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  • 特開-複合化粉末 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029872
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】複合化粉末
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/39 20240101AFI20240229BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20240229BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20240229BHJP
   B01J 23/28 20060101ALI20240229BHJP
   C01G 39/00 20060101ALN20240229BHJP
   A01P 1/00 20060101ALN20240229BHJP
   A01N 59/16 20060101ALN20240229BHJP
【FI】
B01J35/02 J
B01J37/04 102
B01J37/02 301C
B01J23/28 M
C01G39/00 Z
A01P1/00
A01N59/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132311
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094536
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 隆二
(74)【代理人】
【識別番号】100129805
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100189315
【弁理士】
【氏名又は名称】杉原 誉胤
(72)【発明者】
【氏名】藤本 卓
(72)【発明者】
【氏名】松尾 賢
(72)【発明者】
【氏名】原 周平
【テーマコード(参考)】
4G048
4G169
4H011
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AB02
4G048AC05
4G048AC08
4G048AD04
4G048AE05
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA01A
4G169BA02A
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA14A
4G169BA14B
4G169BA16A
4G169BA16B
4G169BA21C
4G169BA22A
4G169BA48A
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC50C
4G169BC56A
4G169BC56B
4G169BC56C
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BC59C
4G169BD01A
4G169BD01C
4G169BD02A
4G169BD02C
4G169BD04A
4G169BD04C
4G169BD06C
4G169BE01A
4G169BE06C
4G169BE09A
4G169BE20C
4G169CA05
4G169CA10
4G169CA11
4G169DA05
4G169EA01X
4G169EA01Y
4G169EA08
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB05
4G169FB23
4G169FB57
4G169FC02
4G169FC08
4G169HA01
4G169HB01
4G169HB06
4G169HC02
4G169HD03
4G169HD10
4G169HE05
4H011AA04
4H011BB18
4H011DA02
4H011DA07
(57)【要約】
【課題】明度値が高く、分散性と塗工性に優れ、高い光触媒性能を有する複合化粉末を提供する。
【解決手段】本発明の複合化粉末は、基材と、チタン、及びモリブデンを含む複合金属酸化物とを有し、基材の表面に、複合金属酸化物による被覆層が形成され、L表色系におけるL値が70以上である。また、本発明の複合化粉末の製造方法は、チタンアルコキシドを添加したチタン酸分散液、または4級アンモニウム化合物を含有するチタン酸分散液と、チタンの含有量をTiO換算値で1(mol)と表したとき、モル比Mo/TiがMoO換算値で0.001-20となるように調整したモリブデン酸分散液とを混合し、撹拌することにより、混合液を生成する工程と、混合液と基材とを混合し、乾燥することにより、基材の表面に混合液による被覆層を形成する工程とを有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
チタン、及びモリブデンを含む複合金属酸化物と、
を有し、
前記基材の表面に、前記複合金属酸化物による被覆層が形成され、L表色系におけるL値が70以上であることを特徴とする複合化粉末。
【請求項2】
前記被覆層のチタンの含有量をTiO換算値で1(mol)と表したとき、
前記被覆層のモリブデンの含有量は、モル比Mo/TiがMoO換算値で0.001-20であることを特徴とする請求項1に記載の複合化粉末。
【請求項3】
前記複合金属酸化物がタンタルをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の複合化粉末。
【請求項4】
前記被覆層のチタンの含有量をTiO換算値で1(mol)と表したとき、
前記被覆層のモリブデンの含有量は、モル比Mo/TiがMoO換算値で0.001-20であり、且つ前記被覆層のタンタルの含有量は、モル比Ta/TiがTa換算値で0.001-0.5であることを特徴とする請求項3に記載の複合化粉末。
【請求項5】
前記複合化粉末のレーザ回折・散乱式粒度分布測定法による積算体積50%の粒径(D50)が200μm以下であることを特徴とする請求項1~4の何れか1つに記載の複合化粉末。
【請求項6】
前記被覆層の重量比率が10~90質量%であることを特徴とする請求項1~4の何れか1つに記載の複合化粉末。
【請求項7】
前記基材の材質はマイカ、ガラス、アルミナ、シリカ、スチレン樹脂、アクリル樹脂の何れかであることを特徴とする請求項1~4の何れか1つに記載の複合化粉末。
【請求項8】
基材の表面に、チタン、及びモリブデンを含む複合金属酸化物による被覆層が形成された複合化粉末の製造方法であって、
チタンアルコキシドを添加したチタン酸分散液、または4級アンモニウム化合物を含有するチタン酸分散液と、チタンの含有量をTiO換算値で1(mol)と表したとき、モル比Mo/TiがMoO換算値で0.001-20となるように調整したモリブデン酸分散液と、を混合し、撹拌することにより、混合液を生成する工程と、
前記混合液と前記基材とを混合し、乾燥することにより、前記基材の表面に前記混合液による被覆層を形成する工程と、
を有することを特徴とする複合化粉末の製造方法。
【請求項9】
基材の表面に、チタン、モリブデン、及びタンタルを含む複合金属酸化物による被覆層が形成された複合化粉末の製造方法であって、
チタンアルコキシドを添加したチタン酸分散液、または4級アンモニウム化合物を含有するチタン酸分散液と、チタンの含有量をTiO換算値で1(mol)と表したとき、モル比Mo/TiがMoO換算値で0.001-20となるように調整したモリブデン酸分散液と、モル比Ta/TiがTa換算値で0.001-0.5となるように調整したタンタル酸分散液と、を混合し、撹拌することにより、混合液を生成する工程と、
前記混合液と前記基材とを混合し、乾燥することにより、前記基材の表面に前記混合液による被覆層を形成する工程と、
を有することを特徴とする複合化粉末の製造方法。
【請求項10】
請求項1~4の何れか1つに記載の複合化粉末を含有することを特徴とする複合化膜。
【請求項11】
請求項8、又は9に記載された複合化粉末の製造方法により、生成された複合化粉末を、母材上に塗布し、乾燥することにより、複合粉末を含有する膜を形成する工程と、
を有することを特徴とする複合化膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合化粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン(TiO)は、光が照射されることによって、電子が励起され、この電子が他の分子に結合してこれを還元し、またこの電子が励起された後の正電荷を持った正孔が分子から電子を奪って酸化する特性を利用した光触媒としての用途開発が進められている。
【0003】
光触媒としての用途開発の一例として、特許文献1では、酸化チタン粉末に、焼結助剤として、Mo(モリブデン)やMoO(酸化モリブデン)が添加された光触媒が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-170496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された酸化チタンは、その粒子が緑色であることから、建材、塗装材に添加して使用した場合、緑色がかった色に着色されてしまうことが懸念されていた。特に、白色系の建材、塗装材には利用しにくく、粒子が白色である光触媒が求められていた。
【0006】
また、分散液の状態にある光触媒は、塗膜を製造する方法が制限される。さらに、乾燥粉末の状態にある光触媒は、ナノ粒子であるため凝集が起こりやすく、塗膜を形成する際は再度粉砕処理を行って分散させる必要があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて、明度値が高く、分散性と塗工性に優れ、高い光触媒性能を有する複合化粉末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の複合化粉末は、基材と、チタン、及びモリブデンを含む複合金属酸化物と、を有し、前記基材の表面に、前記複合金属酸化物による被覆層が形成され、L表色系におけるL値が70以上であることを特徴とする。
