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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029916
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】粗選装置
(51)【国際特許分類】
   B07B 1/42 20060101AFI20240229BHJP
   B07B 13/16 20060101ALI20240229BHJP
   B07B 13/18 20060101ALI20240229BHJP
   B02B 3/00 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
B07B1/42 F
B07B13/16 A
B07B13/18
B02B3/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132379
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 明徳
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 勇
【テーマコード(参考)】
4D021
4D043
【Fターム(参考)】
4D021AA03
4D021CA04
4D021DA01
4D021DC01
4D021DC03
4D021EA10
4D043AA01
4D043AA05
4D043AA07
4D043GB45
(57)【要約】
【課題】装置自体をコンパクトにしながら、処理効率を自動的に最適化することができる粗選装置を提供する。
【解決手段】被選別物から夾雑物を取り除く粗選装置10は、網面が水平から傾斜していると共に、傾斜方向に沿って揺動可能なフルイ41を有し、揺動させているフルイ41上に被選別物を供給することで精粒と夾雑物とを選別する揺動フルイ部40と、フルイ41上を移動する被選別物の分布状態を検出する検出手段(カメラセンサ46、記憶部52および判定部51)と、検出手段の検出結果に応じて、フルイ41上の被選別物が推奨分布状態となるような調整動作を行わせる調節手段(調整部53)とを備えている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
精粒と夾雑物とが含まれる被選別物から夾雑物を取り除く粗選装置であって、
網面が水平から傾斜していると共に、傾斜方向に沿って揺動可能なフルイを有し、揺動させている前記フルイ上に前記被選別物を供給することで前記精粒と前記夾雑物とを選別する揺動フルイ部と、
前記フルイ上を移動する前記被選別物の分布状態を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に応じて、前記フルイ上の前記被選別物が推奨分布状態となるような調整動作を行わせる調節手段とを備えていることを特徴とする粗選装置。
【請求項2】
請求項1に記載の粗選装置であって、
前記調整動作として、前記フルイ上への前記被選別物の供給量を調整することを特徴とする粗選装置。
【請求項3】
請求項1に記載の粗選装置であって、
前記検出手段は、
前記フルイにおける網面上の所定の撮像範囲を撮影して撮影データを得る撮像部と、
前記フルイにおける前記被選別物の分布状態が推奨分布状態となっているときの前記撮像範囲を推奨データとして記憶する記憶部と、
前記撮影データと前記推奨データとを比較し、その比較結果に応じて前記調整動作を行わせるか否かを判定する判定部とを有することを特徴とする粗選装置。
【請求項4】
請求項2に記載の粗選装置であって、
前記揺動フルイ部の上流側に、前記被選別物を一時的に貯留し、貯留した前記被選別物を下流側に供給する貯留手段が設けられており、
前記貯留手段は、下流側に供給する前記被選別物の供給量を調整可能なリードローラを備えており、
前記調整動作として、前記リードローラによる前記被選別物の供給量を調整することを特徴とする粗選装置。
【請求項5】
請求項1に記載の粗選装置であって、
前記調整動作として、前記フルイの揺動速度を調整することを特徴とする粗選装置。
【請求項6】
請求項3に記載の粗選装置であって、
上記記憶部は、複数の推奨データを記憶可能であり、
