(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029894
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】蒸気滅菌・殺菌器のコントローラ
(51)【国際特許分類】
A61L 2/26 20060101AFI20240229BHJP
A61L 2/07 20060101ALI20240229BHJP
A61L 2/24 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
A61L2/26
A61L2/07
A61L2/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132350
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 裕二
(72)【発明者】
【氏名】藤井 慎二
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA01
4C058BB05
4C058CC05
4C058DD13
(57)【要約】
【課題】蒸気滅菌・殺菌器を適正に運転させること。
【解決手段】蒸気滅菌・殺菌器5のコントローラ6は、ボイラ2から供給される蒸気を使用する第1蒸気滅菌・殺菌器51を起動させる起動信号を受信する起動信号受信部61と、起動信号が受信され、ボイラ2から第1蒸気滅菌・殺菌器51に供給される蒸気が不足すると判定した場合、第1蒸気滅菌・殺菌器51の所定の処理の実施を待機させる待機指令を出力する待機指令部64と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラから供給される蒸気を使用する第1蒸気滅菌・殺菌器を起動させる起動信号を受信する起動信号受信部と、
前記起動信号が受信され、前記ボイラから前記第1蒸気滅菌・殺菌器に供給される蒸気が不足すると判定した場合、前記第1蒸気滅菌・殺菌器の所定の処理の実施を待機させる待機指令を出力する待機指令部と、を備える、
蒸気滅菌・殺菌器のコントローラ。
【請求項2】
前記ボイラから発生した蒸気の量を示す発生蒸気量を算出する発生蒸気量算出部と、
前記ボイラから供給される蒸気を使用する第2蒸気滅菌・殺菌器の運転状態を取得する運転状態取得部と、を備え、
前記待機指令部は、前記発生蒸気量と前記運転状態とに基づいて、前記ボイラから前記第1蒸気滅菌・殺菌器に供給される蒸気が不足するか否かを判定する、
請求項1に記載の蒸気滅菌・殺菌器のコントローラ。
【請求項3】
前記発生蒸気量と前記運転状態とに基づいて、前記ボイラから前記第1蒸気滅菌・殺菌器に供給される蒸気が充足すると判定した場合、前記待機指令部は、前記待機を解除する、
請求項2に記載の蒸気滅菌・殺菌器のコントローラ。
【請求項4】
前記第1蒸気滅菌・殺菌器は、滅菌対象が収容されるチャンバを有し、
前記所定の処理は、前記ボイラから供給された蒸気を使用して前記第1蒸気滅菌・殺菌器のチャンバから空気を排出する空気排出処理である、
請求項1に記載の蒸気滅菌・殺菌器のコントローラ。
【請求項5】
前記第1蒸気滅菌・殺菌器は、滅菌対象が収容されるチャンバと、前記チャンバの周囲に配置されるジャケットと、を有し、
前記待機指令部は、前記ジャケットの圧力及び温度の少なくとも一方に基づいて、冷態であるか又は温態であるかを判定し、
前記所定の処理は、冷態において前記ボイラから供給された蒸気を前記ジャケットに取り入れて前記第1蒸気滅菌・殺菌器のチャンバを予熱する予熱処理である、
請求項1に記載の蒸気滅菌・殺菌器のコントローラ。
【請求項6】
前記所定の処理は、温態において前記ボイラから供給された蒸気を使用して前記第1蒸気滅菌・殺菌器のチャンバから空気を排出する空気排出処理である、
請求項5に記載の蒸気滅菌・殺菌器のコントローラ。
【請求項7】
前記第1蒸気滅菌・殺菌器及び前記第2蒸気滅菌・殺菌器の少なくとも一部に優先順位を設定する優先順位設定部と、
前記優先順位に基づいて、前記第1蒸気滅菌・殺菌器及び前記第2蒸気滅菌・殺菌器の運転を制御する運転制御部と、を備える、
請求項3に記載の蒸気滅菌・殺菌器のコントローラ。
【請求項8】
前記ボイラが複数設けられ、
前記発生蒸気量算出部は、稼働可能なボイラの台数、稼働中のボイラの燃焼状態、及びボイラに接続されるヘッダの圧力を示すヘッダ圧の少なくとも一つに基づいて、前記発生蒸気量を算出する、
請求項2に記載の蒸気滅菌・殺菌器のコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蒸気滅菌・殺菌器のコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気滅菌・殺菌器に係る技術分野において、特許文献1に開示されているような滅菌設備が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蒸気滅菌・殺菌器の運転において、ボイラから蒸気滅菌・殺菌器に供給される蒸気が使用される。ある蒸気滅菌・殺菌器の運転中に別の蒸気滅菌・殺菌器を起動させる場合、ボイラから蒸気滅菌・殺菌器に供給される蒸気が不足する可能性がある。ボイラから蒸気滅菌・殺菌器に供給される蒸気の不足に起因して、蒸気滅菌・殺菌器の運転が中断してしまうと、滅菌・殺菌対象が滅菌・殺菌されなくなってしまう。ボイラから蒸気滅菌・殺菌器に供給される蒸気の不足が発生しないように、例えば多数のボイラを常時稼働させると、ボイラが不必要にエネルギーを消費してしまう。
【0005】
本開示は、蒸気滅菌・殺菌器を適正に運転させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従えば、ボイラから供給される蒸気を使用する第1蒸気滅菌・殺菌器を起動させる起動信号を受信する起動信号受信部と、起動信号が受信され、ボイラから第1蒸気滅菌・殺菌器に供給される蒸気が不足すると判定した場合、第1蒸気滅菌・殺菌器の所定の処理の実施を待機させる待機指令を出力する待機指令部と、を備える、蒸気滅菌・殺菌器のコントローラが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、蒸気滅菌・殺菌器が適正に運転される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る蒸気システムを模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る蒸気滅菌器を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る蒸気滅菌器の動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態に係るコントローラを示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る待機指令部による判定方法を説明するための図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る蒸気滅菌方法を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、他の実施形態に係る蒸気システムを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示は実施形態に限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