本発明の複合化粉末は、基材と、チタン、及びモリブデンを含む複合金属酸化物と、を有し、前記基材の表面に、前記複合金属酸化物による被覆層が形成され、L表色系におけるL値が70以上であると、明度値が高く、分散性と塗工性に優れ、高い光触媒性能を有する点で好ましい。
【0009】
基材は、その材質が、マイカ、ガラス、アルミナ、シリカ、スチレン樹脂、アクリル樹脂であると好ましく、マイカや、ガラスであるとより好ましい。さらに、基材の形状は、粉末状であればよく、例えばフレーク状、真球状など形状を問わないが、フレーク状であると好ましい。
【0010】
また、基材のレーザ回折・散乱式粒度分布測定法による積算体積50%の粒径(D50)が1μm以上であると、分散性が向上する観点から好ましく、一方200μm以下であると、塗料化時に沈降しにくい観点で好ましい。より好ましい範囲として、1μm以上150μm以下であるとより好ましく、3μm以上100μm以下であるとさらに好ましく、3μm以上90μm以下であると特に好ましく、3μm以上70μm以下であるとより特に好ましく、5μm以上50μm以下であるとまた特に好ましい。
【0011】
ここで、基材のレーザ回折・散乱式粒度分布測定法による積算体積50%の粒径(D50)は、基材の濃度が0.5%濃度程度になるように水で希釈することにより計測用試料を調製する。そして、レーザ回折・散乱法粒度分布測定装置(マイクロトラックベル株式会社製:MT3300EXII)を用いて測定を実施する。
【0012】
具体的には、基材粉0.2gを採取し、分散媒(富士フィルム和光純薬製:0.1%ヘキサメタリン酸ナトリウム溶液)が添加された水40mLに投入し、計測用試料とする。その後、超音波分散器(アズワン製:VS-100III)を用いて、28kHz、100Wの超音波を3分間印加し、分散処理を施すことにより、計測用試料を調製する。分散処理を施した計測用試料を対象として、レーザ回折・散乱法粒度分布測定装置(マイクロトラックベル株式会社製:MT3300EXII)を用いて積算体積50%の粒径(D50)を測定する。
【0013】
被覆層は、上述した基材の表面に形成された層であり、高い光触媒性能を発揮する。また、被覆層は、チタン、及びモリブデンを含む複合金属酸化物から構成されている。被覆層を構成する複合金属酸化物は、チタン酸化物粒子、及びモリブデン酸化物粒子を混合した混合物や、部分複合金属酸化合物粒子(その構成元素は、例えばTi-Mo-Oなどとして表される)と単一金属酸化合物粒子との混合物を包含する。
【0014】
また、被覆層の重量比率が10~90質量%であると、十分な光触媒性能を発揮することができる点で好ましく、10~60質量%であるとより好ましく、10~30質量%であるとさらに好ましい。被覆層の重量比率は、ICP発光分光分析(アジレント・テクノロジー社製:AG-5110)により算出することができる。ここで、「被覆層の重量比率」とは、本発明の複合化粉末全体の重量に対する被覆層全体の重量比率をいう。さらに、複合化粉末全体とは、基材と被覆層とを有する複合化粉末全体をいう。
【0015】
具体的には、基材の表面に形成された被覆層を炭酸ナトリウム等のアルカリ剤を加えてアルミナ等の坩堝を用いて融解して、得られたサンプルを希塩酸で加熱溶解し、また適度に希釈しICP発光分光分析により、被覆層を構成する各元素重量分率を測定して算出する。また、基材がチタン、モリブデン、又はタンタルを含有する場合、被覆層のアルカリ剤による溶融前に基材と、被覆層とを化学的処理や機械的処理等により分別した後に、被覆層を構成する各元素重量分率を測定して算出する。
【0016】
また、L表色系を用いて測定されるL値は、明度を示すものであり、当該L値が70以上であると、明度値が高い点で好ましい。ここで、L値が100に近いほど、色が白に近づいて薄くなることを示し、L値が0に近いほど、色が黒に近づいて濃くなることを示している。具体的には、当該L値は、色彩色差計(コニカミノルタ社製:CR-300)を用い、JIS Z 8722:2009に準拠して実施する。
【0017】
また、本発明の複合化粉末は、前記被覆層のチタンの含有量をTiO換算値で1(mol)と表したとき、前記被覆層のモリブデンの含有量は、モル比Mo/TiがMoO換算値で0.001-20であることを特徴とする。
本発明の複合化粉末は、前記被覆層のチタンの含有量をTiO換算値で1(mol)と表したとき、前記被覆層のモリブデンの含有量は、モル比Mo/TiがMoO換算値で0.001-20であると、粒子の明度値が高く、優れた光触媒性能を有する点で好ましい。なお、本明細書において「X-Y」(X、Yは任意の数字)と表現する場合、特段の説明がない限り「X以上/超、Y以下/未満」全ての組み合わせを意味する。
【0018】
ここで、本発明の複合化粉末中のチタンの含有量は、当該複合化粉末0.2gを炭酸ナトリウム等のアルカリ剤4gを加えてアルミナ坩堝を用いて当該複合化粉末全てを融解して、得られたサンプルを1.5mol/Lの希塩酸200mLで加熱溶融し、また適度に希釈し、ICP発光分光分析(アジレント・テクノロジー社製:AG-5110)により、酸化チタン(TiO)換算のTi重量分率を測定して算出する。なお、本発明の複合化粉末中のチタンは、必ずしもTiOの状態で存在するものではない。チタンの含有量を、TiO換算で示しているのは、慣例に基づくものである。本明細書で言及するチタンは、特段の説明がない限り、それらの酸化物を含むものである。
【0019】
また、本発明の被覆層中のモリブデンの含有量は、上述したチタンの含有量と同様に、ICP発光分光分析により、酸化モリブデン(MoO)換算のMo重量分率を測定して算出する。なお、本発明の被覆層中のモリブデンは、必ずしもMoOの状態で存在するものではない。モリブデンの含有量を、MoO換算で示しているのは、慣例に基づくものである。
【0020】
上述したようにICP発光分光分析により算出された本発明の被覆層中のモリブデンの含有量は、チタンの含有量をTiO換算値で1(mol)と表したとき、当該モリブデンの含有量は、モル比Mo/TiがMoO換算値で0.001以上であると、触媒活性が向上する点で好ましく、0.01以上であるとより好ましく、0.02以上であるとさらに好ましい。一方、当該モリブデンの含有量は、モル比Mo/TiがMoO換算値で20以下であると、L値が高くなる点で好ましく、5以下であるとより好ましく、1以下であるとさらに好ましく、0.1以下であると特に好ましく、0.05以下であるとより特に好ましい。なお、本明細書で言及するモリブデンは、特段の説明がない限り、それらの酸化物を含むものである。
【0021】
また、本発明の複合化粉末は、前記複合金属酸化物がタンタルをさらに含むことを特徴とする。
本発明の複合化粉末は、基材の表面に形成された被覆層を構成する複合金属酸化物にタンタルがさらに含まれることにより、L値が高くなる観点で好ましい。
【0022】
また、本発明の複合化粉末は、前記被覆層のチタンの含有量をTiO換算値で1(mol)と表したとき、前記被覆層のモリブデンの含有量は、モル比Mo/TiがMoO換算値で0.001-20であり、且つ前記被覆層のタンタルの含有量は、モル比Ta/TiがTa換算値で0.001-0.5であることを特徴とする。
本発明の複合化粉末は、前記被覆層のチタンの含有量をTiO換算値で1(mol)と表したとき、前記被覆層のモリブデンの含有量は、モル比Mo/TiがMoO換算値で0.001-20であり、且つ前記被覆層のタンタルの含有量は、モル比Ta/TiがTa換算値で0.001-0.5であると、粒子の明度値がより高くなる点で好ましい。
【0023】
本発明の被覆層中のタンタルの含有量は、上述した本発明の被覆層中のチタンや、モリブデンの含有量と同様に、ICP発光分光分析により、酸化タンタル(Ta)換算のTa重量分率を測定して算出する。なお、本発明の被覆層中のタンタルは、必ずしもTaの状態で存在するものではない。本発明の被覆層中のタンタルの含有量を、Ta換算で示しているのは、慣例に基づくものである。
【0024】
上述したようにICP発光分光分析により算出された本発明の被覆層中のタンタルの含有量は、本発明の被覆層中のチタンの含有量をTiO換算値で1(mol)と表したとき、当該タンタルの含有量は、モル比Ta/TiがTa換算値で0.001以上であると、触媒活性が向上する点で好ましく、0.01以上であるとより好ましく、0.02以上であるとさらに好ましい。一方、当該タンタルの含有量は、モル比Ta/TiがTa換算値で0.5以下であると、L値が高くなる点で好ましく、0.25以下であるとより好ましく、0.1以下であるとさらに好ましく、0.05以下であると特に好ましい。なお、本明細書で言及するタンタルは、特段の説明がない限り、それらの酸化物を含むものである。
【0025】
なお、被覆層を構成する複合金属酸化物は、チタン酸化物粒子、モリブデン酸化物粒子、及びタンタル酸化物粒子を混合した混合物や、部分複合金属酸化合物粒子(その構成元素は、例えばTi-Mo-O+TaOや、Ti-Ta-O+MoOなどとして表される)と単一金属酸化合物粒子との混合物を包含する。
【0026】
また、本発明の複合化粉末は、前記複合化粉末のレーザ回折・散乱式粒度分布測定法による積算体積50%の粒径(D50)が200μm以下であることを特徴とする。
本発明の複合化粉末は、前記複合化粉末のレーザ回折・散乱式粒度分布測定法による積算体積50%の粒径(D50)が200μm以下であると、分散性が向上する観点で好ましい。
【0027】
さらに、本発明の複合化粉末は、前記複合化粉末のレーザ回折・散乱式粒度分布測定法による積算体積50%の粒径(D50)が150μm以下であるとより好ましく、100μm以下であるとさらに好ましく、50μm以下であると特に好ましい。また、本発明の複合化粉末は、前記複合化粉末のレーザ回折・散乱式粒度分布測定法による積算体積50%の粒径(D50)が1μm以上であると、分散性が向上する観点で好ましく、3μm以上であるとより好ましく、5μm以上であるとさらに好ましい。
