(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029931
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】多層体、セキュリティカード、および、パスポート
(51)【国際特許分類】
B32B 27/20 20060101AFI20240229BHJP
B42D 25/23 20140101ALI20240229BHJP
B42D 25/24 20140101ALI20240229BHJP
【FI】
B32B27/20 A
B42D25/23
B42D25/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132406
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】597003516
【氏名又は名称】MGCフィルシート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 守
【テーマコード(参考)】
2C005
4F100
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2C005HB01
2C005HB02
2C005KA02
4F100AB21B
4F100AB21E
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK01D
4F100AK01E
4F100BA02
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4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10D
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4F100CA30A
4F100DC11B
4F100DC11E
4F100JN01
4F100JN01B
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4F100JN13B
4F100JN13E
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00E
(57)【要約】
【課題】 さらにセキュリティが強化された多層体、ならびに、セキュリティカード、および、パスポートの提供。
【解決手段】 レーザーマーキング剤を含む樹脂層と、厚みが55~140μmであり、かつ、白色顔料を含む樹脂層とを含む多層体であって、多層体の面に、全光線透過率が75~90%である樹脂領域Aと、全光線透過率が50~74%である樹脂領域Bを含み、多層体の一方の面に対する、樹脂領域Aと樹脂領域Bが占める合計面積が1~15%であり、樹脂領域AにおけるL値が93.8~95.2である、多層体。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーマーキング剤を含む樹脂層と、
厚みが55~140μmであり、かつ、白色顔料を含む樹脂層とを含む多層体であって、
前記多層体の面に、全光線透過率が75~90%である樹脂領域Aと、全光線透過率が50~74%である樹脂領域Bを含み、
前記多層体の一方の面に対する、前記樹脂領域Aと前記樹脂領域Bが占める合計面積が1~15%であり、
前記樹脂領域AにおけるL値が93.8~95.2である、
多層体。
【請求項2】
前記白色顔料を含む樹脂層が、開口部を有し、前記多層体の面に垂直な方向から見たとき、前記開口部と同じ領域に、前記樹脂領域Aと前記樹脂領域Bが位置しており、前記樹脂領域Bは、レーザーマーキング像である、請求項1に記載の多層体。
【請求項3】
前記白色顔料を含む樹脂層の厚みが60~100μmである、請求項1または2に記載の多層体。
【請求項4】
前記白色顔料を含む樹脂層の厚みが60~80μmである、請求項1または2に記載の多層体。
【請求項5】
前記白色顔料を含む樹脂層が、樹脂層の20~50質量%の割合で、酸化チタンを含む、請求項1または2に記載の多層体。
【請求項6】
さらに、透明樹脂層を有する、請求項1または2に記載の多層体。
【請求項7】
前記多層体は、前記レーザーマーキング剤を含む樹脂層、前記透明樹脂層、前記白色顔料を含む樹脂層、前記透明樹脂層を、前記順に有している、請求項6に記載の多層体。
【請求項8】
前記多層体は、前記レーザーマーキング剤を含む樹脂層、前記透明樹脂層、前記白色顔料を含む樹脂層、前記透明樹脂層、前記白色顔料を含む樹脂層、前記透明樹脂層を、前記順に有している、請求項6に記載の多層体。
【請求項9】
前記多層体は、前記レーザーマーキング剤を含む樹脂層が2層以上あり、前記多層体の断面方向において、2層のレーザーマーキング剤を含む樹脂層が、前記断面の厚み方向に垂直な方向の中心面を基準として対称となるように位置している、請求項1または2に記載の多層体。
【請求項10】
前記レーザーマーキング剤を含む層が2層以上あり、前記レーザーマーキング剤を含む層のうち2層が厚み方向において、300μm以上600μm以下の間隔を有する様に位置している、請求項1または2に記載の多層体。
【請求項11】
多層体の厚み方向における樹脂領域Aと樹脂領域B以外の樹脂領域Cを含み、前記樹脂領域Cの全光線透過率が0.1~3%である、請求項1または2に記載の多層体。
【請求項12】
多層体の面において、多層体の一方の面に対する、前記樹脂領域Cが占める面積が85~99%である、請求項11に記載の多層体。
【請求項13】
前記樹脂領域Bが、元画像におけるRGBが(0,0,0)である領域のレーザーマーキング処理後のISO 5-4に準拠したOD値が0.45~0.70であるレーザーマーキング像を含む、請求項1または2に記載の多層体。
【請求項14】
前記樹脂領域Bが、元画像におけるRGBが(180,180,180)である領域のレーザーマーキング処理後のISO 5-4に準拠したOD値が0.15~0.25であるレーザーマーキング像を含む、請求項1または2に記載の多層体。
【請求項15】
前記樹脂領域Bが、元画像におけるRGBが(120,120,120)である領域のレーザーマーキング処理後のISO 5-4に準拠したOD値が0.3~0.5であるレーザーマーキング像を含む、請求項1または2に記載の多層体。
【請求項16】
前記樹脂領域Bが、元画像におけるRGBが(0,0,0)である領域のレーザーマーキング処理後のISO 5-4に準拠したOD値が0.45~0.70であるレーザーマーキング像、元画像におけるRGBが(180,180,180)である領域のレーザーマーキング処理後のISO 5-4に準拠したOD値が0.15~0.25であるレーザーマーキング像、および、元画像におけるRGBが(120,120,120)である領域のレーザーマーキング処理後のISO 5-4に準拠したOD値が0.3~0.5であるレーザーマーキング像のうち、少なくとも2つを含む、請求項1または2に記載の多層体。
【請求項17】
前記レーザーマーキング剤が黒色顔料を含む、請求項1または2に記載の多層体。
【請求項18】
総厚みが300μm以上2.0mm以下である、請求項1または2に記載の多層体。
【請求項19】
総厚みが300μm以上700μm以下である、請求項1または2に記載の多層体。
【請求項20】
前記白色顔料を含む樹脂層の少なくとも1層が、厚みtが55μm以上100μm以下であり、白色顔料を含む樹脂層の全光線透過率をT%、厚みをtμmとしたとき、Tとtの積であるT*tが250以上750以下である、請求項1または2に記載の多層体。
【請求項21】
前記白色顔料を含む樹脂層のうち少なくとも最も外側の層が帯電防止剤を含む、請求項1または2に記載の多層体。
【請求項22】
前記白色顔料を含む樹脂層のうち最も外側の層に蛍光印刷が施されている、請求項1または2に記載の多層体。
【請求項23】
前記多層体の面において、多層体の一方の面に対する、樹脂領域Aの面積の割合が0.01%以上15%未満である、請求項1または2に記載の多層体。
【請求項24】
前記多層体の面において、多層体の一方の面に対する、樹脂領域Bの面積の割合が0.01%以上10%以下である、請求項1または2に記載の多層体。
【請求項25】
前記多層体において、少なくとも1層がポリカーボネート樹脂を含む、請求項1または2に記載の多層体。
【請求項26】
前記白色顔料を含む樹脂層が白色顔料以外の他の着色剤を5~150質量ppmの割合で含む、請求項1または2に記載の多層体。
【請求項27】
