(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029939
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】高電圧貫通型コンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/35 20060101AFI20240229BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20240229BHJP
H01G 4/228 20060101ALI20240229BHJP
H01G 2/10 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H01G4/35 301
H01G4/30 550
H01G4/35 341
H01G4/228 K
H01G2/10 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132421
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】加茂 雄大
(72)【発明者】
【氏名】田中 寿
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB01
5E001AC05
5E001AD05
5E001AG01
5E082AB06
5E082BC35
5E082CC09
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG13
5E082FG26
5E082FG52
5E082GG04
5E082HH02
5E082HH28
5E082HH47
5E082KK06
(57)【要約】
【課題】信頼性を向上する高電圧貫通型コンデンサを提供する。
【解決手段】高電圧貫通型コンデンサHC1は、互いに対向している第一主面10aと第二主面10bとを有していると共に、第一主面10aと第二主面10bとに開口している貫通孔15,16が形成されている素体10と、第一主面10aに配置されている第一電極11と、第二主面10bに配置されている第二電極12と、貫通孔15,16に挿通されていると共に、第一電極11に電気的に接続されている貫通導体30,40と、を備える。第二主面10bにおける貫通孔15,16の開口面積は、第一主面10aにおける貫通孔15,16の開口面積よりも大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向している第一主面と第二主面とを有していると共に、前記第一主面と前記第二主面とに開口している貫通孔が形成されている素体と、
前記第一主面に配置されている第一電極と、
前記第二主面に配置されている第二電極と、
前記貫通孔に挿通されていると共に、前記第一電極に電気的に接続されている貫通導体と、を備え、
前記第二主面における前記貫通孔の開口面積は、前記第一主面における前記貫通孔の開口面積よりも大きい、
高電圧貫通型コンデンサ。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記貫通孔のサイズが拡大された拡大部を前記第二主面側の端部に有している、
請求項1に記載の高電圧貫通型コンデンサ。
【請求項3】
前記拡大部は、前記第二主面に向かうにつれて前記貫通孔のサイズが拡大されたテーパ形状を呈している、
請求項2に記載の高電圧貫通型コンデンサ。
【請求項4】
前記拡大部の内面と第二主面とがなす角度は、90度以上135度以下である、
請求項2に記載の高電圧貫通型コンデンサ。
【請求項5】
前記貫通導体の周りを囲むように、前記貫通孔内に充填されている樹脂を更に備える、
請求項1~4のいずれか一項に記載の高電圧貫通型コンデンサ。
【請求項6】
前記第二主面における前記貫通孔の開口面積は、前記第一主面における前記貫通孔の開口面積の1.1倍以上9倍以下である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の高電圧貫通型コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高電圧貫通型コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