【0028】
本発明の複合化粉末のレーザ回折・散乱式粒度分布測定法による積算体積50%の粒径(D50)は、上述した基材と同様に、超音波による分散処理を施し、レーザ回折・散乱法粒度分布測定装置(マイクロトラックベル株式会社製:MT3300EXII)を用いて測定を実施する。
【0029】
また、本発明の複合化膜は、上述した本発明の複合化粉末を含有することを特徴とする。
本発明の複合化膜は、上述した本発明の複合化粉末を含有しており、光触媒として建材や、塗装材に利用可能である。
【0030】
本発明の複合化粉末及び複合化膜は、抗ウイルス特性を有する。
ここで、本発明の複合化粉末及び複合化膜の抗ウイルス特性は、以下のようにして確認することができる。
【0031】
本発明の複合化粉末を塗布し、塗膜を形成した試験片上に、試験ウイルス液150μLを滴下し、密着フィルムで覆い、保湿環境下25℃±3℃で、仕様書の通り暗所静置及び光照射を行う。各試験片の抗ウイルス性の有無を評価するため、塗膜を形成しない無加工試験片を作成する。紫外光、又は可視光を4時間照射する(必要に応じて、シャープカットフィルタを使用してもよい)。所定時間静置後、試験ウイルス液を5mLのPBSにより回収する。なお、試験ウイルスとして、バクテリオファージQBを主成分とする保存ウイルス液をリン酸緩衝液(PBS)で、適当な濃度に希釈したもの(10倍以上)を用いる。
【0032】
回収したウイルス液からPBSを用いて10倍の希釈系列を作成し、予め96穴プレートに培養しておいた感染価測定用のMDCK細胞に、50μLのウイルス希釈液を加え、34℃、5%CO2条件下で4-5日間培養する。培養後、Vital ToxGlo Assayキット(プロメガ社製)を用いた発光法により、それぞれのTCID50(50% Tissue Culture Infectious Dose:宿主細胞のうち半分がウイルスに感染した時のウイルス濃度)を測定する。
【0033】
測定したTCID50の値から、下記の式(1)~(3)により、抗ウイルス活性値(V)を求めることができる。下記式(1)中のBは、明所での試験片のTCID50を示し、Cは、明所での無加工試験片のTCID50を示す。また、下記式(2)中のBは、暗所での試験片のTCID50を示し、Cは、暗所での無加工試験片のTCID50を示す。
【0034】
【数1】
【0035】
本発明の複合化粉末及び複合化膜は、モリブデン乃至モリブデン酸、および/または、タンタル乃至タンタル酸と複合化せず、残存したチタン乃至チタン酸、例えばMo-Ta-O+TiOや、その作用効果を阻害しない範囲で、添加物として、Nb、W、Si、Zr、Zn、Al、Y、V、La系(La、Ce、Nd、Eu、Gd、Dy、Yb)などの酸化物粉末を含有してもよい。上述した添加物の含有量は、0.5質量%未満であるのが好ましく、0.1質量%未満であるのがより好ましく、0.01質量%未満であるとさらに好ましい。
【0036】
さらに、本発明の複合化粉末及び複合化膜は、その作用効果を阻害しない範囲で、チタン乃至チタン酸、モリブデン乃至モリブデン酸、タンタル乃至タンタル酸に由来する成分、及び、分散体に由来する成分以外の成分(「他成分」という。)を含有してもよい。他成分としては、例えばNb、W、Si、Zr、Zn、Al、Y、V、La系(La、Ce、Nd、Eu、Gd、Dy、Yb)などが挙げられる。但し、これらに限定するものではない。上述した他成分の含有量は、5質量%未満であるのが好ましく、4質量%未満であるのがより好ましく、3質量%未満であるとさらに好ましい。なお、本発明の複合金属酸化合物、複合金属酸化合物分散液、及び複合金属酸化合物膜は、意図したものではなく、不可避不純物を含むことが想定される。不可避不純物の含有量は0.01質量%未満であるのが好ましい。
【0037】
上述した本発明の複合化粉末の製造方法について、以下説明する。
【0038】
本発明の複合化粉末の製造方法、すなわち基材の表面に、チタン、及びモリブデンを含む複合金属酸化物による被覆層が形成された複合化粉末の製造方法であって、チタンアルコキシドを添加したチタン酸分散液、または4級アンモニウム化合物を含有するチタン酸分散液と、チタンの含有量をTiO換算値で1(mol)と表したとき、モル比Mo/TiがMoO換算値で0.001-20となるように調整したモリブデン酸分散液と、を混合し、撹拌することにより、混合液を生成する工程と、前記混合液と前記基材とを混合し、乾燥することにより、前記基材の表面に前記混合液による被覆層を形成する工程と、を有する。
【0039】
先ず、チタン酸分散液とモリブデン酸分散液とを混合した混合液の製造方法について、以下説明する。
【0040】
チタン酸分散液とモリブデン酸分散液とを混合した混合液の製造方法としては、チタン酸分散液としてチタンアルコキシドを添加したチタン酸分散液を用いる第1実施形態の混合液の製造方法と、チタン酸分散液として4級アンモニウム化合物を含有するチタン酸分散液を用いる第2実施形態の混合液の製造方法とが挙げられる。
【0041】
第1実施形態の混合液の製造方法について、以下説明する。
【0042】
第1実施形態のチタン酸分散液として用いられるチタンアルコキシドは、チタンテトライソプロキシドの他には、チタンi-プロキシド、チタンn-ブトキシド、チタン2-エチルヘキソキシド、チタンtert-ブトキシド、チタンステアリルアルコキシド、テトライソプロポキシチタンが挙げられる。
【0043】
次に、モリブデン酸分散液の製造方法について、以下説明する。
【0044】
モリブデン酸分散液の製造方法の一例として、酸性モリブデン水溶液をアンモニア水溶液に添加して中和反応液を生成し(以下、「モリブデン中和工程」という。)、当該中和反応液中に生じたモリブデン含有沈殿物を洗浄し(以下、「モリブデン洗浄工程」という。)、洗浄後のモリブデン含有沈殿物に有機窒素化合物を添加し(以下、「モリブデン溶解工程」という。)、モリブデン酸分散液を得る製造方法が挙げられる。
【0045】
酸性モリブデン水溶液は、モリブデンが硫酸を含む酸性水溶液に溶解した溶解液を溶媒抽出することにより得られた硫酸モリブデン水溶液をいう。
【0046】
ここで、硫酸モリブデン水溶液は、水(例えば純水)を加えてモリブデンをMoO換算で1-100g/L含有するように調整すると好ましい。この際、モリブデン濃度がMoO換算で1g/L以上であると、水に溶けやすいモリブデン酸化合物水和物となることから好ましく、生産性を考えた場合、10g/L以上がより好ましく、20g/L以上であるとさらに好ましい。他方、モリブデン濃度がMoO換算で100g/L以下であれば、水に溶けやすいモリブデン酸化合物水和物になることから好ましく、より確実に水に溶けやすいモリブデン酸化合物水和物を合成するには、90g/L以下であるとより好ましく、80g/L以下であるとさらに好ましく、70g/L以下であると特に好ましい。なお、硫酸モリブデン水溶液のpHは、モリブデン乃至モリブデン酸化物を完全溶解させる観点から、2以下であると好ましく、1以下であるとより好ましい。
【0047】
(モリブデン中和工程)
モリブデン中和工程では、硫酸モリブデン水溶液をアンモニア水溶液に添加する際、いわゆる逆中和法では、硫酸モリブデン水溶液を10質量%-30質量%のアンモニア水溶液中に添加し、すなわち逆中和法により、モリブデン酸化合物水和物のスラリー、いわゆるモリブデン含有沈殿物のスラリーを得るのが好ましい。
【0048】
逆中和に用いるアンモニア水溶液のアンモニア濃度は10質量%-30質量%であると好ましい。当該アンモニア濃度が10質量%であると、モリブデンが溶け残りにくくなり、モリブデン乃至モリブデン酸化物を水に完全に溶解させることができる。他方、当該アンモニア濃度が30質量%以下であると、アンモニアの飽和水溶液付近であるから好ましい。
【0049】
かかる観点から、アンモニア水溶液のアンモニア濃度は10質量%以上であると好ましく、15質量%以上であるとより好ましく、20質量%以上であるとさらに好ましく、25質量%であると特に好ましい。他方、当該アンモニア濃度は30質量%以下であると好ましく、29質量%以下であるとより好ましく、28質量%以下であるとさらに好ましい。
【0050】
逆中和の際、アンモニア水に添加する硫酸モリブデン水溶液の添加量は、NH/MoOのモル比が0.1以上300以下とするのが好ましく、5以上200以下とするのがより好ましい。また、アンモニア水に添加する硫酸モリブデン水溶液は、アミンや薄いアンモニア水に溶けるモリブデン酸化合物が生成する観点から、NH/SO 2-のモル比が3.0以上とするのが好ましく、10.0以上とするとより好ましく、20.0以上とするとさらに好ましい。他方、コスト低減の観点から、NH/SO 2-のモル比が200以下とするのが好ましく、150以下とするとより好ましく、100以下とするとさらに好ましい。
【0051】
逆中和において、硫酸モリブデン水溶液のアンモニア水への添加に係る時間は、1分以内であると好ましく、30秒以内であるとより好ましく、10秒以内であるとさらに好ましい。すなわち、時間をかけて徐々に硫酸モリブデン水溶液を添加するのではなく、例えば一気に投入するなど、出来るだけ短い時間でアンモニア水へ投入し、中和反応させると好適である。また、逆中和では、アルカリ性のアンモニア水へ、酸性の硫酸モリブデン水溶液を添加することから、高いpHを保持したまま中和反応させることができる。
【0052】
(モリブデン洗浄工程)
モリブデン洗浄工程では、逆中和法により得られたモリブデン含有沈殿物のスラリーから硫黄分を除去し、硫黄分が除去されたモリブデン含有沈殿を生成する。逆中和法により得られたモリブデン含有沈殿物のスラリーには、不純物として、モリブデン乃至モリブデン酸化物と反応せず残った硫酸イオン、及び硫酸水素イオンの硫黄分が存在するため、これらを除去することが好ましい。
【0053】
硫黄分の除去方法は任意であるが、例えばアンモニア水や純水を用いた逆浸透ろ過、限外ろ過、精密ろ過などの膜を用いたろ過による方法や、遠心分離、その他の公知の方法を採用することができる。なお、モリブデン含有沈殿物のスラリーから硫黄分を除去する際、温度調節は特に必要なく、常温で実施してもよい。
【0054】
