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特開2024-29938電子交換システム、プログラム、交換装置、電子交換システムの伝送遅延情報生成方法、及び交換装置の伝送遅延情報生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029938
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】電子交換システム、プログラム、交換装置、電子交換システムの伝送遅延情報生成方法、及び交換装置の伝送遅延情報生成方法
(51)【国際特許分類】
   H04M 3/26 20060101AFI20240229BHJP
   H04M 3/00 20240101ALI20240229BHJP
【FI】
H04M3/26 G
H04M3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132420
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 賢二
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕介
(72)【発明者】
【氏名】堀内 一乃
(72)【発明者】
【氏名】内苑 雅士
(72)【発明者】
【氏名】浦沢 俊之
(72)【発明者】
【氏名】小林 健了
【テーマコード(参考)】
5K201
【Fターム(参考)】
5K201AA02
5K201CC01
5K201DC02
5K201EC02
5K201FB08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】価格及び消費電力を抑えて、動作不良の原因が機器にあるのか又は交換装置及び端末間を接続する配線にあるのかを判別する機能を有する電子交換システム、プログラム及び電子交換システムの伝送遅延情報生成方法を提供する。
【解決手段】電子交換システム100は、交換装置10は、交換装置に接続されている複数の内線端末を含み、所定周期毎に、交換装置から複数の内線端末のうちの1の内線端末へのデータ送信と1の内線端末から交換装置へのデータ送信とを順に行うにあたり、所定周期内において、1の内線端末に送信した送信データ片の終了時点から、この1の内線端末から送信されたデータ片を受信して得た受信データ片の先頭時点までの時間を伝送遅延時間として測定すると共に、この伝送遅延時間が規定の許容遅延時間以内であるか否かを判定して判定結果を取得し、これら伝送遅延時間及び判定結果を1の内線端末の識別番号に対応付けして記憶する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換装置と、夫々がケーブルを介して前記交換装置に接続されている複数の端末と、を含み、所定周期毎に前記所定周期内で、前記交換装置から前記複数の端末のうちの1の端末へのデータ送信と前記1の端末から前記交換装置へのデータ送信とを順に行う電子交換システムであって、
前記交換装置は、
前記所定周期内において、前記1の端末に送信した送信データ片の終了時点から、前記1の端末から送信されたデータ片を受信して得た受信データ片の先頭時点までの時間を伝送遅延時間として測定する遅延時間測定部と、
前記伝送遅延時間が規定の許容遅延時間以内であるか否かを判定して判定結果を得る許容遅延判定部と、
前記伝送遅延時間及び前記判定結果を前記1の端末を示す識別番号に対応付けして示す伝送遅延情報を記憶する記憶部と、を含むことを特徴とする電子交換システム。
【請求項2】
前記交換装置は、
前記伝送遅延時間に追従させて、前記ケーブルに送出する前記送信データ片に対応した電気信号の振幅を調整することを特徴とする請求項1に記載の電子交換システム。
【請求項3】
前記交換装置は、
前記伝送遅延時間が所定時間よりも短い場合には長い場合に比べて、前記ケーブルに送出する前記送信データ片に対応した電気信号の振幅が小さくなるように調整することを特徴とする請求項1に記載の電子交換システム。
【請求項4】
前記交換装置は、
前記伝送遅延情報にて示される前記判定結果が、前記伝送遅延時間が前記許容遅延時間外であることを示す場合には、前記1の端末との接続を遮断すると共にケーブル異常を示すエラーメッセージを出力することを特徴とする請求項1~3のいずれか1に記載の電子交換システム。
【請求項5】
複数の端末がケーブルを介して接続されており、所定周期毎に前記所定周期内で、前記複数の端末のうちの1の端末へのデータ送信と前記1の端末から送信されたデータの受信とを順に行う交換装置に記憶されており、前記交換装置に含まれる制御部が実行するプログラムであって、
前記所定周期内において、前記1の端末に送信した送信データ片の終了時点から、前記1の端末から送信されたデータ片を受信して得た受信データ片の先頭時点までの時間を伝送遅延時間として測定するステップと、
前記伝送遅延時間が規定の許容遅延時間以内であるか否かを判定して判定結果を得るステップと、
前記伝送遅延時間及び前記判定結果を前記1の端末を示す識別番号に対応付けして示す伝送遅延情報を記憶部に記憶させるステップと、を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項6】
交換装置と、夫々がケーブルを介して前記交換装置に接続されている複数の端末と、を含み、所定周期毎に前記所定周期内で、前記交換装置から前記複数の端末のうちの1の端末へのデータ送信と前記1の端末から前記交換装置へのデータ送信とを順に行う電子交換システムの伝送遅延情報生成方法であって、
