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特開2024-29879昇圧型DC/DCコンバータおよびそれを備えた液晶表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029879
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】昇圧型DC/DCコンバータおよびそれを備えた液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20240229BHJP
   G02F 1/133 20060101ALN20240229BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/155 F
G02F1/133 520
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132321
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104695
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 明宏
(74)【代理人】
【識別番号】100148459
【弁理士】
【氏名又は名称】河本 悟
(72)【発明者】
【氏名】益田 昭宏
【テーマコード(参考)】
2H193
5H730
【Fターム(参考)】
2H193ZA04
2H193ZF06
5H730AS04
5H730BB14
5H730BB57
5H730DD04
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD31
5H730FG07
5H730FG21
(57)【要約】
【課題】負荷が軽い時に出力電圧の電圧ドロップが生じても負荷が軽い状態から負荷が重い状態に変化した後に充分な大きさの出力電圧を得ることのできる従来よりも低消費電力の昇圧型DC/DCコンバータを実現する。
【解決手段】ソースドライバに供給するアナログ電源電圧AVDDを生成するための昇圧型DC/DCコンバータに含まれるスイッチング制御回路は、有効映像期間PAから垂直帰線期間PBに切り替わることによって動作モードが電流連続モードから電流不連続モードに変化した時点から垂直帰線期間PBから有効映像期間PAに切り替わる時点までの少なくとも一部の期間である第1所定期間に動作モードが電流連続モードとなるように、インダクタ電流を変化させるためのスイッチング素子の制御端子にスイッチングパルスSWPを与える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から与えられる電源電圧を昇圧する昇圧型DC/DCコンバータであって、
前記電源電圧が与えられる入力端子と、
一端が前記入力端子に接続されたインダクタと、
制御端子と、前記インダクタの他端に接続された第1導通端子と、接地された第2導通端子とを有するスイッチング素子と、
前記スイッチング素子のスイッチング周波数を制御する制御信号を前記スイッチング素子の制御端子に与えるスイッチング制御回路と、
一端が接地された容量素子と、
前記インダクタの他端側から前記容量素子の他端側へのみ電流を流す整流素子と、
前記容量素子の他端に接続された、昇圧後の電源電圧を出力する出力端子と
を備え、
前記スイッチング制御回路は、重負荷期間から軽負荷期間に切り替わることによって動作モードが電流連続モードから電流不連続モードに変化した時点から前記軽負荷期間から前記重負荷期間に切り替わる時点までの少なくとも一部の期間である第1所定期間に動作モードが電流連続モードとなるように、前記制御信号を前記スイッチング素子の制御端子に与えることを特徴とする、昇圧型DC/DCコンバータ。
【請求項2】
前記第1所定期間は、1つの連続する期間であることを特徴とする、請求項1に記載の昇圧型DC/DCコンバータ。
【請求項3】
前記第1所定期間は、複数の部分期間からなることを特徴とする、請求項1に記載の昇圧型DC/DCコンバータ。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の昇圧型DC/DCコンバータと、
複数の映像信号線と、複数の走査信号線と、前記複数の映像信号線と前記複数の走査信号線との交差点にそれぞれ対応して配置された複数の画素形成部とを含む表示部と、
前記複数の映像信号線を駆動する映像信号線駆動回路と、
前記複数の走査信号線を駆動する走査信号線駆動回路と、
前記映像信号線駆動回路、前記走査信号線駆動回路、および前記スイッチング制御回路の動作を制御するタイミング制御回路と
を備えることを特徴とする、液晶表示装置。
【請求項5】
前記出力端子は、前記映像信号線駆動回路に接続されていることを特徴とする、請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
1フレーム期間は、前記映像信号線駆動回路が前記複数の映像信号線に有効な映像信号を印加するとともに前記走査信号線駆動回路が前記複数の走査信号線を順次に選択する有効映像期間と、前記走査信号線駆動回路による走査信号線の選択が停止される垂直帰線期間とからなり、
前記軽負荷期間は、前記垂直帰線期間であって、
前記重負荷期間は、前記有効映像期間であることを特徴とする、請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記タイミング制御回路は、
前記第1所定期間を特定するための設定値を保持する設定レジスタと、
前記設定レジスタに保持されている前記設定値に応じたパルスを含むイネーブル信号を生成するイネーブル信号生成回路と
を含み、
前記スイッチング制御回路は、前記イネーブル信号に含まれるパルスに基づいて、前記第1所定期間に動作モードが電流連続モードとなるように、前記制御信号を前記スイッチング素子の制御端子に与えることを特徴とする、請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記設定レジスタは、前記設定値として、前記イネーブル信号に含まれるパルスの立ち上がり時点を特定する値と、前記イネーブル信号に含まれるパルスのパルス幅を特定する値とを保持することを特徴とする、請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記スイッチング制御回路は、前記昇圧後の電源電圧が閾値を超えた時点から予め定められた長さの期間である第2所定期間と前記イネーブル信号に含まれるパルスが生じている期間とが重複している期間を前記第1所定期間とすることを特徴とする、請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記スイッチング制御回路は、前記イネーブル信号に含まれるパルスが生じている期間を前記第1所定期間とすることを特徴とする、請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記スイッチング制御回路には、制御モードが第1モードであるか第2モードであるかを示すモード信号が与えられ、
