(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029953
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】患者搬送用アイソレーター
(51)【国際特許分類】
A61G 1/00 20060101AFI20240229BHJP
A61G 1/04 20060101ALI20240229BHJP
A61G 10/00 20060101ALI20240229BHJP
A61G 10/02 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
A61G1/00 701
A61G1/04
A61G10/00 C
A61G10/00 K
A61G10/02 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132450
(22)【出願日】2022-08-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)納入による公開 納入日:令和3年11月26日 納入した場所:大阪大学医学部附属病院(大阪府吹田市山田丘2-15) (2)展示による公開 展示日:令和3年12月11日 開催場所:大阪大学吹田キャンパス コンベンションセンター(大阪府吹田市山田丘1-1) (3)ウェブサイトでの公開 ウェブサイトの掲載日:令和3年12月13日 ウェブサイトのアドレス:https://akao-co.com/products/3106/
(71)【出願人】
【識別番号】597033133
【氏名又は名称】株式会社赤尾
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 隆
(72)【発明者】
【氏名】内尾 公治
【テーマコード(参考)】
4C341
【Fターム(参考)】
4C341KK05
4C341KL04
4C341KL07
(57)【要約】
【課題】内部空間で患者が楽な姿勢をとることができ、救急車の車内で救急隊員が活動しやすく、患者の容態急変時の処置も容易な患者搬送用アイソレーターを提供する。
【解決手段】患者が横たわりストレッチャーに着脱される担架状の基体1と、基体1に着脱自在に被せられる硬質カプセル状のフード2とから成り、基体1には、患者が上半身を起こして半座位の姿勢をとった状態で、患者の背中を支持する背凭れ部材5が起伏自在に設けられ、フード2は、患者の足元側を軸として基体1に起伏自在に連結され、患者の頭部側が高く、足元側が低くなるように、上部が傾斜したものとする。基体1の床下部に、内部空間を陰圧に保ちつつ病原体を除去する空気浄化ユニット7を備え、基体1とフード2とを、患者の足元側ではヒンジ付きのプランジャーロック11で結合する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者が横たわりストレッチャー(20)に着脱される担架状の基体(1)と、前記基体(1)に着脱自在に被せられる硬質カプセル状のフード(2)とから成り、
前記フード(2)は、患者の足元側を軸として前記基体(1)に起伏自在に連結され、
前記基体(1)には、患者が上半身を起こして半座位の姿勢をとった状態で、患者の背中を支持する背凭れ部材(5)が起伏自在に設けられ、
前記基体(1)の床下部に、内部空間を陰圧に保ちつつ、内部空間の空気から病原体を除去して排気する空気浄化ユニット(7)を備えた患者搬送用アイソレーター。
【請求項2】
前記基体(1)には、患者の脚部側に医療機器を載せるためのテーブル(8)を備えていることを特徴とする請求項1に記載の患者搬送用アイソレーター。
【請求項3】
前記フード(2)は、患者の頭部側が高く、足元側が低くなるように、上部が傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の患者搬送用アイソレーター。
【請求項4】
前記基体(1)と前記フード(2)とを着脱自在に結合する部材のうち、患者の足元側に位置する結合部材は、ヒンジ付きのプランジャーロック(11)とし、
前記基体(1)に対して前記フード(2)が患者の足元側では結合されたままの状態で、起伏可能になっていることを特徴とする請求項1に記載の患者搬送用アイソレーター。
【請求項5】
前記フード(2)には、患者の頭部側に吊紐部材(40)を繋ぐ繋紐部(2a)が設けられ、
救急車の車内で前記フード(2)を前記基体(1)から起こして患者の上半身側を開放し、前記繋紐部(2a)に繋いだ吊紐部材(40)を救急車の天井側に掛けると、前記フード(2)が開放状態に保持されることを特徴とする請求項1に記載の患者搬送用アイソレーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、患者を隔離して搬送するためのアイソレーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1,2には、感染症に罹患している患者を隔離状態で搬送するアイソレーターとして、ストレッチャーに所謂かまぼこ型の患者収容カプセルが載置され、患者収容カプセルには、内部空間を陰圧に保ちつつ、供給された空気から病原体を除去して排気する給気ユニットと排気ユニットとを備えたものが記載されている。
