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特開2024-29906ストーカ装置の水冷式冷却装置及びストーカ装置の水冷式冷却装置の設計方法
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  • 特開-ストーカ装置の水冷式冷却装置及びストーカ装置の水冷式冷却装置の設計方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029906
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】ストーカ装置の水冷式冷却装置及びストーカ装置の水冷式冷却装置の設計方法
(51)【国際特許分類】
   F23H 3/02 20060101AFI20240229BHJP
【FI】
F23H3/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132367
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】595011238
【氏名又は名称】クボタ環境エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【弁理士】
【氏名又は名称】河崎 眞一
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 充彦
(72)【発明者】
【氏名】吉原 健一
(57)【要約】
【課題】第一種圧力容器の適用を回避しながらも、信頼性を損なうことがないストーカ装置の水冷式冷却装置を提供する。
【解決手段】ストーカ装置の水冷式冷却装置1であって、各火格子に備えた冷却水流路を連結管で連結した火格子冷却水供給経路20と、火格子冷却水供給経路から冷却水を回収する開放型水槽3と、それら間に冷却水を循環供給するポンプ6と、循環される冷却水を冷却する冷却機構4と、を備え、火格子冷却水供給経路より上方に配設された開放型水槽3に到るヘッド圧Ph[MPa]、火格子冷却水供給経路に所定流量の冷却水を流す際の火格子冷却水供給経路での圧力損失Pr[MPa]、各火格子の冷却水流路の容積Vs[m]に対して、関係式(Ph+Pr)×Vs≦0.001を満たすように、開放型水槽3の設置高さHと火格子の冷却水流路の容積Vsが設定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に冷却水流路が形成された複数の水冷式の火格子が並列配置されたストーカ装置の水冷式冷却装置であって、
隣接する火格子間で各冷却水流路の給水口と排水口を連結管で連結した火格子冷却水供給経路と、
前記火格子冷却水供給経路よりも上方に配設され前記火格子冷却水供給経路から冷却水を回収する開放型水槽と、
前記開放型水槽に回収された冷却水を前記火格子冷却水供給経路に循環供給するポンプと、
前記開放型水槽に回収された冷却水を冷却する冷却機構と、
を備え、
前記火格子冷却水供給経路から前記開放型水槽に到るヘッド圧Ph[MPa]、前記火格子冷却水供給経路に所定流量の冷却水を流す際の前記火格子冷却水供給経路での圧力損失Pr[MPa]、各火格子の冷却水流路の容積Vs[m]に対して、関係式
(Ph+Pr)×Vs≦0.001
を満たすように、前記開放型水槽の前記火格子冷却水供給経路の入口側を基準とする設置高さHと前記火格子の冷却水流路の容積Vsが設定されているストーカ装置の水冷式冷却装置。
【請求項2】
前記ポンプと前記火格子冷却水供給経路との間に調圧バルブを備えている請求項1記載のストーカ装置の水冷式冷却装置。
【請求項3】
前記関係式
(Ph+Pr)×Vs≦0.001
を満たすように、前記調圧バルブの開度を調節する制御部を備えている請求項2記載のストーカ装置の水冷式冷却装置。
【請求項4】
内部に冷却水流路が形成され、前記並列配置された火格子を側方から押圧する複数の水冷式の側壁と、
