(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024029979
(43)【公開日】2024-03-07
(54)【発明の名称】RFIDタグ、パッシブ型RFIDタグ光センサー、および光の放射照度の決定方法
(51)【国際特許分類】
G06K 19/07 20060101AFI20240229BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20240229BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20240229BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
G06K19/07 170
G06K19/077 280
H01Q1/24 Z
H01Q1/38
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132488
(22)【出願日】2022-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】523107477
【氏名又は名称】渡辺 明
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 明
【テーマコード(参考)】
5J046
5J047
【Fターム(参考)】
5J046AB13
5J047AB07
(57)【要約】
【課題】入射した光の放射照度を定量的に測定できる、放射照度計としての機能を備えたRFIDタグ、パッシブ型RFIDタグ光センサー、および光の放射照度の決定方法を提供する。
【解決手段】インピーダンス整合部30が、インピーダンス整合部絶縁基材11の上に設けられ、環状の開口50を有するインピーダンス整合部導体パターン31と、開口50の近傍で、インピーダンス整合部導体パターン31と電気的に接続されたICチップ20とからなる。アンテナ部導体パターン32が、インピーダンス整合部30から第1端部まで第1方向に延伸し、さらにインピーダンス整合部30から第2端部まで第2方向に延伸している。光検出器21が、インピーダンス整合部導体パターン31の第1方向の端部と、インピーダンス整合部導体パターン31の第2方向の端部とに電気的に接続され、ICチップ20と並列回路を形成している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、
前記絶縁層の上に設けられ、環状の開口を有する導体パターンと、前記開口の近傍で、前記導体パターンと電気的に接続されたICチップとからなるインピーダンス整合部と、
前記インピーダンス整合部から第1方向および第2方向に延伸するアンテナ導体部と、
前記環状の開口を有する前記導体パターンの前記第1方向の端部と、前記環状の開口を有する前記導体パターンの前記第2方向の端部とに電気的に接続され、前記ICチップと並列回路を形成する光検出器とを、
有することを特徴とするRFIDタグ。
【請求項2】
絶縁層と、
前記絶縁層の上に設けられ、環状の第1の開口を有する第1の導体パターンと、前記第1の開口の近傍で、前記第1の導体パターンと電気的に接続されたICチップとからなるインピーダンス整合部と、
前記インピーダンス整合部の前記第1の導体パターンに隣接して設けられた、環状の第2の開口を有する第2の導体パターンと、
前記インピーダンス整合部から第1方向および第2方向に延伸するアンテナ導体部と、
前記第2の導体パターンと電気的に接続された光検出器とを、
有することを特徴とするRFIDタグ。
【請求項3】
使用周波数がUHF帯の周波数であることを特徴とする請求項1または2記載のRFIDタグ。
【請求項4】
請求項1記載のRFIDタグを有し、
前記光検出器への光入射により生じる前記インピーダンス整合部のインピーダンス変化を、前記ICチップから無線通信でRFIDリーダー・ライターへ送信されるセンサーコードSの変化として検知するよう構成されていることを
特徴とするパッシブ型RFIDタグ光センサー。
【請求項5】
請求項2記載のRFIDタグを有し、
前記光検出器への光入射により生じる前記インピーダンス整合部のインピーダンス変化を、前記ICチップから無線通信でRFIDリーダー・ライターへ送信されるセンサーコードSの変化として検知するよう構成されていることを
特徴とするパッシブ型RFIDタグ光センサー。
【請求項6】
前記第1の開口の面積と前記第2の開口の面積との比や、それぞれの面積の大きさによって、前記ICチップから無線通信で前記RFIDリーダー・ライターに送信されるセンサーコードSの大きさや変化範囲を制御可能に構成されていることを特徴とする請求項5記載のパッシブ型RFIDタグ光センサー。
【請求項7】
請求項1記載のRFIDタグを有し、
前記光検出器へ入射した光の放射照度の変化を、前記ICチップから無線通信でRFIDリーダー・ライターへ送信されるリーダーRSSIの変化として検知するよう構成されていることを
特徴とするパッシブ型RFIDタグ光センサー。
【請求項8】
請求項2記載のRFIDタグを有し、
前記光検出器への光入射を、前記ICチップから無線通信でRFIDリーダー・ライター送信されるリーダーRSSIの変化として検知するよう構成されていることを
特徴とする記載のパッシブ型RFIDタグ光センサー。
【請求項9】
前記光検出器がフォトトランジスタであることを特徴とする請求項4記載のパッシブ型RFIDタグ光センサー。
【請求項10】
前記光検出器がフォトトランジスタであることを特徴とする請求項5記載のパッシブ型RFIDタグ光センサー。
【請求項11】
請求項4乃至6のいずれか1項に記載のパッシブ型RFIDタグ光センサーを用いた光の放射照度の決定方法であって、
前記光検出器へ入射した光の放射照度と、前記放射照度の光により生じる前記センサーコードSの値の変化との間の関係を示す検量線をあらかじめ作成しておき、前記センサーコードSの測定値から、前記検量線を用いて、前記光検出器へ入射した光の前記放射照度を決定することを
特徴とする光の放射照度の決定方法。
【請求項12】
請求項7または8記載のパッシブ型RFIDタグ光センサーを用いた光の放射照度の決定方法であって、
前記光検出器へ入射した光の放射照度と、前記放射照度の光により生じる前記リーダーRSSIの値の変化との間の関係を示す検量線をあらかじめ作成しておき、前記リーダーRSSIの測定値から、前記検量線を用いて、前記光検出器へ入射した光の前記放射照度を決定することを