前記制御モードが前記第1モードであることを前記モード信号が示していれば、前記スイッチング制御回路は、前記昇圧後の電源電圧が閾値を超えた時点から予め定められた長さの期間である第2所定期間と前記イネーブル信号に含まれるパルスが生じている期間とが重複している期間を前記第1所定期間とし、
前記制御モードが前記第2モードであることを前記モード信号が示していれば、前記スイッチング制御回路は、前記イネーブル信号に含まれるパルスが生じている期間を前記第1所定期間とすることを特徴とする、請求項7に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、昇圧型DC/DCコンバータに関し、特に、液晶表示装置においてソースドライバ(映像信号線駆動回路)に供給する電源電圧を生成するための昇圧型DC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯用の電子機器に用いられている液晶表示装置では、液晶の駆動に必要な電源電圧を生成するために、例えば昇圧型DC/DCコンバータを含む電源回路が使用されている。その昇圧型DC/DCコンバータでは、例えば、3.3Vのシステム電源電圧を昇圧することによって、ソースドライバに供給するための10.4Vのアナログ電源電圧が生成される。
【0003】
一般に、DC/DCコンバータは、負荷が重い時には、インダクタに連続的に電流が流れる電流連続モードで動作し、負荷が軽い時には、インダクタに電流が流れない期間が生じる電流不連続モードで動作する。液晶表示装置に使用される昇圧型DC/DCコンバータについては、典型的には、有効映像期間(有効垂直走査期間)には負荷が重くなるので電流連続モードで動作し、垂直帰線期間には負荷が軽くなるので電流不連続モードで動作する。
【0004】
ところで、DC/DCコンバータの出力電圧に関しては、いかにしてリップル電圧を小さくするかが課題となっている。そこで、特開2013-229977号公報には、DC/DCコンバータの出力電圧におけるリップル電圧を許容範囲内に制御しながら軽負荷時の電力変換効率を改善することのできる画像形成装置が開示されている。その画像形成装置では、「リップル電圧のピークが下限電圧と上限電圧との間を外れるとスイッチング周波数を上げ、リップル電圧のピークが下限電圧と上限電圧との間に存在するとスイッチング周波数を下げる」という制御が行われる。
【0005】
また、特開2020-155203号公報にも、出力電圧が設定範囲内の電圧となるように制御を行う技術が開示されている。その技術によれば、DC/DCコンバータから電源電圧が供給される光源装置で、発光素子を過電流から保護するために、駆動停止状態において光源回路内の所定の抵抗の両端の電位差である第1電位差が所定値よりも大きくなれば、DC/DCコンバータからの電源電圧の供給が停止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-229977号公報
【特許文献2】特開2020-155203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
昇圧型DC/DCコンバータを用いた液晶表示装置において、垂直帰線期間(昇圧型DC/DCコンバータが電流不連続モードで動作している期間)中に、昇圧型DC/DCコンバータの出力電圧(すなわち、ソースドライバに供給されるアナログ電源電圧)の電圧値が大きく低下することがある。なお、このような現象を以下「電圧ドロップ」という。垂直帰線期間中のこのような電圧ドロップが発生すると、その電圧ドロップの発生タイミングによっては、液晶を駆動するのに充分な大きさのアナログ電源電圧が垂直帰線期間から有効映像期間に切り替わった直後に得られないことがある。これについて、以下に説明する。
【0008】
図9には、昇圧型DC/DCコンバータにおいてインダクタに流れる電流を変化させるために設けられているスイッチング素子の制御端子に与えられるスイッチングパルスSWPの波形および当該昇圧型DC/DCコンバータの出力電圧であるアナログ電源電圧AVDDの波形を示している。なお、スイッチングパルスSWPについては図10で符号91を付した部分に示すように表しているが、実際には、スイッチングパルスSWPを含む制御信号SCの波形は図10で符号92を付した部分に示すような波形である。また、図9では、符号PAは有効映像期間を表し、符号PBは垂直帰線期間を表している。
【0009】
図9に示す例では、期間の切り替わり直後を除いて、有効映像期間PAには比較的高い周波数でスイッチングパルスSWPが発生し、垂直帰線期間PBには比較的低い周波数でスイッチングパルスSWPが発生している。これにより、昇圧型DC/DCコンバータは、有効映像期間PAには電流連続モードで動作し、垂直帰線期間PBには電流不連続モードで動作する。ここで、図9に示す例では、垂直帰線期間PB中の時点t91からアナログ電源電圧AVDDの電圧値が低下している。これに起因して、有効映像期間PA中の時点t92まで、アナログ電源電圧AVDDの電圧値は所望の電圧値よりも低くなっている。すなわち、垂直帰線期間PBから有効映像期間PAに切り替わった直後には、液晶を駆動するのに充分な大きさのアナログ電源電圧AVDDが得られていない。これは、表示品位の低下を引き起こす。
【0010】
図11に、より実際的な波形変化を示す。図11に関し、符号Vsyncは垂直同期信号を表し、符号Hsyncは水平同期信号を表している。なお、図11に示す例では、期間の切り替わりに同期してスイッチングパルスSWPの発生周波数が変化している。この例では、垂直帰線期間PB中に、アナログ電源電圧AVDDの電圧値が上昇した後に低下している。これにより、有効映像期間PAの開始直後には、比較的高い周波数でスイッチングパルスSWPが発生しているにも関わらず、アナログ電源電圧AVDDの電圧値は所望の電圧値よりも大きく低下している。従って、この例においても表示品位が低下する。
【0011】
以上に鑑み、液晶を駆動するのに実際に必要な電圧値よりも高い電圧値(例えば、実際に必要な電圧値よりも0.1Vだけ高い電圧値)のアナログ電源電圧AVDDが出力電圧として出力されるよう、昇圧型DC/DCコンバータの制御が行われている。しかしながら、このような制御は消費電力の増大を引き起こしている。
【0012】
そこで、以下の開示は、負荷が軽い時に出力電圧の電圧ドロップが生じても負荷が軽い状態から負荷が重い状態に変化した後に充分な大きさの出力電圧を得ることのできる従来よりも低消費電力の昇圧型DC/DCコンバータを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明のいくつかの実施形態による昇圧型DC/DCコンバータは、外部から与えられる電源電圧を昇圧する昇圧型DC/DCコンバータであって、