[蒸気システム]
図1は、実施形態に係る蒸気システム1を模式的に示す図である。
図1に示すように、蒸気システム1は、ボイラ2と、ヘッダ3と、圧力センサ4と、蒸気滅菌器5と、コントローラ6とを備える。
【0011】
ボイラ2は、蒸気を発生する。実施形態において、ボイラ2は、複数設けられる。なお、図面の簡略化のため、
図1にはボイラ2が1台のみ図示してある。実施形態において、ボイラ2は、燃料を熱源とする燃料ボイラである。なお、ボイラ2は、電気を熱源とする電気ボイラでもよい。
【0012】
ヘッダ3は、ボイラ2からの蒸気を受け入れる容器である。ヘッダ3は、ボイラ2に接続される。ボイラ2から発生した蒸気は、ヘッダ3に供給される。ボイラ2から発生した蒸気は、ヘッダ3に集められる。
【0013】
圧力センサ4は、ヘッダ3に収容された蒸気の圧力を示すヘッダ圧を検出する。圧力センサ4は、ヘッダ3に設けられる。
【0014】
蒸気滅菌器5は、ボイラ2から供給される蒸気を使用して滅菌対象を滅菌する。実施形態において、蒸気滅菌器5は、複数設けられる。蒸気滅菌器5は、ヘッダ3に接続される。蒸気滅菌器5は、ヘッダ3から供給される蒸気を使用する。
【0015】
コントローラ6は、蒸気滅菌器5を制御する。コントローラ6は、複数の蒸気滅菌器5のそれぞれに設けられる。コントローラ6は、コンピュータシステムを含む。複数のコントローラ6は、相互に接続される。複数のコントローラ6は、相互に通信することができる。複数の蒸気滅菌器5のそれぞれに設けられるコントローラ6のうち、1つのコントローラ6が代表して複数の蒸気滅菌器5を制御したり、複数のコントローラ6が協働して複数の蒸気滅菌器5を制御したりすることができる。
【0016】
[蒸気滅菌器]
図2は、実施形態に係る蒸気滅菌器5を模式的に示す図である。
図2に示すように、蒸気滅菌器5は、チャンバ8と、ジャケット9と、ジャケット給蒸装置10と、ジャケットドレン排出装置11と、ジャケット排気装置12と、減圧装置13と、復圧装置14と、チャンバ給蒸装置15と、チャンバドレン排出装置16と、チャンバ排気装置17と、ジャケット圧力センサ18Aと、チャンバ圧力センサ18Bと、ジャケット温度センサ20Aと、チャンバ温度センサ20Bとを備える。
【0017】
チャンバ8は、滅菌対象が収容される処理空間21を有する。処理空間21は、チャンバ8の内部空間である。チャンバ8の一部に出入口が設けられる。チャンバ8の出入口は、ドア(不図示)により開閉される。蒸気システム1の使用者は、ドアを開けることにより、チャンバ8の出入口を介して、処理空間21に滅菌対象を搬入したり、処理空間21から滅菌対象を搬出したりすることができる。
【0018】
ジャケット9は、チャンバ8の周囲に配置される。ジャケット9は、チャンバ8との間にジャケット空間22を形成する。
【0019】
ジャケット給蒸装置10は、ジャケット9のジャケット空間22に蒸気を供給する。ジャケット給蒸装置10は、ヘッダ3とジャケット空間22とを接続するジャケット給蒸ライン23と、ジャケット給蒸ライン23に配置されるジャケット給蒸弁24とを有する。ヘッダ3からの蒸気は、ジャケット給蒸ライン23を介してジャケット空間22に供給される。ジャケット給蒸装置10は、ジャケット空間22に対する蒸気の供給と供給停止とを切り換えることができる。ジャケット給蒸弁24が開閉されることにより、ジャケット空間22に対する蒸気の供給と供給停止とが切り換えられる。
【0020】
ジャケットドレン排出装置11は、ジャケット空間22において生成されたドレンをジャケット空間22から排出する。ジャケットドレン排出装置11は、ジャケット空間22に接続されるジャケットドレン排出ライン25と、ジャケットドレン排出ライン25に配置される蒸気トラップ26及び逆止弁27とを有する。ジャケット空間22において生成されたドレンは、ジャケットドレン排出ライン25を介してジャケット空間22から排出される。
【0021】
ジャケット排気装置12は、ジャケット9のジャケット空間22から気体を排出する。ジャケット排気装置12は、ジャケット空間22に接続されるジャケット排気ライン28と、ジャケット排気ライン28に配置されるジャケット排気弁29及び逆止弁30とを有する。ジャケット空間22の気体は、ジャケット排気ライン28を介してジャケット空間22から排出される。ジャケット排気弁29が開いた状態でジャケット空間22に蒸気が供給されることにより、ジャケット空間22の気体がジャケット排気ライン28を介してジャケット空間22から追い出される。実施形態において、ジャケット排気弁29は、ジャケット排気弁29を通過する気体の温度に基づいて開閉する温度調整弁である。ジャケット排気弁29は、ジャケット排気弁29を通過する気体の温度が作動温度以上になると閉じる。
【0022】
減圧装置13は、チャンバ8の処理空間21から気体を排出して処理空間21を減圧する。減圧装置13は、処理空間21に接続される真空ライン31と、真空ライン31に配置される真空弁32、真空ポンプ33、及び逆止弁34とを有する。真空ポンプ33が駆動することにより、処理空間21の気体が真空ポンプ33により吸引され、真空ライン31を介して処理空間21から排出される。減圧装置13は、処理空間21の減圧と減圧停止とを切り換えることができる。真空ポンプ33の駆動と駆動停止とが切り換えられることにより、処理空間21の減圧と減圧停止とが切り換えられる。
【0023】
復圧装置14は、減圧されたチャンバ8の処理空間21に外気を供給して処理空間21を復圧する。復圧装置14は、処理空間21に接続される給気ライン35と、給気ライン35に配置される無菌フィルタ36、給気弁37、及び逆止弁38とを有する。処理空間21が減圧された状態で給気弁37を開くことにより、給気ライン35を介して外気が処理空間21に供給される。給気ライン35を介して外気が処理空間21に供給されることにより、処理空間21が復圧される。
【0024】
チャンバ給蒸装置15は、チャンバ8の処理空間21に蒸気を供給する。チャンバ給蒸装置15は、ヘッダ3と処理空間21とを接続するチャンバ給蒸ライン39と、チャンバ給蒸ライン39に配置されるチャンバ給蒸弁40とを有する。ヘッダ3からの蒸気は、チャンバ給蒸ライン39を介して処理空間21に供給される。チャンバ給蒸装置15は、処理空間21に対する蒸気の供給と供給停止とを切り換えることができる。チャンバ給蒸弁40が開閉されることにより、処理空間21に対する蒸気の供給と供給停止とが切り換えられる。