具体的には、逆中和法により得られたモリブデン含有沈殿物のスラリーを、遠心分離機を用いてデカンテーションし、モリブデン含有沈殿物のスラリーの導電率が500μS/cm以下になるまで洗浄を繰り返すことにより、硫黄分が除去されたモリブデン含有沈殿物が得られる。当該導電率は、モリブデン含有沈殿物のスラリーの液温を25℃に調整し、導電率計(アズワン社製:ASCON2)の測定部を当該沈殿物のスラリーの上澄み液に浸漬され、導電率の値が安定してから、その数値を読み取った。
【0055】
硫黄分の除去に用いられる洗浄液はアンモニア水であると好適である。具体的には、5.0質量%以下のアンモニア水が好ましく、4.0質量%以下のアンモニア水がより好ましく、3.0質量%以下のアンモニア水がさらに好ましく、2.5質量%のアンモニア水が特に好ましい。5.0質量%以下のアンモニア水であると、アンモニア、アンモニウムイオンが硫黄分に対して適切であり不要なコストの増加を回避することができる。
【0056】
(モリブデン溶解工程)
モリブデン溶解工程では、モリブデン含有沈殿をスラリー状としたモリブデン含有沈殿スラリーに有機窒素化合物を添加することにより、モリブデン酸分散液を生成する。ここで、モリブデン含有沈殿スラリーは、上述したように硫黄分が除去されたモリブデン含有沈殿を純水などで希釈し、スラリー状としたものである。なお、硫黄分が除去された、モリブデン含有沈殿スラリーのモリブデン濃度は、当該スラリーの一部を採取し、110℃で24時間乾燥させた後、1,000℃で4時間焼成し、MoOを生成する。このように生成したMoOの重量を測定し、その重量から当該スラリーのモリブデン濃度を算出することができる。
【0057】
そして、硫黄分が除去されたモリブデン含有沈殿スラリーに有機窒素化合物を混合することにより、モリブデン酸分散液が得られる。
【0058】
具体的には、最終的な混合物のモリブデン濃度がMoO換算で0.1-40質量%となるように、得られたモリブデン含有沈殿スラリーを、有機窒素化合物に加え、純水と混合し、当該混合物を撹拌しながら、液温を室温(25℃)に1時間保持することにより、モリブデン酸分散液が得られる。
【0059】
モリブデン含有沈殿スラリーと混合する有機窒素化合物は、アミン、特に脂肪族アミン、およびまたは、4級アンモニウム化合物であると好ましい。
【0060】
ここで、脂肪族アミンは、溶解性の観点から、モリブデン含有沈殿スラリー中の脂肪族アミン濃度が40質量%以下になるように混合するのが好ましい。また、同様な観点から、モリブデン含有沈殿スラリー中の脂肪族アミン濃度が0.1質量%以上になるように混合するのが好ましく、20質量%以上になるように混合するのがより好ましい。なお、脂肪族アミンは、メチルアミン、又はジメチルアミンであるとより好ましく、メチルアミンであると特に好ましい。
【0061】
他方、4級アンモニウム化合物は、溶解性の観点から、モリブデン含有沈殿スラリー中の4級アンモニウム化合物濃度が40質量%以下になるように混合するのが好ましい。また、同様な観点から、モリブデン含有沈殿スラリー中の4級アンモニウム化合物濃度が0.1質量%以上になるように混合するのが好ましく、20質量%以上になるように混合するのがより好ましい。なお、4級アンモニウム化合物は、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)や水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)であるとより好ましい。
【0062】
上述したモリブデン中和工程、モリブデン洗浄工程、及びモリブデン溶解工程は、常温で行えばよく、それぞれの温度調整は特に必要ない。
【0063】
上述した第1実施形態のチタン酸分散液として用いられるチタンアルコキシド、例えばチタンテトライソプロキシドと、及びモリブデン酸分散液とを、チタンの含有量をTiO換算値で1と表したとき、モリブデンの含有量をモル比Mo/TiがMoO換算値で0.001-20となるように調製したモリブデン酸分散液とを混合した混合液を、オートグレーブにて、加熱温度25℃-400℃、加熱時間1時間-99時間、加圧圧力0.1MPa-40MPaで水熱合成することにより、第1実施形態の混合液が得られる。なお、第1実施形態の混合液は、半透明ゾル(懸濁溶液)である。
【0064】
チタンアルコキシドと混合する、モリブデン酸分散液は、その分散液中に4級アンモニウム化合物ではなく、比較的揮発性の高いアミンが含有されていると好ましい。チタンアルコキシドと混合する、モリブデン酸分散液中に、4級アンモニウム化合物が含有されていると、上述した水熱合成の際、モリブデンが溶解し、第1実施形態の混合液の組成が変化するからである。
【0065】
水熱合成における加熱温度は、例えば180℃であると好ましく、加熱時間は12時間であると好ましく、加圧圧力は、飽和水蒸気圧以上であると好ましく、1.05MPaであるとより好ましい。
【0066】
また、第2実施形態の混合液の製造方法について、以下説明する。なお、第1実施形態の混合液の製造方法と同じ製造方法については、説明を省略する。
【0067】
第2実施形態の混合液の製造方法について、以下説明する。
【0068】
第2実施形態のチタン酸分散液の製造方法の一例として、チタン塩溶液とアンモニア水とを混合して中和反応液を生成し(以下、「チタン中和工程」という。)、当該中和反応液中に生じたチタン含有沈殿物を洗浄し(以下、「チタン洗浄工程」という。)、洗浄後のチタン含有沈殿物と4級アンモニウム塩と水とを混合し(以下、「チタン溶解工程」という。)、第2実施形態のチタン酸分散液を得る製造方法が挙げられる。
【0069】
チタン塩溶液は、チタンが溶解している溶液であればよく、例えば硫酸チタニル水溶液、塩化チタニル水溶液、フッ化チタン水溶液などが挙げられる。
【0070】
ここで、硫酸チタニル水溶液は、硫酸チタニルを熱水に溶解することにより得られる。当該硫酸チタニル水溶液は、チタンをTiO換算で8-15質量%含有するように調製すると好ましい。
【0071】
(チタン中和工程)
チタン中和工程では、チタン塩溶液、例えば硫酸チタニル水溶液とアンモニア水とを混合して反応させることにより、中和反応液を生成することができる。ここで、硫酸チタニル水溶液を、アンモニア水に添加して反応させる、いわゆる逆中和を実施すると好ましい。
【0072】
逆中和に用いるアンモニア水溶液のアンモニア濃度は10質量%-40質量%であると好ましい。当該アンモニア濃度が25質量%であると、チタンが溶け残りにくくなり、チタン乃至チタン酸化物を水に完全に溶解させることができる。他方、当該アンモニア濃度が30質量%以下であると、アンモニアの飽和水溶液付近であるから好ましい。
【0073】
かかる観点から、アンモニア水溶液のアンモニア濃度は5質量%以上であると好ましく、10質量%以上であるとより好ましく、15質量%以上であるとさらに好ましく、20質量%であると特に好ましい。他方、当該アンモニア濃度は30質量%以下であると好ましく、35質量%以下であるとより好ましく、40質量%以下であるとさらに好ましい。
【0074】
逆中和の際、アンモニア水に添加する硫酸チタニル水溶液の添加量は、NH/TiOのモル比が1以上200以下とするのが好ましく、10以上100以下とするのがより好ましい。また、アンモニア水に添加する硫酸チタニル水溶液は、薄いアンモニア水に溶けるチタン酸化合物が生成する観点から、NH/SO 2-のモル比が1以上とするのが好ましく、5以上とするとより好ましく、10以上とするとさらに好ましい。他方、コスト低減の観点から、NH/SO 2-のモル比が50以下とするのが好ましく、40以下とするとより好ましく、30以下とするとさらに好ましい。
【0075】
逆中和において、硫酸チタニル水溶液のアンモニア水への添加に係る時間は、1分以内であると好ましく、30秒以内であるとより好ましく、10秒以内であるとさらに好ましい。すなわち、時間をかけて徐々に硫酸チタニル水溶液を添加するのではなく、例えば一気に投入するなど、出来るだけ短い時間でアンモニア水へ投入し、中和反応させると好適である。また、逆中和では、アルカリ性のアンモニア水へ、酸性の硫酸チタニル水溶液を添加することから、高いpHを保持したまま中和反応させることができる。
【0076】
(チタン洗浄工程)
逆中和で得られた中和反応液中のチタン含有沈殿物のスラリーを洗浄することにより、不純物が除去され、チタン含有沈殿物が得られる。逆中和で得られたチタン含有沈殿物のスラリーには、不純物として、硫酸アンモニウムなどの硫酸化合物など、チタン乃至チタン酸化物の水和物乃至イオン及びアンモニア以外の不要な成分が存在するため、これらを除去することが好ましい。
【0077】
洗浄方法、例えば硫酸化合物の除去方法は任意である。例えば、アンモニア水や純水を用いた逆浸透ろ過、限外ろ過、精密ろ過などの膜を用いたろ過による方法のほか、遠心分離、その他の公知の方法を採用することができる。なお、チタン洗浄工程は、常温で行えばよく、それぞれの温度調整は特に必要ない。
【0078】
(チタン溶解工程)
そして、チタン洗浄工程で不純物が除去して得られたチタン含有沈殿物は、水などの分散媒を加えると共に、4級アンモニウム塩を加えて、必要に応じて撹拌して反応を促進させることにより、第2実施形態のチタン酸分散液を作成することができる。
【0079】
ここで、4級アンモニウム塩の種類としては、例えば水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化メチルトリプロピルアンモニウム、水酸化メチルトリブチルアンモニウム、水酸化テトラペンチルアンモニウム、水酸化テトラヘキシルアンモニウム水酸化エチルトリメチルアンモニウム、水酸化ジメチルジエチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、又は、水酸化(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムなどを挙げることができる。
【0080】
