(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029910
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】高炉ガス流判定方法、高炉設備、および、高炉操業方法
(51)【国際特許分類】
C21B 7/24 20060101AFI20240229BHJP
C21B 5/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
C21B7/24
C21B5/00 311
C21B5/00 316
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132371
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】西山 滉一郎
(72)【発明者】
【氏名】櫻 敏臣
(72)【発明者】
【氏名】多川 友生
【テーマコード(参考)】
4K012
4K015
【Fターム(参考)】
4K012BC02
4K012BD01
4K015KA01
4K015KA10
(57)【要約】
【課題】炉壁流過多等の高炉のガス流の異常を正確に検知することができる技術を提供する。
【解決手段】高炉設備における高炉本体のガス流を判定する高炉ガス流判定方法は、高炉本体の炉壁を冷却する炉壁冷却設備の抜熱量を算出し、その抜熱量の算出値から高炉本体のガス流の異常を判定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉設備における高炉本体のガス流を判定する高炉ガス流判定方法であって、
前記高炉本体の炉壁を冷却する炉壁冷却設備の抜熱量を算出し、前記抜熱量の算出値から前記高炉本体のガス流の異常を判定する、高炉ガス流判定方法。
【請求項2】
前記高炉本体の円周方向の複数の位置で前記炉壁冷却設備の前記抜熱量を算出し、前記抜熱量の前記円周方向における標準偏差が予め設定された閾値を超過した場合に、前記ガス流の異常として炉壁流過多が生じたと判定する、請求項1に記載の高炉ガス流判定方法。
【請求項3】
前記高炉本体の円周方向の複数の位置のうち、前記抜熱量が予め設定された閾値を超過した位置を前記炉壁流過多が発生した位置と判定する、請求項2に記載の高炉ガス流判定方法。
【請求項4】
前記高炉本体の円周方向の複数の位置で前記炉壁冷却設備の前記抜熱量を算出し、前記抜熱量が予め設定された閾値を下回った場合に付着物が生成したと判定する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の高炉ガス流判定方法。
【請求項5】
高炉反応が生じる高炉本体と、
前記高炉本体のガス流を判定するガス流判定部と、
を有し、
前記高炉本体は、炉壁を冷却する炉壁冷却設備を有し、
前記ガス流判定部は、前記炉壁冷却設備の抜熱量を算出し、前記抜熱量の算出値から前記高炉本体のガス流の異常を判定する、高炉設備。
【請求項6】
前記ガス流判定部は、前記高炉本体の円周方向の複数の位置で前記炉壁冷却設備の前記抜熱量を算出し、前記抜熱量の前記円周方向における標準偏差が予め設定された閾値を超過した場合に、前記ガス流の異常として炉壁流過多が生じたと判定する、請求項5に記載の高炉設備。
【請求項7】
前記ガス流判定部は、前記高炉本体の円周方向の複数の位置のうち、前記抜熱量が予め設定された閾値を超過した位置を前記炉壁流過多が発生した位置と判定する、請求項6に記載の高炉設備。
【請求項8】
前記ガス流判定部は、前記高炉本体の円周方向の複数の位置で前記炉壁冷却設備の前記抜熱量を算出し、前記抜熱量が予め設定された閾値を下回った場合に付着物が生成したと判定する、請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の高炉設備。
【請求項9】
前記高炉本体の炉壁を冷却する炉壁冷却設備の抜熱量を算出し、前記抜熱量の算出値から前記高炉本体のガス流の異常を判定する工程と、
前記ガス流が異常と判定された場合に、前記ガス流の異常が解消されるように、前記高炉本体への装入物分布および/または風量を変更する工程と、
を有する高炉操業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉ガス流の異常を判定する高炉ガス流判定方法、高炉設備、および高炉操業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉操業においては、炉内ガスの流れを把握することは極めて重要であり、ガス流れの状態によって装入された原料の還元率が異なるため、生産性や燃料比などの操業成績に大きな影響を与える。また、円周方向のガス流れに偏りがあるなど適正ではない場合、炉全体の通気性悪化、炉壁への付着物生成、吹き抜け、棚吊り、スリップなどの炉況悪化の原因となることが知られている。特に円周方向の特定の領域で炉壁におけるガス流れが過多になる現象を炉壁流過多といい、炉壁流過多が生じた場合に炉況悪化が生じやすい。
