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特開2024-29889デッキプレートの接合構造およびデッキプレートの接合方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029889
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】デッキプレートの接合構造およびデッキプレートの接合方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 7/02 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
E04B7/02 521Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132343
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮林 航希
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 由悟
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 聡
(57)【要約】
【課題】デッキプレートと支持部材との間で、支持部材の回転変形に対して安定して剛性および耐力を発揮する。
【解決手段】支持部材と、上記支持部材に載置され、第1の方向に波付けされたデッキプレートと、上記デッキプレートの上記支持部材とは反対側に配置され、水平面内で上記第1の方向に対して垂直な第2の方向に延び、上記デッキプレートよりも板厚が厚い板状部材と、上記デッキプレートを貫通し、上記板状部材に形成された鉛直方向の貫通孔の内壁面および上記支持部材に接する溶接部とを備えるデッキプレートの接合構造が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材と、
前記支持部材に載置され、第1の方向に波付けされたデッキプレートと、
前記デッキプレートの前記支持部材とは反対側に配置され、水平面内で前記第1の方向に対して垂直な第2の方向に延び、前記デッキプレートよりも板厚が厚い板状部材と、
前記デッキプレートを貫通し、前記板状部材に形成された鉛直方向の貫通孔の内壁面および前記支持部材に接する溶接部と
を備えるデッキプレートの接合構造。
【請求項2】
前記板状部材は、前記デッキプレートの波付けの方向に対して垂直な方向に配列された複数の貫通孔を有し、
前記溶接部は、前記複数の貫通孔のそれぞれに形成される、請求項1に記載のデッキプレートの接合構造。
【請求項3】
前記板状部材は、前記デッキプレートの波付けの方向に対して垂直な方向における前記デッキプレートの継目にまたがって配置され、
前記貫通孔および前記溶接部は、前記継目の両側にそれぞれ配置される、請求項2に記載のデッキプレートの接合構造。
【請求項4】
前記板状部材は、前記デッキプレートの波付けの方向に対して垂直な方向に配列される複数の板状部材を含み、
前記溶接部は、前記複数の板状部材のそれぞれに形成された前記貫通孔の内壁面および前記支持部材に接する複数の溶接部を含む、請求項1に記載のデッキプレートの接合構造。
【請求項5】
前記複数の板状部材は、前記デッキプレートの波付けの方向に対して垂直な方向における前記デッキプレートの継目の両側にそれぞれ配置される、請求項4に記載のデッキプレートの接合構造。
【請求項6】
前記支持部材は、前記デッキプレートの波付けの方向に延び第1および第2のフランジならびにウェブを含むH形鋼であり、
前記デッキプレートは、前記第1のフランジの前記ウェブとは反対側の面に載置され、
前記貫通孔および前記溶接部は、前記第1のフランジ上で前記ウェブに対して両側にあたる位置にそれぞれ配置される、請求項1に記載のデッキプレートの接合構造。
【請求項7】
前記支持部材は、前記デッキプレートの波付けの方向に延び第1および第2のフランジならびにウェブを含むH形鋼であり、
前記デッキプレートは、前記第1のフランジの前記ウェブとは反対側の面に載置され、
前記貫通孔および前記溶接部は、前記第1のフランジ上で前記ウェブに対して片側にあたる位置にのみ配置される、請求項1に記載のデッキプレートの接合構造。
【請求項8】
前記板状部材は、前記デッキプレートの波付けの方向に対して垂直な方向における前記デッキプレートの端部に配置される、請求項6または請求項7に記載のデッキプレートの接合構造。
【請求項9】
