110は、点灯制御情報Lf1として保持されている論理レベルの点灯制御信号LSW1と、点灯制御情報Lf2として保持されている論理レベルの点灯制御信号LSW2と、を出力する。すなわち、ヘッド制御回路110は、点灯制御信号LSW1=“Lf1”と点灯制御信号LSW2=“Lf2”とを出力する(ステップS210)。
【0131】
具体的には、印刷装置1が順方向Fwに移動している場合、ステップS150に示すようにヘッド制御回路110は、点灯制御情報Lf1としてHレベルの情報と、点灯制御情報Lf2としてLレベルの情報と、を保持している。したがって、ステップS210において、印刷装置1が順方向Fwに移動している場合、ヘッド制御回路110は、Hレベルの点灯制御信号LSW1と、Lレベルの点灯制御信号LSW2と、を出力する。その結果、切替回路140は、LED駆動信号LDRをLED駆動信号LDR1としてLEDモジュール71に供給し、LED駆動信号LDRをLED駆動信号LDR2としてLEDモジュール72に供給しない。したがって、LEDモジュール71が有する1又は複数のLED素子710は点灯し、LEDモジュール72が有する1又は複数のLED素子720は消灯する。換言すれば、X軸に沿ってLEDモジュール71からLEDモジュール72に向かう順方向Fwに印刷装置1が移動させられている期間において、ヘッド制御回路110は、LEDモジュール71が有する1又は複数のLED素子710が出力する光を媒体の印刷面に照射させ、LEDモジュール72が有する1又は複数のLED素子720が出力する光を媒体の印刷面に照射させない。
【0132】
これに対して、印刷装置1が逆方向Rvに移動している場合、ステップS170に示すようにヘッド制御回路110は、点灯制御情報Lf1としてLレベルの情報と、点灯制御情報Lf2としてHレベルの情報と、を保持している。したがって、ステップS210において、印刷装置1が逆方向Rvに移動している場合、ヘッド制御回路110は、Lレベルの点灯制御信号LSW1と、Hレベルの点灯制御信号LSW2と、を出力する。その結果、切替回路140は、LED駆動信号LDRをLED駆動信号LDR1としてLEDモジュール71に供給せず、LED駆動信号LDRをLED駆動信号LDR2としてLEDモジュール72に供給する。したがって、LEDモジュール71が有する1又は複数のLED素子710は消灯し、LEDモジュール72が有する1又は複数のLED素子720は点灯する。換言すれば、X軸に沿ってLEDモジュール72からLEDモジュール71に向かう逆方向Rvに印刷装置1が移動させられている期間において、ヘッド制御回路110は、LEDモジュール71が有する1又は複数のLED素子710が出力する光を媒体の印刷面に照射させず、LEDモジュール72が有する1又は複数のLED素子720が出力する光を媒体の印刷面に照射させる。
【0133】
ヘッド制御回路110が点灯制御信号LSW1=“Lf1”と点灯制御信号LSW2=“Lf2”とを出力した後、ヘッド制御回路110は、画像情報信号PDに対応する画像を媒体に印刷する印刷処理を実行する(ステップS220)。印刷処理とは、周期Ta毎に、ヘッド駆動回路50が駆動信号COMを出力するとともに、駆動信号選択制御回路200が印刷データ信号SIに基づく駆動信号VOUTを対応する吐出部600に出力すること媒体に画像情報信号PDに対応する画像を形成する処理である。具体的には、ヘッド制御回路110は、入力される位置情報信号PS1,PS2に同期して基駆動信号dAと、ラッチ信号LAT及びチェンジ信号CHと、を出力する。ヘッド駆動回路50は、基駆動信号dAが入力されることで、周期Ta毎に台形波形Adp,Bdp,Cdpを含む駆動信号COMを生成し、駆動信号選択制御回路200に出力する。駆動信号選択制御回路200には、ヘッド制御回路110が上述したステップS140又はステップS160で生成した周期Taに対応する印刷データ信号SIが保持されている。そして、駆動信号選択制御回路200は、ラッチ信号LATが入力されることで、保持する印刷データ信号SIを一斉にラッチするとともに、ラッチした印刷データ信号SIに基づいて、複数の吐出部600のそれぞれに対応する駆動信号VOUTを生成し、対応する吐出部600に出力する。これにより、周期Taにおける画像情報信号PDに対応する画像が媒体の印刷面に形成される。
【0134】
このとき、画像が印刷された媒体の印刷面には、印刷装置1の移動方向に応じてLEDモジュール71が有する1又は複数のLED素子710が出力する光、又はLEDモジュール72が有する1又は複数のLED素子720が出力する光が照射されている。これにより、媒体の印刷面に形成されたインクが媒体に硬化定着し、周期Taにおける画像情報信号PDに対応する画像が媒体に印刷される。すなわち、周期Taに対応する印刷処理が完了する。