知られている高電圧貫通型コンデンサは、素体と、第一電極と、第二電極と、貫通導体と、を備えている(たとえば、特許文献1参照)。素体には、貫通孔が形成されている。第一電極及び第二電極は、貫通孔が開口する素体の両面に設けられている。貫通導体は、貫通孔に挿通されていると共に、第一電極に電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一つの態様は、信頼性を向上する高電圧貫通型コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一つの態様に係る高電圧貫通型コンデンサは、互いに対向している第一主面と第二主面とを有していると共に、第一主面と第二主面とに開口している貫通孔が形成されている素体と、第一主面に配置されている第一電極と、第二主面に配置されている第二電極と、貫通孔に挿通されていると共に、第一電極に電気的に接続されている貫通導体と、を備え、第二主面における貫通孔の開口面積は、第一主面における貫通孔の開口面積よりも大きい。
【0006】
本発明者らは、信頼性を向上する高電圧貫通型コンデンサについて、調査研究を行った。この結果、本発明者らは、以下の事項を新たに見出した。
第二電極と貫通導体との二つの導体間に形成される電界の強度は、高電圧貫通型コンデンサの信頼性に影響を与える。以下、第二電極と貫通導体との間に形成される電界の強度は、単に「導体間電界強度」と称されることがある。導体間電界強度が高い高電圧貫通型コンデンサでは、絶縁破壊が生じやすい。絶縁破壊は、たとえば、貫通孔を画成する素体の内面に沿う放電により生じる。したがって、導体間電界強度を低下させる構成が採用された高電圧貫通型コンデンサでは、絶縁破壊が生じがたい。すなわち、導体間電界強度を低下させる構成が採用された高電圧貫通型コンデンサは、信頼性を向上する。
【0007】
本発明者らは、導体間電界強度を低下させる構成について、調査研究を行った。この結果、本発明者らは、第二主面における貫通孔の開口面積が第一主面における貫通孔の開口面積よりも大きい構成は、第二電極と貫通導体との間の距離を長くする結果、導体間電界強度を低下させることを見出した。
【0008】
上記一つの態様では、貫通孔は、貫通孔のサイズが拡大された拡大部を第二主面側の端部に有していてもよい。この場合、拡大部により、貫通孔の第二主面における開口面積を、貫通孔の第一主面における開口面積よりも大きくすることができる。
【0009】
上記一つの態様では、拡大部は、第二主面に向かうにつれて貫通孔のサイズが拡大されたテーパ形状を呈していてもよい。この場合、拡大部がテーパ形状を呈していない構成に比べて、素体の体積が貫通孔により減少することを抑制しながら、第二電極と貫通導体との間の距離を長くすることができる。よって、コンデンサの性能を維持しながら、導体間電界強度をより低下させることができる。
【0010】
上記一つの態様では、拡大部の内面と第二主面とがなす角度は、90度以上135度以下であってもよい。この場合、導体間電界強度を効果的に低下させることができる。
【0011】
上記一つの態様に係る高電圧貫通型コンデンサは、貫通導体の周りを囲むように、貫通孔内に充填されている樹脂を更に備えてもよい。この場合、第二電極と貫通導体との間の絶縁性を高めることができる。
【0012】
上記一つの態様では、第二主面における貫通孔の開口面積は、第一主面における貫通孔の開口面積の1.1倍以上9倍以下であってもよい。この場合、導体間電界強度を効果的に低下させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一つの態様は、信頼性を向上する高電圧貫通型コンデンサを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る高電圧貫通型コンデンサを示す分解斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る高電圧貫通型コンデンサの断面構成を示す図である。
【
図5】
図5は、変形例に係る素体の断面構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0016】
図1から
図4を参照して、本実施形態に係る高電圧貫通型コンデンサHC1の構成を説明する。
図1は、本実施形態に係る高電圧貫通型コンデンサを示す分解斜視図である。
図2は、本実施形態に係る高電圧貫通型コンデンサの断面構成を示す図である。
図3は、素体の断面構成を示す図である。
図4は、
図2のIV-IV線に沿う断面図である。
【0017】
図1及び