請求項1または2に記載の多層体を含む、セキュリティカード。
【請求項28】
請求項1または2に記載の多層体を含む、パスポート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層体、セキュリティカード、および、パスポートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、IDカード、および、非接触型ICカード等のセキュリティカード、e-パスポート等のパスポートにおいて、樹脂シートや樹脂シートを含む多層体を用いたカードが使用され始めている。
ここで、セキュリティカードの一例として、
図1に示す多層体が知られている。
図1(A)は、多層体の各構成層を示すものであり、図(B)は、多層体の厚み方向の断面概略図である。
図1において、10は多層体を、11はオーバーレイ層(140μm)を、12・13はホワイトコア層(白色顔料層)を示している。また、ホワイトコア層12・13の層中または層間には、通常、ICチップやアンテナなどが組み込まれる。そして、遮蔽性を有するホワイトコア層12・13を用いることによって、ICチップやアンテナ等がカードの外側から見えない構成とすることができる。これらの各層(
図1(A))は、例えば、熱プレスにより、接合されて多層体となる(
図1(B))。このようなセキュリティカードについては、例えば、特許文献1に記載がある。
【0003】
さらに、近年、クリアウィンドウを有するセキュリティカードも検討されている。
図2は、クリアウィンドウを有するセキュリティカード(多層体)の一例を示すものである。
図2(A)は、クリアウィンドウを有するセキュリティカード(多層体)の各構成層を示すものであり、
図2(B)は、クリアウィンドウを有するセキュリティカード(多層体)の製造途中のイメージ図であり、
図2(C)は、クリアウィンドウを有するセキュリティカード(多層体)の厚み方向の断面概略図である。
図2において、20はセキュリティカード(多層体)を、21はオーバーレイ層(透明樹脂層)を、22はホワイトコア層(白色顔料層)を、23は透明樹脂層を、24はクリアウィンドウを示している。ここで、クリアウィンドウ24は、セキュリティカードに、例えば、偽造防止や意匠性のために設けられるものであり、カードのカード面の一部に導入される透明な窓部である。クリアウィンドウ24を有する多層体を製造する方法としては、各層を積層する際に、白色顔料を含む層22に開口部(白色顔料層が存在しない領域)25を設けて配置し(
図2(A))、熱プレスして各層を接合する方法がある。そうすると、熱プレスの際に、オーバーレイ層(透明樹脂層)21や透明樹脂層23の透明樹脂の一部が前記開口部25に流入し(
図2(B))、クリアウィンドウ24が形成される(
図2(C))。このようなセキュリティカードについては、例えば、特許文献2に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/163889号
【特許文献2】国際公開第2022/038973号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の通り、セキュリティが強化された多層体が知られているが、近年、セキュリティのさらなる強化が求められている。特に、遮蔽性を維持しつつ、クリアウィンドウを有する多層体などにおいて、さらに偽造防止できる機能が追加されれば有益である。本発明は、かかる課題を解決するものであり、さらにセキュリティが強化された多層体、ならびに、セキュリティカード、および、パスポートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、クリアウィンドウにさらにレーザーマーキングを施すことにより、セキュリティを強化しうることを見出した。具体的には、下記手段により、上記課題を解決しうることを見出した。
<1>レーザーマーキング剤を含む樹脂層と、
厚みが55~140μmであり、かつ、白色顔料を含む樹脂層とを含む多層体であって、
前記多層体の面に、全光線透過率が75~90%である樹脂領域Aと、全光線透過率が50~74%である樹脂領域Bを含み、
前記多層体の一方の面に対する、前記樹脂領域Aと前記樹脂領域Bが占める合計面積が1~15%であり、
前記樹脂領域AにおけるL値が93.8~95.2である、
多層体。
<2>前記白色顔料を含む樹脂層が、開口部を有し、前記多層体の面に垂直な方向から見たとき、前記開口部と同じ領域に、前記樹脂領域Aと前記樹脂領域Bが位置しており、前記樹脂領域Bは、レーザーマーキング像である、<1>に記載の多層体。
<3>前記白色顔料を含む樹脂層の厚みが60~110μmである、<1>または<2>に記載の多層体。
<4>前記白色顔料を含む樹脂層の厚みが60~80μmである、<1>または<2>に記載の多層体。
<5>前記白色顔料を含む樹脂層が、樹脂層の20~50質量%の割合で、酸化チタンを含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の多層体。
<6>さらに、透明樹脂層を有する、<1>~<5>のいずれか1つに記載の多層体。
<7>前記多層体は、前記レーザーマーキング剤を含む樹脂層、前記透明樹脂層、前記白色顔料を含む樹脂層、前記透明樹脂層を、前記順に有している、<6>に記載の多層体。
<8>前記多層体は、前記レーザーマーキング剤を含む樹脂層、前記透明樹脂層、前記白色顔料を含む樹脂層、前記透明樹脂層、前記白色顔料を含む樹脂層、前記透明樹脂層を、前記順に有している、<6>に記載の多層体。
<9>前記多層体は、前記レーザーマーキング剤を含む樹脂層が2層以上あり、前記多層体の断面方向において、2層のレーザーマーキング剤を含む樹脂層が、前記断面の厚み方向に垂直な方向の中心面を基準として対称となるように位置している、<1>~<8>のいずれか1つに記載の多層体。
<10>前記レーザーマーキング剤を含む層が2層以上あり、前記レーザーマーキング剤を含む層のうち2層が厚み方向において、300μm以上600μm以下の間隔を有する様に位置している、<1>~<9>のいずれか1つに記載の多層体。
<11>多層体の厚み方向における樹脂領域Aと樹脂領域B以外の樹脂領域Cを含み、前記樹脂領域Cの全光線透過率が0.1~3%である、<1>~<10>のいずれか1つに記載の多層体。
<12>多層体の面において、多層体の一方の面に対する、前記樹脂領域Cが占める面積が85~99%である、<11>に記載の多層体。
<13>前記樹脂領域Bが、元画像におけるRGBが(0,0,0)である領域のレーザーマーキング処理後のISO 5-4に準拠したOD値が0.45~0.70であるレーザーマーキング像を含む、<1>~<12>のいずれか1つに記載の多層体。
<14>前記樹脂領域Bが、元画像におけるRGBが(180,180,180)である領域のレーザーマーキング処理後のISO 5-4に準拠したOD値が0.15~0.25であるレーザーマーキング像を含む、<1>~<13>のいずれか1つに記載の多層体。
<15>前記樹脂領域Bが、元画像におけるRGBが(120,120,120)である領域のレーザーマーキング処理後のISO 5-4に準拠したOD値が0.3~0.5であるレーザーマーキング像を含む、<1>~<14>のいずれか1つに記載の多層体。
<16>前記樹脂領域Bが、元画像におけるRGBが(0,0,0)である領域のレーザーマーキング処理後のISO 5-4に準拠したOD値が0.45~0.70であるレーザーマーキング像、元画像におけるRGBが(180,180,180)である領域のレーザーマーキング処理後のISO 5-4に準拠したOD値が0.15~0.25であるレーザーマーキング像、および、元画像におけるRGBが(120,120,120)である領域のレーザーマーキング処理後のISO 5-4に準拠したOD値が0.3~0.5であるレーザーマーキング像のうち、少なくとも2つを含む、<1>~<12>のいずれか1つに記載の多層体。
<17>前記レーザーマーキング剤が黒色顔料を含む、<1>~<16>のいずれか1つに記載の多層体。
<18>総厚みが300μm以上2.0mm以下である、<1>~<17>のいずれか1つに記載の多層体。
<19>総厚みが300μm以上700μm以下である、<1>~<17>のいずれか1つに記載の多層体。
<20>前記白色顔料を含む樹脂層の少なくとも1層が、厚みtが55μm以上100μm以下であり、白色顔料を含む樹脂層の全光線透過率をT%、厚みをtμmとしたとき、Tとtの積であるT*tが250以上750以下である、<1>~<19>のいずれか1つに記載の多層体。