前記板状部材は、前記デッキプレートの波付けの方向に対して垂直な方向について、前記デッキプレートの端部を越えて延出し、
前記デッキプレートの端部を越えて延出した前記板状部材の部分に形成される鉛直方向の貫通孔の内壁面および前記支持部材に接する追加の溶接部をさらに備える、請求項1に記載のデッキプレートの接合構造。
【請求項10】
前記板状部材は、前記デッキプレートの波付けの方向に対して垂直な方向について、前記デッキプレートの端部を越えて延出し、
前記デッキプレートの端部を越えて延出した前記板状部材の端面および前記支持部材に接する追加の溶接部をさらに備える、請求項1に記載のデッキプレートの接合構造。
【請求項11】
前記溶接部は、前記貫通孔の内部に充填された溶接金属によって形成される、請求項1に記載のデッキプレートの接合構造。
【請求項12】
第1の方向に波付けされたデッキプレートを支持部材に載置する工程と、
前記デッキプレートの前記支持部材とは反対側に、水平面内で前記第1の方向に対して垂直な第2の方向に延び、前記デッキプレートよりも板厚が厚い板状部材を配置する工程と、
前記デッキプレートを貫通し、前記板状部材に形成された鉛直方向の貫通孔の内壁面および前記支持部材に接する溶接部を形成する工程と
を含むデッキプレートの接合方法。
【請求項13】
前記溶接部は、前記貫通孔の内部に溶接金属を充填する焼抜き栓溶接によって形成される、請求項12に記載のデッキプレートの接合方法。
【請求項14】
前記溶接部は、前記デッキプレートに予め形成された孔および前記貫通孔の内部に溶接金属を充填することによって形成される、請求項12に記載のデッキプレートの接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッキプレートの接合構造およびデッキプレートの接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
波板状のデッキプレートを母屋材に載置する乾式の屋根構造が知られている。例えば、特許文献1には、デッキプレートの下面側に母屋材を取り付けて屋根本体を形成し、母屋材を耐火被覆された建物の梁に取り付ける技術が記載されている。特許文献1に記載された技術において、デッキプレートの母屋材への取り付けにはドリリングタッピングネジが用いられる。デッキプレートの母屋材への取り付けには、この他にも焼抜き栓溶接や撃込鋲を用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-282190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の技術において、母屋材とデッキプレートとの間の接合部にはデッキプレートを母屋材に固定する以上の機能は求められない。具体的には、接合部はデッキプレートに作用する吹上荷重に耐えられればよい。その一方で、近年、支持部材とデッキプレートとの接合部にそれ以上の荷重を負担させること、具体的には例えばデッキプレートを支持部材の回転変形などを防止する部材としても機能させることが検討されている。
【0005】
しかしながら、上記のような従来の接合部では、例えば支持部材の回転変形が発生した場合に、デッキプレートが接合部で局所的に引っ張られることで接合構造が安定して十分な剛性および耐力を発揮できない場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、デッキプレートと支持部材との間で、支持部材の回転変形に対して安定して剛性および耐力を発揮することが可能なデッキプレートの接合構造およびデッキプレートの接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]支持部材と、上記支持部材に載置され、第1の方向に波付けされたデッキプレートと、上記デッキプレートの上記支持部材とは反対側に配置され、水平面内で上記第1の方向に対して垂直な第2の方向に延び、上記デッキプレートよりも板厚が厚い板状部材と、上記デッキプレートを貫通し、上記板状部材に形成された鉛直方向の貫通孔の内壁面および上記支持部材に接する溶接部とを備えるデッキプレートの接合構造。
[2]上記板状部材は、上記デッキプレートの波付けの方向に対して垂直な方向に配列された複数の貫通孔を有し、上記溶接部は、上記複数の貫通孔のそれぞれに形成される、[1]に記載のデッキプレートの接合構造。
[3]上記板状部材は、上記デッキプレートの波付けの方向に対して垂直な方向における上記デッキプレートの継目にまたがって配置され、上記貫通孔および上記溶接部は、上記継目の両側にそれぞれ配置される、[2]に記載のデッキプレートの接合構造。