【0003】
高炉内でのガス流れを判定する手法としては、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載された技術は、高炉炉口のストックライン上において炉壁と炉心との間の複数位置においてガス温度を検出する水平ガスサンプラーと、炉壁際温度を検出するスキンフローサンプラーと、炉壁レンガ温度計を設け、主としてそれらの温度信号に基づいて炉壁流過多を含む高炉全体のガス流れを判定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では炉壁際のガス温度を標準化して指標を算出しているため、高炉の円周方向の温度偏差の位置情報を定量的に知ることは難しい。また、温度計による測定は、高さ方向、円周方向のいずれについても点での測定のため、連続的な温度分布を推定することが困難である。このため、高炉の円周方向の位置情報を含むガス流れを定量的に把握することができず、炉壁流過多のようなガス流れの異常を正確に把握することができない。
【0006】
そこで、本発明は、炉壁流過多等の高炉のガス流の異常を正確に検知することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の[1]~[9]を提供する。
【0008】
[1]高炉設備における高炉本体のガス流を判定する高炉ガス流判定方法であって、
前記高炉本体の炉壁を冷却する炉壁冷却設備の抜熱量を算出し、前記抜熱量の算出値から前記高炉本体のガス流の異常を判定する、高炉ガス流判定方法。
【0009】
[2]前記高炉本体の円周方向の複数の位置で前記炉壁冷却設備の前記抜熱量を算出し、前記抜熱量の前記円周方向における標準偏差が予め設定された閾値を超過した場合に、前記ガス流の異常として炉壁流過多が生じたと判定する、[1]に記載の高炉ガス流判定方法。
【0010】
[3]前記高炉本体の円周方向の複数の位置のうち、前記抜熱量が予め設定された閾値を超過した位置を前記炉壁流過多が発生した位置と判定する、[2]に記載の高炉ガス流判定方法。
【0011】
[4]前記高炉本体の円周方向の複数の位置で前記炉壁冷却設備の前記抜熱量を算出し、前記抜熱量が予め設定された閾値を下回った場合に付着物が生成したと判定する、[1]から[3]のいずれかに記載の高炉ガス流判定方法。
【0012】
[5]高炉反応が生じる高炉本体と、
前記高炉本体のガス流を判定するガス流判定部と、
を有し、
前記高炉本体は、炉壁を冷却する炉壁冷却設備を有し、
前記ガス流判定部は、前記炉壁冷却設備の抜熱量を算出し、前記抜熱量の算出値から前記高炉本体のガス流の異常を判定する、高炉設備。
【0013】
[6]前記ガス流判定部は、前記高炉本体の円周方向の複数の位置で前記炉壁冷却設備の前記抜熱量を算出し、前記抜熱量の前記円周方向における標準偏差が予め設定された閾値を超過した場合に、前記ガス流の異常として炉壁流過多が生じたと判定する、[5]に記載の高炉設備。
【0014】
[7]前記ガス流判定部は、前記高炉本体の円周方向の複数の位置のうち、前記抜熱量が予め設定された閾値を超過した位置を前記炉壁流過多が発生した位置と判定する、[6]に記載の高炉設備。
【0015】
[8]前記ガス流判定部は、前記高炉本体の円周方向の複数の位置で前記炉壁冷却設備の前記抜熱量を算出し、前記抜熱量が予め設定された閾値を下回った場合に付着物が生成したと判定する、[5]から[7]のいずれかに記載の高炉設備。
【0016】
[9]前記高炉本体の炉壁を冷却する炉壁冷却設備の抜熱量を算出し、前記抜熱量の算出値から前記高炉本体のガス流の異常を判定する工程と、
前記ガス流が異常と判定された場合に、前記ガス流の異常が解消されるように、前記高炉本体への装入物分布および/または風量を変更する工程と、
を有する高炉操業方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高炉本体の炉壁を冷却する炉壁冷却設備の抜熱量を算出し、その抜熱量の算出値から高炉本体のガス流の異常を判定するので、炉壁流過多等の高炉のガス流の異常を正確に検知することができる。そして、検知されたガス流の異常に対応して高炉への装入物分布や風量を変更することで安定性に優れた高炉操業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】高炉本体の炉壁を冷却するクーリングステーブを示す断面図である。
