IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立オートモティブシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-内燃機関のピストン 図1
  • 特開-内燃機関のピストン 図2
  • 特開-内燃機関のピストン 図3
  • 特開-内燃機関のピストン 図4
  • 特開-内燃機関のピストン 図5
  • 特開-内燃機関のピストン 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029893
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】内燃機関のピストン
(51)【国際特許分類】
   F02F 3/00 20060101AFI20240229BHJP
   F16J 1/04 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
F02F3/00 L
F16J1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132349
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002549
【氏名又は名称】弁理士法人綾田事務所
(72)【発明者】
【氏名】井出 隆
【テーマコード(参考)】
3J044
【Fターム(参考)】
3J044AA20
3J044BA01
3J044CA13
3J044CA14
3J044CA25
3J044DA09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ピストンの強度の確保とフリクション低減を両立する内燃機関のピストンを提供する。
【解決手段】冠部2と、ピストン1の運動方向に沿って冠部から延びてシリンダの内周面と摺動する摺動面を有するスカート部3aとスカート部と一対のピンボス部5aを繋ぐ一対のエプロン部4aとを有し、一対のエプロン部に設けられ、径方向外側に向かって互いの間隔が広くなる一対の第1拡幅部と、一対の第1拡幅部から径方向外側に向かって互いの間隔が狭くなる一対の第1縮幅部とを有する上側屈曲部41aと、径方向外側に向かって互いの間隔が広くなる一対の第2拡幅部と、一対の第2拡幅部から径方向外側に向かって互いの間隔が狭くなる一対の第2縮幅部とを有する下側屈曲部42aとを備え、一対の第1拡幅部の互いの間隔よりも第2拡幅部の互いの間隔が広く、かつ、一対の第1縮幅部の互いの間隔よりも第2縮幅部の互いの間隔が広い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冠部と、ピストンの運動方向に沿って前記冠部から延びてシリンダの内周面と摺動する摺動面を有するスカート部と、前記スカート部と一対のピンボス部を繋ぐ一対のエプロン部と、を有する前記ピストンであって、
前記一対のエプロン部に設けられ、前記ピストンの運動方向の上端側である前記冠部側の部位であって、
径方向外側に向かって互いの間隔が広くなる一対の第1拡幅部と、
前記一対の第1拡幅部から径方向外側に向かって互いの間隔が狭くなる一対の第1縮幅部と、を有する上側屈曲部と、
前記一対エプロン部に設けられ、前記上側屈曲部よりも前記ピストンの運動方向の下端側である前記冠部と反対側の部位であって、
径方向外側に向かって互いの間隔が広くなる一対の第2拡幅部と、
前記一対の第2拡幅部から径方向外側に向かって互いの間隔が狭くなる一対の第2縮幅部と、を有する下側屈曲部と、を備え、
前記一対の第1拡幅部の互いの間隔よりも前記第2拡幅部の互いの間隔が広く、かつ、前記一対の第1縮幅部の互いの間隔よりも前記第2縮幅部の互いの間隔が広い、
ことを特徴とする内燃機関のピストン。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関のピストンにおいて、
前記一対の第1拡幅部および一対の第1縮幅部は直線状であって、
前記一対の第1拡幅部および一対の第1縮幅部の間は第1曲線状部分によって連結され、
前記一対の第2拡幅部および一対の第2縮幅部も直線状であって、
