(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029964
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
H01S 5/022 20210101AFI20240229BHJP
H01L 31/02 20060101ALI20240229BHJP
H01L 23/02 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H01S5/022
H01L31/02 B
H01L23/02 F
H01L23/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132464
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】黒川 宗高
(72)【発明者】
【氏名】原 弘
(72)【発明者】
【氏名】古川 将人
【テーマコード(参考)】
5F149
5F173
5F849
【Fターム(参考)】
5F149AB02
5F149AB07
5F149BA26
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5F149JA11
5F149JA12
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5F849AB02
5F849AB07
5F849BA26
5F849JA05
5F849JA11
5F849JA12
5F849JA13
5F849XB02
(57)【要約】
【課題】パッケージの変形を抑制することができる光モジュールを提供する。
【解決手段】一実施形態に係る光モジュールは、側壁で囲まれた開口部を有するパッケージと、パッケージに載せられて開口部を封止するリッドと、を備える。リッドは、板状を呈し、開口部が形成されたパッケージの側壁の上面に溶接によって固定される溶接部と、溶接部から離隔した位置に形成されており溶接に伴って変形する易変形部と、平坦な中央部と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁で囲まれた開口部を有するパッケージと、
前記パッケージに載せられて前記開口部を封止するリッドと、
を備え、
前記リッドは、板状を呈し、前記開口部が形成された前記パッケージの前記側壁の上面に溶接によって固定される溶接部と、前記溶接部から離隔した位置に形成されており前記溶接に伴って変形する易変形部と、平坦な中央部と、を有する、
光モジュール。
【請求項2】
前記易変形部は、前記溶接部に対して前記リッドの板厚方向に凸状又は凹状を成す段差部である、
請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記易変形部の前記リッドの厚さは、前記溶接部の厚さよりも薄い、
請求項1又は請求項2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記リッドは、端辺として、一対の短辺及び一対の長辺を有する長方形状を呈し、
前記リッドの長手方向における前記短辺から前記易変形部までの距離は、前記リッドの短手方向における前記長辺から前記易変形部までの距離よりも長い、
請求項1又は請求項2に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記リッドは、端辺を有し、
前記パッケージは、前記リッドの下方に位置する空洞を有し、
前記リッドの前記空洞に対向する部分における前記端辺から前記易変形部までの距離は、前記リッドの前記空洞に対向しない部分における前記端辺から前記易変形部までの距離よりも長い、
請求項1又は請求項2に記載の光モジュール。
【請求項6】