【
図3】
図2のクーリングステーブの冷却配管の設置状態を説明するための模式図である。
【
図4】
図2のクーリングステーブの冷却水供給構造の一例を説明するための模式図である。
【
図5】高炉設備における高炉ガス流判定部の一例を示すブロック図である。
【
図6】高炉ガス流判定方法の一例のフローを説明するためのフローチャートである。
【
図7】炉壁流過多と抜熱量との相関を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0020】
<高炉設備>
まず、高炉設備について説明する。
図1は、本実施形態に係る高炉設備の一例を示す断面図である。高炉設備1は、高炉本体100と、高炉ガス流判定部200とを有している。
【0021】
高炉本体100内には、炉頂部に設けられた装入装置(図示せず)により主に鉄鉱石およびコークスからなる原料が装入される。炉底部には、炉内反応を生じさせるための熱風を吹き込む複数の羽口110が円周状に設けられており、この羽口110を介して送風管111から高炉本体100内に熱風を吹き込む。羽口110から送風される領域には、羽口110から熱風が吹き込まれてコークスが押しのけられて形成された空間であるレースウェイ112が形成される。炉底部には炉内反応により生成された溶銑とスラグが溜まる湯溜り部113が存在する。
【0022】
高炉本体100の炉壁101は耐火物の外面が鉄皮101aで覆われて構成されており、鉄皮101aの内側には、鉄皮101aの過熱を防止するための炉壁冷却設備であるクーリングステーブ(CS)102が設けられている。
【0023】
クーリングステーブ102は、
図2に示すように、冷却配管103を母材104で鋳込んだ構造を有している。そして、
図3に示すように、冷却配管103は、冷却効率を最大とするため、その表面積が可能な限り大きくなるように、高炉本体100の高さ方向および円周方向に張り巡らされている。クーリングステーブが破損した場合は冷却配管が破れ冷却水が炉内に浸水するため、冷却水の給水流量と排水流量を監視する目的で流量計を設置する場合がある。
【0024】
クーリングステーブ102の冷却水供給構造の一例を
図4に模式的に示す。クーリングステーブ102のある冷却系統Aは、冷却配管103aと、その冷却系統の給水流量を測定する給水流量計F
11と、排水流量を測定する排水流量計F
12とを有する。冷却配管103aの冷却水は、ヘッドタンク104aに貯留され、ポンプ105aにより循環される。冷却系統Aの直上の冷却系統Bは、冷却配管103bと、その冷却系統の給水流量を測定する給水流量計F
13と、排水流量を測定する排水流量計F
14とを有する。冷却配管103bの冷却水は、ヘッドタンク104bに貯留され、ポンプ105bにより循環される。このような上下の冷却系統が円周方向に例えば40個程度存在し、他の冷却系統も同様に構成される。給水流量計F
11およびF
13と、排水流量計F
12およびF
14は、配管破損時の漏水を検知するための配管温度測定機能を有しており、給水温度および排水温度を測定することができる。
【0025】
なお、
図4では、冷却水の給水流量と排水流量を監視する目的で設置された配管温度測定機能を有する流量計を用いた例を示したが、給水温度および排水温度を測定する温度計および流量を測定する流量計を別個に設けてもよい。
【0026】
高炉ガス流判定部200は、クーリングステーブ102における円周方向の抜熱量を演算し、それに基づいて炉壁ガス流の判定を行い、炉壁流過多等のガス流の異常を検知するものであり、
図5に示すように、演算部210と、記憶部220とを有している。
【0027】
演算部210は、温度・流量実績取り込み部211と、抜熱量演算部212と、抜熱量標準偏差演算部213と、炉壁流過多判定部214と、炉壁流過多発生箇所判定部215と、炉壁付着物生成判定部216とを有する。
【0028】
温度・流量実績取り込み部211は、例えば、給水流量計F11およびF13と、排水流量計F12およびF14の測定値に基づいて、給水側および排水側の温度実績および流量実績を取り込む。上述したように、別個に設けた温度計や流量計から温度実績および流量実績を取り込んでもよい。
【0029】
抜熱量演算部212は、温度・流量実績取り込み部211に取り込まれた、冷却系統ごとの給水側および排水側の温度実績および流量実績に基づいて冷却系統ごとの冷却水の抜熱量を算出する。このとき、冷却水の抜熱量は以下のように求めることができる。
