(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029902
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】反応システムおよび生成物製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 8/08 20060101AFI20240229BHJP
B01J 8/18 20060101ALI20240229BHJP
B01J 8/38 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B01J8/08 311
B01J8/18
B01J8/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132361
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】植田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 諭
(72)【発明者】
【氏名】古木 賢一
(72)【発明者】
【氏名】平松 靖也
【テーマコード(参考)】
4G070
【Fターム(参考)】
4G070AA01
4G070AB06
4G070BA08
4G070BB14
4G070BB32
4G070CA13
4G070CA21
4G070CB02
4G070CB05
4G070CB18
4G070CC02
4G070CC06
4G070DA16
4G070DA21
(57)【要約】
【課題】効率良く生成物を製造できる反応システム等を提供する。
【解決手段】反応システム1は、処理物から生成物を製造する。反応システム1は、反応炉100と搬送装置141とを有する。反応炉100は、処理物10Aと搬送補助材20とを受け入れる供給口110と、製造した生成物10Bを送出する送出口120と、供給口110と送出口120との間において処理物10Aないし生成物10Bと搬送補助材20とが混在する混合物を受容する筒体101と、を有する。搬送装置141は、筒体101における混合物を供給口110から送出口120へ搬送する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理物から生成物を製造する反応システムであって、
前記処理物と搬送補助材とを受け入れる供給口と、製造した前記生成物を送出する送出口と、前記供給口と前記送出口との間において前記処理物ないし前記生成物と前記搬送補助材とが混在する混合物を受容する筒体と、を有する反応炉と、
前記筒体における前記混合物を前記供給口から前記送出口へ搬送する搬送装置と、を備える、
反応システム。
【請求項2】
前記筒体は前記生成物の粒径より大きい粒径を有する前記搬送補助材を受容し、
前記送出口は、前記生成物が通過可能であり、前記搬送補助材が通過しない複数の孔を介して前記生成物を送出する、
請求項1に記載の反応システム。
【請求項3】
前記送出口の下流側において、前記生成物が分離した前記搬送補助材を前記供給口へ循環させる循環装置をさらに備える、
請求項2に記載の反応システム。
【請求項4】
前記循環装置は、前記生成物が分離した後の前記搬送補助材に接触させるための回復用媒体を受け入れる媒体受入部と、前記搬送補助材に前記回復用媒体を接触させる接触部と、をさらに有する、
請求項3に記載の反応システム。
【請求項5】
前記循環装置は、前記搬送補助材を洗浄するための前記回復用媒体を受け入れ、前記搬送補助材と接触した後の前記回復用媒体を排出する媒体排出部をさらに有する、
請求項4に記載の反応システム。
【請求項6】
前記反応炉が受容する前記搬送補助材は、前記処理物の反応を補助する金属元素を含み、
前記循環装置は、前記搬送補助材を還元するための非金属元素を含む前記回復用媒体を受け入れる、
請求項4に記載の反応システム。
【請求項7】
前記搬送装置は、前記混合物の搬送方向に沿って設定された軸を回転するスクリュにより前記混合物を搬送する、
請求項1に記載の反応システム。
【請求項8】
前記反応炉は、前記処理物の粒径より大きい粒径を有する前記搬送補助材を受容する、
請求項7に記載の反応システム。
【請求項9】
前記反応炉は、前記混合物に攪拌用流体を吐出する吐出口をさらに有し、
前記搬送装置は、前記攪拌用流体に接触している前記混合物を搬送する、
請求項1~8のいずれか一項に記載の反応システム。
【請求項10】
前記吐出口は、前記筒体において前記混合物の搬送方向に沿って複数存在する、
請求項9に記載の反応システム。
【請求項11】
前記吐出口に前記攪拌用流体を供給することにより流動床を生成する流動床生成装置をさらに有し、