図2に示されるように、高電圧貫通型コンデンサHC1は、素体10と、第一電極11と、第二電極12と、接地金具20と、複数の貫通導体30,40と、複数の電極接続体31,41と、複数の絶縁チューブ37,47と、絶縁ケース50と、絶縁カバー60と、樹脂70と、樹脂80と、を備える。本実施形態では、高電圧貫通型コンデンサHC1は、二つの貫通導体30,40と、二つの電極接続体31,41と、二つの絶縁チューブ37,47とを備える。
【0018】
図1及び
図3に示されるように、素体10は、互いに対向している第一主面10aと第二主面10bとを有している。本実施形態では、第一主面10aと第二主面10bとは、第一方向D1で互いに対向している。第一主面10a及び第二主面10bは、素体10の第一方向D1での両端面を規定している。素体10は、側壁面10cを有している。側壁面10cは、第一主面10a及び第二主面10bを互いに連結するように第一方向D1に延在している。側壁面10cは、第一方向D1から見て、素体10の外周を画成している。本明細書では、第二主面10bから第一主面10aに向かう方向が上方向であり、第一主面10aは、第二主面10bより上方に位置している。
【0019】
素体10は、たとえば、絶縁材料からなる。素体10は、たとえば、セラミックを含む。セラミックは、たとえば、BaTiО3、BaZrO3、CaTiO3、又はMgTiO3を含む。素体10は、セラミックに添加される添加物を含んでいてもよい。添加物は、たとえば、Si、Mg、Zr、Zn、Y、V、Al、又はMnを含む。
【0020】
図1及び
図2に示されるように、第一電極11は第一主面10a上に配置されており、第二電極12は、第二主面10b上に配置されている。第一電極11と第二電極12とは、第一方向D1で互いに対向している。素体10は、第一電極11と第二電極12との間に位置している。したがって、第一電極11と第二電極12とは、素体10が第一電極11と第二電極12との間に位置している状態で、第一方向D1で互いに間接的に対向している。第一電極11は、一対の導体13,14を有している。導体13,14は、第一主面10a上に配置されている。導体13,14は、第一主面10a上で互いに離間している。本実施形態では、導体13,14は第一方向D1に交差する第二方向D2で互いに離間している。導体13,14のそれぞれは、第二電極12と、第一方向D1で互いに対向している。
【0021】
第一電極11及び第二電極12は、導電性金属材料を含む。導電性金属材料は、たとえば、Agを含む。第一電極11及び第二電極12は、導電性金属材料と共に磁性材料を含んでいてもよい。磁性材料は、たとえば、Fe、Co、Ni、Cu、若しくはSr、又は、それらの組み合わせである。第一電極11及び第二電極12は、たとえば、第一主面10a及び第二主面10bに付与された導電性ペーストを焼き付けることにより形成される。第一電極11及び第二電極12を形成するための導電性ペーストは、上記導電性金属材料を含む。
【0022】
図1~
図4に示されるように、素体10には、複数の貫通孔15,16が形成されている。本実施形態では、素体10には、二つの貫通孔15,16が形成されている。二つの貫通孔15,16は、互いに同じ形状を呈している。素体10は、貫通孔15を画成する内面15aと貫通孔16を画成する内面16aとを有している。貫通孔15は、第一主面10aと第二主面10bとに開口している。貫通孔15は、第一主面10aから第二主面10bまで貫通している。貫通孔15は、第一方向D1において素体10を貫通している。貫通孔16は、第一主面10aと第二主面10bとに開口している。貫通孔16は、第一主面10aから第二主面10bまで貫通している。貫通孔16は、第一方向D1において素体10を貫通している。
【0023】
第二主面10bにおける貫通孔15,16の開口面積は、第一主面10aにおける貫通孔15,16の開口面積よりも大きい。第二主面10bにおける貫通孔15,16の開口面積は、第一主面10aにおける貫通孔15,16の開口面積の1.1倍以上9倍以下である。開口面積が大きくなるほど、電極間距離を長くとり、導体間電界強度を低下させることができる。貫通孔15,16のサイズは、第一方向D1の位置によって異なる。第二主面10bにおける貫通孔15,16のサイズは、第一主面10aにおける貫通孔15,16のサイズよりも大きい。ここで、貫通孔15,16のサイズは、貫通孔15,16の内側又は内周のサイズである。貫通孔15,16のサイズは、例えば、第一方向D1に直交する断面における貫通孔15,16の面積であってもよいし、第一方向D1に直交する断面における貫通孔15,16の最大長さであってもよい。
【0024】