前記電源電圧が与えられる入力端子と、
一端が前記入力端子に接続されたインダクタと、
制御端子と、前記インダクタの他端に接続された第1導通端子と、接地された第2導通端子とを有するスイッチング素子と、
前記スイッチング素子のスイッチング周波数を制御する制御信号を前記スイッチング素子の制御端子に与えるスイッチング制御回路と、
一端が接地された容量素子と、
前記インダクタの他端側から前記容量素子の他端側へのみ電流を流す整流素子と、
前記容量素子の他端に接続された、昇圧後の電源電圧を出力する出力端子と
を備え、
前記スイッチング制御回路は、重負荷期間から軽負荷期間に切り替わることによって動作モードが電流連続モードから電流不連続モードに変化した時点から前記軽負荷期間から前記重負荷期間に切り替わる時点までの少なくとも一部の期間である第1所定期間に動作モードが電流連続モードとなるように、前記制御信号を前記スイッチング素子の制御端子に与える。
【0014】
(2)また、本発明のいくつかの実施形態による昇圧型DC/DCコンバータは、上記(1)の構成を含み、
前記第1所定期間は、1つの連続する期間である。
【0015】
(3)また、本発明のいくつかの実施形態による昇圧型DC/DCコンバータは、上記(1)の構成を含み、
前記第1所定期間は、複数の部分期間からなる。
【0016】
(4)また、本発明のいくつかの実施形態による液晶表示装置は、
上記(1)から上記(3)までのいずれかの構成の昇圧型DC/DCコンバータと、
複数の映像信号線と、複数の走査信号線と、前記複数の映像信号線と前記複数の走査信号線との交差点にそれぞれ対応して配置された複数の画素形成部とを含む表示部と、
前記複数の映像信号線を駆動する映像信号線駆動回路と、
前記複数の走査信号線を駆動する走査信号線駆動回路と、
前記映像信号線駆動回路、前記走査信号線駆動回路、および前記スイッチング制御回路の動作を制御するタイミング制御回路と
を備える。
【0017】
(5)また、本発明のいくつかの実施形態による液晶表示装置は、上記(4)の構成を含み、
前記出力端子は、前記映像信号線駆動回路に接続されている。
【0018】
(6)また、本発明のいくつかの実施形態による液晶表示装置は、上記(4)の構成を含み、
1フレーム期間は、前記映像信号線駆動回路が前記複数の映像信号線に有効な映像信号を印加するとともに前記走査信号線駆動回路が前記複数の走査信号線を順次に選択する有効映像期間と、前記走査信号線駆動回路による走査信号線の選択が停止される垂直帰線期間とからなり、
前記軽負荷期間は、前記垂直帰線期間であって、
前記重負荷期間は、前記有効映像期間である。
【0019】
(7)また、本発明のいくつかの実施形態による液晶表示装置は、上記(4)の構成を含み、
前記タイミング制御回路は、
前記第1所定期間を特定するための設定値を保持する設定レジスタと、
前記設定レジスタに保持されている前記設定値に応じたパルスを含むイネーブル信号を生成するイネーブル信号生成回路と
を含み、
前記スイッチング制御回路は、前記イネーブル信号に含まれるパルスに基づいて、前記第1所定期間に動作モードが電流連続モードとなるように、前記制御信号を前記スイッチング素子の制御端子に与える。
【0020】
(8)また、本発明のいくつかの実施形態による液晶表示装置は、上記(7)の構成を含み、
前記設定レジスタは、前記設定値として、前記イネーブル信号に含まれるパルスの立ち上がり時点を特定する値と、前記イネーブル信号に含まれるパルスのパルス幅を特定する値とを保持する。
【0021】
(9)また、本発明のいくつかの実施形態による液晶表示装置は、上記(7)の構成を含み、
前記スイッチング制御回路は、前記昇圧後の電源電圧が閾値を超えた時点から予め定められた長さの期間である第2所定期間と前記イネーブル信号に含まれるパルスが生じている期間とが重複している期間を前記第1所定期間とする。
【0022】
(10)また、本発明のいくつかの実施形態による液晶表示装置は、上記(7)の構成を含み、
前記スイッチング制御回路は、前記イネーブル信号に含まれるパルスが生じている期間を前記第1所定期間とする。
【0023】
(11)また、本発明のいくつかの実施形態による液晶表示装置は、上記(7)の構成を含み、
前記スイッチング制御回路には、制御モードが第1モードであるか第2モードであるかを示すモード信号が与えられ、
前記制御モードが前記第1モードであることを前記モード信号が示していれば、前記スイッチング制御回路は、前記昇圧後の電源電圧が閾値を超えた時点から予め定められた長さの期間である第2所定期間と前記イネーブル信号に含まれるパルスが生じている期間とが重複している期間を前記第1所定期間とし、
前記制御モードが前記第2モードであることを前記モード信号が示していれば、前記スイッチング制御回路は、前記イネーブル信号に含まれるパルスが生じている期間を前記第1所定期間とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明のいくつかの実施形態による昇圧型DC/DCコンバータによれば、重負荷期間から軽負荷期間に切り替わった後、軽負荷期間から重負荷期間に切り替わる前の一部の期間に動作モードは電流連続モードとなる。これにより、軽負荷期間に昇圧型DC/DCコンバータの出力電圧に関して電圧ドロップが生じた場合に当該出力電圧の電圧値が大きく低下することが抑制される。従って、たとえ軽負荷期間に昇圧型DC/DCコンバータの出力電圧に関して電圧ドロップが生じても、軽負荷期間から重負荷期間に切り替わった直後にも充分な大きさの出力電圧が得られる。また、動作モードが電流連続モードとなるのは重負荷期間に加えて軽負荷期間の一部の期間だけであるので、その制御による消費電力の増大はわずかである。以上より、負荷が軽い時に出力電圧の電圧ドロップが生じても負荷が軽い状態から負荷が重い状態に変化した後に充分な大きさの出力電圧を得ることのできる従来よりも低消費電力の昇圧型DC/DCコンバータが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1の実施形態において、電圧ドロップへの対策の概略について説明するための波形図である。
図2】上記第1の実施形態における液晶表示装置の全体構成を示すブロック図である。
図3】上記第1の実施形態において、システム電源電圧からアナログ電源電圧を生成するための構成を示す図である。
図4】上記第1の実施形態におけるスイッチング制御回路の構成を示すブロック図である。
図5】上記第1の実施形態における昇圧型DC/DCコンバータの動作について説明するための波形図である。
図6】上記第1の実施形態において、設定レジスタに保持されている設定値について説明するための図である。