前記パッケージの前記側壁の上面に凸状の枠が設けられている、請求項1又は請求項2に記載の光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、導波路型光モジュールが記載されている。導波路型光モジュールは、パッケージと蓋とを備える。パッケージは、発光素子、レンズ、導波路基板、及び単一モード光ファイバを収容する。蓋は、溶接等の手段によりパッケージを気密封止する。パッケージの側面の上部には切り欠きが設けられている。前述した導波路型光モジュールでは、パッケージに蓋が取り付けられるときの温度変化によってパッケージの側面に生じる曲げ応力を切り欠きに集中させる。これにより、発光素子等の光学部品への影響の防止を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した導波路型光モジュールでは、切り欠きに応力が集中するとクラックが発生する懸念がある。また、前述したようにパッケージに蓋が溶接によって固定される場合、溶接時の発熱によって蓋が収縮し、その収縮に伴う変形がパッケージに生じる可能性がある。パッケージの内部において光学系が完結している場合、パッケージの変形によって光モジュールの部品の位置がずれることがあり、光の結合効率が変動する可能性がある。
【0005】
本開示は、パッケージの変形を抑制することができる光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る光モジュールは、開口部を有するパッケージと、パッケージに載せられて開口部を封止するリッドと、を備える。リッドは、開口部が形成されたパッケージの上面に溶接によって固定される溶接部と、溶接部から離隔した位置に形成されており溶接に伴って変形する易変形部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、パッケージの変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る光モジュールの部分断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の光モジュールからリッドが外された状態を示す部分断面図である。
【
図3】
図3は、
図1の光モジュールのパッケージ及びリッドを模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図3のリッドの端辺から易変形部までの長さの比と光の結合損失との関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、
図5のリッドの易変形部を拡大した断面図である。
【
図7】
図7は、
図6とは異なる変形例に係る易変形部を拡大した断面図である。
【
図8】
図8は、変形例に係る光モジュールのパッケージ及びリッドを示す斜視図である。
【
図9】
図9は、
図8とは別の変形例に係る光モジュールの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示に係る光モジュールの実施形態の内容を列記して説明する。実施形態に係る光モジュールは、(1)側壁で囲まれた開口部を有するパッケージと、パッケージに載せられて開口部を封止するリッドと、を備える。リッドは、板状を呈し、開口部が形成されたパッケージの側壁の上面に溶接によって固定される溶接部と、溶接部から離隔した位置に形成されており溶接に伴って変形する易変形部と、平坦な中央部と、を有する。
【0010】
この光モジュールでは、パッケージの開口部がリッドによって封止される。リッドは、開口部が形成されたパッケージの上面に溶接によって固定される溶接部と、溶接に伴って変形する易変形部とを有する。易変形部は、溶接部から離隔した位置に形成されている。従って、パッケージとの溶接部から離隔した易変形部が溶接に伴って変形することにより、パッケージの変形を抑制できる。すなわち、易変形部が変形することによって溶接に伴うパッケージへの応力を低減させることができるので、パッケージの変形が抑制される。よって、パッケージの内部において光学系が完結している場合であっても、パッケージの変形によって光学部品の位置がずれることを抑制できるので、光の結合効率を安定させることができる。
【0011】
(2)上記(1)において、リッドは、板状を呈してもよく、易変形部は、溶接部に対してリッドの板厚方向に凸状又は凹状を成す段差部であってもよい。この場合、易変形部を段差部として形成できるので、易変形部を簡易に形成できる。
【0012】
(3)上記(1)又は(2)において、リッドは、板状を呈してもよく、易変形部のリッドの厚さは、溶接部の厚さよりも薄くてもよい。この場合、易変形部をより変形させやすくすることができるので、パッケージの変形をより確実に抑制できる。