本実施形態では、第一方向D1に直交する断面において、貫通孔15,16は、円形状を呈している。第一方向D1に直交する断面における貫通孔15,16の最大長さは、たとえば、第一方向D1に直交する断面における貫通孔15,16の内径である。第一方向D1に直交する断面において、貫通孔15,16は円形状以外の形状を呈していてもよい。第二主面10bにおける貫通孔15,16の最大長さd2は、第一主面10aにおける貫通孔15,16の最大長さd1よりも長い。最大長さd2は、最大長さd1の1.1倍以上3倍以下である。最大長さd1は、たとえば5mmである。最大長さd2は、たとえば7mmである。
【0025】
貫通孔15,16は、貫通孔15,16のサイズが拡大された拡大部15b,16bを第二主面10b側の端部に有している。拡大部15b,16bは、第二主面10bに向かうにつれて貫通孔15,16のサイズが拡大されたテーパ形状を呈している。拡大部15b,16bの内面15a,16aは、テーパ面であり、第一方向D1に対して傾斜している。内面15a,16aと第二主面10bとがなす角度θは、90度以上135度以下である。拡大部15b,16bがテーパ形状を呈している場合、角度θは、90度よりも大きく135度以下である。
【0026】
素体10には、溝17が形成されている。本実施形態では、溝17は、第一主面10aに直交する方向(第一方向D1)から見て、導体13と導体14との間に位置するように、素体10に形成されている。導体13と導体14とは、溝17で隔てられている。溝17には、電極は形成されていない。素体10は、溝17を画成する壁面17aを有している。溝17は、第一方向D1及び第二方向D2に交差する第三方向D3に延在している。溝17は、第一主面10aの第三方向D3での両端に達している。本実施形態では、第一方向D1、第二方向D2、及び第三方向D3は、互いに直交している。
【0027】
素体10の厚さ(素体10の第一方向D1の長さ)Tは、たとえば3mm以上15mm以下である。素体10の長さ(素体10の第二方向D2の長さ)Lは、たとえば10mm以上30mm以下である。素体10の幅(素体10の第三方向D3の長さ)Wは、たとえば5mm以上15mm以下である。一例として、厚さTは4.6mm以上7mm以下、長さLは18mm、幅Wは8mmであってもよい。他の一例として、厚さTは10mm、長さLは28mm、幅Wは12.2mmであってもよい。拡大部15b,16bの厚さ(拡大部15b,16bの第一方向D1の長さ)tは、厚さTよりも薄く、たとえば厚さTの0.1倍以上0.5倍以下である。
【0028】
接地金具20は、第二電極12に電気的に接続されている。接地金具20は、素体10を支持している。
図1に示されるように、接地金具20は、突起部21と、周辺部22とを有している。周辺部22は、突起部21を囲んでいる。突起部21は、第二方向D2から見て、周辺部22から素体10に向かって突出している。突起部21には、開口23が形成されている。開口23は、第一方向D1で、突起部21を貫通している。本実施形態では、開口23は、第一方向D1から見て、突起部21の中央領域に位置している。接地金具20は、第一方向D1から見て、矩形状を呈している。矩形状は、角が丸められている形状及び角が取られている形状を含む。接地金具20は、矩形状以外の形状を呈していてもよい。
接地金具20は、導電性金属材料を含む。導電性金属材料は、たとえば、Fe、Cu、又はCu-Zn合金を含む。
【0029】
素体10は、第二電極12が接地金具20に電気的に接続されるように配置されている。本実施形態では、素体10は、突起部21が第二電極12と接するように、接地金具20によって支持されている。接地金具20は、接地されている。突起部21と第二電極12とは、はんだを介して接続される。
【0030】
図1~
図4に示されるように、貫通導体30は、貫通孔15に挿通されている。貫通導体30は、第一電極11に電気的に接続されている。貫通導体30は、貫通孔15内に位置している部分32と、第二主面10bから突出している部分33と、タブ部34と、かしめ35とを有している。部分32は、内面15aから離間している。本実施形態では、部分32と部分33とは一体に形成されている。部分32及び部分33は、導電体からなり、第一方向D1から見て、円柱形状を呈している。部分32の外径は、貫通孔15の内面15aに接しない大きさに設定されている。部分32及び部分33は、円柱形状以外を呈していてもよい。タブ部34は、タブ接続子として機能する。かしめ35は、部分32及び部分33とタブ部34とを電気的かつ物理的に接続する。
【0031】