前記判定部は、前記撮影データを同時に複数の前記推奨データと比較して判定を行うことが可能であることを特徴とする粗選装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀類や豆類等の穀粒から夾雑物(葉や茎等)を取り除く粗選装置に関する。
【背景技術】
【0002】
穀類や豆類等から夾雑物を取り除く粗選装置が、穀粒(穀類や豆類等の精粒と夾雑物との混合物)の貯蔵施設(カントリーエレベータやライスセンター等)の荷受け設備として使用される。このような粗選装置は、フルイを揺動させて夾雑物を選別除去する揺動フルイ部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭58-128676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粗選装置の揺動フルイ部では、フルイに対して穀粒の供給が多い場合、夾雑物の選別除去が追い付かずにフルイ上に穀粒が堆積し、フルイの目詰まりを生じさせる。また、フルイに対して穀粒の供給が少ない場合、粗選装置の処理効率(選別能率)が低下し、粗選装置における本来の能力が発揮できない。通常、粗選装置は、揺動フルイ部への穀粒の供給量(穀粒供給量)を手動で調整できるようになっているが、この調整は使用者にとって煩雑なものであり、穀粒供給量は初期設定のままで使用されていることが多いのが実状である。すなわち、粗選装置において穀粒供給量が適切に調整されていることは少なく、フルイに対する穀粒の流量過多が生じてから供給量を下げたり、供給量の低いままで使用が継続されたりしている。
【0005】
尚、特許文献1には、有効長さを調節可能な選別網(フルイ)を有し、選別網の面上を流される穀粒の層厚を検出し、検出された層厚に応じて選別網の有効長さを自動的に調節する穀粒選別機(粗選装置)が開示されている。しかしながら、特許文献1の構造では、選別網の有効長さを変更する機構により、装置が複雑となったり、装置自体が大型化したりするといった問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、装置自体をコンパクトにしながら、処理効率を自動的に最適化することができる粗選装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の粗選装置は、精粒と夾雑物とが含まれる被選別物から夾雑物を取り除く粗選装置であって、網面が水平から傾斜していると共に、傾斜方向に沿って揺動可能なフルイを有し、揺動させている前記フルイ上に前記被選別物を供給することで前記精粒と前記夾雑物とを選別する揺動フルイ部と、前記フルイ上を移動する前記被選別物の分布状態を検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に応じて、前記フルイ上の前記被選別物が推奨分布状態となるような調整動作を行わせる調節手段とを備えていることを特徴としている。
【0008】
上記の構成によれば、フルイ上の被選別物が推奨分布状態となるような調整動作により、粗選装置の処理効率を自動的に最適化することができる。
【0009】
また、上記粗選装置は、前記調整動作として、前記フルイ上への前記被選別物の供給量を調整する構成とすることができる。
【0010】
上記の構成によれば、フルイに対して被選別物の供給が多い場合、その供給量を下げることでフルイに対する穀粒の流量過多を防止できる。また、フルイに対して被選別物の供給が少ない場合、その供給量を上げることで粗選装置の処理効率を上げることができる。
【0011】
また、上記粗選装置では、前記検出手段は、前記フルイにおける網面上の所定の撮像範囲を撮影して撮影データを得る撮像部と、前記フルイにおける前記被選別物の分布状態が推奨分布状態となっているときの前記撮像範囲を推奨データとして記憶する記憶部と、前記撮影データと前記推奨データとを比較し、その比較結果に応じて前記調整動作を行わせるか否かを判定する判定部とを有する構成とすることができる。
【0012】
上記の構成によれば、調整動作を行わせるか否かの判定を、撮影データと推奨データとの比較を行うソフトウェア処理によって実行でき、装置の複雑化や大型化を招くことなく、安定した精度で粗選装置の処理効率を最適化することができる。
【0013】
また、上記粗選装置は、記揺動フルイ部の上流側に、前記被選別物を一時的に貯留し、貯留した前記被選別物を下流側に供給する貯留手段が設けられており、前記貯留手段は、下流側に供給する前記被選別物の供給量を調整可能なリードローラを備えており、前記調整動作として、前記リードローラによる前記被選別物の供給量を調整する構成とすることができる。
