(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029943
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】スリーブ、表皮材及び内装材
(51)【国際特許分類】
G02B 6/04 20060101AFI20240229BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G02B6/04 B
B60R13/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132428
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】石塚 将智
(72)【発明者】
【氏名】山口 剛
(72)【発明者】
【氏名】成松 哲哉
【テーマコード(参考)】
2H250
3D023
【Fターム(参考)】
2H250AH37
2H250CA03
2H250CA42
2H250CA43
2H250CA69
2H250CB10
2H250CC15
2H250CD13
3D023BB08
3D023BC01
3D023BD03
3D023BE25
(57)【要約】
【課題】複数の光ファイバーを容易に束ねることができるスリーブ、これを備える表皮材及び内装材を提供する。
【解決手段】本スリーブ(1)は、複数の光ファイバー(f)を束ねるためのものであって、一対のスリーブ片(2a、2b)と、一対のスリーブ片を開閉させるヒンジ(3)と、を備える。また、スリーブ片のそれぞれは、スリーブ片の軸(C1、C2)と直交する方向の幅が異なる幅広部(4)及び幅狭部(5)を有する。そして、一対のスリーブ片を閉じて幅広部同士及び幅狭部同士を突き合わせることで、一対のスリーブ片の間に複数の光ファイバーを束ねるための空間(S1、S2)が形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバーを束ねるためのスリーブであって、
一対のスリーブ片と、一対の前記スリーブ片を開閉させるヒンジと、を備え、
前記スリーブ片のそれぞれは、前記スリーブ片の軸と直交する方向の幅が異なる幅広部及び幅狭部を有し、
一対の前記スリーブ片を閉じて前記幅広部同士及び前記幅狭部同士を突き合わせることで、一対の前記スリーブ片の間に複数の前記光ファイバーを束ねるための空間が形成されることを特徴とするスリーブ。
【請求項2】
一対の前記スリーブ片のうちの少なくとも一方のスリーブ片には、前記幅広部の幅方向に沿って複数の突起がくし歯状に設けられている請求項1に記載のスリーブ。
【請求項3】
一対の前記スリーブ片のうちの一方のスリーブ片には、係止部が設けられており、他方のスリーブ片には、一対の前記スリーブ片を閉じたときに前記係止部が係止する被係止部が設けられている請求項1に記載のスリーブ。
【請求項4】
前記ヒンジは、前記スリーブ片の軸と直交する軸回りに一対の前記スリーブ片を開閉させる請求項1に記載のスリーブ。
【請求項5】
光ファイバーが構成糸として織り込まれた織物と、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のスリーブと、を備え、
前記織物の端部から露出する複数の前記光ファイバーが前記スリーブにより束ねられていることを特徴とする表皮材。
【請求項6】
板状の基材と、前記基材の表面を覆う請求項5に記載の表皮材と、を備えることを特徴とする内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリーブ、表皮材及び内装材に関し、さらに詳しくは、複数の光ファイバーを束ねるスリーブ、これを備える表皮材及び内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の表皮材として、光ファイバーが構成糸として織り込まれた織物を有する光ファイバー表皮材が一般に知られている(例えば特許文献1等参照)。この種の表皮材では、織物の端部から露出する複数の光ファイバーを収束加工することで光源(LED等)の入光部としている。この収束加工としては、本数(90~100本等)を数えつつ光ファイバーを束ね、その束ねた光ファイバーをアルミ製等の小径(直径3mm等)な金属スリーブに通して圧締めにより固定し、その固定した光ファイバーを光源につなげる方法が多く採用されている(例えば特許文献2等参照)。