【0025】
チャンバドレン排出装置16は、処理空間21において生成されたドレンを処理空間21から排出する。チャンバドレン排出装置16は、処理空間21に接続されるチャンバドレン排出ライン41と、チャンバドレン排出ライン41に配置される蒸気トラップ42及び逆止弁43とを有する。処理空間21において生成されたドレンは、チャンバドレン排出ライン41を介して処理空間21から排出される。
【0026】
チャンバ排気装置17は、チャンバ8の処理空間21から気体を排出する。チャンバ排気装置17は、チャンバドレン排出ライン41の少なくとも一部を介して処理空間21に接続されるチャンバ排気ライン44と、チャンバ排気ライン44に配置されるチャンバ排気弁45及び逆止弁46とを有する。処理空間21の気体は、チャンバドレン排出ライン41の少なくとも一部及びチャンバ排気ライン44を介して処理空間21から排出される。チャンバ排気弁45が開いた状態で処理空間21に蒸気が供給されることにより、処理空間21の気体がチャンバドレン排出ライン41の少なくとも一部及びチャンバ排気ライン44を介して処理空間21から追い出される。
【0027】
真空ライン31の下流側の端部、ジャケット排気ライン28の下流側の端部、及びチャンバ排気ライン44の下流側の端部のそれぞれは、チャンバドレン排出ライン41の第1部分41Aに接続される。ジャケットドレン排出ライン25の下流側の端部は、チャンバドレン排出ライン41の第2部分41Bに接続される。第1部分41Aは、逆止弁43よりも下流側に規定される。第2部分41Bは、第1部分41Aよりも下流側に規定される。第1部分41Aと第2部分41Bとの間のチャンバドレン排出ライン41に逆止弁47が配置される。
【0028】
ジャケット圧力センサ18Aは、ジャケット9のジャケット空間22の圧力を検出する。
【0029】
チャンバ圧力センサ18Bは、チャンバ8の処理空間21の圧力を検出する。
【0030】
ジャケット温度センサ20Aは、ジャケット9のジャケット空間22の温度を検出する。
【0031】
チャンバ温度センサ20Bは、チャンバ8の処理空間21の温度を検出する。
【0032】
[蒸気滅菌器の動作]
図3は、実施形態に係る蒸気滅菌器5の動作を示すフローチャートである。蒸気滅菌器5は、蒸気滅菌器5を起動させるために操作される起動スイッチを有する。起動スイッチは、蒸気滅菌器5の使用者に操作される。起動スイッチが操作されると、蒸気滅菌器5が起動され、蒸気滅菌器5の運転が開始される。
【0033】
蒸気滅菌器5は、予熱処理(ステップSA1)と、空気排出処理(ステップSA2)と、滅菌処理(ステップSA3)と、蒸気排出処理(ステップSA4)と、乾燥・冷却処理(ステップSA5)とを実施する。
【0034】
予熱処理(ステップSA1)とは、ボイラ2から供給された蒸気をジャケット9のジャケット空間22に取り入れてチャンバ8を予熱する処理をいう。予熱処理において、ジャケット給蒸装置10は、ジャケット9のジャケット空間22に蒸気を供給する。ヘッダ3からの蒸気は、ジャケット給蒸ライン23を介してジャケット空間22に供給される。
【0035】
予熱処理においては、ジャケット空間22の空気が蒸気に置換される。ジャケット空間22の空気を蒸気に置換する場合、ジャケット給蒸装置10によりジャケット空間22に蒸気が供給され、ジャケット排気装置12によりジャケット空間22から気体が排出される。実施形態においては、ジャケット排気弁29が開いた状態でジャケット給蒸弁24が開くことにより、ジャケット空間22に蒸気が供給され、ジャケット空間22から空気が押し出される。ジャケット空間22に蒸気が供給されることにより、ジャケット空間22の温度が上昇する。また、ジャケット排気弁29を通過する気体の温度が上昇する。ジャケット排気弁29を通過する気体の温度が作動温度以上になると、ジャケット排気弁29が閉じる。ジャケット排気弁29が閉じることにより、ジャケット排気装置12によるジャケット空間22からの気体の排出が停止される。ジャケット空間22からの気体の排出が停止された状態で、ジャケット給蒸装置10によりジャケット空間22に蒸気が供給される。ジャケット圧力センサ18Aの検出結果に基づいて、ジャケット空間22が一定の圧力を維持するように、ジャケット給蒸装置10による蒸気の供給が制御される。ジャケット空間22において生成されたドレンは、ジャケットドレン排出装置11によりジャケット空間22から排出される。
【0036】
空気排出処理(ステップSA2)とは、ボイラ2から供給された蒸気を使用してチャンバ8の処理空間21から空気を排出する処理をいう。空気排出処理において、チャンバ給蒸装置15は、チャンバ8の処理空間21に蒸気を供給する。ヘッダ3からの蒸気は、チャンバ給蒸ライン39を介して処理空間21に供給される。
【0037】
空気排出処理においては、減圧装置13による減圧が停止された状態で、チャンバ給蒸装置15により処理空間21に蒸気が供給され、チャンバ排気装置17により処理空間21から気体が排出される。実施形態においては、チャンバ排気弁45が開いた状態でチャンバ給蒸弁40が開くことにより、処理空間21に蒸気が供給され、処理空間21から空気が押し出される。チャンバ給蒸装置15による蒸気の供給とチャンバ排気装置17による気体の排出とが終了した後、減圧装置13により処理空間21が減圧される。実施形態においては、チャンバ給蒸弁40及びチャンバ排気弁45のそれぞれが閉じた状態で真空弁32が開くことにより、処理空間21が減圧される。減圧装置13による減圧が終了した後、チャンバ給蒸装置15により処理空間21に蒸気が供給される。処理空間21が大気圧になるまでチャンバ給蒸装置15により処理空間21に蒸気が供給された後、減圧装置13により処理空間21が減圧される。処理空間21の減圧と処理空間21に対する蒸気の供給とが複数回繰り返されることにより、処理空間21から空気が排除される。
【0038】
滅菌処理(ステップSA3)は、空気排出処理の後に実施される。滅菌処理とは、ボイラ2から供給された蒸気を使用してチャンバ8の処理空間21に配置されている滅菌対象を滅菌する処理をいう。滅菌処理において、チャンバ給蒸装置15は、チャンバ8の処理空間21に蒸気を供給する。ヘッダ3からの蒸気は、チャンバ給蒸ライン39を介して処理空間21に供給される。
【0039】
滅菌処理においては、減圧装置13による減圧が停止された状態で、チャンバ給蒸装置15により処理空間21に蒸気が供給される。チャンバ温度センサ20Bの検出結果に基づいて、処理空間21が規定の滅菌温度に規定の滅菌時間だけ維持されるように、チャンバ給蒸装置15による蒸気の供給が制御される。
【0040】