前記一対の第2拡幅部および一対の第2縮幅部の間も第2曲線状部分によって連結されている、
ことを特徴とする内燃機関のピストン。
【請求項3】
請求項2に記載の内燃機関のピストンにおいて、
前記一対のエプロン部は、それぞれ前記下側屈曲部の前記第2拡幅部と前記第2縮幅部の前記ピストンの運動方向の前記下端側の端部が円弧状になっている、
ことを特徴とする内燃機関のピストン。
【請求項4】
請求項1に記載の内燃機関のピストンにおいて、
前記一対のエプロン部は、前記ピストンの運動方向の前記下端側の端部が前記一対のピンボス部の軸方向から見て、前記上端側に凹む一対の凹部を有し、
前記下側屈曲部は前記一対の凹部に沿って形成されている、
ことを特徴とする内燃機関のピストン。
【請求項5】
請求項1に記載の内燃機関のピストンにおいて、
前記下側屈曲部は、外周面に前記ピストンの移動方向に対して角度を持った傾斜面が形成されている、
ことを特徴とする内燃機関のピストン。
【請求項6】
請求項1に記載の内燃機関のピストンにおいて、
前記エプロン部と前記スカート部の繋ぎ部分の内側に肉盛り部があり、
前記肉盛り部の少なくとも一部が前記下側屈曲部と重なっている、
ことを特徴とする内燃機関のピストン。
【請求項7】
請求項1に記載の内燃機関のピストンにおいて、
前記スカート部はスラスト側と反スラスト側にそれぞれ設けられており、
前記上側屈曲部及び前記下側屈曲部は、前記一対のピンボス部と前記スラスト側と前記反スラスト側のスカート部との間にそれぞれ設けられている、
ことを特徴とする内燃機関のピストン。
【請求項8】
請求項1に記載の内燃機関のピストンにおいて、
前記一対の第1拡幅部の前記一対のピンボス部との連結部分に対して、
前記一対の第2拡幅部の前記一対のピンボス部との連結部分が前記一対のピンボス部の軸方向の外側にある、
ことを特徴とする内燃機関のピストン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のピストンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スカート部とピンボス部とを連結し、ピストンピン軸心とピストン軸心とをともに含む平面に対して面対称に配置されるサイドウォール部を有するピストンにおいて、サイドウォール部の少なくとも一部におけるピストンピン軸心に対する角度を、ピストン軸方向におけるスカート部の上部から下部にいくにしたがって大となるように変化させ、ピストンピン軸心と直交する方向のスカート部の剛性を上部から下部にいくにしたがって大とした内燃機関のピストンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3-92544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の内燃機関のピストンでは、スカート部の剛性の最適化は図れるが、流体領域でのフリクションが増加するおそれがあった。
本発明の目的の一つは、ピストンの強度を確保し、スカート部剛性を低下させて、スカート部面圧を適度に下げることで、フリクションの低減を可能にすることができる内燃機関のピストンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態における内燃機関のピストンは、冠部と、ピストンの運動方向に沿って冠部から延びてシリンダの内周面と摺動する摺動面を有するスカート部とスカート部と一対のピンボス部を繋ぐ一対のエプロン部とを有し、一対のエプロン部に設けられ、ピストンの運動方向である軸の上端側である冠部側の部位であって、径方向外側に向かって互いの間隔が広くなる一対の第1拡幅部と、一対の第1拡幅部から径方向外側に向かって互いの間隔が狭くなる一対の第1縮幅部とを有する上側屈曲部と、一対エプロン部に設けられ、上側屈曲部よりもピストンの運動方向の下端側である冠部と反対側の部位であって、径方向外側に向かって互いの間隔が広くなる一対の第2拡幅部と、一対の第2拡幅部から径方向外側に向かって互いの間隔が狭くなる一対の第2縮幅部とを有する下側屈曲部とを備え、一対の第1拡幅部の互いの間隔よりも第2拡幅部の互いの間隔が広く、かつ、一対の第1縮幅部の互いの間隔よりも第2縮幅部の互いの間隔が広いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