【0003】
なお、上記の収束加工は、例えばロール状の原反25から幅方向を長手状に切り出した織物22の端部から露出する複数の光ファイバーfを金属スリーブ101で束ねたり(
図13(a)(b)(d)参照)、ロール状の原反25から長さ方向を長手状に切り出した織物22の端部から露出する複数の光ファイバーfを金属スリーブ101で束ねたり(
図13(a)(c)(e)参照)することで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-193200号公報
【特許文献2】特開2006-106755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の収束加工では、本数を数えつつ光ファイバーを束ね、その束ねた光ファイバーを小径な金属スリーブに通していたので、作業工数がかかる。さらに、光ファイバーを固定するために金属スリーブを圧締めしているので、作業負荷及び工数がかかる。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、複数の光ファイバーを容易に束ねることができるスリーブ、これを備える表皮材及び内装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、複数の光ファイバーを束ねるためのスリーブであって、一対のスリーブ片と、一対の前記スリーブ片を開閉させるヒンジと、を備え、前記スリーブ片のそれぞれは、前記スリーブ片の軸と直交する方向の幅が異なる幅広部及び幅狭部を有し、一対の前記スリーブ片を閉じて前記幅広部同士及び前記幅狭部同士を突き合わせることで、一対の前記スリーブ片の間に複数の前記光ファイバーを束ねるための空間が形成されることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、一対の前記スリーブ片のうちの少なくとも一方のスリーブ片には、前記幅広部の幅方向に沿って複数の突起がくし歯状に設けられていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、一対の前記スリーブ片のうちの一方のスリーブ片には、係止部が設けられており、他方のスリーブ片には、一対の前記スリーブ片を閉じたときに前記係止部が係止する被係止部が設けられていることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ヒンジは、前記スリーブ片の軸と直交する軸回りに一対の前記スリーブ片を開閉させることを要旨とする。
上記問題を解決するために、請求項5に記載の発明は、表皮材であって、光ファイバーが構成糸として織り込まれた織物と、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のスリーブと、を備え、前記織物の端部から露出する複数の前記光ファイバーが前記スリーブにより束ねられていることを要旨とする。
上記問題を解決するために、請求項6に記載の発明は、内装材であって、板状の基材と、前記基材の表面を覆う請求項5に記載の表皮材と、を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のスリーブによると、一対のスリーブ片を閉じて幅広部同士及び幅狭部同士を突き合わせることで、一対のスリーブ片の間に複数の光ファイバーを束ねるための空間が形成される。これにより、一対のスリーブ片の間で複数の光ファイバーを容易に束ねることができる。
本発明の表皮材及び内装材によると、織物の端部から露出する複数の光ファイバーがスリーブにより束ねられている。これにより、表皮材及び内装材を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【
図1】実施例に係るスリーブの平面図であり、(a)は一対のスリーブ片の開いた状態を示し、(b)は一対のスリーブ片の閉じた状態を示す。