隣接する側壁間で各冷却水流路の給水口と排水口を連結管で連結した側壁冷却水供給経路と、
をさらに備え、
前記開放型水槽よりも下方に配設される前記側壁冷却水供給経路から前記開放型水槽に冷却水を回収するとともに、前記開放型水槽に回収された冷却水を前記ポンプで前記側壁冷却水供給経路に循環供給するように構成され、
前記側壁冷却水供給経路から前記開放型水槽に到るヘッド圧Ph[MPa]、前記側壁冷却水供給経路に所定流量の冷却水を流す際の前記側壁冷却水供給経路での圧力損失Pr´[MPa]、各側壁の冷却水流路の容積Vs´[m]に対して、関係式
(Ph+Pr´)×Vs´≦0.001
を満たすように、前記開放型水槽の前記側壁冷却水供給経路の入口側を基準とする設置高さHと前記側壁の冷却水流路の容積Vs´が設定されている請求項1から3の何れかに記載のストーカ装置の水冷式冷却装置。
【請求項5】
内部に冷却水流路が形成された複数の水冷式の火格子が並列配置されたストーカ装置の水冷式冷却装置の設計方法であって、
隣接する火格子間で各冷却水流路の給水口と排水口を連結管で連結した火格子冷却水供給経路と、
前記火格子冷却水供給経路よりも上方に配設され前記火格子冷却水供給経路から冷却水を回収する開放型水槽と、
前記開放型水槽に回収された冷却水を前記火格子冷却水供給経路に循環供給するポンプと、
前記開放型水槽に回収された冷却水を冷却する冷却機構と、
を備え、
前記火格子冷却水供給経路から前記開放型水槽に到るヘッド圧Ph[MPa]、前記火格子冷却水供給経路に所定流量の冷却水を流す際の前記火格子冷却水供給経路での圧力損失Pr[MPa]、各火格子の冷却水流路の容積Vs[m]に対して、関係式
(Ph+Pr)×Vs≦0.001
を満たすように、前記開放型水槽の前記火格子冷却水供給経路の入口側を基準とする設置高さHと前記火格子の冷却水流路の容積Vsを設定するストーカ装置の水冷式冷却装置の設計方法。
【請求項6】
内部に冷却水流路が形成され、前記並列配置された火格子を側方から押圧する複数の水冷式の側壁と、
隣接する側壁間で各冷却水流路の給水口と排水口を連結管で連結した側壁冷却水供給経路と、
をさらに備え、
前記側壁冷却水供給経路よりも上方に配設され前記側壁冷却水供給経路から前記開放型水槽に冷却水を回収するとともに、前記開放型水槽に回収された冷却水を前記ポンプで前記側壁冷却水供給経路に循環供給するように構成し、
前記側壁冷却水供給経路から前記開放型水槽に到るヘッド圧Ph[MPa]、前記側壁冷却水供給経路に所定流量の冷却水を流す際の前記側壁冷却水供給経路での圧力損失Pr´[MPa]、各側壁の冷却水流路の容積Vs´[m]に対して、関係式
(Ph+Pr´)×Vs´≦0.01
を満たすように、前記開放型水槽の前記火格子冷却水供給経路の入口側を基準とする設置高さHと前記側壁の冷却水流路の容積Vs´を設定する請求項5記載のストーカ装置の水冷式冷却装置の設計方法。
【請求項7】
停電発生時に前記ポンプの停止状態で前記水冷式冷却装置を備えた焼却炉を立下げる間、または前記ポンプの故障発生時に前記ポンプを予備機への切り替えるまでの間に、前記火格子及び/または前記側壁に備えた前記冷却水流路の冷却水が100℃を超えて上昇する所定温度を想定し、前記所定温度における蒸気圧Psから(Ph´´+Ps)×Vs´´≦0.01を満たすようにヘッド圧Ph´´[MPa]と前記火格子及び/または前記側壁に備えた前記冷却水流路の
容積Vs´´を決定する請求項6記載のストーカ装置の水冷式冷却装置の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストーカ装置の水冷式冷却装置及びストーカ装置の水冷式冷却装置の設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ごみ焼却炉のストーカ装置の冷却装置として、例えばストーカ装置の下方に配した風箱から供給される燃焼用空気を用いた空冷式の冷却装置が広く利用されていた。
【0003】