よって、本発明にあっては、ピストンの強度の確保とフリクション低減を両立する内燃機関のピストンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1の内燃機関のピストンの斜視図である。
図2】実施形態1の内燃機関のピストンの図1の矢視Cから見た正面図である。
図3】実施形態1の内燃機関のピストンの図2のA-A断面図である。
図4】実施形態1の内燃機関のピストンの図2のB-B断面図である。
図5】実施形態1の内燃機関のピストンの図1の矢視Dから見た一部断面図である。
図6】実施形態1の内燃機関のピストンの図2の下側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1の内燃機関のピストンの斜視図であり、図2は、実施形態1の内燃機関のピストンの図1の矢視Cから見た正面図である。
【0009】
(内燃機関のピストンの全体構成)
内燃機関のピストン1は、不図示のピストンリングが配置される3つのピストンリング溝21、22、23が形成された冠部2と、ピストン1の運動方向である軸Pに沿って冠部2から延びてシリンダ10の内周面10aと摺動する第1摺動面3a1、第2摺動面3b1をそれぞれ有する第1スカート部(スカート部)3a、第2スカート部(スカート部)3bと、第1ピストンピン孔5a1、第2ピストンピン孔5b1をそれぞれ有する一対の第1ピンボス部(ピンボス部)5a、第2ピンボス部(ピンボス部)5bと、第1スカート部3aと一対の第1ピンボス部5a、第2ピンボス部5bを繋ぐ一対の第1エプロン部(エプロン部)4a、第2エプロン部(エプロン部)4bと、第2スカート部3bと一対の第1ピンボス部5a、第2ピンボス部5bを繋ぐ一対の第1エプロン部(エプロン部)4c、第2エプロン部(エプロン部)4dを有している(図3参照)。
【0010】
また、ピストン1の運動方向である軸Pに沿って、第1エプロン部4aは、ピストン1の運動方向である軸Pの上端側である冠部2側の部位の上側屈曲部41aとピストン1の運動方向である軸Pの下端側である冠部2と反対側の部位の下側屈曲部42aを備え、第2エプロン部4bは、ピストン1の運動方向である軸Pの上端側である冠部2側の部位の上側屈曲部41bとピストン1の運動方向である軸Pの下端側である冠部2と反対側の部位の下側屈曲部42bを備える。詳細は、後述する。
さらに、第1エプロン部4a、第1エプロン部4cのピストン1の運動方向である軸Pに沿った下端側の端部には、一対の第1ピンボス部5a、第2ピンボス部5bの軸Q方向から見て、それぞれピストン1の運動方向である軸Pに沿った上端側に凹む凹部43を有して、下側屈曲部42aと下側屈曲部42cは、凹部43に沿って形成されている。
なお、同様に、第2エプロン部4b、第2エプロン部4dのピストン1の運動方向である軸Pに沿った下端側の端部には、一対の第1ピンボス部5a、第2ピンボス部5bの軸Q方向から見て、それぞれピストン1の運動方向である軸Pに沿った上端側に凹む凹部43(第2エプロン部4bは図5参照、第2エプロン部4dは不図示)を有して、下側屈曲部42bと下側屈曲部42dは、凹部43に沿って形成されている。
すなわち、一対のエプロン部4a、4bと一対のエプロン部4c、4dは、それぞれ一対の凹部43を有している。
この凹部43により、一対の第1エプロン部4a、第2エプロン部4bおよび一対の第1エプロン部4c、第2エプロン部4dの軽量化が図れとともに、強度も確保することができる。
また、第1エプロン部4aの下側屈曲部42a、第2エプロン部4bの下側屈曲部42bの外周面には、ピストン1の運動方向である軸Pに対して、所定角度を持った傾斜面44が形成されている。
これにより、抜き勾配を有するため、型から抜きやすくすることができる。
なお、図示はしないが、第1エプロン部4cの下側屈曲部42c、第2エプロン部4dの下側屈曲部42dの外周面にも、ピストン1の運動方向である軸Pに対して、所定角度を持った傾斜面44が形成されている。
【0011】
(エプロン部の構成)
図3は、実施形態1の内燃機関のピストンの図2のA-A断面図である。