【
図2】スリーブの斜視図であり、(a)は一対のスリーブ片の開いた状態を示し、(b)は一対のスリーブ片の閉じた状態を示す。
【
図3】実施例に係る突起を説明するための説明図であり、(a)は
図1のa矢視部の一部を破断した拡大図であり、(b)は
図1のb矢視部の一部を破断した拡大図である。
【
図4】
図1のIV-IV線断面拡大図であり、(a)は一対のスリーブ片の開いた状態を示し、(b)は一対のスリーブ片の閉じた状態を示す。
【
図5】スリーブの作用説明図であり、(a)(b)は一対のスリーブ片の開いた状態で一方のスリーブ片に複数の光ファイバーを配置した状態を示し、(c)は一対のスリーブ片を閉じて複数の光ファイバーを束ねた状態を示す。
【
図6】実施例に係る表皮材を説明するための説明図であり、(a)はロール状の原反を示し、(b)は原反から幅方向を長手状に切り出した状態を示し、(c)は原反から長さ方向を長手状に切り出した状態を示し、(d)(e)は複数の光ファイバーをスリーブで束ねた状態を示す。
【
図10】他の形態に係るスリーブの説明図であり、(a)は一対のスリーブ片の開いた状態を示し、(b)は一対のスリーブ片の閉じた状態を示す。
【
図11】更なる他の形態に係るスリーブの説明図であり、(a)は一対のスリーブ片の各幅広部に突起が設けられた形態を示し、(b)は一対のスリーブ片の各幅広部に突起が設けられない形態を示す。
【
図12】更なる他の形態に係るスリーブの説明図である。
【
図13】従来の表皮材を説明するための説明図であり、(a)はロール状の原反を示し、(b)は原反から幅方向を長手状に切り出した状態を示し、(c)は原反から長さ方向を長手状に切り出した状態を示し、(d)(e)は複数の光ファイバーを金属スリーブで束ねた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0011】
<スリーブ>
本実施形態に係るスリーブ1は、例えば
図1及び
図2に示すように、複数の光ファイバーfを束ねるためのスリーブ1であって、一対のスリーブ片2a、2bと、一対のスリーブ片2a、2bを開閉させるヒンジ3と、を備える。また、スリーブ片2a、2bのそれぞれは、スリーブ片2a、2bの軸C1、C2と直交する方向の幅が異なる幅広部4及び幅狭部5を有する。そして、一対のスリーブ片2a、2bを閉じて幅広部4同士及び幅狭部5同士を突き合わせることで、一対のスリーブ片2a、2bの間に複数の光ファイバーfを束ねるための空間S1、S2が形成される。
【0012】
スリーブ片2a、2bの材質は特に限定されない。スリーブ片2a、2bは、例えば金属により形成されていてもよいが、軽量化等の観点から、合成樹脂により形成されていることが好ましい。さらに、一対のスリーブ片2a、2bを閉じたときに、各スリーブ片2a、2bの軸C1、C2は一致してスリーブ1の軸Cをなすことができる。
【0013】
幅広部4は、光ファイバーfの束ね本数を管理するための部位として使用できる。幅広部4は、最大幅部11と、最大幅部11から幅狭部5に向かって徐々に幅狭となり幅狭部5と連なる徐変部12と、を有することができる。また、幅広部4(具体的に最大幅部11)の幅W1は、光ファイバーfの束ね本数や大きさ等に応じて適宜選択される。さらに、一対のスリーブ片2a、2bを閉じて幅広部4同士を突き合わせることで、各幅広部4の間に複数の光ファイバーfを覆う扁平状の覆い空間S1が形成されることができる。
【0014】
幅狭部5は、複数の光ファイバーfを束ねるための部位として使用できる。幅狭部5の幅W2は、幅広部4の幅W1よりも小さい値であり、光ファイバーfの束ね本数や大きさ等に応じて適宜選択される。さらに、一対のスリーブ片2a、2bを閉じて幅狭部5同士を突き合わせることで、各幅狭部5の間に複数の光ファイバーfを束ねる円柱状、角柱状等の柱状の束ね空間S2が形成されることができる。
【0015】
ヒンジ3の構造は特に限定されない。ヒンジ3は、例えば複数の部品により構成されたものを採用してもよいが、部品点数の低減等の観点から、合成樹脂により形成されており、合成樹脂製の各スリーブ片2a、2bと一体に形成(例えば成型)されていることが好ましい。この場合、ヒンジ3は、各スリーブ片2a、2bを連絡する帯状体9に薄肉部10を設けて構成されることができる(