<21>前記白色顔料を含む樹脂層のうち少なくとも最も外側の層が帯電防止剤を含む、<1>~<20>のいずれか1つに記載の多層体。
<22>前記白色顔料を含む樹脂層のうち最も外側の層に蛍光印刷が施されている、<1>~<21>のいずれか1つに記載の多層体。
<23>前記多層体の面において、多層体の一方の面に対する、樹脂領域Aの面積の割合が0.01%以上15%未満である、<1>~<22>のいずれか1つに記載の多層体。
<24>前記多層体の面において、多層体の一方の面に対する、樹脂領域Bの面積の割合が0.01%以上10%以下である、<1>~<23>のいずれか1つに記載の多層体。
<24>前記多層体において、少なくとも1層がポリカーボネート樹脂を含む、<1>~<23>のいずれか1つに記載の多層体。
<26>前記白色顔料を含む樹脂層が白色顔料以外の他の着色剤を5~150質量ppmの割合で含む、<1>~<25>のいずれか1つに記載の多層体。
<27><1>~<26>のいずれか1つに記載の多層体を含む、セキュリティカード。
<28><1>~<26>のいずれか1つに記載の多層体を含む、パスポート。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、さらにセキュリティが強化された多層体、ならびに、セキュリティカード、および、パスポートを提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】従来のセキュリティカードの層構成の一例を示す厚み方向の断面概略図である。
【
図2】従来のクリアウィンドウを有するセキュリティカード(多層体)の層構成の一例を示す厚み方向の断面概略図である。
【
図3】本発明のセキュリティカード(多層体)の層構成の一例を示す厚み方向の断面概略図である。
【
図4】本発明のセキュリティカード(多層体)の層構成の一例を示す面に垂直な方向から見た概略図である。
【
図5】本発明の多層体を用いた複合フィルムの層構成の一例を示す厚み方向の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書における多層体は、それぞれ、フィルムまたはシートの形状をしているものを含む趣旨である。「フィルム」および「シート」とは、それぞれ、長さと幅に対して、厚みが薄く、概ね、平らな成形体をいう。また、多層体の厚み方向に垂直な平らな部分を面という。本実施形態における平らな部分には、例えば、表面粗さRaで示される程度の凹凸を有する面も含まれる趣旨である。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2022年1月1日時点における規格に基づくものとする。
また、図面において示す各部材の縮尺度は正確なものではなく、この縮尺度に限定されるものではない。
【0010】
本実施形態の多層体は、レーザーマーキング剤を含む樹脂層(本明細書において、「レーザーマーキング層」ということがある)と、厚みが55~140μmであり、かつ、白色顔料を含む樹脂層(本明細書において、「白色顔料層」ということがある)とを含む多層体であって、多層体の面に、全光線透過率が75~90%である樹脂領域Aと、全光線透過率が50~74%である樹脂領域Bを含み、多層体の一方の面に対する、樹脂領域Aと樹脂領域Bが占める合計面積が1~15%であり、樹脂領域AにおけるL値が93.8~95.2であることを特徴とする。
このような構成とすることにより、セキュリティ機能が強化した多層体が得られる。すなわち、白色顔料層による高い遮蔽性は維持しつつ、例えば、クリアウィンドウ領域にレーザーマーキング像を有するものとすることができ、偽造防止機能を高めることができる。
【0011】
以下、本実施形態の詳細を、図面を参照しつつ説明する。本実施形態が図に示される態様に限定されるものではないことは言うまでもない。
図3は、本実施形態の多層体の層構成の一例を示す概略図である。
図3(A)は、本実施形態の多層体の各層構成を示すものであり、
図3(B)は、多層体の厚み方向の断面概略図を示している。
図3において、30は多層体を、31はオーバーレイ層(透明樹脂層)を、32は、ホワイトコア層(白色顔料層)を、33は透明コア層(透明樹脂層)を、34はクリアウィンドウを、35は開口部(白色顔料層が存在しない領域)を、36はレーザーマーキング層をそれぞれ示している。各層を積層する際に、白色顔料層32に開口部(白色顔料層が存在しない領域)35を設けて配置し(
図3(A))、熱プレスして各層を接合する方法がある。そうすると、熱プレスの際に、透明コア層(透明樹脂層)33の透明樹脂の一部が前記開口部35に流入し、クリアウィンドウ34が形成される(
図3(B))。本実施形態においては、白色顔料層の厚みを140μm以下と薄くすることにより、前記透明樹脂の開口部35への流入を容易にすることができる。
本実施形態では、さらに、レーザーマーキング層36を有している。レーザーマーキング層を有することにより、多層体のセキュリティ性をさらに高めることができる。本実施形態においては、レーザーマーキング層は、レーザーマーキング前は、全光線透過率が75~90%である。このような高い光線透過率は、レーザーマーキング剤の配合量を調整することによって達成される。そのため、
図3に示す多層体におけるクリアウィンドウ34は、レーザーマーキング層36よりも、厚み方向において内側に存在しているにもかかわらず、全光線透過率が75~90%である領域(樹脂領域A)とすることができる。一方、レーザーマーキング層36にレーザーマーキング処理を施した部分は、レーザーマーキング像の存在により、全光線透過率が50~74%である樹脂領域Bとなる。
より具体的には、
図4を用いて説明する。
図4は、
図3に示す多層体を面から垂直な方向(
図3(B)の黒矢印の方向)から見た図である。
図4において、30は多層体を、34はクリアウィンドウを、37は樹脂領域Bを示している。また、面に垂直な方向から見た時、クリアウィンドウ34のうち、樹脂領域B以外の領域は、樹脂領域Aであることが好ましい。また、
図4において、樹脂領域Aおよび樹脂領域B以外は、詳細を後述するとおり、全光線透過率が低い樹脂領域Cであることが好ましい。すなわち、白色顔料層が、開口部を有し、多層体の面に垂直な方向から見たとき、クリアウィンドウ34と同じ領域に、樹脂領域Aと樹脂領域Bが位置しており、樹脂領域Bは、レーザーマーキング像であることが好ましい。このように、クリアウィンドウと同じ領域に樹脂領域B(レーザーマーキング像)を設けることにより、意匠性やセキュリティ性がより向上する傾向にある。すなわち、通常のセキュリティカードにおいては、図柄(写真の印刷を含む)の印刷は白色顔料層に行い、クリアウィンドウがあっても、クリアウィンドウには印刷により図柄などを入れることはできない。しかしながら、本実施形態においては、レーザーマーキング層を導入することによって、クリアウィンドウと同じ領域に、図柄を導入できる。また、構造としても複雑になるためセキュリティ性を向上させることができる。なお、樹脂領域Aおよび樹脂領域Bは、開口部と同じ領域にその一部にのみ存在していてもよいし、全部が存在していてもよい。
【0012】
また、
図3および
図4に示す多層体30においては、クリアウィンドウ34を有する領域は、厚み方向において、
図3(B)の上側から順に、透明樹脂層31、レーザーマーキング層36、透明樹脂層33、クリアウィンドウ34、透明樹脂層33、クリアウィンドウ34、透明樹脂層33、レーザーマーキング層36、透明樹脂層31となっている。すなわち、クリアウィンドウ34の領域は、厚み方向において、光線透過率が高い層が積層されている状態となっている。このため、樹脂領域Aは高い光線透過率を達成でき、また、レーザーマーキング層36にレーザーマーキング像を形成した領域(例えば、
図4の符号37)は、全光線透過率が50~74%である樹脂領域Bとなっている。このような全光線透過率を満たすことにより、レーザーマーキング像を鮮明にすることができる。
【0013】
樹脂領域Aの全光線透過率は、上述のとおり、75~90%であるが、77%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、82%以上であることがさらに好ましく、85%以上であることが一層好ましく、87%以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、意匠性がより向上する傾向にある。