【0014】
上記の構成によれば、リードローラによる被選別物の供給量を調整するといった簡易な調整動作によって、粗選装置の処理効率を最適化することができる。
【0015】
また、上記粗選装置は、前記調整動作として、前記フルイの揺動速度を調整する構成とすることができる。
【0016】
また、上記粗選装置では、上記記憶部は、複数の推奨データを記憶可能であり、前記判定部は、前記撮影データを同時に複数の前記推奨データと比較して判定を行うことが可能である構成とすることができる。
【0017】
上記の構成によれば、判定部における判定精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の粗選装置は、フルイ上の被選別物が推奨分布状態となるような調整動作により、粗選装置の処理効率を自動的に最適化することができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明が適用される粗選装置の外観を示す斜視図である。
図2図1の粗選装置の内部構造を示すものであり、穀粒貯留部および風選部の内部構造を示す縦断面図である。
図3図1の粗選装置の内部構造を示すものであり、揺動フルイ部の内部構造を示す縦断面図である。
図4】粗選装置における穀粒供給量の自動調整を行う制御系を示すブロック図である。
図5】粗選装置における穀粒供給量の自動調整制御を示すフローチャートである。
図6】フルイの網面上における穀粒の分布状態の一例を示す模式図である。
図7】フルイの網面上における穀粒の推奨分布状態の一例を示す模式図である。
図8】フルイの網面上における穀粒の推奨分布状態の他の例を示す模式図である。
図9】フルイの網面上における穀粒の推奨分布状態のさらに他の例を示す模式図である。
図10】フルイの網面上における穀粒の推奨分布状態のさらに他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明が適用される粗選装置10の外観を示す斜視図である。図2および図3は、粗選装置10の内部構造を示す縦断面図である。尚、粗選装置10は、大略的には、上方から順に穀粒貯留部(貯留手段)20、風選部30および揺動フルイ部40が配置された構成となっており、図2は穀粒貯留部20および風選部30の内部構造を示し、図3は揺動フルイ部40の内部構造を示している。
【0021】
穀粒貯留部20は、荷受けした穀粒(被選別物)を一時的に貯留する手段であり、図1および図2に示すように、ホッパー21と、ホッパー21の上部に設けられた荷受け口22と、ホッパー21の下部に設けられた供給口23とを有している。また、供給口23にはリードローラ24が配置されており、リードローラ24の回転速度を変化させることにより、穀粒貯留部20から風選部30への穀粒供給量を調整できるようになっている。すなわち、リードローラ24の回転速度を上げれば穀粒供給量を増やすことができ、回転速度を下げれば穀粒供給量を減らすことができる。
【0022】
風選部30は、供給された穀粒から比較的軽い夾雑物を除去する手段であり、第1風路31および第2風路32を有している。第1風路31および第2風路32は、風路内の気流方向に沿って連結されており、第2風路32が第1風路31の下流側に配置されている。第2風路32の夾雑物出口321側には図示しない外部ファンが配置され、この外部ファンの駆動により第1風路31および第2風路32内に気流が発生する。具体的には、外部ファンの駆動により、第2風路32の夾雑物出口321側から吸引を行うように気流が発生する。
【0023】
第1風路31は、気流方向の上流側の位置が低く、下流側の位置が高くされており、気流が斜め上向きに流れるように設定されている。第2風路32は、気流方向の上流側の位置が高く、下流側の位置が低くされており、気流が下向きに流れるように設定されている。
【0024】
また、第1風路31の上流側には、穀粒入口311、穀粒出口312および空気取入口313が設けられており、穀粒入口311は風路壁の上面に、穀粒出口312は風路壁の下面に形成されている。第1風路31および第2風路32に気流が生じている状態で穀粒入口311から穀粒が供給されると、比較的軽い夾雑物は、気流と共に第1風路31内を上昇し、第2風路32に送り込まれて夾雑物出口321から排出される。一方、比較的重い夾雑物および精粒は、第1風路31を越えて第2風路32に到達することはできず、その自重によって第1風路31内を落下し、穀粒出口312から揺動フルイ部40へ送り込まれる。