特徴とする光の放射照度の決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグ、パッシブ型RFIDタグ光センサー、および光の放射照度の決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁界や電波を用いて非接触でデータの送受信を行い、それらのデータによって認証を行うRFID(Radio Frequency Identification)技術は、複数のRFIDタグを離れた位置から一括で読み込むことができ、また、RFIDタグのICに書き込まれた個々のユニークな識別情報から、受信したデータがどのRFIDタグからのものであるかを判別することができる。
【0003】
複数のタグを一括で読み込むことができることは、RFID技術のメリットではあるが、一方、複数のタグのなかで特定の一つだけのタグの情報を読み込もうとした場合には、判別が難しくなってしまうという問題がある。そこで、このような問題の解決を図るために、従来、RFIDタグの識別機能と、光検出器とを組み合わせたシステムが提案されている(例えば、特許文献1乃至4参照)。
【0004】
これらのシステムでは、例えば、光検出器を備えた複数のRFIDタグのうち、所定の場所に位置するRFIDタグの光検出器に対してのみ光を照射し、光検出器が光を検出したか否かを示す光検出情報をRFIDリーダー・ライターに送信することで、所定の場所に位置するRFIDタグのみの情報を得ることができるものがある(例えば、特許文献1および4参照)。
【0005】
このようなシステムにおいては、光検出器が光を検出したか否かを判別するための閾値または基準値が設定され、その設定値と光検出器からの信号との比較によって、所定の場所に位置するRFIDタグの情報を得ている(例えば、特許文献2および3参照)。
【0006】
これらのシステムでは、閾値以上の光を検出した光検出器の位置情報が、複数のRFIDタグのうちの特定のタグを判別し、そのタグの情報のみを受信するために利用されている。
【0007】
これらのシステムにおいては、例えば、発電用デバイスやRF波の整流器が備えられ、それらからの直流電力によって、光検出器が駆動されている(例えば、特許文献2および4参照)。
【0008】
これらのシステムにおいては、光検出器からの信号を受けるRFIDタグに関しては、限定されてはいないが、市販のRFIDタグ等が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0297323号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2333701号明細書
【特許文献3】特開2007-264799号公報
【特許文献4】特許第6531655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、RFID技術の医療・介護分野への応用が検討されており、RFIDタグの濡れによる特性変化を、排尿検知センサーとして用いたおむつ等が開発されている。電池や外部電源を必要としないウェアラブルなパッシブ型RFIDタグセンサーは、低装着負荷のデバイスとして、医療・介護分野で今後の普及が期待されている。排尿検知のみならず、尿や排出物中の混入成分の検査をパッシブ型RFIDタグセンサーで行うことができれば、医療・介護現場での負荷低減につながると考えられる。例えば、尿中の血尿や潜血等の成分変化を、透過率変化から検知することを考えた場合に必要となるのは、光源としてのパッシブ型LEDタグおよび受光素子としてのパッシブ型RFIDタグ光センサーである。パッシブ型LEDタグは既に実現されているが、このようなパッシブ型RFIDタグ光センサーはまだ存在していない。
【0011】
このようなパッシブ型RFIDタグセンサーにおいては、特許文献1乃至4に記載のような、従来のRFIDタグと光検出器とを組み合わせたシステムとは異なる特性が必要となる。従来のRFIDタグと光検出器とを組み合わせたシステムにおいては、閾値または基準値が設定され、その設定値と光検出器からの信号との比較によって、光検出器が光を検出したか否かが判断される。これは、光検出器が光を検出したか否かの、二値的な判定になる。
【0012】
これに対して、尿中の血尿や潜血等の成分変化を、透過率変化から観察することを考えた場合には、透過率の変化に伴う、光検出器へ入射する光の放射照度の変化を、定量的に検知する必要がある。すなわち、光検出器が光を検出したか否かの、二値的な判定ではなく、入射する光の放射照度を定量的に測定できる、放射照度計としての機能を備えたパッシブ型RFIDタグ光センサーが必要であるという課題があった。
【0013】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、入射した光の放射照度を定量的に測定できる、放射照度計としての機能を備えたRFIDタグ、パッシブ型RFIDタグ光センサー、および光の放射照度の決定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、以下のような検討を行い、本発明に至った。すなわち、従来のRFIDタグと光検出器とを組み合わせたシステムにおいては、光電効果を生じる半導体等からなる発電用デバイスやRF波の整流器が備えられ、光検出器は、それらからの直流電力によって駆動され、また、光検出器を制御し、その信号を通信部に送るための電子回路を備えたものであった。これに対し、本発明では、ウェアラブルな用途やディスポーザブルな用途を想定していることから、上記のような付帯的な構成要素を有しない簡便で低コストの構造のものが好ましく、さらに、フレキシブルで薄型なタグであることが好ましい。このため、光検出器は、RFIDタグの構成要素であるICチップを備えたインピーダンス整合部もしくはアンテナ部に、電気的に直接に接続され、光検出器駆動用の直流電源や制御用の電子回路を必要としない構造が好ましい。
【0015】
インピーダンス整合部は、ICチップとアンテナ部との間でのインピーダンス整合をとるためのもので、ICチップとアンテナ部との間で、インピーダンス整合が取れていない場合には、信号の反射が起こってしまい、RFIDタグの通信障害や通信距離の低下が起こる。インピーダンス整合部は、誘電性を有する基材の上に形成された、開口を有する環状の導体パターンからなっており、開口の大きさや形状によって、複素インピーダンスの虚部(リアクタンス)を制御することで、ICチップとのインピーダンス整合を取っている。
【0016】
このような特性を有したインピーダンス整合部に、光照射によって抵抗値が変化するような光検出器を接続した場合、光照射に伴いインピーダンス整合部のインピーダンスが変わり、ICチップとアンテナ部との間でのインピーダンス整合状態が変化することになる。
【0017】
ICチップとアンテナ部との間でのインピーダンス整合状態の変化によって、反射によって有効に利用されなくなる信号の割合が変わることから、RFIDタグのICチップからRFIDリーダー・ライターへ送信される信号の情報が変化することになる。