図4参照)。さらに、ヒンジ3は、スリーブ片2a、2bの軸C1、C2と直交する軸C3回りに一対のスリーブ片2a、2bを開閉させることができる。この場合、ヒンジ3は、各スリーブ片2a、2bの幅狭部5を連絡するように設けられていることができる。
【0016】
本スリーブ1では、例えば
図3に示すように、一対のスリーブ片2a、2bのうちの少なくとも一方のスリーブ片2aには、幅広部4の幅方向に沿って複数の突起13がくし歯状に設けられていることができる。隣り合う突起13の間隔W3は、1本の光ファイバーfの外径以上の値(好ましくは光ファイバーfの外径の2倍未満の値)であることができる。なお、突起13の個数や横幅W4等は、光ファイバーfの束ね本数や大きさ等に応じて適宜選択される。さらに、隣り合う突起13の間には1本の光ファイバーfのみが入れ込まれてもよいし、複数本の光ファイバーfが入れ込まれてもよい。
【0017】
本スリーブ1では、例えば
図4に示すように、一対のスリーブ片2a、2bのうちの一方のスリーブ片2bには、係止部15が設けられており、他方のスリーブ片2aには、一対のスリーブ片2a、2bを閉じたときに係止部15が係止する被係止部16が設けられていることができる。係止部15及び被係止部16の係止形態等は特に限定されない。係止部15として、支柱17の先端側に設けられた爪(フック)17aを採用し、被係止部16として、爪17aが係止可能な孔部18や切欠部を採用できる。さらに、係止部15として、ピンを採用し、被係止部16として、ピンが係止可能な孔部やボス部を採用できる。また、係止部15及び被係止部16は、幅広部4に設けられていてもよいが、光ファイバーfの締結性等の観点から、幅狭部5に設けられていることが好ましい。さらに、係止部15及び被係止部16は、1組のみ設けられていてもよいが、光ファイバーfの締結性等の観点から、複数組設けられていることが好ましい。
【0018】
なお、光ファイバーfとしては、芯(コア層)と鞘(クラッド層)との芯鞘構造(多層構造)を有し、コア層とクラッド層との屈折率が異なっている種々の光ファイバーを採用することができる。光ファイバーfは、一端側から入射された光が周面の一部又は全てから出射される側面発光型の光ファイバーであってもよいし、一端側から入射された光が他端側から出射される端面発光型の光ファイバーであってもよい。
【0019】
<表皮材>
本実施形態に係る表皮材21は、例えば
図6及び
図7に示すように、光ファイバーfが構成糸として織り込まれた織物22と、上記のスリーブ1と、を備え、織物22の端部から露出(即ち延出)する複数の光ファイバーfがスリーブ1により束ねられていることを特徴とする。なお、複数の光ファイバーfは、通常、ある程度の強度(張り)を持って織物22の端部から露出する。
【0020】
本表皮材21では、例えばロール状の原反25から幅方向を長手状に切り出した織物22の端部から露出する複数の光ファイバーfがスリーブ1で束ねられていることができる(
図6(a)(b)(d)参照)。また、例えばロール状の原反25から長さ方向を長手状に切り出した織物22の端部から露出する複数の光ファイバーfがスリーブ1で束ねられていることができる(
図6(a)(c)(e)参照)。さらに、織物22に対するスリーブ1の配置場所は特に限定されない。スリーブ1は、織物22の複数の辺(例えば織物22の対向する二辺)に対して複数又は1つ設けられていてもよいし、織物22の1つの辺のみに対して複数又は1つ設けられていてもよい。
【0021】
織物22は、構成糸(タテ糸及びヨコ糸)によって製織された布帛であり、その織り組織は特に限定されない。具体的には、例えば、平織り、綾織り、朱子織り等の種々の織り組織を採用することができる。織物22の構成糸には、上記の光ファイバーfが少なくとも用いられている。特に、側面発光型の光ファイバーfを採用する場合、光源39からの光を光ファイバーfの織り込まれた織物22(即ち表皮材21)の表面から出射することができるため、意匠性や演出効果をより高めることができる(
図7参照)。
【0022】