蒸気排出処理(ステップSA4)は、滅菌処理の後に実施される。蒸気排出処理とは、チャンバ8の処理空間21から蒸気を排出する処理をいう。
【0041】
蒸気排出処理においては、チャンバ給蒸装置15による蒸気の供給が停止された状態で、チャンバ排気装置17により処理空間21から気体が排出される。実施形態においては、チャンバ給蒸弁40が閉じた状態でチャンバ排気弁45が開くことにより、処理空間21から蒸気が排出される。
【0042】
乾燥・冷却処理(ステップSA5)は、蒸気排出処理の後に実施される。乾燥処理とは、チャンバ8の処理空間21に配置されている滅菌対象を乾燥する処理をいう。冷却処理とは、チャンバ8の処理空間21に配置されている滅菌対象を冷却する処理をいう。蒸気システム1の使用者は、滅菌対象に基づいて、乾燥処理及び冷却処理の一方の処理を選択する。
【0043】
乾燥処理においては、減圧装置13により処理空間21が減圧される。処理空間21が減圧されることにより、滅菌対象が乾燥される。冷却処理においては、滅菌対象が処理空間21において所定時間放置される。
【0044】
ボイラ2から供給される蒸気の使用量が最も多い処理は、蒸気滅菌器5が冷態起動であるか温態起動であるかに基づいて決定される。冷態とは、起動前の蒸気滅菌器5の温度が所定温度と同じ又は所定温度を下回る状態をいう。冷態起動とは、起動前の蒸気滅菌器5の温度が所定温度と同じ又は所定温度を下回る状態で蒸気滅菌器5を起動することをいう。温態とは、起動前の蒸気滅菌器5の温度が所定温度を上回る状態をいう。温態起動とは、起動前の蒸気滅菌器5の温度が所定温度を上回る状態で蒸気滅菌器5を起動することをいう。所定温度は、起動前の蒸気滅菌器5の周囲の雰囲気温度でもよいし、予め定められた規定温度でもよい。
【0045】
冷態であるか又は温態であるかは、蒸気滅菌器5が起動前のジャケット9のジャケット空間22の圧力及び温度の少なくとも一方に基づいて判定される。すなわち、冷態であるか又は温態であるかは、蒸気滅菌器5が起動前のジャケット圧力センサ18Aの検出データ及びジャケット温度センサ20Aの検出データの少なくとも一方に基づいて判定される。蒸気滅菌器5がジャケット9を有しない場合、冷態であるか又は温態であるかは、蒸気滅菌器5が起動前のチャンバ8の処理空間21の温度に基づいて判定される。すなわち、蒸気滅菌器5がジャケット9を有しない場合、冷態であるか又は温態であるかは、蒸気滅菌器5が起動前のチャンバ温度センサ20Bの検出データに基づいて判定される。
【0046】
冷態において、予熱処理、空気排出処理、滅菌処理、蒸気排出処理、及び乾燥・冷却処理のうち、ボイラ2から供給される蒸気の使用量が最も多い処理は、予熱処理であり、予熱処理に次いで蒸気の使用量が多い処理は、空気排出処理であり、空気排出処理に次いで蒸気の使用量が多い処理は、滅菌処理である。
【0047】
温態において、予熱処理、空気排出処理、滅菌処理、蒸気排出処理、及び乾燥・冷却処理のうち、ボイラ2から供給される蒸気の使用量が最も多い処理は、空気排出処理であり、空気排出処理に次いで蒸気の使用量が多い処理は、予熱処理であり、予熱処理に次いで蒸気の使用量が多い処理は、滅菌処理である。
【0048】
予熱処理が実施されない場合、冷態及び温態の両方において、ボイラ2から供給される蒸気の使用量が最も多い処理は、空気排出処理であり、空気排出処理に次いで蒸気の使用量が多い処理は、滅菌処理である。蒸気排出処理及び乾燥・冷却処理において、ボイラ2から供給される蒸気は実質的に使用されない。
【0049】
予熱処理が実施される場合、起動スイッチが操作されると、ボイラ2から供給された蒸気をジャケット9に取り入れてチャンバ8を予熱する予熱処理が実施される。予熱処理が実施された後、空気排出処理が実施される。蒸気滅菌器5が温態において起動スイッチが操作されると、ボイラ2から供給された蒸気を使用してチャンバ8から空気を排出する空気排出処理が実施される。
【0050】
[コントローラ]
図4は、実施形態に係るコントローラ6を示すブロック図である。コントローラ6は、少なくとも蒸気滅菌器5を制御する。
図1に示したように、実施形態において、蒸気システム1は、4台の蒸気滅菌器5を有する。コントローラ6は、4台の蒸気滅菌器5のそれぞれに配置される。すなわち、コントローラ6は、1台の蒸気滅菌器5に1台設けられる。4台のコントローラ6は、相互に接続される。4台のコントローラ6は、相互に通信することができる。実施形態においては、運転される予定の蒸気滅菌器5を適宜、第1蒸気滅菌器51、と称し、既に運転中の蒸気滅菌器5を適宜、第2蒸気滅菌器52、と称する。蒸気滅菌器5(51,52)の運転とは、
図3を参照して説明した、予熱処理、空気排出処理、滅菌処理、蒸気排出処理、及び乾燥・冷却処理の少なくとも一つの処理を実施することをいう。
【0051】
コントローラ6は、起動信号受信部61と、発生蒸気量算出部62と、運転状態取得部63と、待機指令部64と、運転制御部65と、優先順位設定部66とを有する。4台のコントローラ6のそれぞれは、相互に同等の機能を有する。
【0052】
起動信号受信部61は、第1蒸気滅菌器51を起動させる起動信号を受信する。上述のように、蒸気滅菌器5を起動させるために操作される起動スイッチが蒸気滅菌器5に設けられる。第1蒸気滅菌器51に設けられている起動スイッチが操作されると、第1蒸気滅菌器51を起動させる起動信号が生成される。起動信号受信部61は、起動スイッチが操作されることにより生成された起動信号を受信する。
【0053】
発生蒸気量算出部62は、ボイラ2から発生した蒸気の量を示す発生蒸気量を算出する。発生蒸気量は、ヘッダ3に集められた蒸気量に相当する。稼働中のボイラ2が1台の場合、発生蒸気量は、1台のボイラ2から発生した蒸気量である。稼働中のボイラ2が複数台の場合、発生蒸気量は、複数台のボイラ2のそれぞれが発生した蒸気量の和である。実施形態において、発生蒸気量算出部62は、稼働可能なボイラ2の台数、稼働中のボイラ2の燃焼状態、及びボイラ2に接続されるヘッダ3の圧力を示すヘッダ圧の少なくとも一つに基づいて、発生蒸気量を算出する。ヘッダ圧は、圧力センサ4により検出される。発生蒸気量算出部62は、例えば圧力センサ4の検出データに基づいて、発生蒸気量を算出することができる。
【0054】
運転状態取得部63は、第2蒸気滅菌器52の運転状態を取得する。第2蒸気滅菌器52の運転状態は、予熱処理を実施している状態、空気排出処理を実施している状態、滅菌処理を実施している状態、蒸気排出処理を実施している状態、及び乾燥・冷却処理を実施している状態の少なくとも一つを含む。
【0055】
待機指令部64は、起動信号が受信され、ボイラ2から第1蒸気滅菌器51に供給される蒸気が不足すると判定した場合、第1蒸気滅菌器51の所定の処理の実施を待機させる待機指令を出力する。すなわち、待機指令部64は、ボイラ2から起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51に供給される蒸気が不足すると判定した場合、起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51の所定の処理の実施を待機させる待機指令を出力する。