【0018】
RFIDリーダー・ライターへ送信される情報としては、識別情報の他に、RFIDリーダー・ライターがRFIDタグから受信している電力に関わる値であるリーダーRSSI(Received Signal Strength Indicator)がある。また、或る種のICチップにおいては、ICチップ自体のオートチューニング機構によって変化したインピーダンス値に関わる情報であるセンサーコードSや、ICチップが受けている電力に係る情報であるオンチップRSSIの変化を知ることができる。
【0019】
これらの情報のうちで、RSSI(dBm)は、RFIDタグとRFIDリーダー・ライターのアンテナとの間の距離や、それらの間に存在する障害物、さらにはRFIDタグの配向やRFIDリーダー・ライターのアンテナの配向などで変化することから、光検知に用いることはできるものの、入射した光の放射照度を定量的に測定するための放射照度計としての用途を考えた場合には、RFIDタグとRFIDリーダー・ライターおよびアンテナとの設置条件を一定にする必要があるなどの制約がある。
【0020】
これに対して、センサーコードSは、インピーダンス整合部の形状や大きさ、材質によって決まるものであり、入射光の放射照度を定量的に測定する放射照度計のための情報として好適なものである。
【0021】
光検出器は、光伝導型の検出器であってもよいし、光起電型の検出器であってもよく、フォトレジスタ、フォトトランジスタ、およびフォトダイオード等が利用できる。インピーダンス整合部に接続して、光照射によるインピーダンス変化を計測する場合には、光照射によって抵抗値変化の起こる、フォトレジスタおよびフォトトランジスタが好適である。
【0022】
以上の検討結果から、第1の本発明に係るRFIDタグは、絶縁層と、前記絶縁層の上に設けられ、環状の開口を有する導体パターンと、前記開口の近傍で、前記導体パターンと電気的に接続されたICチップとからなるインピーダンス整合部と、前記インピーダンス整合部から第1方向および第2方向に延伸するアンテナ導体部と、前記環状の開口を有する前記導体パターンの前記第1方向の端部と、前記環状の開口を有する前記導体パターンの前記第2方向の端部とに電気的に接続され、前記ICチップと並列回路を形成する光検出器とを、有することを特徴とする。
【0023】
また、第1の本発明に係るパッシブ型RFIDタグ光センサーは、第1の本発明に係るRFIDタグを有し、前記光検出器への光入射により生じる前記インピーダンス整合部のインピーダンス変化を、前記ICチップから無線通信でRFIDリーダー・ライターへ送信されるセンサーコードSの変化として検知するよう構成されていることを特徴とする。あるいは、第1の本発明に係るパッシブ型RFIDタグ光センサーは、前記光検出器へ入射した光の放射照度の変化を、前記ICチップから無線通信でRFIDリーダー・ライターへ送信されるリーダーRSSIの変化として検知するよう構成されていてもよい。
【0024】
第2の本発明に係るRFIDタグは、絶縁層と、前記絶縁層の上に設けられ、環状の第1の開口を有する第1の導体パターンと、前記第1の開口の近傍で、前記第1の導体パターンと電気的に接続されたICチップとからなるインピーダンス整合部と、前記インピーダンス整合部の前記第1の導体パターンに隣接して設けられた、環状の第2の開口を有する第2の導体パターンと、前記インピーダンス整合部から第1方向および第2方向に延伸するアンテナ導体部と、前記第2の導体パターンと電気的に接続された光検出器とを、有することを特徴とする。
【0025】
また、第2の本発明に係るパッシブ型RFIDタグ光センサーは、第2の本発明に係るRFIDタグを有し、前記光検出器への光入射により生じる前記インピーダンス整合部のインピーダンス変化を、前記ICチップから無線通信でRFIDリーダー・ライターへ送信されるセンサーコードSの変化として検知するよう構成されていることを特徴とする。あるいは、第2の本発明に係るパッシブ型RFIDタグ光センサーは、前記光検出器への光入射を、前記ICチップから無線通信でRFIDリーダー・ライター送信されるリーダーRSSIの変化として検知するよう構成されていてもよい。
【0026】
第2の本発明に係るパッシブ型RFIDタグ光センサーは、前記第1の開口の面積と前記第2の開口の面積との比や、それぞれの面積の大きさによって、前記ICチップから無線通信で前記RFIDリーダー・ライターに送信されるセンサーコードSの大きさや変化範囲を制御可能に構成されていてもよい。
【0027】
第1および第2の本発明に係るRFIDタグは、使用周波数がUHF帯の周波数であることが好ましい。また、第1および第2の本発明に係るパッシブ型RFIDタグ光センサーは、前記光検出器がフォトトランジスタであることが好ましい。
【0028】
第1の光の放射照度の決定方法は、第1および第2の本発明に係るパッシブ型RFIDタグ光センサーのうち、センサーコードSの変化を検知するパッシブ型RFIDタグ光センサーを用いた光の放射照度の決定方法であって、前記光検出器へ入射した光の放射照度と、前記放射照度の光により生じる前記センサーコードSの値の変化との間の関係を示す検量線をあらかじめ作成しておき、前記センサーコードSの測定値から、前記検量線を用いて、前記光検出器へ入射した光の前記放射照度を決定することを特徴とする。
【0029】
第2の光の放射照度の決定方法は、第1および第2の本発明に係るパッシブ型RFIDタグ光センサーのうち、リーダーRSSIの変化を検知するパッシブ型RFIDタグ光センサーを用いた光の放射照度の決定方法であって、前記光検出器へ入射した光の放射照度と、前記放射照度の光により生じる前記リーダーRSSIの値の変化との間の関係を示す検量線をあらかじめ作成しておき、前記リーダーRSSIの測定値から、前記検量線を用いて、前記光検出器へ入射した光の前記放射照度を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、入射した光の放射照度を定量的に測定できる、放射照度計としての機能を備えたRFIDタグ、パッシブ型RFIDタグ光センサー、および光の放射照度の決定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ(形状A)の(a)平面図、(b)断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態1および3に係るRFIDタグ(形状B)の(a)平面図、(b)インピーダンス整合部付近を拡大した平面図、(c)その断面図、(d)アンテナ部導体パターンの平面図である。
【