図7】第2の実施形態における昇圧型DC/DCコンバータの動作について説明するための波形図である。
図8】上記第2の実施形態において、設定レジスタに保持されている設定値について説明するための図である。
図9】従来例に関し、電圧ドロップの影響について説明するための波形図である。
図10】スイッチングパルスについて説明するための図である。
図11】従来例に関し、昇圧型DC/DCコンバータに関わる信号の実際的な波形を表す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0027】
<1.第1の実施形態>
<1.1 全体構成および動作概要>
図2は、第1の実施形態に係る液晶表示装置の全体構成を示すブロック図である。この液晶表示装置は、電源回路100とタイミングコントローラ(タイミング制御回路)200とメモリ300とゲートドライバ(走査信号線駆動回路)400とソースドライバ(映像信号線駆動回路)500と表示部600とを備えている。なお、図2は機能的な構成を示す図であるので、構成要素間の位置関係などについては実際とは異なっている。
【0028】
表示部600には、n本のソースバスライン(映像信号線)SL(1)~SL(n)とm本のゲートバスライン(走査信号線)GL(1)~GL(m)とが配設されている。それらn本のソースバスラインSL(1)~SL(n)とm本のゲートバスラインGL(1)~GL(m)との各交差点に対応して、画素を形成する画素形成部6が設けられている。すなわち、表示部600には、(n×m)個の画素形成部6が含まれている。各画素形成部6には、対応する交差点を通過するゲートバスラインGLに制御端子が接続されると共に当該交差点を通過するソースバスラインSLに第1導通端子が接続された画素TFT60と、その画素TFT60の第2導通端子に接続された画素電極61と、上記(n×m)個の画素形成部6に共通的に設けられた共通電極64および補助容量電極65と、画素電極61と共通電極64とによって形成される液晶容量62と、画素電極61と補助容量電極65とによって形成される補助容量63とが含まれている。液晶容量62と補助容量63とによって画素容量66が構成されている。なお、図2には、1つの画素形成部6のみを示している。また、ここでは表示部600の形状が矩形である場合を例に挙げているが、表示部600の形状は非矩形であっても良い。
【0029】
次に、図2に示す構成要素の動作について説明する。電源回路100は、システム電源電圧V0のレベルを変換することによって、ロジック用電源電圧VP1~VP3と、液晶駆動用のアナログ電源電圧AVDDとを生成する。ロジック用電源電圧VP1~VP3については、必ずしも互いに異なる大きさの電圧でなくても良い。なお、アナログ電源電圧AVDDを生成する際には、タイミングコントローラ200から与えられる垂直同期信号Vsyncおよび水平同期信号Hsyncが参照される。
【0030】
タイミングコントローラ200は、電源回路100、ゲートドライバ400、およびソースドライバ500の動作を制御する。詳しくは、タイミングコントローラ200は、外部から送られる画像データDATおよびタイミング信号群(水平同期信号や垂直同期信号など)TGを受け取り、デジタル映像信号DVと、電源回路100に与える垂直同期信号Vsyncおよび水平同期信号Hsyncと、ゲートドライバ400の動作を制御するゲート制御信号GCTLと、ソースドライバ500の動作を制御するソース制御信号SCTLとを出力する。ゲート制御信号GCTLには、ゲートスタートパルス信号,ゲートクロック信号などが含まれている。ソース制御信号SCTLには、ソーススタートパルス信号,ソースクロック信号,ラッチストローブ信号などが含まれている。
【0031】
メモリ300には、例えば1フレーム分の画像データDATが保持される。なお、メモリ300への画像データDATの格納およびメモリ300からの画像データDATの読み出しはタイミングコントローラ200によって行われる。
【0032】
ゲートドライバ400は、タイミングコントローラ200から送られるゲート制御信号GCTLに基づいて、アクティブな走査信号の各ゲートバスラインGLへの印加を1垂直走査期間を周期として繰り返す。すなわち、ゲートドライバ400は、m本のゲートバスラインGL(1)~GL(m)を駆動する。
【0033】
ソースドライバ500は、タイミングコントローラ200から送られるデジタル映像信号DVとソース制御信号SCTLとに基づいて、各ソースバスラインSLに駆動用映像信号を印加する。このとき、ソースドライバ500では、ソースクロック信号のパルスが発生するタイミングで、各ソースバスラインSLに印加すべき電圧を示すデジタル映像信号DVが順次に保持される。そして、ラッチストローブ信号のパルスが発生するタイミングで、上記保持されたデジタル映像信号DVがアナログ電圧に変換される。その変換されたアナログ電圧は、駆動用映像信号としてn本のソースバスラインSL(1)~SL(n)に一斉に印加される。以上のように、ソースドライバ500は、n本のソースバスラインSL(1)~SL(n)を駆動する。なお、ソースドライバ500には、デジタル映像信号DVが示す各階調値に対応するアナログ電圧を上記アナログ電源電圧AVDDから生成するための階調電圧生成回路が含まれている。
【0034】
以上のようにして、ゲートバスラインGLに走査信号が印加され、ソースバスラインSLに駆動用映像信号が印加されることにより、外部から送られた画像データDATに基づく画像が表示部600に表示される。
【0035】
<1.2 昇圧型DC/DCコンバータの構成>
図3は、システム電源電圧V0からアナログ電源電圧AVDDを生成するための構成を示す図である。なお、図3には、電源回路100に含まれているDC/DCコンバータのうちソースドライバ500に供給するためのアナログ電源電圧AVDDを生成する昇圧型DC/DCコンバータ110のみを示している。
【0036】
昇圧型DC/DCコンバータ110には、入力端子18および出力端子19の他、コイル(インダクタ)11と、インダクタ電流(コイル11に流れる電流)を変化させるためのスイッチング素子として機能する薄膜トランジスタ12と、容量素子であるコンデンサ13と、整流素子であるダイオード14と、スイッチング制御回路15とが含まれている。入力端子18には、3.3Vのシステム電源電圧V0が与えられている。コイル11については、一端は入力端子18に接続され、他端は節点17に接続されている。薄膜トランジスタ12については、制御端子にはスイッチング制御回路15から出力される制御信号SC(この制御信号SCにスイッチングパルスSWPが含まれている。)が与えられ、第1導通端子は節点17(換言すれば、コイル11の他端)に接続され、第2導通端子は接地されている。コンデンサ13については、一端は接地され、他端は出力端子19に接続されている。ダイオード14については、アノードは節点17に接続され、カソードは出力端子19に接続されている。ダイオード14は、節点17から出力端子19へ向かう方向にのみ電流を流す。換言すれば、ダイオード14は、コイル11の他端側からコンデンサ13の他端側へのみ電流を流す。スイッチング制御回路15は、モード信号MDを参照しつつ、垂直同期信号Vsyncと水平同期信号Hsyncとフィードバック電圧Vfbとフィードバック電流Ifbとタイミングコントローラ200内のイネーブル信号生成回路22から出力されるイネーブル信号ENAとに基づいて、薄膜トランジスタ12のオン/オフを制御する制御信号SCを出力する。出力端子19はソースドライバ500に接続されており、当該出力端子19からはコンデンサ13の他端の電圧がアナログ電源電圧AVDDとして出力される。従って、この昇圧型DC/DCコンバータ110による昇圧後の電源電圧であるアナログ電源電圧AVDDはソースドライバ500に供給される。