【0056】
待機指令部64は、発生蒸気量算出部62により算出されたボイラ2の発生蒸気量と、運転状態取得部63により取得された第2蒸気滅菌器52の運転状態とに基づいて、ボイラ2から起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51に供給される蒸気が不足するか否かを判定する。
【0057】
図5は、実施形態に係る待機指令部64による判定方法を説明するための図である。ボイラ2の発生蒸気量は、発生蒸気量算出部62により算出される。発生蒸気量算出部62は、稼働中のボイラ2の台数、稼働中のボイラ2の燃焼状態、及びヘッダ圧の少なくとも一つに基づいて、ボイラ2の発生蒸気量を算出することができる。待機指令部64は、運転中の第2蒸気滅菌器52の台数、及び運転中の第2蒸気滅菌器52の運転状態に基づいて、第2蒸気滅菌器52が使用している蒸気量を示す現況使用量を推定することができる。また、待機指令部64は、起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51が使用を予定している蒸気量を示す予定使用量を推定することができる。
【0058】
運転中の第2蒸気滅菌器52が1台の場合、現況使用量は、1台の第2蒸気滅菌器52が使用している蒸気量である。運転中の第2蒸気滅菌器52が複数台の場合、現況使用量は、複数台の第2蒸気滅菌器52のそれぞれが使用している蒸気量の和である。
【0059】
起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51が1台の場合、予定使用量は、1台の第1蒸気滅菌器51が使用を予定している蒸気量である。起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51が複数台の場合、予定使用量は、複数台の第1蒸気滅菌器51のそれぞれが使用を予定している蒸気量の和である。
【0060】
待機指令部64は、現況使用量と予定使用量との和が発生蒸気量を上回る場合、ボイラ2から起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51に供給される蒸気が不足すると判定する。待機指令部64は、現況使用量と予定使用量との和が発生蒸気量を下回る場合、ボイラ2から起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51に供給される蒸気が充足すると判定する。
【0061】
上述のように、冷態において、予熱処理、空気排出処理、滅菌処理、蒸気排出処理、及び乾燥・冷却処理のうち、蒸気滅菌器5の蒸気の使用量が最も多い処理は、予熱処理であり、予熱処理に次いで蒸気の使用量が多い処理は、空気排出処理であり、空気排出処理に次いで蒸気の使用量が多い処理は、滅菌処理である。温態において、予熱処理、空気排出処理、滅菌処理、蒸気排出処理、及び乾燥・冷却処理のうち、蒸気滅菌器5の蒸気の使用量が最も多い処理は、空気排出処理であり、空気排出処理に次いで蒸気の使用量が多い処理は、予熱処理であり、予熱処理に次いで蒸気の使用量が多い処理は、滅菌処理である。予熱処理が実施されない場合、冷態及び温態の両方において、蒸気滅菌器5の蒸気の使用量が最も多い処理は、空気排出処理であり、空気排出処理に次いで蒸気の使用量が多い処理は、滅菌処理である。蒸気排出処理及び乾燥・冷却処理において、蒸気滅菌器5の蒸気の使用量は、実質的にゼロである。1台の蒸気滅菌器5が予熱処理、空気排出処理、滅菌処理、蒸気排出処理、及び乾燥・冷却処理のそれぞれにおいて使用する蒸気量は、概ね決まっている。すなわち、1台の蒸気滅菌器5が予熱処理、空気排出処理、滅菌処理、蒸気排出処理、及び乾燥・冷却処理のそれぞれにおいて使用する蒸気量は、既知データである。
【0062】
そのため、待機指令部64は、運転中の第2蒸気滅菌器52の台数、及び運転中の第2蒸気滅菌器52の運転状態に基づいて、第2蒸気滅菌器52が使用している蒸気量を示す現況使用量を推定することができる。
【0063】
また、冷態において予熱処理が実施される場合、起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51は、起動直後において予熱処理を実施予定である。温態において予熱処理が実施される場合、起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51は、起動直後において空気排出処理を実施予定である。予熱処理が実施されない場合、起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51は、起動直後において空気排出処理を実施予定である。そのため、待機指令部64は、起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51が使用を予定している蒸気量を示す予定使用量を推定することができる。
【0064】
待機指令部64は、ジャケット9のジャケット空間22の圧力及び温度の少なくとも一方に基づいて、冷態又は温態のどちらにおいて起動信号受信部61により起動信号が受信されたか否かを判定することができる。すなわち、待機指令部64は、ジャケット圧力センサ18Aの検出データ及びジャケット温度センサ20Aの検出データの少なくとも一方に基づいて、起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51が冷態起動するのか温態起動するのかを判定することができる。換言すれば、待機指令部64は、ジャケット圧力センサ18Aの検出データ及びジャケット温度センサ20Aの検出データの少なくとも一方に基づいて、起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51が起動直後において予熱処理及び空気排出処理のどちらの処理を実施予定なのかを判定することができる。
【0065】
なお、蒸気滅菌器5がジャケット9を有しない場合、待機指令部64は、チャンバ8の処理空間21の温度に基づいて、冷態又は温態のどちらにおいて起動信号受信部61により起動信号が受信されたか否かを判定する。すなわち、待機指令部64は、チャンバ温度センサ20Bの検出データに基づいて、起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51が冷態起動するのか温態起動するのかを判定することができる。換言すれば、待機指令部64は、チャンバ温度センサ20Bの検出データに基づいて、起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51が起動直後において予熱処理及び空気排出処理のどちらの処理を実施予定なのかを判定することができる。