図3】(a)本発明の実施の形態1に係るRFIDタグの、光検出器であるCdSフォトレジスタ、(b)本発明の実施の形態3に係るRFIDタグの、光検出器であるフォトトランジスタ、(c)本発明の実施の形態3に係るRFIDタグの、小型・薄型のフォトトランジスタの、平面図および正面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るRFIDタグの、光照射下でのRFIDリーダー・ライターによる測定方法を示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ(形状A、L1=10cm,L2=5cm、光検出器:フォトレジスタ CdSセル)の、異なる通信距離での、センサーコードSと放射照度との関係を示すグラフである。
【
図6】本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ(形状A、L1=10cm,L2=5cm、光検出器:フォトレジスタ CdSセル)の、異なる通信距離での、リーダーRSSIと放射照度との関係を示すグラフである。
【
図7】本発明の実施の形態1に係るRFIDタグ(形状A、光検出器:フォトレジスタ CdSセル)のアンテナ長L1と(a)センサーコードS、(b)リーダーRSSIとの関係を示すグラフである。
【
図8】本発明の実施の形態2に係るRFIDタグ(形状A、L1=5cm,L2=5cm、光検出器:フォトレジスタ CdSセル)の、LED光(波長:390nm、放射照度:24.0mW/cm
2)のオンオフに伴う(a)センサーコードS、(b)リーダーRSSIの変化を示すグラフである。
【
図9】本発明の実施の形態2に係るRFIDタグ(形状A、L1=5cm,L2=5cm、光検出器:フォトレジスタ CdSセル)の、LED光(波長:550nm、放射照度:6.0mW/cm
2)のオンオフに伴う(a)センサーコードS、(b)リーダーRSSIの変化を示すグラフである
【
図10】本発明の実施の形態2に係るRFIDタグ(形状A、L1=5cm,L2=5cm、光検出器:フォトレジスタ CdSセル)の、LED光(波長:620nm、放射照度:2.5mW/cm
2)のオンオフに伴う(a)センサーコードS、(b)リーダーRSSIの変化を示すグラフである
【
図11】本発明の実施の形態3に係るRFIDタグ(形状A、L1=10cm,L2=5cm、
図3(b)に示す光検出器、通信距離CL=15cm)の、(a)センサーコードSと放射照度、(b)リーダーRSSIと放射照度との関係を示すグラフである。
【
図12】本発明の実施の形態3に係るRFIDタグ(形状C、L1=7.5cm,L2=7.5cm、
図3(c)に示す光検出器、通信距離CL=25cm)の、(a)センサーコードSと放射照度、(b)リーダーRSSIと放射照度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分については同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。また、理解の容易のため、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向、ならびに、同一および等しいなどの用語には、実施形態の作用および効果を損なわない程度のずれが許容される。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向を表す。X軸方向とY軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。
【0033】
本発明の実施の形態のパッシブ型RFIDタグ光センサーは、UHF帯RFIDタグの構成要素である、インピーダンス整合部、ICチップ、および放射導体からなるアンテナ部に加えて、インピーダンス接合部に電気的に接続された光検出器を備える。
【0034】
インピーダンス整合部に電気的に接続された光検出器は、光照射による抵抗値の変化によって、インピーダンス整合部のインピーダンスの変化を生じさせ、ICチップからRFIDリーダー・ライターに無線送信される情報から、光検出器に入射した光の放射照度に関する情報を得る。
【0035】
その情報としては、センサーコードSおよびリーダーRSSIを用いることができ、あらかじめ、それらの情報と入射した光の放射照度との間の関係に係る検量線を作成しておくことで、光検出器へ入射した光の放射照度を決定する。
【0036】
次に、RFIDタグ光センサーの各要素を詳述する。
【0037】
[実施の形態1]
図1は、UHF帯RFIDタグ(形状A)101の平面図および断面図である。RFIDタグ101は、絶縁基材10、インピーダンス整合部絶縁基材11と開口50を有するインピーダンス整合部導体パターン31とICチップ20とから構成されるインピーダンス整合部30、アンテナ部導体パターン32、および光検出器21を備える。
【0038】
絶縁基材10およびインピーダンス整合部絶縁基材11は、板状又はフィルム状の部材で、その表面には導体層が形成されており、平面視で、インピーダンス整合部30の開口50を有するインピーダンス整合部導体パターン31およびアンテナ部導体パターン32の形状に、それぞれ加工されている。
【0039】
図1では、インピーダンス整合部30の開口50の形状は、X軸方向に平行な一対の長辺と、Y軸方向に平行な一対の短辺とを有する略四辺形である。しかし、開口50の形状は、図示の形態に限られず、例えば、X軸方向に平行な一対の短辺と、Y軸方向に平行な一対の長辺とを有する略四辺形でもよい。開口50の形状である略四辺形には、完全な四辺形が含まれてもよい。ここでの“略”とは、角又は辺が丸みを帯びていることを表す。四辺形には、長方形、ひし形、平行四辺形、正方形が含まれてもよい。開口50の形状は、四辺形以外の多角形、円形、楕円でもよい。
【0040】
図1では、アンテナ部導体パターン32の形状は、平面視で、略四辺形となっている。しかし、アンテナ部導体パターン32の形状は、図示の形態に限定されず、例えば、複数の折れ曲がりを有するメアンダライン型の形状であってもよい。また、メアンダライン型形状における屈曲の回数や、メアンダラインの幅、およびX軸方向とY軸方向の幅は限定されない。なお、アンテナ部導体パターン32が、アンテナ導体部を成している。
【0041】
絶縁基材10およびインピーダンス整合部絶縁基材11の材質は、特に限定はされないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタン(PU)、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素化樹脂共重合体、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリエステルスルフォン、ポリエーテルイミド、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ樹脂、ノルボルネン樹脂、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリアセタール等の樹脂基材や、紙基材等、紙フェノール基材、紙エポキシ基材、ガラスコンポジット基材、ガラスエポキシ基材等の複合基材等が挙げられる。可撓性の観点からは、樹脂基材や紙基材等が好ましい。絶縁基材10の厚さは、その柔軟性、強度の観点から、4~1000μmが好ましく、8~150μmがより好ましい。