前記所定周期内において、前記1の端末に送信した送信データ片の終了時点から、前記1の端末から送信されたデータ片を受信して得た受信データ片の先頭時点までの時間を伝送遅延時間として測定するステップと、
前記伝送遅延時間が規定の許容遅延時間以内であるか否かを判定して判定結果を得るステップと、
前記伝送遅延時間及び前記判定結果を前記1の端末を示す識別番号に対応付けしたものを伝送遅延情報として得るステップと、を含むことを特徴とする電子交換システムの伝送遅延情報生成方法。
【請求項7】
交換装置と、夫々がケーブルを介して前記交換装置に接続されている複数の端末と、を含み、所定周期毎に前記所定周期内で、前記交換装置から前記複数の端末のうちの1の端末へのデータ送信と前記1の端末から前記交換装置へのデータ送信とを順に行う電子交換システムにおける交換装置であって、
前記所定周期内において、前記1の端末に送信した送信データ片の終了時点から、前記1の端末から送信されたデータ片を受信して得た受信データ片の先頭時点までの時間を伝送遅延時間として測定する遅延時間測定部と、
前記伝送遅延時間が規定の許容遅延時間以内であるか否かを判定して判定結果を得る許容遅延判定部と、
前記伝送遅延時間及び前記判定結果を前記1の端末を示す識別番号に対応付けして示す伝送遅延情報を記憶する記憶部と、を含むことを特徴とする交換装置。
【請求項8】
交換装置と、夫々がケーブルを介して前記交換装置に接続されている複数の端末と、を含み、所定周期毎に前記所定周期内で、前記交換装置から前記複数の端末のうちの1の端末へのデータ送信と前記1の端末から前記交換装置へのデータ送信とを順に行う電子交換システムにおける交換装置の伝送遅延情報生成方法であって、
前記交換装置は、
前記所定周期内において、前記1の端末に送信した送信データ片の終了時点から、前記1の端末から送信されたデータ片を受信して得た受信データ片の先頭時点までの時間を伝送遅延時間として測定するステップと、
前記伝送遅延時間が規定の許容遅延時間以内であるか否かを判定して判定結果を得るステップと、
前記伝送遅延時間及び前記判定結果を前記1の端末を示す識別番号に対応付けしたものを伝送遅延情報として得るステップと、を含むことを特徴とする交換装置の伝送遅延情報生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の端末を収容する電子交換システム、プログラム、交換装置、電子交換システムの伝送遅延情報生成方法、及び交換装置の伝送遅延情報生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の電話機(端末)と主装置とで構成されている電話交換装置として、2線の伝送路を用いて一定の時間間隔毎に伝送方向を切り替えて双方向通信する、いわゆるピンポン伝送を採用したデジタル式の電話交換装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。かかる電話交換装置では、音声データ片と制御用データ片とを多重化したバーストデータの形態で伝送を行う。この際、主装置側からバーストデータを送出するタイミングと電話機側からバーストデータを送出するタイミングとが重ならないように相互で制御を行うことで、単一の伝送路にて双方向の通信が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3305271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電話機(端末)及び主装置間の伝送路はメタル線からなるが、メタル線の直流抵抗による供給電源電圧の低下や、許容される伝送遅延時間を考慮して、当該伝送路の長さとして上限が規定されている。
【0005】
しかしながら、実際には、伝送路の長さがこの上限以内であっても、当該上限付近である場合には運用中に異常動作を間欠的に起こす場合があった。よって、この異常動作を排除するためには、当該異常動作が機器の故障であるのか、或いはメタル線の長さの限界から生じるものであるのかを検証する必要があり、正常状態への復帰に時間が掛かるという問題が生じる。
【0006】
また、上記した伝送路として使用するメタル線は、その線径が小さいほど線路抵抗が大きくなる。よって、既設のメタル線よりも線径が小さいメタル線を使用して新たな電話機(端末)を増設した場合、そのメタル線の長さが、正常動作している既設の電話機に接続されているメタル線と同様な長さであっても、異常が生じるおそれがあった。それに伴い、消費電力が大きい電話機(端末)を使用する場合には、接続するメタル線の抵抗の許容値が小さくなるなどの問題が生じる。
【0007】
また、一般的に電話交換装置は24時間連続動作しているので、主装置に接続する電話機の数が増えるほど、システム全体での消費電力が大きくなることから電源装置の容量を大きくする必要があり、システム全体の価格が増加するという問題が生じる。
【0008】
また、このような電話機(端末)及び主装置間に配されるメタル線の近傍に無線システム等が設置されており、このメタル線に伝送される電気信号の振幅が大きい場合、当該メタル線からの放射雑音が無線システム等に影響を与えるおそれがある。よって、メタル線からの放射雑音を抑えるために当該メタル線をシールドケーブル化する必要があり、価格増加を招くという問題が生じる。
【0009】