樹脂領域Bの全光線透過率は、上述の通り、50~74%であるが、51%以上であってもよく、52%以上であってもよい。また、樹脂領域Bの全光線透過率の上限は、72%以下であることが好ましく、68%以下であることがより好ましく、64%以下であることがさらに好ましく、60%以下であることが一層好ましく、58%以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることによりレーザーマーキング像がより鮮明になる傾向にある。
【0014】
本実施形態において、樹脂領域AのL値は、93.8~95.2である。前記下限値以上とすることにより、多層体の黒色化やレーザーマーキング像の黒潰れをより効果的に抑制できる傾向にある。前記上限値以下とすることにより、レーザーマーキング像がより鮮明になる傾向にある。樹脂領域AのL値は、93.9以上であることが好ましく、94.0以上であることがさらに好ましく、94.1以上であることが一層好ましい。樹脂領域AのL値は、95.1以下であることが好ましく、95.0以下であることがさらに好ましい。
【0015】
本実施形態においては、多層体の一方の面に対する、樹脂領域Aと樹脂領域Bが占める合計面積が1~15%である。すなわち、多層体の一方の面の全領域を100%としたとき、樹脂領域Aと樹脂領域Bの合計が1~15%となるように設定される。この時の多層体の一方の面の領域とは、多層体の表面の微細な凹凸を考慮しない平面と仮定したときの面積を基準とする。前記下限値以上とすることにより、十分な樹脂領域Bを形成でき、セキュリティ機能に優れた多層体が得られる。一方、前記上限値以下とすることにより、ICチップなどを遮蔽する領域を十分に確保できる。
樹脂領域Aと樹脂領域Bの合計は、多層体の一方の面に対し、14%以下であることが好ましく、12%以下であることがより好ましく、11%以下であることがさらに好ましく、7%以下であることが一層好ましく、3%以下であることがより一層好ましい。
本実施形態の多層体においては、樹脂領域Aおよび樹脂領域Bは、それぞれ、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。2つ以上の樹脂領域Aおよび/または樹脂領域Bを有する場合、これらの合計が上記範囲を満たすことが好ましい。また、2つ以上の樹脂領域Aおよび/または樹脂領域Bを有する場合、それぞれの樹脂領域A、樹脂領域Bの面積は、樹脂領域Aと樹脂領域Bの合計面積の10%以上99%以下であることが好ましい。また、多層体における樹脂領域Aおよび樹脂領域Bの数は、それぞれ、5つ以下が好ましい。
【0016】
本実施形態の多層体の面において、多層体の一方の面に対する、樹脂領域Aの面積の割合は0.01%以上15%未満であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、レーザーマーキング像がより形成しやすくなる傾向にある。また、前記上限値以下とすることにより、クリアウィンドウをより良好に形成できる傾向にある。
前記樹脂領域Aの面積割合は、0.05%以上であることが好ましく、0.1%以上であることがより好ましく、0.5%以上であることがさらに好ましく、1.0%以上であることが一層好ましく、1.2%以上であることがより一層好ましい。前記樹脂領域Aの面積割合は、14%以下であることが好ましく、13%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、5%以下であってもよく、3%以下であってもよい。
また、本実施形態の多層体の面において、多層体の一方の面に対する、樹脂領域Bの面積の割合が0.01%以上10%以下であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、レーザーマーキング像の鮮明性がより向上する傾向にある。また、前記上限値以下とすることにより、クリアウィンドウをより良好に形成できる傾向にある。
前記樹脂領域Bの面積割合は、0.03%以上であることが好ましく、0.08%以上であることがより好ましく、0.1%以上であることがさらに好ましく、0.2%以上であることが一層好ましく、0.4%以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、レーザーマーキング像の鮮明性がより向上する傾向にある。また、前記樹脂領域Bの面積割合は、8%以下であることが好ましく、6%以下であることがより好ましく、4%以下であることがさらに好ましく、2%以下であることが一層好ましく、1%以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、クリアウィンドウをより良好に形成できる傾向にある。
【0017】
本実施形態においては、樹脂領域Bは、上述の通り、通常、レーザーマーキング処理によって形成されたレーザーマーキング像であるが、樹脂領域Bは、以下のレーザーマーキング像の少なくとも1つを含むことが好ましい。
(1)元画像におけるRGBが(0,0,0)である領域のレーザーマーキング処理後のISO 5-4に準拠したOD値が0.45~0.70であるレーザーマーキング像
(2)前記樹脂領域Bが、元画像におけるRGBが(180,180,180)である領域のレーザーマーキング処理後のISO 5-4に準拠したOD値が0.15~0.25であるレーザーマーキング像
(3)元画像におけるRGBが(120,120,120)である領域のレーザーマーキング処理後のISO 5-4に準拠したOD値が0.30~0.50であるレーザーマーキング像
【0018】
本実施形態においては、上記(1)~(3)のレーザーマーキング像のうち、少なくとも2つを有することがより好ましい。このような構成とすることにより、陰影がより明確となった顔画像をマーキングすることが可能となり、真贋判定性能に優れよりセキュリティ性に優れた多層体が得られる。
本実施形態においては、元画像におけるRGBが(0,0,0)である領域のレーザーマーキング処理後のISO 5-4に準拠したOD値(OD0値)は、0.50以上であることがより好ましく、また、0.65以下であることがより好ましい。
本実施形態においては、元画像におけるRGBが(180,180,180)である領域のレーザーマーキング処理後のISO 5-4に準拠したOD値(OD180値)は、0.17以上であることがより好ましく、また、0.24以下であることがより好ましい。
本実施形態においては、元画像におけるRGBが(120,120,120)である領域のレーザーマーキング処理後のISO 5-4に準拠したOD値(OD120値)は、0.33以上であることがより好ましく、また、0.45以下であることがより好ましい。
【0019】
本実施形態においては、また、元画像におけるRGBが(120,120,120)である領域のレーザーマーキング処理後のISO 5-4に準拠したOD値と、元画像におけるRGBが(0,0,0)である領域のレーザーマーキング処理後のISO 5-4に準拠したOD値の差(OD0値-OD120値)が、例えば、0.13以上であり、0.15以上であることが好ましく、0.16以上であることがより好ましく、0.17以上であることがさらに好ましく、0.18以上であることが一層好ましく、0.19以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、レーザーマーキング像にコントラストが生まれ、よりセキュリティ性に優れた多層体が得られる。また、前記OD0値-OD120値の上限は、例えば、0.30以下が実際的である。
上記のようなOD値を満たすレーザーマーキング像は、例えば、適切なレーザーマーキング剤の選択および配合量の調整により達成される。
【0020】
本実施形態においては、多層体の厚み方向における樹脂領域Aと樹脂領域B以外の樹脂領域Cを含むことが好ましい。樹脂領域Cの好ましい一例は、
図3および
図4に示す通り、多層体の一方の面のうち、クリアウィンドウ以外のすべての部分が樹脂領域Cである場合である。また、本実施形態の多層体は、多層体の一方の面のうち、樹脂領域A、樹脂領域B、および、樹脂領域C以外の部分を含んでいてもよい。例えば、多層体が無機材料などで縁取りされている多層体などが例示される。
本実施形態の多層体の面において、多層体の一方の面に対する、前記樹脂領域Cが占める面積が85~99%であることが好ましい。
さらに、本実施形態においては、樹脂領域Aと樹脂領域Bと樹脂領域Cの合計面積が、多層体の一方の面に対し、99%以上を占めることが好ましい。
【0021】