【0042】
インピーダンス整合部30の開口50を有するインピーダンス整合部導体パターン31およびアンテナ部導体パターン32の材質は、特に限定はされないが、導電性を有する導体から形成される。例えば、アルミニウム、銅、金、白金、銀、ニッケル、クロム、亜鉛、鉛、タングステン、鉄等の金属であってもよい。インピーダンス整合部導体パターン31およびアンテナ部導体パターン32の材質は、酸化スズもしくはITO(酸化インジウムスズ)等の金属酸化物、金、銀もしくは銅等の金属ナノワイヤーを用いた導電膜、樹脂に金属粉や導電性カーボン材料を混合した導電性樹脂混合物、または導電性樹脂のフィルム等であってもよい。インピーダンス整合部導体パターン31およびアンテナ部導体パターン32の厚さは、柔軟性、強度の観点から、0.01~1000μmが好ましく、1~100μmがより好ましい。
【0043】
ICチップ20は、インピーダンス整合部30の開口50の近傍で、インピーダンス整合部導体パターン31に電気的に接続された半導体部品である。ICチップ20は、RFIDタグ101の外部に存在するRFIDリーダー・ライター等の通信機器との間で、所定の情報を、アンテナ部導体パターン32によって送受信するように構成されている。
【0044】
ICチップ20は、インピーダンス整合部30の開口50を有するインピーダンス整合部導体パターン31と同層に配置されてもよいし、開口50を有するインピーダンス整合部導体パターン31とは異なる層に配置されてもよい。ICチップ20は、開口50を有するインピーダンス整合部導体パターン31に引き出し線を介して電気的に接続されてもよいし、開口50を有するインピーダンス整合部導体パターン31に設けられた電極に実装されてもよい。ICチップ20は、開口50を有するインピーダンス整合部導体パターン31に形成されたスリット又は切り欠きを跨ぐように配置されてもよい。
【0045】
図1に示されるように、RFIDタグ(形状A)101においては、光検出器21は、
図3(a)に示す光検出器リードピン40を介して、インピーダンス整合部導体パターン31に電気的に接続されている。光検出器21は、光検出器リードピン40によって両側から支えられて、宙に浮いた構造となっている。
【0046】
図2は、
図3(c)に示す光検出器21を備えたRFIDタグ102(形状B)の平面図および断面図である。形状BのRFIDタグ102においては、光検出器21は、インピーダンス整合部30の開口50を有するインピーダンス整合部導体パターン31に隣接して設けられた、第2の環状の開口51を有する開口部導体パターン33に接続されている。光検出器21は、第2の環状の開口51を有する開口部導体パターン33の切り欠きを跨ぐように配置されている。
【0047】
図1および
図2では、インピーダンス整合部導体パターン31およびアンテナ部導体パターン32は、接触した配置で図示されているが、インピーダンス整合部導体パターン31とアンテナ部導体パターン32とは、同種の導体からなる連結した構造でもよく、異なる導体からなる構造でもよく、導電性ペーストで接続した構造でもよく、また、接着材、粘着剤、もしくは粘着テープ等を用いて固定した構造でもよい。
【0048】
図1に示されるRFIDタグ101および
図2に示されるRFIDタグ102においては、インピーダンス整合部30およびアンテナ部導体パターン32等を覆う不図示の絶縁層を備えてもよい。
【0049】
図4は、光照射下でのRFIDリーダー・ライターによるRFIDタグ測定方法を示す概念図である。
図4に示すように、測定装置70は、RFIDリーダー・ライター71と、RFIDリーダー・ライター71のアンテナ72とを有する。通信距離CLは、アンテナ72の表面と、ベースプレート74に設けられたRFIDタグ73のICチップとの間の距離となる
【0050】
図4に示す測定系において、RFIDリーダー・ライター71の反対側に配置した光源75からの光の放射照度を、種々の透過率の減光フィルター76を1枚あるいは複数枚用いて変化させ、RFIDタグ73の光検出器に照射した。この時の放射照度(mW/cm
2)をパワーメータで測定し、その放射照度(mW/cm
2)でRFIDタグ73の光検出器が照射された時の、ICチップ20からの情報(センサーコードSおよびリーダーRSSI)をRFIDリーダー・ライター71で無線受信して、センサーコードSと放射照度(mW/cm
2)との関係、およびリーダーRSSI(dBm)と放射照度(mW/cm
2)との関係に係る検量線の作成を行った。光源75としては、キセノンランプからなる疑似太陽光源を用いた。RFIDタグ73への光照射においては、インピーダンス整合部の表面および裏面を黒色ビニールテープで覆うことで、光検出器のみに光が照射されるようにした。
【0051】
図5は、RFIDタグ73として、RFIDタグ101(形状A、L1=10cm,L2=5cm、光検出器:フォトレジスタ CdSセル)を用いたときの、センサーコードSと光検出器への入射光の放射照度(mW/cm
2)との関係を示すグラフである。
図5のaのデータは、通信距離CL:37cm(タグの設置位置の高さ:RFIDリーダー・ライター71のアンテナ72の中央部)の場合のプロットであり、
図5のbのデータは、通信距離CL:11cm(タグの設置位置の高さ:RFIDリーダー・ライター71のアンテナ72の中央部から11cm下方)の場合のプロットであるが、RFIDタグ73の設置位置の違いにもかかわらず、センサーコードSと放射照度(mW/cm
2)との関係は、一致したものとなっている。
【0052】
図5のようなセンサーコードSと放射照度(mW/cm
2)との関係の検量線をあらかじめ作成しておくことで、センサーコードSの計測値から、光検出器への入射光の放射照度(mW/cm
2)を求めることができる。
【0053】
図5に実線の曲線で示す検量線は、下記の数式(1)により得られる。放射照度とセンサーコードSとの関係は非線形であることから、下記の数式を用いた二重指数波形への曲線近似によって検量線を得た。
【0054】
【0055】
この数式(1)において、xは放射照度(mW/cm2)であり、yはRFIDタグ光センサーからの情報である、センサーコードSもしくはリーダーRSSIである。y0、x0、A1、A2、τ1、およびτ2は、二重指数波形への曲線近似におけるパラメータである。
【0056】
図6は、センサーコードSと同時に測定したリーダーRSSIの放射照度(mW/cm