そこで、本発明は、価格及び消費電力を抑えて、動作不良の原因が機器側にあるのか、或いは交換装置及び端末間を接続する配線側にあるのかを判別可能にする機能を有する電子交換システム、プログラム、交換装置、電子交換システムの伝送遅延情報生成方法、及び交換装置の伝送遅延情報生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電子交換システムは、交換装置と、夫々がケーブルを介して前記交換装置に接続されている複数の端末と、を含み、所定周期毎に前記所定周期内で、前記交換装置から前記複数の端末のうちの1の端末へのデータ送信と前記1の端末から前記交換装置へのデータ送信とを順に行う電子交換システムであって、前記交換装置は、前記所定周期内において、前記1の端末に送信した送信データ片の終了時点から、前記1の端末から送信されたデータ片を受信して得た受信データ片の先頭時点までの時間を伝送遅延時間として測定する遅延時間測定部と、前記伝送遅延時間が規定の許容遅延時間以内であるか否かを判定して判定結果を得る許容遅延判定部と、前記伝送遅延時間及び前記判定結果を前記1の端末を示す識別番号に対応付けして示す伝送遅延情報を記憶する記憶部と、を含む。
【0011】
本発明に係るプログラムは、複数の端末がケーブルを介して接続されており、所定周期毎に前記所定周期内で、前記複数の端末のうちの1の端末へのデータ送信と前記1の端末から送信されたデータの受信とを順に行う交換装置に記憶されており、前記交換装置に含まれる制御部が実行するプログラムであって、前記所定周期内において、前記1の端末に送信した送信データ片の終了時点から、前記1の端末から送信されたデータ片を受信して得た受信データ片の先頭時点までの時間を伝送遅延時間として測定するステップと、前記伝送遅延時間が規定の許容遅延時間以内であるか否かを判定して判定結果を得るステップと、前記伝送遅延時間及び前記判定結果を前記1の端末を示す識別番号に対応付けして示す伝送遅延情報を記憶部に記憶させるステップと、を含む。
【0012】
本発明に係る電子交換システムの伝送遅延情報生成方法は、交換装置と、夫々がケーブルを介して前記交換装置に接続されている複数の端末と、を含み、所定周期毎に前記所定周期内で、前記交換装置から前記複数の端末のうちの1の端末へのデータ送信と前記1の端末から前記交換装置へのデータ送信とを順に行う電子交換システムの伝送遅延情報生成方法であって、前記所定周期内において、前記1の端末に送信した送信データ片の終了時点から、前記1の端末から送信されたデータ片を受信して得た受信データ片の先頭時点までの時間を伝送遅延時間として測定するステップと、前記伝送遅延時間が規定の許容遅延時間以内であるか否かを判定して判定結果を得るステップと、前記伝送遅延時間及び前記判定結果を前記1の端末を示す識別番号に対応付けしたものを伝送遅延情報として得るステップと、を含む。
【0013】
本発明に係る交換装置は、交換装置と、夫々がケーブルを介して前記交換装置に接続されている複数の端末と、を含み、所定周期毎に前記所定周期内で、前記交換装置から前記複数の端末のうちの1の端末へのデータ送信と前記1の端末から前記交換装置へのデータ送信とを順に行う電子交換システムにおける交換装置であって、前記所定周期内において、前記1の端末に送信した送信データ片の終了時点から、前記1の端末から送信されたデータ片を受信して得た受信データ片の先頭時点までの時間を伝送遅延時間として測定する遅延時間測定部と、前記伝送遅延時間が規定の許容遅延時間以内であるか否かを判定して判定結果を得る許容遅延判定部と、前記伝送遅延時間及び前記判定結果を前記1の端末を示す識別番号に対応付けして示す伝送遅延情報を記憶する記憶部と、を含む。
【0014】
本発明に係る交換装置の伝送遅延情報生成方法は、交換装置と、夫々がケーブルを介して前記交換装置に接続されている複数の端末と、を含み、所定周期毎に前記所定周期内で、前記交換装置から前記複数の端末のうちの1の端末へのデータ送信と前記1の端末から前記交換装置へのデータ送信とを順に行う電子交換システムにおける交換装置の伝送遅延情報生成方法であって、前記交換装置は、前記所定周期内において、前記1の端末に送信した送信データ片の終了時点から、前記1の端末から送信されたデータ片を受信して得た受信データ片の先頭時点までの時間を伝送遅延時間として測定するステップと、前記伝送遅延時間が規定の許容遅延時間以内であるか否かを判定して判定結果を得るステップと、前記伝送遅延時間及び前記判定結果を前記1の端末を示す識別番号に対応付けしたものを伝送遅延情報として得るステップと、を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、ピンポン伝送方式に従って、所定期間毎に、交換装置から複数の端末のうちの1の端末へのデータ送信と1の端末から交換装置へのデータ送信とを行う際に生じる伝送遅延時間を測定すると共に、この伝送遅延時間が規定の許容遅延時間以内であるか否かを判定して判定結果を得る。そして、これら伝送遅延時間及び判定結果を上記1の端末の識別番号に対応付けして示す伝送遅延情報を生成する。
【0016】
当該伝送遅延情報にて示される判定結果によれば、交換装置及び端末間を接続するケーブルとして、規定の許容最大抵抗値を超えたもの、又はケーブル長が規定の上限距離を超えたものであるか否かを知ることができる。したがって、通信異常が生じた場合には、上記した判定結果により、その動作異常の原因が機器の故障であるのか、或いはケーブルの仕様違反であるのかを判別可能となる。
【0017】