光ファイバーfは、織物を構成するタテ糸及びヨコ糸の少なくとも一方に用いられており、特に、ヨコ糸に用いられた形態とすることができる。光ファイバーfがタテ糸として用いられている場合、タテ糸としての光ファイバーfの割合は、全てのタテ糸の本数を100%とした場合に、10%以上90%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以上80%以下、更に好ましくは30%以上70%以下である。また、光ファイバーfがヨコ糸として用いられている場合、ヨコ糸としての光ファイバーの割合は、全てのヨコ糸の本数を100%とした場合に、10%以上90%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以上80%以下、更に好ましくは30%以上70%以下である。なお、光ファイバーfの直径は特に限定されないが、製織性や汎用性の観点から、0.25~3mmであることが好ましく、より好ましくは0.1~1mmである。
【0023】
織物22を構成する光ファイバーf以外の構成糸(以下、「他の構成糸」ともいう)の種類は特に限定されないが、植物系及び動物系の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、合成樹脂からなる合成繊維等を材料とするものを採用することができる。合成繊維を構成する樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアクリル系樹脂等が挙げられる。
【0024】
織物22を構成する他の構成糸において、タテ糸及びヨコ糸には、同一の糸が用いられていてもよいし、異なる糸が用いられていてもよい。また、タテ糸に用いられる他の構成糸は、1種のみであってもよいし、2種以上が併用されていてもよい。同様に、ヨコ糸に用いられる他の構成糸は、1種のみであってもよいし、2種以上が併用されていてもよい。また、他の構成糸の繊度は特に限定されないが、例えば、100dtex以上1000dtex以下であることが好ましく、より好ましくは200dtex以上700dtex以下、更に好ましくは300dtex以上500dtex以下である。
【0025】
本表皮材21では、例えば
図7に示すように、織物22の裏面に積層されるクッション層23を更に備えることができる。クッション層23の材質は特に限定されないが、軟質ポリウレタンフォームからなるシート材が用いられることが多い。また、十分なクッション性を有する限り、他の軟質樹脂フォームを用いることもできる。
【0026】
<内装材>
本実施形態に係る内装材31は、例えば
図8及び
図9に示すように、板状の基材37と、基材37の表面を覆う上記の表皮材21と、を備えることを特徴とする。
【0027】
本内装材31の用途は特に限定されない。本内装材31としては、例えば、車両用のドアトリム、インストルメントパネル、ルーフトリム、フロアトリム、ラゲージトリム、リヤサイドトリム、リヤパーシェル、パッケージトレー、ピラーガーニッシュ、スイッチベース、クオーターパネル、アームレスト、センターコンソール、オーバヘッドコンソール、サンバイザー、シートなどの内装製品を構成する車両用内装材が挙げられる。さらに、ソファや椅子などの家具を構成する内装材であってもよい。
【0028】
基材37の材質は特に限定されない。基材37は、熱可塑性樹脂を含んでいることができる。この熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン(特にポリプロピレン)、ポリエステル、ポリスチレン、アクリル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール及びABS等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。さらに、基材は、上記の熱可塑性樹脂と補強繊維とを含んでいることができる。この補強繊維としては、無機繊維(ガラス繊維、炭素繊維等)や有機繊維(植物繊維、動物繊維等の天然繊維、またはポリエステル、ポリアミド、アラミド等の樹脂繊維)を利用できる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。