2)依存性を示したグラフである。数式(1)により得た検量線を実線の曲線で示した。RFIDタグの設置位置の違いによって、リーダーRSSIと放射照度(mW/cm
2)との関係が違っているが、これは、RFIDタグ73とRFIDリーダー・ライター71のアンテナ72との距離や位置関係によって、RFIDタグ73が受けるRF波の電力に違いがあり、これによってRFIDタグ73のICチップからRFIDリーダー・ライター71に送信される情報となるリーダーRSSIに違いが生じるからである。
【0057】
リーダーRSSIを情報とした場合でも、RFIDタグ73とRFIDリーダー・ライター71のアンテナ72との距離や位置関係が一定である場合には、リーダーRSSIと放射照度(mW/cm2)の関係をあらかじめ測定して作成した検量線から、光検出器への入射光の放射照度(mW/cm2)を求めることができるが、測定条件としてはそれが難しい場合が多い。そのような場合には、RFIDタグ73のインピーダンス整合部のインピーダンスに係る情報である、センサーコードSを用いた放射照度(mW/cm2)の観測が好ましい。
【0058】
これまでのRFIDタグ73で使われているICチップでは、センシング用の情報としてはリーダーRSSIが取得できるのみであった。RFIDリーダー・ライター71のアンテナ72との間の距離や、それらの間に存在する障害物、さらにはRFIDタグ73の配向やRFIDリーダー・ライター71のアンテナ72の配向で変化してしまうリーダーRSSIでは、光の有無を二値的に判断することは可能であったものの、入射する光の放射照度を定量的に測定することは困難であった。入射する光の放射照度を定量的に測定するためには、RFIDタグ73のインピーダンス整合部に固有のインピーダンス値の変化を利用することが有効な手法である。本発明の実施の形態1では、RFIDタグ73のインピーダンス整合部のインピーダンス値に係る情報であるセンサーコードSの計測が可能となっているUHF帯RFIDタグ用ICチップ20を用いることで、パッシブ型RFIDタグ光センサーによる放射照度計測を実現した。
【0059】
図7は、UHF帯RFIDタグ(形状A)101において、アンテナ長L1を変化させた場合の、センサーコードS(
図7(a))およびリーダーRSSI(
図7(b))を示したグラフである。RFIDタグ101のインピーダンス整合部のインピーダンスに係る情報である、センサーコードSにおいては、変化が無く一定であるのに対して、RFIDリーダー・ライター71がRFIDチップにから受信する信号の強度に係る情報である、リーダーRSSIは、アンテナ長L1が短くなるに従って顕著な減少を示した。この結果も、センサーコードSを用いた放射照度(mW/cm
2)の観測が好ましい手法であることを示している。
【0060】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態2の説明において、実施の形態1と同様の構成、作用および効果についての説明は、実施の形態1の説明を援用することで省略又は簡略する。実施の形態2においては、光源として、単色性の高い種々波長のLED光源を用いて、RFIDタグ光センサーの応答特性を示す。
【0061】
図8は、RFIDタグ101(形状A、L1=5cm,L2=5cm、光検出器:フォトレジスタ CdSセル)へのLED光照射(波長:390nm、放射照度:24.0mW/cm
2)のオンオフに伴う(a)センサーコードSおよび(b)リーダーRSSIの変化(通信距離CL=10cm)を示す。青色LED光のオンオフによる、センサーコードSおよびリーダーRSSIの変化が、再現性良く観測された。
【0062】
図8(a)に示すように、青色LED光の放射照度が24.0mW/cm
2と高いにも関わらず、
図5の疑似太陽光を光源とした場合の検量線から予想されるセンサーコードSの変化量よりも小さくなっているのは、光検出器として用いたCdSセルの390nmでの分光感度特性が、550nm付近の最大値の略20%と低くなっているからである。
【0063】
図9は、RFIDタグ101(形状A、L1=5cm,L2=5cm、光検出器:フォトレジスタ CdSセル)へのLED光照射(波長:550nm、放射照度:6.0mW/cm
2)のオンオフに伴う(a)センサーコードSおよび(b)リーダーRSSIの変化(通信距離CL=10cm)を示す。緑色LED光のオンオフによる、センサーコードSおよびリーダーRSSIの変化が、再現性良く観測された。
【0064】
図9(a)に示すように、緑色LED光の放射照度が6.0mW/cm
2と低いにも関わらず、
図5の疑似太陽光を光源とした場合の検量線から予想されるセンサーコードSの変化量よりも大きくなっているのは、光検出器として用いたCdSセルの分光感度特性が、550nm付近で最大値となっているためである。
【0065】
図10は、RFIDタグ101(形状A、L1=5cm,L2=5cm、光検出器:フォトレジスタ CdSセル)へのLED光照射(波長:620nm、放射照度:2.5mW/cm
2)のオンオフに伴う(a)センサーコードSおよび(b)リーダーRSSIの変化(通信距離CL=10cm)を示す。赤色LED光のオンオフによる、センサーコードSおよびリーダーRSSIの変化が、再現性良く観測された。
【0066】
このように、RFIDタグ101(形状A)は、簡易な構造のLED光源を用いた場合にも、青色から赤色の広い波長範囲で高感度な応答特性を示した。
【0067】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3について説明する。実施の形態3の説明において、実施の形態1および2と同様の構成、作用および効果についての説明は、実施の形態1および2の説明を援用することで省略又は簡略する。実施の形態3においては、光検出器21として、
図3(b)および(c)に示される、シリコン半導体系のフォトトランジスタを備えたRFIDタグ光センサーの特性を示す。
【0068】
図3(b)に示されるように、フォトトランジスタである光検出器21は、センサーヘッドと、2本の光検出器エミッタリードピン40Eおよび光検出器コレクタリードピン40Cとからなり、その形状は、
図3(a)に示す光検出器21のCdSセルとほほ同様である。光検出器21は、
図1(a)および(b)で示されるように、光検出器エミッタリードピン40Eおよび光検出器コレクタリードピン40Cによって両側から支えられて、宙に浮いた構造となっている。これに対して、
図3(c)に示すフォトトランジスタである光検出器21は、
図3(a)および(b)に示す光検出器21とは異なる小型・薄型のパッケージとなっている。
【0069】
図11に、RFIDタグ101(形状A、L1=10cm,L2=5cm、