しかし、ごみ焼却炉では、環境汚損を防止するなどの観点で低空気比燃焼方式や酸素富化燃焼方式などが採用され、焼却炉の燃焼温度が上昇する傾向にある。また、都市ごみなどの高カロリー化が進んでいる。そのため、ストーカ装置を構成する火格子の温度が部分的に上昇して焼損を招くという問題が生じている。
【0004】
特許文献1には、空冷式ストーカ装置に替えて水冷式ストーカ装置を採用したごみ焼却炉が開示されている。当該水冷式ストーカ装置は、加圧ポンプ、膨張容器、コンプレッサ、液面計、再冷却器、温度検出器、ベンチレータ、圧力調整弁、圧力検出器、流量検出器、流量調整弁、火格子冷却水供給本管、火格子冷却水排水本管、加圧冷却水供給口などを備えている。
【0005】
そして、コンプレッサの運転制御により膨張容器内の空気圧を調整することにより、所定の加圧状態に保持され、系内圧力が設定値以上になれば膨張容器内の空気圧が外部へブローされるように構成されている。例えば沸点を140℃程度に上げて、冷却水出口温度を90℃となるように運用され、系内に於ける火格子冷却水の蒸気化が阻止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平10-504890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示された水冷式ストーカ装置を採用すると、火格子が、大気圧に於ける沸点を超える温度の液体をその内部に保有する容器の規定に該当する第一種圧力容器と位置付けられ、労基法で定めた圧力容器安全規則に従って、製造段階や設置段階で労働局の検査が義務付けられ、使用開始後は定期的に検査機関による性能検査が必要となるなど煩雑な作業が要求され、種々の管理コストが嵩むという課題があった。
【0008】
そこで、第一種圧力容器の適用を回避すべく、容器内部の液体の温度が上昇すると溶解して蒸気を逃がす溶解栓を火格子などに配することも考えられるが、信頼性が十分でない溶解栓を用いることで、却って水冷式ストーカ装置の信頼性を損なう虞がある。
【0009】
本発明の目的は、上述した従来の問題点に鑑み、第一種圧力容器の適用を回避しながらも、信頼性を損なうことがないストーカ装置の水冷式冷却装置及びストーカ装置の水冷式冷却装置の設計方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明によるストーカ装置の水冷式冷却装置の第一の特徴構成は、内部に冷却水流路が形成された複数の水冷式の火格子が並列配置されたストーカ装置の水冷式冷却装置であって、隣接する火格子間で各冷却水流路の給水口と排水口を連結管で連結した火格子冷却水供給経路と、前記火格子冷却水供給経路よりも上方に配設され前記火格子冷却水供給経路から冷却水を回収する開放型水槽と、前記開放型水槽に回収された冷却水を前記火格子冷却水供給経路に循環供給するポンプと、前記開放型水槽に回収された冷却水を冷却する冷却機構と、を備え、前記火格子冷却水供給経路から前記開放型水槽に到るヘッド圧Ph[MPa]、前記火格子冷却水供給経路に所定流量の冷却水を流す際の前記火格子冷却水供給経路での圧力損失Pr[MPa]、各火格子の冷却水流路の容積Vs[m]に対して、関係式(Ph+Pr)×Vs≦0.001を満たすように、前記開放型水槽の前記火格子冷却水供給経路の入口側を基準とする設置高さHと前記火格子の冷却水流路の容積Vsが設定されている点にある。
【0011】
上述の関係式を満たすように、火格子冷却水供給経路の入口側を基準とする開放型水槽の設置高さHと火格子の冷却水流路の容積Vsが設定されることにより、ストーカ装置の水冷式冷却装置の構成部品である火格子などが、溶解栓などの信頼性に欠ける部品を採用することなく第一種圧力容器と認定されることが回避でき、信頼性を確保しながらも管理コストを低減できるようになる。即ち、開放型水槽の設置高さHに相当するヘッド圧力が火格子に掛かることにより、冷却水の沸騰までの余裕が大きくなり、ごみ焼却炉を安全に運転できるようになる。