すなわち、図3は、第1エプロン部4a、第2エプロン部4bの上側屈曲部41a、41bおよび第1エプロン部4c、第2エプロン部4dの上側屈曲部41c、41dのピストン1の運動方向である軸Pに直交する断面図である。
【0012】
第1スカート部3aの両端と一対の第1ピンボス部5aと第2ピンボス部5bとを繋ぐ一対の第1エプロン部4a、第2エプロン部4bの上側屈曲部41a、41bは、径方向外側に向かって互いの間隔が広くなる直線状の一対の第1拡幅部41a1、41b1と、一対の第1拡幅部41a1、41b1の径方向外側に連結する一対の第1曲線状部分41a3、41b3と、一対の第1曲線状部分41a3、41b3の径方向外側に連結し、径方向外側に向かって互いの間隔が狭くなる直線状の一対の第1縮幅部41a2、41b2から構成されている。
また、第2スカート部3bの両端と一対の第1ピンボス部5aと第2ピンボス部5bとを繋ぐ一対の第1エプロン部4c、第2エプロン部4dの上側屈曲部41c、41dは、径方向外側に向かって互いの間隔が広くなる直線状の一対の第1拡幅部41c1、41d1と、一対の第1拡幅部41c1、41d1の径方向外側に連結する一対の第1曲線状部分41c3、41d3と、一対の第1曲線状部分41c3、41d3の径方向外側に連結し、径方向外側に向かって互いの間隔が狭くなる直線状の一対の第1縮幅部41c2、41d2から構成されている。
このように、一対の第1拡幅部41a1、41b1、一対の第1縮幅部41a2、41b2、一対の第1拡幅部41c1、41d1、一対の第1縮幅部41c2、41d2を直線状に形成することにより、曲線状にするよりも剛性を低下させることができる。
なお、一対の第1拡幅部41a1、41b1および一対の第1拡幅部41c1、41d1の互いの間隔a1は、一対の第1縮幅部41a2、41b2および一対の第1縮幅部41c2、41d2の互いの間隔a2より広い。
なお、一対の第1拡幅部41a1、41b1と一対の第1ピンボス部5aと第2ピンボス部5bおよび一対の第1拡幅部41c1、41d1と一対の第1ピンボス部5aと第2ピンボス部5bとを連結する一対の連結部分R1の互いの間隔を、間隔c1とする。
【0013】
図4は、実施形態1の内燃機関のピストンの図2のB-B断面図である。
すなわち、図4は、第1エプロン部4a、第2エプロン部4bの下側屈曲部42a、42bおよび第1エプロン部4c、第2エプロン部4dの下側屈曲部42c、42dのピストン1の運動方向である軸Pに直交する断面図である。
【0014】
第1スカート部3aの両端と一対の第1ピンボス部5aと第2ピンボス部5bとを繋ぐ一対の第1エプロン部4a、第2エプロン部4bの下側屈曲部42a、42bは、径方向外側に向かって互いの間隔が広くなる直線状の一対の第2拡幅部42a1、42b1と、一対の第2拡幅部42a1、42b1の径方向外側に連結する一対の第2曲線状部分42a3、42b3と、一対の第2曲線状部分42a3、42b3の径方向外側に連結し、径方向外側に向かって互いの間隔が狭くなる直線状の一対の第2縮幅部42a2、42b2から構成されている。
また、第2スカート部3bの両端と一対の第1ピンボス部5aと第2ピンボス部5bとを繋ぐ一対の第1エプロン部4c、第2エプロン部4dの下側屈曲部42c、42dは、径方向外側に向かって互いの間隔が広くなる直線状の一対の第2拡幅部42c1、42d1と、一対の第2拡幅部42c2、42d2の径方向外側に連結する一対の第2曲線状部分42c3、42d3と、一対の第2曲線状部分42c3、42d3の径方向外側に連結し、径方向外側に向かって互いの間隔が狭くなる直線状の一対の第2縮幅部42c2、42d2から構成されている。
このように、一対の第2拡幅部42a1、42b1、一対の第2縮幅部42a2、42b2、一対の第2拡幅部42c1、42d1、一対の第2縮幅部42c2、42d2を直線状に形成することにより、曲線状にするよりも剛性を低下させることができる。
なお、一対の第2拡幅部42a1、42b1および一対の第2拡幅部42c1、42d1の互いの間隔b1は、一対の第2縮幅部42a2、41b2および一対の第2縮幅部42c2、42d2の互いの間隔b2より広い。
なお、一対の第2拡幅部42a1、42b1と一対の第1ピンボス部5aと第2ピンボス部5bおよび一対の第2拡幅部42c1、42d1と第1ピンボス部5aと第2ピンボス部5bとを連結する一対の連結部分R2の互いの間隔を、間隔c2とする。