抜熱量=(排水温度-給水温度)×流量×密度×比熱
抜熱量演算部212では、冷却系統ごとの演算結果から、クーリングステーブ102の円周方向の抜熱量を求めることができる。すなわち、各冷却系統が測定箇所として機能し、円周方向の各測定箇所での抜熱量を求めることができる。
【0030】
抜熱量標準偏差演算部213は、抜熱演算部212で求めたクーリングステーブ102の円周方向の各冷却系統での抜熱量の標準偏差を算出する。この値は、炉壁ガス流(炉壁流)の円周方向分布の均一性を示すものである。
【0031】
炉壁流過多判定部214は、抜熱量標準偏差演算部213で算出された抜熱量の標準偏差がある閾値を超えた場合に、炉壁流が一様ではなく炉壁流過多が発生していると判定する。抜熱量の標準偏差の閾値は、通常操業時の抜熱量を参考に適宜設定する。
【0032】
炉壁流過多発生箇所判定部215は、クーリングステーブ102の円周方向の各冷却系統での抜熱量の計算結果から、抜熱量が通常操業時の抜熱量を基準に設定した閾値を超過した値となる冷却系統の位置を求め、その冷却系統の位置を、炉壁流過多発生箇所と判定する。
【0033】
炉壁付着物生成判定部216は、クーリングステーブ102の円周方向の各冷却系統での抜熱量の計算結果から、抜熱量が予め設定された閾値を下回った場合に炉壁付着物が生成したと判定する。具体的には、抜熱量が例えば通常操業時の抜熱量を基準に設定した閾値を下回る値となる冷却系統がある場合に、その位置を炉壁付着物生成箇所と判定する。付着物が生成されているときは、ガス通気性が阻害されている可能性が高く、ガス流異常が発生しているとみなすことができる。
【0034】
記憶部220は、演算部210における演算に必要な情報や、抜熱量演算結果、炉壁流過多発生箇所、炉壁付着物生成箇所等が記憶される。
【0035】
<高炉ガス流判定方法>
次に、以上のように構成される高炉設備1における高炉ガス流判定方法のフローについて説明する。
図6は高炉ガス流判定方法のフローを説明するためのフローチャートである。
【0036】
まず、温度・流量実績取り込み部211により給水側および排水側の温度実績および流量実績を取り込む(ステップST1)。給水側および排水側の温度実績および流量実績は、例えば、給水流量計F11およびF13と、排水流量計F12およびF14の測定値に基づいて、取り込むことができる。
【0037】
次いで、温度・流量実績取り込み部211に取り込まれた、冷却系統ごとの給水側および排水側の温度実績および流量実績に基づいて、抜熱演算部212により冷却系統ごとの抜熱量を演算する(ステップST2)。
【0038】
このとき、抜熱演算部212により、上述したように、抜熱量=(排水温度-給水温度)×流量×密度×比熱の式に基づき、冷却系統ごとの演算結果から、クーリングステーブ102の円周方向の各冷却系統での抜熱量を算出する。この場合、各冷却系統が測定箇所として機能する。冷却水の抜熱量は高炉の炉壁ガス流(炉壁流)と相関があり、
図7に示すように、炉壁流が多くなって炉壁流過多が発生すると炉壁温度が上昇し、クーリングステーブの温度も上昇し、冷却水の抜熱量が上昇する。
【0039】
次いで、クーリングステーブ102の円周方向の各冷却系統で得られた抜熱量から、抜熱量標準偏差演算部213により円周方向の抜熱量の標準偏差を演算する(ステップST3)。
【0040】
次いで、抜熱量標準偏差演算部213で算出された抜熱量の標準偏差に基づいて、炉壁流過多判定部214により、炉壁流過多が発生したか否かを判定する(ステップST4)。ここでは、抜熱量の標準偏差が、予め定められた閾値を超えた場合に、炉壁流が一様ではなく炉壁流過多が発生したと判定する。すなわち、抜熱量の標準偏差が大きい場合は、抜熱量が著しく高い箇所(冷却系統)があると考えられ、その箇所において炉壁流過多が発生したと判定する。
【0041】
炉壁流過多が発生したと判定された場合は、操業を制御する制御部(図示せず)に異常を出力し(ステップST5)、それとともに、炉壁流過多発生箇所判定部215により、炉壁流過多箇所判定を行う(ステップST6)。この判定では、クーリングステーブ102の円周方向の各測定箇所(冷却系統)での抜熱量の計算結果から、抜熱量が通常操業時の抜熱量を基準に設定した閾値を超過した冷却系統の位置を求め、その位置を、炉壁流過多発生箇所と判定する。そして、その炉壁流過多発生箇所の実績を記憶部に記憶させる。
【0042】