【0012】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記ポンプと前記火格子冷却水供給経路との間に調圧バルブを備えている点にある。
【0013】
調圧バルブを操作することにより、ポンプによる圧力損失が低減され、その結果、火格子に過大な圧力が掛かることが回避される。
【0014】
同第三の特徴構成は、上述した第二の特徴構成に加えて、前記関係式(Ph+Pr)×Vs≦0.001を満たすように、前記調圧バルブの開度を調節する制御部を備えている点にある。
【0015】
火格子冷却水供給経路の圧力損失Pr[MPa]が変動する場合でも、制御部により調圧バルブの開度を調節することにより、適切かつ安全にごみ焼却炉を運転できるようになる。
【0016】
同第四の特徴構成は、上述した第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、内部に冷却水流路が形成され、前記並列配置された火格子を側方から押圧する複数の水冷式の側壁と、隣接する側壁間で各冷却水流路の給水口と排水口を連結管で連結した側壁冷却水供給経路と、をさらに備え、前記開放型水槽よりも下方に配設される前記側壁冷却水供給経路から前記開放型水槽に冷却水を回収するとともに、前記開放型水槽に回収された冷却水を前記ポンプで前記側壁冷却水供給経路に循環供給するように構成され、前記側壁冷却水供給経路から前記開放型水槽に到るヘッド圧Ph[MPa]、前記側壁冷却水供給経路に所定流量の冷却水を流す際の前記側壁冷却水供給経路での圧力損失Pr´[MPa]、各側壁の冷却水流路の容積Vs´[m]に対して、関係式(Ph+Pr´)×Vs´≦0.001を満たすように、前記開放型水槽の前記側壁冷却水供給経路の入口側を基準とする設置高さHと前記側壁の冷却水流路の容積Vs´が設定されている点にある。
【0017】
上述の関係式を満たすように、側壁冷却水供給経路の入口側を基準とする開放型水槽の設置高さHと側壁の冷却水流路の容積Vs´が設定されることにより、ストーカ装置の水冷式冷却装置の構成部品である冷却壁などが、溶解栓などの信頼性に欠ける部品を採用することなく第一種圧力容器と認定されることが回避でき、信頼性を確保しながらも管理コストを低減できるようになる。即ち、開放型水槽の設置高さHに相当するヘッド圧力が側壁に掛かることにより、冷却水の沸騰までの余裕が大きくなり、ごみ焼却炉を安全に運転できるようになる。
【0018】
本発明によるストーカ装置の水冷式冷却装置の設計方法の第一の特徴構成は、内部に冷却水流路が形成された複数の水冷式の火格子が並列配置されたストーカ装置の水冷式冷却装置の設計方法であって、隣接する火格子間で各冷却水流路の給水口と排水口を連結管で連結した火格子冷却水供給経路と、前記火格子冷却水供給経路よりも上方に配設され前記火格子冷却水供給経路から冷却水を回収する開放型水槽と、前記開放型水槽に回収された冷却水を前記火格子冷却水供給経路に循環供給するポンプと、 前記開放型水槽に回収された冷却水を冷却する冷却機構と、を備え、前記火格子冷却水供給経路から前記開放型水槽に到るヘッド圧Ph[MPa]、前記火格子冷却水供給経路に所定流量の冷却水を流す際の前記火格子冷却水供給経路での圧力損失Pr[MPa]、各火格子の冷却水流路の容積Vs[m]に対して、関係式(Ph+Pr)×Vs≦0.001を満たすように、前記開放型水槽の前記火格子冷却水供給経路の入口側を基準とする設置高さHと前記火格子の冷却水流路の容積Vsを設定する点にある。
【0019】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、内部に冷却水流路が形成され、前記並列配置された火格子を側方から押圧する複数の水冷式の側壁と、隣接する側壁間で各冷却水流路の給水口と排水口を連結管で連結した側壁冷却水供給経路と、をさらに備え、前記側壁冷却水供給経路よりも上方に配設され前記側壁冷却水供給経路から前記開放型水槽に冷却水を回収するとともに、前記開放型水槽に回収された冷却水を前記ポンプで前記側壁冷却水供給経路に循環供給するように構成し、前記側壁冷却水供給経路から前記開放型水槽に到るヘッド圧Ph[MPa]、前記側壁冷却水供給経路に所定流量の冷却水を流す際の前記側壁冷却水供給経路での圧力損失Pr´[MPa]、各側壁の冷却水流路の容積Vs´[m]に対して、関係式(Ph+Pr´)×Vs´≦0.01を満たすように、前記開放型水槽の前記火格子冷却水供給経路の入口側を基準とする設置高さHと前記側壁の冷却水流路の容積Vs´を設定する点にある。