【0013】
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、リッドは、端辺として、一対の短辺及び一対の長辺を有する長方形状を呈してもよく、リッドの長手方向における短辺から易変形部までの距離は、リッドの短手方向における長辺から易変形部までの距離よりも長くてもよい。リッドの端辺から易変形部までの長さが長い場合には、リッドの端辺から易変形部までの長さが短い場合と比較して、易変形部をより変形させやすくすることができる。よって、リッドの長手方向における短辺から易変形部までの距離が、リッドの短手方向における長辺から易変形部までの距離よりも長い場合、リッドの長手方向に沿って並ぶ易変形部をより変形させやすくしてパッケージの長手方向における変形をより確実に抑制できる。従って、パッケージの短手方向と比較してパッケージの長手方向における変形をより確実に抑制できるので、光の結合効率を一層安定させることができる。
【0014】
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、リッドは、端辺を有してもよく、パッケージは、リッドの下方に位置する空洞を有してもよい。リッドの空洞に対向する部分における端辺から易変形部までの距離は、リッドの空洞に対向しない部分における端辺から易変形部までの距離よりも長くてもよい。この場合、リッドの空洞に対向する部分における易変形部を、リッドの空洞に対向しない部分における易変形部と比較して変形させやすくすることができる。
【0015】
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、パッケージの側壁の上面に凸状の枠が設けられていてもよい。
【0016】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る光モジュールの具体例を以下で図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示され、特許請求の範囲と均等の範囲における全ての変更が含まれることが意図される。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載したものに限定されない。
【0017】
図1は、一例としての光モジュール1を示す部分断面図である。
図2は、光モジュール1の内部構造を示す部分断面図である。
図1及び
図2に示されるように、光モジュール1は、直方体状のパッケージ2と、パッケージ2に形成された送信側窓3及び受信側窓4とを有する。送信側窓3及び受信側窓4のそれぞれは矩形状を呈する。パッケージ2は、例えば、セラミック製である。パッケージ2は、第1方向D1に沿って延びる第1側壁2bと、第1方向D1に交差する第2方向D2に沿って延びる一対の第2側壁2cと、光モジュール1の各部品が搭載される底壁2dとを有する。第1方向D1は光モジュール1の長手方向であり、第2方向D2は光モジュール1の幅方向である。
【0018】
第1側壁2bは、第1方向D1及び第3方向D3の双方に延在している。第3方向D3は、第1方向D1及び第2方向D2の双方に交差する方向であり、光モジュール1の高さ方向に相当する。一対の第2側壁2cは第1方向D1に沿って並んでおり、各第2側壁2cは第2方向D2及び第3方向D3の双方に延在している。底壁2dは、第1側壁2b及び第2側壁2cの第3方向D3の一端において第1方向D1及び第2方向D2の双方に延在している。一対の第1側壁2b、及び一対の第2側壁2cは、第3方向D3から見たときに枠状を呈するパッケージ2の開口部2gを形成する。すなわち、パッケージ2は、側壁(一対の第1側壁2b、及び一対の第2側壁2c)で囲まれた開口部2gを有する。
【0019】
送信側窓3及び受信側窓4は、一対の第2側壁2cのうちの一方を第1方向D1に貫通している。送信側窓3及び受信側窓4は、第2方向D2に沿って並んでいる。受信側窓4は、光モジュール1の外部から光モジュール1の内部に入力光L1を入力する部位である。送信側窓3は、光モジュール1の内部から光モジュール1の外部に出力光L2を出力する部位である。
【0020】