【0025】
揺動フルイ部40は、網面が水平から幾分(4±0.5°程度)傾斜したフルイ41を有しており、フルイ41は傾斜方向に沿って揺動可能とされている。フルイ41の揺動は、例えば、駆動源(モータ等)とフルイ41とをクランク機構を介して接続することで行われる。
【0026】
風選部30から揺動フルイ部40へ送り込まれる穀粒は、図3に示すように、均分トレイ42を経由してフルイ41における傾斜の高い側の端部(高位置側端部)に載せられ、フルイ41の揺動に伴って傾斜方向に沿って低い側へ移動していく。均分トレイ42は、フルイ41に載せられる穀粒をフルイ41の幅方向(傾斜方向と直交する方向)に均等化させる機能を有する。穀粒に含まれる精粒はフルイ41の網目を通って落下し、網目を通らない夾雑物は傾斜の低い側の端部(低位置側端部)まで到達する。フルイ41から落下した精粒は、フルイ41の下方に設置された収集台43によって集められ、精粒出口44から粗選装置10の外部に排出される。また、フルイ41の低位置側端部に到達した夾雑物は、夾雑物出口45から粗選装置10の外部に排出される。
【0027】
尚、揺動フルイ部40においてフルイ41(および収集台43)は、複数段(図3では2段)設けられていてもよい。揺動フルイ部40を複数段設ける場合は、均分トレイ42が、風選部30から送り込まれた穀粒を複数のフルイ41に対して均等に振り分ける機能を有する。
【0028】
以上が粗選装置10の基本構成および動作であるが、フルイ41に対して穀粒供給量が適切でない場合、フルイ41上の穀粒が流量過多となり広範囲に広がることで夾雑物と一緒に排出されたり、粗選装置10の処理効率(選別能率)が低下したりする。粗選装置10では、フルイ41に対して穀粒供給量を自動調整し、処理効率を最適化することができる。以下、粗選装置10における穀粒供給量の自動調整制御について説明する。
【0029】
粗選装置10の揺動フルイ部40には、フルイ41における網面上の所定の撮像範囲(図6~10参照)を撮影可能なカメラセンサ(検出手段の一部、撮像部)46が備えられている。尚、粗選装置10が複数のフルイ41を有する場合、カメラセンサ46は、1枚のフルイ41に対して設けられていてもよく、フルイ41毎に設けられていてもよい。図3では、上下2段のフルイ41に対して、上段のフルイ41にのみカメラセンサ46を設けた構成を例示している。
【0030】
図4は、粗選装置10における穀粒供給量の自動調整を行う制御系を示すブロック図である。この制御系は、図4に示すように、制御部50、カメラセンサ46およびリードローラ24によって構成されている。また、制御部50は、判定部(検出手段の一部)51、記憶部(検出手段の一部)52および調整部(調整手段)53を有している。
【0031】
図5は、粗選装置10における穀粒供給量の自動調整制御を示すフローチャートである。この自動調整制御は、所定の時間間隔で実施される。この自動調整制御では、最初に、カメラセンサ46がフルイ41の網面を撮影し、撮影データを取得する(S1)。この撮影データは、判定部51へ入力される。図6は、フルイ41の網面上における穀粒の広がり具合(分布状態)の一例を示す模式図である。フルイ41によって穀粒が選別を受ける際には、精粒がフルイ41の網目を通って落下し、夾雑物のみが網目を通らずにフルイ41上に残る。このとき、図6に示すように、フルイ41上には、フルイ41上に穀粒が存在する下限ライン(穀粒下限ライン)L1が発生する。すなわち、穀粒下限ラインL1より下流側の網面では、全ての精粒がふるい落とされ、夾雑物しか存在しない。粗選装置10では、この穀粒下限ラインL1が適切な位置に保持されるようにすることで、穀粒供給量の調整を行うことができる。尚、カメラセンサ46の撮像範囲は、この穀粒下限ラインL1を含む範囲に設定される。
【0032】
判定部51は、さらに記憶部52から判定用の推奨データを読み取り、カメラセンサ46の撮影データを推奨データと比較する。具体的には、判定部51は、撮影データと推奨データとの類似性をソフトウェア処理によって数値(マッチング数値)として算出する(S2)。この比較により、フルイ41の網面上での穀粒の分布状態が推奨分布状態となっているか否かが判定される。フルイ41上での穀粒の分布状態が推奨分布状態となっていれば、粗選装置10における穀粒供給量が適正量に調整されていると言える。