更に、伝送遅延情報にて示される伝送遅延時間によれば、交換装置及び端末間を接続するケーブルの長さを知ることができる。そこで、当該ケーブルの長さが短い場合には長い場合に比して当該ケーブルに送出する電気信号の振幅を小さくすることで、電力消費の低下を図ることが可能となる。更に、このケーブルの近傍に設置される他の機器に与える放射雑音が低減されるので、高価なシールドケーブルを用いる必要がなくなり、低価格化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】電子交換システム100の構成を示すブロック図である。
図2】端末IFユニットISL1の内部構成を示すブロック図である。
図3】ピンポン伝送信号変換回路14の内部構成を示すブロック図である。
図4】端末IFユニットISL1及び内線端末31間で為されるピンポン伝送の形態を表すタイムチャートである。
図5A】内線ケーブルが長い場合に当該内線ケーブルに送出されるピンポン伝送方式の電気信号の波形の一例を示す波形図である。
図5B】内線ケーブルが短い場合に当該内線ケーブルに送出されるピンポン伝送方式の電気信号の波形の一例を示す波形図である。
図6】伝送遅延情報生成処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明に係る電子交換システム100の構成を示すブロック図である。
【0020】
図1に示すように、電子交換システム100は、構内電話交換機としての交換装置10と、加入者電話回線網21及び22と、内線電話機としての内線端末31及び32と、を有する。交換装置10は、内線端末31及び32同士の通話路の接続や、内線端末31又は32と加入者電話回線網21又は22との通話路の接続、並びに発着信制御を司る。
【0021】
交換装置10は、外線機能ユニットOSL1及びOSL2、端末IF(インタフェース)ユニットISL1及びISL2、主制御部CCU及び主電源部MPSを含む。
【0022】
主電源部MPSは、これら外線機能ユニットOSL1及びOSL2、端末IFユニットISL1及びISL2、及び主制御部CCUを動作させる為の電源電圧を生成する。
【0023】
外線機能ユニットOSL1(OSL2)は、加入者電話回線網21(22)を収容し、加入者電話回線網21に対して、音声信号を表す音声データ片及び制御信号を表す制御データ片を含む伝送信号の送受信を行う。
【0024】
端末IFユニットISL1は、金属製の内線ケーブルL1を介して内線端末31と接続されており、端末IFユニットISL2は、金属製の内線ケーブルL2を介して内線端末32と接続されている。
【0025】
端末IFユニットISL1は、内線ケーブルL1を介して内線端末31との間で互いの送信タイミングが重ならないように、音声データ片及び制御データ片を多重化したバーストデータの形態で交互に送信し合う、いわゆるピンポン伝送を行う。
【0026】
また、端末IFユニットISL1は、当該ピンポン伝送による1往復分の伝送で生じる伝送遅延時間を測定し、この伝送遅延時間が許容遅延時間内であるか否かを判定しその判定結果を許容遅延判定結果として得る。そして、端末IFユニットISL1は、かかる許容遅延判定結果及び測定した伝送遅延時間を、内線端末31の識別番号と対応付けして示す伝送遅延情報TD1を主制御部CCUに供給する。
【0027】
内線端末31は、使用者が発した音声を表す音声データ片及び制御データ片を多重化したバーストデータの内容に対応した電気信号を内線ケーブルL1を介して端末IFユニットISL1に送出する。一方、端末IFユニットISL1から送出されたバーストデータに対応した電気信号を内線ケーブルL1を介して受けた場合、内線端末31は、当該バーストデータから、制御データ片及び音声データ片を抽出する。そして、内線端末31は、抽出した音声データ片に対応した音声を内蔵スピーカ(図示せず)から出力する。
【0028】
端末IFユニットISL2は、内線ケーブルL2を介して内線端末32との間で互いの送信タイミングが重ならないように、音声データ片及び制御データ片を多重化したバーストデータの形態で交互に送信し合う、いわゆるピンポン伝送を行う。
【0029】
また、端末IFユニットISL2は、当該ピンポン伝送による1往復分の伝送で生じる伝送遅延時間を測定し、この伝送遅延時間が許容遅延時間内であるか否かを判定しその判定結果を許容遅延判定結果として得る。そして、端末IFユニットISL2は、かかる許容遅延判定結果及び測定した伝送遅延時間を、内線端末32の識別番号と対応付けして示す伝送遅延情報TD2を主制御部CCUに供給する。
【0030】
内線端末32は、使用者が発した音声を表す音声データ片及び制御データ片を多重化したバーストデータの内容に対応した電気信号を内線ケーブルL2を介して端末IFユニットISL2に送出する。一方、端末IFユニットISL2から供給されたバーストデータに対応した電気信号を内線ケーブルL2を介して受けた場合、内線端末32は、当該バーストデータから制御データ片及び音声データ片を抽出する。そして、内線端末32は、抽出した音声データ片に対応した音声を内蔵スピーカ(図示せず)から出力する。
【0031】
主制御部CCUは、外線機能ユニットOSL1又はOSL2と、端末IFユニットISL1又はISL2との間の通話路、及び、端末IFユニットISL1及びISL2同士の通話路を形成する、いわゆる電話交換処理を行う。
【0032】
更に、主制御部CCUは、端末IFユニットISL1及びISL2から供給された伝送遅延情報TD1及びTD2を内蔵メモリ(図示せず)に記憶する。この際、主制御部CCUは、伝送遅延情報(TD1、TD2)に含まれる許容遅延判定結果が、許容遅延時間外であることを示す場合には、この許容遅延判定結果に該当する内線端末(31、32)との通話路の接続を遮断すると共に、ケーブル異常を示すエラーメッセージを出力する。