【0066】
待機指令部64は、ボイラ2から起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51に供給される蒸気が不足すると判定した場合、起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51の所定の処理の実施を待機させる待機指令を出力する。実施形態において、所定の処理は、第1蒸気滅菌器51の起動直後において実施される処理である。起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51が冷態起動すると判定された場合、所定の処理は、冷態においてボイラ2から供給された蒸気をジャケット9に取り入れて第1蒸気滅菌器51のチャンバ8を予熱する予熱処理である。起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51が温態起動すると判定された場合、所定の処理は、温態においてボイラ2から供給された蒸気を使用して第1蒸気滅菌器51のチャンバ8から空気を排出する空気排出処理である。
【0067】
第1蒸気滅菌器51の所定の処理の実施を待機させた状態で、ボイラ2の発生蒸気量と第2蒸気滅菌器52の運転状態とに基づいて、ボイラ2から第1蒸気滅菌器51に供給される蒸気が充足すると判定した場合、待機指令部64は、所定の処理の実施の待機を解除する解除指令を出力する。例えば、ある第2蒸気滅菌器52が滅菌処理から蒸気排出処理に移行したり、ある第2蒸気滅菌器52の運転が終了したりした場合、現況使用量が減少するので、待機指令部64は、解除指令を出力することができる。解除指令が出力されることにより、起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51は、運転を開始する。起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51が冷態においては、解除指令が出力されることにより、第1蒸気滅菌器51は、予熱処理、空気排出処理、滅菌処理、蒸気排出処理、及び乾燥・冷却処理のそれぞれを順次実施する。起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51が温態においては、解除指令が出力されることにより、第1蒸気滅菌器51は、空気排出処理、滅菌処理、蒸気排出処理、及び乾燥・冷却処理のそれぞれを順次実施する。
【0068】
運転制御部65は、蒸気滅菌器5の運転を制御する。運転制御部65は、第1蒸気滅菌器51及び第2蒸気滅菌器52のそれぞれの運転を制御する。
【0069】
優先順位設定部66は、複数の蒸気滅菌器5の少なくとも一部に優先順位を設定する。優先順位設定部66は、第1蒸気滅菌器51及び第2蒸気滅菌器52の少なくとも一部に優先順位を設定する。コントローラ6に不図示の入力装置が接続される。蒸気システム1の使用者は、入力装置を操作して、複数の蒸気滅菌器5に優先順位を設定することができる。優先順位設定部66は、入力装置が操作されることにより生成された入力信号に基づいて、複数の蒸気滅菌器5に優先順位を設定する。運転制御部65は、優先順位設定部66により設定された優先順位に基づいて、第1蒸気滅菌器51及び第2蒸気滅菌器52の運転を制御する。
【0070】
優先順位は、蒸気滅菌器5の運転開始に係る優先順位を含む。優先順位が高い蒸気滅菌器5ほど優先的に運転が開始され、優先順位が低い蒸気滅菌器5ほど優先的に運転が停止される。
【0071】
例えば、
図1に示したように、蒸気システム1が4台の蒸気滅菌器5を有する場合、優先順位設定部66は、4台の蒸気滅菌器5のそれぞれに運転開始に係る優先順位を設定することができる。優先順位の低い蒸気滅菌器5が運転中であり優先順位の高い蒸気滅菌器5が運転していない状況において、すなわち、第2蒸気滅菌器52の優先順位が低く第1蒸気滅菌器51の優先順位が高い状況において、第1蒸気滅菌器51を起動させる起動スイッチが操作された場合、運転制御部65は、起動信号受信部61により受信された起動信号と、優先順位設定部66により設定された運転開始に係る優先順位とに基づいて、優先順位が低い第2蒸気滅菌器52の運転を停止させ、優先順位が高い第1蒸気滅菌器51の運転を開始させる。
【0072】
また、優先順位は、第1蒸気滅菌器51の待機の解除に係る優先順位を含む。優先順位が高い第1蒸気滅菌器51ほど優先的に待機が解除され、優先順位が低い第1蒸気滅菌器51ほど優先的に待機が継続される。
【0073】
例えば、第1蒸気滅菌器51が2台であり、2台の第1蒸気滅菌器51のそれぞれが所定の処理の実施を待機している状態において、2台の第1蒸気滅菌器51の待機が同時に解除されるとボイラ2から第1蒸気滅菌器51に供給される蒸気が不足するものの、1台のみの第1蒸気滅菌器51の待機が解除されるならばボイラ2から第1蒸気滅菌器51に供給される蒸気が充足する場合がある。このような場合、2台の第1蒸気滅菌器51のそれぞれに待機の解除に係る優先順位が設定される。待機指令部64は、ボイラ2から1台の第1蒸気滅菌器51に供給される蒸気が充足すると判定した場合、優先順位が高い第1蒸気滅菌器51の待機を解除し、優先順位が低い第1蒸気滅菌器51の待機を継続させる。
【0074】
[蒸気滅菌方法]
図6は、実施形態に係る蒸気滅菌方法を示すフローチャートである。第1蒸気滅菌器51に設けられている起動スイッチが操作されると、起動スイッチから起動信号が出力される。起動信号受信部61は、第1蒸気滅菌器51を起動させる起動信号を受信する(ステップSB1)。
【0075】
発生蒸気量算出部62は、ボイラ2から発生した蒸気の量を示す発生蒸気量を算出する。発生蒸気量算出部62は、稼働可能なボイラ2の台数、稼働中のボイラ2の燃焼状態、及びボイラ2に接続されるヘッダ3の圧力を示すヘッダ圧の少なくとも一つに基づいて、発生蒸気量を算出する(ステップSB2)。
【0076】
運転状態取得部63は、第2蒸気滅菌器52の運転状態を取得する。第2蒸気滅菌器52が複数台存在する場合、運転状態取得部63は、複数の第2蒸気滅菌器52の運転状態のそれぞれを取得する(ステップSB3)。
【0077】
なお、ステップSB2の処理の前にステップSB3の処理が実施されてもよいし、ステップSB2の処理とステップSB3の処理とが同時に実施されてもよい。
【0078】
待機指令部64は、ステップSB2において算出されたボイラ2の発生蒸気量とステップSB3において取得された第2蒸気滅菌器52の運転状態とに基づいて、ボイラ2からステップSB1において起動信号が取得された第1蒸気滅菌器51に供給される蒸気が不足するか否かを判定する(ステップSB4)。
【0079】