光モジュール1は、底壁2dに搭載された第1の温調デバイス11と、第1の温調デバイス11に搭載された波長可変光源用ベース12と、波長可変光源用ベース12に搭載された波長可変光源素子13及びレンズ14とを有する。例えば、波長可変光源用ベース12は、窒化アルミニウム及びアルミナのいずれかによって構成されている。波長可変光源素子13は、例えば、インジウムリン(InP)によって構成されている。レンズ14は、ガラス又はケイ素(Si)によって構成されている。波長可変光源素子13はレンズ14に光L3を出力し、レンズ14は光L3を送信側窓3とは反対側に出力する。
【0021】
光モジュール1は、第1の温調デバイス11と第2の温調デバイス31の共通の下基板88に搭載された中間基板21と、中間基板21に搭載されたビームスプリッタ22とを有する。中間基板21は、例えば、窒化アルミニウム及びアルミナのいずれかによって構成されている。ビームスプリッタ22は、例えば、ガラス及び誘電体多層膜を含む。ビームスプリッタ22は、レンズ14から第1方向D1に出射した光L3を受ける。ビームスプリッタ22は、光L3の一部を第1方向D1に透過すると共に、光L3の残部を第2方向D2に反射する。
【0022】
光モジュール1は、底壁2dに搭載された第2の温調デバイス31と、第2の温調デバイス31に搭載された変調素子用ベース32と、変調素子用ベース32に搭載された変調素子用キャリア33、偏波合波フィルタ34、ミラー35及びレンズ36と、変調素子用キャリア33に搭載された変調素子37とを有する。変調素子用ベース32及び変調素子用キャリア33のそれぞれは、例えば、窒化アルミニウム及びアルミナのいずれかによって構成されている。
【0023】
偏波合波フィルタ34は、ガラス及び誘電体多層膜によって構成されている。偏波合波フィルタ34は、変調素子37からレンズ36を介して出力した光L4を受ける。偏波合波フィルタ34は、光L4を第1方向D1に透過して送信側窓3に出力する。ミラー35は、変調素子37からレンズ36を介して第1方向D1に出力された光L5を偏波合波フィルタ34に向けて第2方向D2に反射する。偏波合波フィルタ34は、光L5を第1方向D1に反射して、光L4及び光L5が合波された光である出力光L2を送信側窓3に出力する。
【0024】
レンズ36は、例えば、ガラス及びケイ素(Si)のいずれかによって構成されている。レンズ36は、第1レンズ部36bと、第2レンズ部36cと、第3レンズ部36dとを有する。第1レンズ部36b、第2レンズ部36c及び第3レンズ部36dは、この順で第2方向D2に沿って並んでいる。第1レンズ部36bには変調素子37から第1方向D1に出射した光L5が入力する。第1レンズ部36bは光L5をミラー35に向けて透過する。第3レンズ部36dには変調素子37から第1方向D1に出射した光L4が入力する。第2レンズ部36cには、ビームスプリッタ22を透過した光L3が入力する。第2レンズ部36cは光L3を変調素子37に入力する。
【0025】
変調素子37は、例えば、リン化インジウム(InP)及びケイ素(Si)のいずれかによって構成されている。一例として、変調素子37は、リン化インジウム(InP)、二酸化ケイ素(SiO2)及びベンゾシクロブテン(BCB)を含む。変調素子37は、例えば、複数の光導波路を有する多モード干渉器である。変調素子37は、入力された光L3を分岐して位相変調を加え、分岐した光の一部を合波して光L4として出射すると共に、分波した光の残部を合波して光L5として出射する。
【0026】
パッケージ2の底壁2dは、第1の温調デバイス11、第2の温調デバイス31が搭載される肉薄部2hと、肉薄部2hよりも第3方向D3への厚みが大きい肉厚部2jとを含む。光モジュール1は、肉厚部2jに搭載された第1のミラー41、偏波分離フィルタ42、第2のミラー43、レンズ44及び受信素子用キャリア45を有する。更に、光モジュール1は、受信素子用キャリア45に搭載された受信素子46を有する。
【0027】
第1のミラー41は、ビームスプリッタ22が第2方向D2に反射した光L3を第1方向D1に反射する。偏波分離フィルタ42は、例えば、ガラス及び誘電体多層膜を有する。偏波分離フィルタ42は、受信側窓4から第1方向D1に出射する入力光L1を受ける。偏波分離フィルタ42は、入力光L1の一部を第1方向D1に透過すると共に、入力光L1の残部を第2方向D2に反射する。第2のミラー43は、偏波分離フィルタ42から第2方向D2に反射した入力光L1を受け、当該入力光L1を第1方向D1に反射する。