【0033】
図2は、端末IFユニットISL1及びISL2のうちからISL1を抜粋して、その内部構成の一例を示すブロック図である。尚、端末IFユニットISL1及びISL2は同一の内部構成を有する。
【0034】
図2に示すように、端末IFユニットISL1は、主制御部IF(インタフェース)回路11、音声データIF回路12、制御データIF回路13、ピンポン伝送信号変換回路14を含む。
【0035】
主制御部IF回路11は、主制御部CCUから供給された伝送信号に含まれる音声データ片を音声データIF回路12に供給すると共に、当該伝送信号に含まれる制御データ片を制御データIF回路13に供給する。
【0036】
また、主制御部IF回路11は、音声データIF回路12及び制御データIF回路13から音声データ片及び制御データ片が供給された場合には、これら音声データ片及び制御データ片を含む伝送信号を生成し、当該伝送信号を主制御部CCUに送出する。
【0037】
更に、主制御部IF回路11は、ピンポン伝送信号変換回路14から供給された送信データ終了タイミング信号Tt及び受信データ先頭タイミング信号Trに基づき伝送遅延情報TD1を生成する。尚、この伝送遅延情報TD1は、主制御部IF回路11に含まれる以下の遅延時間測定部110、許容遅延判定部111及びメモリ112によって生成される。
【0038】
遅延時間測定部110は、送信データ終了タイミング信号Ttにて示される送信データ片の終了時点と、受信データ先頭タイミング信号Trにて示される受信データ片の先頭時点との時間差を、ピンポン伝送による1往復分の伝送で生じる伝送遅延時間として測定する。遅延時間測定部110は、測定した伝送遅延時間を示す情報をメモリ112に記憶させる。
【0039】
許容遅延判定部111は、この伝送遅延時間が規定の許容遅延時間内であるか否かを判定しその判定結果を許容遅延判定結果として、メモリ112に記憶させる。
【0040】
尚、上記した規定の許容遅延時間は、内線端末31及び32の各々毎に個別に設定されている。端末IFユニットISL1の主制御部IF回路11に含まれるメモリ112には、端末IFユニットISL1に接続されている内線端末31を示す識別番号が記憶されている。端末IFユニットISL2の主制御部IF回路11に含まれるメモリ112には、端末IFユニットISL2に接続されている内線端末32を示す識別番号が記憶されている。
【0041】
ここで、主制御部IF回路11は、メモリ112に記憶されている識別番号に対応付けして、上記した伝送遅延時間及び許容遅延判定結果を示す情報を伝送遅延情報TD1として生成し、これをメモリ112に記憶させると共に主制御部CCUに出力する。
【0042】
音声データIF回路12は、主制御部IF回路11から音声データ片が供給された場合には、これをピンポン伝送信号変換回路14に供給し、ピンポン伝送信号変換回路14から音声データ片が供給された場合には、これを主制御部IF回路11に供給する。
【0043】
制御データIF回路13は、主制御部IF回路11から制御データ片が供給された場合には、これをピンポン伝送信号変換回路14に供給し、ピンポン伝送信号変換回路14から制御データ片が供給された場合には、これを主制御部IF回路11に供給する。
【0044】
ピンポン伝送信号変換回路14は、音声データIF回路12及び制御データIF回路13から供給された音声データ片及び制御データ片をピンポン伝送信号の形態に変換した電気信号を内線ケーブルL1に送出する。すなわち、ピンポン伝送信号変換回路14は、これら音声データ片及び制御データ片を多重化したバーストデータを送信データ片とし、これを内線端末31から送出されたバーストデータの受信タイミングと重ならない送信タイミングで、内線ケーブルL1に送出する。
【0045】
また、ピンポン伝送信号変換回路14は、内線ケーブルL1を介して内線端末31が送信したデータ片を受信したら、この受信データ片から音声データ片及び制御データ片を抽出する。そして、ピンポン伝送信号変換回路14は、この抽出した音声データ片を音声データIF回路12に供給すると共に、抽出した制御データ片を制御データIF回路13に供給する。
【0046】
図3は、ピンポン伝送信号変換回路14の内部構成の一例を示すブロック図である。
【0047】
図3に示すように、ピンポン伝送信号変換回路14は、入出力IF(インタフェース)部140、送信タイミング部141、送信フレーム生成部142、ピンポンドライバレシーバ143、受信フレーム検出部144、受信データ抽出部145及びクロック生成部146を含む。
【0048】
入出力IF部140は、図2に示す音声データIF回路12及び制御データIF回路13に対して上記した音声データ片及び制御データ片の入出力を行う。すなわち、入出力IF部140は、音声データIF回路12及び制御データIF回路13から音声データ片及び制御データ片を受けると、これら音声データ片及び制御データ片を多重化したバーストデータを送信タイミング部141に供給する。一方、受信データ抽出部145から音声データ片及び制御データ片を受け、且つクロック生成部146にて生成されたクロック信号を受けた場合、入出力IF部140は、当該クロック信号及び制御データ片を制御データIF回路13に出力すると共に、音声データ片を音声データIF回路12に出力する。
【0049】