【0020】
同第三の特徴構成は、上述した第二の特徴構成に加えて、停電発生時に前記ポンプの停止状態で前記水冷式冷却装置を備えた焼却炉を立下げる間、または前記ポンプの故障発生時に前記ポンプを予備機への切り替えるまでの間に、前記火格子及び/または前記側壁に備えた前記冷却水流路の冷却水が100℃を超えて上昇する所定温度を想定し、前記所定温度における蒸気圧Psから(Ph´´+Ps)×Vs´´≦0.01を満たすようにヘッド圧Ph´´[MPa]と前記火格子及び/または前記側壁に備えた前記冷却水流路の容積Vs´´を決定する点にある。
【発明の効果】
【0021】
以上説明した通り、本発明によれば、第一種圧力容器の適用を回避しながらも、信頼性を損なうことがないストーカ装置の水冷式冷却装置及び水冷式冷却装置の設計方法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】ストーカ装置の水冷式冷却装置の説明図
図2】(a)は被焼却物の搬送方向に向かって左端部の火格子の底面図、(b)は同中央部の火格子の底面図、(c)は同右端部の火格子の底面図、(d)は(a),(b),(c)におけるA-A断面図、(e)は(a),(c)におけるB-B断面図
図3】(a)は炉幅方向に並設された火格子の冷却流路を接続する接続管の説明図、(b)は各火格子の冷却流路に冷却水を供給するマニホールドと、圧力センサの設置位置の説明図
図4】(a)は水冷壁の要部説明図、(b)は(a)のA-A断面を示す水冷壁の要部説明図
図5】(a)は図4(a)のB-B視の説明図、(b)は図4(a)のD-D断面図、(c)は図4(a)のC-C視の説明図
図6】ごみ焼却炉の燃焼室を示す一部切欠き斜視図
図7】(a),(b)は別実施形態を示すストーカ装置の水冷式冷却装置の説明図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明によるストーカ装置の水冷式冷却装置及びストーカ装置の水冷式冷却装置の設計方法を図面に基づいて説明する。
【0024】
図6には、本発明が適用可能な一般的なストーカ式の焼却炉Aの炉室の概略の構造が示されている。
耐火壁Wで覆われた炉室に複数の火格子2を配設したストーカ機構で構成される炉床Bを備え、その下方に設置した風箱に押込み送風機から供給される燃焼用空気が火格子2を介して炉床B上の被焼却物であるごみに供給されるように構成されている。
【0025】
各火格子2は、固定フレームCに横架された円筒状の支持棒C1に基端部が揺動可能に支持された固定火格子群2Fと、固定フレームCに対してごみの搬送方向に沿って往復移動する可動フレームDに横架された円筒状の支持棒D1に基端部が揺動可能に支持された可動火格子群2Mが、ごみの搬送方向に沿って交互に配列されている。幅方向に並設された複数の火格子群2F,2Mは、炉室の両側部に配置された一対の側壁SWで挟持され、当該側壁SWは外側から中心方向に向けてバネで押圧されている。
【0026】
そして、油圧機構Eによって可動フレームDが往復駆動されることにより、可動火格子群2Mと固定火格子群2Fとが相対移動し、炉床B上の被焼却物が掻き混ぜられつつ下流側に搬送される。
【0027】
炉室の天井部には燃焼用バーナが設けられており、炉立上げ時の炉内昇温に用いられ、ごみ発熱量が低い場合には燃焼用バーナの熱により炉床B上の被焼却物が乾燥、着火し、火格子群によって攪拌及び搬送されながら燃焼する。
【0028】