図5を参照して説明したように、待機指令部64は、第2蒸気滅菌器52の現況使用量と第1蒸気滅菌器51の予定使用量との和がボイラ2の発生蒸気量を上回る場合、ボイラ2から起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51に供給される蒸気が不足すると判定する。待機指令部64は、第2蒸気滅菌器52の現況使用量と第1蒸気滅菌器51の予定使用量との和がボイラ2の発生蒸気量を下回る場合、ボイラ2から起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51に供給される蒸気が充足すると判定する。
【0080】
ステップSB4において、第1蒸気滅菌器51に供給される蒸気が不足すると判定した場合(ステップSB4:Yes)、待機指令部64は、起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51が冷態か否かを判定する。待機指令部64は、起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51のジャケット9の圧力及び温度の少なくとも一方に基づいて、起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51が冷態か否かを判定する(ステップSB5)。
【0081】
ステップSB5において、第1蒸気滅菌器51が冷態であると判定した場合(ステップSB5:Yes)、待機指令部64は、第1蒸気滅菌器51の予熱処理の実施を待機させる待機指令を第1蒸気滅菌器51に出力する(ステップSB6)。
【0082】
ステップSB5において、第1蒸気滅菌器51が温態であると判定した場合(ステップSB5:No)、待機指令部64は、第1蒸気滅菌器51の空気排出処理の実施を待機させる待機指令を第1蒸気滅菌器51に出力する(ステップSB7)。
【0083】
ステップSB4において、第1蒸気滅菌器51に供給される蒸気が充足すると判定した場合(ステップSB4:No)、待機指令部64から待機指令は出力されない。起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51は、運転を開始する。第1蒸気滅菌器51が冷態起動の場合、第1蒸気滅菌器51は、予熱処理、空気排出処理、滅菌処理、蒸気排出処理、及び乾燥・冷却処理を順次実施する。第1蒸気滅菌器51が温態起動の場合、第1蒸気滅菌器51は、空気排出処理、滅菌処理、蒸気排出処理、及び乾燥・冷却処理を順次実施する(ステップSB8)。
【0084】
ステップSB6の処理の後、コントローラ6は、ステップSB2の処理に戻る。ステップSB4において、ボイラ2の発生蒸気量と第2蒸気滅菌器52の運転状態とに基づいて、ボイラ2から第1蒸気滅菌器51に供給される蒸気が充足すると判定した場合(ステップSB4:No)、待機指令部64は、第1蒸気滅菌器51の予熱処理の実施の待機を解除する解除指令を第1蒸気滅菌器51に出力する。第1蒸気滅菌器51は、予熱処理、空気排出処理、滅菌処理、蒸気排出処理、及び乾燥・冷却処理を順次実施する(ステップSB8)。
【0085】
ステップSB7の処理の後、コントローラ6は、ステップSB2の処理に戻る。ステップSB4において、ボイラ2の発生蒸気量と第2蒸気滅菌器52の運転状態とに基づいて、ボイラ2から第1蒸気滅菌器51に供給される蒸気が充足すると判定した場合(ステップSB4:No)、待機指令部64は、第1蒸気滅菌器51の空気排出処理の実施の待機を解除する解除指令を第1蒸気滅菌器51に出力する。第1蒸気滅菌器51は、空気排出処理、滅菌処理、蒸気排出処理、及び乾燥・冷却処理を順次実施する(ステップSB8)。
【0086】
なお、優先順位設定部66により複数の蒸気滅菌器5のそれぞれに運転開始に係る優先順位が設定され、第2蒸気滅菌器52の優先順位が低く第1蒸気滅菌器51の優先順位が高い場合において、ステップSB4において第1蒸気滅菌器51に供給される蒸気が不足すると判定された場合、運転制御部65は、ステップSB1において起動信号受信部61により受信された起動信号と、優先順位設定部66により設定された優先順位とに基づいて、優先順位が低い第2蒸気滅菌器52の運転を停止させてもよい。優先順位が低い第2蒸気滅菌器52の運転が停止されることにより、ボイラ2から第1蒸気滅菌器51に供給される蒸気が充足されるので、優先順位が高い第1蒸気滅菌器51は運転を開始することができる。
【0087】
[効果]
以上説明したように、蒸気滅菌器5のコントローラ6は、ボイラ2から供給される蒸気を使用する第1蒸気滅菌器51を起動させる起動信号を受信する起動信号受信部61と、起動信号が受信され、ボイラ2から第1蒸気滅菌器51に供給される蒸気が不足すると判定した場合、第1蒸気滅菌器51の所定の処理の実施を待機させる待機指令を出力する待機指令部64と、を備える。
【0088】
実施形態によれば、第2蒸気滅菌器52の運転中に第1蒸気滅菌器51を起動させる場合、ボイラ2から第1蒸気滅菌器51に供給される蒸気が不足する可能性があるとき、第1蒸気滅菌器51の起動が待機される。これにより、ボイラ2の稼働台数を増やすことなく、ボイラ2から第2蒸気滅菌器52に供給される蒸気が充足される。そのため、ボイラ2のエネルギー消費量が抑制され、第2蒸気滅菌器52が適正に運転される。また、ボイラ2から第2蒸気滅菌器52に供給される蒸気の不足に起因して、第2蒸気滅菌器52の運転が中断してしまうことが抑制される。第2蒸気滅菌器52が適正に運転されるので、第2蒸気滅菌器52において滅菌対象が適正に滅菌される。
【0089】
蒸気滅菌器5のコントローラ6は、ボイラ2から発生した蒸気の量を示す発生蒸気量を算出する発生蒸気量算出部62と、ボイラ2から供給される蒸気を使用する第2蒸気滅菌器52の運転状態を取得する運転状態取得部63と、を備える。待機指令部64は、ボイラ2の発生蒸気量と第2蒸気滅菌器52の運転状態とに基づいて、ボイラ2から第1蒸気滅菌器51に供給される蒸気が不足するか否かを判定することができる。
【0090】
ボイラ2の発生蒸気量と第2蒸気滅菌器52の運転状態とに基づいて、ボイラ2から第1蒸気滅菌器51に供給される蒸気が充足すると判定した場合、待機指令部64は、第1蒸気滅菌器51の所定の処理の待機を解除する。これにより、ボイラ2から第1蒸気滅菌器51に供給される蒸気が充足された状態で、第1蒸気滅菌器51が適正に運転される。
【0091】
第1蒸気滅菌器51は、滅菌対象が収容されるチャンバ8と、チャンバ8の周囲に配置されるジャケット9と、を有する。待機指令部64は、ジャケッ9トの圧力及び温度の少なくとも一方に基づいて、冷態又は温態のどちらにおいて起動信号が受信されたか否かを判定することができる。
【0092】