【0037】
上述したように、スイッチング制御回路15にはフィードバック電圧Vfbとフィードバック電流Ifbとが与えられる。すなわち、本実施形態においては、電流モード制御と呼ばれる制御方式が採用されている。但し、これには限定されず、電圧モード制御と呼ばれる制御方式(電圧のみをフィードバックする方式)を採用することもできる。
【0038】
この昇圧型DC/DCコンバータ110を含む電源回路100を備えた液晶表示装置では、1フレーム期間は、ソースドライバ500が上記n本のソースバスラインSL(1)~SL(n)に有効な駆動用映像信号を印加するとともにゲートドライバ400が上記m本のゲートバスラインGL(1)~GL(m)を順次に選択する有効映像期間と、ゲートドライバ400によるゲートバスラインGLの選択が停止される垂直帰線期間とからなる。そして、この昇圧型DC/DCコンバータ110は、有効映像期間を重負荷期間とし垂直帰線期間を軽負荷期間として動作する。
【0039】
ところで、基本的には、スイッチング制御回路15は、垂直帰線期間から有効映像期間に切り替わると、動作モードが電流連続モードで維持されるように薄膜トランジスタ12の制御端子に制御信号SCを与え、有効映像期間から垂直帰線期間に切り替わると、動作モードが電流不連続モードで維持されるように薄膜トランジスタ12の制御端子に制御信号SCを与える。但し、スイッチング制御回路15は、有効映像期間から垂直帰線期間に切り替わることによって動作モードが電流連続モードから電流不連続モードに変化した時点から垂直帰線期間から有効映像期間に切り替わる時点までの少なくとも一部の期間(第1所定期間)に動作モードが電流連続モードとなるように、薄膜トランジスタ12の制御端子に制御信号SCを与える。すなわち、上記第1所定期間には、たとえ垂直帰線期間中であっても、強制的に比較的高い周波数のスイッチングパルスSWPが薄膜トランジスタ12の制御端子に与えられる。
【0040】
タイミングコントローラ200には、設定レジスタ21とイネーブル信号生成回路22とが含まれている。設定レジスタ21には、設定値として、イネーブル信号ENAに含まれるパルスの立ち上がり時点を特定する値と当該パルスのパルス幅を特定する値とが保持される。イネーブル信号生成回路22は、水平同期信号Hsyncおよび垂直同期信号Vsyncを参照しつつ、設定レジスタ21に保持されている設定値に基づいてイネーブル信号ENAを生成する。イネーブル信号生成回路22で生成されたイネーブル信号ENAは、昇圧型DC/DCコンバータ110内のスイッチング制御回路15に与えられる。
【0041】
図4は、スイッチング制御回路15の構成を示すブロック図である。図4に示すように、スイッチング制御回路15には、フィードバック電圧モニタ部151と強制パルス設定信号生成部152とスイッチングパルス生成部153とが含まれている。
【0042】
フィードバック電圧モニタ部151は、フィードバック電圧Vfb(すなわち、昇圧後の電源電圧)を監視し、監視結果を表すフラグ信号FLGを生成する。より具体的には、フィードバック電圧モニタ部151は、フィードバック電圧Vfbの電圧値を予め定められた閾値と比較し、比較結果を表すフラグ信号FLGを生成する。これに関し、本実施形態においては、通常はフラグ信号FLGの電圧レベルはローレベル(フラグがオフの状態)で維持され、フィードバック電圧Vfbの電圧値が閾値を超えると、フィードバック電圧Vfbの電圧値が閾値を超えたことをフィードバック電圧モニタ部151が検知した時点から予め定められた長さの期間(第2所定期間)が経過するまでフラグ信号FLGの電圧レベルがハイレベル(フラグがオンの状態)とされる。
【0043】
強制パルス設定信号生成部152は、モード信号MDを参照しつつ、フラグ信号FLGとイネーブル信号ENAとに基づいて、スイッチングパルス生成部153に強制的にスイッチングパルスSWPを生成させる強制パルス設定信号POUTを生成する。ところで、モード信号MDは、制御モードが第1モードであるか第2モードであるかを示す信号である。制御モードが第1モードである時には、フラグ信号FLGは有効とされ、制御モードが第2モードである時には、フラグ信号FLGは無効とされる。制御モードが第1モードであることをモード信号MDが示していれば、強制パルス設定信号生成部152は、フラグ信号FLGとイネーブル信号ENAとの論理積に相当する信号を強制パルス設定信号POUTとして出力する。制御モードが第2モードであることをモード信号MDが示していれば、強制パルス設定信号生成部152は、イネーブル信号ENAと同じ波形の信号を強制パルス設定信号POUTとして出力する。
【0044】
スイッチングパルス生成部153は、所望の電圧値のアナログ電源電圧AVDDが得られるよう、垂直同期信号Vsyncと水平同期信号Hsyncとフィードバック電圧Vfbとフィードバック電流Ifbとに基づいて、有効映像期間には比較的高い周波数でスイッチングパルスSWPが発生し、かつ、垂直帰線期間には比較的低い周波数でスイッチングパルスSWPが発生するよう、制御信号SCを生成する。スイッチングパルス生成部153は、また、強制パルス設定信号POUTに基づいて、垂直帰線期間であっても比較的高い周波数でスイッチングパルスSWPが発生するよう制御信号SCを生成する。これに関し、本実施形態においては、強制パルス設定信号POUTがハイレベルで維持されている期間に、比較的高い周波数のスイッチングパルスSWPを含む制御信号SCが生成される。
【0045】
以上より、制御モードが第1モードであれば、スイッチング制御回路15は、昇圧後の電源電圧が閾値を超えた時点から予め定められた長さの期間(第2所定期間)とイネーブル信号ENAに含まれるパルスが生じている期間とが重複している期間を上述した第1所定期間とし、当該第1所定期間には、動作モードが電流連続モードとなるように、比較的高い周波数のスイッチングパルスSWPを含む制御信号SCを薄膜トランジスタ12の制御端子に与える。一方、制御モードが第2モードであれば、スイッチング制御回路15は、イネーブル信号ENAに含まれるパルスが生じている期間を上述した第1所定期間とし、当該第1所定期間には、動作モードが電流連続モードとなるように、比較的高い周波数のスイッチングパルスSWPを含む制御信号SCを薄膜トランジスタ12の制御端子に与える。