次いで、炉壁付着物生成判定部216により、クーリングステーブ102の円周方向の各冷却系統での抜熱量の計算結果から、抜熱量が予め設定された閾値を下回った場合に炉壁付着物が生成したと判定する(ステップST7)。そして、炉壁付着物生成箇所の実績を記憶部に格納する。炉壁付着物が生成したとの判定は、抜熱量が例えば通常操業時の抜熱量を基準に設定した閾値を下回った冷却系統がある場合に、その位置を炉壁へ付着物が生成した箇所と判定する。
【0043】
上述したように、高炉内でのガス流れを判断する手法として、特許文献1に記載された所定の指標に基づいて炉壁におけるガス流れの過多等を判断する方法が知られている。しかし、特許文献1の技術では炉壁際のガス温度を標準化して指標を算出しているため、炉円周方向の温度偏差の位置情報を定量的に知ることは難しく、また、温度計による測定は、高さ方向、円周方向のいずれについても、点での測定のため、連続的な温度分布を推定することが困難である。このため、高炉の円周方向の位置情報を含むガス流れを定量的に把握することができず、炉壁流過多等のガス流れの異常を正確に把握できないという問題がある。
【0044】
そこで、本実施形態では、炉壁に設置された炉体冷却設備であるクーリングステーブ102により、高炉の円周方向の複数の冷却系統ごとの給水側および排水側の温度実績および流量実績に基づいて冷却系統ごとの抜熱量を算出し、円周方向の抜熱量の分布を求めて高炉のガス流(炉壁流)の円周方向の分布を把握する。クーリングステーブ102は上述した
図3のように冷却配管103が張り巡らされているため、上記特許文献1のような点で測定する温度計と異なり、冷却系統ごとの抜熱量を面で求めることができ、高精度である。このとき、詳細な位置情報を得るため、抜熱量の算出は、可能な限り多くの配管にて行うことが好ましい。
【0045】
このように、本実施形態では、クーリングステーブ102により、円周方向の抜熱量の分布を求めるので、高炉のガス流(炉壁流)の円周方向の分布を定量的に把握して、高炉のガス流の異常を正確に検知することができる。
【0046】
具体的には、円周方向の抜熱量の標準偏差を求め、その値が予め定められた閾値を超えた場合に、炉壁流が一様ではなく、典型的なガス流異常である炉壁流過多が発生したと判定し、抜熱量自体が予め定められた閾値を超過した位置を炉壁流過多発生箇所と判定する。また、円周方向の抜熱量の予め定められた閾値を下回る場合に炉壁付着物生成が発生したと判定する。付着物が生成されているときは、ガス通気性が阻害され、ガス流異常が発生している可能性が高い。なお、炉壁流過多と炉壁付着物生成はメカニズムが異なるため、発生タイミングは異なるが、炉壁付着物生成は一般にある程度の長い時間で形成されるため、炉壁流過多と炉壁付着物生成が同時発生することもあり得る。
【0047】
このように、炉壁流過多判定のように高炉のガス流が異常と判定された場合や、炉壁付着物生成判定のように、通気性の悪化のようなガス流異常の蓋然性が高いと判定された場合に、ガス流の異常が解消されるように、高炉本体への装入物分布および/または風量等を変更する。これにより、安定性に優れた高炉操業を行うことができる。より具体的には、炉壁流過多によりコークス比が上昇するが、このようなコークス比の上昇は、事前に減風したり、装入物分布を変更したりする高炉操業アクションを取ることにより解消することが可能である。炉壁付着物が発生した場合は、コークスを何回か続けて装入し、燃焼を促進するアクションを取ることにより解消することが可能である。
【0048】
<他の適用>
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらはあくまで例示に過ぎず、制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0049】
例えば、上記実施形態では、クーリングステーブの冷却水の給水流量と排水流量を監視する目的で設置される、配管温度測定機能を有する給水流量計および排水流量計により測定した給水温度および排水温度および流量を用いて冷却水の抜熱量を演算したが、これに限らず別個の手段で抜熱量を演算してもよい。
【0050】
また、高炉ガス流判定部の構成も上記実施形態のものに限らず、所望の高炉本体のガス流異常の判定を行えるように適宜構成することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 高炉設備
100 高炉本体
101 炉壁
101a 鉄皮
102 クーリングステーブ(炉壁冷却設備)
103、103a、103b 冷却配管
200 高炉ガス流判定部
210 演算部
211 温度・流量実績取り込み部
212 抜熱量演算部
213 抜熱量標準偏差演算部
214 炉壁流過多判定部
215 炉壁流過多発生箇所判定部
216 炉壁付着物生成判定部
217 炉壁付着物生成箇所判定部