【0003】
これらのアイソレーターは、患者収容カプセルの内部において、収容された患者が水平に横たわった姿勢で搬送され、救急車の車内では、患者収容カプセルを開けることがスペースの制約上、困難な構造とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-290383号公報
【特許文献2】特開2005-28058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、呼吸器疾患等の患者は、上半身が水平になった姿勢よりも、上半身を少し起こした半座位の姿勢の方が楽に呼吸できる場合があるが、上記のようなアイソレーターでは、半座位の姿勢をとることができない。
【0006】
また、輸液ポンプや人工呼吸器等の医療機器を収納することが考慮されておらず、これらの医療機器が必要な患者の搬送に対応できないという不都合があるほか、給気ユニットや排気ユニットが嵩張って、救急車の車内での救急隊員の活動を阻害する恐れもある。
【0007】
また、患者の容態が搬送中に急変した場合、救急車の狭い車内では、患者収容カプセルを開けられず、気管挿管等の処置を行うことが実際上困難であるという問題がある。
【0008】
そこで、この発明は、内部空間で患者が楽な姿勢をとることができ、救急車の車内で救急隊員が活動しやすく、患者の容態急変時の処置も容易な患者搬送用アイソレーターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この発明に係る患者搬送用アイソレーターは、患者が横たわりストレッチャーに着脱される担架状の基体と、前記基体に着脱自在に被せられる硬質カプセル状のフードとから成り、
前記フードは、患者の足元側を軸として前記基体に起伏自在に連結され、
前記基体には、患者が上半身を起こして半座位の姿勢をとった状態で、患者の背中を支持する背凭れ部材が起伏自在に設けられ、
前記基体の床下部に、内部空間を陰圧に保ちつつ、内部空間の空気から病原体を除去して排気する空気浄化ユニットを備えたものとしたのである。
【0010】
また、前記基体には、患者の脚部側に医療機器を載せるためのテーブルを備えているものとしたのである。
【0011】
また、前記フードは、患者の頭部側が高く、足元側が低くなるように、上部が傾斜しているものとしたのである。
【0012】
また、前記基体と前記フードとを着脱自在に結合する部材のうち、患者の足元側に位置する結合部材は、ヒンジ付きのプランジャーロックとし、
前記基体に対して前記フードが患者の足元側では結合されたままの状態で、起伏可能になっているものとしたのである。
【0013】
そして、前記フードには、患者の頭部側に吊紐部材を繋ぐ繋紐部が設けられ、
救急車の車内で前記フードを前記基体から起こして患者の上半身側を開放し、前記繋紐部に繋いだ吊紐部材を救急車の天井側に掛けると、前記フードが開放状態に保持されるものとしたのである。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る患者搬送用アイソレーターでは、背凭れ部材を起こすと、患者が半座位で背凭れ部材に凭れて楽に呼吸できる姿勢をとることができる。このとき、フードの上部を患者の頭部側で高くしているので、患者は圧迫感をあまり感じることがない。
【0015】
また、患者の脚部側に医療機器を載せるテーブルを備えているので、患者が半座位の姿勢をとる際に、テーブルが患者の上半身に干渉せず、必要な医療機器を収納できる。そして、空気浄化ユニットは基体の床下部に位置しているので、救急車の車内で救急隊員の活動スペースが阻害されない。
【0016】
また、救急車の車内で患者の容態が急変した場合には、フードを基体から起立させて患者の上半身側を開放することにより、救急隊員が患者に対して気管挿管や胸骨圧迫等の緊急処置を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明の実施形態に係る患者搬送用アイソレーターをストレッチャーに装着した状態を示す斜視図
【
図2】同上の患者搬送用アイソレーターの使用態様を示す側面図
【
図3】同上の患者搬送用アイソレーターの分解斜視図
【
図4】同上のプランジャーロックによる基体とフードの結合部を示す斜視図
【
図5】同上の救急車の車内への搬入状態を示す側面図
【
図6】同上のフードを基体から起こした状態を患者の頭部側から示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
図1及び
図2に示すように、この患者搬送用アイソレーターは、患者が横たわりストレッチャー20に着脱される担架状の基体1と、基体1に被せられるカプセル状のフード2とから構成されている。フード2は、大部分が透明な硬質樹脂から成り、患者の足元側を軸として基体1に起伏自在に連結され、患者の頭部側が高く、足元側が低くなるように、上部が傾斜した形状とされている。
【0020】
図3に示すように、基体1は、梯子型のフレーム3と、これに載置固定される底盤4とから成り、フレーム3の下部には、調整移動用の車輪3aが設けられている。フレーム3の四隅には、基体1からアイソレーターを持ち上げる際に把持する把手1aが設けられ、フード2の四隅には、基体1への着脱時に把持する把手2aが設けられている。
【0021】