4級アンモニウム塩の添加量は、上述したように、4級アンモニウム化合物の量が多ければ、チタン乃至チタン酸の水に対する溶解性を高めることができるから、前記溶解工程では、前記洗浄後のチタン含有沈殿物に含まれるチタン1モルに対して0.44モル以上の4級アンモニウム化合物を含む4級アンモニウム塩を混合するのが好ましい。他方、4級アンモニウム化合物が多過ぎると、成膜性の障害になったり、触媒作用を阻害したりするなどの不具合を生じる可能性がある観点から、上述したチタン溶解工程では、前記洗浄後のチタン含有沈殿物に含まれるチタンに1モル対して1.0モル以下の4級アンモニウム化合物を有する4級アンモニウム塩を混合するのが好ましい。
【0081】
上述したチタン中和工程、チタン洗浄工程、及びチタン溶解工程は、常温で行えばよく、それぞれの温度調整は特に必要ない。
【0082】
第2実施形態のチタン酸分散液の製造方法により得られた4級アンモニウムを含有するチタン酸分散液と、モリブデン酸分散液とを、チタンの含有量をTiO換算値で1と表したとき、モリブデンの含有量をモル比Mo/TiがMoO換算値で0.001-20となるように調製したモリブデン酸分散液とを混合した混合液を、液温を室温(25℃)で10分間撹拌することにより、第2実施形態の混合液が得られる。
【0083】
そして、上述した第1実施形態、又は第2実施形態の混合液と基材とを混合し、乾燥することにより、当該基材の表面に当該混合液による被覆層を形成する工程は、以下の通りである。
【0084】
具体的には、第1、第2実施形態の混合液の製造方法により得られた混合液を、必要に応じて、例えば2μm孔径のフィルタで濾過した後、基材と混合する。この混合方法は、バッチ式、又は連続式の何れの方法も可能であるが、被覆層の量を制御しやすい観点からバッチ式混合の方が好ましい。生産効率の上では混合と乾燥を同時に行うことが出来る円錐型リボン混合/乾燥機(大川原製作所製:リボコーン)が特に好ましいが、混合液と基材を混ぜた後に大気雰囲気若しくは減圧雰囲気にて乾燥する方法でも可能である。
【0085】
バッチ式の製造条件として、混合液と基材とを任意の割合で10分-1時間混合し、乾燥温度:80℃-180℃、圧力:10-4Pa-1.1MPa、乾燥時間:10分間-36時間で、混合液と基材とを混合した混合物を乾燥させる。そして、乾燥した当該混合物を粉砕することにより、当該基材の表面に混合液による被覆層が形成された本発明の複合化粉末が得られる。なお、当該混合物を乾燥させる条件は、乾燥温度は120℃であると好ましく、圧力は1.01MPaであると好ましく、撹拌しながら乾燥させると好ましい。
【0086】
ここで、当該基材としては、上述した通り、マイカや、ガラスであるとより好ましい。さらに、基材の形状は、粉末状であればよく、フレーク状であると好ましい。また、基材のレーザ回折・散乱式粒度分布測定法による積算体積50%の粒径(D50)が1μm以上200μm以下であると好ましい。
【0087】
また、本発明の複合化粉末の製造方法、すなわち基材の表面に、チタン、モリブデン、及びタンタルを含む複合金属酸化物による被覆層が形成された複合化粉末の製造方法であって、チタンアルコキシドを添加したチタン酸分散液、または4級アンモニウム化合物を含有するチタン酸分散液と、チタンの含有量をTiO換算値で1(mol)と表したとき、モル比Mo/TiがMoO換算値で0.001-20となるように調整したモリブデン酸分散液と、モル比Ta/TiがTa換算値で0.001-0.5となるように調整したタンタル酸分散液と、を混合し、撹拌することにより、混合液を生成する工程と、前記混合液と前記基材と、を混合し、乾燥することにより、前記基材の表面に前記混合液による被覆層を形成する工程と、を有する。
【0088】
先ず、チタン酸分散液、モリブデン酸分散液、及びタンタル酸分散液を混合した混合液の製造方法について、以下説明する。なお、チタン酸分散液、及びモリブデン酸分散液の製造方法については、上述した通りであるから、説明を省略する。
【0089】
タンタル酸分散液の製造方法について、以下説明する。
【0090】
タンタル酸分散液の製造方法の一例として、タンタル塩溶液をアミン水溶液に加えて一次反応液を生成し(以下、「タンタル一次中和工程」という。)、当該一次反応液をアンモニア水に加えて二次反応液を生成し(以下、「タンタル二次中和工程」という。)、当該二次反応液で生じたタンタル含有沈殿物を洗浄し(以下、「タンタル洗浄工程」という。)、洗浄後のタンタル含有沈殿物とアミンと水とを混合し(以下、「タンタル分散工程」という。)、タンタル酸分散液を得る製造方法を挙げることができる。また、後述するタンタル酸化合物を利用して、タンタル酸化合物とアミンと水とを混合してタンタル酸分散液を得ることも可能である。
【0091】
出発物質であるタンタル塩溶液は、タンタルが溶解している溶液であればよい。例えばフッ化タンタル水溶液、塩化タンタル水溶液などを挙げることができる。
【0092】
フッ化タンタル水溶液は、タンタル、タンタル酸化物又は水酸化タンタルを、フッ化水素酸水溶液などのフッ酸(HF)と反応させてフッ化タンタル(HTaF)とし、これを水に溶解して作製することができる。
【0093】
このフッ化タンタル水溶液は、水(例えば純水)を加えて、タンタルをTa換算で1-100g/L含有するように調製するのが好ましい。この際、タンタル濃度が1g/L以上であれば、水に溶けやすいタンタル酸化合物水和物になるので、フッ化タンタル水溶液のタンタル濃度は、Ta換算で1g/L以上であるのがより好ましく、生産性を考えた場合、中でも10g/L以上、その中でも20g/L以上であるのがさらに好ましい。他方、タンタル濃度が100g/L以下であれば、水に溶けやすいタンタル酸化合物水和物になるので、より確実に水に溶けやすいタンタル酸化合物水和物を合成するには、90g/L以下であるのがより好ましく、中でも80g/L以下、その中でも70g/L以下であるのがさらに好ましい。
【0094】
フッ化タンタル水溶液のpHは、タンタル乃至タンタル酸化物を完全溶解させる観点から、2以下であるのが好ましく、中でも1以下であるのがさらに好ましい。他方、塩化タンタル水溶液は、塩化タンタル(TaCl)を少量のメタノールに溶かし、さらに水を加えて作製することができる。
【0095】
(タンタル一次中和工程)
タンタル塩溶液とアミン水溶液とを反応させた後(一次中和)、アンモニア水と反応させる処理(二次中和)を行うことが重要である。
【0096】
タンタル塩溶液とアミン水溶液による一次中和だけで、アンモニア水による二次中和を実施しないと、沈殿物が生成しないか、或いは沈殿生成量が少なくなり、本タンタル酸分散液の収率が低くなりやすい。さらに、沈殿物が生成したとしても、そのまま洗浄工程に進んだ場合、一部溶解しないタンタル酸化合物水和物となってしまい、分散性の高いタンタル酸分散液を得ることはできない。
【0097】
また、一次中和と二次中和の順番を逆にして、タンタル塩溶液とアンモニア水とを反応させた後、アミン水溶液と反応させた場合も、後の分散工程において、タンタル乃至タンタル酸を好適に水中に分散させることはできず、まして水溶液とすることはできない。
【0098】
タンタル一次中和工程では、フッ化タンタル水溶液などのタンタル塩溶液を、アミン水溶液に加えて反応させる逆中和を実施するのが好ましい。フッ化タンタル水溶液などのタンタル塩溶液にアミン水溶液を添加する正中和では、後の分散工程において、タンタル乃至タンタル酸を好適に水に分散させることはできず、まして水溶液とことはできない。逆中和することによって、タンタル乃至タンタル酸の構造が水に溶けやすい構造になると推測している。
【0099】
タンタル一次中和工程で用いるアミン水溶液のアミンとしては、アルキルアミンなどを好ましく例示することができる。
【0100】
上記アルキルアミンとしては、アルキル基を1-3個有するものを好ましく使用可能である。アルキル基を2-3個有する場合、3個のアルキル基は全部同じものでもよいし、また、異なるなるものを含んでいてもよい。アルキルアミンのアルキル基としては、溶解性の観点から、アルキル基の炭素数1-6のものが好ましく、中でも4以下、その中でも3以下、さらにその中でも2以下のものが好ましい。
【0101】
上記アルキルアミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエチルアミン、n-プロピルアミン、ジn-プロピルアミン、トリn-プロピルアミン、iso-プロピルアミン、ジiso-プロピルアミン、トリiso-プロピルアミン、n-ブチルアミン、ジn-ブチルアミン、トリn-ブチルアミン、iso-ブチルアミン、ジiso-ブチルアミン、トリiso-ブチルアミンおよびtert-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミンなどを挙げることができる。
【0102】
中でも、溶解性の点からは、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミンおよびジメチルエチルアミンが好ましく、中でもメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミンがさらに好ましい。
【0103】
タンタル一次中和において、分散性を高める観点から、前記タンタル塩溶液を、該タンタル塩溶液に含まれるフッ素とモル比で等量以上すなわち1以上のアミンを含有するアミン水溶液に加えることが好ましく、中でも1.2以上、その中でも1.4以上のアミンを含有するアミン水溶液に加えることがさらに好ましい。
【0104】
他方、廃液量が多くなる観点から、前記タンタル塩溶液を、該記タンタル塩溶液に含まれるフッ素とモル比で2以下のアミンを含有するアミン水溶液に加えることが好ましく、中でも1.8以下、その中でも1.6以下のアミンを含有するアミン水溶液に加えることがさらに好ましい。
【0105】
タンタル一次中和工程では、フッ化タンタル水溶液などのタンタル塩溶液を、アミン水溶液に加える際、1分以内に中和反応させるのが好ましい。すなわち、時間をかけて徐々に前記タンタル塩溶液を加えるのではなく、例えば一気に投入するなど、1分以内の時間で投入して中和反応させるのが好ましい。この際、前記タンタル塩溶液の添加時間は、1分以内とするのが好ましく、中でも30秒以内、その中でも10秒以内とするのがさらに好ましい。
【0106】
(タンタル二次中和工程)