また、植物性繊維には、靭皮系植物繊維(例えば、ケナフ、フラックス、ジュート、ヘンプ、ラミー等)、葉脈系植物繊維(例えば、アバカ、サイザル、アガベ等)、木質系植物繊維(例えば、広葉樹及び針葉樹等から採取された植物繊維等)、その他の植物繊維(ココヤシ殻繊維、オイルパーム空果房繊維、稲わら繊維、麦わら繊維、タケ繊維、綿等)が含まれる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。さらに、表皮材21は、基材37の表面の全部又は一部を覆うものである。表皮材21は、接着剤等により基材37の表面に接着されていてもよいし、接着されていなくてもよい。
【実施例0029】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、本発明に係る「内装材」として、車両用ドアトリム32を構成するオーナメント31を例示する。
【0030】
本実施例に係る車両用ドアトリム32は、
図8及び
図9に示すように、金属製のインナパネル(図示省略)を車室内側から覆う板状のトリム本体33を備えている。このトリム本体33は、車室内側の意匠面を形成するオーナメント31、アッパーボード34及びロアボード35を備えている。
【0031】
本実施例に係るオーナメント31は、板状の基材37と、基材37の表面を覆う表皮材21と、を備えている。このオーナメント31は、上下方向においてアッパーボード34とロアボード35との間に配置されている。さらに、基材37及び表皮材21は、車両前後方向Aに長尺状(具体的に長尺四角形状)に形成されている。
【0032】
本実施例に係る表皮材21は、
図7に示すように、側面発光型の光ファイバーfが構成糸として織り込まれた織物22と、織物22の裏面に積層されるクッション層23と、を備えている。この織物22の端部から複数の光ファイバーfが露出している。これら複数の光ファイバーfは、スリーブ1により束ねられて締結(保持)されている。スリーブ1で束ねられた光ファイバーfの先端部は、LED等の光源39の入光部とされる。そして、光源39からの光が各光ファイバーfに入光して表皮材21の表面から出射されることで、意匠性や演出効果をより高められる。
【0033】
本実施例に係るスリーブ1(樹脂スリーブ1)は、
図1及び
図2に示すように、樹脂製の一対のスリーブ片2a、2bと、一対のスリーブ片2a、2bを開閉させる樹脂製のヒンジ3(「インテグラルヒンジ」とも称される。)と、を備えている。
【0034】
スリーブ片2a、2bのそれぞれは、スリーブ片2a、2bの軸C1、C2と直交する方向の幅が異なる幅広部4及び幅狭部5を有している。これら幅広部4及び幅狭部5は、スリーブ片2a、2bの軸C1、C2方向に連結されている。さらに、各スリーブ片2a、2bは、平面しゃもじ状に形成されている。
【0035】
幅広部4は、複数の光ファイバーfの本数を管理するための部位として使用される。この幅広部4は、平面矩形状の最大幅部11と、最大幅部11から幅狭部5に向かって徐々に幅狭となり幅狭部5と連なる徐変部12と、を有している。また、幅広部4(最大幅部11)の幅W1は、光ファイバーfの束ね本数(例えば約100本)や大きさ(例えば直径0.25mm)に応じた値(例えば約100mm)とされている。さらに、一対のスリーブ片2a、2bを閉じて幅広部4同士を突き合わせることで、各幅広部4の間に複数の光ファイバーfを覆う扁平状の覆い空間S1が形成される。
【0036】
各幅広部4は、底壁7と、底壁7の縁部から立ち上がる立壁8と、を有している。一対のスリーブ片2a、2bを閉じたときに各立壁8の先端面同士が当接することで覆い空間S1が形成される。ただし、
図10に示すように、一方の幅広部4は底壁7を有し、他方の幅広部4は、底壁7と、底壁7の縁部から立ち上がる立壁8と、を有し、一対のスリーブ片2a、2bを閉じたときに一方の幅広部4の底壁7と他方の幅広部4の立壁8の先端面とが当接することで覆い空間S1が形成される形態を採用してもよい。
【0037】
スリーブ片2aの幅広部4(具体的に最大幅部11)には、その幅方向に沿って複数の突起13がくし歯状に設けられている(