【0135】
周期Taに対応する印刷処理が完了した後、ヘッド制御回路110は、次の周期Taに対応する印刷データ信号SIを駆動信号選択制御回路200に保持させたか否かの判定を行う。すなわち、ヘッド制御回路110は、次の周期Taに対応する印刷データ信号SIはあるのか(ステップS230)の判定を行う。
【0136】
ヘッド制御回路110が次の周期Taに対応する印刷データ信号SIがあると判定した場合(ステップS230のY)、ヘッド制御回路110は、エンコーダー80から入力される位置情報信号PS1,PS2に基づいて、印刷装置1は移動しているか(ステップS180)の判定を実行する。このとき、ヘッド制御回路110は、位置情報信号PS1,PS2に基づいて、印刷装置1が移動していると判定されるまで、待機する。すなわち、ヘッド制御回路110は、印刷装置1が移動していない場合、印刷処理を実行しない。換言すれば、エンコーダー80が、印刷装置1が移動していないことを示す位置情報信号PS1,PS2であって、論理レベルが変化しない位置情報信号PS1,PS2を出力している場合、吐出部600は、インクを吐出しない。
【0137】
一方で、ヘッド制御回路110が次の周期Taに対応する印刷データ信号SIがないと判定した場合(ステップS230のN)、若しくは、ヘッド制御回路110が印刷装置1の移動法方向が反転している(ステップS200のN)と判定した場合、ヘッド制御回路110は、点灯制御信号LSW1の論理レベルをLレベルにするとともに、点灯制御信号LSW2の論理レベルをLレベルにする。すなわち、ヘッド制御回路110は、点灯制御信号LSW1=“L”と点灯制御信号LSW2=“L”とを出力する(ステップS240)。これにより、切替回路140は、LED駆動信号LDRをLED駆動信号LDR1としてLEDモジュール71に供給せず、LED駆動信号LDRをLED駆動信号LDR2としてLEDモジュール72に供給しない。したがって、LEDモジュール71が有する1又は複数のLED素子710、及びLEDモジュール72が有する1又は複数のLED素子720は、消灯する。その後、印刷装置1における印刷動作が終了する。
【0138】
すなわち、本実施形態の印刷装置1は、印刷動作を実行している期間であって、吐出部600からインクが吐出され得る期間において、移動方向判定回路120が、印刷装置1の移動方向が順方向Fwから逆方向Rvとなったと判定した場合、又は印刷装置1の移動方向が逆方向Rvから順方向Fwとなったと判定した場合、ヘッド制御回路110は、吐出ヘッド20が有する吐出部600からのインクの吐出を停止し、LEDモジュール71が有する1又は複数のLED素子710、及びLEDモジュール72が有する1又は複数のLED素子720を消灯する。換言すれば、移動方向判定回路120が、印刷装置1の移動方向が反転したと判断した場合、ヘッド制御回路110は、LEDモジュール71が有する1又は複数のLED素子710が出力される光、及びLEDモジュール72が有する1又は複数のLED素子720から出力される光を媒体の印刷面に照射させず、印刷装置1における印刷動作を終了させる。
【0139】
ここで、印刷装置が移動するX軸が走査軸の一例であり、X軸に沿った順方向Fwが第1走査方向の一例であり、X軸に沿った逆方向Rvが第2走査方向の一例であり、印刷装置1の移動方向を判定する移動方向判定回路120が方向判定部の一例である。また、LEDモジュール71及びLEDモジュール71が有する1又は複数のLED素子710が第1光源の一例であり、LEDモジュール71及びLEDモジュール71が有する1又は複数のLED素子710が出力する光が第1光の一例であり、LEDモジュール72及びLEDモジュール72が有する1又は複数のLED素子720が第2光源の一例であり、LEDモジュール72及びLEDモジュール72が有する1又は複数のLED素子720が出力する光が第2光の一例であり、LEDモジュール71及びLEDモジュール71が有する1又は複数のLED素子710からの光の出力と、LEDモジュール72及びLEDモジュール72が有する1又は複数のLED素子720からの光の出力とを制御するヘッド制御回路110が光源制御部の一例であり、LEDモジュール71及びLEDモジュール71が有する1又は複数のLED素子710にLED駆動信号LDRをLED駆動信号LDR1として供給するか否かを切り替えるトランジスター141が第1スイッチ回路の一例であり、LEDモジュール72及びLEDモジュール72が有する1又は複数のLED素子720にLED駆動信号LDRをLED駆動信号LDR2として供給するか否かを切り替えるトランジスター142が第2スイッチ回路の一例である。そして、ヘッド駆動回路50が駆動回路の一例である。