【0046】
<1.3 電圧ドロップへの対策>
次に、上述した電圧ドロップへの対策について説明する。
【0047】
<1.3.1 概略>
まず、図1を参照しつつ、電圧ドロップへの対策の概略について説明する。従来例においては、有効映像期間PAから垂直帰線期間PBに切り替わった後にスイッチングパルスSWPの発生周波数(すなわち、薄膜トランジスタ12のスイッチング周波数)が比較的低い周波数になると、次に垂直帰線期間PBから有効映像期間PAに切り替わるまでの期間を通じてスイッチングパルスSWPの発生周波数は比較的低い周波数で維持されていた(図9図11を参照)。これに対して、本実施形態においては、図1に示すように、有効映像期間PAから垂直帰線期間PBに切り替わったことによってスイッチングパルスSWPの発生周波数が比較的低い周波数になった後、垂直帰線期間PBから有効映像期間PAに切り替わる前の所定期間(第1所定期間)に、スイッチング制御回路15が比較的高い周波数でスイッチングパルスSWPを発生させる。このようにして垂直帰線期間PBから有効映像期間PAに切り替わる前に薄膜トランジスタ12のスイッチング周波数を高くすることによって、たとえ垂直帰線期間PB中に電圧ドロップが生じていても、この昇圧型DC/DCコンバータ110から液晶を駆動するのに充分な大きさのアナログ電源電圧AVDDが出力される。
【0048】
<1.3.2 詳細な制御>
次に、昇圧型DC/DCコンバータ110に関し、より詳細な制御について説明する。なお、ここでは、制御モードが第1モードであることをモード信号MDが示しているものと仮定する。制御モードが第2モードであることをモード信号MDが示している時の制御例については、第2の実施形態で説明する。
【0049】
図5は、昇圧型DC/DCコンバータ110の動作について説明するための波形図である。なお、図5におけるアナログ電源電圧AVDDの波形に関し、時点t14から時点t16までの点線で表した波形は、本明細書で開示するような対策を施さなかった場合の波形である。
【0050】
時点t10以前の期間は、有効映像期間PAである。この期間には、比較的高い周波数でスイッチングパルスSWPが発生している。すなわち、この昇圧型DC/DCコンバータ110は電流連続モードで動作している。また、この期間には、フラグ信号FLG、イネーブル信号ENA、および強制パルス設定信号POUTは、ローレベルで維持されている。
【0051】
時点t10になると、有効映像期間PAから垂直帰線期間PBに切り替わる。これにより、スイッチングパルスSWPの発生周波数が比較的低い周波数に変化する。すなわち、スイッチングパルス生成部153(図4参照)がスイッチングパルスSWPの発生周波数を比較的高い周波数から比較的低い周波数へと変化させる。これに関し、スイッチングパルス生成部153は、垂直同期信号Vsyncのパルスの発生時点から水平同期信号Hsyncのパルスの発生数をカウントすることによって、有効映像期間PAから垂直帰線期間PBに切り替わるタイミングを把握することができる。なお、図5に示す例では有効映像期間PAから垂直帰線期間PBに切り替わった時点でスイッチングパルスSWPの発生周波数が変化しているが、有効映像期間PAから垂直帰線期間PBに切り替わった時点から所定の期間経過後にスイッチングパルスSWPの発生周波数が比較的高い周波数から比較的低い周波数に変化するケースもある(図1参照)。
【0052】
図5に示す例では、垂直帰線期間PBにおいて、符号71を付した部分に示すようにアナログ電源電圧AVDDの電圧値が徐々に上昇している。そして、時点t11に、アナログ電源電圧AVDDの電圧値が予め定められた閾値VTを超えている。この時、フィードバック電圧モニタ部151(図4参照)は、フィードバック電圧Vfbの電圧値が当該閾値VTを超えたことを検知する。これにより、フィードバック電圧モニタ部151は、フラグ信号FLGをローレベルからハイレベルへと変化させる。フラグ信号FLGがハイレベルになっている状態は、予め定められた期間(図5に示す例では11水平走査期間)、維持される。
【0053】
時点t12になると、イネーブル信号ENAがローレベルからハイレベルへと変化する。ここで、タイミングコントローラ200内のイネーブル信号生成回路22(図3参照)によるイネーブル信号ENAの生成について説明する。イネーブル信号ENAの生成は、タイミングコントローラ200内の設定レジスタ21に保持されている設定値に基づいて行われる。
【0054】
本実施形態においては、図6に示すように、設定レジスタ21に設定値が保持されている。上述したように、設定レジスタ21には、設定値として、イネーブル信号ENAに含まれるパルスの立ち上がり時点を特定する値と当該パルスのパルス幅を特定する値とが保持されている。図6に関し、ST1はイネーブル信号ENAに含まれる1つ目のパルスの立ち上がり時点を特定する値であって、W1はイネーブル信号ENAに含まれる1つ目のパルスのパルス幅を特定する値であって、ST2はイネーブル信号ENAに含まれる2つ目のパルスの立ち上がり時点を特定する値であって、W2はイネーブル信号ENAに含まれる2つ目のパルスのパルス幅を特定する値である。この例では、ST2の値およびW2の値は0である。この場合、イネーブル信号生成回路22は、垂直帰線期間PB毎にパルスが1回だけ発生するようにイネーブル信号ENAを生成する。図6に示す例では、ST1の値は「4」である。このとき、イネーブル信号生成回路22は、垂直帰線期間PBから有効映像期間PAに切り替わる時点(すなわち、垂直同期信号Vsyncが立ち上がる時点)から4水平走査期間前の時点に、イネーブル信号ENAをローレベルからハイレベルへと変化させる。また、図6に示す例では、W1の値は「11」である。このとき、イネーブル信号生成回路22は、イネーブル信号ENAがローレベルからハイレベルへと変化した時点から11水平走査期間後にイネーブル信号ENAをハイレベルからローレベルへと変化させる。このようにして、イネーブル信号生成回路22では、11水平走査期間の長さに相当するパルス幅のパルスを含むイネーブル信号ENAが生成される。
【0055】