底盤4には、患者の上半身を受け止める背凭れ部材5が起伏自在に設けられている。背凭れ部材5の背面には、支持脚5aが揺動自在に取り付けられ、底盤4には複数の掛止部4aが設けられている。底盤4に対する背凭れ部材5の起立角度は、支持脚5aの下端部を係合させる掛止部4aを選択することにより、段階的に調整できる。
【0022】
底盤4には、患者の下半身を受け止める部分から背凭れ部材5にかけてマットレス6が敷設される。マットレス6は、患者を搬送する度に消毒されたものに交換される。
【0023】
基体1の床下部には、患者の足元側に空気浄化ユニット7が備えられる。空気浄化ユニット7は、アイソレーターの内部の空気を吸引して陰圧とし、2種のフィルターを透過させ、紫外線を照射して病原性のウィルスや菌を感染力がない所定の水準まで除去した後、排気するものである。空気浄化ユニット7への電力供給は、救急車の車外では、基体1に搭載したバッテリーにより行われ、救急車の車内では、救急車の電源から行われる。
【0024】
空気浄化ユニット7の基体1への取り付けに際しては、フレーム3で支持した空気浄化ユニット7を底盤4の嵌合部4bに嵌め込む。
【0025】
基体1には、患者の脚部側に医療機器を載せるテーブル8が着脱自在に備えられ、テーブル8の天板は、患者の脚部の上方に間隔をあけて位置するようになっている。テーブル8の脚部には、患者が握るグリップ8aが設けられている。テーブル8の側部下方には、医療機器用のコンセント9が設けられている。
【0026】
また、図示省略したが、基体1には、マットレス6に横たわった患者の体を固定するため、固定ベルトが間隔をあけて2本取り付けられている。
【0027】
フード2には、患者の上半身の側方に外部から手を入れられる開閉式の窓2bが設けられている。窓2bには、内部空間への吸気口となる多数の小さい穴が穿設されている。窓2bを開けると、患者の血圧を図ったり、胸部や腹部への簡単な処置を行ったりすることができる。また、テーブル8の天板上の側方となる位置にも、開閉式の窓2cが設けられている。窓2cは、医療機器を操作するためのものである。
【0028】
基体1の周縁とフード2の周縁には、患者の頭部側に位置するスナップロック10と、患者の足元側に位置するヒンジ付きのプランジャーロック11とが設けられており、これらにより、基体1とフード2とが結合される。
【0029】
スナップロック10を解錠すると、
図4に示すように、基体1とフード2とが患者の足元側では結合されたままの状態で、フード2を起伏させることができる。基体1からフード2を取り外す際には、プランジャーロック11によるロックを解除する。
【0030】
上記のような患者搬送用アイソレーターを使用して患者を搬送する際には、
図1に示すように、ストレッチャー20に基体1を載せ、基体1からフード2を取り外して、マットレス6に患者を横たわらせ、図示省略した固定ベルトで患者の体を基体1に固定する。そして、基体1の底盤4にテーブル8を取り付け、テーブル8に輸液ポンプや人工呼吸器等の医療機器30を載せて、使用できるようにする。
【0031】
また、患者の状態に応じて、背凭れ部材5を適宜の角度に起こし、患者が半座位で背凭れ部材5に凭れて楽に呼吸できる姿勢をとれるようにする。このように、患者を半座位の姿勢としても、フード2の上部を患者の頭部側で高くしているので、患者は圧迫感をあまり感じることがない。また、テーブル8は、患者の脚部側に位置しているので、テーブル8が患者の上半身に干渉することもない。
【0032】
その後、基体1にフード2を被せ、基体1とフード2とをスナップロック10及びプランジャーロック11で結合し、空気浄化ユニット7を作動させ、アイソレーターの内部空間を負圧にする。
【0033】
このように患者を収容した状態で、
図5に示すように、アイソレーターを救急車に積み込むと、アイソレーターは、空気浄化ユニット7が基体1の床下部に位置しており、車内の通路側へのダクト等の露出もないので、救急車の車内で救急隊員の活動スペースが阻害されることがない。
【0034】
また、救急車の車内で患者の容態が急変した時には、
図5及び
図6に示すように、フード2を基体1から起立させて患者の上半身側を開放することにより、救急隊員が患者に対して気管切開や胸骨圧迫等の緊急処置を容易に行うことができる。その際、患者の頭部側に位置するフード2の把手2aを繋紐部とし、この把手2aに繋いだベルト状の吊紐部材40を、救急車の天井側のフック50に掛けると、フード2が開放状態に保持される。
【0035】
そして、救急車が病院に到着した後、アイソレーターを救急車から降ろし、病院の建屋内に運び込み、病院の廊下を曳行する際、廊下の幅や処置室、病室等の出入口の幅が狭くても、このアイソレーターは、幅方向の突出部が殆どなく、外周面が滑らかな細身の形状とされているので、スムーズに曳行することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 基体
1a 把手
2 フード
2a 把手(繋紐部)
2b,2c 窓
3 フレーム
3a 車輪
4 底盤
4a 掛止部
4b 嵌合部
5 背凭れ部材
5a 支持脚
6 マットレス
7 空気浄化ユニット
8 テーブル
8a グリップ
9 コンセント
10 スナップロック
11 プランジャーロック
20 ストレッチャー
30 医療機器
40 吊紐部材
50 フック