[4]上記板状部材は、上記デッキプレートの波付けの方向に対して垂直な方向に配列される複数の板状部材を含み、上記溶接部は、上記複数の板状部材のそれぞれに形成された上記貫通孔の内壁面および上記支持部材に接する複数の溶接部を含む、[1]に記載のデッキプレートの接合構造。
[5]上記複数の板状部材は、上記デッキプレートの波付けの方向に対して垂直な方向における上記デッキプレートの継目の両側にそれぞれ配置される、[4]に記載のデッキプレートの接合構造。
[6]上記支持部材は、上記デッキプレートの波付けの方向に延び第1および第2のフランジならびにウェブを含むH形鋼であり、上記デッキプレートは、上記第1のフランジの上記ウェブとは反対側の面に載置され、上記貫通孔および上記溶接部は、上記第1のフランジ上で上記ウェブの両側にあたる位置にそれぞれ配置される、[1]から[5]のいずれか1項に記載のデッキプレートの接合構造。
[7]上記支持部材は、上記デッキプレートの波付けの方向に延び第1および第2のフランジならびにウェブを含むH形鋼であり、上記デッキプレートは、上記第1のフランジの上記ウェブとは反対側の面に載置され、上記貫通孔および上記溶接部は、上記第1のフランジ上で上記ウェブの片側にあたる位置にのみ配置される、[1]から[5]のいずれか1項に記載のデッキプレートの接合構造。
[8]上記板状部材は、上記デッキプレートの波付けの方向に対して垂直な方向における上記デッキプレートの端部に配置される、[6]または[7]に記載のデッキプレートの接合構造。
[9]上記板状部材は、上記デッキプレートの波付けの方向に対して垂直な方向について、上記デッキプレートの端部を越えて延出し、上記デッキプレートの端部を越えて延出した上記板状部材の部分に形成される鉛直方向の貫通孔の内壁面および上記支持部材に接する追加の溶接部をさらに備える、[1]に記載のデッキプレートの接合構造。
[10]上記板状部材は、上記デッキプレートの波付けの方向に対して垂直な方向について、上記デッキプレートの端部を越えて延出し、上記デッキプレートの端部を越えて延出した上記板状部材の端面および上記支持部材に接する追加の溶接部をさらに備える、[1]に記載のデッキプレートの接合構造。
[11]上記溶接部は、上記貫通孔の内部に充填された溶接金属によって形成される、[1]から[10]のいずれか1項に記載のデッキプレートの接合構造。
[12]第1の方向に波付けされたデッキプレートを支持部材に載置する工程と、上記デッキプレートの上記支持部材とは反対側に、水平面内で上記第1の方向に対して垂直な第2の方向に延び、上記デッキプレートよりも板厚が厚い板状部材を配置する工程と、上記デッキプレートを貫通し、上記板状部材に形成された鉛直方向の貫通孔の内壁面および上記支持部材に接する溶接部を形成する工程とを含むデッキプレートの接合方法。
[13]上記溶接部は、上記貫通孔の内部に溶接金属を充填する焼抜き栓溶接によって形成される、[12]に記載のデッキプレートの接合方法。
[14]上記溶接部は、上記デッキプレートに予め形成された孔および上記貫通孔の内部に溶接金属を充填することによって形成される、[12]または[13]に記載のデッキプレートの接合方法。
【発明の効果】
【0008】
上記の構成によれば、溶接部がデッキプレートと支持部材との間だけではなく、支持部材と板状部材との間にも形成される。デッキプレートよりも板厚が厚い板状部材と支持部材との間に溶接部が形成されることによって、支持部材が回転変形した際にデッキプレートが接合部で局所的に引っ張られるのを防止し、支持部材の回転変形に対して安定して剛性および耐力を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るデッキプレートの接合構造の斜視図である。
図2A図1のA-A線に沿った断面図である。
図2B図1のB-B線に沿った断面図である。
図2C図1のC-C線に沿った断面図である。
図3図1の例において支持部材が回転変形した状態を示す図である。
図4A】本発明の実施形態の変形例を示す図である。
図4B】本発明の実施形態の変形例を示す図である。
図5A】本発明の実施形態の変形例を示す図である。
図5B】本発明の実施形態の変形例を示す図である。
図6A】本発明の実施形態の変形例を示す図である。
図6B】本発明の実施形態の変形例を示す図である。
図7】本発明の実施形態の変形例を示す図である。
図8】本発明の実施形態の変形例を示す図である。
図9A】本発明の実施形態の変形例を示す図である。