ところで、この例では制御モードは第1モードであるので、フラグ信号FLGは有効とされ、強制パルス設定信号生成部152(図4参照)は、フラグ信号FLGとイネーブル信号ENAとの論理積に相当する信号を強制パルス設定信号POUTとして出力する。これに関し、時点t12にイネーブル信号ENAがローレベルからハイレベルへと変化した後の最初に水平同期信号Hsyncのパルスが発生した時点t13には、フラグ信号FLGもイネーブル信号ENAもハイレベルとなっている。従って、時点t13になると、図5に示すように、強制パルス設定信号POUTがローレベルからハイレベルへと変化する。このように強制パルス設定信号POUTがローレベルからハイレベルへと変化したことに基づいて、スイッチングパルス生成部153は、スイッチングパルスSWPの発生周波数を比較的低い周波数から比較的高い周波数へと変化させる。このようにして、時点t13になると、薄膜トランジスタ12のスイッチング周波数が高くなる。これにより、時点t13以降の期間には、この昇圧型DC/DCコンバータ110は電流連続モードで動作する。
【0056】
時点t15になると、垂直帰線期間PBから有効映像期間PAに切り替わる。その後、時点t17になると、フラグ信号FLGがハイレベルからローレベルへと変化する。これにより、強制パルス設定信号POUTがハイレベルからローレベルへと変化する。このように時点t17には強制パルス設定信号POUTがローレベルとなるが、時点t17は有効映像期間PAに含まれているので、スイッチングパルスSWPの発生周波数は比較的高い周波数で維持される。その後、時点t18になると、イネーブル信号ENAがハイレベルからローレベルへと変化する。
【0057】
なお、この例では、時点t13~時点t17の期間が第1所定期間に相当し、時点t11~時点t17の期間が第2所定期間に相当する。
【0058】
ここで、時点t14~時点t16の期間におけるアナログ電源電圧AVDDの波形に着目する。本明細書で開示するような対策を施さなかった場合には、図5において点線で表した波形から把握されるように、垂直帰線期間PBから有効映像期間PAに切り替わった直後の期間にアナログ電源電圧AVDDの電圧値は所望の電圧値よりも顕著に低くなる。これに対して、本実施形態においては、時点t13以降に薄膜トランジスタ12のスイッチング周波数が比較的高い周波数となるので、図5で符号72を付した部分に示すようにアナログ電源電圧AVDDの電圧値が上昇する。そして、垂直帰線期間PBから有効映像期間PAに切り替わった直後の期間においても、アナログ電源電圧AVDDの電圧値は充分な大きさで保たれている。
【0059】
<1.4 効果>
本実施形態によれば、昇圧型DC/DCコンバータ110内のスイッチング制御回路15は、有効映像期間PAから垂直帰線期間PBに切り替わった後、垂直帰線期間PBから有効映像期間PAに切り替わる前の予め定められた期間に、薄膜トランジスタ12の制御端子に与えるスイッチングパルスSWPの発生周波数を比較的高い周波数とする。これにより、垂直帰線期間PBから有効映像期間PAに切り替わる前の予め定められた期間に、昇圧型DC/DCコンバータ110は電流連続モードで動作する。その結果、たとえ垂直帰線期間PB中にアナログ電源電圧AVDDに関して電圧ドロップが生じても、垂直帰線期間PBから有効映像期間PAに切り替わった直後にも、液晶を駆動するのに充分な大きさのアナログ電源電圧AVDDが得られる。また、本実施形態においては、上記のような効果を得るために、実際に必要な電圧値よりも高い電圧値の出力電圧が得られるように昇圧型DC/DCコンバータの制御が行われるのではなく、従来の構成において電流不連続モードで動作していた期間のうちの一部の期間の動作モードを電流連続モードに変更するにすぎない。それ故、本実施形態の制御を行うことによる消費電力の増大はわずかである。以上より、本実施形態によれば、軽負荷期間である垂直帰線期間PBに出力電圧(アナログ電源電圧AVDD)の電圧ドロップが生じても垂直帰線期間PBから重負荷期間である有効映像期間PAに変化した後に充分な大きさの出力電圧を得ることのできる従来よりも低消費電力の昇圧型DC/DCコンバータ110が実現される。また、そのような昇圧型DC/DCコンバータ110を備えた液晶表示装置が実現される。
【0060】
<2.第2の実施形態>
<2.1 概要>
液晶表示装置の全体構成、システム電源電圧V0からアナログ電源電圧AVDDを生成するための構成、スイッチング制御回路15の構成については、上記第1の実施形態と同様である(図2図4を参照)。上記第1の実施形態においては、制御モードが第1モードであることをモード信号MDが示していることを仮定していた。これに対して、本実施形態においては、制御モードが第2モードであることをモード信号MDが示している(すなわち、フラグ信号FLGは無効とされている)ものと仮定する。また、上記第1の実施形態においては、垂直帰線期間PB毎にイネーブル信号ENAのパルスが1回だけ発生するように昇圧型DC/DCコンバータ110の動作が制御されていた。これに対して、本実施形態においては、垂直帰線期間PB毎にイネーブル信号ENAのパルスが2回発生するよう、昇圧型DC/DCコンバータ110の動作が制御される。なお、本実施形態においても、昇圧型DC/DCコンバータ110は、有効映像期間PAを重負荷期間とし垂直帰線期間PBを軽負荷期間として動作する。
【0061】
<2.2 電圧ドロップへの対策>
図7を参照しつつ、電圧ドロップへの対策について説明する。なお、図7におけるアナログ電源電圧AVDDの波形に関し、時点t20から時点t25までの点線で表した波形は、本明細書で開示するような対策を施さなかった場合の波形である。
【0062】
時点t20以前の期間は、有効映像期間PAである。この期間には、比較的高い周波数でスイッチングパルスSWPが発生している。すなわち、この昇圧型DC/DCコンバータ110は電流連続モードで動作している。また、この期間には、イネーブル信号ENAおよび強制パルス設定信号POUTは、ローレベルで維持されている。なお、フラグ信号FLGは無効とされているので、この液晶表示装置が動作している期間を通じてフラグ信号FLGはローレベルで維持される。
【0063】
時点t20になると、有効映像期間PAから垂直帰線期間PBに切り替わる。また、時点t20には、イネーブル信号ENAがローレベルからハイレベルへと変化する。これに関し、本実施形態においては、図8に示すように、設定レジスタ21に設定値が保持されている。ST1の値は「8」であって、W1の値は「4」であって、ST2の値は「1」であって、W2の値は「5」である。このように、垂直帰線期間PB毎にイネーブル信号ENAのパルスが2回発生するよう、設定レジスタ21に設定値が保持されている。上述したようにST1の値は「8」であるので、イネーブル信号生成回路22は、垂直帰線期間PBから有効映像期間PAに切り替わる時点から8水平走査期間前の時点に、イネーブル信号ENAをローレベルからハイレベルへと変化させる。従って、この例では、時点t20にイネーブル信号ENAがローレベルからハイレベルへと変化する。また、制御モードは第2モードである(すなわち、フラグ信号FLGは無効とされている)ので、強制パルス設定信号生成部152は、イネーブル信号ENAと同じ波形の信号を強制パルス設定信号POUTとして出力する。従って、時点t20に強制パルス設定信号POUTもローレベルからハイレベルへと変化する。このように強制パルス設定信号POUTがローレベルからハイレベルへと変化したことに基づいて、スイッチングパルス生成部153は、有効映像期間PAから垂直帰線期間PBに切り替わっているにも関わらず、スイッチングパルスSWPの発生周波数を比較的高い周波数で維持する。その結果、時点t20以降にも、この昇圧型DC/DCコンバータ110の動作モードは電流連続モードで維持される。