【0015】
ここで、一対の第2拡幅部42a1、42b1および一対の第2拡幅部42c1、42d1の互いの間隔b1は、一対の第1拡幅部41a1、41b1および一対の第1拡幅部41c1、41d1の互いの間隔a1より広く、一対の第2縮幅部42a2、42b2および一対の第2縮幅部42c2、42d2の互いの間隔b2は、一対の第1縮幅部41a2、41b2および一対の第1縮幅部41c2、41d2の互いの間隔a2より広く設定してある。
これにより、ピストン1の強度の確保し、第1スカート部3a、第2スカート部3bの剛性を最適に低下させて、第1スカート部3a、第2スカート部3bのシリンダ10との面圧を最適化することで、フリクションの低減を可能にすることができる。
また、一対の第2拡幅部42a1、42b1と一対の第1ピンボス部5aと第2ピンボス部5bおよび一対の第2拡幅部42c1、42d1と第1ピンボス部5aと第2ピンボス部5bとを連結する一対の連結部分R2の互いの間隔c2は、一対の第1拡幅部41a1、41b1と一対の第1ピンボス部5aと第2ピンボス部5bおよび一対の第1拡幅部41c1、41d1と一対の第1ピンボス部5aと第2ピンボス部5bとを連結する一対の連結部分R1の互いの間隔c1より広い。
すなわち、一対の連結部分R1に対して一対の連結部分R2は、一対の第1ピンボス部5aと第2ピンボス部5bの軸Q方向の外側に設定している。
これにより、一対の第1エプロン部4a、第2エプロン部4bと、一対の第1エプロン部4c、第2エプロン部4dの径方向内側の起点を、ピストン1の運動方向である軸Pの上下で異ならせることができるので、より、ピストン1の強度の確保とフリクション低減を両立することができる。
【0016】
図5は、実施形態1の内燃機関のピストンの図1の矢視Dから見た一部断面図である。
【0017】
第2エプロン部4bと第1スカート部3aの繋ぎ部分の内側および第1エプロン部4cと第2スカート部3bとの繋ぎ部分の内側には肉盛り部45が設けられており、肉盛り部45の少なくとも一部は、下側屈曲部42b、42cと重なっている。
なお、図示はしないが、第1エプロン部4aと第1スカート部3aの繋ぎ部分の内側、および、第2エプロン部4dと第2スカート部3bとの繋ぎ部分にも同様に肉盛り部が設けてある。
これにより、一対の第1エプロン部4a、第2エプロン部4bと、一対の第1エプロン部4c、第2エプロン部4dの薄肉を支えることで、ピストン1の強度を確保することができる。
また、第1スカート部3aは、シリンダ10に対するスラストTH側に、第2スカート部3bは、シリンダ10に対する反スラストAT側に設けられている。
このため、一対の第1エプロン部4a、第2エプロン部4bの上側屈曲部41a、41bと一対の第1エプロン部4a、第2エプロン部4bの下側屈曲部42a、42bは、一対の第1ピンボス部5a、第2ピンボス部5bとスラストTH側に設けられた第1スカート部3aとの間に設けられ、一対の第1エプロン部4c、第2エプロン部4dの上側屈曲部41c、41dと一対の第1エプロン部4c、第2エプロン部4dの下側屈曲部42c、42dは、一対の第1ピンボス部5aと第2ピンボス部5bと反スラストAT側に設けられた第2スカート部3bとの間に設けられている。
これにより、ピストン強度を確保し、かつ、スラストTH側および反スラストAT側の両方の剛性を低下させ、最適化することができるので、フリクション低減を可能にすることができる。
【0018】
図6は、実施形態1の内燃機関のピストンの図2の下側から見た平面図である。
【0019】
第1エプロン部4aの第2拡幅部42a1、第2縮幅部42a2のピストン1の運動方向である軸Pの下端側の端部46aと、第2エプロン部4bの第2拡幅部42b1、第2縮幅部42b2のピストン1の運動方向である軸Pの下端側の端部46bは、ともに円弧状Sに形成している。
また、同様に、第1エプロン部4cの第2拡幅部42c1、第2縮幅部42c2のピストン1の運動方向である軸Pの下端側の端部46cと、第2エプロン部4dの第2拡幅部42d1、第2縮幅部42d2のピストン1の運動方向である軸Pの下端側の端部46dも、ともに円弧状Sに形成している。
これにより、剛性を高くすることができる。