送信タイミング部141は、入出力IF部140から供給されたバーストデータを送信データ片として送信フレーム生成部142に供給する。
【0050】
また、送信タイミング部141は、この送信データ片の時間軸上における先頭の時点を起点として当該送信データ片の終了時点を計測する。ここで、送信タイミング部141は、この送信データ片の終了時点を示す送信データ終了タイミング信号Ttを図2に示す主制御部IF回路11に供給すると共に、送信データ片の先頭時点を示す送信データ先頭タイミング信号を受信フレーム検出部144に供給する。更に、送信タイミング部141は、送信データ片を送信フレーム生成部142に供給する。
【0051】
送信フレーム生成部142は、送信タイミング部141から供給された送信データ片に応じて、ピンポン伝送方式に従った形態で当該送信データ片を伝送させる送信フレームを生成し、これをピンポンドライバレシーバ143に供給する。
【0052】
ピンポンドライバレシーバ143は、送信フレーム生成部142から供給された送信フレームを電気信号に変換し、これを内線ケーブルL1を介して内線端末31に送信する。更に、ピンポンドライバレシーバ143は、内線ケーブルL1に伝送されている電気信号を受信し、これを受信フレーム検出部144に供給する。
【0053】
受信フレーム検出部144は、受信した電気信号中から、内線端末31が送信したバーストデータに対応した区間を受信フレームとして検出し、これを受信データ抽出部145及びクロック生成部146に供給する。
【0054】
また、受信フレーム検出部144は、送信データ先頭タイミング信号にて示される送信データ片の先頭時点を起点として、受信フレームの時間軸上における先頭時点を計測し、当該先頭時点を保持する。そして、受信フレーム検出部144は、この受信データ片の先頭時点を示す受信データ先頭タイミング信号Trを図2に示す主制御部IF回路11に供給する。
【0055】
受信データ抽出部145は、受信フレーム検出部144にて検出された受信フレームから音声データ片及び制御データ片を抽出し、これらを入出力IF部140に供給する。クロック生成部146は、当該受信フレームに同期したクロック信号を生成し、これを入出力IF部140に供給する。
【0056】
以下に、端末IFユニットISL1及びISL2のうちからISL1を抜粋して伝送遅延情報TD1の取得動作について、図4を参照しつつ説明する。
【0057】
尚、図4は、端末IFユニットISL1及び内線端末31間における1往復分のピンポン伝送動作を示すタイムチャートである。
【0058】
先ず、端末IFユニットISL1は、送信データ片としてのデータTX1を、図4に示す時点t1にて、内線ケーブルL1を介して内線端末31に送信する。内線端末31は、図4に示すように、時点t1から遅延時間d0を経過した時点t2にて、このデータTX1を受信する。その後、端末IFユニットISL1は、データTX1の終了を検知するとこのデータTX1の終了の時点t3を示す送信データ終了タイミング信号Ttを得る。
【0059】
内線端末31は、データTX1を全て受信すると、当該データTX1に対する応答として、音声データ片及び制御データ片を多重化したデータRX1を、内線ケーブルL1を介して端末IFユニットISL1に送信する。この際、端末IFユニットISL1は、内線端末31から送信されたデータRX1を、内線ケーブルL1の長さに起因する遅延時間d0を経過した時点t4にて受信する。当該データRX1を受信すると、端末IFユニットISL1は、データRX1の先頭の時点t4を示す受信データ先頭タイミング信号Trを得る。
【0060】
よって、図4に示すように、送信データ終了タイミング信号Ttにて示される時点t3から、受信データ先頭タイミング信号Trにて示される時点t4までの時間が、端末IFユニットISL1及び内線端末31間におけるピンポン伝送での1往復分の伝送遅延時間となる。
【0061】
そこで、端末IFユニットISL1の遅延時間測定部110が、図4に示す時点t3から時点t4までの時間を伝送遅延時間d1として取得する。次に、端末IFユニットISL1の許容遅延判定部111が、当該伝送遅延時間が規定の許容遅延時間内であるか否かを判定しその判定結果を示す許容遅延判定結果を取得する。そして、端末IFユニットISL1は、許容遅延判定結果及び伝送遅延時間d1を示す情報を、内線端末31の識別番号に対応付けして示す伝送遅延情報TD1を生成し、これをメモリ112に記憶させると共に主制御部CCUに供給する。
【0062】
尚、端末IFユニットISL2においても、上記した端末IFユニットISL1と同様な動作を行うことで、端末IFユニットISL2及び内線端末32間におけるピンポン伝送での1往復分の伝送遅延時間d1を測定する。
【0063】
そして、端末IFユニットISL2は、当該伝送遅延時間d1が規定の許容遅延時間内であるか否かを判定し、その判定結果を示す許容遅延判定結果、及び伝送遅延時間d1を示す情報を内線端末32の識別番号に対応付けして示す伝送遅延情報TD2を生成し、これを主制御部CCUに供給する。
【0064】
主制御部CCUは、端末IFユニットISL1及びISL2から供給された伝送遅延情報TD1及びTD2に基づき、内線端末31及び32の各々毎に、伝送遅延時間d1が規定の許容遅延時間内である場合、つまり内線ケーブルの長さが規定の上限距離以内である場合にのみ、端末IFユニットとの通信を許可する。
【0065】