図3(b)に示す光検出器、通信距離CL=15cm)のセンサーコードSおよびリーダーRSSIと放射照度との関係を示した。数式(1)により得た検量線を実線の曲線で示した。光源としては、キセノンランプからなる疑似太陽光源を用いた。リーダーRSSIに比べて、放射照度の変化に対するセンサーコードSの変化は高感度であったものの、光検出器としてCdSセルを備えた場合に比べると、センサーコードSの変化幅は小さなものであった。
【0070】
図12には、
図2に示すRFIDタグ102(形状B、L1=7.5cm,L2=7.5cm、
図3(c)に示す光検出器、通信距離CL=25cm)のセンサーコードSおよびリーダーRSSIと放射照度との関係を示した。数式(1)により得た検量線を実線の曲線で示した。光源としては、キセノンランプからなる疑似太陽光源を用いた。開口50に加えて、開口51に光検出器21を備えた、形状BのRFIDタグ102では、
図3(b)に示す光検出器を備えたRFIDタグ101に比べて、センサーコードSは放射照度(mW/cm
2)の変化に対して、2倍以上の変化が示され、より高感度であった。
【0071】
図11(a)および
図12(a)のグラフを比較すると、RFIDタグ101(形状A)とRFIDタグ102(形状B)とでは、放射照度(mW/cm
2)の変化に伴うセンサーコードSの変化方向が逆になっている。これは、インピーダンス整合部30に接続される光検出器21の影響が、RFIDタグ101(形状A)とRFIDタグ102(形状B)とで異なるために起こる現象で、以下のように説明される。
【0072】
インピーダンス整合部導体パターン31の開口の大きさおよび形状は、フリースペース(空気中に)に設置された、RFIDタグのインピーダンス整合値として最適となるように設計されている。このようなインピーダンス整合部30に、電気的に接続された光検出器21は、RFIDタグのインピーダンス整合においては、負の因子として働くことになる。センサーコードSは、インピーダンス整合部30近傍のインピーダンスの変化に対応したICチップ20のオートチューニング機構によって補償されたインピーダンスに係る値となっている。フリースペース(空気中)にあるICチップ20を備えたRFIDタグのセンサーコードは、通常250前後の値となり、周囲環境の変化によって変動する。
【0073】
光検出器21を電気的にインピーダンス整合部30に接続したRFIDタグでは、センサーコードSはいずれも250の値からかなり外れた大きな値となっており、これは、RFIDタグのインピーダンス整合においては、電気的に接続された光検出器21が負の因子として働くためである。
【0074】
形状AのRFIDタグ101においては、
図3(a)および(b)に示す光検出器21は、光検出器リードピン40によって両側から支えられて、空気中に浮いた構造となっているため、誘電体である絶縁基材10およびインピーダンス整合部絶縁基材11との接触の影響はなく、光照射による光検出器21の抵抗変化が、インピーダンス整合部30のインピーダンスに影響を与える因子となる。
図5、6、および11に示されるように、放射照度(mW/cm
2)が高く光検出器21の抵抗値が低い条件下ほど、センサーコードSは減少し、同時に、ICチップ20からRFIDリーダー・ライターに送信される信号の強度に係る情報であるリーダーRSSI(dBm)の値は増加する。
【0075】
形状BのRFIDタグ102においては、
図3(c)に示す光検出器21は、
図2に示すように、インピーダンス整合部30の開口50を有するインピーダンス整合部導体パターン31に隣接して設けられた、環状の開口51を有する開口部導体パターン33に接続されている。光検出器21は、開口51を有する開口部導体パターン33の切り欠きを跨ぐように配置されている。光検出器21に入射する光の放射照度(mW/cm
2)が高い条件下ほど光検出器21の抵抗値は低くなり、光検出器21の下の切り欠きによって電気的に分離されていた開口51を有する開口部導体パターン33は、より導通状態となる。これによって、誘電体である絶縁基材10およびインピーダンス整合部絶縁基材11と密着した開口部導体パターン33からなる環状の開口51に由来する、複素インピーダンスの虚部(リアクタンス)が増加するために、センサーコードSは増加する。
【0076】
電気的に接続された光検出器21が負の因子として働くのは、フリースペース(空気中)に設置されたRFIDタグのインピーダンス整合部30が、最適なインピーダンスとなるように設計された場合であり、これを、光検出器21を電気的に接続された状態で最適になるように設計することも可能である。開口50の面積と環状の開口51の面積との比や、それぞれの面積の大きさによって、センサーコードSの大きさや変化範囲を制御することができる。また、開口50の周囲に形成される複数の開口の数や大きさ、配置によっても、センサーコードSの大きさや変化範囲を制御することができる。
【0077】
[具体例]
次に、本発明の実施の形態の具体的な実施例について説明する。本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。なお、具体例で使用した材料および装置は、以下のとおりである。
【0078】
[材料]
(1)アルミ箔/PET複合フィルム:パナック製;AL-PET9-100、アルミ箔厚 9μm、PET膜厚 100μm。
(2)ICチップ20:AXZON社製;Magnus-S3、サイズ 1.6BSC×1.6BSC、厚さ 0.35mm。
(3)UHF帯RFIDタグA:Avery Dennison Smartrac社;Temperature Sensor Dogbone、ICチップ:Axzon Magnus-S3、周波数帯:UHF 860-960MHz、ICチップ:ICチップ20(Magnus-S3)。
(4)接着剤:コニシ株式会社製;ボンド ウルトラ多用途SU。
(5)伸縮性Agペースト:ナミックス株式会社製;XE181G。
(6)
図3(a)に示す光検出器:Nanyang Senba Optical&Electronic Co.,Ltd.製;フォトレジスタCdSセル GL3516、サイズφ3mm、ピーク感度波長540nm。
(7)
図3(b)に示す光検出器:新日本無線社製;シリコンフォトトランジスタ NJL7502L、リードピンタイプ、ピ-ク感度波長 560nm。
(8)
図3(c)に示す光検出器:新日本無線社製;シリコンフォトトランジスタ NJL7502R、小型・薄型パッケータイプ、パッケージ寸法 1.6×1.3×0.65mm、ピ-ク感度波長 590nm。
(9)吸収型固定式ND(減光)フィルター(可視光用):シグマ光機株式会社製; AND-50s-70、AND-50s-50、AND-50s-40、AND-50s-30、AND-50s-20、AND-50s-13、AND-50s-10、AND-50s-05、AND-50s-01。