【0020】
次に、作用効果を説明する。
実施形態1の内燃機関のピストンの作用効果を以下に列挙する。
【0021】
(1)内燃機関のピストン1は、冠部2と、ピストン1の運動方向である軸Pに沿って冠部2から延びてシリンダ10の内周面10aと摺動する摺動面を有するスカート部3a、3bとスカート部3aと一対のピンボス部5a、5bを繋ぐ一対の第1エプロン部4a、第2エプロン部4bと、スカート部3bと一対のピンボス部5a、5bを繋ぐ一対の第1エプロン部4c、第2エプロン部4dとを有し、一対の第1エプロン部4a、第2エプロン部4bと、一対の第1エプロン部4c、第2エプロン部4dに設けられ、ピストン1の運動方向である軸Pの上端側である冠部2側の部位であって、径方向外側に向かって互いの間隔が広くなる一対の第1拡幅部41a1、41b1と一対の第1拡幅部41c1、41d1と、一対の第1拡幅部41a1、41b1と一対の第1拡幅部41c1、41d1から径方向外側に向かって互いの間隔が狭くなる一対の第1縮幅部41a2、41b2と一対の第2縮幅部41c2、41d2を有する一対の上側屈曲部41a、41bと一対の上側屈曲部41c、41dと、一対のエプロン部4a、4bに設けられ、一対の屈曲部41a、41bと一対の上側屈曲部41c、41dよりもピストンの運動方向である軸Pの下端側である冠部2と反対側の部位であって、径方向外側に向かって互いの間隔が広くなる一対の第2拡幅部42a1、42b1と一対の第2拡幅部42c1、42d1と、一対の第2拡幅部42a1、42b1と一対の第2拡幅部42c1、42d1から径方向外側に向かって互いの間隔が狭くなる一対の第2縮幅部42a2、42b2と一対の第2縮幅部42c2、42d2を有する一対の下側屈曲部42a、42bと一対の下側屈曲部42c、42dとを備え、一対の第1拡幅部41a1、41b1と一対の第1拡幅部41c1、41d1の互いの間隔a1よりも一対の第2拡幅部42a1、42b1と一対の第2拡幅部42c1、42d1の互いの間隔b1が広く、かつ、一対の第1縮幅部41a2、41b2と一対の第2縮幅部41c2、41d2の互いの間隔a2よりも一対の第2縮幅部42a2、42b2と一対の第2縮幅部42c2、42d2の互いの間隔b2が広くなるように設定した。
よって、ピストン1の強度の確保し、一対の第1スカート部3a、第2スカート部3bの剛性を最適に低下させて、一対の第1スカート部3a、第2スカート部3bのシリンダ10との面圧を最適化することで、フリクションの低減を可能にすることができる。
【0022】
(2)一対の第1拡幅部41a1、41b1、一対の第1縮幅部41a2、41b2、一対の第1拡幅部41c1、41d1、一対の第1縮幅部41c2、41d2、一対の第2拡幅部42a1、42b1、一対の第2縮幅部42a2、41b2、一対の第2拡幅部42c1、42d1、一対の第2縮幅部42c2、42d2は直線状に形成するようにした。
よって、それぞれを直線状に形成することにより、曲線状にするよりも剛性を低下させることができる。
【0023】
(3)第1エプロン部4aの第2拡幅部42a1、第2縮幅部42a2のピストン1の運動方向である軸Pの下端側の端部46aと、第2エプロン部4bの第2拡幅部42b1、第2縮幅部42b2のピストン1の運動方向である軸Pの下端側の端部46bおよび第1エプロン部4cの第2拡幅部42c1、第2縮幅部42c2のピストン1の運動方向である軸Pの下端側の端部46cと、第2エプロン部4dの第2拡幅部42d1、第2縮幅部42d2のピストン1の運動方向である軸Pの下端側の端部46dを円弧状Sに形成するようにした。
よって、剛性を高くすることができる。
【0024】
(4)第1エプロン部4aの第2拡幅部42a1、第2縮幅部42a2のピストン1の運動方向である軸Pの下端側の端部46aと、第2エプロン部4bの第2拡幅部42b1、第2縮幅部42b2のピストン1の運動方向である軸Pの下端側の端部46bは、ともに円弧状Sに形成し、同様に、第1エプロン部4cの第2拡幅部42c1、第2縮幅部42c2のピストン1の運動方向である軸Pの下端側の端部46cと、第2エプロン部4dの第2拡幅部42d1、第2縮幅部42d2のピストン1の運動方向である軸Pの下端側の端部46dも、円弧状Sに形成するようにした。