前記流動床生成装置は、前記反応炉に供給する前記攪拌用流体の流量、流速、温度または吐出方向の少なくともいずれか1つを調整する調整部を含む、
請求項9に記載の反応システム。
【請求項12】
処理物から生成物を製造する生成物製造方法であって、
前記処理物と搬送補助材とを反応炉に供給する供給工程と、
前記処理物と前記搬送補助材とが混在する混合物を搬送装置により送出口へ搬送する搬送工程と、
前記処理物から生成された前記生成物を前記送出口から送出する送出工程と、を備える
生成物製造方法。
【請求項13】
前記搬送工程は、前記混合物に攪拌用流体を吐出することにより攪拌されている前記混合物を搬送する、
請求項12に記載の生成物製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反応システムおよび生成物製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原材料を予め設定された環境下において攪拌等することにより所望の生成物を製造する反応システムが存在する。
【0003】
例えば特許文献1は、以下の反応装置について開示している。反応装置は、圧力反応容器となるスクリュフィーダ本体と、スクリュフィーダ本体内に触媒を導入する触媒供給部と、スクリュフィーダ本体内に低級炭化水素を導入する低級炭化水素供給部と、を有する。またこの反応装置は、生成したナノ炭素を移送するスクリュと、スクリュによって搬送される触媒とナノ炭素を送出する固体送出部と、生成した水素をフィーダ本体外に送出する気体送出部と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、微細な粒子径を有する処理物をスクリュなどの搬送手段により搬送する場合に、搬送手段が構造上有している隙間や搬送力が直接及ばない空間などに処理物が滞り凝集や固化を引き起こす虞がある。このような状態が生じると、反応システムが製造する生成物の品質にばらつきが生じる可能性がある。あるいは、搬送手段による搬送速度が比較的に低速の場合に、凝集した処理物の反応速度が低下し、反応システムの効率が低下する虞がある。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、効率良く生成物を製造できる反応システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる反応システムは、処理物から生成物を製造する。この反応システムは、反応炉と搬送装置とを有する。反応炉は、処理物と搬送補助材とを受け入れる供給口と、製造した生成物を送出する送出口と、供給口と送出口との間において処理物ないし生成物と搬送補助材とが混在する混合物を受容する筒体と、を有する。搬送装置は、筒体における混合物を供給口から送出口へ搬送する。
【0008】
本開示にかかる生成物製造方法は、処理物から生成物を製造する方法である。この方法は、供給工程と、搬送工程と、送出工程と、を有する。供給工程は、処理物と搬送補助材とを反応炉に供給する。搬送工程は、処理物と搬送補助材とが混在する混合物を搬送装置により送出口へ搬送する。送出工程は、処理物から生成された生成物を送出口から送出する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、効率良く生成物を製造できる反応システム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1にかかる反応システムの全体構成図である。
【
図2】実施の形態1にかかる生成物製造方法のフローチャートである。
【
図3】実施の形態2にかかる反応システムの全体構成図である。
【
図4】実施の形態2にかかる生成物製造方法のフローチャートである。
【
図5】実施の形態3にかかる反応システムの全体構成図である。
【
図6】流動床生成装置300の詳細を示す図である。
【
図7】実施の形態3にかかる生成物製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0012】
<実施の形態1>
図1を参照して実施の形態1について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる反応システム1の全体構成図である。
図1に示す反応システム1は、処理物に対して予め設定された処理を施すことにより生成物を製造する。反応システム1が製造する生成物は特に制限されないが、例えば、全固体リチウムイオン二次電池に用いられる固体電解質や正極活物質等の電池用部材である。なお、予め設定された処理とは、処理物を生成物に変化させる過程に用いる手段であれば特に限定されないが、例えば加熱や冷却のような温度変化である。予め設定された処理とは、例えば攪拌、混合、混練、粉砕のような応力伝達を含んでもよい。また予め設定された処理とは、例えば電子やラジカルの授受を伴う反応であってもよい。あるいは予め設定された処理とは、例えば触媒との接触であってもよい。反応システム1は主な構成として、反応炉100と搬送装置141とを有する。