タンタル二次中和では、タンタル一次中和工程で得た一次反応液を、アンモニア水に加えて二次反応液を得るようにするのが好ましい。一次反応液をアンモニア水に加えると、水中に沈殿物(「タンタル含有沈殿物」と称する)が生じることになる。
【0107】
タンタル二次中和においても、本タンタル酸分散液の分散性をさらに向上させる観点から、タンタル一次中和工程で得た一次反応液を、アンモニア水に加えて反応させる逆中和を実施するのが好ましい。
【0108】
この際、上記アンモニア水溶液は、本タンタル酸分散液の分散性を高める観点から、アンモニア濃度が10-30質量%であることが好ましい。中でも15質量%以上、中でも20質量%以上、その中でも25質量%以上であるのがさらに好ましい。他方、中でも29質量%以下、その中でも28質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0109】
タンタル二次中和工程では、後のタンタル分散工程における分散性を高める観点から、前記一次反応液を、該一次反応液に含まれるフッ素に対してモル比で7.5以上のアンモニア、中でも8.0以上、その中でも8.5以上のアンモニアを含有するアンモニア水溶液に加えることがさらに好ましい。
【0110】
他方、廃液量が多くなる観点から、前記一次反応液を、該一次反応液に含まれるフッ素に対してモル比で10.0以下のアンモニアを含有するアンモニア水に加えることが好ましく、中でも9.5以下、その中でも9.0以下の割合でアンモニアを含有するアンモニア水に加えることがさらに好ましい。
【0111】
タンタル二次中和工程では、一次反応液をアンモニア水に加える際、1分以内に中和反応させるのが好ましい。すなわち、時間をかけて徐々に一次反応液を加えるのではなく、例えば一気に投入するなど、1分以内の時間で投入して中和反応させるのが好ましい。この際、一次反応液の添加時間は、1分以内とするのが好ましく、中でも30秒以内、その中でも10秒以内とするのがさらに好ましい。
【0112】
(タンタル洗浄工程)
タンタル二次中和で得られた二次反応液、中でもそのタンタル含有沈殿物には、不純物として、フッ化アンモニウムなどのフッ素化合物など、タンタル乃至タンタル酸の水和物乃至イオン及びアミン以外の不要成分が水中に存在するため、当該不要成分を除去するのが好ましい。
【0113】
洗浄方法、例えばフッ素化合物の除去方法は任意である。例えば、アンモニア水や純水を用いた逆浸透ろ過、限外ろ過、精密ろ過などの膜を用いたろ過による方法のほか、遠心分離、その他の公知の方法を採用することができる。
【0114】
(タンタル分散工程)
次に、タンタル洗浄工程で洗浄されて得たタンタル含有沈殿物、例えばフッ素除去して得られたタンタル含有沈殿物は、水などの分散媒を加えると共に、アミン、およびまたは、4級アンモニウム化合物を加えて、必要に応じて攪拌して反応を促進させることで、タンタル酸分散液を作製することができる。
【0115】
添加するアミンの種類としては、一次中和で用いることができるアミンと同様である。
アミンの添加量は、上述したように、アミンの量が多ければ、タンタル乃至タンタル酸の水に対する分散性乃至溶解性を高めることができる一方、アミンの量が多過ぎると、製膜性の障害になったり、触媒作用を阻害したりするなどの不具合を生じる可能性がある観点から、上述のように調整するのが好ましい。
【0116】
他方、4級アンモニウム化合物は、溶解性の観点から、タンタル含有沈殿物中の4級アンモニウム化合物濃度が40質量%以下になるように混合するのが好ましい。また、同様な観点から、タンタル含有沈殿物中の4級アンモニウム化合物濃度が0.1質量%以上になるように混合するのが好ましく、20質量%以上になるように混合するのがより好ましい。なお、4級アンモニウム化合物は、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)や水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)であるとより好ましい。
【0117】
タンタル一次中和工程、タンタル二次次中和工程、タンタル洗浄工程、及びタンタル分散工程は、常温で行えばよく、強制的に温度調整する必要は特にない。
【0118】
上述した各製造工程を経て、得られた4級アンモニウムを含有するチタン酸分散液と、モリブデン酸分散液と、タンタル酸分散液とを、チタンの含有量をTiO換算値で1と表したとき、モリブデンの含有量をモル比Mo/TiがMoO換算値で0.001-20となるように調製したモリブデン酸分散液と、モル比Ta/TiがTa換算値で0.001-0.5となるように調整したタンタル酸分散液とを混合した混合液を、液温を室温(25℃)で10分間撹拌することにより、混合液が得られる。
【0119】
ここで、チタン酸分散液、モリブデン酸分散液、及びタンタル酸分散液を混合して生成された混合液の製造方法の一例として、チタンアルコキシドと、タンタル酸分散液とを混合し、撹拌した後、モリブデン酸分散液を加えて、撹拌し、混合液を生成した後、水熱合成を行なうことにより、チタンの一部とタンタルが固溶した後、残ったチタンとモリブデンとが固溶することによって、その粒子径が小さくなり、ゲル化しにくくなる点で好ましい。
【0120】
さらに、チタン酸分散液、モリブデン酸分散液、及びタンタル酸分散液を混合して生成された混合液の製造方法の別例として、4級アンモニウム化合物を含有するチタン酸分散液と、モリブデン酸分散液と、及びタンタル酸分散液とを混合する際、4級アンモニウム化合物を含有するチタン酸分散液と、上述したように調製したタンタル酸分散液とを混合した中間混合液を、液温を室温(25℃)で10分間撹拌した後、中間混合液に、上述したように調製したモリブデン酸分散液を加えて、さらに液温を室温(25℃)で10分間撹拌することにより、混合液を得てもよい。
【0121】
このように、チタン酸分散液に対し、タンタル酸分散液を加えた後、モリブデン酸分散液を加えることにより、チタンの一部とタンタルが固溶した後、残ったチタンとモリブデンとが固溶することによって、その粒子径が小さくなり、ゲル化しにくくなる点で好ましい。
【0122】
そして、上述したチタン酸分散液、モリブデン酸分散液、及びタンタル酸分散液を混合して生成された混合液と基材とを混合し、乾燥することにより、当該基材の表面に当該混合液による被覆層を形成する工程は、以下の通りである。
【0123】
具体的には、上述したチタン酸分散液、モリブデン酸分散液、及びタンタル酸分散液を混合して生成された混合液を、必要に応じて、例えば2μm孔径のフィルタで濾過した後、基材と混合する。この混合方法は、バッチ式、又は連続式の何れの方法も可能であるが、被覆層の量を制御しやすい観点からバッチ式混合の方が好ましい。生産効率の上では混合と乾燥を同時に行うことが出来る円錐型リボン混合/乾燥機(大川原製作所製:リボコーン)が特に好ましいが、混合液と基材を混ぜた後に大気雰囲気若しくは減圧雰囲気にて乾燥する方法でも可能である。
【0124】
バッチ式の製造条件として、混合液と基材とを任意の割合で10分-1時間混合し、乾燥温度:80℃-180℃、圧力:10-4Pa-1.1MPa、乾燥時間:10分間-36時間で、混合液と基材とを混合した混合物を乾燥させる。そして、乾燥した当該混合物を粉砕することにより、当該基材の表面に混合液による被覆層が形成された本発明の複合化粉末が得られる。なお、当該混合物を乾燥させる条件は、乾燥温度は120℃であると好ましく、圧力は1.01MPaであると好ましく、撹拌しながら乾燥させると好ましい。
【0125】
ここで、当該基材としては、上述した通り、マイカや、ガラスであるとより好ましい。さらに、基材の形状は、粉末状であればよく、フレーク状であると好ましい。また、基材のレーザ回折・散乱式粒度分布測定法による積算体積50%の粒径(D50)が1μm以上200μm以下であると好ましい。
【0126】
また、本発明の複合化膜の製造方法は、上述した本発明の複合化粉末の製造方法により、生成された複合化粉末を、母材上に塗布し、乾燥することにより、複合化粉末を含有する膜を形成する工程と、を有することを特徴とする。なお、母材としては、建築外壁、学校・病院・オフィス・居室等内壁、床、ドアノブ、手すり、つり革などが挙げられる。
【0127】
上述した複合化粉末の製造方法により生成された複合化粉末と、水、有機溶媒、又は樹脂とを混合し、撹拌することにより、本発明の複合化粉末を含有するスラリーが得られる。本発明の複合化粉末を含有するスラリーを、ペイントローラー、刷毛、噴射装置等を用いて母材上に塗布する。そして、本発明の複合化粉末を含有するスラリーが塗布された母材を、大物であれば大気中にて自然乾燥させることにより、また小物であれば静置炉内に載置し、室温(25℃)で3時間に亘って乾燥することにより、本発明の複合化膜が得られる。また、本発明の複合化粉末が塗布された母材を静置炉内に載置し、110℃に加熱し、6時間に亘って乾燥し、又は600℃に加熱し、3時間に亘って焼成してもよい。
【0128】
本発明の複合化粉末と混合する水として、一般的な水道水(イオン成分を含む。)、イオン交換水、純水、及び超純水が挙げられる。本発明の複合化粉末を純水と混合した場合、本発明の複合化粉末を含有するスラリーは、有機溶媒特有の臭気がなく、有機溶媒と比して、ゆっくりと揮発することにより、表面が滑らかな塗膜が形成されやすい点で好ましい。
【0129】
本発明の複合化粉末と混合する有機溶媒として、水溶性有機溶媒及び非水溶性有機溶媒の双方を用いることができる。水溶性有機溶媒を用いる場合には、水と混合してなる混合溶媒としても用いることができる。具体的には、水溶性有機溶媒として、例えばモノアルコール、多価アルコール、ケトン、エステル、アミン、チオール、ピロリドン系等といった水と相溶できる有機溶媒を用いることができる。ここで、ケトンとして、例えばアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどが挙げられる。
【0130】
一方、非水溶性有機溶媒として、例えば飽和又は不飽和の炭化水素系化合物やハロゲン化炭化水素とその環状化合物、長鎖のモノアルコールや多価アルコール、及び芳香族系化合物等に代表される水と相溶しない有機溶媒を用いることができる。これらの有機溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0131】