樹脂領域Cは、また、全光線透過率が0.1~3%であることが好ましい。前記樹脂領域Cの全光線透過率は、2.5%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1.6%以下であることがさらに好ましく、1.4%以下であることが一層好ましく、1.3%以下であることがより一層好ましく、1.0%以下であることがさらに一層好ましい前記上限値以下とすることにより、より遮蔽性に優れた多層体が得られる傾向にある。前記樹脂領域Cの全光線透過率の下限値は、0%が理想であるが、0.2%以上であってもよい。
【0022】
クリアウィンドウを構成する樹脂は、後述する透明樹脂層に含まれる透明樹脂と同じであり、好ましい範囲も同様である。また、クリアウィンドウに含まれていてもよい樹脂以外の成分も、透明樹脂層に含まれる成分と同じである。
【0023】
次に、各層について説明する。
本実施形態の多層体は、レーザーマーキング剤を含む樹脂層(レーザーマーキング層)を含む。本実施形態では、レーザーマーキング層を設けることにより、多層体にレーザーマーキング像を設けることが可能になる。レーザーマーキング像は、通常、樹脂領域Bを構成する。
レーザーマーキング層に含まれるレーザーマーキング剤は、その種類を特に定めるものではないが、黒色顔料であることが好ましく、カーボンブラックであることがより好ましい。また、金属酸化物系レーザーマーキング剤も用いることができる。レーザーマーキング剤およびレーザーマーキング層の詳細は、上記の他、特開2020-075487号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
レーザーマーキング剤の含有量は、レーザーマーキング層中、0.0006質量%以上であることが好ましく、0.0008質量%以上であることがより好ましく、0.0010質量%以上であることがさらに好ましく、0.0013質量%以上であることが一層好ましく、0.0018質量%以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、レーザーマーキング像の鮮明さがより向上する傾向にある。また、レーザーマーキング剤の含有量は、レーザーマーキング層中、0.01質量%以下であることが好ましく、0.008質量%以下であることがより好ましく、0.006質量%以下であることがさらに好ましく、0.004質量%以下であることが一層好ましく、0.003質量%以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、多層体の黒色化およびレーザーマーキング像の黒潰れを抑制する傾向にある。
レーザーマーキング層は、レーザーマーキング剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0024】
レーザーマーキング層は、レーザーマーキング剤に加え、樹脂を含む。樹脂は、通常、熱可塑性樹脂であり、ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂;アクリル樹脂;ポリエステル樹脂(熱可塑性ポリエステル樹脂);ポリアミド樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状シクロオレフィン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリメタクリレート樹脂;等が例示され、ポリカーボネート樹脂を含むことが好ましい。
レーザーマーキング層に含まれる樹脂(好ましくは熱可塑性樹脂)の含有量は、レーザーマーキング層中、97質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましい。レーザーマーキング層に含まれる樹脂(好ましくは熱可塑性樹脂)の含有量の上限は、樹脂(好ましくは熱可塑性樹脂)とレーザーマーキング剤の合計が100質量%となる量である。
レーザーマーキング層は、樹脂(好ましくは熱可塑性樹脂)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0025】
レーザーマーキング層は、レーザーマーキング剤および樹脂に加え、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の成分を含んでいてもよい。具体的には、安定剤、離型剤、難燃剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが例示され、安定剤を含むことが好ましい。これらは1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0026】
レーザーマーキング層の厚みは、特に定めるものではないが、例えば、20μm以上であることが好ましく、また、200μm以下であることが好ましい。
【0027】
次に、本実施形態の多層体に含まれる白色顔料を含む樹脂層(白色顔料層)について説明する。本実施形態では、白色顔料層を含むことにより、遮蔽性に優れた多層体が得られる。そのため、多層体の内部にICチップなどを外側から見えないように組み込むことが可能になる。
白色顔料としては、その種類を特に定めるものではないが、酸化チタンが好ましい。
白色顔料層に含まれる白色顔料の含有量は、白色顔料層の20~50質量%であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、遮蔽性により優れた多層体が得られる。また、前記上限値以下とすることにより、酸化チタンの凝集による外観不良がより抑制できる傾向にある。白色顔料層に含まれる白色顔料の含有量は、白色顔料層中、23質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましく、27質量%以上であることが一層好ましく、28質量%以上であることがより一層好ましい。また、白色顔料層に含まれる白色顔料の含有量は、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましく、38質量%以下であることが一層好ましく、35質量%以下であることがより一層好ましく、32質量%以下であることがさらに一層好ましい。
白色顔料層は、白色顔料を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0028】
白色顔料層は、白色顔料に加え、樹脂を含む。樹脂は、通常、熱可塑性樹脂であり、ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂;アクリル樹脂;ポリエステル樹脂(熱可塑性ポリエステル樹脂);ポリアミド樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状シクロオレフィン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリメタクリレート樹脂;等が例示され、ポリカーボネート樹脂を含むことが好ましい。
白色顔料層に含まれる樹脂(好ましくは熱可塑性樹脂)の含有量は、白色顔料層中、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましく、62質量%以上であることが一層好ましく、65質量%以上であることがより一層好ましく、68質量%以上であることがさらに一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、白色顔料層を薄くしても、高い遮蔽性を達成でき、クリアウィンドウをより容易に成形できる。また、白色顔料層に含まれる白色顔料の含有量は、白色顔料層中、80質量%以下であることが好ましく、73質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることがさらに好ましく、73質量%以下であることが一層好ましく、72質量%以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形性が向上する傾向にある。
白色顔料層は、樹脂(好ましくは熱可塑性樹脂)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0029】
白色顔料層は、白色顔料および樹脂に加え、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の成分を含んでいてもよい。具体的には、安定剤、離型剤、難燃剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが例示され、安定剤および/または帯電防止剤を含むことが好ましい。これらは1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