図3参照)。隣り合う突起13の間隔W3は、1本の光ファイバーf(例えば直径0.25mm)が入り込み可能な値(例えば0.25mm)とされている。さらに、突起13の横幅W4は、光ファイバーfの束ね本数(例えば約100本)や大きさ(例えば直径0.25mm)に応じた値(例えば0.75mm)とされている。さらに、突起13の高さHは、一対のスリーブ片2a、2bを閉じたときに、突起13の先端面とスリーブ片2bの幅広部4の底壁7とが当接する値(例えば5mm)とされている。
【0038】
幅狭部5は、複数の光ファイバーfを束ねるための部位として使用される。この幅狭部5の幅W2は、幅広部4の幅W1よりも小さな値であり、光ファイバーfの束ね本数(例えば約100本)や大きさ(例えば直径0.25mm)に応じた値(例えば3mm)とされている。また、各幅狭部5は半筒状に形成されている。さらに、一対のスリーブ片2a、2bを閉じて幅狭部5同士を突き合わせることで、各幅狭部5の間に複数の光ファイバーfを束ねる円柱状の束ね空間S2が形成される。
【0039】
ヒンジ3は、各スリーブ片2a、2bと一体に形成されている。このヒンジ3は、各幅狭部5を連絡する帯状体9に薄肉部10を設けて構成されている(
図4参照)。また、ヒンジ3は、スリーブ片2a、2bの軸C1、C2と直交する軸C3回りに一対のスリーブ片2a、2bを開閉させる。さらに、ヒンジ3は、一対のスリーブ片2a、2bの各幅狭部5を連絡するように各幅狭部5の左右両側に設けられている。
【0040】
一対のスリーブ片2a、2bは、ヒンジ3により閉じた状態で、各スリーブ片2a、2bの軸C1、C2が重なりスリーブ1の軸Cをなすように配置される。また、一対のスリーブ片2a、2bは、ヒンジ3により開いた状態で、幅広部4同士よりも幅狭部5同士が近接するように各軸C1、C2が同一直線上に位置するように配置される。ただし、一対のスリーブ片2a、2bは、ヒンジ3により開いた状態で、幅広部4同士よりも幅狭部5同士が近接するように各軸C1、C2が交差するように配置されてもよい。
【0041】
スリーブ片2bには、係止部15が設けられている。この係止部15は、一方の幅狭部5の左右両側(具体的に幅狭部5の突き合せ部から外方に延びる左右の張出部14)に設けられている。また、スリーブ片2aには、一対のスリーブ片2a、2bを閉じたときに係止部15が係止する被係止部16が設けられている。この被係止部16は、他方の幅狭部5の左右両側(具体的に幅狭部5の突き合せ部から外方に延びる左右の張出部14)に設けられている。また、係止部15は、支柱7の先端側に設けられた爪7aにより構成されている。さらに、被係止部16は、爪7aが係止可能な孔部18により構成されている。なお、係止部15をスリーブ片2aに設け、被係止部16をスリーブ片2bに設けるようにしてもよい。
【0042】
次に、上記構成のスリーブ1の作用効果について説明する。一対のスリーブ片2a、2bが開いた状態のスリーブ1を用意し、織物22の端部から露出する複数の光ファイバーfをスリーブ片2aの幅広部4(最大幅部11)上に配置する(
図5(a)参照)。このとき、幅広部4により光ファイバーfの凡その束ね本数(例えば90~105本)が管理される。さらに、各光ファイバーfをくし歯状の各突起13の間に入れ込むこと(
図3(a)参照)で光ファイバーfの束ね本数が更に正確に管理される。その後、光ファイバーfの先端側を束ねて一方のスリーブ片2aの幅狭部4内に配置する(
図5(b)参照)。この状態を保ちつつ一対のスリーブ片2a、2bを閉じることで、幅広部4同士及び幅狭部5同士が突き合わされた状態で係止部15が被係止部16に係止して、一対のスリーブ片2a、2bの間で複数の光ファイバーfが束ねられた状態で締結される(
図5(c)参照)。なお、スリーブ1で束ねられる光ファイバーfの先端側は、適宜のタイミングで切り揃えてもよい。
【0043】