【0028】
レンズ44は、第1レンズ部44b、第2レンズ部44c及び第3レンズ部44dを有する。第1レンズ部44b、第2レンズ部44c及び第3レンズ部44dは、この順で第2方向D2に沿って並んでいる。受信素子用キャリア45は、窒化アルミニウム及びアルミナのいずれかによって構成されている。受信素子46は、インジウムリン(InP)及びケイ素(Si)のいずれかによって構成されている。第1レンズ部44bには偏波分離フィルタ42を透過した入力光L1が入力し、第1レンズ部44bは入力光L1を受信素子46に入力する。第2レンズ部44cには第1のミラー41において反射された光L3が入力する。第3レンズ部44dには、第2のミラー43において反射した入力光L1が入力する。
【0029】
光モジュール1は、パッケージ2を封止するリッド5を備える。リッド5は、例えば、金属製である。一例として、リッド5はコバールによって構成されている。また、リッド5は、鉄とニッケルの合金(インバー)によって構成されていてもよい。リッド5は長方形状を呈する。リッド5は、例えば、平板状を呈する。リッド5は、第1方向D1及び第2方向D2の双方に延在する上面5bと、上面5bとは反対側を向く下面5cと、第1方向D1及び第3方向D3に延在する第1側面5dと、第2方向D2及び第3方向D3に延在する第2側面5fとを有する。
【0030】
リッド5は、パッケージ2の開口部2gを気密封止する。例えば、パッケージ2では、開口部2gに金属製の枠2qが接合され、枠2qを介してリッド5がパッケージ2に接合される。枠2qは、パッケージ2の側壁の上面に設けられている凸状の枠である。例えば、リッド5のパッケージ2への接合はシーム溶接によって行われる。シーム溶接では、リッド5とパッケージ2における金属製の枠2qとの間に電圧が印加されて電流が流れ、リッド5及び枠2qの接触界面が接触抵抗によるジュール熱によって加熱される。この加熱による熱は、リッド5及び枠2qに施されたNiメッキ又はNi/Auメッキを溶融させ、Auロウ材が形成されてパッケージ2にリッド5が接合される。
【0031】
上記の加熱では、リッド5の全体の温度上昇が生じ、その後、リッド5の熱収縮によってリッド5に残留応力が発生することがある。リッド5に残留応力が発生するとリッド5の熱収縮に伴ってパッケージ2が変形して歪み、パッケージ2に反りが生じることがある。パッケージ2の変形(歪み)の影響によってパッケージ2の内部に配置された光学部品において光の結合効率の低下が生じうる。また、本実施形態では、パッケージ2が気密封止された後には光モジュール1の内部光学系の調整ができないという問題が生じうる。上記の光の結合効率の低下が生じると、例えば、出力光L2の出力パワーが低下する可能性がある。
【0032】
図3は、パッケージ2及びリッド5を模式的に示す断面図である。
図1及び
図3に示されるように、リッド5は、開口部2gが形成されたパッケージ2の側壁の上面2kに溶接によって固定される溶接部5gと、溶接部5gから離隔した位置に形成される易変形部5hと、平坦な中央部5zとを有する。易変形部5hは、リッド5の易変形部5h以外の部分よりも加熱に伴って変形しやすい部分である。リッド5の易変形部5hが易変形部5h以外の部位より変形しやすいことによって、溶接に伴って敢えて易変形部5hを変形させると共に、パッケージ2の変形を抑制することができる。
【0033】
第3方向D3から見た場合において、溶接部5gは枠状を呈し、易変形部5hは溶接部5gの内側に設けられる。易変形部5hは、例えば、第3方向D3から見た場合における溶接部5gの内側において矩形状を呈する。例えば、リッド5は、底壁2d側に位置する下面部5jと、下面部5jから底壁2dとは反対側(
図3では上側)に設けられる上面部5kとを有する。
【0034】
易変形部5hは、例えば、下面部5j及び上面部5kの間に位置する段差部である。易変形部5hは、溶接部5gに対して第3方向D3に窪む凹状の段差部である。なお、易変形部5hは溶接部5gに対して第3方向D3に突出する凸状の段差部であってもよい。易変形部5hは、例えば、リッド5の中央に向かうに従って斜め下方に延在している。リッド5では、加熱された後に溶接部5gがリッド5の中央側に引っ張られる。このとき、易変形部5hの上側がリッド5の中央側に移動するように変形するので、パッケージ2の中央側への変形を抑制できる。すなわち、パッケージ2の中央側への第1側壁2b及び第2側壁2cの応力が低減されるのでパッケージ2の変形を抑制することができる。