例えば、内線ケーブルL1が銅線である場合、この内線ケーブルL1を電気信号が伝送する速度は、光の速度の約60~75%である。この際、光が真空中において1メートル進むのに費やす時間は3.3nsであるので、電気信号の1メートルあたりの移動時間は約4.4~5.5nsとなる。よって、電気信号が内線ケーブルL1を伝送する際に要する時間を例えば1メートル当り5.5nSとすると、1km先の地点に到達する片道の遅延時間は5.5μSとなり、往復遅延時間は11μSとなる。
【0066】
ここで、ピンポン伝送方式で規定される送受信の周期、つまり、図4に示すように、端末IFユニットISL1がデータTX1を送信し開始してから、データRX1の受信を経て、次のデータTX2の送信を開始するまでの周期CYが125μSであるとする。これにより、伝送時における送信データ片(例えばTX1)の時間長と、受信データ片(例えばRX1)の時間長と、伝送遅延時間d1と、を合算した時間が125μS以下となるように伝送遅延時間の上限が定まる。
【0067】
また、伝送遅延時間は内線ケーブルL1の長さ及び配線抵抗値に依存する。よって、仮に内線ケーブルL1の長さの上限を1kmとした場合には、送信データ片の時間長と、受信データ片の時間長とを加えた時間を114μS以内に収める必要がある。逆に送信データ片の時間長と受信データ片の時間長とを加えた時間を例えば100μSとした場合には、往復の伝送遅延時間を25μSにすることができるので、その分だけ内線ケーブルL1の長さを増加することが可能となる。
【0068】
ところで、電子交換システム100では、内線端末31及び32の各々毎に、内線ケーブルL1及びL2各々の許容最大抵抗値、及び当該許容最大抵抗値に対応した許容遅延時間が、上記した規定の許容遅延時間として設定されている。尚、かかる許容遅延時間により、内線端末31及び32に夫々接続されている内線ケーブルL1及びL2各々の上限距離が定まる。
【0069】
よって、主制御部CCU又は端末IFユニット(ISL1、ISL2)に保持されている伝送遅延情報(TD1、TD2)にて示される許容遅延判定結果によれば、内線ケーブル(L1、L2)として、許容最大抵抗値を超えたもの又はケーブル長が上限距離を超えたもの、つまり仕様違反のケーブルが設置されているか否かを知ることが可能となる。したがって、伝送遅延情報によれば、内線通信で異常動作が発生した場合、その原因が機器(ISL1、ISL2、31、32)側の故障であるのか、又は内線ケーブル(L1、L2)の仕様違反であるのかを判別することが可能となる。
【0070】
また、内線端末(31、32)として消費電力の大きいものを採用した場合には、内線ケーブルの長さに制限が掛かる場合がある。この際、電子交換システム100によれば、伝送遅延情報(TD1、TD2)にて示される伝送遅延時間に基づき、配置されている内線ケーブル(L1、L2)の長さを知ることができる。よって、内線ケーブルの長さを優先する場合には、内線端末(31、32)側の機能制限として、例えばスピーカの音量の制限やヘッドセットの使用による消費電力の制限を行うことで、不具合を生じさせることなく内線ケーブル(L1、L2)の長さを上限距離まで延ばすことが可能となる。
【0071】
また、内線ケーブルのケーブル長が長い場合には、金属線に伴うインピーダンスにより、当該内線ケーブルを伝送する電気信号の振幅が低下し、誤動作を招くおそれがある。また、内線ケーブルの近傍に他の電子機器が設置されている場合、この内線ケーブルからの放射雑音が他の電子機器に悪影響を与えるおそれがある。
【0072】
よって、このような場合には放射雑音を抑えるために内線ケーブルをシールドケーブル化する必要があり、価格増加を招く。
【0073】
ところで、電子交換システム100では、前述したように伝送遅延情報にて示される伝送遅延時間に基づき内線ケーブルの長さを知ることができる。
【0074】
そこで、内線ケーブルのケーブル長が短い場合には長い場合に比べて、内線ケーブルに送出する電気信号の振幅が小さいピンポンドライバレシーバ143を用いる。
【0075】
図5Aは、内線ケーブル(L1、L2)の長さが長い場合にピンポンドライバレシーバ143が内線ケーブルに送出する電気信号の波形の一例を示す波形図である。図5Bは、内線ケーブルの長さが短い場合にピンポンドライバレシーバ143が内線ケーブルに送出する電気信号の波形の一例を示す波形図である。
【0076】
図5Bに示すように、内線ケーブルの長さが短い場合の電気信号の振幅f1を、図5Aに示すように内線ケーブルの長さが長い場合の電気信号の振幅f2に比べて小さくする。これにより、端末IFユニットの消費電力を抑えることが可能となる。更に、内線ケーブルに伝送される電気信号の振幅が小さくなることで、近傍に設置されている他の機器に与える放射雑音が低減される。これにより、放射雑音を抑えるために内線ケーブルをシールドケーブル化する必要がなくなり、価格増加を抑えることが可能となる。
【0077】
このように、電子交換システム100によれば、価格及び消費電力の増加を招くことなく、動作不良の原因が機器(ISL1、ISL2、31、32)側の故障にあるのか、或いは内線ケーブル(L1、L2)の仕様違反にあるのかを判別することが可能となる。
【0078】
尚、電子交換システム100では、伝送遅延情報(TD1、TD2)にて示される伝送遅延時間d1に応じて、内線ケーブルに送出する電気信号の振幅を自動的に調整できるようにしても良い。
【0079】
具体的には、端末IFユニットISL1及びISL2の各々毎に、交換装置10の終端部であるピンポンドライバレシーバ143として、内線ケーブル(L1、L2)に送出する電気信号の振幅を伝送遅延時間d1に追従させて調整するゲイン機能を有するものを採用する。例えば、ピンポンドライバレシーバ143として、伝送遅延時間d1が所定時間よりも長い場合には図5Aに示すような振幅f2を有する電気信号を内線ケーブルに送出し、所定時間以下である場合には、図5Bに示すように当該振幅f2より小さい振幅f1を有する電気信号を内線ケーブルに送出するものを採用しても良い。