以上より、本実施例のスリーブ1によると、一対のスリーブ片2a、2bと、一対のスリーブ片2a、2bを開閉させるヒンジ3と、を備え、スリーブ片2a、2bのそれぞれは、スリーブ片2a、2bの軸C1、C2と直交する方向の幅が異なる幅広部4及び幅狭部5を有する。そして、一対のスリーブ片2a、2bを閉じて幅広部4同士及び幅狭部5同士を突き合わせることで、一対のスリーブ片2a、2bの間に複数の光ファイバーfを束ねるための空間S1、S2が形成される。これにより、一対のスリーブ片2a、2bの間で複数の光ファイバーfを容易に束ねることができる。これに対して、従来では、直径3mm等の小径な金属スリーブに複数の光ファイバーfを通していたので、作業工数がかかる。また、本実施例では、幅広部4により光ファイバーfの凡その束ね本数が管理されるため、光ファイバーfの本数を数えずに束ねることができる。さらに、幅広部4により光ファイバーfの保護と光漏れ抑制の役割が果たされる。これに対して、従来では、光ファイバーfの保護のために金属スリーブ101とは別に当て布等を用いる必要があった。
【0044】
また、本実施例では、スリーブ片2aには、幅広部4の幅方向に沿って複数の突起13がくし歯状に設けられている。これにより、光ファイバーfをくし歯状の各突起13の間に入れ込むことで、光ファイバーfの束ね本数を更に正確に管理することができる。さらに、複数の突起13の間に光ファイバーfが保持されるため、一対のスリーブ片2a、2bの間で複数の光ファイバーfを更に容易に束ねることができる。
【0045】
また、本実施例では、スリーブ片2bには、係止部15が設けられており、スリーブ片2aには、一対のスリーブ片2a、2bを閉じたときに係止部15が係止する被係止部16が設けられている。これにより、一対のスリーブ片2a、2bの間で光ファイバーfを簡単に締結することができる。これに対して、従来では、金属スリーブ101を圧締めして光ファイバーfを締結していたので、作業負荷、工数がかかる。
【0046】
また、本実施例では、ヒンジ3は、スリーブ片2a、2bの軸C1、C2と直交する軸C3回りに一対のスリーブ片2a、2bを開閉させる。これにより、一対のスリーブ片2a、2bの間で複数の光ファイバーfを更に容易に束ねることができる。
【0047】
さらに、本実施例では、樹脂製のヒンジ3は、樹脂製の各スリーブ片2a、2bと一体に形成されている。これにより、簡易且つ安価な構造のヒンジ3ひいてはスリーブ1を提供することができる。
【0048】
さらに、本実施例の表皮材21及びオーナメント31によると、織物22の端部から露出する複数の光ファイバーfがスリーブ1により束ねられている。これにより、表皮材21及びオーナメント31を容易に得ることができる。
【0049】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例では、スリーブ片2aの幅広部4のみに突起13を設ける形態を例示したが、これに限定されず、例えば
図11(a)に示すように、スリーブ片2a、2bの各幅広部4に突起13を設けるようにしてもよい。
【0050】
また、上記実施例では、幅広部4に突起13を設ける形態を例示したが、これに限定されず、例えば
図11(b)に示すように、幅広部4に突起13を設けることなく、幅広部4の底壁7上に複数の光ファイバーfを並べることで光ファイバーfの束ね本数を管理するようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施例では、ヒンジ3により一対のスリーブ片2a、2bを軸C1、C2と直交する軸C3回りに開閉する形態を例示したが、これに限定されず、例えば
図12に示すように、ヒンジ3により一対のスリーブ片2a、2bを軸C1、C2と平行な軸回りに開閉するようにしてもよい。
【0052】
さらに、上記実施例では、係止部15及び被係止部16により一対のスリーブ片2a、2bを接合する形態を例示したが、これに限定されず、例えば係止部15及び被係止部16に代えて又は加えて、接着、クランプ具、縛り止め等により一対のスリーブ片2a、2bを接合するようにしてもよい。
【0053】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
1;スリーブ、2a,2b;一対のスリーブ片、3;ヒンジ、4;幅広部、5;幅狭部、13;突起、15;係止部、16;被係止部、21;表皮材、22;織物、31;オーナメント(内装材)、37;基材、f;光ファイバー、C1,C2;スリーブ片の軸、S1;覆い空間、S2;束ね空間。