【0035】
リッド5は、第3方向D3に交差する方向(第1方向D1又は第2方向D2)を向く端辺5pを有する。端辺5pは、第2方向D2に沿って延びると共に第1方向D1に並ぶ一対の短辺5qと、第1方向D1に沿って延びると共に第2方向D2に並ぶ一対の長辺5rとを含む。第1方向D1における短辺5qから易変形部5hまでの距離K1は、第2方向D2における長辺5rから易変形部5hまでの距離K2よりも長い。
【0036】
次に、本実施形態に係る光モジュール1から得られる作用効果についてより詳細に説明する。光モジュール1では、パッケージ2の開口部2gがリッド5によって封止される。リッド5は、開口部2gが形成されたパッケージ2の上面2kに溶接によって固定される溶接部5gと、溶接に伴って変形する易変形部5hとを有する。易変形部5hは、溶接部5gから離隔した位置に形成されている。従って、パッケージ2との溶接部5gから離隔した易変形部5hが溶接に伴って変形することにより、パッケージ2の変形を抑制できる。すなわち、易変形部5hが変形することによって溶接に伴うパッケージ2への応力を低減させることができるので、パッケージ2の変形が抑制される。よって、パッケージ2の内部において光学系が完結している本実施形態の場合であっても、パッケージ2の変形によって光学部品の位置がずれることを抑制できるので、光の結合効率を安定させることができる。
【0037】
実施形態において、リッド5は、板状を呈してもよく、易変形部5hは、溶接部5gに対してリッド5の板厚方向(第3方向D3)に凸状又は凹状を成す段差部であってもよい。この場合、易変形部5hを段差部として形成できるので、易変形部5hを簡易に形成できる。
【0038】
実施形態において、リッド5は、端辺5pとして、一対の短辺5q及び一対の長辺5rを有する長方形状を呈してもよく、リッド5の長手方向(第1方向D1)における短辺5qから易変形部5hまでの距離K1は、リッド5の短手方向(第2方向D2)における長辺5rから易変形部5hまでの距離K2よりも長くてもよい。リッド5の端辺5pから易変形部5hまでの長さが長い場合には、リッド5の端辺5pから易変形部5hまでの長さが短い場合と比較して、易変形部5hをより変形させやすくすることができる。よって、リッド5の長手方向における短辺5qから易変形部5hまでの距離K1が、リッド5の短手方向における長辺5rから易変形部5hまでの距離K2よりも長い場合、リッド5の長手方向に沿って並ぶ易変形部5hをより変形させやすくしてパッケージ2の長手方向(第1方向D1)における変形をより確実に抑制できる。従って、パッケージ2の短手方向(第2方向D2)と比較してパッケージ2の長手方向における変形をより確実に抑制できるので、光の結合効率を一層安定させることができる。
【0039】
例えば、距離K1は、リッド5の長辺5rの長さの0.05倍以上である。距離K2は、リッド5の短辺5qの長さの0.15倍以下である。
図4は、リッド5の長辺5rの長さに対する距離K1の比率と光の結合損失との関係を示すグラフである。
図4の比較例は、易変形部5hが形成されていないリッドを有する光モジュールを示している。
図4に示されるように、易変形部5hを有する場合には、易変形部5hを有しない比較例よりも光の結合損失を低減できる。距離K1がリッド5の長辺5rの長さの0.05倍以上である場合、光の結合損失を0.2dB以下にすることができる。距離K2がリッド5の短辺5qの長さの0.06倍である場合には、距離K2がリッド5の短辺5qの長さの0.15倍である場合と比較して光の結合効率を更に低減できる。
【0040】
次に、易変形部5hの詳細の例について
図5及び
図6を参照しながら説明する。
図5は、第1方向D1及び第3方向D3に延在する平面によってリッド5を切断したときにおけるリッド5の断面図である。
図6は、
図5のリッド5の易変形部5hを拡大した断面図である。
図5及び
図6に示されるように、例えば、易変形部5hは、リッド5の易変形部5h以外の部位よりも肉薄とされた肉薄部であってもよい。