本実施形態において、白色顔料層が帯電防止剤を含む態様が好ましい。特に、白色顔料層のうち少なくとも最も外側の層が帯電防止剤を含むことが好ましい。帯電防止剤を含むことにより、多層体の帯電防止性がより向上する傾向にある。
白色顔料層における帯電防止剤の含有量は、白色顔料層中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、また、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態における白色顔料層は、帯電防止剤を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0030】
白色顔料層は、白色顔料以外の他の着色剤を5~150質量ppmの割合で含むことも好ましい。他の着色剤を含むことにより、多層体に多少の色味を持たせることができ、多層体の外観(意匠性)が向上する傾向にある。また、多層体の光遮蔽性能をより向上させることができる。
本実施形態における白色顔料層は、他の着色剤を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
他の着色剤としては、無機顔料、有機顔料、有機染料等が挙げられる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料;群青などの珪酸塩系顔料;亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛-鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅-クロム系ブラック、銅-鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青などのフェロシアン系顔料などが挙げられる。
有機顔料および有機染料としては、例えば、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染料または顔料;ニッケルアゾイエロー等のアゾ系染料または顔料;チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系などの縮合多環染料または顔料;アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染料または顔料などが挙げられる。
【0031】
前記他の着色剤の具体例としては、波長450~650nmの範囲に極大吸収を有する着色剤が挙げられる。ヒトが鋭敏に知覚することが可能な波長である550nm付近の光を効果的に吸収する波長450~650nmの範囲に極大吸収を有する着色剤を配合することにより、多層体の遮蔽性を効果的に向上させることができる。
さらに、前記他の着色剤が染料である態様も挙げられる。染料としては、前記波長450~650nmの範囲に極大吸収を有する着色剤が例示される。
また、前記他の着色剤の具体例として、上述のカーボンブラックも挙げられる。カーボンブラックを配合することにより、多層体の光遮蔽性能をより向上させることができる。
【0032】
白色顔料層が、他の着色剤を含む場合、その含有量は、白色顔料層中、5質量ppm以上であることが好ましく、7質量ppm以上であることがより好ましく、10質量ppm以上であることがさらに好ましく、15質量ppm以上であることが一層好ましく、20質量ppm以上であってもよい。前記他の着色剤の含有量の上限値は、白色顔料層中、150質量ppm以下であることが好ましく、120質量ppm以下であることがより好ましく、100質量ppm以下であることがさらに好ましく、80質量ppm以下であることが一層好ましい。このような範囲とすることにより、得られる白色顔料層の外観がより向上し、また、光遮蔽性能がより向上する傾向にある。
本実施形態の白色顔料層は、他の着色剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0033】
本実施形態においては、白色顔料層のうち最も外側の層に蛍光印刷が施されていることが好ましい。
【0034】
本実施形態において、白色顔料層の厚みは、55~140μmである。前記上下限値以下とすることにより、クリアウィンドウがより容易に成形できる傾向にある。前記下限値以上とすることにより、多層体の遮蔽性を達成できる。白色顔料層の厚みは、60μm以上であることがより好ましく、65μm以上であることがさらに好ましく、70μm以上であることが一層好ましい。また、白色顔料層の厚みは、120μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましく、90μm以下であることが一層好ましく、80μm以下であることがより一層好ましい。
白色顔料層の厚みは、隣接する透明樹脂層の厚みと同じか薄いことが好ましい。
本実施形態において、白色顔料層は、また、白色顔料層の全光線透過率をT%、厚みをtμmとした際にT*tが250以上であることが好ましく、265以上であることがより好ましく、280以上であることがさらに好ましく、295以上であることが一層好ましく、310以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる多層体の光遮蔽性と成形性がバランスよく向上する傾向にある。また、上限値については、750以下であることが好ましく、700以下であることがより好ましく、650以下であることがさらに好ましく、600以下であることが一層好ましく、550以下であることがより一層好ましく、さらには、500以下、450以下、420以下、405以下、400以下、380以下、350以下、340以下、335以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、得られる多層体の光遮蔽性と成形性がよりバランスよく向上する傾向にある。
本実施形態においては、特に、厚みtが55μm以上100μm以下であり、白色顔料層の全光線透過率をT%、厚みをtμmとしたとき、Tとtの積であるT*tが250以上750以下であることが好ましい。
【0035】
次に、透明樹脂層について説明する。本実施形態における透明樹脂層は、詳細を後述するとおり、オーバーレイ層および透明コア層として用いられることが好ましい。
透明樹脂層は、樹脂を含む。樹脂は、通常、熱可塑性樹脂であり、ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂;アクリル樹脂;ポリエステル樹脂(熱可塑性ポリエステル樹脂);ポリアミド樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状シクロオレフィン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリメタクリレート樹脂;等が例示され、ポリカーボネート樹脂を含むことが好ましい。
透明樹脂層に含まれる樹脂(好ましくは熱可塑性樹脂)の含有量は、透明樹脂層中、97質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、透明性およびクリアウィンドウ成形性がより向上する傾向にある。透明樹脂層に含まれる樹脂(好ましくは熱可塑性樹脂)の含有量の上限は、透明樹脂層の100質量%以下である。
透明樹脂層は、樹脂(好ましくは熱可塑性樹脂)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0036】
透明樹脂層は、樹脂に加え、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の成分を含んでいてもよい。具体的には、安定剤、離型剤、難燃剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、流動性改良剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが例示され、安定剤を含むことが好ましい。これらは1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