【0013】
反応炉100は主な構成として、供給口110、送出口120および筒体101を有している。また反応炉100は、搬送補助材排出口130および温度制御装置150を有している。
【0014】
なお、本開示において以降に「上流」および「下流」という記載を用いるが、上流および下流とは、下記のように定義する。すなわち、反応炉100の供給口110から送出口120までの経路における任意の位置であるA点において、A点から見て供給口110に近い位置を上流の位置とし、A点から見て送出口120に近い位置を下流の位置と定義する。また、上流側とはA点から見て上流の方面を指し、下流側とはA点から見て下流の方面を指す。また上述の「上流」および「下流」の方向は、供給口110と送出口120の外側においても同様に定義される。例えば供給口110から送出口120へ流れる物体が送出口120を越えてさらに流れる場合には、この物体は送出口120を越えて下流へ流れる、ということができる。
【0015】
供給口110は、筒体101に設けられた開口部であって、処理物10Aと搬送補助材20とをそれぞれ受け入れる。本実施の形態における供給口110は、第1供給口111と第2供給口112とを含む。第1供給口111は、処理物10Aを受け入れる。第2供給口112は、搬送補助材20を受け入れる。なお、供給口110は、処理物10Aと搬送補助材20とが混合された状態で投入される構成であってもよい。供給口110は、処理物10Aと搬送補助材20とを受け入れると、これらを筒体101に供給する。
【0016】
なお、搬送補助材20は、処理物10Aを滞りなく搬送するために用いるものであって、例えば砂または球状のビーズ等の粒状体である。搬送補助材20の形状は問わないが、球状であることが好ましい。また搬送補助材20の材質は特に制限されないが、処理物10Aと混在可能且つ分離可能な固体であって、例えば珪砂、セラミックス、ガラス、カーボン、活性炭あるいは金属などである。なお、搬送補助材20の粒径は、処理物10Aの粒径と異なるようにすることで、搬送補助材20と生成物10Bとを容易に分離可能とすることが望ましい。上述の粒径を測定する手段は特に限定されないが、例えばレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(例えば堀場製作所製LA960)により測定された粒度分布の平均(平均径)としてもよい。これにより反応システム1は、処理物10Aと搬送補助材20とが混在する混合体を搬送することになり、処理物10Aの凝集や滞りを抑制できる。
【0017】
送出口120は、製造した生成物10Bを送出する。より具体的には、送出口120は、生成物10Bの粒径より大きく搬送補助材20の粒径より小さい孔を複数有しており、この複数の孔に生成物10Bを通過させるとともに、搬送補助材20を通過させない。これにより、送出口120は、混合物から生成物10Bを分離して抽出し、抽出した生成物10Bを送出口120から送出する。すなわちこの場合、筒体101は、生成物10Bの粒径より大きい粒径を有する搬送補助材20を受容する。なお、筒体101に残った搬送補助材20は、送出口120より下流に搬送され、送出口120より下流側に設けられた搬送補助材排出口130から排出される。送出口120の複数の孔とは、例えばスクリーン(メッシュ)であり、図示しない振動装置の振動(例えば50~500Hz)を受けて振動してもよい。
【0018】
筒体101は、供給口110と送出口120との間において混合物を受容する。筒体101は、処理物10Aから生成物10Bを製造するための空間である処理空間を有している。処理空間において、反応システム1は、処理物10Aと搬送補助材20とが混在した状態の混合物に予め設定された処理を施して生成物10Bを製造する。筒体101は、中間部において温度制御装置150に覆われており、反応炉100の内部が加熱または冷却可能な構成となっている。
【0019】
なお、混合物とは、処理物10Aと搬送補助材20とが混在するものをいう。また混合物は、処理物10Aの反応が進み、生成物10Bになった場合における生成物10Bと搬送補助材20とが混在するものをいう。また当然ながら、混合物は、処理物10Aと生成物10Bと搬送補助材20とが混在するものも含む。
【0020】
搬送補助材排出口130は搬送補助材20を排出するために筒体101に設けられた開口部である。搬送補助材排出口130は、送出口120より下流側に位置し、生成物10Bが分離した搬送補助材20を排出する。
【0021】