【0033】
例えば、フルイ41における推奨分布状態を、網面の約50%に穀粒が載っている状態にしようとする場合、言い換えれば、穀粒下限ラインL1をフルイ41の長さ方向における1/2程度の位置に保持しようとする場合、穀粒下限ラインL1がその位置にあるときの撮影データ(図7参照)を予め準備し、この撮影データを推奨データとして記憶部52に記憶しておく。すなわち、記憶部52に記憶される推奨データが穀粒の推奨分布状態を示している。無論、この推奨データの撮像範囲は、カメラセンサ46の撮像範囲と同じ範囲に設定される。
【0034】
撮影データと推奨データとのマッチング数値は、フルイ41上での穀粒の分布状態、言い換えれば穀粒下限ラインL1の位置に大きく依存する。すなわち、撮影データにおける穀粒下限ラインL1と推奨データにおける穀粒下限ラインL1とが近いほど類似性は高くなり、マッチング数値も大きくなる。また、撮影データにおける穀粒下限ラインL1と推奨データにおける穀粒下限ラインL1とが離れているほど類似性は低くなり、マッチング数値も小さくなる。
【0035】
判定部51で算出されたマッチング数値は所定の閾値と比較され、マッチング数値がこの閾値を超えた場合に(S3でYES)、穀粒供給量を変更する調整(この場合は、下げる調整)を行う(S4)。本例の粗選装置10では、調整部53がリードローラ24の回転速度を下げることで、穀粒供給量が下げられる。このとき、リードローラ24の回転速度は、所定量分だけ下げられる。例えば、リードローラ24の回転速度が段階的に設定可能な場合は、リードローラ24の回転速度を1段階下げるといった調整が行われる。また、例えば、リードローラ24の回転速度が無段階的に設定可能な場合は、リードローラ24の回転速度を所定速度だけ下げるといった調整が行われる。
【0036】
上述したように、上記の自動調整制御は、粗選装置10の稼働中において所定の時間間隔で繰り返し実行される。このため、一度の制御によって穀粒供給量が十分に下がらない場合でも、次の制御によってマッチング数値が閾値を超えれば、穀粒供給量がさらに下げられる。これにより、最終的には、フルイ41における穀粒の分布状態を、推奨データにおける推奨分布状態とほぼ同程度にすることができ、穀粒供給量を適正量に調整して、粗選装置10の処理効率を最適化することができる。
【0037】
尚、上記説明の自動調整制御では、マッチング数値が閾値を超えた場合に穀粒供給量を下げる調整を行っているが、この制御例は、穀粒供給量が適正量よりも多い場合に、穀粒供給量を適正量に近付けるものである。一方、穀粒供給量が適正量よりも少ない場合には、以下の方法で穀粒供給量を調整することができる。
【0038】
例えば、フルイ41における推奨分布状態を、網面の約33~50%に穀粒が載っている状態にしようとする場合、言い換えれば、穀粒下限ラインL1をフルイ41の長さ方向における1/3~1/2程度の位置に保持しようとする場合、推奨データとして、図7に示す推奨データ(第1推奨データ)以外に、図8に示す推奨データ(第2推奨データ)を記憶部52に記憶しておく。ここで、図8に示す推奨データは、穀粒下限ラインL1がフルイ41の長さ方向における上流側から1/3の位置にあるときの撮影データである。
【0039】
この場合の自動調整制御では、図5のS2のステップにおいて、カメラセンサ46による撮影データを第1推奨データおよび第2推奨データの両方と比較し、それぞれの推奨データに対してマッチング数値を算出する。そして、S3のステップにおいて第1推奨データとのマッチング数値が閾値を超えた場合には、S4のステップにおいて穀粒供給量を下げ、S3のステップにおいて第2推奨データとのマッチング数値が閾値を超えた場合には、S4のステップにおいて穀粒供給量を上げるように調整を行う。これにより、穀粒供給量が適正量よりも少ない場合に、穀粒供給量を上げて適正量に近付けることができるようになる。
【0040】
また、上記説明の自動調整制御では、カメラセンサ46による撮影データと推奨データ(例えば、第1推奨データ)との比較を行う際に、1つの推奨データのみを使用している。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、撮影データは同時に複数の推奨データと比較されるものであってもよい。