貫通導体30は、導体13に電気的に接続されている。貫通導体30では、部分32及び部分33は、電極接続体31、貫通孔15及び開口23に挿通されている。電極接続体31は、タブ部34及びかしめ35と、導体13とを電気的に接続している。貫通導体30は、たとえば、導電性金属材料からなる。導電性金属材料は、たとえば、Fe、Cu、又はCu-Zn合金を含む。
【0032】
貫通導体40は、貫通孔16に挿通されている。貫通導体40は、第一電極11に電気的に接続されている。貫通導体40は、貫通孔16内に位置している部分42と、第二主面10bから突出している部分43と、タブ部44と、かしめ45とを有している。部分42は、内面16aから離間している。本実施形態では、部分42と部分43とは一体に形成されている。部分42及び部分43は、導電体からなり、第一方向D1から見て、円柱形状を呈している。部分42の外径は、貫通孔16の内面16aと接しない大きさに設定されている。部分42及び部分43は、円柱形状以外を呈していてもよい。タブ部44は、タブ接続子として機能する。かしめ45は、部分42及び部分43とタブ部44とを電気的かつ物理的に接続する。
【0033】
貫通導体40は、導体14に電気的に接続されている。貫通導体40では、部分42及び部分43は、電極接続体41、貫通孔16及び開口23に挿通されている。電極接続体41は、タブ部44及びかしめ45と、導体14とを電気的に接続している。貫通導体40は、たとえば、導電性金属材料からなる。導電性金属材料は、たとえば、Fe、Cu、又はCu-Zn合金を含む。
【0034】
絶縁チューブ37は、貫通導体30を覆っていると共に、電気絶縁性を有する。絶縁チューブ37は、部分32及び部分33を覆っている。本実施形態では、絶縁チューブ37は、部分32の全体及び部分33の一部を覆っている。絶縁チューブ37に覆われた領域、すなわち、部分32の全体及び部分33の一部が貫通孔15及び開口23に挿通されている。
絶縁チューブ47は、貫通導体40を覆っていると共に、電気絶縁性を有する。絶縁チューブ47は、部分42及び部分43を覆っている。本実施形態では、絶縁チューブ47は、部分42の全体及び部分43の一部を覆っている。絶縁チューブ47に覆われた領域、すなわち、部分42の全体及び部分43の一部が貫通孔16及び開口23に挿通されている。
各絶縁チューブ37,47は、絶縁性ゴムを含む。絶縁性ゴムは、たとえば、シリコーンゴムを含む。
【0035】
絶縁ケース50は、中空の筒状を呈している。絶縁ケース50は、中空の筒状以外を呈していてもよい。絶縁ケース50は、素体10と、第一電極11と、第二電極12とを内部に収容している。本実施形態では、絶縁ケース50は、素体10の全体と、第一電極11の全体と、第二電極12の全体と、接地金具20の一部と、絶縁カバー60の一部とを内部に収容している。絶縁ケース50は、絶縁カバー60より上方に配置されている。絶縁ケース50は、素体10を囲むように配置されている。本実施形態では、絶縁ケース50は、素体10、第一電極11、第二電極12、突起部21、電極接続体31,41、部分32,42、タブ部34,44、及びかしめ35,45を囲むように配置されている。絶縁ケース50は、接地金具20に物理的に接続されている。絶縁ケース50は、絶縁ケース50の内側面のうち下端部に位置する面が突起部21の外側面に接するように、接地金具20に接続されている。絶縁ケース50の下端面は、周辺部22の上面に接している。
【0036】
絶縁カバー60は、中空の筒状を呈している。絶縁カバー60は、中空の筒状以外を呈していてもよい。絶縁カバー60は、部分33及び部分43を囲むように配置されている。本実施形態では、絶縁カバー60は、部分33,43、及び絶縁チューブ37,47を囲むように配置されている。絶縁カバー60は、接地金具20に物理的に接続されている。第二方向D2及び第三方向D3から見て、絶縁カバー60は、絶縁カバー60の外側面のうち上端部に位置する面が突起部21の内側面に接するように、接地金具20に接続されている。
【0037】
絶縁ケース50及び絶縁カバー60は、絶縁材料を含む。絶縁材料は、たとえば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、又は変性メラミンを含む。絶縁材料には、無機物が含まれていてもよい。無機物は、たとえば、ガラス粉及びセラミック粉を含む。ガラス粉は、たとえば、工業用ガラス粉を含む。セラミック粉は、たとえば、SiO2粉、Al2O3粉、タルク(Mg3Si4O10(OH)2)、窒化アルミニウム(AlN)、若しくは窒化ケイ素(Si3N4)、又は、これらの混合物を含む。
【0038】