【0140】
8.作用効果
以上のように構成された本実施形態の印刷装置1では、X軸に沿ってLEDモジュール71からLEDモジュール72に向かう順方向Fwに印刷装置1が移動させられている期間において、ヘッド制御回路110は、LEDモジュール71及びLEDモジュール71が有する1又は複数のLED素子710が出力する光を媒体の印刷面に照射させ、LEDモジュール72及びLEDモジュール72が有する1又は複数のLED素子720が出力する光を媒体の印刷面に照射させず、X軸に沿ってLEDモジュール72からLEDモジュール71に向かう逆方向Rvに印刷装置1が移動させられている期間において、ヘッド制御回路110は、LEDモジュール71及びLEDモジュール71が有する1又は複数のLED素子710が出力する光を媒体の印刷面に照射させず、LEDモジュール72及びLEDモジュール72が有する1又は複数のLED素子720が出力する光を媒体の印刷面に照射させる。すなわち、印刷装置1が移動する期間において、印刷装置1の移動方向に沿って、吐出ヘッド20が有する吐出部600よりも後方に位置するLEDモジュール71又はLEDモジュール72からのみ媒体の印刷面に光を照射させる。これにより、印刷装置1の消費電力を低減しつつ、媒体に着弾した光硬化型のインクを効率よく媒体に硬化定着することができる。そのため、印刷装置1が少ない消費電力で動作することが求められる所謂ハンディープリンターであっても、媒体に着弾した光硬化型のインクを効率よく媒体に硬化定着することができ、その結果、印刷装置1の安定動作と、画像品質の向上との両立を実現できる。
【0141】
また、本実施形態の印刷装置1では、LEDモジュール71は、媒体の印刷面に光を照射する1又は複数のLED素子710を有し、LEDモジュール72は、媒体の印刷面に光を照射する1又は複数のLED素子720を有する。すなわち、本実施形態の印刷装置1において、媒体に着弾した光硬化型のインクを媒体に硬化定着させる光は、発光ダイオードにより照射される。これにより、印刷装置1の消費電力をさらに低減でき、その結果、印刷装置1が少ない消費電力で動作することが求められる所謂ハンディープリンターであっても、媒体に着弾した光硬化型のインクを効率よく媒体に硬化定着することができるとともに、印刷装置1のさらなる安定動作を実現できる。
【0142】
さらに、本実施形態の印刷装置1では、ヘッド駆動回路50が、駆動信号COMの基となる基駆動信号dA,aAを変調した変調信号MSを出力する変調回路520と、変調信号MSを増幅した増幅変調信号AMS1を出力する増幅回路550と、増幅変調信号AMS1の基準電位をレベルシフトしたレベルシフト増幅変調信号AMS2を出力するレベルシフト回路580と、レベルシフト増幅変調信号AMS2を復調することで駆動信号COMを出力する復調回路560と、を有する。これにより、ヘッド駆動回路50の消費電力がさらに低減する。その結果、印刷装置1が少ない消費電力で動作することが求められる所謂ハンディープリンターであっても、媒体に着弾した光硬化型のインクを効率よく媒体に硬化定着することができるとともに、印刷装置1のさらなる安定動作を実現できる。
【0143】
また、本実施形態の印刷装置1では、印刷動作中に印刷装置1の移動方向が順方向Fwから逆方向Rvになった場合、又は印刷装置1の移動方向が逆方向Rvから順方向Fwになった場合、吐出部600からインクを吐出させないとともに、LEDモジュール71が有する1又は複数のLED素子710、及びLEDモジュール72が有する1又は複数のLED素子720は、媒体の印刷面に光を照射しない。これにより、意図しないインクが吐出されることにより、インクに損失が生じるおそれが低減する。
【0144】
9.変形例
以上に説明した本実施形態の印刷装置1では、消費電力を低減しつつ、媒体に着弾した光硬化型のインクを効率よく媒体に硬化定着することができ、印刷装置1が少ない消費電力で動作することが求められる所謂ハンディープリンターであっても、媒体に着弾した光硬化型のインクを効率よく媒体に硬化定着することができ、その結果、印刷装置1の安定動作と、画像品質の向上との両立を実現できる。そのため、印刷装置1の駆動電圧は、パーソナルコンピューター、タブレット、及びスマートフォンなどのホストコンピューターでなく、鉛蓄電池やニッケル・カドミウム蓄電池、金属リチウム電池、リチウムイオン二次電池などのバッテリーから供給されてもよい。係る構成を用いた場合であっても、上述した実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0145】