【0080】
要するに、交換装置10として、伝送遅延時間d1に追従させて内線ケーブルに送出する電気信号の振幅を調整する、又は伝送遅延時間d1が所定時間よりも短い場合には長い場合に比べて電気信号の振幅が小さくなるように調整するゲイン調整機能を有するものを採用すれば良い。
【0081】
また、上記実施例では、伝送遅延情報(TD1、TD2)の生成を、主制御部IF回路11に含まれる遅延時間測定部110及び許容遅延判定部111で実施しているが、伝送遅延情報の生成動作については、これを主制御部CCU側で実施しても良い。この際、遅延時間測定部110、許容遅延判定部111及びメモリ112を主制御部CCUに設け、且つ端末IFユニットISL1及びISL2の各々が、受信データ先頭タイミング信号Tr及び送信データ終了タイミング信号Ttを主制御部CCUに供給する構成を採用する。
【0082】
また、伝送遅延情報(TD1、TD2)の生成動作については、これを遅延時間測定部110及び許容遅延判定部111によるハードウェアのみならず、ソフトウェアで実現しても良い。
【0083】
例えば、ソフトウェアで実現する場合、伝送遅延情報(TD1、TD2)の生成動作を司る伝送遅延情報生成プログラムを主制御部IF回路11のメモリ112に格納しておく。そして、送信データ片(例えば図4のTX1又はTX2)の送信が開始される度に、制御部(主制御部CCU又は主制御部IF回路11)が、メモリ112に格納されている伝送遅延情報生成プログラムに従った伝送遅延情報生成処理を実行する。
【0084】
図6は、当該伝送遅延情報生成処理の手順を示すフローチャートである。
【0085】
図6において、先ず、制御部(主制御部CCU又は主制御部IF回路11)は、当該送信データ片の送信開始時点から、内蔵タイマ(図示せぬ)に対して時間計時を開始させる(ステップS11)。次に、制御部は、送信データ片の送信が終了したか否かの判定を、送信データ片の送信が終了するまで繰り返し行う(ステップS12)。
【0086】
ステップS12において、送信データ片の送信が終了したと判定すると、制御部は、送信データ片の送信が終了した時点での上記内蔵タイマの計時時間を取り込み、この計時時間を示す送信データ終了タイミング信号Ttを生成する(ステップS13)。
【0087】
次に、制御部は、端末(31、32)から送信されたデータ片の先頭部を受信したか否かの判定を、このデータ片の先頭部を受信するまで繰り返し行う(ステップS14)。
【0088】
ステップS14において、データ片の先頭部を受信したと判定すると、制御部は、当該データ片の先頭部を受信した時点での上記内蔵タイマの計時時間を取り込み、この計時時間を示す受信データ先頭タイミング信号Trを生成する(ステップS15)。
【0089】
次に、制御部は、受信データ先頭タイミング信号Trにて示される計時時間から送信データ終了タイミング信号Ttにて示される計時時間を減算して得られた時間を、伝送遅延時間d1として生成する(ステップS16)。
【0090】
次に、制御部は、伝送遅延時間d1が規定の許容遅延時間Ad以下であるか否かを判定する(ステップS17)。
【0091】
ステップS17において伝送遅延時間d1が許容遅延時間Ad以下であると判定すると、制御部は、伝送遅延時間が許容遅延時間内であることを示す許容遅延判定結果DRを得る(ステップS18)。一方、ステップS17において伝送遅延時間d1が許容遅延時間Adより大きいと判定すると、制御部は、伝送遅延時間が許容遅延時間外であることを示す許容遅延判定結果DRを得る(ステップS19)。
【0092】
ステップS17又はS18の終了後、制御部は、上記した伝送遅延時間d1及び許容遅延時間Adを、該当する端末の識別番号IDと対応付けして表す伝送遅延情報TDを生成する(ステップS20)。ステップS20の実行後、制御部は、図6に示す伝送遅延情報生成処理を一旦終了し、その後、新たな送信データ片の送信開始に応じて、上記したステップS11~S20からなる一連の処理を実行する。
【0093】
以上詳述したように、所定周期(CY)毎にこの所定周期内で、交換装置(10)から複数の端末(31、32)のうちの1の端末へのデータ送信と当該1の端末から交換装置へのデータ送信とを順に行う電子交換システム(100)の交換装置としては、以下の遅延時間測定部、許容遅延判定部、及び記憶部を含むものであれば良い。
【0094】
すなわち、遅延時間測定部(110)は、所定周期(CY)内において、1の端末に送信した送信データ片の終了時点(Tt)から、1の端末から送信されたデータ片を受信して得た受信データ片の先頭時点(Tr)までの時間を伝送遅延時間(d1)として測定する。許容遅延判定部(111)は、伝送遅延時間が規定の許容遅延時間以内であるか否かを判定して判定結果を得る。記憶部(112)は、伝送遅延時間及び判定結果を上記1の端末を示す識別番号IDに対応付けして示す伝送遅延情報を記憶する。
【符号の説明】
【0095】
10 交換装置
11 主制御部IF回路
14 ピンポン伝送信号変換回路
31、32 内線端末
100 電子交換システム
CCU 主制御部
ISL1、ISL2 端末IFユニット
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6