透明樹脂層は、レーザーマーキング剤および白色顔料のいずれも実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、レーザーマーキング剤については、透明樹脂層に含まれるレーザーマーキング剤の含有量が、レーザーマーキング層に含まれるレーザーマーキング剤の含有量未満であることをいい、レーザーマーキング層に含まれるレーザーマーキング剤の含有量の10質量%以下(好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下)である。また、白色顔料を実質的に含まないとは、透明樹脂層に含まれる白色顔料の含有量が、白色顔料層に含まれる白色顔料の含有量未満であることをいい、白色顔料層に含まれる白色顔料の含有量の10質量%以下(好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下)である。
【0037】
透明樹脂層の全光線透過率は、樹脂領域Aと同様の範囲が好ましい。
透明樹脂層の厚みは、特に定めるものではないが、例えば、20μm以上であることが好ましく、また、200μm以下であることが好ましい。
【0038】
次に、本実施形態の多層体の好ましい層構成について説明する。
本実施形態の多層体は、レーザーマーキング層と、白色顔料層を含む。本実施形態においては、レーザーマーキング層は、通常、白色顔料層よりも外側(表面に近い側)に位置するように配置される。また、本実施形態の多層体は、
図4に示すように、面から見た時には樹脂領域Aおよび樹脂領域Bを有するが、白色顔料層は、好ましくは、開口部を有し、多層体の面に垂直な方向から見たとき、開口部と同じ領域に、樹脂領域Aと樹脂領域Bが位置している。開口部と同じ領域に、樹脂領域Aと樹脂領域Bが位置している態様には、開口部と同じ領域に、樹脂領域Aと樹脂領域Bの一部が位置している態様や、開口部と同じ領域の一部に、樹脂領域Aと樹脂領域Bが位置している態様などを含む。さらに、本実施形態の多層体は、透明樹脂層を有していることが好ましい。透明樹脂層の好ましい一実施形態は、開口部を有する白色顔料層に隣接していることである。透明樹脂層と白色顔料層が隣接していることにより、白色顔料層に含まれる開口部(白色顔料が存在しない領域、例えば、
図3(A)の符号35)に、透明樹脂層の透明樹脂が流れ込みやすく、クリアウィンドウ(例えば、
図3(B)の符号34)が容易に形成できる。透明樹脂層の他の好ましい一実施形態は、レーザーマーキング層よりも外側に位置することであり、レーザーマーキング層に隣接してレーザーマーキング層の外側に位置することである。本実施形態の多層体は、開口部を有する白色顔料層に隣接している透明樹脂層と、レーザーマーキング層に隣接してレーザーマーキング層の外側に位置する透明樹脂層の両方を有することが好ましい。また、開口部は、上述の通り、透明樹脂層を構成する材料の一部が充填され、多層体のクリアウィンドウとなることが好ましい。
また、本実施形態の多層体は、その一方の面側に、全光線透過率が75%未満のフィルムを有する複合体としても用いることができる。
図5は複合体50の層構成を示す断面概略図であって、本実施形態の多層体30の一方の面側に全光線透過率の低いフィルム38が設けられている。このような構成とすることにより、複合フィルム50をセキュリティカードとして用いた時に、一方の面から見た時はクリアウィンドウ34が見え、他方の面から見た時は、クリアウィンドウ34が見えない構成とすることもできる。
図5に示す実施形態においては、多層体30は、オーバーレイ層(透明樹脂層)31、レーザーマーキング層36、透明樹脂層33、ホワイトコア層(白色顔料層)32、透明樹脂層33、ホワイトコア層(白色顔料層)32から、透明樹脂層33から構成されているが、これ以外の層構成であってもよいことは言うまでもない。
【0039】
本実施形態の多層体は、より具体的には、レーザーマーキング層、透明樹脂層、白色顔料層、透明樹脂層を、前記順に有していることが好ましい。ここで、各層は互いに、厚み方向に隣接していてもよいし、隣接していなくてもよいが、透明樹脂層と白色顔料層は、隣接していることが好ましい。また、各層がいずれも互いに接していることがより好ましい。
本実施形態の多層体は、さらに他の層を有していてもよい。
本実施形態の多層体は、より好ましくは、レーザーマーキング層、透明樹脂層、白色顔料層、透明樹脂層、白色顔料層、透明樹脂層を、前記順に有している。
【0040】
さらに好ましくは、本実施形態の多層体は、レーザーマーキング層が2層以上あり、多層体の断面方向において、2層のレーザーマーキング層が、前記断面の厚み方向に垂直な方向の中心面を基準として対称となるように位置していることが好ましい。前記断面の厚み方向に垂直な方向の中心面を基準として対称となるように位置しているとは、例えば、
図3(B)においては、厚み方向の中心面がX-Xで表される面であり、この面を基準に厚み方向の断面が対称となっていることを意味する。
ここで、レーザーマーキング層が2層以上あり、前記レーザーマーキング層のうち2層が厚み方向において、300μm以上600μm以下の間隔を有する様に位置していることが好ましい。
図3でいうと、2層のレーザーマーキング層36・36の間に位置する層(透明樹脂層33、ホワイトコア層(白色顔料層)32、透明樹脂層33、ホワイトコア層(白色顔料層)32、透明樹脂層33)の合計厚みが300μm以上600μm以下であることが好ましい。前記間隔の下限値は、350μm以上であることがより好ましく、380μm以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、ICチップやアンテナを導入しやすい傾向にある。また、前記間隔の上限値は、550μm以下であることがより好ましく、520μm以下であることがさらに好ましく、500μm以下であることが一層好ましく、480μm以下であることがより一層好ましく、450μm以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、カード収納性がより向上する傾向にある。
【0041】
本実施形態の多層体の特に好ましい層構成は、
図3に示す構成であり、一方の面側から順に、オーバーレイ層(透明樹脂層)31、レーザーマーキング層36、透明樹脂層33、ホワイトコア層(白色顔料層)32、透明樹脂層33、ホワイトコア層(白色顔料層)32、透明樹脂層33、レーザーマーキング層36、オーバーレイ層(透明樹脂層)31である。
もちろん、本実施形態の多層体は、
図3に示した層構成に限定されるものではない。また、
図3に示す多層体も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、他の層を含んでいてもよいことは言うまでもない。
【0042】
本実施形態の多層体は、少なくとも1層がポリカーボネート樹脂を含むことが好ましく、レーザーマーキング層、白色顔料層、および、透明樹脂層が、それぞれ、ポリカーボネート樹脂を含むことがより好ましい。それぞれの層がポリカーボネート樹脂を含むことにより、層間の密着性をより向上させることができる。
【0043】
本実施形態の多層体の厚みは、用途に応じて適宜定めることができるが、総厚みが300μm以上であることが好ましく、400μm以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、ICチップやアンテナを導入しやすい傾向にある。また、前記総厚みの上限は、2.0mm以下であることが好ましく、1.0mm以下であることがより好ましく、700μm以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、カード収納性がより向上する傾向にある。本実施形態では、白色顔料層の厚みと白色顔料層における白色顔料の割合を調整することにより、多層体の総厚みが700μm以下と薄くても、良好な遮蔽性を達成できる。
【0044】
本実施形態の多層体の製造方法は、上述した、各構成層を熱プレスすることの他、本実施形態の趣旨を逸脱しない範囲内において、接着剤等によって、各層の間の接着性を高めてもよい。また、各層を共押出して、シート状にすることもできる。
【0045】
<用途>
次に、本実施形態の多層体の用途について述べる。本実施形態の多層体は、これらを含むセキュリティカード、パスポートとして好ましく用いられる。
本実施形態におけるセキュリティカードとは、身分証明カード(IDカード)、運転免許証、バンクカード、クレジットカード、保険証、他の身分証明カードが例示される。
本実施形態におけるパスポートとしては、e-パスポートが例示される。
【0046】