図9B】本発明の実施形態の変形例を示す図である。
図10】本発明の実施形態の変形例を示す図である。
図11A】本発明の実施形態の変形例を示す図である。
図11B】本発明の実施形態の変形例を示す図である。
図12】本発明の実施形態の変形例を示す図である。
図13】本発明の実施形態の変形例を示す図である。
図14A】本発明の実施形態の変形例を示す図である。
図14B】本発明の実施形態の変形例を示す図である。
図15A】本発明の実施形態の変形例を示す図である。
図15B】本発明の実施形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0011】
図1は本発明の一実施形態に係るデッキプレートの接合構造の斜視図であり、図2Aから図2Cはそれぞれ図1のA-A線、B-B線およびC-C線に沿った断面図である。図示された接合構造の例では、デッキプレート1がH形鋼2に載置され、支圧板3および溶接部4によって接合部が構成される。デッキプレート1は、交互に配置された台形の山部11と溝底部12とが平行に延びる波板状の薄板である。デッキプレート1の板厚は例えば0.8mm以上1.6mm以下であるが、この例には限定されない。デッキプレート1は、H形鋼2の長手方向や短手方向に複数枚が並べて敷設されてもよい。
【0012】
支持部材の例であるH形鋼2は、フランジ21A,21Bおよびウェブ22を含む。H形鋼2は、例えば建築物における母屋材または梁を構成する。図示された例では、デッキプレート1の溝底部12が、フランジ21Aのウェブ22とは反対側の面に載置される。各図に示されたx方向はデッキプレート1の波付けの方向(H形鋼2の材軸方向に一致する)であり、y方向は水平面内でx方向に対して垂直な方向(H形鋼2の幅方向に一致する)であり、z方向は鉛直方向である。なお、支持部材はH形鋼には限定されず、例えば溝形鋼や山形鋼などの各種の形鋼を支持部材として用いることができる。
【0013】
支圧板3は、デッキプレート1の波付けの方向(x方向)に対して垂直な方向(y方向)に、つまり山部11および溝底部12に対して平行に延びる板状部材の例である。支圧板3の板厚は、デッキプレート1の板厚よりも厚い。支圧板3は、デッキプレート1の支持部材であるH形鋼2とは反対側に配置される。より具体的には、支圧板3は、デッキプレート1の溝底部12で、H形鋼2のフランジ21Aに接する面とは反対側の面に載置される。支圧板3には鉛直方向の貫通孔31が形成され、貫通孔31の内部に例えば焼抜き栓溶接で溶接金属を充填することによって溶接部4が形成される。溶接部4は、デッキプレート1の溝底部12を貫通し、貫通孔31の内壁面およびH形鋼2のフランジ21Aに接する。このような溶接部4によって、貫通孔31の内壁面と、デッキプレート1の溝底部12と、フランジ21Aの上面とが接合される。
【0014】
既に述べたようにデッキプレート1は薄板であるため、例えば焼抜き栓溶接によってデッキプレート1を溶融させながら貫通孔31の内部をフランジ21Aの面まで連通させる孔を穿設して溶接部4を形成することができる。従って、本実施形態では接合部においてデッキプレート1に予め孔開けをする必要はない。ただし、例えばデッキプレート1の端部や他のデッキプレートとの重ね合わせ部のような支持部材との位置合わせが容易な箇所、またはより確実な溶接が必要とされる箇所では、デッキプレート1に孔開けをしてもよい。この場合、溶接部4はデッキプレート1に予め形成された孔および貫通孔31の内部に溶接金属を充填することによって形成される。
【0015】
以上で説明したような本発明の一実施形態では、溶接部4がデッキプレート1とH形鋼2との間だけではなく、H形鋼2と支圧板3との間にも形成される。デッキプレート1よりも板厚が厚い支圧板3とH形鋼2との間に溶接部4が形成されることによって、例えば図3に示したように支持部材であるH形鋼2が材軸方向回りに回転変形した際にデッキプレート1が接合部で局所的に引っ張られるのを防止し、支持部材の回転変形に対して安定して剛性および耐力を発揮することができる。
【0016】
これによって、例えば、H形鋼2のスパンの途中に接合される多数のデッキプレート1を、H形鋼2の回転変形などを防止する部材(例えば、横座屈補剛材)として用いることができる。これによって別途の補剛材が省略または削減されるため、材料や工程の上で利点がある。なお、上記ではデッキプレート1で屋根を形成する場合について説明しているが、デッキプレートは例えば床としても利用可能である。また、図3に示されたデッキプレート1の両端の支点構造は模式的なものであり、必ずしも実際のデッキプレートの支点構造を限定しない。また、図3の例では貫通孔および溶接部4がフランジ21A上でウェブ22の真上にあたる位置に配置されているが、後述する例のように貫通孔および溶接部がフランジ上でウェブに対して両側にあたる位置にそれぞれ配置されている場合や、貫通孔および溶接部がフランジ上でウェブに対して片側にあたる位置にのみ配置される場合にも同様の効果が得られる。