よって、一対の第1エプロン部4a、第2エプロン部4bおよび一対の第1エプロン部4c、第2エプロン部4dの軽量化が図れとともに、強度も確保することができる。
【0025】
(5)第1エプロン部4aの下側屈曲部42a、第2エプロン部4bの下側屈曲部42b、第1エプロン部4cの下側屈曲部42c、第2エプロン部4dの下側屈曲部42dの外周面に、ピストン1の運動方向である軸Pに対して、所定角度を持った傾斜面44を形成するようにした。
よって、抜き勾配を有するため、型から抜きやすくすることができる。
【0026】
(6)一対の第1エプロン部4a、第2エプロン部4bと第1スカート部3aの繋ぎ部分の内側および一対の第1エプロン部4c、第2エプロン部4dと第2スカート部3bの繋ぎ部分の内側には肉盛り部45を設け、肉盛り部45の少なくとも一部は、下側屈曲部42a、42b、42c、42dと重なるようにした。
よって、一対の第1エプロン部4a、第2エプロン部4bと、一対の第1エプロン部4c、第2エプロン部4dの薄肉を支えることで、ピストン1の強度を確保することができる。
【0027】
(7)第1スカート部3aは、シリンダ10に対するスラストTH側に、第2スカート部3bは、シリンダ10に対する反スラストAT側に設けるようにした。
よって、ピストン強度を確保し、かつ、スラストTH側および反スラストAT側の両方の剛性を低下させ、最適化することができるので、フリクション低減を可能にすることができる。
【0028】
(8)一対の連結部分R1に対して一対の連結部分R2は、一対の第1ピンボス部5aと第2ピンボス部5bの軸Q方向の外側に設定するようにした。
よって、一対の第1エプロン部4a、第2エプロン部4bと、一対の第1エプロン部4c、第2エプロン部4dの径方向内側の起点を、ピストン1の運動方向である軸Pの上下で異ならせることができるので、より、ピストン1の強度の確保とフリクション低減を両立することができる。
【0029】
〔他の実施形態〕
以上、本発明を実施するための実施形態を説明したが、本発明の具体的な構成は実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、実施形態では、シリンダ10に対するスラストTH側の第1スカート部3aと反スラストAT側の第2スカート部3bの両方に、本願発明を適用しているが、少なくともスラストTH側の第1スカート部3aのみに設けてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 ピストン、2 冠部、3a 第1スカート部(スカート部)、3b 第2スカート部(スカート部)、4a 第1エプロン部(エプロン部)、4b 第2エプロン部(エプロン部)、4c 第1エプロン部(エプロン部)、4d 第2エプロン部(エプロン部)、41a 上側屈曲部、41b 上側屈曲部、41c 上側屈曲部、41d 上側屈曲部、41a1 第1拡幅部、41b1 第1拡幅部、41c1 第1拡幅部、41d1 第1拡幅部、41a2 第1縮幅部、41b2 第1縮幅部、41c2 第1縮幅部、41d2 第1縮幅部、41a3 第1曲線状部分、41b3 第1曲線状部分、41c3 第1曲線状部分、41d3 第1曲線状部分、42a 下側屈曲部、42b 下側屈曲部、42c 下側屈曲部、42d 下側屈曲部、42a1 第2拡幅部、42b1 第2拡幅部、42c1 第2拡幅部、42d1 第2拡幅部、42a2 第2縮幅部、42b2 第2縮幅部、42c2 第2縮幅部、42d2 第2縮幅部、42a3 第2曲線状部分、42b3 第2曲線状部分、42c3 第2曲線状部分、42d3 第2曲線状部分、43 凹部、44 傾斜面、45 肉盛り部、46a 下端側の端部、46b 下端側の端部、46c 下端側の端部、46d 下端側の端部、5a 第1ピンボス部(ピンボス部)、5b 第2ピンボス部(ピンボス部)、a1 一対の第1拡幅部の互いの間隔、a2 一対の第1縮幅部の互いの間隔、b1 一対の第2拡幅部の互いの間隔、b2 一対の第2縮幅部の互いの間隔、c1 連結部分の互いの間隔、c2 連結部分の互いの間隔、P ピストンの運動方向である軸、Q ピンボス部の軸、R1 連結部分、R2 連結部分、S 円弧状、TH スラスト、AT 反スラスト
図1
図2
図3
図4
図5
図6