(10)青色LED:ジェネリックLED社;3W、発光波長390nm。
(11)緑色LED:ジェネリックLED社;3W、発光波長550nm。
(12)赤色LED:ジェネリックLED社;3W、発光波長620nm。
【0079】
[装置]
(13)UHF帯 RFIDリーダー・ライター:タカヤ株式会社製;UTR-S201,特定小電力無線局タイプ、送信周波数 916.8MHz~923.2MHz(18チャンネル)、送信出力 10dBm(10mW)~24dBm(250mW)、インターフェース USBインターフェース基板TR3-IF-U1C。
(14)UHF帯外付けアンテナ(直線偏波型):タカヤ株式会社製;UTR-UA1709-1。
(15)355nmナノ秒パルスレーザー光源:Inngu laser社;Pulse 355-3A,355nm、3W、繰り返し周波数 30kHz、パルス幅 13ns。
(16)ガルバノスキャナー:MASTER LASER社製;Model GH2D10C f‐θレンズ焦点距離 100mm、制御ソフトウェア BJJCZ社製 EzCAD。
(17)疑似太陽光源:ABET社;10500。
(18)パワーメータ:Ophir社;パワーメータディスプレイ Nova。
(19)パワーメータヘッド:Ophir社;高感度 サーマルセンサー 12A-P―SH。
(20)ワンボードマイコン:Arduino SRL社;Arduino Nano
【0080】
[ソフトウェア]
(21)UHF帯RFIDリーダー・ライター用自作ソフトウェア:タカヤ株式会社UTR通信プロトコルver1.15とシリアルポート制御モジュールEasyCommとを用いて、Microsoft Excelから、RFIDリーダー・ライターの制御およびデータ取得を行った。ICチップ20(Magnus-S3)からのリーダーRSSIの取得は、タカヤ株式会社UTR通信プロトコルに従って行った。ICチップ20(Magnus-S3)からのセンサーコードSの取得は、RFmicron社の資料(AN002F40:Reading Magnus(登録商標)-S Sensors)で公開されている、メモリーバンク(RESERVED)、ワードアドレス(Ch)、およびビット数(9)の情報に従って行った。
(22)グラフ処理ソフト:WaveMetrics社;Igor Pro
【実施例0081】
[RFIDタグの作成と測定方法]
図1に示すRFIDタグ(形状A)101を、以下のように作成した。
UHF帯RFIDタグA(ICチップ20)から、開口50を有するインピーダンス整合部導体パターン31およびICチップ20を備える略四辺形のインピーダンス整合部絶縁基材11(X軸方向長さL3:略14mm、Y軸方向幅W1:略6mm)からなるインピーダンス整合部30を切り出した。インピーダンス整合部絶縁基材11には、Z軸方向の正側に、略四辺形の孔状の開口50(X軸方向長さ:略7.9mm、Y軸方向幅:略2.7mm、四隅の半径:略0.5mm)を有した、アルミニウムからなるインピーダンス整合部導体パターン31(X軸方向:略14mm、Y軸方向:略4.7mm)が備えられている。
【0082】
次に、インピーダンス整合部絶縁基材11の開口50を有するインピーダンス整合部導体パターン31を覆っていた、UHF帯RFIDタグA(ICチップ20)の絶縁層を除去してアルミニウムからなるインピーダンス整合部導体パターン31を露出させた。
【0083】
図1のアンテナ部導体パターン32は、355nmのレーザー光をf‐θレンズで集光し、ガルバノスキャナーで走査することで、アルミ箔/PET複合フィルムのレーザーカットによって作成した。アンテナ部導体パターン32は、Y軸方向幅W1が略6mmで、インピーダンス整合部30が有する開口50と同様な、略四辺形の孔状の開口(X軸方向長さ:略7.9mm、Y軸方向幅:略2.7mm、四隅の半径:略0.5mm)と、切り欠き(X軸方向長さ:略4mm)とを有する略四辺形の開口50を有している。
【0084】
UHF帯RFIDタグA(ICチップ20)から切り出したインピーダンス整合部30を備えたインピーダンス整合部絶縁基材11と、レーザーカットで作成したアンテナ部導体パターン32とを、開口50の位置が合うように、接着剤で固定した。この時、レーザーカットによって作成したアルミ箔/PET複合フィルムパターンのアルミ箔側を、インピーダンス整合部30の露出したインピーダンス整合部導体パターン31側とした。
【0085】
光検出器21の2本の光検出器リードピン40を、インピーダンス整合部30の露出したインピーダンス整合部導体パターン31のX軸方向の両端に、伸縮性Agペーストで固定して、電気的な接続をとった。
【0086】
図4に示す測定装置70では、RFIDリーダー・ライター71の出力を24dBm(250mW)とし、アンテナ72には直線偏波型のUHF帯外付けアンテナを用いた。RFIDタグ73を、発泡スチロールのベースプレート74にテープで固定し、通信距離CLの位置に設置して測定を行った、発泡スチロールは内部に空隙を多く含む低誘電率材料であり、RFIDタグ73のICチップ20と、RFIDリーダー・ライター71との間の無線通信特性に影響を与えない。通信距離CLは、アンテナ72の表面とRFIDタグ73のICチップ20との間の距離とした。
【0087】
アンテナ72は、直線偏波型のUHF帯外付けアンテナであり、直線偏波が床面に対して平行になるように設置した。測定においては、RFIDタグ73の長手方向が、床面に対して平行になるように、偏波方向を合わせて発泡スチロールのベースプレート74に保持した。RFIDリーダー・ライター71のUHF帯外付けアンテナとしては、円偏波型のものも、RFIDタグ73との通信に用いることができる。円偏波型のアンテナ72を用いた場合には、直線偏波型のアンテナ72を用いた場合に比べて、通信距離は減少するが、RFIDタグ73に対して、より広い角度からの電波照射での通信が可能となる。
【0088】
RFIDリーダー・ライター71の反対側に配置した光源75からの光の放射照度を、種々の透過率の減光フィルター76を用いて変化させ、RFIDタグ73の光検出器21に照射した。この時の放射照度(mW/cm2)をパワーメータで測定し、その時の放射照度(mW/cm2)でRFIDタグ73の光検出器21が照射された時の、ICチップ20からの情報(センサーコードSおよびリーダーRSSI)をRFIDリーダー・ライター71で無線受信して、センサーコードSと放射照度(mW/cm2)との関係、およびリーダーRSSI(dBm)と放射照度(mW/cm2)との関係に係る検量線の作成を行った。光源75としては、キセノンランプからなる疑似太陽光源を用いた。RFIDタグ73への光照射においては、インピーダンス整合部30の表面および裏面を黒色ビニールテープで覆うことで、光検出器21のみに光が照射されるようにした。