【0041】
フルイ41上に発生する穀粒下限ラインL1は、傾斜方向に対して直交する直線状のライン(図7参照)になるとは限らず、例えば、傾斜方向に対して傾いたり(図9参照)、あるいは曲線状になったり(図10参照)することも考えられる。このため、網面の約50%に穀粒が載っている状態の推奨データを準備しようとする場合、図7に示す推奨データ以外に、穀粒下限ラインL1の形状が異なる他の推奨データ(例えば、図9図10に示す推奨データ)も準備することが好ましい。この場合、カメラセンサ46による撮影データを、準備された複数の推奨データと比較し、何れかの推奨データに対してマッチング数値が閾値を超えた場合に穀粒供給量を変化させるようにすれば、穀粒供給量の自動調整制御における精度が向上する。また、推奨データは、記憶部52に対して後から追加登録することが可能であってもよい。これにより、粗選装置10の稼働を続ける中で、推奨データを増やしていくことで、自動調整制御の精度を向上させていくことが可能となる。
【0042】
また、上述した自動調整制御は、粗選装置10の処理効率を最適化するための調整動作として、穀粒供給量の調整を行っているが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の調整動作によって粗選装置10の処理効率を最適化してもよい。自動調整制御における他の調整動作としては、フルイ41の揺動速度または傾斜角度を変化させる動作が考えられる。尚、フルイ41の揺動速度を調整することは、フルイ41の駆動源の回転速度を変更することで容易に行える。一方、フルイ41の傾斜角度を変更することは、そのための駆動機構を別途必要とする。
【0043】
例えば、カメラセンサ46による撮影データと第1推奨データとの比較において、マッチング数値が閾値を超えた場合(穀粒供給量が多いと見なされる場合)には、フルイ41の揺動速度を上げたり、傾斜角度を大きくしたりする調整動作を行ってもよい。また、カメラセンサ46による撮影データと第2推奨データとの比較において、マッチング数値が閾値を超えた場合(穀粒供給量が少ないと見なされる場合)には、フルイ41の揺動速度を下げたり、傾斜角度を小さくしたりする調整動作を行ってもよい。
【0044】
但し、フルイ41の揺動速度や傾斜角度を変化させる調整動作は、粗選装置10における選別精度にも影響を与えることになる。これに対し、穀粒供給量の調整動作は、粗選装置10における選別精度に対する影響が無い(もしくは影響が小さい)。この観点より、自動調整制御における調整動作としては、穀粒供給量の調整が最も好適である。尚、自動調整制御では、複数種類の調整動作を組み合わせて実施することも可能である。
【0045】
また、粗選装置10の揺動フルイ部40においてフルイ41を複数設ける場合、各フルイ41上における穀粒がほぼ同様の挙動を示すようにすることは容易である(均分トレイ42による各フルイ41への穀粒の振り分け量を均等化する、各フルイ41の揺動速度および傾斜角度を同じにする等)。この場合、1つのフルイ41に対してカメラセンサ46が設けられ、判定部51は1つのフルイ41のみに基づいて判定を行うものであってもよい。この構成は、粗選装置10のコスト面で有利となる。
【0046】
但し、本発明はこれに限定されるものではなく、揺動フルイ部40においてフルイ41を複数設ける場合、全てのフルイ41に対してカメラセンサ46を設け、全てのフルイ41に対して判定を行うようにしてもよい。この場合は、少なくとも1つのフルイ41においてマッチング数値が閾値を超えた場合に、穀粒供給量を変更する等の調整動作を行えばよい。
【0047】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0048】
10 粗選装置
20 穀粒貯留部(貯留手段)
21 ホッパー
22 荷受け口
23 供給口
24 リードローラ
30 風選部
31 第1風路
311 穀粒入口
312 穀粒出口
313 空気取入口
32 第2風路
321 夾雑物出口
40 揺動フルイ部
41 フルイ
42 均分トレイ
43 収集台
44 精粒出口
45 夾雑物出口
46 カメラセンサ(検出手段の一部、撮像部)
50 制御部
51 判定部(検出手段の一部)
52 記憶部(検出手段の一部)
53 調整部(調整手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10