温度制御装置150は、加熱装置または冷却装置を含み、反応炉100の内部すなわち筒体101の内部の温度を制御する。温度制御装置150は、反応炉100の中間部において筒体101の周囲を囲むように加熱装置を有している。加熱装置は例えばシースヒータ、コイルヒータまたはセラミックヒータなどの温度制御可能な任意のヒータを含む。加熱装置は例えば常温から1000度程度の範囲の加熱を行う。温度制御装置150は、反応炉100の中間部の領域ごとに、搬送装置141の搬送方向に沿って、異なる温度を設定してもよい。温度制御装置150は、反応炉100の上下方向(短軸方向)の領域ごとに、異なる温度を設定してもよい。なお、温度制御装置150は、例えば摂氏100度~1000度の範囲の温度であって、好ましくは300度以上、さらに好ましくは500度以上の範囲の温度を制御する。
【0022】
駆動装置140は、モータと、このモータから突出する駆動軸に嵌合する駆動力伝達部とを有し、搬送装置141を駆動させる。
図1の搬送装置141は、例えば筒体101の一端側から他端側に亘り延伸したスクリュである。この場合、搬送装置141は、混合物の搬送方向に沿って設定された軸を回転するスクリュにより混合物を搬送する。なお、スクリュは1本でもよいし、2本以上でもよい。
【0023】
搬送装置141は、筒体101の内部における混合物を供給口110から送出口120へ搬送する。搬送装置141は、筒体101に沿って延伸した回転軸が駆動装置140によって回転する。駆動装置140は例えば搬送装置141の駆動方向や駆動速度を制御し得る。なお、搬送装置141の形状や形態は特に限定されない。例えば搬送装置141は上述したスクリュに限らず、ベルトコンベヤや回転ドラム体であってもよい。搬送装置141は、筒体101を揺動させる揺動装置であってもよい。搬送装置141は、筒体101を傾斜させる傾斜装置であってもよい。
【0024】
反応炉100を構成する部材は、例えば、合金、セラミックス、カーボン、およびそれらを2以上含む複合材により形成され得る。合金は、ニッケル、コバルト、クロム、モリブデン、タングステン、タンタル、チタン、鉄、銅、アルミニウム、ケイ素、ホウ素、炭素などの合金元素のうち少なくとも一つを成分に含む金属部材である。セラミックスは、アルミナやジルコニアなどの酸化物、炭化ケイ素や炭化チタンなどの炭化物、窒化ケイ素や窒化チタンなどの窒化物、ホウ化クロムなどのホウ化物のようなセラミックス部材である。また、カーボンは、結晶質グラファイトや繊維強化グラファイトなどの炭素部材である。反応炉100は例えば、少なくとも内側の材質が合金、セラミックスまたはカーボンを含む部材により構成されていてもよい。
【0025】
なお、ここでは図示していないが、反応炉100は、中間部において処理物10Aの製造工程に要する反応用流体を受け入れる流体供給口を有していてもよい。また同様に、反応炉100は、中間部において上述の反応用流体ないし反応後に生じた流体を排出するための流体排出口を有していてもよい。
【0026】
以上、反応システム1の構成について説明したが、反応システム1は、上述の構成を制御するための制御装置を有していても良い。制御装置は例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)またはMCU(Micro Controller Unit)のような演算装置を含む。また制御装置は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やフラッシュメモリ等の記憶装置と、各構成を通信可能に接続するインタフェースと、その他の周辺回路を含む。
【0027】
反応システム1は、生成物10Bの粒径より小さい搬送補助材20を供給する構成であってもよい。この場合に、反応システム1は例えば、送出口120の上流側において搬送補助材20の粒径より大きく生成物10Bの粒径より小さい孔を複数有し、この複数の孔に搬送補助材20を通過させるとともに、搬送補助材20を通過させない。さらにこの場合に、反応システム1は、複数の孔を通過した搬送補助材20を送出口120よりも下流に導くバイパス路を有するとともに、生成物10Bを送出口120に導く。これにより、送出口120は、混合物から生成物10Bを分離して抽出し、抽出した生成物10Bを送出口120から送出する。
【0028】
次に、
図2を参照して反応システム1が実行する処理について説明する。
図2は、実施の形態1にかかる生成物製造方法のフローチャートである。
図2のフローチャートは、図示しない制御装置が実行する処理について示したものであるということもできる。
図2に示すフローチャートは、反応システム1を操作するユーザが行う操作手順ということもできる。
【0029】
まず、反応システム1は、温度制御装置150を作動することにより反応炉100の温度を調整する(ステップS10)。