【0064】
上述したようにW1の値は「4」である。このとき、イネーブル信号生成回路22は、イネーブル信号ENAがローレベルからハイレベルへと変化した時点から4水平走査期間後にイネーブル信号ENAをハイレベルからローレベルへと変化させる。すなわち、時点t21に、イネーブル信号ENAはハイレベルからローレベルへと変化する。これに伴い、時点t21には、強制パルス設定信号POUTについてもハイレベルからローレベルへと変化する。このように強制パルス設定信号POUTがハイレベルからローレベルへと変化したことに基づいて、スイッチングパルス生成部153は、スイッチングパルスSWPの発生周波数を比較的高い周波数から比較的低い周波数へと変化させる。これにより、時点t21には、この昇圧型DC/DCコンバータ110の動作モードが電流不連続モードとなる。
【0065】
上述したようにST2の値は「1」である。それ故、イネーブル信号生成回路22は、垂直帰線期間PBから有効映像期間PAに切り替わる時点から1水平走査期間前の時点に、イネーブル信号ENAをローレベルからハイレベルへと変化させる。この例では、時点t22にイネーブル信号ENAがローレベルからハイレベルへと変化する。これに伴い、時点t22には、強制パルス設定信号POUTについてもローレベルからハイレベルへと変化する。このように強制パルス設定信号POUTがローレベルからハイレベルへと変化したことに基づいて、スイッチングパルス生成部153は、スイッチングパルスSWPの発生周波数を比較的低い周波数から比較的高い周波数へと変化させる。このようにして、時点t22になると、薄膜トランジスタ12のスイッチング周波数が高くなる。これにより、時点t22以降の期間には、この昇圧型DC/DCコンバータ110は電流連続モードで動作する。
【0066】
時点t23になると、垂直帰線期間PBから有効映像期間PAに切り替わる。その後、時点t24になると、イネーブル信号ENAがハイレベルからローレベルへと変化する。これに伴い、時点t24には、強制パルス設定信号POUTについてもハイレベルからローレベルへと変化する。このように時点t24には強制パルス設定信号POUTがローレベルとなるが、時点t24は有効映像期間PAに含まれているので、スイッチングパルスSWPの発生周波数は比較的高い周波数で維持される。
【0067】
なお、この例では、時点t20~時点t21の期間および時点t22~時点t24の期間が第1所定期間に相当する。また、時点t20~時点t21の期間および時点t22~時点t24の期間が、第1所定期間に含まれる複数の部分期間(2つの部分期間)に相当する。
【0068】
ここで、時点t20~時点t25の期間におけるアナログ電源電圧AVDDの波形に着目する。本明細書で開示するような対策を施さなかった場合には、図7において点線で表した波形から把握されるように、垂直帰線期間PBから有効映像期間PAに切り替わった直後の期間にアナログ電源電圧AVDDの電圧値は所望の電圧値よりも顕著に低くなる。これに対して、本実施形態においては、イネーブル信号ENAの1回目のパルスに基づき比較的高い周波数のスイッチングパルスSWPが薄膜トランジスタ12の制御端子に与えられることによって、垂直帰線期間PB中にアナログ電源電圧AVDDの電圧値が大きく変動すること(すなわち、大きなリップル電圧が生じること)が抑制され、イネーブル信号ENAの2回目のパルスに基づき比較的高い周波数のスイッチングパルスSWPが薄膜トランジスタ12の制御端子に与えられることによって、垂直帰線期間PBから有効映像期間PAに切り替わった直後の期間にアナログ電源電圧AVDDの電圧値が所望の電圧値よりも低くなることが抑制される。その結果、図7から把握されるように、垂直帰線期間PBから有効映像期間PAに切り替わった直後の期間においても、アナログ電源電圧AVDDの電圧値は充分な大きさで保たれている。
【0069】
<2.3 効果>
本実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様、軽負荷期間である垂直帰線期間PBに出力電圧(アナログ電源電圧AVDD)の電圧ドロップが生じても垂直帰線期間PBから重負荷期間である有効映像期間PAに変化した後に充分な大きさの出力電圧を得ることのできる従来よりも低消費電力の昇圧型DC/DCコンバータ110が実現される。また、そのような昇圧型DC/DCコンバータ110を備えた液晶表示装置が実現される。
【0070】
<3.変形例>
上記第1の実施形態では垂直帰線期間PB毎にイネーブル信号ENAのパルスが1回だけ発生し、上記第2の実施形態では垂直帰線期間PB毎にイネーブル信号ENAのパルスが2回発生していた。しかしながら、これらには限定されない。垂直帰線期間PB毎にイネーブル信号ENAのパルスが3回以上発生するようにしても良い。
【0071】
また、上記各実施形態においては有効映像期間PAを重負荷期間とし垂直帰線期間PBを軽負荷期間として昇圧型DC/DCコンバータ110を動作させていたが、これには限定されない。例えば、表示画像に応じて重負荷期間と軽負荷期間との切り替えが行われるようにしても良い。
【0072】
さらにまた、上記各実施形態においては液晶表示装置に使用される昇圧型DC/DCコンバータ110を例に挙げて説明したが、これには限定されない。液晶表示装置以外の装置に使用される昇圧型DC/DCコンバータ110についても、本明細書の開示内容を適用することができる。
【0073】
<4.その他>
以上において本発明を詳細に説明したが、以上の説明は全ての面で例示的なものであって制限的なものではない。多数の他の変更や変形が本発明の範囲を逸脱することなく案出可能であると了解される。
【符号の説明】
【0074】
11…コイル(インダクタ)
12…薄膜トランジスタ(スイッチング素子)
13…コンデンサ(容量素子)
14…ダイオード(整流素子)
15…スイッチング制御回路
21…設定レジスタ
22…イネーブル信号生成回路
100…電源回路
110…昇圧型DC/DCコンバータ
200…タイミングコントローラ
400…ゲートドライバ
500…ソースドライバ
600…表示部
PA…有効映像期間(有効垂直走査期間)
PB…垂直帰線期間
ENA…イネーブル信号
FLG…フラグ信号
POUT…強制パルス設定信号
SWP…スイッチングパルス
AVDD…アナログ電源電圧
V0…システム電源電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11