さらに、印刷装置1の駆動電圧が鉛蓄電池やニッケル・カドミウム蓄電池、金属リチウム電池、リチウムイオン二次電池などのバッテリーから供給されている場合、印刷装置1が媒体に形成する画像の情報を含む画像データは、例えば、近距離無線通信によって供給されてもよい。
【0146】
以上、実施形態及び変形例について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、上記の実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0147】
本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0148】
上述した実施形態から以下の内容が導き出される。
【0149】
印刷装置の一態様は、
媒体の印刷面上を走査軸に沿って手動で移動させられる間に、前記印刷面に印刷を行う印刷装置であって、
前記印刷面に第1光を照射する第1光源と、
前記印刷面に第2光を照射する第2光源と、
前記第1光源からの前記第1光の出力、及び前記第2光源からの前記第2光の出力を制御する光源制御部と、
前記第1光及び前記第2光に反応する液体を吐出する吐出部と、
前記吐出部から液体を吐出させる駆動素子を駆動する駆動信号を出力する駆動回路と、
前記印刷装置の移動に伴う位置情報信号を出力するエンコーダーと、
前記位置情報信号に基づいて、前記印刷装置の移動方向を判定する方向判定部と、
を備え、
前記第1光源、前記第2光源、及び前記吐出部は、前記走査軸に沿って、前記第1光源、前記吐出部、前記第2光源の順に位置し、
前記走査軸に沿って前記第1光源から前記第2光源に向かう第1走査方向に前記印刷装置が移動させられている期間において、前記光源制御部は、前記第1光を前記印刷面に照射させ、前記第2光を前記印刷面に照射させず、
前記走査軸に沿って前記第2光源から前記第1光源に向かう第2走査方向に前記印刷装置が移動させられている期間において、前記光源制御部は、前記第1光を前記印刷面に照射させず、前記第2光を前記印刷面に照射させる。
【0150】
この印刷装置によれば、印刷装置が走査軸に沿って第1光源から第2光源に向かう第1走査方向に移動させられている期間において、光源制御部は、第1走査方向の後方に設けられた第1光源から第1光を印刷面に照射させ、第1走査方向の前方に設けられた第2光源から第2光を印刷面に照射させず、印刷装置が走査軸に沿って第2光源から第1光源に向かう第2走査方向に移動させられている期間において、光源制御部は、第2走査方向の前方に設けられた第1光源から第1光を印刷面に照射させず、第2走査方向の後方に設けられた第2光源から第2光を印刷面に照射させる。すなわち、印刷装置1の移動方向の後方に設けられた光源からのみ光を照射し、媒体に着弾した液体に反応させる。これにより、移動方向に依らず第1光源、及び第2光源の双方から光が照射される場合と比較して、印刷装置の消費電力を低減することができるとともに、吐出部から吐出された液体を媒体上で反応させ、媒体に硬化定着させることもできる。すなわち、この印刷装置によれば、印刷装置の省電力化と画像品質の向上との両立が可能となり、特に印刷装置が省電力での動作が求められるハンディープリンターである場合に大きな効果を奏する。
【0151】
上記印刷装置の一態様において、
前記方向判定部は、Dフリップフロップ回路を含んでもよい。
【0152】
この印刷装置によれば、複雑な構成を用いることなく、印刷装置の移動方向を判定することがで、印刷装置の小型化を実現でき、特に持ち運び使用されるハンディープリンターである場合に大きな効果を奏する。
【0153】
上記印刷装置の一態様において、
前記第1光源及び前記第2光源は、発光ダイオードを含んでもよい。
【0154】
この印刷装置によれば、消費電力の小さな発光ダイオードを第1光源、及び第2光源としてもちいることで、印刷装置のさらなる省電力化を実現でき、特に印刷装置が省電力での動作が求められるハンディープリンターである場合に大きな効果を奏する。
【0155】
上記印刷装置の一態様において、
前記エンコーダーが、前記印刷装置が移動していないことを示す前記位置情報信号を出力している場合、
前記吐出部は、液体を吐出しなくてもよい。
【0156】