中央の炉床Bにより主にガス化燃焼される主燃焼ゾーンが構成され、上流側及び下流側に別途炉床が設けられている。上流側の炉床Buによって主に被焼却物を乾燥する乾燥ゾーンが構成され、下流側の炉床Bdによってガス化燃焼後の固形物を灰化する後燃焼ゾーンが構成されている。尚、上流側の炉床Buと中央の炉床Bが一体に構成されている場合もある。
【0029】
上述した火格子2及び側壁SWには、冷却媒体に水を用いた冷却機構が設けられている。
図2(a)~(e)には、火格子2に備えた冷却機構が示されている。各火格子2は耐熱鋳鋼で構成され、鋳物の内部には被焼却物の搬送方向である長手方向に沿って基端側から先端側に向けて2本の冷却水流路2Aが平行姿勢に形成されている。2本の冷却水流路2Aは先端側で下方に向けて屈曲形成され、先端側に形成された連通路2Bで双方が連通されている。
【0030】
火格子2の裏面の各冷却水流路2Aの基端側には、冷却水の給水口2Piと排水口2Poとなる接続金具が設けられている。図2(a)には、被焼却物の搬送方向に向かって左端部の火格子2Lが示され、図2(c)には、被焼却物の搬送方向に向かって右端部の火格子2Rが示され、図2(b)には、中間に配される火格子2Cが示されている。中間に配される火格子2Cには、給水口2Piと排水口2Poとして先端側に向けて「く」の字に屈曲した接続金具2Dが配され(図2(d)参照。)、左端部の火格子2Lには給水口2Piとして下方に延出した接続金具2Eが配され、右端部の火格子2Rには、排水口2Poとして下方に延出した接続金具2Fが配されている(図2(e)参照。)。
【0031】
図3(a)に示すように、炉幅方向に7つの火格子2が並設され、隣接する火格子2の給水口2Piと排水口2Poとの間に連結管2Tが螺合により締付固定されている。左端部の火格子2Lの給水口2Piに接続された給水管から供給された冷却水は、冷却水流路2Aを通過した後に排水口2Poから連結管2Tを介して隣接する火格子2の給水口2Piに供給され、右端部の火格子2Rの排水口2Poに接続された排水管から排水される。
【0032】
図3(b)に示すように、左端部の火格子2Lに備えた接続金具2Eには、配水マニホールドMiから分岐した配水管Mi1,Mi2,Mi3,・・・が接続され、冷却水が分岐供給され、配水マニホールドMiに圧力センサ8が取付けられている。同様に、右端部の火格子2Rに備えた接続金具2Fには、其々排水管を介して排水マニホールドMoに接続されている。
【0033】
図4(a),(b)及び図5(a),(b),(c)には、冷却壁として機能する側壁SWに備えた冷却機構が示されている。側壁SWの外側には耐火壁Wが配され、耐火壁Wに組み込まれた押圧機構を構成するバネSPにより、側壁SWを介して火格子2が炉幅の中央に向けて押圧される。
【0034】
側壁SWは耐摩耗性の複数枚の板状の金属で構成されており、火格子2の配列方向に沿って配されている。側壁SWの裏面には、冷却水流路S1が形成された複数の水冷ジャケットSが配されている。水冷ジャケットSに形成された冷却水流路S1の端部に備えた接続金具同士が連結管STで接続され、各冷却水流路S1が直列に連結されている。
【0035】
図4(a)に示す符号SPiが側壁SWに対する冷却水の給水口側の配管となり、符号SPoが冷却水の排水口側の配管となる。同様の冷却機構が火格子2を挟んで対向配置された側壁SWにも設けられている。なお、側壁SWは一枚で構成され、その裏面に複数に分割された水冷ジャケットSが配されていてもよい。
【0036】
本実施形態では、水冷壁となる側壁SWの水冷ジャケットSは、配管STによって分割されており、各側壁SWの冷却水流路の容積Vs´[m]は、給水口側の配管SPi、連結管ST、排水口側の配管SPoの容積を含まないそれぞれの水冷ジャケットSと定義される。
【0037】
図1(a)には、ストーカ装置の水冷式冷却装置1の全体構成が示されている。内部に冷却水流路2Aが形成された複数の水冷式の火格子2が並列配置されたストーカ装置の水冷式冷却装置1である。
【0038】