図2に示されるように、樹脂70は、絶縁ケース50の内側に充填されている。本実施形態では、樹脂70は、素体10を覆うように、絶縁ケース50の内側に充填されている。樹脂70は、絶縁ケース50と、素体10、突起部21、電極接続体31,41、タブ部34,44、及びかしめ35,45との間に配置されている。樹脂70は、絶縁ケース50と、突起部21、素体10、電極接続体31,41、タブ部34,44、及びかしめ35,45との間を埋めている。樹脂70は、素体10、第一電極11、接地金具20、電極接続体31,41、貫通導体30,40、及び絶縁ケース50に接している。本実施形態では、樹脂70は、側壁面10c、壁面17a、第一電極11、突起部21、電極接続体31,41、タブ部34,44、かしめ35,45、及び絶縁ケース50に接している。樹脂70の上端縁は、かしめ35,45が埋まるような高さに達しており、樹脂70の下端縁は、突起部21に達している。樹脂70の上端縁は樹脂70の第一方向D1での両端縁のうち上方に位置する端縁を示し、樹脂70の下端縁は樹脂70の第一方向D1での両端縁のうち下方に位置する端縁を示す。
【0039】
樹脂80は、絶縁カバー60の内側に充填されている。樹脂80は、貫通導体30の周りを囲むように、貫通孔15の内側に充填されている。樹脂80は、貫通導体40の周りを囲むように、貫通孔16の内側に充填されている。本実施形態では、樹脂80は、内面15aと部分32との間の空間及び内面16aと部分42との間の空間に達するように、絶縁カバー60の内側に充填されている。樹脂80は、内面15aと絶縁チューブ37との間の空間及び内面16aと絶縁チューブ47との間の空間に達するように充填されている。樹脂80は、絶縁カバー60と、突起部21、内面15a,16a、及び絶縁チューブ37,47との間を埋めている。樹脂80は、素体10、第二電極12、接地金具20、絶縁チューブ37,47、及び絶縁カバー60に接している。本実施形態では、樹脂80は、内面15a,16a、第二電極12、突起部21、絶縁チューブ37,47、及び絶縁カバー60に接している。絶縁チューブ37のうち樹脂80に接している部分は、貫通孔15内に少なくとも位置している。絶縁チューブ47のうち樹脂80に接している部分は、貫通孔16内に少なくとも位置している。樹脂80の上端縁は、電極接続体31,41の下面に達しており、樹脂80の下端縁は、周辺部22の下面より下方に位置している。樹脂80の上端縁は樹脂80の第一方向D1での両端縁のうち上方に位置する端縁を示し、樹脂80の下端縁は樹脂70の第一方向D1での両端縁のうち下方に位置する端縁を示す。
【0040】
樹脂70及び樹脂80は、絶縁材料を含む。絶縁材料は、たとえば、熱硬化性樹脂を含む。熱硬化性樹脂は、たとえば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、又はシリコーン樹脂を含む。樹脂70及び樹脂80は、互いに異なる絶縁材料を含んでいてもよい。本実施形態では、樹脂70及び樹脂80は、エポキシ樹脂を含んでいる。
【0041】
以上説明したように、高電圧貫通型コンデンサHC1では、第二主面10bにおける貫通孔15,16の開口面積は、第一主面10aにおける貫通孔15,16の開口面積よりも大きい。これにより、第二電極12と貫通導体30,40との間の距離が長くなる結果、導体間電界強度が低下する。したがって、高電圧貫通型コンデンサHC1では、絶縁破壊が生じがたい。すなわち、高電圧貫通型コンデンサHC1によれば、信頼性を向上することができる。第二主面10bにおける貫通孔15,16の開口面積は、第一主面10aにおける貫通孔15,16の開口面積の1.1倍以上9倍以下である。これにより、導体間電界強度を効果的に低下させることができる。
【0042】
貫通孔15,16は、貫通孔15,16のサイズが拡大された拡大部15b,16bを第二主面10b側の端部に有している。このため、拡大部15b,16bにより、貫通孔15,16の第二主面10bにおける開口面積を、貫通孔15,16の第一主面10aにおける開口面積よりも大きくすることができる。
【0043】
拡大部15b,16bは、第二主面10bに向かうにつれて貫通孔15,16のサイズが拡大されたテーパ形状を呈している。このため、拡大部15b,16bがテーパ形状を呈していない構成に比べて、素体10の体積が貫通孔15,16により減少することを抑制しながら、第二電極12と貫通導体30,40との間の距離を長くすることができる。よって、コンデンサの性能を維持しながら、導体間電界強度をより低下させることができる。
【0044】