この印刷装置によれば、印刷装置が移動していない場合に液体が吐出されないことで、印刷装置のさらなる省電力化を実現できるとともに、不用意な液体の吐出に起因して当該液体の損失が増加するおそれが低減し、その結果、環境負荷の低減に配慮した印刷装置を実現できる。
【0157】
上記印刷装置の一態様において、
前記吐出部から液体が吐出され得る期間において、前記方向判定部が、前記印刷装置の移動方向が前記第1走査方向から前記第2走査方向になったと判定した場合、又は前記印刷装置の移動方向が前記第2走査方向から前記第1走査方向になったと判定した場合、
前記吐出部は、液体を吐出せず、
前記光源制御部は、前記第1光及び前記第2光を前記印刷面に照射させなくてもよい。
【0158】
この印刷装置によれば、印刷装置が印刷動作を実行している期間において、印刷装置の移動方向が不意に反転した場合に、第1光源、及び第2光源が消灯するとともに、液体が吐出されないことで、印刷装置のさらなる省電力化を実現できるとともに、不用意な液体の吐出に起因して当該液体の損失が増加するおそれが低減し、環境負荷の低減に配慮した印刷装置を実現できる。
【0159】
上記印刷装置の一態様において、
前記第1光源に電流を供給するか否かを切り替える第1スイッチ回路と、
前記第2光源に電流を供給するか否かを切り替える第2スイッチ回路と、
を備え、
前記光源制御部は、前記第1スイッチ回路及び前記第2スイッチ回路の導通状態を制御することで、前記第1光源からの前記第1光の出力、及び前記第2光源からの前記第2光の出力を制御し、
前記第1スイッチ回路及び前記第2スイッチ回路は、Pチャネル型のMOS-FETであってもよい。
【0160】
この印刷装置によれば、第1光源に電流を供給するか否かを切り替える第1スイッチ回路、及び第2光源に電流を供給するか否かを切り替える第2スイッチ回路として、Pチャネル型のMOS-FETを用いることで、第1光源に電流を供給する際の第1スイッチ回路における電力損失が低減されるとともに、第1光源に電流を供給する際の第2スイッチ回路における電力損失が低減される。その結果、印刷装置のさらなる省電力化を実現でき、特に印刷装置が省電力での動作が求められるハンディープリンターである場合に大きな効果を奏する。
【0161】
上記印刷装置の一態様において、
前記駆動回路は、
前記駆動信号の基となる基駆動信号を変調した変調信号を出力する変調回路と、
前記変調信号を増幅した増幅変調信号を出力する増幅回路と、
前記増幅変調信号の基準電位をレベルシフトしたレベルシフト増幅変調信号を出力するレベルシフト回路と、
前記レベルシフト増幅変調信号を復調することで前記駆動信号を出力する復調回路と、
を有してもよい。
【0162】
この印刷装置によれば、駆動回路における電力損失が低減し、印刷装置のさらなる省電力化が実現でき、特に印刷装置が省電力での動作が求められるハンディープリンターである場合に大きな効果を奏する。
【符号の説明】
【0163】
1…印刷装置、5…筐体、10…配線基板、20…吐出ヘッド、31,32…ローラー、40…インク容器、50…ヘッド駆動回路、60…圧電素子、71…LEDモジュール、72…LEDモジュール、80…エンコーダー、100…USBインターフェース回路、110…ヘッド制御回路、112…記憶回路、120…移動方向判定回路、122…Dフリップフロップ回路、130…LED駆動回路、140…切替回路、141,142,143,144…トランジスター、146,147…抵抗素子、200…駆動信号選択制御回路、210…選択制御回路、212…シフトレジスター、214…ラッチ回路、216…デコーダー、230…選択回路、232…インバーター、234…トランスファーゲート、502…昇圧回路、510…DAC回路、515,516…加算器、520…変調回路、521…インバーター、530…ゲートドライブ回路、531,532…ゲートドライバー、550…増幅回路、560…復調回路、570…帰還回路、572…第1帰還回路、574…第2帰還回路、580…レベルシフト回路、582…基準レベル切替回路、584…インバーター、590…ゲートドライブ回路、591,592…ゲートドライバー、600…吐出部、601…圧電体、611,612…電極、621…振動板、631…キャビティー、632…ノズルプレート、641…リザーバー、651…ノズル、661…供給口、710,720…LED素子、BS…ブートストラップ回路、C1,C10,C11,C12,C13…コンデンサー、CN…コネクター、D1,D11,D12,D13…ダイオード、L10…インダクター、M1,M2,M3,M4…トランジスター