【0017】
以下では、上述した本発明の実施形態の変形例について説明する。
【0018】
図4Aおよび図4Bに示された例では、支圧板3が、デッキプレート1の波付けの方向に対して垂直な方向(y方向)に配列された複数の貫通孔31A,31Bを有し、貫通孔31A,31Bのそれぞれに溶接部4A,4Bが形成される。この場合、支持部材であるH形鋼2と支圧板3との間に複数の溶接部4A,4Bが形成されることによって、支持部材の回転変形に対してより高い剛性および耐力を発揮することができる。
【0019】
図5Aおよび図5Bに示された例では、図4と同様に複数の貫通孔31A,31Bを有する支圧板3が、デッキプレートの波付けの方向に対して垂直な方向(y方向)におけるデッキプレート1A,1Bの継目Jにまたがって配置されている。貫通孔31A,31Bおよび溶接部4A,4Bは、継目Jの両側にそれぞれ配置される。このような構成によって、デッキプレート1A,1Bのそれぞれについて荷重の伝達性能を維持し、支持部材の回転変形に対して安定して剛性および耐力を発揮することができる。また、継目Jにおいてデッキプレート1A,1Bが突き合わされた状態を安定的に維持することができる。
【0020】
図6Aおよび図6Bに示された例では、デッキプレート1の波付けの方向に対して垂直な方向(y方向)に複数の支圧板3A,3Bが配列される。図示された例において、支圧板3Aには鉛直方向の貫通孔31Aが形成され、支圧板3Bにも鉛直方向の貫通孔31Bが形成される。さらに、デッキプレート1の溝底部12を貫通し、貫通孔31Aの内壁面およびH形鋼2のフランジ21Aに接する溶接部4Aと、同様に貫通孔31Bの内壁面およびフランジ21Aに接する溶接部4Bとが形成される。このように複数の支圧板3A,3Bが分離して配置され、それぞれの支圧板と支持部材との間に溶接部4A,4Bが形成される場合も、溶接部の周辺での局所的な変形が防止され、支持部材の回転変形に対して安定して剛性および耐力を発揮することができる。
【0021】
なお、上記で図4から図6を参照して説明した例では、貫通孔31A,31Bおよび溶接部4A,4Bが支持部材であるH形鋼2のフランジ21A上で、ウェブ22に対して両側にあたる位置にそれぞれ配置されている。このような構成によって、支持部材であるH形鋼2の幅方向の対称軸の両側に接合部が形成され、支持部材の回転変形に対して安定して剛性および耐力を発揮することができる。なお、H形鋼2に対する貫通孔31A,31Bおよび溶接部4A,4Bの配置はこれらの例には限られず、例えば以下で説明する例のように貫通孔および溶接部がフランジ21A上でウェブ22に対して片側にあたる位置にのみ配置されてもよい。
【0022】
図7に示された例では、デッキプレート1Aの波付けの方向に対して垂直な方向(y方向)における端部に支圧板3Bが配置され、貫通孔31Bの内壁面とフランジ21Aとに接する溶接部4Bが形成される。このような場合も、デッキプレート1Aと支持部材であるH形鋼2との間で、溶接部の周辺における局所的な変形を防止し、支持部材の回転変形に対して安定して剛性および耐力を発揮することができる。
【0023】
図8に示された例では、デッキプレート1Aの波付けの方向に対して垂直な方向(y方向)における端部に支圧板3が配置され、支圧板3が有する複数の貫通孔31A,31Bのそれぞれに溶接部4A,4Bが形成される。デッキプレート1Aの端部に接合構造が形成される点は図7の例と同様であるが、図8の例では支持部材であるH形鋼2と支圧板3との間に複数の溶接部4A,4Bが形成されることによって、支持部材の回転変形に対してより高い剛性および耐力を発揮することができる。
【0024】
図9Aおよび図9Bに示された例では、図8の例における貫通孔31Aおよび溶接部4A’の代わりに隅肉溶接部5が形成される。隅肉溶接部5は、支圧板3のデッキプレート1Bの端部を越えて延出した部分の端面とフランジ21Aとに接する追加の溶接部である。この場合も、上記の図8の例と同様に、H形鋼2と支圧板3との間に溶接部4Bおよび隅肉溶接部5が形成されることによって、支持部材の回転変形に対して安定して剛性および耐力を発揮することができる。
【0025】