また、本実施形態においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、特開2016-108424号公報の段落0048~0059の記載、特開2015-168728号公報の段落0075~0088の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【実施例0047】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0048】
1.原料
<ポリカーボネート樹脂>
E-2000N:ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂、ユーピロン(登録商標)、三菱エンジニアリングプラスチックス社製
S-3000F:ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂、ユーピロン(登録商標)、三菱エンジニアリングプラスチックス社製
【0049】
<酸化チタン>
PFC317:石原産業社製、ルチル型酸化チタン、平均一次粒子径0.24μm
【0050】
<帯電防止剤>
トリヘキシルテトラデシルホスホニウム=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド:MERCK社製、CAS番号 460092-03-9
【0051】
<他の着色剤>
カーボンブラックM♯280:キャボットコーポレーション社製、MONARCH280
カーボンブラックM♯800:キャボットコーポレーション社製、MONARCH800
染料1:Macrolex Red5B、着色剤
染料2:Macrolex Violet3R、着色剤
染料3:Diaresin Green C、着色剤
【0052】
<酸化防止剤>
AS2112:ADEKA社製、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト
【0053】
2.実施例1~6、比較例1~7
<樹脂ペレットの製造>
透明樹脂層用ペレット、レーザーマーキング層用ペレット、白色顔料層用ペレットについて、表3または表4に示す組成となるように、各成分をタンブラーにてブレンドし、二軸押出機(日本製鋼所製、TEX30α)の根元から投入し、シリンダー温度240℃にて溶融混練を行い、それぞれのペレットを製造した。
なお、表3および表4において、各成分の含有量は質量部で示した。ただし、白色顔料層の染料は質量ppmで示した。
【0054】
<各樹脂層の製造>
上記で得られた各ペレットを用いて、以下の方法で各樹脂層を製造した。
ペレットをバレル直径32mm、スクリューのL/D(長さ/直径)=31.5の二軸押出機からなるTダイ溶融フィルム成形押出機を用い、吐出量20kg/h、スクリュー回転数200rpmで、かつ、幅300mmの樹脂シートを成形した。シリンダー・Tダイ温度は240℃とし、押出された溶融シートを、直径250mmで十点平均粗さRzjis(JIS B0601:2013)が21μmであるシリコンゴム製の第一冷却ロールと、十点平均粗さRzjis(JIS B0601:2013)が18μmであるエンボス加工した直径250mmの金属製第二冷却ロールでニップした。次に、エンボス柄が表面に賦形されたシートを、さらに表面が鏡面の金属製第三冷却ロールにシートを通して、引取ロールで引き取りながら表1に示す厚み(平均厚み)の樹脂シートを成形した。この時、第一冷却ロールの温度を50℃、第二冷却ロールの温度を100℃、第三冷却ロールの温度を100℃に設定した。
【0055】
<多層体の製造>
表3または表4に示す層構成(層構成A~Dのいずれか)となるように、上記で得られた樹脂シートを重ねてラミネートし、多層体を製造した。尚、層構成A~Dは、下記表1に示した。
ラミネートの際の加温および加圧は、表2に示すステップ1~5を行った。ラミネートにはOASYS社製 卓上カードラミネーターOLA6Eを使用した。
【0056】
【0057】
<レーザーマーキング処理>
上記で得られた多層体に対してレーザーマーキングを行い、レーザーマーキング像を作成した。レーザーマーキングにはロフィン社製 Easy MARKIV E10を使用し、以下のレーザー条件で実施した。
出力35A、周波数15kHz、速度100mm/s、線幅0.020mm、パルス幅10.0μs
レーザーマーキングを実施する際、下敷きとして多層体の下に三菱ガス化学社製IDカード用フィルム ユーピロンフィルムSW-2000M1(厚み100μm)を置いた。レーザーマーキング実施後、多層体に付着した汚れを布で十分拭き取った。
レーザーマーキングを行う元画像については、マイクロソフト社製グラフィックソフトMicrosoft Paintを使用し、RGBが(0,0,0)である画像とRGBが(180,180,180)である画像とRGBが(120,120,120)である画像をモノクロビットマップファイル形式で作成した。
【0058】
<樹脂領域A、B、Cの面積の測定>
樹脂領域A、樹脂領域B、および、樹脂領域Cの多層体の面(片面の全領域)に占める各樹脂領域の割合(%)は、多層体を撮影し三谷商事株式会社製 画像処理ソフトWinROOF2013を使用して算出した。
【0059】
<全光線透過率の測定>
多層体の各構成層の全光線透過率は、前記ラミネート前に測定した。
具体的には、各層について、ISO-13468-1に準拠して、全光線透過率を測定した(測定条件:D65光源、10°視野)。
測定に際し、村上色彩技術研究所社製 ヘーズメーターHM-150を使用した。
全光線透過率の単位は%で示した。
また、白色顔料層については、全光線透過率T×厚みt(T*t)を算出した。
【0060】
<L値>
樹脂領域AのL値はJIS Z 8781-4に準拠して測定した。
測定に際し、日本電色工業株式会社社製 分光色彩計SD 7000を使用した。
【0061】
<レーザーマーキング像のOD値>
樹脂領域Bにおける元画像におけるRGBが(0,0,0)である領域のレーザーマーキング像、元画像におけるRGBが(180,180,180)である領域のレーザーマーキング像、元画像におけるRGBが(120,120,120)である領域のレーザーマーキング像におけるOD値を、それぞれ、ISO 5-4に準拠して測定した。
また、元画像におけるRGBが(0,0,0)である領域のレーザーマーキング像のOD0値と元画像におけるRGBが(120,120,120)である領域のレーザーマーキング像におけるOD120値の差(D0値-OD120値)を算出した。
OD値の測定に際し、エックスライト社製 504分光濃度計を使用した。
【0062】
<クリアウィンドウの外観>
得られた多層体のクリアウィンドウの外観を目視により評価した。5人の専門家が判断し、多数決とした。
A:良好
B:良好ではない(凹みや気泡が生じた等)
【0063】
<クリアウィンドウ面上レーザーマーキング像(LM像)の外観>
得られた多層体のクリアウィンドウ面上レーザーマーキング像の外観を目視により評価した。5人の専門家が判断し、多数決とした。
A:良好
B:良好ではない(色飛び、黒つぶれが生じた等)
【0064】
<クリアウィンドウ外観とレーザーマーキング像の外観の両立>
クリアウィンドウ外観とレーザーマーキング像の外観から以下の通り評価した。
A: クリアウィンドウ外観、LMともにA判定
B: クリアウィンドウ外観、LMのいずれか一方がB判定
C: クリアウィンドウ外観、LMの両方がB判定
【0065】
【0066】
【0067】
上記結果から明らかなとおり、本実施形態の多層体は、クリアウィンドウ外観に優れ、かつ、遮蔽性に優れ、さらに、クリアウィンドウ面上のレーザーマーキング外観に優れていた(実施例1~6)。
これに対し、比較例1の多層体は、レーザーマーキング層の黒色顔料の含有量が少なく、L値が本発明の範囲外であり、クリアウィンドウ面上のレーザーマーキング(LM)像外観が、不明瞭であった。
また、比較例2の多層体は、レーザーマーキング層の黒色顔料の含有量が多く、L値が本発明の範囲外であり、クリアウィンドウ面上のLM像外観が、黒潰れが発生した。
また、比較例3の多層体は、樹脂領域Aと樹脂領域Bが占める合計面積が15%を超えるが、クリアウィンドウの外観に凹みが発生した。
また、比較例4の多層体は、樹脂領域Aと樹脂領域Bが占める合計面積が1%未満であるが、クリアウィンドウ面上のLM像外観が微小であった。
また、比較例5の多層体は、樹脂領域Aと樹脂領域Bが存在しないクリアウィンドウが作製されずLM像も作製できなかった。
また、比較例6の多層体は、白色顔料層の厚みが厚いが、クリアウィンドウに気泡が発生していた。
また、比較例7の多層体は、白色顔料層の厚みが薄く、チップなどを内蔵することを考えると遮蔽性が不十分であった。