本発明の複合化粉末と混合する樹脂として、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、及び二液混合硬化性樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂の例として、ポリエチレンや、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートや、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル酸、又はそのエステルや、ポリメタクリル酸、又はそのエステル等のポリアクリル酸系樹脂、ポリスチレンや、ポリ塩化ビニル等のポリビニル系樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリウレタン等のウレタン樹脂などが挙げられる。
【0132】
熱硬化性樹脂の例として、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。さらに、電離放射線硬化性樹脂の例として、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエステルアルキド樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、ポリマーだけでなく、オリゴマー、モノマーも使用することができる。また、二液混合硬化性樹脂の例として、エポキシ樹脂が挙げられる。
【発明の効果】
【0133】
本発明の複合化粉末は、明度値が高く、分散性と塗工性に優れ、高い光触媒性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0134】
図1】実施例1~10、及び比較例1~3に係る複合化粉末の物性値及び測定結果の一覧表である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0135】
以下、本発明に実施形態の複合化粉末について、以下の実施例によりさらに説明する。但し、以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
【0136】
先ず、本発明に係る複合化粉末を、実施例1~10により説明する。
【0137】
(実施例1)
実施例1に係る複合化粉末は、後述するように調製したチタン酸分散液、モリブデン酸分散液、及びタンタル酸分散液を混合し得られた混合液と基材と混合し、乾燥することにより、当該基材の表面に当該混合液による被覆層が形成された。
【0138】
先ず、チタン酸分散液は、チタンアルコキシドを用いた。チタンアルコキシドとして、チタンテトライソプロポキシド(富士フィルム和光純薬製)を用いた。
【0139】
次に、モリブデン酸分散液は、例えば、以下に記す工程により、得られた。
【0140】
三酸化モリブデン100gを55質量%硫酸水溶液200gに溶解させ、イオン交換水を添加することによって、モリブデンをMoO換算で100g/L含有する硫酸モリブデン水溶液を得た。この硫酸モリブデン水溶液200mLを、アンモニア水(NH濃度25質量%)1Lに、1分間未満の時間で添加して(NH/MoOモル比=105.66、NH/SO 2-モル比=65.56)、反応液(pH11)を得た。この反応液はモリブデン酸化合物水和物のスラリー、言い換えればモリブデン含有沈殿物のスラリーであった。
【0141】
次に、この反応液を、遠心分離機を用いてデカンテーションし、導電率が500μS/cm以下になるまで洗浄して、硫黄分が除去されたモリブデン含有沈殿を得た。この際、洗浄液にはアンモニア水を用いた。
【0142】
さらに、硫黄分が除去されたモリブデン含有沈殿を純水で希釈することにより、硫黄分が除去されたモリブデン含有沈殿スラリーを得た。硫黄分が除去されたモリブデン含有沈殿スラリーの一部を110℃で24時間乾燥後、1,000℃で4時間焼成することでMoOを生成し、その重量から硫黄分が除去されたモリブデン含有沈殿スラリーに含まれるMoO濃度を算出した。
【0143】
そして、純水で希釈した硫黄分が除去されたモリブデン含有沈殿スラリーを、最終的な混合物のモリブデン濃度がMoO換算で10質量%となるように、2質量%メチルアミンと純水とを混合し、この混合物を撹拌しながら、液温が室温下(25℃)に維持しながら1時間保持し、モリブデン酸水溶液を得た。
【0144】
さらに、タンタル酸分散液は、例えば、以下に記す工程により、得られた。
【0145】
三井金属鉱業社製水酸化タンタル137.9g(Ta濃度66質量%)を55質量%フッ化水素酸水溶液120gに溶解させ、イオン交換水を849mL添加することによって、フッ化タンタル水溶液(Ta濃度9.1質量%)を得た。
【0146】
このフッ化タンタル水溶液100gを、50質量%ジメチルアミン100mLに、1分未満の時間をかけて添加した。その後、15分撹拌し、一次反応液(pH11)を得た。この一次反応液を、アンモニア水(NH濃度25質量%)460mLに、1分未満の時間をかけて添加し、二次反応液(pH12)を得た。この二次反応液はタンタル酸化合物水和物のスラリー、言い換えるとタンタル含有沈殿物のスラリーであった。
【0147】
次に、この二次反応液を、遠心分離機を用いてデカンテーションし、上澄み液のフリーフッ素量が100mg/L以下になるまで洗浄して、フッ素を除去したタンタル含有沈殿物を得た。この際、洗浄液にはアンモニア水を用いた。
【0148】
このタンタル含有沈殿物の一部を、1,000℃で4時間焼成することでTaを生成し、その質量からタンタル含有沈殿物に含まれるTa濃度を算出した。Ta濃度は38質量%だった。
【0149】
このタンタル含有沈殿物11.8gに純水29.2mLと50質量%ジメチルアミンを9g添加し、液温を室温(25℃)で保持し、24時間撹拌することにより、タンタル酸分散液を得た。
【0150】
上述したチタン酸分散液、モリブデン酸分散液、及びタンタル酸分散液を、チタン酸分散液をTiO換算で1molに対して、モリブデン酸分散液をMoO換算で0.025molと、タンタル酸分散液をTa換算で0.02molとなるように調製した混合液を、オートグレーブにて、加熱温度180℃、加熱時間12時間、加圧圧力1.05MPaの条件下で水熱合成し、半透明ゾルの混合液(Ti-Mo-Ta)得た。
【0151】
一方、基材は、フレーク状のマイカ粉とし、その粒径は、20μmであった。
【0152】
基材と、被覆層の重量比率が20質量%になるように採取した透明ゾルの混合液とを、ビーカー内で10分間撹拌し、混合した。その後、当該基材を含有する混合液を、加熱温度140℃に維持した静置乾燥機にて12時間乾燥し、乾燥した粉末を得た。
【0153】
そして、乾燥した粉末を粉砕することにより、当該基材の表面に、当該混合液による被覆層が形成された実施例1に係る複合化粉末を得た。また、実施例1に係る複合化粉末の被覆層の重量比率は20質量%であった。実施例1に係る複合化粉末の体積基準の積算分率50%の粒径(D50)は20μmであった。
【0154】
(実施例2)
実施例2に係る複合化粉末は、基材として、その粒径が40μmであるフレーク状のガラス粉を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る複合金属酸化合物を得た。また、実施例2に係る複合化粉末の被覆層の重量比率は20質量%であった。実施例2に係る複合化粉末の体積基準の積算分率50%の粒径(D50)は40μmであった。
【0155】
(実施例3)
実施例3に係る複合化粉末は、タンタル酸分散液を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係る複合化粉末を得た。また、実施例3に係る複合化粉末の被覆層の重量比率は20質量%であった。実施例3に係る複合化粉末の体積基準の積算分率50%の粒径(D50)は20μmであった。
【0156】
(実施例4)
実施例4に係る複合化粉末は、タンタル酸分散液を添加しなかったこと、及び基材として、その粒径が80μmであるフレーク状のガラス粉を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4に係る複合化粉末を得た。また、実施例4に係る複合化粉末の被覆層の重量比率は20質量%であった。実施例4に係る複合化粉末の体積基準の積算分率50%の粒径(D50)は80μmであった。
【0157】
(実施例5)
実施例5に係る複合化粉末は、チタン酸分散液、モリブデン酸分散液、及びタンタル酸分散液を混合する際、モリブデン酸分散液をMoO換算で0.1molとなるように調製したこと、及びタンタル酸分散液をTa換算で0.05molとなるように調製したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5に係る複合化粉末を得た。また、実施例5に係る複合化粉末の被覆層の重量比率は20質量%であった。実施例5に係る複合化粉末の体積基準の積算分率50%の粒径(D50)は20μmであった。
【0158】
(実施例6)
実施例6に係る複合化粉末は、チタン酸分散液、モリブデン酸分散液、及びタンタル酸分散液を混合する際、リブデン酸分散液をMoO換算で0.001molとなるように調製したこと、及びタンタル酸分散液をTa換算で0.001molとなるように調製したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例6に係る複合化粉末を得た。また、実施例6に係る複合化粉末の被覆層の重量比率は20質量%であった。実施例6に係る複合化粉末の体積基準の積算分率50%の粒径(D50)は20μmであった。
【0159】
(実施例7)
実施例7に係る複合化粉末は、透明ゾルの混合液を、被覆層の重量比率が25質量%になるように採取したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例7に係る複合化粉末を得た。実施例7に係る複合化粉末の体積基準の積算分率50%の粒径(D50)は20μmであった。