【0041】
例えば、リッド5の易変形部5h以外の部分(溶接部5g)における厚さT1は0.15mm以下であり、易変形部5hの最小厚さT2は0.1mm以下である。一例として、易変形部5hの深さH(下面部5jに対する上面部5kの高さ)は0.1mm以上である。易変形部5hは、例えば、上面部5kの上面5sから下面部5jの上面5tまでリッド5が窪むように湾曲する第1の湾曲面5vと、上面部5kの下面5wから下面部5jの下面5xまでリッド5が窪むように湾曲する第2の湾曲面5yとを有する。第1の湾曲面5v及び第2の湾曲面5yを有する易変形部5hは、リッド5の易変形部5h以外の部位と比較してより変形しやすいので、易変形部5hを変形させることでパッケージ2をより変形させにくくすることができる。
【0042】
図6の例のように、易変形部5hのリッド5の厚さは、溶接部5gの厚さT1よりも薄くてもよい。この場合、易変形部5hをより変形させやすくすることができるので、パッケージ2の変形をより確実に抑制できる。
図7は、
図6とは異なる変形例に係るリッド55の易変形部55hを示す断面図である。
図7に示されるように、リッド55は、互いに厚さが異なる上面部55k及び下面部55jを有してもよい。この場合、リッド55の溶接部5gを含む上面部55kが当該溶接部を含まない下面部55jよりも厚くなる。このリッド55からもリッド5と同様の作用効果が得られる。
【0043】
図8は、変形例に係る光モジュール1Aを示す斜視図である。光モジュール1Aの一部の構成は、前述した光モジュール1の一部の構成と同一である。よって、以下では、光モジュール1の説明と重複する説明を同一の符号を付して適宜省略する。
図8に示されるように、光モジュール1Aはパッケージ2Aを備え、パッケージ2Aは、第3方向D3に窪む空洞2pを有する。例えば、空洞2pは、パッケージ2の底壁2dから第3方向D3に窪む部位である。空洞2pは、第1方向D1、第2方向D2及び第3方向D3に延在する矩形状の空間である。
【0044】
光モジュール1Aは、リッド5とは異なるリッド65を有する。リッド65では、易変形部5hの位置がリッド5の場合とは異なっている。リッド65では、第1方向D1における一方の短辺5q1から易変形部5hまでの距離K3は、第1方向D1における他方の短辺5q2から易変形部5hまでの距離K4よりも長い。リッド65では、一方の短辺5q1から易変形部5hまでの部分65bがパッケージ2の空洞2pと第3方向D3に沿って対向する。このように、パッケージ2の体積が少ない(空洞2pが形成された)部分の直上に当該部分65bが設けられる。
【0045】
以上のように、光モジュール1Aでは、パッケージ2Aは、リッド65の下方に位置する空洞2pを有する。リッド65の空洞2pに対向する部分65bにおける端辺5p(一方の短辺5q1)から易変形部5hまでの距離K3は、リッド65の空洞2pに対向しない部分における端辺5p(他方の短辺5q2)から易変形部5hまでの距離K4よりも長い。この場合、リッド65の空洞2pに対向する部分65bにおける易変形部5hを、リッド65の空洞2pに対向しない部分における易変形部5hと比較して変形させやすくすることができる。従って、パッケージ2Aの空洞2pの周辺部分をより変形させにくくすることができる。
【0046】
以上の第1方向D1における易変形部5hの位置が非対称とされたリッド65は、
図9に示されるように、前述した実施形態に係るパッケージ2に適用することも可能である。
図10は、更なる変形例に係る光モジュール1Bを示す部分断面図である。
図11は、光モジュール1Bの内部構造を示す部分断面図である。例えば、光モジュール1Bは、前述したリッド5を備える。
【0047】
光モジュール1Bはパッケージ2Bを有し、パッケージ2Bには送信側窓3のみが形成されている。すなわち、光モジュール1Bは光信号の送信のみを行う光送信モジュールである。光モジュール1Bは、パッケージ2Bの底壁2dに搭載された第1の温調デバイス61と、第1の温調デバイス61に搭載された波長可変光源用ベース62と、波長可変光源用ベース62に搭載された波長可変用キャリア63及びレンズ64と、波長可変用キャリア63に搭載された波長可変光源素子66とを備える。波長可変光源素子66から出力された光L11はレンズ64を透過する。レンズ64を透過する光L11は、レンズ64から送信側窓3とは反対側に出力する。