本発明者らの調査研究によれば、拡大部15b,16bの内面15a,16aと第二主面10bとがなす角度θを鈍角とすることにより、導体間電界強度を効果的に低下させることができる。角度θを90度よりも大きくすることにより、電極間距離を長くとり、導体間電界強度を低下させることができる。したがって、第二電極12の端部における電界集中を防ぐことができる。この結果、部分放電の抑制が期待できる。角度θを135度よりも大きくすると、第二電極12の面積を十分に確保できない。高電圧貫通型コンデンサHC1では、角度θは、90度よりも大きく、135度以下である。
【0045】
高電圧貫通型コンデンサHC1は、貫通導体30,40の周りを囲むように、貫通孔15,16内に充填されている樹脂80を更に備える。このため、第二電極12と貫通導体30,40との間の絶縁性を高めることができる。これにより、第二電極12と貫通導体30,40との間の放電が抑制される。よって、高電圧貫通型コンデンサHC1では、貫通孔15,16の内面15a,16aに沿う放電が絶縁破壊の主要因となる。樹脂80によれば、第二電極12及び貫通導体30,40に耐湿性を付与することもできる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0047】
図5は、変形例に係る素体の断面構成を示す図である。
図5に示されるように、変形例に係る素体10Aでは、拡大部15b,16bがテーパ形状を呈していない点で、素体10(
図3参照)と相違している。拡大部15b,16bでは、貫通孔15,16のサイズ及び形状は、第一方向D1の位置によって変化せず、一定である。すなわち、拡大部15b,16bでは、第一方向D1に直交する断面における貫通孔15,16の面積は、第二主面10bにおける貫通孔15,16の開口面積と同じである。拡大部15b,16bでは、第一方向D1に直交する断面における貫通孔15,16の最大長さは、最大長さd2と同じである。高電圧貫通型コンデンサHC1が変形例に係る素体10Aを備える場合であっても、第二主面10bにおける貫通孔15,16の開口面積は、第一主面10aにおける貫通孔15,16の開口面積よりも大きいので、導体間電界強度が低下する。よって、信頼性を向上することができる。
【0048】
高電圧貫通型コンデンサHC1は、二つの貫通導体30,40を備えているが、高電圧貫通型コンデンサHC1は、三つ以上の貫通導体を備えていてもよい。高電圧貫通型コンデンサHC1は、二つの貫通導体30,40のうちいずれか一方の貫通導体、すなわち、単一の貫通導体を備えていてもよい。素体10に形成される貫通孔、絶縁チューブ、第一電極11が有する導体、及び電極接続体の各数は、貫通導体の数に対応させてもよい。
【0049】
上記実施形態及び変形例は、適宜組み合わされてもよい。
【0050】
上述した実施形態及び変形例の記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す態様の開示を含んでいる。
(付記1)
互いに対向している第一主面と第二主面とを有していると共に、前記第一主面と前記第二主面とに開口している貫通孔が形成されている素体と、
前記第一主面に配置されている第一電極と、
前記第二主面に配置されている第二電極と、
前記貫通孔に挿通されていると共に、前記第一電極に電気的に接続されている貫通導体と、を備え、
前記第二主面における前記貫通孔の開口面積は、前記第一主面における前記貫通孔の開口面積よりも大きい、
高電圧貫通型コンデンサ。
(付記2)
前記貫通孔は、前記貫通孔のサイズが拡大された拡大部を前記第二主面側の端部に有している、
付記1に記載の高電圧貫通型コンデンサ。
(付記3)
前記拡大部は、前記第二主面に向かうにつれて前記貫通孔のサイズが拡大されたテーパ形状を呈している、
付記2に記載の高電圧貫通型コンデンサ。
(付記4)
前記拡大部の内面と第二主面とがなす角度は、90度以上135度以下である、
付記2又は3に記載の高電圧貫通型コンデンサ。
(付記5)
前記貫通導体の周りを囲むように、前記貫通孔内に充填されている樹脂を更に備える、
付記1~4のいずれかに記載の高電圧貫通型コンデンサ。
(付記6)
前記第二主面における前記貫通孔の開口面積は、前記第一主面における前記貫通孔の開口面積の1.1倍以上9倍以下である、
付記1~6のいずれかに記載の高電圧貫通型コンデンサ。
【符号の説明】
【0051】
10,10A…素体、10a…第一主面、10b…第二主面、11…第一電極、12…第二電極、15,16…貫通孔、15a,16a…内面、15b,16b…拡大部、30,40…貫通導体、70…樹脂、HC1…高電圧貫通型コンデンサ、θ…角度。