【0030】
次に、反応システム1は、駆動装置140を駆動して搬送装置141の駆動を開始する(ステップS20)。
【0031】
次に、反応システム1は、反応炉100に搬送補助材20を供給する(ステップS30)。さらに反応システム1は、反応炉100に処理物10Aを供給する(ステップS40)。なお、ステップS30およびステップS40は順序が逆であってもよいし、同時に実行されてもよい。すなわちここで反応システム1は、供給工程として、処理物10Aと搬送補助材20とを反応炉100に供給する。
【0032】
次に、反応システム1は、搬送工程として、処理物10Aと搬送補助材20とが混在する混合物を搬送装置141により送出口120へ搬送する(ステップS50)。
【0033】
次に、反応システム1は、送出工程として、送出口120から生成物10Bを送出する(ステップS60)。
【0034】
以上、反応システム1が実行する生成物製造方法について説明した。反応システム1は、上述の各プロセスを継続的に行うことにより、生成物10Bを連続的に製造できる。すなわち反応システム1は、搬送補助材20を処理物10Aとともに、供給して、搬送補助材20と処理物10Aとが混在する混合物を搬送しながら処理物10Aを反応させる。これにより反応システム1は、好適に、且つ、連続的に処理物10Aから生成物10Bを製造できる。
【0035】
以上、実施の形態1について説明した。反応炉100において、例えば搬送装置141と筒体101との間には、
図1に示すように、距離D1の隙間が存在する。距離D1を設ける理由は、例えば搬送装置141と反応炉100との接触を防止するためである。仮に搬送装置141と反応炉100とが接触した場合には、接触した部分に摩耗粉が発生する虞がある。摩耗粉が発生すると、生成物を汚染してしまい好ましくない。また特に反応炉100の内部の温度が500度を超えるような場合には、接触部分に強固な焼き付きが発生し、搬送装置141が動作しなくなる虞もある。この距離D1は、処理物10Aないし生成物10Bの粒径より大きい。そのため、処理物10Aのみを受け入れて搬送すると、この隙間に処理物10Aが滞る可能性がある。そこで反応炉100は、処理物10Aの粒径より大きい粒径を有する搬送補助材20を供給し、処理物10Aと搬送補助材20とが混在する混合物を搬送する。このような構成により、反応システム1は、処理物10Aをスムーズに搬送して生成物10Bを製造できる。
【0036】
なお、処理物10Aと搬送補助材20とが混在する混合物を搬送装置141により搬送する状態は、「移動床」と称される。移動床において、処理物10Aは、搬送補助材20と混在した状態のまま搬送装置141により搬送され、反応が進む。すなわち、反応システム1は、移動床を生成することにより、処理物10Aを滞りなく反応させる。このとき、移動床の搬送方向における搬送補助材20の移動速度は、同方向における処理物10Aの搬送速度と同等と見なすことができる。すなわち、反応システム1は、処理物10Aの反応が予め設定された期間に完了するように、搬送補助材20の移動速度が設定される。このため、搬送補助材20の移動速度は、生成物10Bを製造する反応システム1の生産性を損なわない程度に遅い方が望ましく、例えば10メートル毎時以下である。より好ましくは、搬送補助材20の移動速度は3メートル毎時以下であり、さらに好ましくは1メートル毎時以下である。以上のように、本実施の形態によれば、効率良く生成物を製造できる反応システム等を提供することができる。
【0037】
<実施の形態2>
次に、実施の形態2について説明する。
図3は、実施の形態2にかかる反応システム2の全体構成図である。実施の形態2にかかる反応システム2は、搬送補助材排出口130から排出される搬送補助材20を循環させる機能を有している。また反応システム2は、生成物10Bが分離した後の搬送補助材20に対して予め設定された回復処理を行う。
【0038】
本実施形態にかかる反応システム2は、送出口120の下流側において、循環装置200を有している。循環装置200は、生成物10Bが分離した搬送補助材20を搬送補助材排出口130から受け取り、受け取った搬送補助材排出口130を供給口110へ循環させる。循環装置200は、圧送装置201と補助材搬送管202とを有している。
【0039】
圧送装置201は、例えば補助材搬送管202に設けられたポンプであり、搬送補助材排出口130から供給口110に向かう方向へ空気および搬送補助材20を圧送する。補助材搬送管202は、搬送補助材排出口130と供給口110とを接続した管であって、搬送補助材20が通過可能である。このような構成を有することにより、反応システム2は、搬送補助材20を繰り返し使用できる。よって反応システム2は効率良く生成物10Bを製造できる。
【0040】