冷態において待機指令の対象となる所定の処理は、冷態起動においてボイラ2から供給された蒸気をジャケット9に取り入れて第1蒸気滅菌器51のチャンバ8を予熱する予熱処理である。冷態における第1蒸気滅菌器51の起動直後に実施が予定されている予熱処理が待機されることにより、第1蒸気滅菌器51の起動が待機される。
【0093】
温態において待機指令の対象となる所定の処理は、温態起動においてボイラ2から供給された蒸気を使用して第1蒸気滅菌器51のチャンバ8から空気を排出する空気排出処理である。温態における第1蒸気滅菌器51の起動直後に実施が予定されている空気排出処理が待機されることにより、第1蒸気滅菌器51の起動が待機される。
【0094】
予熱処理が実施されない場合において待機指令の対象となる所定の処理は、ボイラ2から供給された蒸気を使用して第1蒸気滅菌器51のチャンバ8から空気を排出する空気排出処理である。第1蒸気滅菌器51の起動直後に実施が予定されている空気排出処理が待機されることにより、第1蒸気滅菌器51の起動が待機される。
【0095】
蒸気滅菌器5のコントローラ6は、第1蒸気滅菌器51及び第2蒸気滅菌器52の少なくとも一部に優先順位を設定する優先順位設定部66と、優先順位設定部66により設定された優先順位に基づいて、第1蒸気滅菌器51及び第2蒸気滅菌器52の運転を制御する運転制御部と、を備える。優先順位設定部66は、例えば運転開始に係る優先順位を設定することができる。例えば第1蒸気滅菌器51の優先順位が第2蒸気滅菌器52の優先順位よりも高い場合、運転制御部65は、第1蒸気滅菌器51の起動スイッチが操作されたときに、少なくとも1台の第2蒸気滅菌器52の運転を停止して、起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51の運転を開始することができる。これにより、優先順位の高い蒸気滅菌器5が所定の処理の待機を実施しなくても済む。あるいは、優先順位の高い蒸気滅菌器5の所定の処理の待機時間が短くなる。
【0096】
[その他の実施形態]
図7は、他の実施形態に係る蒸気システム100を模式的に示す図である。上述の実施形態において、コントローラ6が複数の蒸気滅菌器5のそれぞれに設けられ、1つのコントローラ6が代表して複数の蒸気滅菌器5(51,52)を制御したり、複数のコントローラ6が協働して複数の蒸気滅菌器5(51,52)を制御したりすることとした。
図7に示すように、1台の上位コントローラ600が、複数の蒸気滅菌器5(51,52)のそれぞれに設けられたコントローラ7に接続されてもよい。複数のコントローラ7のそれぞれは、コントローラ7が設けられている蒸気滅菌器5の運転を個別に制御する。上述のように、蒸気滅菌器5の運転とは、
図3を参照して説明した、予熱処理、空気排出処理、滅菌処理、蒸気排出処理、及び乾燥・冷却処理の少なくとも一つの処理を実施することをいう。上位コントローラ600は、上述の実施形態において説明した起動信号受信部61、発生蒸気量算出部62、運転状態取得部63、待機指令部64、運転制御部65、及び優先順位設定部66を有する。上位コントローラ600は、複数の蒸気滅菌器5のうち、運転される予定の蒸気滅菌器5を示す第1蒸気滅菌器51に供給される蒸気が不足すると判定した場合、第1蒸気滅菌器51の所定の処理の実施を待機させる待機指令を出力することができる。
【0097】
上述の
図1及び
図7を参照して説明した実施形態において、待機指令部64は、例えば、稼働予定のボイラの台数と、稼働予定のボイラ2の能力に基づいて設定された蒸気滅菌器5の運転台数の設定値とに基づいて、ボイラ2から起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51に供給される蒸気が不足するか否かを判定してもよい。例えば、ある第1蒸気滅菌器51が起動すると蒸気滅菌器5の運転台数が設定値を上回る場合、蒸気が不足すると判定してもよい。この場合、待機指令部64は、起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51の起動を待機させる待機指令を出力する。より具体的には、蒸気システム1が5台のボイラ2を有し、7台の蒸気滅菌器5を有する場合において、稼働させるボイラ2が2台である場合、ボイラ2台の能力に基づいて、蒸気滅菌器5の運転台数が3台に設定される。2台のボイラ2が稼働し、3台の蒸気滅菌器5(第2蒸気滅菌器52)が運転している状態で、4台目の蒸気滅菌器5(第1蒸気滅菌器51)の起動スイッチが操作された場合、蒸気が不足すると判定し、待機指令部64は、4台目の蒸気滅菌器5の起動を待機させる。運転中の3台の蒸気滅菌器5(第2蒸気滅菌器52)のうち、1台の蒸気滅菌器5の運転が終了した後、待機指令部64は、4台目の蒸気滅菌器5の起動の待機を解除する。ある第1蒸気滅菌器51が起動しても蒸気滅菌器5の運転台数が設定値を下回る場合、待機指令部64は、発生蒸気量算出部62により算出された発生蒸気量と、運転状態取得部63により取得された第2蒸気滅菌器52の運転状態とに基づいて、ボイラ2から起動スイッチが操作された第1蒸気滅菌器51に供給される蒸気が不足するか否かを判定してもよい。
【0098】
上述の実施形態において、コントローラ6は、蒸気滅菌器5を制御することとした。コントローラ6は、蒸気殺菌器(レトルトを含む)を制御してもよい。すなわち、蒸気システム1は、蒸気滅菌器5の代わりに、複数の蒸気殺菌器を備えてもよい。蒸気殺菌器は、ボイラ2から供給される蒸気を使用して殺菌対象を殺菌する。
【符号の説明】
【0099】
1…蒸気システム、2…ボイラ、3…ヘッダ、4…圧力センサ、5…蒸気滅菌器(蒸気滅菌・殺菌器)、6…コントローラ、7…コントローラ、8…チャンバ、9…ジャケット、10…ジャケット給蒸装置、11…ジャケットドレン排出装置、12…ジャケット排気装置、13…減圧装置、14…復圧装置、15…チャンバ給蒸装置、16…チャンバドレン排出装置、17…チャンバ排気装置、18A…ジャケット圧力センサ、18B…チャンバ圧力センサ、20A…ジャケット温度センサ、20B…チャンバ温度センサ、21…処理空間、22…ジャケット空間、23…ジャケット給蒸ライン、24…ジャケット給蒸弁、25…ジャケットドレン排出ライン、26…蒸気トラップ、27…逆止弁、28…ジャケット排気ライン、29…ジャケット排気弁、30…逆止弁、31…真空ライン、32…真空弁、33…真空ポンプ、34…逆止弁、35…給気ライン、36…無菌フィルタ、37…給気弁、38…逆止弁、39…チャンバ給蒸ライン、40…チャンバ給蒸弁、41…チャンバドレン排出ライン、41A…第1部分、41B…第2部分、42…蒸気トラップ、43…逆止弁、44…チャンバ排気ライン、45…チャンバ排気弁、46…逆止弁、47…逆止弁、51…第1蒸気滅菌器(第1蒸気滅菌・殺菌器)、52…第2蒸気滅菌器(第2蒸気滅菌・殺菌器)、61…起動信号受信部、62…発生蒸気量算出部、63…運転状態取得部、64…待機指令部、65…運転制御部、66…優先順位設定部、100…蒸気システム、600…上位コントローラ。