図10に示された例では、デッキプレート1を貫通し、貫通孔31の内壁面およびH形鋼2のフランジ21Aに接して形成される溶接部4Cを形成する溶接金属が、貫通孔31の上端までは充填されていない。このように、溶接部が貫通孔31の内部に溶接金属を充填することによって形成される場合であっても、必ずしも溶接金属を貫通孔の上端まで充填しなくてもよい。貫通孔31の内壁面と溶接金属とが接する十分な面積があれば、支持部材の回転変形に対して安定して剛性および耐力を発揮することができる。
【0026】
図11Aおよび図11Bに示された例では、デッキプレート1を貫通し、貫通孔31の内壁面およびH形鋼2のフランジ21Aに接して形成される溶接部4Dが、貫通孔31の内壁面とフランジ21Aとに接する隅肉溶接部である。本発明の実施形態において形成される溶接部は、支圧板3に形成される貫通孔31の内壁面とフランジ21Aとに接していればよく、必ずしも溶接金属が貫通孔31の内部に充填されることによって形成されなくてもよい。図示された例では隅肉溶接部である溶接部4Dが貫通孔31の全周にわたって形成されているが、貫通孔31の内壁面と溶接金属とが接する十分な面積があれば、溶接部4Dを貫通孔31の周方向の一部だけに形成してもよい。
【0027】
図12に示された例では、デッキプレート1A,1Bの溝底部12が、H形鋼2のフランジ21Aに接合された溝形鋼6に、支圧板3および溶接部4を介して接合される。溝形鋼6は、デッキプレート1A,1Bに底面を向けるように配置されており、デッキプレート1A,1Bは支圧板3および溶接部4を介して同じ溝形鋼6の底面に接合される。溝形鋼6は、例えば図示しない溶接部によってH形鋼2のフランジ21Aに接合される。溝形鋼6は、リップ溝形鋼であってもよい。この場合、H形鋼2および溝形鋼6がデッキプレート1A,1Bの支持部材を構成する。溶接部4は、デッキプレート1A,1Bをそれぞれ貫通し、支圧板3に形成された貫通孔の内壁面および溝形鋼6の底面に接する。また、図12の例では、デッキプレート1A,1Bの波付けの方向に対して垂直な方向に配列される複数の支圧板3が、デッキプレート1A,1Bの継目の両側にそれぞれ配置される。
【0028】
図13に示された例では、図12と同様の接合構造において、デッキプレート1A,1Bの継目でそれぞれの端部が突き合わされる代わりに、端部同士を重ね合わせるラップジョイントが形成される。なお、ラップジョイントは、例えば上記で図5A図5Bに示した例でも適用可能である。
【0029】
図14Aおよび図14Bに示された例では、デッキプレート1Bの波付けの方向に対して垂直な方向(y方向)における端部がH形鋼2のフランジ21Aの面上にある。この例では、上記で図6に示した例における支圧板3Bのみが配置され、貫通孔31Bの内壁面とフランジ21Aとに接する溶接部4Bが形成される。このような場合も、デッキプレート1Bと支持部材であるH形鋼2との間で、溶接部の周辺における局所的な変形を防止し、支持部材の回転変形に対して安定して剛性および耐力を発揮することができる。
【0030】
図15Aおよび図15Bに示された例では、図14の例と同様にデッキプレート1Bの波付けの方向に対して垂直な方向(y方向)における端部に形成される接合構造において、支圧板3がデッキプレート1Bの端部を越えて延出する。支圧板3のデッキプレート1B上の部分にある貫通孔31Bには上記で説明した例と同様の溶接部4Bが形成されるのに対して、支圧板3のデッキプレート1Bの端部を越えて延出した部分にある貫通孔31Aに形成される溶接部4A’は、貫通孔31Aの内壁面およびフランジ21Aに接するが、デッキプレートは貫通していない。このように支圧板3がデッキプレート1Bの端部を越えて延出し、H形鋼2と支圧板3との間に複数の溶接部4A’,4Bが形成されることによって、支持部材の回転変形に対して安定して剛性および耐力を発揮することができる。
【0031】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれらの例に限定されない。本発明の属する技術の分野の当業者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0032】
1,1A,1B…デッキプレート、11…山部、12…溝底部、2…H形鋼、21A,21B…フランジ、22…ウェブ、3,3A,3B…支圧板、31,31A,31B…貫通孔、4,4A,4B,4C,4D…溶接部、5…隅肉溶接部、6…溝形鋼。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B