水冷式冷却装置1は、隣接する火格子2間で各冷却水流路2Aの給水口2Piと排水口2Poを連結管2Tで連結した火格子冷却水供給経路20と、火格子冷却水供給経路20に冷却水を配水する配水マニホールドMiと、火格子冷却水供給経路20から冷却水を排水する排水マニホールドMoと、火格子冷却水供給経路20から冷却水を回収する開放型水槽3と、開放型水槽3に回収された冷却水を火格子冷却水供給経路20に循環供給するポンプ6と、開放型水槽3に回収された冷却水を冷却する冷却塔などの冷却機構4と、冷却水を回収する冷却水槽5を備えている。
【0039】
開放型水槽3は、火格子冷却水供給経路20よりも上方、この例では配水マニホールドMiよりも上方に配置されている。開放型水槽3に接続された戻り配管よりも下方にオーバーフロー管を備えることにより、開放型水槽3の水面が戻り配管の接続位置より上方になることが回避されている。
【0040】
火格子冷却水供給経路20(この例では、配水マニホールドMi)から開放型水槽3に到るヘッド圧Ph[MPa]、火格子冷却水供給経路20の圧力損失Pr[MPa]、各火格子2の冷却水流路2Aの容積Vs[m]に対して、以下の関係式を満たすように、開放型水槽3の設置高さHと火格子2の冷却水流路2Aの容積Vsが設定されている。
(Ph+Pr)×Vs≦0.001
【0041】
上述の関係式を満たすように、開放型水槽3の火格子冷却水供給経路の入口側を基準とする設置高さHと火格子2の冷却水流路2Aの容積Vsが設定されることにより、ストーカ装置の水冷式冷却装置1の構成部品である火格子2などが、溶解栓などの信頼性に欠ける部品を採用することなく第一種圧力容器と認定されることが回避でき、信頼性を確保しながらも管理コストを低減できるようになる。即ち、開放型水槽の設置高さHに相当するヘッド圧力が火格子に掛かることにより、冷却水の沸騰までの余裕が大きくなり、ごみ焼却炉を安全に運転できるようになる。
【0042】
そして、ポンプ6と火格子冷却水供給経路20との間に調圧バルブ7を備えており、調圧バルブ7を操作することにより、ポンプ6による圧力損失が低減されるように構成されている。その結果、火格子2に過大な圧力が掛かることが回避される。
【0043】
さらに上述の関係式を満たすように、調圧バルブ7の開度を調節する制御部を備えていることが好ましく、火格子冷却水供給経路20の圧力損失Pr[MPa]が変動する場合でも、制御部により調圧バルブ7の開度を調節することにより、適切かつ安全にごみ焼却炉を運転できるようになる。制御部の態様は特に限定されるものではなく、圧力値に基づいて調圧バルブ7の開度を調整できるものであれば、PLC回路やマイクロコンピュータを用いた制御回路などで構成できる。
【0044】
上述した水冷式冷却装置1に、内部に冷却水流路S1が形成され、火格子2を端部から押圧する複数の水冷式の側壁SWと、隣接する側壁SW間で各冷却水流路S1の給水口と排水口を連結管STで連結した側壁冷却水供給経路30と、をさらに備え、側壁冷却水供給経路30から開放型水槽3に冷却水を回収するとともに、開放型水槽3に回収された冷却水をポンプ6で側壁冷却水供給経路30に循環供給するように構成されていてもよい。
【0045】
この場合も、開放型水槽3は、側壁冷却水供給経路30よりも上方に配置されている必要があり、側壁冷却水供給経路30から開放型水槽3に到るヘッド圧Ph[MPa]、側壁冷却水供給経路30の圧力損失Pr´[MPa]、各側壁SWの冷却水流路S1の容積Vs´[m]に対して、以下の関係式を満たすように、開放型水槽3の設置高さHと側壁SWの冷却水流路S1の容積Vs´が設定されていればよい。
(Ph+Pr´)×Vs´≦0.001
【0046】
上述の関係式を満たすように、開放型水槽3の設置高さHと側壁SWの冷却水流路の容積Vs´が設定されることにより、ストーカ装置の水冷式冷却装置の構成部品である冷却壁SWなどが、溶解栓などの信頼性に欠ける部品を採用することなく第一種圧力容器と認定されることが回避でき、信頼性を確保しながらも管理コストを低減できるようになる。即ち、開放型水槽3の設置高さHに相当するヘッド圧力が側壁に掛かることにより、冷却水の沸騰までの余裕が大きくなり、ごみ焼却炉を安全に運転できるようになる。