また本実施形態にかかる反応システム2は、生成物10Bと分離した後の搬送補助材20に対して予め設定された処理を施す機能を有している。反応システム2は、循環装置200が、媒体受入部210と接触部220とをさらに含む。
【0041】
媒体受入部210は、生成物10Bが分離した後の搬送補助材20に接触させるための回復用媒体を受け入れる。回復用媒体は、用途に応じて種々の物質が採用され得る。例えば回復用媒体は、搬送補助材20を洗浄するための洗浄用媒体であってもよい。洗浄用媒体の形態は特に限定されない。すなわち、洗浄用媒体は、気体であってもよいし、液体であってもよいし、固体であってもよいし、超臨界流体であってもよい。洗浄用媒体は、それらのうち少なくとも2からなる混合体であってもよい。洗浄用媒体は、例えば水蒸気である。洗浄用媒体は、例えばアルコールなどの有機溶剤である。洗浄用媒体は、例えばナフタレンなどの昇華性固体である。媒体受入部210は、送出口120より下流側に設けられている。媒体受入部210は、回復媒体投入管211に接続しており、第1バルブ212を介して供給される回復用媒体を反応炉100に受け入れる。
【0042】
接触部220は、搬送補助材20に回復用媒体を接触させる。接触部220は、送出口120より下流側であって、搬送補助材排出口130より上流側に設けられた空間であって、搬送補助材20と回復用媒体とが接触する。接触部220において搬送補助材20と回復用媒体とが接触した後に、搬送補助材20は搬送補助材排出口130から排出される。
【0043】
循環装置200は、媒体排出部230をさらに有している。循環装置200において、媒体受入部210は、搬送補助材20を洗浄するための回復用媒体を受け入れる。この場合に、媒体排出部230は、搬送補助材20と接触した後の回復用媒体を反応炉100の外部へ排出する。媒体排出部230は回復媒体排出管231に接続しており、第2バルブ232を介して、反応炉100の外部へ回復用媒体を排出する。このような構成により、反応システム2は、搬送補助材20を好適に循環させることができる。
【0044】
なお、反応炉100が受容する搬送補助材20は、処理物10Aの反応を補助する触媒であって金属元素を含むものである場合がある。この場合において、循環装置200は、搬送補助材20を還元するための非金属元素を含む回復用媒体を受け入れる。より具体的には、搬送補助材20は、鉄、ニッケルまたはコバルトなどの金属を含んでいてもよい。そしてこの場合に、回復用媒体は例えば水素を含む気体であってもよい。
【0045】
次に、
図4は、実施の形態2にかかる生成物製造方法のフローチャートである。
図4に示すフローチャートは、ステップS30の後にステップS31を含む点が、
図2に示したフローチャートと異なる。
【0046】
ステップS31において、反応システム2は、循環装置200の駆動を開始する。循環装置200は、これにより、反応炉100に供給された搬送補助材20に対して回復処理を施すととともに、回復処理を施した搬送補助材20を、搬送補助材排出口130を介して供給口110に再び供給する。
【0047】
以上、反応システム2は、搬送補助材20を好適に循環させることにより、効率良く移動床を生成する。よって、本実施の形態によれば、生成物を効率良く製造できる反応システム等を提供できる。
【0048】
<実施の形態3>
次に、実施の形態3について説明する。
図5は、実施の形態3にかかる反応システム3の全体構成図である。本実施形態にかかる反応システム3は、流動床生成装置300をさらに有する点が、上述の実施の形態と異なる。
【0049】
流動床生成装置300は、搬送装置141により搬送されている混合物に対して攪拌用流体を吐出することにより混合物の流動性を向上させる。ここで、攪拌用流体により流動性が向上している状態の混合物は「流動床」とも称される。流動床生成装置300は主な構成として、第3バルブ301、流体伝送管302および吐出口303を有している。流動床生成装置300は、吐出口303に攪拌用流体を供給することにより、移動床の流動性を向上させて、流動床を生成する。
【0050】
流体伝送管302は、第3バルブ301を介して、攪拌用流体を受け取り、受け取った攪拌用流体を吐出口303に供給する。攪拌用流体は、混合物を攪拌するための流体であって、より具体的には、例えば不活性の窒素ガスである。なお処理物10Aから生成物10Bを製造する際に反応用流体に接触する必要がある場合には、この反応用流体を攪拌用流体として採用してもよい。これにより反応システム3は、混合物の流動性を向上させつつ、反応用流体により反応を促進させることもできる。
【0051】