【0048】
光モジュール1Bは、第1の温調デバイス61と第2の温調デバイス81の共通の下基板89に搭載された中間基板71と、中間基板71に搭載されたビームスプリッタ72とを有する。ビームスプリッタ72はレンズ64からの光L11を第1方向D1に透過する。光モジュール1Bは、底壁2dに搭載された第2の温調デバイス81と、第2の温調デバイス81に搭載された変調素子用ベース82とを有する。光モジュール1Bは、更に、変調素子用ベース82に搭載された変調素子用キャリア83、偏波合波フィルタ84、ミラー85及びレンズ86と、変調素子用キャリア83に搭載された変調素子87とを有する。
【0049】
レンズ86は、第1レンズ部86b、第2レンズ部86c及び第3レンズ部86dを有し、第1レンズ部86b、第2レンズ部86c及び第3レンズ部86dはこの順で第2方向D2に沿って並んでいる。第2レンズ部86cはビームスプリッタ72から出射した光L11を透過し、透過した光を変調素子87に出力する。変調素子87は、第1の出力光L12及び第2の出力光L13を出力する。第1の出力光L12は、第1レンズ部86bを透過してミラー85において第2方向D2に反射する。第2の出力光L13は、第3レンズ部86dを透過して偏波合波フィルタ84に到達する。偏波合波フィルタ84は、ミラー85において第2方向D2に反射した第1の出力光L12を第1方向D1に反射して送信側窓3に出力すると共に、第2の出力光L13を透過して送信側窓3に出力する。
【0050】
光モジュール1Bは、前述した各光学部品が搭載されたパッケージ2Bと、パッケージ2Bを封止するリッド5とを備える。従って、光モジュール1Bからは光モジュール1と同様の作用効果が得られる。なお、光モジュール1Bは、リッド5に代えて、リッド65を有していてもよい。
【0051】
以上、本開示に係る光モジュールの実施形態及び種々の変形例について説明した。しかしながら、本発明は、前述した実施形態又は変形例に限定されない。すなわち、本発明が特許請求の範囲に記載された要旨を変更しない範囲において種々の変形及び変更が可能であることは、当業者によって容易に認識される。例えば、光モジュールの各部品の形状、大きさ、数、材料及び配置態様は、前述した内容に限られず適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0052】
1,1A,1B…光モジュール
2,2A…パッケージ
2b…第1側壁
2B…パッケージ
2c…第2側壁
2d…底壁
2g…開口部
2h…肉薄部
2j…肉厚部
2k…上面
2p…空洞
2q…枠
3…送信側窓
4…受信側窓
5…リッド
5b…上面
5c…下面
5d…第1側面
5f…第2側面
5g…溶接部
5h…易変形部
5j…下面部
5k…上面部
5p…端辺
5q,5q1,5q2…短辺
5r…長辺
5s,5t…上面
5v…湾曲面
5w,5x…下面
5y…湾曲面
5z…中央部
11…温調デバイス
12…波長可変光源用ベース
13…波長可変光源素子
14…レンズ
21…中間基板
22…ビームスプリッタ
31…温調デバイス
32…変調素子用ベース
33…変調素子用キャリア
34…偏波合波フィルタ
35…ミラー
36…レンズ
36b…第1レンズ部
36c…第2レンズ部
36d…第3レンズ部
37…変調素子
41…ミラー
42…偏波分離フィルタ
43…ミラー
44…レンズ
44b…第1レンズ部
44c…第2レンズ部
44d…第3レンズ部
45…受信素子用キャリア
46…受信素子
55…リッド
55h…易変形部
55j…下面部
55k…上面部
61…温調デバイス
62…波長可変光源用ベース
63…波長可変用キャリア
64…レンズ
65…リッド
65b…部分
66…波長可変光源素子
71…中間基板
72…ビームスプリッタ
81…温調デバイス
82…変調素子用ベース
83…変調素子用キャリア
84…偏波合波フィルタ
85…ミラー
86…レンズ
86b…第1レンズ部
86c…第2レンズ部
86d…第3レンズ部
87…変調素子
88…下基板
89…下基板
D1…第1方向
D2…第2方向
D3…第3方向
K1,K2,K3,K4…距離
L1…入力光
L2…出力光
L3,L4,L5,L11…光
L12,L13…出力光