【0047】
なお、火格子冷却水供給経路20と側壁冷却水供給経路30の双方に冷却水を供給する場合には、上述した其々の関係式が満たされるように、開放型水槽3の設置高さH、火格子2の冷却水流路2Aの容積Vs、側壁SWの冷却水流路S1の容積Vs´を設定すればよい。
【0048】
図7(a),(b)には、開放型水槽3に回収された冷却水を冷却するために、図1に示した冷却塔4に代えて水-水熱交換器4´を用いる態様が示されている。このような態様によれば、冷却水槽5が不要になる。
【0049】
即ち、本発明による水冷式冷却装置の設計方法は、内部に冷却水流路が形成された複数の水冷式の火格子が並列配置されたストーカ装置の水冷式冷却装置の設計方法であって、隣接する火格子間で各冷却水流路の給水口と排水口を連結管で連結した火格子冷却水供給経路と、火格子冷却水供給経路から冷却水を回収する開放型水槽と、開放型水槽に回収された冷却水を火格子冷却水供給経路に循環供給するポンプと、開放型水槽に回収された冷却水を冷却する冷却機構と、を備え、火格子冷却水供給経路から開放型水槽に到るヘッド圧Ph[MPa]、火格子冷却水供給経路の圧力損失Pr[MPa]、各火格子の冷却水流路の容積Vs[m]に対して、関係式(Ph+Pr)×Vs≦0.001を満たすように、開放型水槽の設置高さHと前記火格子の冷却水流路の容積Vsを設定するように構成されている。
【0050】
また、内部に冷却水流路が形成され、火格子を端部から押圧する複数の水冷式の側壁と、隣接する側壁間で各冷却水流路の給水口と排水口を連結管で連結した側壁冷却水供給経路と、をさらに備え、側壁冷却水供給経路から開放型水槽に冷却水を回収するとともに、開放型水槽に回収された冷却水をポンプで側壁冷却水供給経路に循環供給するように構成し、側壁冷却水供給経路から開放型水槽に到るヘッド圧Ph[MPa]、側壁冷却水供給経路の圧力損失Pr´[MPa]、各側壁の冷却水流路の容積Vs´[m]に対して、関係式(Ph+Pr´)×Vs´≦0.01を満たすように、開放型水槽の設置高さHと側壁の冷却水流路の容積Vs´を設定するように構成されている。
【0051】
さらに、停電発生時にポンプPの停止状態で水冷式冷却装置を備えた焼却炉を立下げる間、またはポンプPの故障発生時にポンプPを予備機への切り替えるまでの間に、火格子2及び/または側壁SWに備えた冷却水流路の冷却水が100℃を超えて上昇する所定温度を想定し、当該所定温度における蒸気圧Psから(Ph´´+Ps)×Vs´´≦0.01を満たすようにヘッド圧Ph´´[MPa]と火格子2及び/または側壁SWに備えた冷却水流路の容積Vs´´を決定することで、異常事態の発生時でも冷却水の沸騰が回避されるようになる。
【0052】
上述した実施形態は、本発明の一例を説明するものであり該記載により本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、本発明の作用効果を奏する範囲において各部の具体的な構造、材料、サイズ、設置態様等を適宜変更設計できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
1:ストーカ装置の水冷式冷却装置
2,2L,2C,2R:火格子
2A:冷却水流路
2B:連通路
2Pi:給水口
2Po:排水口
2D,2E,2F:接続金具
4:冷却機構(冷却塔)
20:火格子冷却水供給経路
30:側壁冷却水供給経路
A:ストーカ式焼却炉
B:炉床(燃焼ゾーン)
Bu:炉床(乾燥ゾーン)
Bd:炉床(後燃焼ゾーン)
C:固定フレームC
C1:支持棒
D:可動フレーム
D1:支持棒
Mi:配水マニホールド
Mo:排水マニホールド
SW:側壁
S:水冷ジャケット
S1:冷却水流路
ST:連結管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7