吐出口303は、反応炉100の筒体101に設けられた開口部である。すなわち反応炉100は、混合物に攪拌用流体を吐出する吐出口303を有している。吐出口303は、例えば筒体101の下部であって、搬送装置141により搬送されている混合物が存在する領域に設けられる。そのため、吐出口303から吐出される攪拌用流体は、混合物に直接接触する。これにより、混合物は攪拌され、流動性が向上する。
【0052】
本実施形態にかかる搬送装置141は、攪拌用流体に接触している混合物を搬送する。つまり、反応システム3は、攪拌用流体により攪拌され流動性が向上した状態の混合物を搬送する。
【0053】
なお、吐出口303は、筒体101において混合物の搬送方向に沿って複数存在することが好ましい。この場合、複数の吐出口303は、例えば上流側から下流側に沿って、直線状に配列されていてもよい。あるいは複数の吐出口303は、筒体101において例えば螺旋状に配置されていてもよい。なお、本実施の形態における反応システム3は、処理物10Aの粒径が、搬送補助材20の粒径に比べて小さい。処理物10Aの粒径は例えば0.05mm以下である。また、搬送補助材20の粒径は例えば0.3mm以上であり、好ましくは0.5mm以上であり、さらに好ましくは1mm以上である。この場合、吐出口303の開口部の大きさは、処理物10Aの粒径より大きく、搬送補助材20の粒径より小さいことが好ましい。すなわち、吐出口303の開口部の大きさは、例えば0.1mm以上である。
【0054】
図6は、流動床生成装置300の詳細を示す図である。流動床生成装置300は、調整部310をさらに含む。調整部310は、反応炉100に供給する攪拌用流体の流量、流速または温度の少なくともいずれか1つを調整する。かかる機能を実現するために、調整部310は例えば、圧送ポンプ、温度調整装置等を有する。
【0055】
また
図6に示すように、流体伝送管302は、吐出口303において配管の太さが変化していてもよい。
図6に示す流体伝送管302は直径L2を有し、吐出口303は直径L2より小さい直径L1を有している。吐出口303の断面積が流体伝送管302の断面積より小さいことにより、吐出口303における攪拌用流体の流速が速くなる。これにより流動床生成装置300は、上述のように処理物10Aの粒径が吐出口303の開口部より小さい場合であっても、処理物10Aが吐出口303に滞ったり、処理物10Aが吐出口303の中に侵入したりするのを抑制し、好適に流動床を生成できる。なお、吐出口303の直径L1は、処理物10Aの粒径より小さくてもよい。
【0056】
また
図6に示すように、流体伝送管302は、吐出口303の部分の角度を変化させることにより、流動性が最適になるよう調整できる。流動床生成装置300は、複数の異なる系統の第3バルブ301、流体伝送管302および吐出口303を有していてもよい。これにより流動床生成装置300は、異なる系統ごとに吐出口303の部分の角度を設定したり、それぞれの系統に異なる流速を設定したりできる。この場合、系統の切り替えや流量の配分を調整部310が担ってもよい。すなわちこの場合、調整部310は、攪拌用流体の吐出方向も調整できる。
【0057】
図7は、実施の形態3にかかる生成物製造方法のフローチャートである。
図7に示すフローチャートは、ステップS20の後にステップS21を有する点が、
図4に示したフローチャートと異なる。
【0058】
ステップS21において、反応システム3は、攪拌用流体の吐出を開始する(ステップS31)。筒体101に処理物10Aまたは搬送補助材20が供給される前に吐出口303から攪拌用流体を吐出することにより、反応システム3は吐出口303に処理物10Aまたは搬送補助材20が入り込むのを抑制する。
【0059】
またこの場合、ステップS50(搬送工程)において、反応システム3は、吐出された攪拌用流体により攪拌されている混合物を搬送する。すなわち反応システム3は、移動床および流動床を生成し、移動床と流動床とが混在する状態において処理物10Aの反応を促進している。よって、本実施の形態によれば、効率良く生成物を製造できる反応システム等を提供することができる。
【0060】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 反応システム
2 反応システム
3 反応システム
10A 処理物
10B 生成物
20 搬送補助材
100 反応炉
101 筒体
110 供給口
111 第1供給口
112 第2供給口
120 送出口
130 搬送補助材排出口
140 駆動装置
141 搬送装置
150 温度制御装置
200 循環装置
201 圧送装置
202 補助材搬送管
210 媒体受入部
211 回復媒体投入管
212 第1バルブ
220 接触部
230 媒体排出部
231 回復媒体排出管
232 第2バルブ
300 流動床生成装置
301 第3バルブ
302 流体伝送管
303 吐出口
304 流体回収管
305 第4バルブ
310 調整部