【0160】
(実施例8)
実施例8に係る複合化粉末は、透明ゾルの混合液を、被覆層の重量比率が10質量%になるように採取したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例8に係る複合化粉末を得た。実施例8に係る複合化粉末の体積基準の積算分率50%の粒径(D50)は20μmであった。
【0161】
(実施例9)
実施例9に係る複合化粉末は、後述するように調製したチタン酸分散液、モリブデン酸分散液、及びタンタル酸分散液を混合し得られた混合液と基材と混合し、乾燥することにより、当該基材の表面に当該混合液による被覆層が形成された。
【0162】
実施例9で用いたチタン酸分散液は、例えば、以下に記す工程により、得られた。
【0163】
硫酸チタニル33.3g(テイカ社製、TiO濃度33.3質量%、硫酸濃度51.1質量%)をイオン交換水66.7gに加え、90℃以上で1時間静置して溶解させ、硫酸チタニル水溶液(チタン濃度(TiO換算)11質量%、硫酸17質量%、pH1以下)を得た。
【0164】
この硫酸チタニル水溶液100gを、25質量%アンモニア水2,200g(硫酸チタニル水溶液中の硫酸1モルに対して18.9モルのアンモニア量)に、1分未満の時間をかけて添加した。その後、15分撹拌し、中和反応液(pH12)を得た。この中和反応液はチタン含有物のスラリー、言い換えるとチタン含有沈殿物のスラリーであった。
【0165】
次に、この中和反応液を、遠心分離機を用いてデカンテーションし、上澄み液の硫酸が100mg/L以下になるまで洗浄して、硫酸を除去したチタン含有沈殿物を得た。この際、洗浄液にはアンモニア水を用いた。
【0166】
このチタン含有沈殿物の一部を、1,000℃で4時間焼成することでTiOを生成し、その質量からチタン含有沈殿物に含まれるTiO濃度を算出した。TiO濃度は11.0質量%だった。
【0167】
そして、このチタン含有沈殿物45gと、水酸化テトラメチルアンモニウム5水和物(TMAH濃度50質量%)5g(チタン含有沈殿物中のTi1モルに対して0.443モル)と混合し、ペイントシェイカーで24時間振り混ぜることにより、実施例9で用いたチタン酸水溶液を得た。なお、実施例9で用いたチタン酸水溶液と混合するモリブデン酸分散液、及びタンタル酸分散液は、実施例1で用いたモリブデン酸分散液、及びタンタル酸分散液と同一のものであるから、説明は省略する。
【0168】
上述した実施例9で用いたチタン酸水溶液、モリブデン酸分散液、及びタンタル酸分散液を、当該チタン酸分散液をTiO換算で1molに対して、モリブデン酸分散液をMoO換算で20molと、タンタル酸分散液をTa換算で0.05molとなるように調製した混合液を得た。
【0169】
一方、基材は、フレーク状のガラス粉とし、その粒径は、80μmであった。
【0170】
基材と、被覆層の重量比率が20質量%になるように採取した透明ゾルの混合液とを、ビーカー内で10分間撹拌し、混合した。その後、当該基材を含有する混合液を、加熱温度140℃に維持した静置乾燥機にて12時間乾燥し、乾燥した粉末を得た。また、実施例9に係る複合化粉末の被覆層の重量比率は20質量%であった。実施例9に係る複合化粉末の体積基準の積算分率50%の粒径(D50)は80μmであった。
【0171】
(実施例10)
実施例10に係る複合化粉末は、実施例9で用いたチタン酸水溶液、モリブデン酸分散液、及びタンタル酸分散液を、当該チタン酸分散液をTiO換算で1molに対して、モリブデン酸分散液をMoO換算で0.05molと、タンタル酸分散液をTa換算で0.5molとなるように調製したこと以外は、実施例9と同様にして、実施例10に係る複合化粉末を得た。また、実施例10に係る複合化粉末の被覆層の重量比率は20質量%であった。実施例10に係る複合化粉末の体積基準の積算分率50%の粒径(D50)は80μmであった。
【0172】
(比較例1)
比較例1に係る複合化粉末は、基材を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る複合化粉末を得た。なお、比較例1に係る複合化粉末は、基材を有するものではなく、チタン、モリブデン、及びタンタルを含む複合金属酸化物を含油する分散液である。
【0173】
(比較例2)
比較例2に係る複合化粉末は、モリブデン酸分散液を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2に係る複合化粉末を得た。また、比較例2に係る複合化粉末の被覆層の重量比率は20質量%であった。比較例2に係る複合化粉末の体積基準の積算分率50%の粒径(D50)は20μmであった。
【0174】
(比較例3)
比較例3に係る複合金属酸化合物は、タンタル酸分散液を添加しなかったこと以外は、実施例10と同様にして、比較例3に係る複合化粉末を得た。また、比較例3に係る複合化粉末の被覆層の重量比率は20質量%であった。比較例3に係る複合化粉末の体積基準の積算分率50%の粒径(D50)は80μmであった。
【0175】
そして、実施例1~10、及び比較例1~3に係る複合化粉末について、次のような物性を測定した。測定した物性値の測定方法は、以下の通りである。
【0176】
〈元素分析〉
必要に応じて試料を希塩酸で適度に希釈し、ICP発光分光分析(アジレント・テクノロジー社製:AG-5110)により、TiO換算のTi重量分率に加え、MoO換算のMo重量分率、Ta換算のTa重量分率を測定した。
【0177】
〈粒子径測定〉
実施例1~10、及び比較例1~3に係る複合化粉末の濃度が0.5%濃度程度になるように水で希釈することにより、計測用サンプルを調製し、当該計測用サンプルに対して、前述の超音波を用いた分散処理を行った。そして、レーザ回折・散乱法粒度分布測定装置(マイクロトラックベル株式会社製:MT3300EXII)を用いて、体積基準の積算分率50%の粒径(D50)を測定した。
【0178】
〈光触媒性能評価試験(可視光下)〉
純水100g中に富士フィルム和光純薬社製メチレンブルー3水和物10gと、実施例1~10、及び比較例1~3に係る複合化粉末300mgを添加し作製したサンプル溶液を撹拌子により撹拌させながら、三永電機製作所社製Solar Simulatorの照射口にネックスフィルム社製U4-100CLを貼り、紫外線領域である400nm以下をカットしたXeライト(照度87,600ルクス)を60分間照射した。そして、メチレンブルー吸収ピーク665nmにおける光照射前後での吸光度減少率(%)を下記の式(4)により算出した。算出した吸光度減少率(%)が30%以上であれば「○○(Very Good)」と、吸光度減少率(%)が10%以上30%未満であれば「○(Good)」と、吸光度減少率(%)が10%未満であれば「×(Bad)」と評価した。
【0179】
【数2】
【0180】
〈光触媒性能評価試験(暗所下)〉
当該サンプル溶液は、光触媒性能評価試験(可視光下)と同様に作製し、暗室下で60分間撹拌した後、メチレンブルー吸収ピーク665nmにおける撹拌前後での吸光度減少率(%)を評価した。吸光度減少率(%)が10%以上であれば「○○(Very Good)」と、吸光度減少率(%)が5%以上10%未満であれば「○(Good)」と、吸光度減少率(%)が5%未満であれば「×(Bad)」と評価した。
【0181】
〈塗膜時の分散性試験〉
実施例1~10、及び比較例1~3に係る複合化粉末5gと、テルピネオール5gとを攪拌機脱泡機(THINKY社製:自転・公転方式ミキサーあわとり練り太郎AR-100)にて、3分間混合した。その後、100μmのグラインドゲージを用いて分散性評価を行った。50μm以上の粗粒がなければ「〇(Good)」と、50μm以上の粗粒があれば「×(Bad)」と評価した。
【0182】
〈L測定〉
実施例1~10、及び比較例1~3に係る複合化粉末をPET製のフィルム上にバーコーターを用いて塗布し、形成した塗膜試料に対し、色彩色差計(コニカミノルタ社製:CR-300)を用い、JIS Z 8722:2009に準拠して、CIE1976(L)色空間におけるL値を求めた。また、L値が80以上であれば「○○(Very Good)」と、L値が70以上80未満であれば「○(Good)」と、L値が70未満であれば「×(Bad)」と評価した。
【0183】
上述した測定方法により、測定された物性値を図1に示す。実施例1~10に係る複合化粉末は、チタンの含有量をTiO換算値で1(mol)と表したとき、モリブデンの含有量は、モル比Mo/TiがMoO換算値で0.001-20であり、またタンタルの含有量は、モル比Ta/TiがTa換算値で0.001-0.5であると、可視光下だけでなく、暗所下であっても光触媒性能に優れるものであった。
【0184】
また、実施例1~10に係る複合化粉末は、L表色系におけるL値が70以上であると、その明度値が高かった。
【0185】
実施例1~10に係る複合化粉末は、可視光下・暗所下における吸光度減少率(%)、分散性、及びL表色系におけるL値の各評価において、「×(Bag)」の評価がついた項目が1つもないことから、総合評価「〇(Good)」と評価した。一方、比較例1~3に係る複合化粉末は、可視光下・暗所下における吸光度減少率(%)、分散性、及びL表色系におけるL値の各評価において、「×(Bag)」の評価がついた項目が1つ以上あることから、総合評価「×(Bad)」と評価した。
【0186】
本明細書開示の発明は、各発明や実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含む。
【産業上の利用可能性】
【0187】
本発明に係る複合化粉末は、明度値が高く、分散性と塗工性に優れ、高い光触媒性能を有することから、光触媒として建材や、塗装材の用途に好適である。また、本発明に係る複合化粉末は、対候性を有し、コーティング回数を大幅に減らすことが可能であるため、廃棄物の発生を抑えられるという点で、持続可能な生産消費形態を作ることができる。さらに、本発明に係る複合化粉末は、その製造工程において、高い加熱温度にする必要がなく、消費エネルギー量を低く抑えることができる。
図1